(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018255
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】ブーストアシストシステム
(51)【国際特許分類】
F02B 37/04 20060101AFI20161020BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20161020BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20161020BHJP
B62D 5/07 20060101ALI20161020BHJP
B60K 6/12 20060101ALI20161020BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20161020BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20161020BHJP
【FI】
F02B37/04 C
F02B37/04 A
F02D29/06 E
F02D29/02 341
B62D5/07 Z
B60K6/12
B60K6/20 320
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-92784(P2015-92784)
(22)【出願日】2015年4月30日
(62)【分割の表示】特願2013-194562(P2013-194562)の分割
【原出願日】2008年8月15日
(65)【公開番号】特開2015-180819(P2015-180819A)
(43)【公開日】2015年10月15日
【審査請求日】2015年5月28日
(31)【優先権主張番号】60/956,488
(32)【優先日】2007年8月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・ビー・ロス
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー・ヨーグル
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・クザルノスキー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・シュッティー
【審査官】
津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−26334(JP,A)
【文献】
特開平1−267318(JP,A)
【文献】
特開2001−103613(JP,A)
【文献】
特開2005−205928(JP,A)
【文献】
特開2000−295713(JP,A)
【文献】
特開2006−320143(JP,A)
【文献】
特開平11−324688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/04
B60K 6/12
B60W 10/08
B60W 20/00
B62D 5/07
F02D 29/02
F02D 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的に動力装置を作動して、貯蔵装置の現在のエネルギ状態あるいはエンジン又は車両の運転状態の少なくとも1つに応じてエネルギを前記貯蔵装置に供給するステップであって、前記貯蔵装置のエネルギ状態が最大閾値未満であり、かつ前記車両が前記エンジンから能動的に動力を引きだしていないときに、前記動力装置を選択的に作動することが達成されるステップと、
エンジン又は車両の少なくともある運転状態において、前記貯蔵装置から、ブースト装置と連通するブーストアシスト装置に選択的にエネルギを供給して、前記ブースト装置の出力増加を可能にするステップであって、前記ブーストアシスト装置は、駆動機構と、当該駆動機構に連結されたコンプレッサ又はファンのうちの少なくとも1つとを備え、前記ブーストアシスト装置から供給されたエネルギが、前記ブースト装置への通常のエネルギ供給を補助するステップと、
前記車両のギヤが入りかつ制動しているかどうかを決定するステップと、
前記車両のギヤが入り又は制動しているときに、前記貯蔵装置にエネルギを供給するステップと、
少なくとも前記車両のギヤが入りかつ制動していない場合に、前記貯蔵装置のエネルギ状態が第2の閾値未満であるかどうかを決定するステップと、
前記車両が慣性走行し、前記貯蔵装置のエネルギ状態が前記第2の閾値未満であり、かつ前記車両が制動していないときに、エネルギを前記貯蔵装置に供給するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記動力装置が電気エネルギ源であり、前記貯蔵装置が電荷を貯蔵できる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記貯蔵装置のエネルギ状態が最大閾値未満であり、前記エンジンと関連付けられた車両が制動しているとき、前記動力装置を選択的に作動するステップが達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記車両が慣性走行しているときに第1のレベルのエネルギが前記貯蔵装置に供給され、前記車両が制動しているときに第2のレベルのエネルギが前記貯蔵装置に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のレベルのエネルギが前記第1のレベルのエネルギよりも高い、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ブースト装置への空気流を可能にするように、前記ブーストアシスト装置に並列に接続されたバイパスラインを提供することをさらに含み、前記空気流は前記ブーストアシスト装置を通して流れない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記車両が慣性走行しているときに第1のレベルのエネルギが前記貯蔵装置に供給され、前記車両が制動しているときに第2のレベルのエネルギが前記貯蔵装置に供給され、前記車両が制動も慣性走行もしていないときには、いかなるエネルギも前記貯蔵装置に供給されない、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のレベルのエネルギが前記第1のレベルのエネルギよりも高い、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記貯蔵装置のエネルギ状態が最大閾値未満であり、前記エンジンと関連付けられた前記車両が前記エンジンから能動的に動力を引きだしていないとき、前記動力装置を選択的に作動するステップが達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ブースト装置は、ブースト装置の可能な出力を有するものであり、エンジン動力需要に応じて、かつ前記ブースト装置の可能な出力に応じて、前記ブースト装置にエネルギを供給するように前記ブーストアシスト装置を操作するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年8月17日に出願された米国仮特許出願第60/956,488号の利益を主張する。
【0002】
この開示が一般に関係する分野は、ブーストアシスト装置を含むエンジンシステムを含む。
【背景技術】
【0003】
内燃機関を動力とする車両の燃料節減、エミッション及び性能を改善するために、複数の技術が現れている。これらの技術の1つは、ターボチャージャのようなエアブースト装置、及びターボチャージャを補助するエアブーストアシスト装置の追加を含む。例示的なブーストアシスト装置は、油圧駆動式装置、電気駆動式装置、ベルト駆動式装置及び空気圧駆動式装置を含む。これらの装置は、エンジンによって、例えばベルトで又は(エンジンによって駆動可能な)油圧ポンプを介して、又は(エンジンによって駆動される)交流発電機を介して直接駆動することが可能である。いずれにしろ、寸法決めの考慮、燃料経済性の考慮及び性能の考慮のため、経済的なエネルギ使用が重要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
エンジンシステムの一実装例によれば、エネルギを貯蔵装置に供給するために、動力装置が選択的に作動される。貯蔵装置からのエネルギは、ブーストアシスト装置に選択的に供給されて、ブースト装置への通常のエネルギ供給を補助し、かつエンジン又は車両の少なくともある運転状態においてエンジンの動力出力の増大を可能にする。一形態において、動力装置は電気エネルギ源でもよく、貯蔵装置は電荷を貯蔵できる。他の形態において、動力装置は流体ポンプであり、貯蔵装置は加圧流体を貯蔵できる。
【0005】
一実装例において、貯蔵装置は、加圧流体の供給を維持するアキュムレータを含み、加圧流体は、補助エネルギをブーストアシスト装置に供給するために、エンジン又は車両の少なくともある運転状態下でブーストアシスト装置に送出される。加圧流体をアキュムレータに送出するために、流体ポンプをアキュムレータと連通させてもよく、かつ必要に応じてブースト装置に送出するために加圧流体の所望の供給がアキュムレータに維持されることを保証するために、ある運転状態下で制御により選択的にポンプを作動してもよい。
【0006】
一実装例において、アキュムレータ内の圧力が目標値未満に低下し、かつエンジン動力が閾値未満であるとき、常に、アキュムレータを充填するためにポンプが作動される。次に、追加のエンジン動力が要求される場合、エネルギをブースト装置に供給できるようにアキュムレータからの加圧流体をブーストアシスト装置に送出して、ブースト装置の初期の動作的な非効率を克服するか又は低減し、これによって、低動力走行状態におけるいわゆる「ターボラグ」を排除又は低減することができる。
【0007】
他の例示的な実施形態及び実装例は、以降に行う詳細な説明から明らかになるであろう。詳細な説明及び特定の実装例は、本発明の例示的な実施態様を開示しているが、説明目的のみのために意図されるに過ぎず、本発明の範囲を限定するようには意図されないことを理解すべきである。
【0008】
本発明の例示的な実施形態は、詳細な説明及び添付図面からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ブースト装置及びブーストアシスト装置の一実施形態を含むエンジンシステムの概略図である。
【
図2】エンジンシステムの一実施形態を操作する方法を示した論理的フローチャートである。
【
図3】エンジンシステムの実施形態を操作する方法を示した論理的フローチャートである。
【
図4】エンジンシステムの他の実施形態を操作する方法を示した論理的フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態の次の説明は、本質的に単に例示的なものに過ぎず、本発明、その適用、又は用途を限定するようには決して意図されない。
【0011】
より詳しく図面を参照すると、
図1は、ブースト装置12と、ブーストアシスト装置14の例示的な一実施形態とを含むエンジンシステム10を示している。ブースト装置12は、ターボチャージャ又は他の装置でもよく、エンジン16への給気を増加させて、エンジン性能を改善することが可能である。一実施形態において、ブースト装置12は、0〜300kg/時の範囲の流量を有し得るコンプレッサを含む。ブーストアシスト装置14及び関連のエンジンシステム構成要素は、一般にブースト装置12及びエンジンシステム10の性能を改善するために、少なくともある運転状態において補助エネルギをブースト装置12に供給することが可能である。
【0012】
エンジンシステム10は、燃焼ガソリン又はディーゼルエンジンのような、しかしそれらに限定されないエンジン16を含んでもよい。空気吸入システム20は、エンジン16の上流に配置された構成要素及び装置を含んでもよい。例えば、空気吸入システム20は、一方の端部でエンジン16に接続された配管22を含んでもよく、配管は開放端又は入口24を含んでもよい。本明細書に使用されているように、配管という用語は、任意の適切な導管、チューブ、ホース、通路、マニホールド等を含む。任意の空気フィルタ25又はクリーナは、空気吸入システムに設けることが可能であり、入口24に又はその近くに配置してもよい。
【0013】
排気システム26は、例えば触媒コンバータ、消音器及び/又はテールパイプを通して、燃焼ガスを排気システムの開放端28から排出するためにエンジン16に接続することが可能である。選択的に、ターボチャージャ12は、タービン30及びエアコンプレッサ32を含むように設けてもよい。タービン30は、エンジン16から、排気システム26を通して排出される排気ガスによって駆動されるように構成かつ配置可能である。コンプレッサ32は、タービン30に動作可能に接続しかつタービン30によって駆動されて、吸気システム20内にまたそれを通して圧縮空気をエンジン16に送出することが可能である。
【0014】
空気吸入システム20は、第1のセグメント36を含む吸気ライン34を含んでもよく、吸気ラインは、空気吸入システム20の入口24とターボチャージャコンプレッサ32との間に配置されて延在することが可能である。ブーストアシスト装置14は、第1のセグメント36に設けてもよく、また空気吸入システム20を通して、コンプレッサ32に選択的に圧縮空気を送出することによって、ターボチャージャコンプレッサ32を補助するように構成かつ配置可能である。ブーストアシスト装置14は、任意の適切な駆動力を受け取るための駆動機構38と、駆動機構38に連結されかつ駆動されるコンプレッサ又はファン40とを含んでもよい。一実施形態において、ブーストアシスト装置14は、0〜300kg/時の範囲の流量を有し得るコンプレッサ又はファン40を含む。
【0015】
バイパスライン42は、ブーストアシスト装置14をバイパスする通路を提供するように設けてもよい。一実装例において、バイパスライン42は、ブーストアシスト装置14と並列に接続し得るバイパス弁44を含む。バイパス弁44は、完全に又は部分的に開放及び/又は閉鎖するように構成かつ配置して、バイパスライン42を通した空気流を可能にする、妨げる又は配量することが可能である。本明細書に使用されているように、閉鎖という用語は、完全閉鎖、及び/又はバイパス弁44が部分的に開放してもいるような部分閉鎖を含む。同様に、開放という用語は、完全開放、及び/又はバイパス弁44が部分的に閉鎖してもいるような部分開放を含む。
【0016】
動力装置48から受け取った動力又はエネルギを貯蔵するために、貯蔵装置46を設けることが可能である。貯蔵装置46に貯蔵されたエネルギは、ブーストアシスト装置を駆動して、エネルギをブースト装置12に送出するようにさせるために、ブーストアシスト装置14の駆動機構38に送出されてもよいか、あるいはブーストアシスト装置14は、車両のどこかで必要とされるエネルギを例えばエンジンに直接送出することが可能であり、このエネルギは圧縮空気の形態でもよい。貯蔵装置46は、エンジン動力需要とブースト装置の可能な出力とに応じて又は他の必要に応じて、エネルギをブーストアシスト装置に供給するために、ブーストアシスト装置14と連通させてもよい。瞬間的なエンジン及びブースト装置の動作状態に基づき、ブースト装置12の可能な瞬間的出力がエンジン動力需要に見合うために必要とされる出力と比較して低い場合、より多くのエネルギをブーストアシスト装置14に供給することが可能であり、この結果、ブーストアシスト装置によって、より多くのエネルギがブースト装置12に供給される。ブースト装置の可能な瞬間的な出力がエンジン動力需要に対しより高い場合、貯蔵装置46からブーストアシスト装置14に、次にブースト装置12に送出されるエネルギは少なくてもよい。
【0017】
一実装例において、貯蔵装置はアキュムレータ46を含み、動力装置は、エンジンオイル供給システム50と連通して、それから流体を引き出す流体ポンプ48を含む。当然、貯蔵装置又はアキュムレータ46は、電荷貯蔵装置を含む他の方法で実装してもよく、動力装置は、限定なしに一例として、バッテリ、燃料電池、交流発電機、発電機又は他の電気エネルギ源を含んでもよい。
【0018】
高圧充填ライン54のポンプ48とアキュムレータ46との間にチェック弁52を設けて、アキュムレータ46からポンプ48への流体の逆流を防止することが可能である。高圧送出ライン58のアキュムレータ46とブーストアシスト装置14との間に制御弁56を配置して、アキュムレータ46からブーストアシスト装置14への加圧流体の送出を制御することが可能である。ブーストアシスト装置の駆動機構38の下流に、エンジンオイルサンプ62に通じる排出ライン60を設けることが可能であり、次に、エンジンオイルサンプは、エンジンオイル供給システム50のエンジンオイルポンプ64及びリザーバ66と連通する。他の実施形態において、排出ライン60は、例えば、油圧流体を有する別個のタンク、しかしそれに限定されないエンジンオイル供給部又は別個のオイル供給部に通じてもよい。リザーバ66は、低圧送出ライン68を通してポンプ48の入口と、圧力逃しライン70を通してアキュムレータ46と連通してもよい。チェック弁72を圧力逃しライン70に配置して、アキュムレータ46内の最高圧力を制限し、かつリザーバ66へのアキュムレータ46の通気を許容することができる。
【0019】
さらに、エンジンシステム10は、エンジンシステム10の様々なシステム及び構成要素を制御するか又は監視するように構成かつ配置された制御器74又は制御システムを含んでもよい。例えば、センサ76において、制御器74は、エンジン16のすぐ上流のエアクーラ78に供給されるブースト圧力、センサ80においてアキュムレータ46内の圧力、センサ82においてアクセル/スロットル位置、及びセンサ84においてブーストアシスト装置のコンプレッサ40の下流の圧力を監視及び/又は応答することが可能である。制御器74はまた、86にアキュムレータ制御弁56を含むエンジンシステム10の様々な構成要素の作動に応答し、当該構成要素を作動するか又は制御して、アキュムレータ46からブーストアシスト装置14への加圧流体流、88においてバイパス弁の位置、及び90において例えばポンプ48の電気モータに対する動力の制御によってポンプ48の作動及び動作を制御することが可能である。制御器74又は制御システムは、エンジン16を制御するために使用される制御器と同一又は別個でもよいか、あるいは1つ以上の他の車両システム用の異なる車両制御器又は制御システムでもよい。
【0020】
制御器74は、ブーストアシスト装置がブースト装置12用の補助油圧エネルギ又は動力を供給できるようにアキュムレータ内の流体がブーストアシスト装置14に送出されるように、ある運転状態下でポンプ48を選択的に作動する。ポンプ48を作動して、アキュムレータ46に対し加圧流体の充填を行うには、エネルギが必要とされ、したがって、車両性能に悪影響を及ぼす可能性があるので、制御器74は、ある運転状態においてポンプ48を選択的に作動し得る。例えば、ポンプ48は、現在のエンジン動力とアキュムレータ46内に存在する圧力とに応じて作動又は制御してもよい。このようにして、制御器74は、センサ及び本明細書に前述したような同様の装置から収集された様々な入力信号又はデータに応答してポンプ48の作動を制御することが可能である。制御器74は、コンピュータによって読み取り可能な指示等を実行するための任意の適切な処理装置、及びデータ及びコンピュータによって読み取り可能な指示を記憶するための処理装置に連結された任意の適切なメモリ装置を含んでもよい。制御器74は、エンジン負荷を表す獲得情報に基づきポンプ48を制御してもよい。この情報は、エンジン制御器から燃料噴射器に命令される燃料から、スロットル位置、ブースト又はマップセンサ、又はターボチャージャコンプレッサ速度から、あるいは他の任意の様々なアクチュエータ命令信号(例えば燃料供給、VTG等)から直接測定するか又は計算するか又は推定し得る。
【0021】
貯蔵装置(例えばアキュムレータ46)のエネルギ貯蔵の目標値は、エンジン16への貯蔵装置の出力の遅れを低減又は排除するために、ブースト装置12によって必要とされる補助エネルギに応じて決定し得る。この補助エネルギは、ブーストアシスト装置14からブースト装置12に送出される。少なくともある車両用途では、ブーストアシスト装置のタービン38へのエネルギ送出の必要な最大持続時間は、2秒未満であり得る。当然、これは、特定のエンジン/車両用途に従って変更可能であり、適切なシミュレーション及び/又は試験によって決定することができる。いずれにしろ、ポンプ48は、望むなら、比較的短い時間間隔で、所望の目標レベル以上にアキュムレータ46を充填するように寸法決めすることができる。例えば、少なくとも一実装例において、この時間間隔は約15秒未満でもよく、望ましく2〜10秒であり得る。
【0022】
エンジンシステム10を操作する方法92が
図2に示されており、開始点94で始まる。ステップ96で、エンジン16が始動した後にエンジンがアイドル速度に到達すると、制御器74は、目標圧力に達するまでアキュムレータ46を充填するためにポンプ48を作動することが可能である。その後、通常の走行中、ステップ98とステップ100に示したように、アキュムレータ46内の圧力がその目標値未満に低下し、かつエンジン動力が閾値の上方にあるとき、常に、ポンプ48を作動させずまたアキュムレータ46を再充填しないか又はさらに充填しない決定を行うことが可能である。少なくともある用途では、このことが受け入れられる理由は、あるエンジン動力レベルの上方では、油圧ブーストアシストがほとんど必要でないか又はまったく必要でなく、かつブースト装置12(例えばターボチャージャ)が任意のブーストアシストを必要とする程度に十分に遅くなる前に、最小の時間があるからである。これにより、燃料効率が改善されるが、この理由は、車両交流発電機の負荷が車両加速状態又は高動力走行状態の間に増加しないからである。さらに、ステップ102では、車両がギヤ慣性走行しているか又はギヤ制動しているようにスロットルが閉じられることを制御器74が感知するとき、常に、ポンプ48は、アキュムレータ46内の目標圧力に達するまで作動される。エンジン動力が運転者によって要求されないときに望ましい充填状態を利用するために、アキュムレータ46内の圧力がその目標値の上方にあるとしても、ポンプ48を作動することが可能である。
【0023】
最後に、通常の走行中、アキュムレータ46内の圧力がその目標値未満であり(ステップ98で決定されるように)かつエンジン動力が閾値未満である(ステップ100で決定されるように)とき、常に、ポンプ48は、アキュムレータ46を少なくとも目標圧力に充填することが可能である。これにより、追加の動力が運転者によって要求されたとき、必要な圧力をアキュムレータ46からブーストアシスト装置14に供給して、低動力走行状態の間のターボチャージャ12の遅れを排除するか又は低減できることが確実にされる。
【0024】
次に
図3を参照すると、ポンプ48を制御し、アキュムレータ46を充填するための方法110を提供し得る。方法110は、開始点112を含むことが可能であり、ステップ114は、アキュムレータ46に貯蔵されたエネルギが閾値又は最大のエネルギ貯蔵限度以上であるかどうかを決定することを含むことが可能である。アキュムレータ46に貯蔵されたエネルギが閾値又は最大のエネルギ貯蔵限度以上である場合、アキュムレータ46を充填すべきでないが、この理由は、アキュムレータ46を充填することにより、アキュムレータ46内の圧力がさらに増大され、このことは、システム操作には不必要であり、したがって、エネルギの浪費であり、いずれにしろ、アキュムレータ46がチェック弁72を通してリザーバ66に通気されるに過ぎず、これによって、エネルギが浪費されるからである。
【0025】
ステップ116は、アキュムレータのエネルギ状態の決定(例えば、アキュムレータ46に貯蔵されたエネルギが目標値又は所望の車両性能に必要な最小値未満であるかどうか)を含むことが可能である。アキュムレータの動力レベル又はエネルギが目標値未満である場合、ポンプ48を制御器74によって作動して、アキュムレータ46に対し加圧流体の充填を行うことが可能である。目標値未満でない場合、ステップ118は、エネルギをエンジン16から方向転換して、エンジン性能に干渉するか又はそれを抑制することなくアキュムレータ46を充填し得るように、車両がギヤ制動又はギヤ慣性走行しているかどうかを決定することを含むことが可能である。したがって、このような状況では、アキュムレータのエネルギレベルが最大エネルギ貯蔵限度又は閾値未満であるあるとき、追加のエネルギをアキュムレータ46に貯蔵することが望ましいかもしれない。実際に、車両制動中、アキュムレータ46を充填するために必要なエネルギは、さもなければ制動熱で浪費されるであろうエネルギから完全に得ることができるであろう。このようにして、システム(例えばアキュムレータ)を充填するために使用されるエネルギは、エンジン性能を全く損失することなく得ることが可能である。車両がギヤ制動又は慣性走行していない場合、
図3で述べたように、システムを充填しない決定を行うことが可能である。このように、平均して、車両の慣性走行中にアキュムレータ46を充填することは、動力供給による車両駆動中の充填よりも優れているが、車両制動中のシステムの充填ほどには優れていない。
【0026】
図4の方法120に示したように、2つ以上のレベルの充填を定義することが可能である。方法120は開始点122で始まり、
図3の方法110に関して示したのと同一のステップ114、116を含むことが可能である。ステップ124は、車両が制動しかつギヤが入っているかどうかを決定することを含むことが可能である。そうであれば、アキュムレータ46の第1レベルの充填を実施することが可能である。車両がギヤ制動していない場合、ステップ126は、アキュムレータ46のエネルギレベルが第2の閾値又は慣性走行の高い限度未満であるかどうかを決定することを含むことが可能である。アキュムレータ46のエネルギレベルが第2の閾値値の上方にある場合、アキュムレータ46を充填しない決定を行うことが可能である。エネルギが第2の閾値未満である場合、ステップ128で、車両がギヤ慣性走行しているかどうかを決定することが可能である。そうであれば、アキュムレータ46は、少なくとも第2の閾値に充填してもよく、そうでなければ、アキュムレータ46は充填されない。
【0027】
このようにして、第1のレベル又はより高次のレベルのエネルギ貯蔵又はアキュムレータ充填を車両制動中に行い、これによって、さもなければ制動している最中に失われるであろうエネルギを使用することが可能である。車両が慣性走行しているとき、第2の又はより低次のレベルのエネルギ貯蔵又はアキュムレータ充填を利用して、アキュムレータ46の充填によるエンジン16からの望ましくない寄生エネルギ損失を回避するか又は低減することが可能である。このことが望ましいのは、車両の慣性走行中にアキュムレータ46を充填することにより車両が減速され、望ましくないからである。ある場合には、運転者の意図は、車両が慣性走行しているときに減速することであり得ることを認識すべきである。その状態では、システムを充填するために必要な寄生エネルギ損失は、運転者にとって望ましいかもしれない。
【0028】
したがって、少なくとも一実装例において、制御器74により、ブーストアシスト装置14がブースト装置12を十分に補助できるように必要とされる最小エネルギが、常にアキュムレータ46に貯蔵されることが確実にされる。また例えば車両の少なくともある運転状態の間に(例えば、車両制動中に)自由エネルギが利用可能であるとき、制御器74は追加のエネルギを貯蔵しようと試みる。一実装例において、制御器74は、貯蔵装置のエネルギ状態が車両の運転状態に関係なく、したがって、エネルギペナルティに関係なく目標値未満であるとき、ポンプ48を作動してアキュムレータ46を充填する。これにより、必要な場合、ブーストアシスト装置14がエネルギをブースト装置12に供給する態勢ができていることが確実にされる。エネルギ貯蔵がある最小目標値の上方にあると、制御器74は、車両がエンジン16から動力を引き出していないときにのみ、アキュムレータ46を充填するように構成されてもよい。制御器74は、アキュムレータ46又は他の貯蔵装置がその最大許容のエネルギ貯蔵容量又は最大閾値に達するまで、この充填方策及び操作を継続することが可能である。さらに、ブーストアシスト装置14用の追加のエネルギは、さもなければ制動している最中に失われるであろうエネルギのような自由エネルギから得ることが可能なので、エンジンシステム10は、実際に、少なくともある運転状態下でエンジンの合計エネルギ使用量を低減し得る。
【0029】
エンジンシステム及び方法の実施形態の上述の説明は、本質的に例示的なものに過ぎず、したがって、それらの別形態は、本発明の趣旨と範囲からの逸脱とは見なされるべきでない。例えば、本明細書に説明したいくつかの実施形態は、加圧流体を貯蔵するためのアキュムレータを含むが、任意のエネルギ貯蔵装置を使用できるであろう。このようなエネルギ貯蔵装置は、電気エネルギをブースト装置に送出するための電荷を貯蔵することが可能である。このような実施形態では、アキュムレータ及びポンプは、バッテリ、コンデンサ及びオルタネータ、発電機又は他の電気エネルギの生成及び貯蔵源で置き換えてもよい。なおさらに、ポンプは、変速機流体ポンプのような既存の車両ポンプを備えてもよい。望むなら又は必要な場合、一例では、流体がアキュムレータ又は他の貯蔵装置に方向転換される前に、その加圧流体の必要性が最初に車両変速機に与えられることを確実にするために、弁を制御して、流体流の優先順位を確立できるであろう。同様に、供給される流体は、車両燃料システムからのディーゼル燃料のような他の既存の車両流体を含むことができるであろう。その例では、ポンプは、既存の燃料ポンプ、又はエンジンシステムに付加される追加のポンプでもよい。同様に、優先又は制御弁を使用して、エンジンの燃料需要が最初に満たされることを確実にし、及び/又はブーストアシスト装置14の作動を選択的に制御することが可能である。