特許第6018246号(P6018246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社水道技術開発機構の特許一覧

<>
  • 特許6018246-分岐管接続装置 図000002
  • 特許6018246-分岐管接続装置 図000003
  • 特許6018246-分岐管接続装置 図000004
  • 特許6018246-分岐管接続装置 図000005
  • 特許6018246-分岐管接続装置 図000006
  • 特許6018246-分岐管接続装置 図000007
  • 特許6018246-分岐管接続装置 図000008
  • 特許6018246-分岐管接続装置 図000009
  • 特許6018246-分岐管接続装置 図000010
  • 特許6018246-分岐管接続装置 図000011
  • 特許6018246-分岐管接続装置 図000012
  • 特許6018246-分岐管接続装置 図000013
  • 特許6018246-分岐管接続装置 図000014
  • 特許6018246-分岐管接続装置 図000015
  • 特許6018246-分岐管接続装置 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018246
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】分岐管接続装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 41/06 20060101AFI20161020BHJP
   F16K 43/00 20060101ALI20161020BHJP
   F16K 3/02 20060101ALI20161020BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20161020BHJP
   F16L 55/00 20060101ALI20161020BHJP
   F16K 27/04 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   F16L41/06
   F16K43/00
   F16K3/02 A
   F16J15/10 L
   F16L55/00 C
   F16K27/04
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-56416(P2015-56416)
(22)【出願日】2015年3月19日
(62)【分割の表示】特願2011-51662(P2011-51662)の分割
【原出願日】2011年3月9日
(65)【公開番号】特開2015-155755(P2015-155755A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2015年3月20日
(31)【優先権主張番号】特願2010-230818(P2010-230818)
(32)【優先日】2010年10月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀川 剛
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−309474(JP,A)
【文献】 特公昭38−009828(JP,B1)
【文献】 実公昭38−006066(JP,Y1)
【文献】 実公昭41−022364(JP,Y1)
【文献】 実開昭60−099364(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 41/06
F16J 15/10
F16K 3/02
F16K 27/04
F16K 43/00
F16L 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工後の管路の一部を構成する弁箱と、前記弁箱内の流路を遮断する閉位置と該流路を開放する開位置との間で変位する弁体と、前記弁体の変位を操作可能な弁軸とを有し、前記弁体が、開位置にて管軸方向の片側から前記弁軸に対向する板状体により形成されているとともに、閉位置にある前記弁体と前記弁箱との間を、管軸方向に圧縮されるシール材により密封するように構成してある仕切弁と、
流体管を取り囲んで装着され、前記流体管の周方向で複数に分割されるとともに、前記仕切弁の端部を分割面に挟み込んで接続される分岐ケースとを備え、
前記弁箱は、前記分岐ケースの分割面に挟み込まれる一方の端部と、分岐管が接続される他方の端部とを有し、その両端部の間が連通可能な管状体により形成され、
前記弁軸を内蔵する弁蓋が前記弁箱と別体で設けられ、前記弁箱の上方には挿通口が貫通形成されており、この挿通口を通じて前記弁体が前記弁箱の内外を出入りし、前記弁蓋は前記挿通口を覆うようにして前記弁箱に立設されており、
前記弁体は、金属製で円板状をなすボディと、前記ボディから上方に突出して前記弁軸に連結されるヘッドと、前記ボディに接着された薄膜状の前記シール材とを有し、前記ボディの厚みが前記弁軸の太さよりも小さく、前記シール材の厚みが前記ボディの厚みよりも小さく、前記シール材が前記ボディの分岐管側に設けられている分岐管接続装置。
【請求項2】
前記弁体が前記弁軸に対して前記分岐ケース寄りに配置されている請求項1に記載の分岐管接続装置。
【請求項3】
前記仕切弁の外周面に位置決め突起が形成され、前記位置決め突起が、前記分岐ケースに形成した延出部の凹部に嵌め込まれることによって前記仕切弁が周方向に位置決めされるように構成されている請求項1又は2に記載の分岐管接続装置。
【請求項4】
前記弁箱に設けられた箱状部に前記弁蓋の下端部を差し込み可能に構成されており、前記箱状部と前記弁蓋との隙間が、前記弁蓋の下端部に取り付けられたシール材により密封され、前記弁箱と前記弁蓋との接合部位に形成された孔に挿入軸が挿入された状態で、前記弁蓋が前記挿入軸を介して前記弁箱と係合しており、
前記挿入軸が挿入される孔が、前記弁軸が配置された前記箱状部の中央部分よりも厚みの小さい前記箱状部の側方部分に形成されている請求項1〜3いずれか1項に記載の分岐管接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁箱内の流路を開閉する弁体を内蔵した仕切弁を介して流体管に分岐管を接続可能にする分岐管接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水道管などの既設流体管の途中に分岐管を設ける分岐管接続工事では、管路を上流側で止水することなく不断水の状態を維持したまま、流体管の周壁を穿孔し、分岐管を接続する工法が採用されている。かかる工法では、弁軸の操作に応じて弁箱内の流路を開閉自在に変位する弁体を内蔵した仕切弁と、流体管の穿孔箇所を取り囲んで装着される分岐ケースとを備えた分岐管接続装置が用いられ、その分岐ケースに仕切弁を介在させて分岐管が接続される。
【0003】
本出願人による特許文献1には、図15に示すような、上下二つ割りの分岐ケース91と、その分岐ケース91の分割面に端部を挟み込んで接続される仕切弁92とを備えた分岐管接続装置が開示されている。この装置では、分岐ケース91の分割面90が略水平方向に位置し、その分割面90の締結により分岐ケース91と仕切弁92とが接続されるため、地盤変動などにより管軸方向の大負荷が作用したとしても、締結具98のボルトが伸長する方向に負荷が作用しにくく、分岐ケース91の開口を抑えて流体の漏出を効果的に防止できる。
【0004】
施工の際には、図15のように仕切弁92に穿孔装置96を接続し、弁体93を上昇させてから、カッター97を前進させて水道管Kの周壁を穿孔する。穿孔が完了したら、カッター97を後退させ、弁体93を下降して仕切弁92の内部を遮断する。続いて、仕切弁92から穿孔装置96を取り外し、代わりに分岐管(不図示)を接続する。その後、弁体93を上昇させて仕切弁92の内部を開放すれば、水道管Kから分岐管へと水が流れる。かかる工法によれば、断水することなく既設の水道管に分岐管を接続できるため、利便性に優れる。
【0005】
分岐管接続装置に用いられる上記のようなソフトシール仕切弁92では、弁箱94の内周面に弁体93を強く押し付けて径方向に密着させることにより、弁体93と弁箱94との間が密封される。弁体93は、箱状をなすボディ93aの全面に肉厚のシールゴムをライニングして形成され、弁体93の昇降を操作するための弁軸95が、ボディ93aの中心に取り付けられている。かかる構成に基づき、仕切弁92では、弁体93の厚みT9が大きくなり、それに応じて面間寸法L9を大きく確保する必要があった。
【0006】
このように仕切弁の面間寸法が大きいと、穿孔ストローク(穿孔時におけるカッターの移動距離)が長くなるため、穿孔装置の大型化を招来し、場合によっては穿孔装置を特別にあつらえる必要がある。加えて、面間寸法が大きい仕切弁は、大型で重量物になるために取り扱いが煩雑化し、作業効率の低下やコストアップの要因にもなる。一方、単に弁体の厚みを低減しただけでは、弁箱の内周面に押し当たる弁体の面積が小さくなり、仕切弁を遮断する際のトルクが増大するため、シール機能が損なわれる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−309474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シール機能を損なうことなく弁体の厚みを低減しうる仕切弁を備えた分岐管接続装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係る分岐管接続装置が備える仕切弁は、管路の一部を構成する弁箱と、前記弁箱内の流路を遮断する閉位置と該流路を開放する開位置との間で変位する弁体と、前記弁体の変位を操作可能な弁軸とを有する仕切弁において、前記弁体が、開位置にて管軸方向の片側から前記弁軸に対向する板状体により形成されているとともに、閉位置にある前記弁体と前記弁箱との間を、管軸方向に圧縮されるシール材により密封するように構成してあるものである。
【0010】
この仕切弁では、弁体が管軸方向の片側から弁軸に対向する板状体によって形成されているため、従来よりも弁体の厚みを大幅に低減することができ、延いては面間寸法の短縮に寄与しうる。それでいて、閉位置にある弁体と弁箱との間を、管軸方向に圧縮されるシール材により密封するように構成してあるため、弁箱の内周面に弁体を強く押し付けて径方向に密着させる必要がなく、弁体の厚みを低減しながらもシール機能を適切に確保することができる。
【0011】
この仕切弁では、前記弁箱の内周面に、閉位置にある前記弁体の周縁部が入り込む周溝が形成されており、その周溝の溝壁面に前記シール材が管軸方向から押し当たって圧縮されるものが好ましい。かかる構成によれば、閉位置に配置した弁体の姿勢が安定するとともに、周溝の溝壁面を利用してシール材を圧縮できるため、仕切弁における流量を損なうことなく、シール機能を適切に確保することができる。
【0012】
この仕切弁では、前記弁箱の内周面に、閉位置にある前記弁体を管軸方向に押圧して前記シール材の圧縮を促す突起が設けられているものが好ましい。かかる構成であれば、閉位置にある弁体を突起で押圧してシール材の圧縮を促すことにより、シール材による密封状態を円滑に発現して、シール機能を良好に向上することができる。
【0013】
上記において、前記弁体の前記突起と対向する箇所に傾斜面を有する切欠きが形成されており、前記弁体の閉位置への移行に伴って、前記切欠きに入り込んだ前記突起が前記傾斜面に摺接して前記弁体を徐々に押圧するように構成されているものが好ましい。かかる構成によれば、弁体を閉位置へ移行するに際して、シール材の引きずりを抑えて少しずつ圧縮できるため、シール材の損傷やトルクの増大を防いで、シール機能をより良好に発揮することができる。
【0014】
この仕切弁では、前記シール材が、管軸方向に隆起して前記弁体の周縁部に沿って延びるリップ部を有し、前記リップ部が、外側リップと、前記外側リップの内周側に凹溝を介して形成され、前記外側リップよりも隆起高さの小さい内側リップとからなるものが好ましい。かかる構成では、弁体を閉位置へ移行したときに、外側リップが凹溝に入り込むようにして内周側に倒れ変形するため、シール材の圧縮作用が高められる。また、その倒れ変形した外側リップを内側リップが支えることによって、シール材の切れや剥がれを防止することができる。
【0015】
この仕切弁では、前記弁軸を内蔵する弁蓋が前記弁箱と別体で設けられ、前記弁箱に設けられた箱状部に前記弁蓋の下端部を差し込み可能に構成されており、前記箱状部と前記弁蓋との隙間が、前記弁蓋の下端部に形成された窪みに嵌め込んだシール材により密封されているものでもよい。かかる構成によれば、弁箱に弁蓋を接合するに際し、シール材が外れるという不具合の発生を回避できる。
【0016】
また、本発明に係る分岐管接続装置は、上記した仕切弁と、流体管を取り囲んで装着され、前記流体管の周方向で複数に分割されるとともに、前記仕切弁の端部を分割面に挟み込んで接続される分岐ケースとを備えたものである。この分岐管接続装置では、上記の如き弁体の厚みを低減しうる仕切弁を備えることに基づき、仕切弁の面間寸法の短縮が可能となるため、穿孔ストロークを短くできて有益である。それでいて、弁箱の内周面に弁体を強く押し付けて径方向に密着させる必要がなく、弁体の厚みを低減しながらもシール機能を適切に確保することができる。
【0017】
本発明の分岐管接続装置では、前記弁体が前記弁軸に対して前記分岐ケース寄りに配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、仕切弁に接続される穿孔装置の後退位置にあるカッターに対して、閉位置にある弁体を管軸方向に遠ざけて干渉を回避できるとともに、分岐ケースから弁軸を管軸方向に遠ざけることができるため、仕切弁の面間寸法を巧みに短縮でき、延いては穿孔ストロークを有効に短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る分岐管接続装置の一例を示す縦断面図
図2】閉位置にある弁体を示す要部断面図
図3】仕切弁の側面図とロックピンの平面図
図4】弁蓋の正面図
図5】弁箱と弁蓋との接合部位を示す仕切弁の縦断面図
図6】弁箱と弁蓋との接合部位の変形例を示す縦断面図
図7図6のシール材の圧縮前の状態を示す図
図8】弁体の(a)正面図、(b)背面図、及び、(c)縦断面図
図9】弁体の閉位置への(a)移行完了直前と(b)移行完了の状態を示す断面図
図10】切欠きに入り込んだ突起を示す要部断面図
図11】開位置へ移行するときの弁体を示す要部断面図
図12】仕切弁に穿孔装置を接続した状態を示す図
図13】本発明の別実施形態に係る仕切弁を示す要部断面図
図14図13に示した弁体の正面図
図15】上記特許文献1に開示されている分岐管接続装置を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る分岐管接続装置の実施形態について、既設の水道管(流体管の一例)に分岐管を接続する場合を例に挙げ、図面を参照しながら説明する。図1に示した分岐管接続装置は、既設管である水道管Kを取り囲んで装着され、その水道管Kの周方向で複数に分割された分岐ケース1と、分岐ケース1の分割面10に端部を挟み込んで接続された仕切弁2とを備える。
【0020】
仕切弁2は、管路の一部を構成する弁箱21と、弁箱21内の流路を遮断する閉位置と該流路を開放する開位置との間で変位する弁体22と、弁体22の変位を操作可能な弁軸23とを有する。弁箱21は、両端部の間が連通可能な管状体により形成され、水道管Kから分岐して設けられる管路の一部を構成する。本実施形態の仕切弁2では、図1右側の分岐管側端部にフランジを形成しているが、端部の形状は特に制約されず、例えば分岐管の挿口端部を接続可能な受口形状にしても構わない。
【0021】
弁箱21の上方には挿通口24が貫通形成されており、この挿通口24を通じて弁体22が弁箱21の内外を出入りできる。図1では、弁体22が上昇して開位置にある状態を示しており、この弁体22が下降すると、図2に示した閉位置に移行して弁箱21内の流路を遮断する。弁蓋25は、挿通口24を覆うようにして弁箱21に立設されており、頂部23aを突出させた状態で弁軸23を内蔵するとともに、開位置にある弁体22を収容する。
【0022】
本実施形態では、弁蓋25が弁箱21と別体で設けられてあり、図3に示すように、一組のロックピン4を用いて弁箱21と弁蓋25とを接合する例を示す。図4は、弁蓋25の正面図であり、図5は、弁箱21と弁蓋25との接合部位を示す仕切弁2の縦断面図である。図1,2の断面は図4のA−A矢視に対応し、図5の断面は図4のB−B矢視に対応している。弁箱21の外周面には上方が開口した箱状部21aが設けられ、そこに弁蓋25の下端部を差し込んでいる。
【0023】
ロックピン4は、一対の挿入軸4aを備えたU字状をなし、弁箱21と弁蓋25との接合部位に形成された孔に挿入されている(図3で描かれない反対側においても同様)。この孔は、箱状部21aの内壁に形成された凹溝21bと、弁蓋25の下端部に形成された凹溝25aとが、互いに向かい合うことにより構成される。ロックピン4を挿入した状態では、弁蓋25が挿入軸4aを介して弁箱21と係合し、弁箱21と弁蓋25とが堅固に接合される。
【0024】
シール材21cは、箱状部21aの内壁に形成された窪みに嵌め込まれており、弁箱21と弁蓋25との間で圧縮されて、それらの隙間を密封している。かかる構成によれば、弁箱21に弁蓋25を接合する際に、シール材21cを取り付けた箱状部21aに弁蓋25の下端部を差し込んで、ロックピン4を差し込むだけでよいため、ボルトとナットで締結する構造(図15参照)に比べて、弁蓋25の着脱時の作業性を格段に向上できる。
【0025】
図6に示す変形例では、弁蓋25の下端部に形成された窪みにシール材20が嵌め込まれている。図5の構造では、弁箱21に弁蓋25を接合する際に、シール材21cが弁蓋25に押されて窪みから外れるという不具合が懸念されるのに対し、図6の構造であれば、シール材20を取り付けた弁蓋25の下端部を箱状部21aに差し込むことになるため、そのような不具合の発生を回避することができる。
【0026】
弁蓋25の下端部に取り付けられるシール材20は、圧縮される前の状態において、図7に例示するような形状をしている。これらシール材20の先端部20aは、断面略円形状をなして膨出形成されている。弁箱21に弁蓋25を接合した際には、箱状部21aの内壁に設けられている傾斜面21dに、シール材20の先端部20aが押し当たって十分に圧縮され、密封状態が的確に得られるように構成されている。
【0027】
弁体22は、開位置にて管軸方向(図1における左右方向)の片側から弁軸23に対向する板状体により形成され、詳しくは図8に示す通りである。かかる構造により、従来のソフトシール仕切弁が備える弁体と比べて、弁体22の厚みを大幅に低減できており、仕切弁2の面間寸法Lが短縮されたものとなっている。本例のように分岐管側端部にフランジを形成した場合、面間寸法Lは、管径に関わらず、例えば230mm以下に設定できる。本実施形態では、弁体22の厚みT(後述するボディ22aの厚み)が弁軸23の太さ(ネジ径)よりも小さく、シール材3の厚みtが弁体22の厚みTよりも小さい。
【0028】
また、仕切弁2は、分岐管側となる正面に薄膜状のシール材3を有しており、閉位置にある弁体22と弁箱21との間を、管軸方向に圧縮されるシール材3により密封するように構成してある。具体的には、弁箱21の内周面に形成された周溝26に、閉位置にある弁体22の周縁部が入り込み、その周溝26の溝壁面26aにシール材3が管軸方向から押し当たって圧縮される。このため、弁箱21の内周面に弁体22を強く押し付けて径方向に密着させる必要がなく、弁体22の厚みを低減しながらもシール機能を適切に確保できる。
【0029】
この仕切弁2では、弁体22を径方向に密着させる必要がないことから、水道管Kの穿孔時に発生した切粉が周溝26の溝底に溜まっていても、それによってシール機能が阻害されることがない。尚、本実施形態の弁箱21では、周溝26や弁体22に切粉が付着しないように、周溝26よりも既設管側に窪み36を形成し、そこに切粉が溜まるように対策している。窪み36の周辺にある切粉は、ドレン37を通じて外部に排出できる。
【0030】
図8のように、弁体22は、円板状のボディ22aと、そのボディ22aから上方に突出したヘッド22bと、ボディ22aの正面に接着された薄膜状のシール材3とを有する。ボディ22aは、止水に適した剛性の高い材料、例えばスチールなどの金属により形成され、シール材3は、ゴムなどの弾性材料により形成される。本実施形態では、シール材3がボディ22aの分岐管側に設けられているため、閉位置にある仕切弁2に水道管Kからの水圧が作用すると、シール材3の管軸方向への圧縮を促して密封性能が高められる。
【0031】
本実施形態のシール材3は円形に形成されているが、弁体22と弁箱21との間の密封に実質的に寄与するのは、弁体22の周縁部に沿って環状に延びた部分である。シール材3は、その環状の部分に、管軸方向に隆起して弁体22の周縁部に沿って延びるリップ部30を有している。リップ部30は、外側リップ31と、外側リップ31の内周側に凹溝33を介して形成され、外側リップ31よりも隆起高さの小さい内側リップ32とからなる。リップ部30は、溝壁面26aに対向して、後述するような圧縮作用を発現する。
【0032】
弁体22のヘッド22bには弁軸23が連結され、その弁軸23に対して、開位置にある弁体22が図1左側となる既設管側から対向する。弁軸23は、弁体22の変位方向に沿って延在する雄ねじ部材であり、この弁軸23に螺合した雌ねじこま27が、管軸方向に遊びをもった状態でヘッド22bに嵌め込まれている。頂部23aに取り付けたハンドルなどの治具(不図示)を介して弁軸23を回転操作すると、雌ねじこま27が上下動し、それに連動して弁体22が昇降する。
【0033】
既述のように、この仕切弁2では、弁体22の周縁部が周溝26に入り込むことで、シール材3による密封状態が得られる。このとき、周溝26の溝幅を弁体22の厚みTよりも適度に大きく設定しておくことで、弁体22の周縁部が周溝26に円滑に入り込み、仕切弁2を遮断する際のトルクが軽減される。しかし、その反面、シール材3が管軸方向に圧縮されにくくなるため、この仕切弁2では、図9に示すように弁箱21の内周面に突起5を設けている。
【0034】
図9は、図2の右方向から仕切弁2を見た図であり、周溝26の中央で弁箱21及び弁体22を切断した断面を描いている。周溝26の溝壁面26bには、複数の突起5が周方向に間隔を置いて設けられており、これらが弁体22の周縁部の背面を管軸方向に(本実施形態では分岐管側に)押圧して、シール材3の圧縮を促すように構成されている。かかる構成によれば、シール材3による密封状態を円滑に発現して、シール機能を良好に向上することができる。
【0035】
また、弁体22の周縁部が周溝26に入り始めてから閉位置への移行が完了するまで、弁体22は幾分か下降することになるが、この間にシール材3が溝壁面26aに押圧されると、シール材3が引きずられて損傷したり、トルクが増大したりする恐れがある。そこで、この仕切弁2では、弁箱21の内周面に突起5を設けるだけでなく、弁体22の突起5と対向する箇所に、傾斜面を有する切欠き6を形成している。切欠き6には、弁体22の閉位置への移行に伴って、突起5が入り込むようになっている。
【0036】
弁体22が閉位置へ移行するに際し、図9(a)から図9(b)の状態に至る過程では、図10に示すように、切欠き6に入り込んだ突起5が傾斜面に擦れるように接触する。このように、突起5が切欠き6の傾斜面に摺接して弁体22を徐々に押圧することで、シール材3の引きずりを抑えて少しずつ圧縮できるため、シール材3の損傷やトルクの増大を防止できる。本実施形態では、閉位置への移行が完了した図9(b)の状態で、切欠き6の上側に突起5が位置し、切欠き6から脱した突起5が弁体22を安定して押圧する。
【0037】
弁体22の閉位置への移行が完了すると、シール材3によって弁体22と弁箱21との間が密封される。このとき、溝壁面26aにはリップ部30が押し当たり、図8(c)のように、外側リップ31が凹溝33に入り込むようにして内周側に倒れ変形し、シール材3の圧縮作用が高められる。また、その倒れ変形した外側リップ31を内側リップ32で支えることで、シール材3の切れや剥がれを防止できる。更に、図11のようにリップ部30が挿通口24を通過する際には、外側リップ31よりも先に内側リップ32が弁箱21の内周面に当接しうるため、衝撃を和らげてシール材3の切れを防止できる。
【0038】
これに対し、内側リップ32を形成していない場合には、倒れ変形した外側リップ31を支えられないことでリップ部30が全体的に内周側に引っ張られ、シール材3がボディ22aから剥がれてしまう懸念がある。また、リップ部30が凹溝33を具備せずに単なる山状に隆起している場合には、上述した圧縮作用の向上が得られないうえ、付け根から切れてしまう懸念がある。凹溝33は、本実施形態のようなU字状溝であることが好ましく、それによって外側リップ31が内周側に倒れやすくなる。
【0039】
図8(b)に示すように、弁体22の背面には、上側と左右両側の三箇所に、管軸方向に突出したガイド部7が形成されている。ガイド部7の外面は、弁体22の変位方向に沿って傾斜しており、弁箱21におけるガイド部7との接触部位には、ガイド部7の外面と合致した傾斜を持つ傾斜面28が形成されている。これによって、弁体22を閉位置に移行する際には、ガイド部7と傾斜面28との接触により弁体22を案内して適切に位置決めできる。
【0040】
本実施形態では、仕切弁2の外周面に位置決め突起29を形成しており、これらは分岐ケース1との接続に利用される。分岐ケース1は、水道管Kに水密に装着可能な分割体1A,1Bにより構成され、図1にて上下2つ割となる割T字管形状をしている。分岐ケース1の分割面10では、分割体1A,1Bのフランジ同士が、ボルトとナットで構成した締結具11により締結される。この締結具11の締め付けにより、パッキン12,13を介して分割面10が水密に閉じられ、分岐ケース1に仕切弁2が接続される。
【0041】
分岐ケース1の分割面10が略水平方向に位置するため、地盤変動や経年変化などによる大負荷が発生しても、締結具11のボルトが伸長する方向に負荷が作用しにくく、分割面10の不意の開口を抑えて漏水を効果的に防止できる。仕切弁2の位置決め突起29は、分岐ケース1に形成した延出部15の凹部に嵌め込まれ、それによって仕切弁2が周方向に位置決めされる。かかる分岐ケースとしては、上記特許文献1のほか、本出願人による特開2009−127686号公報や特開2009−299826号公報に開示される構造も適用可能である。
【0042】
この分岐管接続装置を用いて既設の水道管Kに分岐管を接続する手順の一例について、簡単に説明する。まず、図1に示すように、分岐ケース1を水道管Kに外嵌して装着し、分割面10に仕切弁2の端部を挟み込んで水密に接続する。次に、図12に示すように、仕切弁2に穿孔装置8を接続し、カッター80で水道管Kの周壁を穿孔する。穿孔が完了したら、カッター80を後退させて、図2のように弁体22を閉位置に移行させる。
【0043】
本発明によれば、仕切弁2の面間寸法が抑えられるため、水道管Kの周壁を穿孔するに際してカッター80の移動ストロークが短くて済み、小型の穿孔装置を利用可能となる。本例のように分岐管側端部にフランジを形成した場合であれば、該フランジから水道管Kの周壁までの管軸方向距離は、仕切弁2の管径に関わらず、例えば240mm以下に設定することが可能である。
【0044】
本実施形態では、弁体22が弁軸23に対して分岐ケース寄りに配置されていることから、後退位置にあるカッター80に対して、閉位置にある弁体22を管軸方向に遠ざけて干渉を回避できるとともに、分岐ケース1から弁軸23を管軸方向に遠ざけることができるため、仕切弁2の面間寸法を巧みに短縮して、穿孔ストロークを有効に短くできる。仕切弁2から穿孔装置8を取り外して、代わりに分岐管(不図示)を接続し、弁体22を開位置に変位させれば、水道管Kからの分水が行われ、分岐管を利用できる状態となる。
【0045】
〔別実施の形態〕
(1)前述の実施形態では、分岐管側となる弁体の正面にシール材を設け、既設管側となる弁体の背面に切欠きやガイド部を設けた例を示したが、本発明では、図13のように、それらを逆に配置しても構わない。図13に示した弁体22では、中央のガイド部7が弁軸23に干渉することを防ぐため、図14に示すように中央のガイド部7に縦溝72を設けている。尚、錆止めなどを目的として、弁体の両面にゴムライニングを施しても構わない。
【0046】
(2)前述の実施形態では、開位置にある弁体が既設管側から弁軸に対向する例を示したが、これとは逆に、分岐管側から対向するように配置しても構わない。但し、既述したように、仕切弁の面間寸法を抑えるうえでは、前述の実施形態で示した位置関係にすることが有益である。
【0047】
(3)前述の実施形態では、弁体の周縁部を周方向に延びる周溝に入り込ませてシール材を圧縮する例を示したが、本発明では、例えば、閉位置にある弁体の周縁部に対向するように周方向に延びた鍔状突起を弁箱の内周面に形成し、その鍔状突起を利用してシール材を管軸方向に圧縮してもよい。また、一対の鍔状突起の間に弁体の周縁部を入り込ませるようにすれば、上述したような突起や切欠き、ガイド構造の採用も可能である。
【0048】
(4)流体管は、水道管に限定されるものではなく、各種の液体や気体が流れる流体管であってよい。
【符号の説明】
【0049】
1 分岐ケース
2 仕切弁
3 シール材
5 突起
6 切欠き
7 ガイド部
8 穿孔装置
10 分割面
21 弁箱
21a 箱状部
21ax 箱状部の中央部分
21ay 箱状部の側方部分
22 弁体
23 弁軸
25 弁蓋
26 周溝
26a 溝壁面
30 リップ部
31 外側リップ
32 内側リップ
33 凹溝
K 水道管(流体管の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15