特許第6018247号(P6018247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018247
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】自動車後部
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20161020BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20161020BHJP
   B60K 1/04 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   B62D25/20 J
   B62D25/08 K
   B60K1/04 Z
   B62D25/20 K
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-77602(P2015-77602)
(22)【出願日】2015年4月6日
(65)【公開番号】特開2015-202861(P2015-202861A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2015年4月7日
(31)【優先権主張番号】10 2014 105 204.8
(32)【優先日】2014年4月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルフリード エバリー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルト クラムザー
(72)【発明者】
【氏名】フランツ−ルドルフ ヴィールシェム
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド ヘクマン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ハーグ
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−018430(JP,A)
【文献】 特開2003−154907(JP,A)
【文献】 特開2005−119358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
B60K 1/00− 6/12
B60K 7/00− 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の自動車後部であって、
前記自動車の荷重支持構造を形成するための左側長手方向ビーム(12)と、
前記自動車の荷重支持構造を形成するための右側長手方向ビーム(14)と、
前記左側長手方向ビーム(12)と前記右側長手方向ビーム(14)との間に配置された、トラクションバッテリのバッテリセルを収納するための収納ハウジング(18)とを備え、前記収納ハウジング(18)が、実質的に前方進行方向に延びる左側壁(22)と、実質的に前方進行方向に延びる右側壁(24)と、前記右側壁(24)と前記左側壁(22)との間で実質的に前記前方進行方向に延びる少なくとも1つの中央壁(25)とを有し、
自動車後部がさらに、衝突用部材(26)を備え、前記衝突用部材(26)が、前記収納ハウジング(18)の高さで、前記左側長手方向ビーム(12)および前記右側長手方向ビーム(14)に接続され、後面衝突時に衝突エネルギーを吸収し、
前記衝突用部材(26)が、左側の所定の座屈部(36)と、右側の所定の座屈部(38)とを有し、前記左側の所定の座屈部(36)と前記右側の所定の座屈部(38)とが、後面衝突時に前記衝突用部材(26)が前記収納ハウジング(18)に向かって座屈できるようにし、後面衝突時に座屈される前記衝突用部材(26)が、前記中央壁(25)の長手方向に沿って前記収納ハウジング(18)に当たるように形成してあり、
変形要素(46)が、前記中央壁(25)の前記長手方向に沿って前記中央壁(25)と前記衝突用部材(26)との間に提供され、
前記変形要素(46)が、前記衝突用部材(26)に向いた力導入表面領域AEと、前記中央壁(25)に向いた力放出表面領域AAとを有し、1.0<AE/AAである、ことを特徴とする自動車後部。
【請求項2】
前記左側の所定の座屈部(36)と前記右側の所定の座屈部(38)とが、横方向で逆向きに実質的に等しい距離だけ前記中央壁(25)から水平横方向に離隔されるように提供されることを特徴とする請求項1に記載の自動車後部。
【請求項3】
前記衝突用部材(26)および/または前記変形要素(46)が、複数のチャンバを有するチャンバプロファイルの形態であり、前記チャンバが、実質的に垂直に延びるチャネルによって形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車後部。
【請求項4】
前記衝突用部材(26)および/または前記変形要素(46)が、アルミニウム押出形材の形態であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動車後部。
【請求項5】
前記衝突用部材(26)が、前記前方進行方向とは逆向きに弓形のプロファイルを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動車後部。
【請求項6】
前記左側壁(22)と前記右側壁(24)とが、後壁(20)によって互いに接続され、前記後壁(20)を前記支持構造に接続するための左側保護ブラケット(48)が、少なくとも1つの変形可能な突起(54)によって、前記後壁(20)の左端側部に提供される少なくとも1つの中空チャンバ内に挿入され、および/または前記後壁(20)を前記支持構造に接続するための右側保護ブラケット(50)が、少なくとも1つの変形可能な突起(54)によって、前記後壁(20)の右端側部に提供される少なくとも1つの中空チャンバ内に挿入され、前記左側保護ブラケット(48)の前記突起(54)が、前記左側壁(22)の前記長手方向に沿って前記左側壁(22)と前記衝突用部材(26)との間に配置され、および/または前記右側保護ブラケット(50)の前記突起(54)が、前記右側壁(24)の前記長手方向に沿って前記右側壁(24)と前記衝突用部材(26)との間に配置されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動車後部。
【請求項7】
前記突起(54)が、実質的にU字形の構成である屈曲タブによって形成されることを特徴とする請求項6に記載の自動車後部。
【請求項8】
前記収納ハウジング(18)が、自動車ボディによって形成される収納凹部(16)内に少なくとも部分的に挿入されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の自動車後部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の自動車後部であって、物品、特に自動車の純電動用のトラクションバッテリを自動車の後部領域内、例えばトランク内に配置することができる自動車後部に関する。
【背景技術】
【0002】
(特許文献1)に、進行方向に延びる自動車の荷重支持構造の長手方向ビームに垂直スロットが設けられた自動車後部が開示されている。これらのスロットによって、それぞれの長手方向ビームに意図的な材料脆弱部が形成され、この材料脆弱部は、自動車後部に対する後方からの衝突(「後面衝突」)による追突事故の際に、長手方向ビームが、進行方向に対して横方向に過度に隆起せずに所定の様式で潰れることを可能にする。
【0003】
さらに、(特許文献2)に、自動車の後部領域内に配置された自動車バッテリを備える自動車後部が開示されている。後面衝突時に自動車バッテリを保護するために、バンパと自動車バッテリとの間に、衝突エネルギーを吸収するための衝突フレームが提供される。衝突フレームは、後部側に後部アーチを有する。後部アーチは、長手方向に延びる変形可能な構造を介して台形の前部アーチに接続される。前部アーチは、自動車バッテリに平行に横方向に延びる部分を有する。この部分は、自動車の長手方向に対して斜めに延びる接続部片を介して自動車の長手方向ビームに接続される。したがって、前部アーチは自動車バッテリの一部を取り囲む。
【0004】
構造面での経費をほとんど伴わずに、自動車内の脆弱物品を損壊から保護することが常に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0001228 A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2013 204 757 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、特に後面衝突時に、構造面での経費をほとんど伴わずに、自動車内の壊れやすい物品、特にトラクションバッテリを損壊から保護することを可能にする手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を有する自動車後部によって達成される。本発明の好ましい改良形態は、従属請求項に提示され、従属請求項はそれぞれ、個別に、または組み合わせて本発明の一態様を成すことができる。
【0008】
本発明によれば、自動車用の自動車後部であって、自動車の荷重支持構造を形成するための左側長手方向ビームと、自動車の荷重支持構造を形成するための右側長手方向ビームと、左側長手方向ビームと右側長手方向ビームとの間に配置された、特にトラクションバッテリのバッテリセルを収納するための収納ハウジングとを備え、収納ハウジングが、実質的に前方進行方向に延びる左側壁と、実質的に前方進行方向に延びる右側壁と、右側壁と左側壁との間で実質的に前方進行方向に延びる少なくとも1つの中央壁とを有し、自動車後部がさらに、衝突用部材を備え、衝突用部材が、収納ハウジングの高さで、左側長手方向ビームおよび右側長手方向ビームに接続され、後面衝突時に衝突エネルギーを吸収し、衝突用部材が、左側の所定の座屈部と、右側の所定の座屈部とを有し、左側の所定の座屈部と右側の所定の座屈部とが、後面衝突時に衝突用部材が収納ハウジングに向かって座屈できるようにし、後面衝突時に座屈される衝突用部材が、中央壁の長手方向に沿って収納ハウジングに当たるように形成してある自動車後部が提供される。
【0009】
後面衝突時、例えば2つの車両の衝突時、衝突用部材は、衝突エネルギーを散逸させることができ、および/または塑性変形によって吸収することができる。その際、衝突用部材は、特に、衝突用部材に接続されたコンソールの様式での補強要素によって左側長手方向ビームおよび右側長手方向ビームに支持されることがあり、補強要素も、塑性変形によって衝突エネルギーを吸収することができる。しかし、特に激しい後面衝突時には、衝突用部材が、収納ハウジングに当たる程度まで変形することがある。その場合、特に、衝突用部材は、特にそれぞれの補強要素を介して、右側壁および/または左側壁の長手方向に沿って、収納ハウジング、特に収納ハウジングの後壁に当たり、それにより、衝突用部材によって吸収されなかった衝突エネルギーを収納ハウジングのそれぞれの側壁に伝達することができる。さらに、側壁が、衝突エネルギーを自動車の荷重支持構造に散逸させることができる。
【0010】
左側の所定の座屈部および右側の所定の座屈部によって、相応に激しい後面衝突時に、左側の所定の座屈部および右側の所定の座屈部によってそれぞれ定義される2つの座屈軸の周りでの衝突用部材の所定の座屈を実現することが可能である。左側の所定の座屈部および右側の所定の座屈部は、特に、実質的に垂直に延びる座屈軸を成す。その周りで、それぞれの所定の座屈部からそれぞれ他方の所定の座屈部に向かって延びる衝突用部材の一部が枢動することができる。このようにすると、後面衝突時、左側の所定の座屈部および右側の所定の座屈部で衝突用部材が座屈したときに、これらの所定の座屈部の間に延びる衝突用部材の部分が収納ハウジングに向けて座屈することができる。所定の座屈部によって実現される後面衝突時の衝突用部材のこの所定の座屈により、衝突用部材は、中央壁の長手方向に沿って収納ハウジング、特に収納ハウジングの後壁に当たることができる。それにより、衝突用部材によって吸収されなかった衝突エネルギーを収納ハウジングの中央壁内に伝達することができる。さらに、中央壁が、衝突エネルギーを自動車の荷重支持構造に散逸させることができる。このようにすると、収納ハウジングの後壁内への衝突エネルギーの伝達は、なくされるか、または少なくとも、例えば50km/hの速度差での後面衝突時に収納ハウジングの後壁が収納ハウジングの内部に押し込まれない程度まで減少される。したがって、収納ハウジング内に配置された自動車の純電動用のトラクションバッテリおよび/またはバッテリセルが後壁によって損壊されることはない。衝突エネルギーは、後壁の固定点よりも湾曲しやすい後壁の部分を通さずに中央壁に散逸させることができる。
【0011】
後面衝突時、衝突エネルギーは、実質的に長手方向で中央壁に、場合によっては側壁に負荷を及ぼす。ここで、中央壁は、実質的に圧縮ストラットとして働くことができる。したがって、相応に高い力を、構成要素を破壊することなく後壁に散逸させることができる。さらに、中央壁は、一般にボックス形構造の一部である。それにより、中央壁は、その長手方向に沿った複数の点で固定され、少なくとも上縁部および/または下縁部で固定される。したがって、それに対応して中央壁は堅く、相応に高い座屈負荷が生じるまでは損壊しない。特に、複数のバッテリセルを収納するための収納フレームを、中央壁に隣接して横方向で両側に提供することができ、それにより、中央壁の隆起または座屈を防止することができる。特に激しい後面衝突時、衝突用部材によって吸収されなかった衝突エネルギーを、左側の所定の座屈部および右側の所定の座屈部によって定義された衝突用部材の座屈によって収納ハウジングの中央壁に伝達させることができ、そこから衝突エネルギーを荷重支持構造に散逸させることができる。それにより、収納ハウジング内に配置された物品が収納ハウジングの変形によって損壊されることを防げる。したがって、構造面での経費をほとんど伴わずに、壊れやすい物品、特にトラクションバッテリを損壊から保護することが可能になる。
【0012】
それぞれの所定の座屈部は、特に、衝突用部材の体積内に形成されたスロットとして構成される。所定の座屈部は、衝突用部材の垂直高さ全体にわたって延在していてよく、または衝突用部材の最大垂直高さの一部にのみ提供することもできる。所定の座屈部は、特に、切断プロセス、例えばフライス削りによって衝突用部材に提供することができる。好ましくは、中空プロファイルとして形成される衝突用部材の長手方向上側と長手方向下側は、所定の座屈部を形成するために削られない。収納ハウジングとは逆向きの衝突用部材の後側も、所定の座屈部を形成するために削られないことがある。所定の座屈部は、収納ハウジングに向いた前側に、特に例えばフライス削りによって形成された凹部によって形成され、特に、材料補強部材、例えば前側と後側にある繰抜部の間に提供されていたチャンバプロファイルのウェブが、同様に所定の座屈部によって窪まされる。
【0013】
衝突用部材は、特にバンパと同様に横方向に延びるストラット構造の一部でよく、したがって特にフレーム構造の一部でなくてよい。このようにすると、特に、長手方向に延びる中間部片によってフレームの形態で互いに接続される2つ以上の横方向に延びる構成要素がなくなり、それにより、フレーム構造を長手方向ビームに接続する必要はなくなる。このようにすると、構造空間要件を非常に小さく保つことができ、それにより、特に既製の自動車にも安価に後付けすることができる。また、収納ハウジングは、複数のバッテリセルを含むことができるトラクションバッテリのバッテリハウジングとして構成することもできる。荷重支持構造は、特にシャーシまたは車両フレームの一部であり、自動車の動作中に生じる負荷を散逸させるための荷重支持構成要素として構成される。
【0014】
特に、左側の所定の座屈部と右側の所定の座屈部とは、横方向で異なる向きで実質的に等しい距離だけ中央壁から水平横方向に離隔されるように提供される。このようにすると、衝突用部材の座屈時に、衝突用部材の長手方向長さに対する衝突用部材の座屈領域の最大部分が、中央壁の想像延長線上で収納ハウジングに当たることができる。例えば自動車後部に対してわずかに斜めの衝突時など、所定の座屈部の領域内で衝突用部材が正確に同時には座屈しないときでさえ、衝突用部材は、中央壁の延長線上で当たることができる。
【0015】
好ましくは、変形要素、特にクラッシュボックスが、中央壁の長手方向に沿って中央壁と衝突用部材との間に提供される。特に、十分に激しい後面衝突時、中央壁と衝突用部材との間で変形要素を変形させることができ、追加の衝突エネルギーを吸収することができる。
【0016】
特に好ましくは、変形要素が、衝突用部材に向いた力導入表面領域AEと、中央壁に向いた力放出表面領域AAとを有し、1.0<AE/AAであり、特に1.5≦AE/AA≦5.0、好ましくは、2.0≦AE/AA≦4.0、特に好ましくは、AE/AA=3.0±0.5である。このようにすると、変形要素は、衝突用部材の塑性変形中に生じるずれを容易に補償して、生じる力を実質的に長手方向で中央壁に導き入れることができる。
【0017】
特に、衝突用部材および/または変形要素は、複数のチャンバを有するチャンバプロファイルの形態である。特に、チャンバは、実質的に垂直に延びるチャネルによって形成される。個々のチャンバは、後面衝突時に塑性変形することができ、それにより衝突エネルギーの少なくとも一部を吸収することができる。このようにすると、特に、衝突エネルギーの大部分を、衝突用部材および/または変形要素によって、チャンバの塑性変形により吸収することができ、それに対応してより低い力のみが側壁および/または中央壁内に導き入れられる。
【0018】
好ましくは、衝突用部材および/または変形要素が、押出形材、特にアルミニウム押出形材の形態である。したがって、衝突用部材および/または変形要素を、軽量材料から安価に製造することができる。特に、衝突用部材および/または変形要素は、衝突エネルギーの吸収に適した断面表面領域を有するように構成することができる。この断面表面領域は、好ましくは、外側中空プロファイル内部に延びるストラットを有する。
【0019】
好ましくは、衝突用部材が、前方進行方向とは逆向きに凸形、特に弓形のプロファイルを有する。後面衝突時、衝突用部材を前方進行方向に押すことができ、それにより剛性を高めることができる。したがって、衝突用部材は、相応に高いレベルの衝突エネルギーを吸収および/または散逸させることができる。最終的には、衝突用部材は、所定の座屈部での意図的な構成要素の破壊によって収納ハウジングの方向に座屈することができる。
【0020】
特に、左側壁と右側壁とが後壁によって互いに接続され、後壁を支持構造に接続するための左側保護ブラケットが、少なくとも1つの変形可能な突起によって、後壁の左端側部に提供される少なくとも1つの中空チャンバ内に挿入され、および/または後壁を支持構造に接続するための右側保護ブラケットが、少なくとも1つの変形可能な突起によって、後壁の右端側部に提供される少なくとも1つの中空チャンバ内に挿入され、左側保護ブラケットの突起が、左側壁の長手方向に沿って左側壁と衝突用部材との間に配置され、および/または右側保護ブラケットの突起が、右側壁の長手方向に沿って右側壁と衝突用部材との間に配置される。それぞれの保護ブラケットによって、後面衝突時に収納ハウジングに達する力の一部を支持構造に散逸させることができ、それにより、それぞれの側壁に対する不要に高い負荷を避けることができる。変形可能な突起によって、それぞれの保護ブラケットが、塑性変形により衝突エネルギーを吸収し、関連の側壁を保護することも可能である。
【0021】
好ましくは、突起が、特に実質的にU字形の構成である屈曲タブによって形成される。したがって、屈曲タブは、片側で開いたチャンバを形成する。このチャンバは、後面衝突時に、衝突エネルギーを吸収するために塑性変形することができる。したがって、変形可能な突起を、安価にかつ容易に製造することができる。複数の変形可能な突起を提供することが好ましく、突起は、例えば櫛形で、実質的に垂直に延びるストラットから横方向に突出する。特に、チャンバプロファイルとして構成された後壁のそれぞれのチャンバ内にそれぞれ1つの突起が挿入される。
【0022】
収納ハウジングが、自動車ボディによって形成される収納凹部内に少なくとも部分的に挿入されることが特に好ましい。収納凹部は、後面衝突時に、外方向への側壁の隆起を阻止することができ、それにより、側壁の座屈を防止することができる。
【0023】
以下、本発明を、添付図面を参照して、好ましい例示的実施形態に基づいて例示的に説明する。以下に論じる特徴はそれぞれ、個別でも、組み合わせても本発明の一態様を成すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】自動車後部の概略平面図である。
図2図1からの自動車後部の概略斜視図である。
図3図2からの自動車後部の衝突用部材の概略詳細図である。
図4図1からの自動車後部に関する収納ハウジングの一部の概略斜視図である。
図5図4からの収納ハウジングの概略詳細図である。
図6図4からの収納ハウジングに関する保護ブラケットの保持要素の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1および図2に示される自動車後部10は、自動車の荷重支持構造の左側長手方向ビーム12と右側長手方向ビーム14とを有する。左側長手方向ビーム12と右側長手方向ビーム14との間に、収納凹部16が形成されている。収納凹部16内に、トラクションバッテリの収納ハウジング18が配置される。ボックス形の、実質的に直方形の収納ハウジング18は、左側壁22および右側壁24に接続された後壁20を有する。図示される例示的実施形態では、中央壁25が、左側壁22と右側壁24との間に実質的に中央に提供される。中央壁25と左側壁22との間、および中央壁25と右側壁24との間に、トラクションバッテリのバッテリセルを提供することができる。
【0026】
後面衝突時に、収納ハウジング18内に配置されているトラクションバッテリのバッテリセルを保護するために、衝突用部材26が提供される。衝突用部材26は、後部の方向に凸形であり、実質的に角度の付いた左側コンソール28によって左側長手方向ビーム12に内側から接続され、かつ実質的に角度の付いた右側コンソール30によって右側長手方向ビーム14に内側から接続される。長手方向で左側壁22の後方で、左側補強要素32が衝突用部材26に接続される。長手方向で右側壁24の後方で、右側補強要素34が衝突用部材26に接続される。特に、補強要素32、34は、衝突用部材26と実質的に同じ垂直高さにわたって延在する。衝突用部材26の変形を伴う激しい後面衝突時、衝突エネルギーの一部を補強要素32、34を介して側壁22、24に散逸させることができ、それにより衝突エネルギーは後壁20に実質的に達しない。
【0027】
左側補強要素32と左側コンソール28との間で衝突用部材26に左側の所定の座屈部36が形成される。右側補強要素34と右側コンソール30との間で衝突用部材26に右側の所定の座屈部38が形成される。図3に示されるように、それぞれの所定の座屈部36、38は、フライス削りによって、チャンバプロファイルの形態で衝突用部材26に形成することができ、チャンバプロファイルの個々のウェブと、前側40にある繰抜部とがフライス削りされ、一方、衝突用部材26の後側と長手方向上側42および長手方向下側44とは削られない。所定の座屈部36、38によって、十分に激しい後面衝突時に衝突用部材26が所定の座屈部36、38で座屈によって意図的な構成要素の破壊を行うことを可能にし、それにより、衝突用部材26は、収納ハウジングの方向へ内側に座屈することができる。このようにすると、衝突用部材26は、中央壁25の長手方向に沿った中央壁25の想像延長線上で、中央壁25を介して衝突エネルギーの一部を散逸させることもできる位置で、収納ハウジング18内に力を導き入れることができ、後壁20が座屈してバッテリセルが損壊されることはない。
【0028】
図4に示されるように、チャンバプロファイルの形態での変形要素46を、中央壁25と衝突用部材26との間に提供することができる。変形要素46は、衝突エネルギーを導き入れるために衝突用部材26に向いた力導入表面領域AEと、中央壁に衝突エネルギーを散逸させるための、収納ハウジング18に向いた力放出表面領域AAとを有する。力導入表面領域AEは、力放出表面領域AAよりも大きい。
【0029】
特に図5に示されるように、左側保護ブラケット48と右側保護ブラケット50とが、収納ハウジング18の後壁20のチャンバに係合し、それらの保護ブラケットにより、収納ハウジング18に達した衝突エネルギーの一部を散逸させることができる。それぞれの保護ブラケット48、50は、保持要素52を有することができる。保持要素52は、実質的に櫛形である。図6に示されるように、保持要素52は、複数の変形可能な突起54を有することができる。突起54は、屈曲タブによって形成することができる。後面衝突時、突起54は変形することができ、それにより衝突エネルギーの一部を吸収することができる。
【符号の説明】
【0030】
12 左側長手方向ビーム
14 右側長手方向ビーム
16 収納凹部
18 収納ハウジング
20 後壁
22 左側壁
24 右側壁
25 中央壁
26 衝突用部材
36 左側の所定の座屈部
38 右側の所定の座屈部
46 変形要素
48 左側保護ブラケット
50 右側保護ブラケット
54 突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6