(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。尚、以下で説明する図面において、同機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略することもある。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は本発明に係るIBE処理を実施しうるIBE装置の概略図を示す。IBE装置10は基板処理室1とプラズマ源としてのプラズマ生成室2で構成されている。基板処理室1には排気ポンプ3が設置されている。プラズマ生成室2にはベルジャ4、ガス導入部5、RFアンテナ6、整合器7、電磁石8が設置されており、基板処理室1との境界にはグリッド9が設置されている。
【0017】
グリッド9は複数枚の電極から構成される。本発明では例えば
図1に示すような3枚の電極によってグリッド9が構成されている。ベルジャ4側から順に第1電極9a、第2電極9b、第3電極9cとなっている。第1電極9aには正の電圧が、第2電極9bには負の電圧が印加されることで、電位差によってイオンが加速される。第3電極9cは、アース電極とも呼ばれ接地されている。第2電極9bと第3電極9cとの電位差を制御することにより、静電レンズ効果を用いてイオンビームの径を所定の数値範囲内に制御することができる。イオンビームはニュートラライザー13により中和される。第1電極9a及び第2電極9bはそれぞれ、所定の電圧を印加するための電源17、18に接続される。
【0018】
グリッド9の材質としては反応性ガスに対して耐性を持つ材質が好ましい。材質としてはモリブデンやチタンなどが挙げられる。またグリッド9をこれ以外の材質で形成し、その表面にモリブデンやチタンをコーティングしたものを用いても良い。
【0019】
基板処理室1内には基板ホルダ15があり、該基板ホルダ15には不図示のESC(Electrostatic Chuck:静電吸着)電極が接続される。このESC電極によって、基板ホルダ15に載置された基板11が静電吸着により固定される。また、他の基板固定手段としては、クランプ支持など種々の固定手段を用いることができる。ガス導入部5からプロセスガスを導入し、RFアンテナ6に高周波を印加することでプラズマ生成室2内に該プロセスガスのプラズマを発生させることができる。そしてグリッド9に直流電圧を印加し、プラズマ生成室2内のイオンをビームとして引き出し、基板11に照射することで基板11の処理が行われる。引き出されたイオンビームは、ニュートラライザー13により電気的に中和され、基板11に照射される。
【0020】
基板ホルダ15は、基板11をその面内方向に回転(自転)することができる。基板ホルダ15は、基板の回転速度、基板の回転回数、及びグリッド9に対する基板ホルダ15の傾きを制御するための回転制御手段と、基板11の回転位置を検出する手段とを備えている。また、該基板ホルダ15には、グリッド9に対する基板ホルダ15の傾き、及び、基板11の回転開始位置を検出できる手段が備わっていてもよい。本実施形態では、基板ホルダ15には位置検出手段としての位置センサ14が設けられており、基板11の回転位置を検出することができる。位置センサ14としては、ロータリーエンコーダを用いている。
【0021】
基板11は基板搬入口16から基板処理室1内に搬入され、基板ホルダ15の載置面上に水平状態を保って保持されている。また、基板ホルダ15は、イオンビームに対して任意に傾斜することができる。基板11の材料としては、例えば、円板状のシリコンウェハが用いられる。
【0022】
次に本発明により製造されるTMR素子の構造の一例を、
図2を用いて説明する。
図2は膜厚方向に強磁性層が磁化しているP−TMR素子20の積層構造の模式図を示している。図中の( )は膜厚である。本例のP−TMR素子20は、先ず、基板21の上に、バッファ層22,23としてRuCoFe層、Ta層を成膜する。その上に、フリー層24として強磁性層であるCoFeB層を成膜し、トンネルバリア層25としてのMgO層を形成する。トンネルバリア層25は高いMR比を得るためにMgOが好適である。その他、Mg、Al、Ti、Zn、Hf、Geの少なくとも1つ又は2つ以上を含有する酸化物でも良い。その上に第1のリファレンス層26として強磁性層であるCoFe層、第2のリファレンス層27として強磁性層であるCoFeB層、配向分離層28としてTa層、第3のリファレンス層29を成膜した。第3のリファレンス層29はCoとPdの積層構造からなり、本例ではCo/Pdが交互に各々4層積層された後、Coが成膜されている。
【0023】
次に非磁性中間層30としてRu層、第4のリファレンス層31、キャップ層32としてTa層32を成膜した。第4のリファレンス層31はCo/Pdの積層構造からなり、CoとPdが交互に各々14層積層されている。
【0024】
図2に示すように、P−TMR素子20は特に貴金属膜を多数有する。このため基板21上に形成された磁気抵抗効果膜をエッチングにより素子分離する際に、素子の側壁に貴金属原子を多く含んだ再付着膜が付着する。
【0025】
尚、本発明において素子分離とは、基板上に堆積された膜を上から順にパターニングし、少なくともトンネルバリア層として機能する絶縁膜までがパターニングされた状態を指す。
【0026】
この再付着膜に含まれる貴金属原子を効率的に除去するための本発明に係るIBE法について
図3乃至
図6を用いて以下で説明する。
【0027】
図3は、各種希ガスを用いてTaとPdのIBEを行った時の、イオンのエネルギーと、TaとPdのスパッタ率の比との関係を示したものである。横軸はグリッド9に印加される電圧により決定されるイオンビームのエネルギーを示している。縦軸はTaのスパッタ率に対するPdのスパッタ率を示している。各種希ガスはプラズマ生成室内に導入されてプラズマが生成され、該プラズマからイオンビームが引き出されて被エッチング材に照射されることで各種希ガスを用いたIBEが行われる。
【0028】
各材質の各種希ガスに対するスパッタ率はエヌ マツナミ(N.Matsunami),外8名,「エナジー ディペンデンス オブ ジ イェールズ オブ イオン−インデュースド スパッタリング オブ モナトミック ソリッズ(Energy Dependence of the Yields of Ion−Induced Sputtering of Monatomic Solids),IPPJ−AM−32(インスティテュート オブ プラズマ フィジックス,名古屋大学,日本,1983(Institute of Plasma Physics,Nagoya University,Japan,1983)に記載されている方法を用いて算出した。
【0029】
図3から、いずれの希ガスを用いても、Taに対してPdが選択的にエッチングされることが分かる。
【0030】
図4は、He、Ne、Ar、Kr及びXeの各種希ガスを用いてTa及びPtのIBEを行った時の、イオンのエネルギーと、TaとPtのスパッタ率の比との関係を示したものである。横軸はグリッド9に印加される電圧により決定されるイオンビームのエネルギーを示している。縦軸はTaのスパッタ率に対するPtのスパッタ率を示している。
【0031】
図4から、Ptの場合もPdと同様に、いずれの希ガスを用いても、Taに対してPtが選択的にエッチングされることが分かる。
【0032】
図5は、各種希ガスを用いてCo及びPdのIBEを行った時の、イオンのエネルギーと、CoとPdのスパッタ率の比との関係を示したものである。横軸はグリッド9に印加される電圧により決定されるイオンビームのエネルギーを示している。縦軸はCoのスパッタ率に対するPdのスパッタ率を示している。
【0033】
図5からHeやNe以外の希ガスについては、100eV以下の低エネルギー帯においてCoに対してPdが選択的にエッチングされることが分かる。特にKrガス及びXeガスについては50eVにおいて10倍以上の選択性が得られており、エッチング速度とその選択性の観点から生産性に優れたプロセスが実現可能である。
【0034】
図6は、各種希ガスを用いてCo及びPtのIBEを行った時の、イオンのエネルギーと、CoとPtのスパッタ率の比との関係を示したものである。横軸はグリッドに印加される電圧により決定されるイオンビームのエネルギーを示している。縦軸はCoのスパッタ率に対するPtのスパッタ率を示している。
【0035】
図6から、HeについてはCoに対するPtのスパッタ率が最大で約0.1倍であり、Coに対してPtのエッチングが進行し難いことが分かる。Neにおいても1倍には達しておらず、Arにおいても最大で1倍である。このためHeやNe、Arといった希ガスでは、Coに対してPtを選択的にエッチングすることは困難である。
【0036】
一方でKrやXeの場合、Coに対してPtが選択的にエッチングされていることが分かる。特に100eV以下の低エネルギーになるほど、Coに対するPtの選択性がより顕著になっている。
【0037】
図3乃至
図6の結果から、HeやNe、Arといった希ガスではP−TMR素子に含まれる金属が混在する再付着膜中から貴金属原子を選択的にエッチングすることが困難であることが分かる。一方でKr及びXeについてはPt及びPdのいずれにおいても選択的なエッチングが可能である。
【0038】
Kr及びXeは共にイオンエネルギーが低いほど貴金属に対する選択性が向上する。その一方でイオンエネルギーが低いほど各材料のエッチング速度が低下するため、イオンエネルギーは可能な限り高い方が生産性を高める上で望ましい。Xeを用いてIBEを行った場合、Krに対して比較的高エネルギーにおいても貴金属を選択的にエッチングすることが可能なため生産性の観点から非常に有利である。
【0039】
貴金属に対するエッチングの選択性及びエッチング速度の両方を考慮した場合、イオンエネルギーは10eV以上100eV以下に設定されることが望ましい。10eV以下のイオンエネルギーでは再付着膜に対するスパッタ率が小さく、処理に時間を要してしまうためである。
【0040】
さらにIBEによる再付着膜中の貴金属原子の除去についてはプロセス安定性の観点からも非常に優れる。
図7はRIEとIBEにおける基板に入射するイオンエネルギーの分布を示した図である。RIEでは、イオンエネルギーは基板に供給される高周波バイアス電位によって決まるが、その電位は高周波の周波数に従って常時変動している。この結果、イオンのエネルギーも
図7に示すように広い範囲に広がってしまい、特定のエネルギーのイオンのみを照射することができず、基板面内での特性分布や処理基板ごとのプロセス再現性の劣化の原因となり得る。
【0041】
一方でIBEにおいては、
図7に示すようにイオンビーム中の各イオンのエネルギーの広がりが小さく、イオンエネルギーを所定の値に制御することが可能である。従ってIBEによれば、再付着膜中の貴金属に対するエッチング選択性及び再付着膜のエッチング速度の2つの観点から求められる所望のイオンエネルギーを容易に得ることが可能である。またRIEのようにイオンエネルギーの広がりが無いため、設定したエネルギーよりも大きなイオンエネルギーを有するイオンが基板に入射する可能性も小さい。これによりRIEに比べて基板への損傷を抑制することが可能である。
【0042】
以下に、再付着膜より貴金属原子を除去する工程を含む本発明のTMR素子の製造方法について、具体的な製造工程を挙げて説明する。
【0043】
図8は本実施形態に係るTMR素子の製造工程の一部を模式的に示したものである。
【0044】
図8(a)に示すように、基板40の上にスパッタリング成膜法等を用いてシード層41、フリー層42、トンネルバリア層43、リファレンス層44、キャップ層45を成膜して磁気抵抗効果膜を形成する。尚、
図8に示すTMR素子は
図2に示すTMR素子構造を簡略化して示したものである。
【0045】
キャップ層45まで成膜した後、所定のリソグラフィ工程及びエッチング工程を経て
図8(b)に示すように素子分離を行い、TMR素子を形成する。この時、各TMR素子の側壁には、エッチング工程の際に形成された再付着膜46が存在する。再付着膜46は導体の貴金属原子を多量に含有するためショートの原因となり得る。
【0046】
次に、再付着膜46が形成されたTMR素子に対して
図8(c)に示すようにXeイオンを用いたイオンビームを照射し、再付着膜46を除去する。この際、Xeイオンを用いたイオンビームにより、再付着膜46中に含まれる貴金属原子が選択的に除去される。この結果、再付着膜46を容易に除去することが可能となる。或いは、再付着膜46に多く含まれる貴金属材料を選択的に除去することで、フリー層42とリファレンス層44とのショートを抑制することが可能となる。
【0047】
(第2の実施形態)
上述した実施形態では、Xeイオンを用いたIBE処理により再付着膜46を除去し、或いは再付着膜46から貴金属材料を選択的に除去することで、フリー層42とリファレンス層44とのショートを抑制した。これに対して、本実施形態では、Xeイオンを用いたIBE処理を行った後に、O
2ガスを用いてIBE処理を行うことで再付着膜46を絶縁体とする。本実施形態によれば、再付着膜46を化学反応により積極的に絶縁体に変化させるため、より確実にフリー層42とリファレンス層44とのショートを抑制することができる。
【0048】
図9は、本実施形態に係るTMR素子の製造工程の一部を模式的に示したものである。
【0049】
図9(a)、(b)はそれぞれ、
図8(a)、(b)に示した第1の実施形態の工程と同様の工程である。
【0050】
本実施形態では、次に、再付着膜46が形成されたTMR素子に対して
図9(c)に示すようにXeイオンを用いたイオンビームを照射する。この工程により、再付着膜46中に含まれる貴金属原子が選択的に除去される。この結果、再付着膜46中から、酸化反応が生じがたい貴金属原子が除去されるため、再付着膜46は容易に酸化反応により絶縁体とすることが可能となる。これにより、次に行われる再付着膜46を絶縁体化するための反応工程における処理時間や、或いは反応性ガスの圧力などを低減させることが可能となり、反応性ガスによるTMR素子へのダメージを低減することが可能である。
【0051】
その後、
図9(d)に示すように放電用ガスにO
2ガスを添加し、イオンビームを形成してTMR素子に照射することで再付着膜46を酸化させ、絶縁体とする。
【0052】
図9(d)に示すプロセスにおいては、O
2ガスのみをプラズマ生成室に導入し、プラズマを形成してイオンビームを照射しても良いが、再付着膜46の酸化速度の制御の観点からO
2ガスと希ガスの混合ガスを用いることが好ましい。この時、O
2ガスに混合させるガスとしてはいずれの希ガスを用いてもよい。
【0053】
図9(c)に示すXeガスを用いた工程の後の酸化工程については、基板を他のチャンバーに移動させた後に酸化工程を行っても良い。また酸化を行う際の方式としては、反応性ガスを用いたイオンビームの照射以外にも、反応性プラズマ中に基板を曝露させることで反応させてもよい。
【0054】
しかしながら、
図9(c)に示すXeガスを用いた工程と、
図9(d)に示すO
2ガスを用いた工程とは、プラズマ生成室内に導入するガスを変化させることで連続的に行われることが好ましい。例えば
図9(c)に示すIBE工程を一定時間行った後に、プラズマ生成室内にXeガスに加えてO
2ガスを導入し、続けて酸化工程を行ってもよい。このようにプラズマ生成室内のXeガスによるプラズマを維持した状態でO
2ガスの導入を行うことで処理時間の短縮化を図ることができるためである。
【0055】
(第3の実施形態)
上述した実施形態では、Xeイオンを用いたIBE処理を行った後に、O
2ガスを用いてIBE処理を行うことで再付着膜46を絶縁体とした。これに対して、本実施形態ではXeとO
2の混合ガスのプラズマを形成し、該プラズマからイオンビームを形成して再付着膜46のIBE処理を行うことで、再付着膜46からの貴金属原子の除去と、再付着膜46の絶縁体化を同時に行う。
【0056】
図10は本実施形態に係るTMR素子の製造工程の一部を模式的に示したものである。
【0057】
図10(a)、(b)はそれぞれ、
図8(a)、(b)に示した第1の実施形態の工程と同様の工程である。
【0058】
次に、再付着膜46が形成されたTMR素子に対して
図10(c)に示すようにXe及びO
2の混合ガスを用いて形成したイオンビームを照射する。この工程により、再付着膜46中に含まれる貴金属原子が選択的に除去され、併せて再付着膜46の酸化反応が進行する。
【0059】
本実施形態のように、Xe及びO
2の混合ガスをプラズマ生成室に供給してプラズマを形成した場合の、該プラズマ中の原子の挙動について説明する。
【0060】
O
2ガスのプラズマから引き出されるイオンは、酸素分子のイオン化によって生成するO
2+及び、酸素分子の解離イオン化により生成されるO
+の二種類が主として存在する。その存在量はO
2+のほうが多い。O
2ガスと希ガスを混合した場合の希ガスイオンと酸素分子イオンの存在比率は、酸素分子のイオン化断面積と希ガスのイオン化断面積の比率によって決定される。Xeのイオン化断面積は酸素のイオン化断面積の約3倍であるが、Arのイオン化断面積は約0.9倍であるため、プラズマ中の酸素イオンと希ガスイオンの存在比率は
図11に示すような差が生じる。
【0061】
図11は、混合ガス中の各種希ガスとO
2ガスの体積比を1:1とし、該混合ガスのプラズマを生成した場合の、該プラズマ中の希ガスイオンと酸素イオンの比率を模式的に示した図である。
【0062】
図11に示すように、ガス混合比率が同一の場合、Xeガスと混合した場合のプラズマ中の酸素イオン量はArガスと混合した場合の半分以下となることが分かる。
【0063】
TMR素子の側壁に形成された再付着膜46は一般に膜厚が薄く、また再付着膜46の酸化反応も精密に制御されることが望ましい。再付着膜46が過剰に酸化されると、内部のTMR素子を構成する膜にも酸化反応が生じ、素子特性を劣化させるためである。
【0064】
本実施形態のように、XeガスとO
2ガスの混合ガスを用いた場合、ArガスとO
2ガスの混合ガスやO
2ガス単独を用いた場合に比べてプラズマにおける酸素イオンの割合を低減できる。このためO
2ガス導入量に対する酸化力の比率が小さくなり、O
2ガス導入量が変動した場合にも再付着膜46の酸化処理に影響が及びにくい。結果として基板毎のTMR素子特性の均一性を改善することが可能である。
【0065】
またO
2ガスやXeガスの各々の導入量の変動やプラズマ密度の変化、ベルジャ4やグリッド9の温度変化などのIBE処理を行う場合のプロセス条件の微小な変化に対しても酸化処理を安定して行うことが可能となる。
【0066】
一方でXeガスとO
2ガスの混合ガスで処理する際に活性酸素の供給量が不足する場合は、別途供給源を設けることもできる。また、活性酸素供給量が過剰な場合は、必要最小限までO
2ガスの含有量を減らすことによって、酸素イオン照射によりもたらされるダメージを更に減少させることができる。混合ガス中のO
2ガスの含有量を減らした場合は、よりO
2ガス導入量の変動による酸化力の変化が表れ易いため、本実施形態が特に有効である。
【0067】
尚、上述した実施形態では、再付着膜46を酸化させるためにO
2ガスを用いたが、N
2OやCO
2、O
3、H
2Oなどの他の酸素含有ガスを用いてもよい。
【0068】
(第4の実施形態)
第2の実施形態では、酸素含有ガスを用いてIBE処理することで再付着膜46を酸化させて絶縁体化した。これに対して、本実施形態では、窒素含有ガスを用いてIBE処理を行うことで再付着膜46を窒化物として絶縁体化する。具体的には第2の実施形態の
図9(d)の工程において、O
2ガスの替わりに放電用ガスにN
2ガスを添加し、イオンビームを形成してTMR素子に照射することで再付着膜46を窒化させ、絶縁体とする。
【0069】
係る工程は、N
2ガスのみをプラズマ生成室に導入し、プラズマを形成してイオンビームを照射しても良いが、再付着膜46の窒化速度の制御の観点からN
2ガスと希ガスの混合ガスを用いることが好ましい。この時、N
2ガスに混合させるガスとしてはいずれの希ガスを用いてもよい。
【0070】
尚、Xeガスを用いた再付着膜46からの貴金属原子の除去工程と、N
2ガスを用いた再付着膜46の窒化工程は、プラズマ生成室内に導入するガスを変化させることで連続的に行ってもよい。例えばXeガスを用いたIBE工程を一定時間行った後に、プラズマ生成室内にXeガスに加えてN
2ガスを導入し、続けて窒化工程を行ってもよい。このようにプラズマ生成室内のXeガスによるプラズマを維持した状態でN
2ガスの導入を行うことで処理時間の短縮化を図ることができる。
【0071】
(第5の実施形態)
第4の実施形態では、Xeイオンを用いたIBE処理を行った後に、N
2ガスを用いてIBE処理を行うことで再付着膜46を絶縁体としたが、本実施形態ではXeとN
2の混合ガスのプラズマを形成し、該プラズマからイオンビームを形成して再付着膜46のIBE処理を行うことで、再付着膜46からの貴金属原子の除去と、再付着膜46の絶縁体化を同時に行う。具体的には第3の実施形態の
図10(c)の工程において、XeガスにO
2ガスを添加する替わりにN
2ガスを添加し、イオンビームを形成してTMR素子に照射することで再付着膜46から貴金属原子を選択的に除去する同時に、再付着膜46を窒化させ、絶縁体とする。
【0072】
本実施形態のように、Xe及びN
2の混合ガスをプラズマ生成室に供給してプラズマを形成した場合の、該プラズマ中の原子の挙動について説明する。
【0073】
窒素ガスプラズマから引き出されるイオンは、窒素分子のイオン化によって生成するN
2+及び、窒素分子の解離イオン化により生成されるN
+の二種類が主として存在する。その存在量はN
2+のほうが多い。窒素分子のイオン化断面積は酸素ガスのイオン化断面積とほぼ等しいため、N
2ガスと希ガスを混合した場合の希ガスイオンと窒素分子イオンの存在比率は、
図11に示すO
2ガスを混合した場合とほぼ同様の差が生じる。
【0074】
図12は、混合ガス中の各種希ガスとN
2ガスの体積比を1:1とし、該混合ガスのプラズマを生成した場合の、該プラズマ中の希ガスイオンと窒素イオンの比率を模式的に示した図である。
【0075】
図12に示すように、ガス混合比率が同一の場合、Xeガスと混合した場合のプラズマ中の窒素イオン量はArガスと混合した場合の半分以下となることが分かる。
【0076】
TMR素子の側壁に形成された再付着膜46は一般に膜厚が薄く、また再付着膜46の窒化反応も精密に制御されることが望ましい。一般に、金属の窒化反応速度は酸化反応速度よりも極端に遅く、N
2ガスのみを用いて表面窒化を行うには困難であるが、プラズマ中に存在する窒素イオン或いは原子状窒素を利用することで窒化が可能となる。
【0077】
再付着膜46の窒化速度が非常に速い場合、窒素を含むエッチングプロセスを実施すると、内部のTMR素子を構成する膜にも窒化反応が生じ、素子特性を劣化させる場合がある。
【0078】
本実施形態のように、XeガスとN
2ガスの混合ガスを用いた場合、ArガスとO
2ガスの混合ガスやN
2ガス単独を用いた場合に比べて再付着膜46の絶縁体化処理が素子内部までに及ぶことを抑制でき、結果として基板毎のTMR素子特性の均一性を改善することが可能である。
【0079】
またN
2ガスやXeガスの各々の導入量の変動やプラズマ密度の変化、ベルジャ4やグリッド9の温度変化などのIBE処理を行う場合のプロセス条件の微小な変化に対しても窒化処理を安定して行うことが可能となる。
【0080】
一方でArガスとN
2ガスの混合ガスで処理する際に活性窒素の供給量が不足する場合は、別途供給源を設けることもできる。また、活性窒素供給量が過剰な場合は、必要最小限まで窒素含有量を減らすことによって、窒素イオン照射によりもたらされるダメージを更に減少させることができる。混合ガス中のN
2ガスの含有量を減らした場合は、よりN
2ガス導入量の変動による窒化力の変化が表れ易いため、本実施形態が特に有効である。
【0081】
窒化反応を行う場合は、N
2ガス以外の窒素含有ガスをプラズマ生成室内に導入してプラズマを形成し、該プラズマから引き出したイオンビームを再付着膜46に照射することができる。実用的な速度で窒化を行うためには、窒素分子もしくはそのイオンよりも原子状窒素もしくはそのイオンを利用する。従って、N
2ガスの解離により生成される原子状窒素の量が少ない場合には、窒素を含有するガスとしてはアンモニアもしくは窒素と水素の混合ガスが好ましい。尚、窒素と共に酸素も含有するN
2O等のガスは酸化物の生成速度が窒化物の生成速度をはるかに上回るため、窒化ガスとしては好ましくない。