特許第6018222号(P6018222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018222
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】複合ポリアミド膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/56 20060101AFI20161020BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20161020BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20161020BHJP
   C08G 69/28 20060101ALI20161020BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20161020BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   B01D71/56
   B01D69/10
   B01D69/12
   C08G69/28
   B32B5/18
   B32B27/34
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-551305(P2014-551305)
(86)(22)【出願日】2013年1月3日
(65)【公表番号】特表2015-509829(P2015-509829A)
(43)【公表日】2015年4月2日
(86)【国際出願番号】US2013020072
(87)【国際公開番号】WO2013103666
(87)【国際公開日】20130711
【審査請求日】2015年12月21日
(31)【優先権主張番号】61/583,674
(32)【優先日】2012年1月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ローゼンバーグ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ディー・ジョンズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・ディー・コーブ
(72)【発明者】
【氏名】モウ・ポール
(72)【発明者】
【氏名】シャオフア・サム・チウ
(72)【発明者】
【氏名】アビシェーク・ロイ
(72)【発明者】
【氏名】チャンミン・ツァン
(72)【発明者】
【氏名】アマン・エイ・デサイ
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/069626(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/129354(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/102943(WO,A1)
【文献】 特開平11−347385(JP,A)
【文献】 米国特許第4606943(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
B32B 5/18
B32B 27/34
C08G 69/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質支持体及び薄膜ポリアミド層を備える複合ポリアミド膜を作製する方法であって、前記方法は、多官能性アミンモノマー及び多官能性ハロゲン化アシルモノマーを前記多孔質支持体の表面に塗布するステップ、及び前記モノマーを界面重合させて薄膜ポリアミド層を形成するステップを含み、前記方法は、以下のステップ:i)主題のモノマーの存在下で前記界面重合を行うステップと、及びii)前記主題のモノマーを前記薄膜ポリアミド層に塗布するステップであって、前記主題のモノマーは、式(III)
【化1】
によって表され、式中、Xは、酸素、アミノ、アミド、カルボニル、スルホニルから選択されるか、又は存在せず;nは、1から6の整数であり;Zは、ハロゲン化アシル及び無水物から選択され;及びZ’は、ハロゲン化アシル、無水物、水素及びカルボン酸から選択される、ステップと、のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
Xは酸素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記主題のモノマーは、式(V):
【化2】
によって表され、式中、nは、1から6の整数であり;Zは、ハロゲン化アシル及び無水物から選択され;及びZ’は、ハロゲン化アシル、無水物、水素及びカルボン酸から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Z及びZ’は、両方ともハロゲン化アシル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記多官能性モノマーを前記多孔質支持体の前記表面に塗布する前記ステップは、前記多官能性アミンモノマーを含む極性溶液及び前記多官能性ハロゲン化アシルモノマーを含む非極性溶液を塗布するステップを含み、前記非極性溶液は、前記主題のモノマーを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記主題のモノマーを含む溶液を前記薄膜ポリアミド層に塗布するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多官能性アミン、多官能性ハロゲン化アシル及びカルボン酸を含有するモノマーの組合せから得る複合ポリアミド膜に関する。
【背景技術】
【0002】
複合ポリアミド膜は、様々な流体分離において使用される。膜の一般的なクラスの1つは、「薄膜」ポリアミド層でコーティングした多孔質支持体を含む。薄膜層は、不混和性溶液から支持体上に連続的にコーティングした多官能性アミン(例えばm−フェニレンジアミン)モノマーと多官能性ハロゲン化アシル(例えばトリメソイルクロリド)モノマーとの界面重縮合反応によって形成することができ、例えば、Cadotteへの米国特許第4277344号を参照されたい。様々な構成成分をコーティング溶液の一方または両方に添加して膜性能を改良することができる。例えば、Cadotteへの米国特許第4259183号は、二官能ハロゲン化アシルモノマーと三官能ハロゲン化アシルモノマーとの組合せ、例えばイソフタロイルクロリド又はテレフタロイルクロリドのトリメソイルクロリドとの組合せの使用を記載している。米国特許出願公開第2009/0071903号は、アシルクロリドと芳香族環との間のエーテル連結を含めた、トリメソイルクロリドと様々な対応モノマーとの組合せを記載している。米国特許出願公開第2011/0049055号は、ハロゲン化スルホニル、スルフィニル、スルフェニル、スルフリル、ホスホリル、ホスホニル、ホスフィニル、チオホスホリル、チオホスホニル及びカルボニルから得られる部分の添加を記載している。米国特許第6521130号は、重合前に、カルボン酸(例えば脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸)又はカルボン酸エステルを一方または両方のモノマーのコーティング溶液に添加することを記載している。同様に、米国特許第6024873号、米国特許第5989426号、米国特許第5843351号及び米国特許第5576057号は、8から14(cal/cm1/2の溶解度パラメータを有する選択されるアルコール、エーテル、ケトン、エステル、ハロゲン化炭化水素、窒素含有化合物及び硫黄含有化合物をコーティング溶液のうち1つへ添加することを記載している。米国特許出願公開第2009/0107922号は、様々な「鎖キャッピング試薬(chain capping reagent)」をコーティング溶液、例えば1,3プロパンスルトン、ベンゾイルクロリド、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン等の一方または両方に添加することを記載している。米国特許第4606943号及び米国特許第6406626号は、多官能性アミン及び多官能性ハロゲン化アシルを多官能性ハロゲン化酸無水物(例えばトリメリット酸無水物酸クロリド)と共に使用して薄膜ポリアミドを形成することを記載している。米国特許出願公開第2009/0272692号、米国特許出願公開第2010/0062156号、米国特許出願公開第2011/0005997号、国際公開第2009/129354号、国際公開第2010/120326号及び国際公開第2010/120327号は、様々な多官能性ハロゲン化アシル及びそれらの対応する部分加水分解対応物の使用を記載している。Cadotteへの米国特許第4812270号は、リン酸による膜の後処理を記載している。米国特許第5582725号は、ベンゾイルクロリド等のハロゲン化アシルによる同様の後処理を記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ポリアミド複合膜の性能を改良する新たな添加剤への探索は続いている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、多官能性アミンモノマー及び多官能性ハロゲン化アシルモノマーを多孔質支持体の表面に塗布するステップ、及びモノマーを界面重合させて薄膜ポリアミド層を形成するステップを含む複合ポリアミド膜を作製する方法を含む。方法は、以下のステップ:i)芳香族部分に連結した少なくとも1つのカルボン酸基を含む主題のモノマーの存在下で界面重合を行うステップであって、芳香族部分は、ハロゲン化アシル及び無水物から選択される少なくとも1つのアミン反応性官能基と更に置換される、ステップ、及びii)主題のモノマーを薄膜ポリアミド層に塗布するステップのうち少なくとも1つを更に含む。本発明は、多数の実施形態を含む。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、複合膜又は適用例の特定の種類、構造又は形状に特に限定するものではない。例えば、本発明は、正浸透(FO)、逆浸透(RO)、ナノ濾過(NF)、限外濾過(UF)及び精密濾過(MF)流体分離を含めた様々な用途に有用な平坦シート状、管状及び中空繊維状のポリアミド膜に適用可能である。しかし、本発明は、RO及びNF分離用に設計した膜に特に有用である。RO複合膜は、事実上全ての溶解塩に対して比較的不浸透性であり、典型的には、塩化ナトリウム等の1価のイオンを有する塩の約95%超を退ける。RO複合膜は、更に、典型的には約100ダルトン超の分子量を有する無機分子及び有機分子の約95%超を退ける。NF複合膜は、RO複合膜よりも浸透性であり、典型的には、1価のイオンを有する約95%未満の塩を退ける一方で、二価のイオンを有する塩の約50%超(及び二価のイオンの種によっては、しばしば90%超)を退ける。NF複合膜は、典型的には、ナノメートル範囲の粒子、及び約200から500ダルトン超の分子量を有する有機分子も退ける。
【0006】
複合ポリアミド膜の例には、FilmTec CorporationのFT−30(登録商標)型膜、即ち、裏張り不織ウェブ(例えばPETスクリム)の底層(裏側)、約25〜125μmの典型的厚さを有する多孔質支持体の中間層、及び典型的には約1ミクロン未満、例えば0.01ミクロンから1ミクロンであるが、より一般的には約0.01から0.1μmの厚さを有する薄膜ポリアミド層を備える上層(表側)を備える平坦シート状複合膜が挙げられる。多孔質支持体は、典型的には、浸透物を本質的に無制限に通過可能にするのに十分な大きさであるが、その上に形成する薄膜ポリアミド層を重架するのを妨害するほどの大きさではない孔径を有するポリマー材料である。例えば、支持体の孔径は、好ましくは約0.001から0.5μmに及ぶ。多孔質支持体の非限定的な例には、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリフッ化ビニリデン等の様々なハロゲン化ポリマーから作製したものを含む。RO及びNF適用例に関して、多孔質支持体は、強度を与えるが、比較的高い多孔度のために、流体の流れに対する抵抗性はほとんど示さない。
【0007】
ポリアミド層は、比較的薄いために、多孔質支持体上へのコーティングの被覆率又は充填量に関しては、例えば、多孔質支持体の表面積1平方メートル当たりポリアミドが約2から5000mg、より好ましくは約50から500mg/mと記載されることが多い。ポリアミド層は、好ましくは、米国特許第4277344号及び米国特許第6878278号に記載されるように、多孔質支持体の表面上で多官能性アミンモノマーと多官能性ハロゲン化アシルモノマーとを界面重縮合反応させることによって調製される。より具体的には、ポリアミド膜層は、多孔質支持体の少なくとも1つの表面上で多官能性アミンモノマーを多官能性ハロゲン化アシルモノマー(各用語は、単一種又は複数種の使用の両方を指すことを意図する)と界面重合させることによって調製することができる。本明細書で使用する用語「ポリアミド」は、アミド連結(−C(O)NH−)が分子鎖に沿って発生するポリマーを指す。多官能性アミンモノマー及び多官能性ハロゲン化アシルモノマーは、最も一般には、溶液からのコーティング・ステップによって多孔質支持体に塗布され、多官能性アミンモノマーは、典型的には、水性系溶液又は極性溶液からコーティングされ、多官能性ハロゲン化アシルモノマーは、有機系溶液又は非極性溶液からコーティングされる。コーティング・ステップは、特定の順番に従う必要はないが、多官能性アミンモノマーは、好ましくは最初に多孔質支持体上にコーティングされ、次に多官能性ハロゲン化アシルモノマーをコーティングする。コーティングは、コーティング技法の中でも、吹付け、膜コーティング、ローラ塗布、又は浸漬槽を使用することによって達成することができる。余分な溶液は、エアナイフ、ドライヤ、オーブン等によって支持体から除去することができる。
【0008】
多官能性アミンモノマーは、少なくとも2つの第1級アミノ基又は第2級アミノ基を含むことができ、芳香族(例えばm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,3,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノアニソール及びキシリレンジアミン)であっても、脂肪族(例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン及びトリス(2−ジアミノエチル)アミン)であってもよい。好ましい多官能性アミンモノマーの例には、m−フェニレンジアミン等、2又は3つのアミノ基を有する第1級アミン、及びピペラジン等、2つのアミノ基を有する第2級脂肪族アミンを含む。1つの好ましい多官能性アミンは、m−フェニレンジアミン(mPD)である。多官能性アミンモノマーは、極性溶液として多孔質支持体に塗布することができる。極性溶液は、約0.1から約20重量パーセント、及びより好ましくは、約0.5から約6重量パーセントの多官能性アミンモノマーを含有することができる。多孔質支持体上にコーティングした後、余分な溶液は、任意選択で除去することができる。
【0009】
多官能性ハロゲン化アシルモノマーは、少なくとも2つのハロゲン化アシル基を含み、好ましくは、有機系溶媒又は非極性溶媒からコーティングされるが、多官能性ハロゲン化アシルは、(例えば十分な蒸気圧を有する多官能性ハロゲン化アシルに対して)気相から得ることもできる。多官能性ハロゲン化アシルは、特に限定されず、芳香族又は脂環式多官能性ハロゲン化アシルをその組合せと共に使用することができる。芳香族多官能性ハロゲン化アシルの非限定的な例は、トリメシン酸クロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ビフェニルジカルボン酸クロリド及びナフタレンジカルボン酸ジクロリドを含む。脂環式多官能性ハロゲン化アシルの非限定的な例は、シクロプロパントリカルボン酸クロリド、シクロブタンテトラカルボン酸クロリド、シクロペンタントリカルボン酸クロリド、シクロペンタンテトラカルボン酸クロリド、シクロヘキサントリカルボン酸クロリド、テトラヒドロフランテトラカルボン酸クロリド、シクロペンタンジカルボン酸クロリド、シクロブタンジカルボン酸クロリド、シクロヘキサンジカルボン酸クロリド及びテトラヒドロフランジカルボン酸クロリドを含む。1つの好ましい多官能性ハロゲン化アシルは、トリメソイルクロリド(TMC)である。多官能性ハロゲン化アシルは、約0.01から10重量パーセント、好ましくは0.05から3重量パーセントの範囲で非極性溶媒に溶解させることができ、連続コーティング作業の一部として加えることができる。適切な溶媒は、多官能性ハロゲン化アシルを溶解でき、水と不混和性である溶媒、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン及びFREONシリーズ等のハロゲン化炭化水素である。好ましい溶媒は、オゾン層への脅威をほとんどもたらさず、引火点及び引火性の点で特別な予防策を取らずに日常的な処理にかけるのに十分に安全であるものである。好ましい溶媒は、Exxon Chemical Companyから入手可能なISOPAR(登録商標)である。溶媒は、様々な組合せで使用することができ、共溶媒との組合せで使用してもよい。
【0010】
非極性溶液は、共溶媒、相間移動剤、可溶化剤及び錯化剤を含めた追加材料を含むことができ、個々の添加剤が複数の機能を果たすことができる。代表的な共溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン及びエチルベンゼンを含む。米国特許第6878278号、米国特許第6723241号、米国特許第6562266号及び米国特許第6337018号は、界面重合を行う前に非極性溶液と合わせることができる広範囲の代表的錯化剤の添加を記載している。そのような錯化剤のクラスは、式(I)によって表される。
【0011】
【化1】
式中、αは、従来のIUPAC周期表の(a)IIIA〜VIB族(即ちIIIA、IVA、VA、VIA、VIIA、VIIIA、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB族)及び(b)周期3〜6(即ちNa、K、Rb及びCsで始まる周期)の範囲にある元素から選択される硫黄不含結合コアである。周期表の従来のIUPACフォームのIIIAからVIB族は、「新表記法」のIUPAC周期表の3〜16族及び周期表のCASバージョンのIIIB〜VIA族に対応する。いかなる混乱も避けるために、本明細書における更なる参照は、従来のIUPAC周期表を利用し、即ち、IIIA族は、Sc、Y、La等で始まる列に対応し、VIB族は、O、S、Se、Te、Poで始まる列に対応する。具体例は、(1)以下の金属:アルミニウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス(ビスマスは典型的には好ましくない)、及びポロニウム;(2)以下の半導体:ケイ素、セレン及びゲルマニウム、並びに(3)リンを含む。特に好ましい結合コアは、Al、Si、P、As、Sb、Se及びTe並びにFe、Cr、Co、Ni、Cu、及びZn等の金属を含む。Lは、炭素含有部分、例えば芳香族基、アルカン、アルケン、−−O−−、−−S−−、−−N−−、−−H−−、−−P−−、−−O−−P−−及び−−O−−P−−O−−(それぞれは置換されていても、置換されていなくてもよい)等の連結から選択される、同じか又は異なる任意選択の化学連結基である。βは、同じか又は異なる可溶化基であり、置換されていても、置換されていなくてもよく、Lによって定義される内部連結基を含むことができる1から12個の炭素原子を含む。例は、1から6個の炭素原子を有する脂肪族基及びアレーン基、芳香族基、複素環式基及びアルキル基を含む。「x」は、0から1の整数であり、「y」は、1から5、好ましくは2から4の整数である。利用する特定の溶媒(複数可)及びハロゲン化アシル種によって異なるが、以下の錯化剤は、主題の発明において一般に有用である:リンのトリフェニル誘導体(例えばホスフィン、ホスフェート)、ビスマス、ヒ素及びアンチモン;亜リン酸トリブチル及び亜リン酸ジブチルを含むリンのアルカンオキシエステル;フェロセン及びテトラエチル鉛等の有機金属錯体、並びに鉄(II)、鉄(III)、コバルト(III)及びCr(III)のアセチルアセトネート錯体。そのような錯化剤の好ましいクラスは、式(II)によって表される。
【0012】
【化2】
式中、「P」は、リンであり、「O」は、酸素であり、R、R及びRは、炭素含有部分から独立して選択される。用語「炭素含有部分」は、置換されていなくても、置換されていてもよい(例えばアミド基、エーテル基、エステル基、スルホン基、カルボニル基、無水物、シアニド、ニトリル、イソシアナート、ウレタン、β−ヒドロキシエステル、二重結合及び三重結合等での置換)分岐及び非分岐の非環式基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、tert−ブチル等、並びに置換されていなくても、置換されていてもよい(例えば、メチル、エチル、プロピル、ヒドロキシル、アミド、エーテル、スルホン、カルボニル、エステル等での置換)環式基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、芳香族、例えば、フェニル、ヘテロ環式(例えばピリジン)等を意味することを意図する。シクロ部分は、脂肪族連結基、例えばメチル、エチル等によりリン原子に連結することができる。好ましい炭素含有部分は、非置換、分岐又は非分岐C〜C12基、より好ましくは、C〜C脂肪族基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2−エチルブチル、ペンチル、ヘキシル等を含む。更に、部分は、フェニル基を含む。上述の錯化剤は、使用する場合、好ましくは約1:5から5:1の多官能性ハロゲン化アシルモノマーとの比で多官能性ハロゲン化アシルを含有する有機系又は非極性コーティング溶液に添加され、1:1から3:1が好ましい。別の好ましい実施形態では、コーティング溶液中の錯化剤の濃度は、約0.001から2重量パーセントである。
【0013】
多官能性ハロゲン化アシルモノマー及び多官能性アミンモノマーは、互いに接触させた後、表面界面で反応して、ポリアミド層又は膜を形成する。ポリアミド「識別層(discriminating layer)」又は「薄膜層」とも呼ばれることも多いこの層は、溶媒(例えば水性原料)から溶質(例えば塩)を分離するための主要手段を複合膜に与える。
【0014】
多官能性ハロゲン化アシルモノマーと多官能性アミンモノマーとの反応時間は、1秒未満とすることができるが、接触時間は、典型的には約1から60秒に及び、その後、余分な液体は、エアナイフ、水槽(複数可)、ドライヤ等によって任意選択で除去することができる。余分な溶媒の除去は、昇温、例えば約40℃から約120℃での乾燥によって達成することができるが、周囲温度での空気乾燥を使用してもよい。
【0015】
一実施形態では、主題の方法は、多官能性アミンモノマー及び多官能性ハロゲン化アシルモノマーを多孔質支持体の表面に塗布するステップ、及びモノマーを界面重合させて薄膜ポリアミド層を形成するステップを含む。主題の方法は、以下のステップ:i)更なる「主題の」モノマーの存在下で界面重合を行うステップ、及び/又はii)界面重合が実質的に完了した後、そのようなモノマーを薄膜ポリアミド層に塗布するステップのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする。主題のモノマーは、多官能性アミンモノマー及び多官能性ハロゲン化アシルモノマーとは異なり、芳香族部分に連結した少なくとも1つのカルボン酸基を含む。芳香族部分は、少なくとも1つのアミン反応性官能基と更に置換される。用語「アミン反応性」官能基とは、界面重合中、即ち、薄膜ポリアミド層を形成する間に存在する期間及び条件の間に存在する条件下で、アミン官能基と反応性である官能基を指す。このことは、一般に標準の大気圧化下、室温における数秒以内の接触での実質的な反応を必要とする。アミン反応性官能基の代表例は、ハロゲン化アシル(例えばアシルクロリド)及び無水物を含む。主題のモノマーは、界面重合中に存在する場合、得られたポリアミド構造内に組み込まれる(即ち、主題のモノマー並びに多官能性アミンモノマー及び多官能性ハロゲン化アシルモノマーは、反応生成物を生成する)と考えられる。主題のモノマーは、ポリアミドを形成した後に塗布する場合、薄膜ポリアミド中に存在する残留アミン基と反応すると考えられる。
【0016】
前述のように、主題のモノマーは、芳香族部分を含む。適用可能な芳香族部分は、14個以下の炭素原子を好ましくは含む芳香環構造、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、アントラキノン、ビフェニル等を含む。他の代表的な芳香環構造は、ピリジン、ピラジン、フラン及びチアジアゾール等のヘテロアレーンを含む。ベンゼン環構造が好ましい。
【0017】
少なくとも1つの「連結」カルボン酸官能基(その塩を含む)及び少なくとも1つのアミン反応性官能基と置換することに加えて、芳香族部分構造は、非アミン反応性官能基(例えば薄膜ポリアミド層を形成する間に存在する期間及び条件の間に「非反応性」である)、例えば:ハロゲン、ケトン、ニトリル、スルホン、スルホニルアミド、亜リン酸エステルを含むエステル、並びに置換されていなくても、ハロゲン、ケトン、ニトリル及びエーテル基等の部分で置換されていてもよい1から12個の炭素原子を有するアルキル及びアルケニル基と任意選択で置換することができる。
【0018】
実施形態の1つのクラスでは、主題のモノマーは、式(III)によって表される。
【0019】
【化3】
式中、Xは、酸素(例えば−O−);アミノ(−N(R)−)(Rは、1から6個の炭素原子を有する水素及び炭化水素基、例えば置換又は非置換アリール、シクロアルキル、アルキルから選択されるが、好ましくは、ハロゲン及びカルボキシル基等の置換基を有する又は置換基を有さない1から3個の炭素原子を有するアルキル);炭素又は窒素のいずれかが芳香環に接続した、アミド(−C(O)N(R))−(Rは既に定義した通りである);カルボニル(−C(O)−);スルホニル(−SO−);から選択されるか、又は存在せず(例えば式IIIで表されるように);nは、1から6の整数であるか、又は全部の基はアリール基であり;Zは、ハロゲン化アシル及び無水物から選択される(好ましくはハロゲン化アシル)アミン反応性官能基であり;Z’は、水素及びカルボン酸と共にZによって記載された官能基から選択される。Z及びZ’は、環上のX置換基に対し独立してメタ位にあっても、オルト位にあってもよい。一組の実施形態では、nは1又は2である。更に別の組の実施形態では、Z及びZ’の両方は、同じ(例えば両方ともハロゲン化アシル基)である。別の組の実施形態では、Xは、1から3個の炭素原子を有するアルキル及びアルコキシ基から選択される。実施形態の非限定的な代表クラスは、以下の式によって更に表され、式中、Z’及びZは、互いに対してメタ位にある。
【0020】
【化4】
【0021】
非限定的かつ代表的な種は、2−(3,5−ビス(クロロカルボニル)フェノキシ)酢酸、3−(3,5−ビス(クロロカルボニル)フェニル)プロパン酸、2−((1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イル)オキシ)酢酸、3−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イル)プロパン酸、2−(3−(クロロカルボニル)フェノキシ)酢酸、3−(3−(クロロカルボニル)フェニル)プロパン酸、3−((3,5ビス(クロロカルボニル)フェニル)スルホニル)プロパン酸、3−((3−(クロロカルボニル)フェニル)スルホニル)プロパン酸、3−((1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イル)スルホニル)プロパン酸、3−((1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イル)アミノ)プロパン酸、3−((1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イル)(エチル)アミノ)プロパン酸、3−((3,5−ビス(クロロカルボニル)フェニル)アミノ)プロパン酸、3−((3,5−ビス(クロロカルボニル)フェニル)(エチル)アミノ)プロパン酸、4−(4−(クロロカルボニル)フェニル)−4−オキソブタン酸、4−(3,5−ビス(クロロカルボニル)フェニル)−4−オキソブタン酸、4−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イル)−4−オキソブタン酸、2−(3,5−ビス(クロロカルボニル)フェニル)酢酸、2−(2,4−ビス(クロロカルボニル)フェノキシ)酢酸、4−((3,5−ビス(クロロカルボニル)フェニル)アミノ)−4−オキソブタン酸、2−((3,5−ビス(クロロカルボニル)フェニル)アミノ)酢酸、2−(N−(3,5−ビス(クロロカルボニル)フェニル)アセトアミド)酢酸、2,2’−((3,5−ビス(クロロカルボニル)フェニルアザンジイル)二酢酸、N−[(1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフラニル)カルボニル]−グリシン、4−[[(1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフラニル)カルボニル]アミノ]−安息香酸、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−4−イソベンゾフランプロパン酸、5−[[(1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフラニル)カルボニル]アミノ]−1,3−ベンゼンジカルボン酸及び3−[(1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフラニル)スルホニル]−安息香酸を含む。
【0022】
さらに別の実施形態では、連結基は、芳香環、例えば、式(XI)に表されるフェニル環を含む。
【0023】
【化5】
式中、カルボン酸基は、フェニル環上のメタ位、パラ位又はオルト位にあることができる。
【0024】
既に説明したように、多官能性モノマーを多孔質支持体に塗布するステップは、好ましくは、多官能性アミンモノマーを含む極性溶液及び多官能性ハロゲン化アシルモノマーを含む非極性溶液を塗布するステップを伴う。溶液を塗布するステップは、好ましくは、吹付け、膜コーティング、ローラ塗布によって、又は浸漬槽の使用によりコーティングすることを伴う。一実施形態では、主題のモノマーは、塗布ステップの前、例えば、多孔質支持体上に非極性溶液をコーティングする前に非極性溶液に添加される。そのような実施形態では、非極性溶液は、好ましくは、主題のモノマーの少なくとも0.001重量/容積を含む。別の実施形態では、非極性溶液は、主題のモノマーの約0.001から0.1重量/容積を含む。更に別の実施形態では、非極性溶液は、主題のモノマー及び多官能性ハロゲン化アシルを0.0001:1から1:1、好ましくは0.001:1から0.2:1、より好ましくは0.001:1から0.01:1のモル比で含む。
【0025】
別の実施形態では、主題のモノマーは、界面重合が実質的に終了する前、間又は後のいずれかに、多孔質支持体の表面に個別に(例えば個別溶液から)塗布される。そのような実施形態では、コーティング溶液は、好ましくは前述の非極性溶液であり、好ましくは、0.5から5%重量/容積、より好ましくは1から3%重量/容積の濃度の主題のモノマーを含む。
【0026】
特定の種類のポリアミド膜に限定するものではないが、主題の発明は、RO及びNF適用例に一般に使用されるもの等の複合膜への用途に特に適しており、より具体的には、RO及びNF適用例で使用される平坦シート状複合ポリアミド膜に適している。薄膜ポリアミド層は、任意選択で、その表面の少なくとも一部分上に吸湿性ポリマーを含むことができる。そのようなポリマーは、ポリマー界面活性剤、ポリアクリル酸、ポリ酢酸ビニル、ポリアルキレンオキシド化合物、ポリ(オキサゾリン)化合物、ポリアクリルアミド、及びMickols及びNiuへの米国特許第6280853号、米国特許第7815987号、米国特許出願公開第2009/0220690号及び米国特許出願公開第2008/0185332号に一般に記載される関連する反応生成物を含む。いくつかの実施形態では、そのようなポリマーを配合及び/又は反応させることができ、共通の溶液からポリアミド膜にコーティング又は場合によっては塗布する、或いは順次塗布することができる。
【0027】
本発明の多数の実施形態を説明し、いくつかの例では、特定の実施形態、選択、範囲、構成成分又は他の特徴を「好ましい」ものとして特徴付けしてきた。「好ましい」特徴の特徴付けは、そのような特徴が本発明に必要、不可欠又は重要であると決して解釈すべきではない。
【0028】
上述の米国特許文献のそれぞれの全体の主題は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0029】
全てのサンプル膜は、パイロット規模の膜製造ラインを使用して生産した。ポリスルホン支持体をDMF中16.5wt.%溶液から成型し、その後、メタ−フェニレンジアミン(mPD)水溶液に浸漬した。次に、得られた支持体を、有機溶液の薄い、均一な層を塗布する間に反応テーブルに通して一定速度で引いた。有機溶液は、イソパラフィン酸(ISOPAR L)、トリメソイル酸クロリド(TMC)及び以下で特定する主題のモノマーを含んだ。余分な有機溶液を除去し、得られた複合膜を水洗槽及び乾燥オーブンに通した。次に、2000ppmのNaClを含む水溶液を使用して、pH8、室温及び1mPaでサンプル膜を試験した。
【0030】
サンプル複合ポリアミド膜は、3.5wt.%mPD水溶液、並びにTMC及び主題のモノマー、例えば、式(XII)によって表される2−(3,5−ビス(クロロカルボニル)フェノキシ)酢酸、又は式(XIII)によって表される3−(3,5−ビス(クロロカルボニル)フェニル)プロパン酸を含む有機溶液を使用して作製した。各サンプルを調製するのに使用した有機溶液の合計酸クロリド含量は、0.13%w/vで一定に保持した。主題のモノマーの濃度を0から0.019%w/vまで変動させた一方で、残りの酸クロリド含量は、TMCによってのみ与えられたものである。サンプル番号1〜4は、式(XII)によって表される主題のモノマーを含む膜に対応し、サンプル番号5〜8は、式(XIII)によって表される主題のモノマーを含む膜に対応する。
【0031】
【化6】
【0032】
上述のように試験した複合ポリアミド膜及び結果の概要を以下の表1に提供する。実証されるように、主題のモノマーを使用して作製した膜は、対照と比較して流量の増加を実証した。
【0033】
【表1】