特許第6018263号(P6018263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6018263物体の2次元または3次元の位置調整のための高解像度顕微鏡および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018263
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】物体の2次元または3次元の位置調整のための高解像度顕微鏡および方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/06 20060101AFI20161020BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   G02B21/06
   G01N21/64 F
【請求項の数】12
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-121233(P2015-121233)
(22)【出願日】2015年6月16日
(62)【分割の表示】特願2012-545135(P2012-545135)の分割
【原出願日】2010年12月14日
(65)【公開番号】特開2015-187745(P2015-187745A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2015年6月16日
(31)【優先権主張番号】102009060793.5
(32)【優先日】2009年12月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506151659
【氏名又は名称】カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CARL ZEISS MICROSCOPY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】カルクブレナー、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴォレシェンスキー、ラルフ
【審査官】 瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−519038(JP,A)
【文献】 特表2011−521250(JP,A)
【文献】 特表2011−508214(JP,A)
【文献】 特表2008−542826(JP,A)
【文献】 特開2009−229715(JP,A)
【文献】 特開2003−057554(JP,A)
【文献】 特開2005−031589(JP,A)
【文献】 特表2002−533686(JP,A)
【文献】 特開2000−193889(JP,A)
【文献】 特表2010−506203(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0316269(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00 − 21/36
G01N 21/62 − 21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の2次元または3次元の位置調整のための、試料の空間的な高解像度の蛍光顕微鏡検査法のための高解像度顕微鏡であって、該試料はマーキング分子によってマーキングされており、該マーキング分子は信号によって、活性化可能であり、即ち励起可能な状態に切り替え可能であり、該マーキング分子は、活性化された状態で、即ち切り替えられた状態で、初めて蛍光ビームの放出のために励起可能であり、その際この方法は、
1)試料中に存在するマーキング分子のただ1つのサブセットだけが活性化されるよう試料に信号を与えるステップであって、その際試料に部分領域が存在し、その中で活性化されたマーキング分子が最も近くで隣接した活性化されたマーキング分子に対して少なくとも1つの間隔を空けており、この間隔の大きさがあらかじめ定められた光学解像度から生じた長さより大きいかまたは同じである、前記試料に信号を与えるステップと、
2)活性化された分子を励起して蛍光ビームを放出するステップと、
3)あらかじめ定められた光学解像度を使用して蛍光ビームを検出するステップと、
4)ステップ3)で記録した蛍光ビームから単一画像を生成するステップであって、その際蛍光ビームを放出するマーキング分子の幾何学的位置が、あらかじめ定められた光学解像度によって高められた空間解像度を使用して算出される、前記単一画像を生成するステップと
を含み、その際Z方向における検出の分割によるマルチレベル検出が、
結像ビーム路内にアナモルフィックレンズが配置されているか、または少なくとも1つのビームスプリッタが検出ビーム経路を少なくとも2つの部分ビーム経路に分割するために備えられており、該部分ビーム経路が検出レベル中で互いに空間的にずれていること、
活性化源、即ち励起可能な状態に切り替える切り替え源として、非線形試料励起のためのショートパルスレーザが備えられていること、
ショートパルスレーザによる非線形励起のための点スキャナまたはラインスキャナが備えられていること
試料を励起するために広視野照明を行うレーザが備えられていること
によって行われ、
前記点スキャナまたは前記ラインスキャナ、および前記ショートパルスレーザによって試料の非線形励起が行われ、前記レーザを用いた広視野照明よって非線形励起された試料の蛍光励起が行われる、高解像度顕微鏡。
【請求項2】
a)試料範囲を選択的に活性化する、即ち励起可能な状態に切り替えるための手段を備えられていること、
b)非線形励起は2光子励起であること、
c)選択的に活性化する、即ち励起可能な状態に切り替えるための手段がAOTF、SLMまたはDMDであること、
d)試料を励起するために広視野照明および広視野照明検出が備えられていること、
e)テレスコピックビーム路内で分割されたビーム成分が画像レベル内または試料内で統合されること、
f)多光子の励起可能な状態への切り替え、即ち活性化のためにマイクロレンズアレイが備えられていること、
g)ラインスキャンする装置が励起可能な状態への切り替え、即ち活性化のためにおよび励起のために備えられていること、
h)ライン検出のために空間分解センサが備えられており、その際スリット絞りが、それぞれ複数のセンサ列から成る少なくとも2つのセンサ列が試料光によって照らされるように開かれていること、
i)センサが隣り合って、または連結されて、または45度の配置で備えられていること、
j)顕微鏡のために画像スプリッタ装置が備えられていること
の特徴のうちの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の高解像度顕微鏡。
【請求項3】
光学的経路長を延長する、試料から来ている検出光の少なくとも第2の部分が検出ビーム経路から隠され、および検出ビーム経路への偏向手段を介して、少なくとも第2の検出ビーム経路内に導かれる、請求項1又は2に記載の高解像度顕微鏡。
【請求項4】
前記検出光の少なくとも前記第2の部分が、別の偏向手段を介して検出の方向に、面レシーバ上に隣り合って少なくとも2つの部分領域に検出光が当てられるように方向を戻される、請求項3に記載の高解像度顕微鏡。
【請求項5】
検出光の少なくとも第2の部分が、少なくとも部分的に光学的経路長を延長するために、光学的要素内で、第1の検出ビーム経路に対して高められた光学的密度で伸びる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の高解像度顕微鏡。
【請求項6】
前記光学的要素が第1の検出ビーム経路の光学軸に対して垂直に、光学的経路長を調整するために、スライド可能に形成されており、少なくともその入光側および出光側に平坦な面を備えている、請求項5に記載の高解像度顕微鏡。
【請求項7】
少なくとも第2の検出ビーム経路内で第1のビーム偏向の後ろにプリズムが、第1の検出ビーム経路に対して平行に、経路長の延長方向に偏向するためにおよび向きを戻すために備えられている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の高解像度顕微鏡。
【請求項8】
前記プリズムが、前記第2の検出ビーム経路の平行な部分によって通り抜けられ、および光学的経路長の調整のために光学軸に対して垂直にスライド可能であるよう形成される、請求項7に記載の高解像度顕微鏡。
【請求項9】
試料から検出器へのテレセントリックビーム路を備えている、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の高解像度顕微鏡。
【請求項10】
部分的に透明なミラーおよび偏向要素を介して4つの検出ビーム経路への分割が行われ、該検出ビーム経路が互いにずらされて1つまたは複数の検出器上に当たり、その際、3つの部分的に透明なミラーおよび3つの偏向要素が、分割のために備えられており、および該部分的に透明なミラーが、伝送されたビームと反射されたビームとの間の分割比率25/75、66/33、および50/50を有している、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の高解像度顕微鏡。
【請求項11】
物体の2次元または3次元の位置調整のための、試料の空間的な高解像度の蛍光顕微鏡検査法のための方法であって、該試料はマーキング分子によってマーキングされており、該マーキング分子は信号によって、活性化可能であり、即ち励起可能な状態に切り替え可能であり、該マーキング分子は、活性化された状態で、即ち切り替えられた状態で初めて蛍光ビームの放出のために励起可能であり、その際この方法は、
1)試料中に存在するマーキング分子のただ1つのサブセットだけが活性化されるよう試料に信号を与えるステップであって、その際試料に部分領域が存在し、その中で活性化されたマーキング分子が最も近くで隣接した活性化されたマーキング分子に対して少なくとも1つの間隔を空けており、この間隔の大きさがあらかじめ定められた光学解像度から生じた長さより大きいかまたは同じである、前記信号を与えるステップと、
2)活性化された分子を励起して蛍光ビームを放出するステップと、
3)あらかじめ定められた光学解像度を使用して蛍光ビームを検出するステップと、
4)ステップ3)で記録した蛍光ビームから単一画像を生成するステップであって、その際蛍光ビームを放出するマーキング分子の幾何学的位置が、あらかじめ定められた光学解像度によって高められた空間解像度を使用して算出されている、前記単一画像を生成するステップと
を含み、その際Z方向における検出の分割によるマルチレベル検出が、
結像ビーム路内にアナモルフィックレンズが配置されているか、または少なくとも1つのビームスプリッタにより、検出ビーム経路が少なくとも2つの部分ビーム経路に分割され、その際該部分ビーム経路が互いに空間的にずれていること、
活性化、即ち励起可能な状態への切り替えを、非線形試料励起のためのショートパルスレーザによって行うこと、該活性化、即ち励起可能な状態への切り替えを、点状またはライン状にスキャンしながら行うこと、活性化された試料、即ち励起可能な状態に切り替えられた試料の蛍光励起を、レーザを用いた広視野照明によって行うこと
によって行われる、高解像度顕微鏡法。
【請求項12】
a)試料範囲の選択的な活性化、即ち励起可能な状態への切り替えを行うこと、
b)非線形励起は2光子励起であること、
c)選択的に活性化する、即ち励起可能な状態に切り替えるための手段がAOTF、SLMまたはDMDであること、
d)試料を励起するために広視野照明および広視野照明検出が備えられていること、
e)テレスコピックビーム路内で分割されたビーム成分が画像レベル内または試料内で統合されること、
f)多光子の励起可能な状態への切り替え、即ち活性化のためにマイクロレンズアレイが備えられていること、
g)ラインスキャンする装置が励起可能な状態への切り替え、即ち活性化のためにおよび励起のために備えられていること、
h)ライン検出のために空間分解センサが備えられており、その際スリット絞りが、それぞれ複数のセンサ列から成る少なくとも2つのセンサ列が試料光によって照らされるように開かれていること、
i)センサが隣り合って、または連結されて、または45度の配置で備えられていることの特徴のうちの少なくとも1つを有する、請求項11に記載の高解像度顕微鏡法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の2次元または3次元の位置調整のための高解像度顕微鏡および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原理的に光学顕微鏡では、またLSMでも、その光学解像度には物理法則により回折限界がある。この限界内での最適な解像度を得るため、専用の照明構成、例えば4Pi配列または定在波野を備えた配列が公知である。これにより解像度は、従来のLSMと比べて特に軸方向に改善される。
【0003】
非直線デポピュレーションプロセスを使用することで、解像度を回折限界がある共焦点LSMと比べてさらに向上させることができる。このような方法は、例えば特許文献1に記述されている。デポピュレーションプロセスのためのさまざまなアプローチが公知であり、例えば特許文献2、特許文献3または特許文献4に記述されている。
【0004】
近年蛍光顕微鏡検査法での回折限界を克服するために、さまざまな方法が開発され、使用されている(PALM構成照明、特許文献5、特許文献6)。
現在、特に有利な、高解像度の蛍光顕微鏡検査法のために開発された方法は、個々の分子の高精度定位をベースにしている。個々の蛍光を発する分子の定位、つまり位置特定は、回折制限の影響を受けないことが公知である。
【0005】
この位置特定は、十分な分子の光子が検出され得る場合、精度がnm範囲の広視野の高感度カメラを使用して行うことができる。定位ベースの、高解像度の顕微鏡では、こうして得られた分子ポジションから画像が構成される。ここで重要なことは、常に試料の分子のサブセットだけが蛍光を発する状態にあり、その結果平均して「直近の隣」の活性分子の距離が、常に顕微鏡のPSF(点像分布関数、Point Spread Funktion)より大きい。これが光学的または化学的に切り替え可能な蛍光色素分子によって達成された場合:密にマーキングされた試料の範囲を、適切な変換波長を照射することによって、蛍光色素分子の確率的サブセットが観察範囲で蛍光を発する状態に切り替えられる。その際スポットの密度は、分子ポジションの連続的な定位が可能なように調整される。この光学的切り替え法は、例えばPhoto Activated Localization Microscopy(PALM、活性定位顕微鏡)に使用される。この基本的な方法にはさまざまなバリエーションがあり、参考文献に記述されている(非特許文献1から6)。
【0006】
高解像度の方法(PALM、STORM、D−STORMなど)はここでは主として蛍光色素分子の選択および光学的切り替えプロセスの種類によって異なる、
しかしすべての方法に共通しているのは、高感度(例えばEMCCD)カメラ上に結像することによる分子の定位である。ほぼ点形状の光源(分子)がその際顕微鏡の点像分布関数(PSF)によって複数のカメラピクセル上に写し取られる。x/y面上の分子の正確な位置は、ここで既知のPSF(ガウス)を適合することにより、または重心特定により、または両方の混合により(ガウスマスク)特定される(文献、他のアルゴリズムを引用)。
【0007】
典型的な定位精度は、(実験条件に応じて)5から30nmである;これはこの方法のほぼ横向きの解像度でもある。
実用的には、一方で分子が密には並んでいないこと、検査する構造が可能な限り完全に再現されること、他方で試料の多数の個別画像(典型的には10000から20000)を撮影されなければならない、という要求を意味する。
【0008】
これにより、少なからぬ画像撮影時間が必要になり、特に試料乃至関心のある構造が非常に不均質にマーキングされている場合に切り替え強度の調整時の問題が生じる:情報を失わないようにするため切り替え強度は常に最も密度が高くマーキングされている試料範囲に適合されなければならない。
【0009】
基本的に、上述の定位ベースの高解像度の方法では、表面上にまたは2次元に限定される。なぜなら個々の色素分子の定位は第3の空間方向(z方向)において比較にならぬほど複雑だからである。構造を再現するために撮影するべき個別分子の数は、3次元においては相応に増加する。
【0010】
さらなる問題は、3次元高解像度の結像が試料の奥行きにおいて制限されたレンズの焦点深度内にあることである:従来型の蛍光顕微鏡検査法およびレーザ走査顕微鏡で公知のように、励起ビームの散乱が試料の奥行きにおいて増加すると、背景信号が高くなり、同時に本来の使用信号が減少する。
【0011】
さらに焦点平面外で生じる試料範囲の望ましくない光退色は、PAL−M方法では、試料の奥行きにおいて蛍光色素分子の望ましくない切り替えが活性化ビームによって現在測定していない層に加わることでも起こる。
【0012】
従来技術では一般的な前提条件は、3次元高解像度の蛍光結像が高いレンズの焦点深度および「セクショニング」(つまり励起/退色を防止することによる層の測定、および特にその上またはその下にある層へのフォト変換可能な蛍光色素分子の切り替え)および、撮影速度のスピードアップである。
本発明の要約
本発明により、3次元の解像度を高めた顕微鏡が以下の有利な技術と装置、以下に詳細に記述した装置および方法の相乗効果によって実現されることがわかった。
分子の軸方向の(Z−)ポジションの高解像度の特定:
非点収差/円柱レンズ(非特許文献9)
このアプローチでは、検出ビーム経路内には弱い円柱レンズが入れられ、この円柱レンズは非点収差のPSFをもたらす。これに応じて、分子がPSFの対称点の下または上にあるとき分子の画像が楕円形にひずむ。オリエンテーションおよびひずみの強さから、分子のzポジション情報が抽出される。
【0013】
発明に従い有利には、アナモルフィックレンズ(円柱レンズ)が、垂直の分子ポジションの特定のために形状認識および/または寸法認識によって取り付けられ、以下の方法および装置を使って顕微鏡が実現される。
2つの平面の検出(バイプレイン検出)(トプラク(Toprak)ら、ベワースドルフ(Bewersdorf)ら(非特許文献7、8))
ここでは50/50ビームスプリッタが検出ビーム経路内に挿入される。この検出ビーム経路は画像を2つの部分画像に分割する(コピーを作る)。この2つの画像は、2つの同一のカメラまたは並んで1つのカメラチップに写し取られる。2つの部分ビーム経路のうちの1つの中に、2つの部分ビーム経路から2つの物体レベルが生じるように光路長差違が導入され、この物体レベルはz−PSF(700nm)の約半分だけz方向に離れてある。これら両方の平面の間にある分子のzポジションは、例えば分子2つの部分画像の減法により、乃至3次元のPSFまたは同等アルゴリズムの適用でもたらされる。
【0014】
検出ビーム経路の分割、および複数のビーム経路内での複数の蛍光色素分子のための、色選択的に使用され光路長が相違している分割されたビーム経路の検出のずれが、そのほかの発明に従った方法および装置と共に顕微鏡内に実現される。
レンズの焦点深度:多光子の顕微鏡
多光子顕微鏡の従来技術、特に2光子(2P)励起およびその利点は、目的に合わせてその他の記述された発明に従った方法および装置に使用される。
2P切り替え変換可能な色素
2P励起の可能な方法は、典型的な蛍光励起のための公知の色素だけでなく、原理的に切り替え移行のためのいわゆる切り替え可能な蛍光色素分子または光電スイッチにもある。その際これは蛍光色素分子であり、切り替え波長の照射により、初期状態に応じて、蛍光を発するまたは蛍光を発しない状態に処理され得る(PALM、STORMなど参照)。その際、切り替え波長も励起波長と同じであってよい。そのような光電スイッチは、上述の高解像度方法に不可欠である。
【0015】
さまざまな刊行物(非特許文献10)で、いくつかの切り替え可能な蛍光色素分子が2光子励起でも切り替えられることが報告されている。例えばProteine Dronpa、EosFP、Kaede、Kikume、PA−GFP(参照2P切り替え)。
【0016】
2P活性化(活性化可能な状態への切り替え)には、特に点スキャンモードで、しかしまたラインスキャンモードでも、好ましくはそれぞれ広視野蛍光励起および広視野検出、個々のまたは他に記述された本発明による装置および方法が使用される。
【0017】
特に有利には、これはマーキングと組み合わせて所定の部位(ROI)に作用する。この所定の部位は例えばプレイメージに捉えられてマーキングされる。これは特定の細胞のようにまたは他の興味深い生物学分野のように、以下によって行われる:
切り替えビームおよび/または励起ビームの衝撃のAOTF制御、SLM制御、またはDMD制御。
これら2次元および3次元(画像スタック内)は、他の挙げられた発明に従った方法および装置と併せて顕微鏡内に実現される。
切り替えビームの時間的な合焦
いわゆる時間的な合焦(temporal focussing、テンポラルフォーカシング)により、点スキャン式2P顕微鏡を使って、励起の正方形の強度依存性が強力な合焦との組み合わせて生じる深さ識別の効果でも広視野結像が達成できる。そのために、例えば(非特許文献11)では短いレーザパルスが格子によってスペクトル分割される;この格子は、顕微鏡対物レンズを介して結像される。この場合、そこで元の短いレーザパルスを形成するために、パルスの異なったスペクトル成分が異なった光学的経路を取り、焦点面で初めて再び合流するという結果になる。これにより、パルスの最大出力は焦点面内でのみ最大であり、このことは上記の2P励起の正方形の強度依存性との関連で深さ識別という結果をもたらすが、広視野でのみとなる。
【0018】
このことはROI関数を備えたSLMまたはDMD制御により、上述されたように結びつけられる。
2Pマルチスポットイメージング
ラスターされたマイクロレンズアレイまたは回転するマイクロレンズ盤、例えば(非特許文献14)、およびその中の参照は、他の挙げられた方法および装置と共に顕微鏡内に実現される。
ラインスキャナによる切り替えおよび励起
ラインスキャナによる切り替えおよび励起は、他の挙げられた方法および装置と共に顕微鏡内に実現される。
【0019】
これまでの従来技術では、以下に記述する装置および方法と比べて、発明に従った相乗効果および利点はこれまで達成されていない。
− PALMおよび類似の方法は、2次元で高解像度の蛍光結像をもたらすが、TIRF励起の下で、カバーガラスインターフェース上のみである。
− バイプレインまたは非点収差アプローチを使用すると、さらにz解像度を高めることが可能である;厚い試料の測定はしかし、特にPSFの規模の層だけ測定可能であるために、困難である。その上またはその下の層は、顕微鏡でよくあるように画像スタックとして順番に測定可能である;なぜならしかし、(レーザ)広視野励起および広視野切り替えであるため、上側および下側の層はすでに現在の層を測定中に同じように切り替えられおよび/または退色するために、測定できないかまたは測定が制限されるからである。
− 蛍光色素分子を切り替えるためのテンポラルフォーカシング(非特許文献12)が説明されており、2Pに匹敵するセクショニングが観察されている。しかしこれによって真の3D高解像度に達することはできない。
− 2P切り替えは、点スキャニングcwレーザによって、広視野検出と組み合わせて説明されていた(非特許文献13)。しかしここではセクショニングであるが、3D解像度は可能ではない。
− 光電スイッチをベースにしたすべての定位ベースの高解像度方法では、現在切り替えレーザの強度が画像ごとに、観察する試料領域の中で最高のマーキング密度に適合されなければならない。
独国特許第19829981A1号明細書:Regions of Interest(関心領域)
独国特許第19930532A1号明細書:SLM
独国特許第10259443A1号明細書:試料中のパルス合流
独国特許第19835072A1号明細書:DMD
米国特許第5867604号明細書:構造化された照明
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第5866911号明細書
【特許文献2】独国特許第4416558C2号明細書
【特許文献3】米国特許第6633432号明細書
【特許文献4】独国特許第10325460A1号明細書
【特許文献5】国際公開第2006127692号明細書
【特許文献6】欧州特許第1157297B1号明細書
【特許文献7】独国特許第19829981A1号明細書
【特許文献8】独国特許第19930532A1号明細書
【特許文献9】独国特許第10259443A1号明細書
【特許文献10】独国特許第19835072A1号明細書
【特許文献11】米国特許第5867604号明細書
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】ベツィヒ(Betzig)ら、Sciene 313,1642−1645(2006)
【非特許文献2】ヘス(Hess)ら、PNAS 104,17370−17375(2007)
【非特許文献3】ヘス(Hess)ら、BiophysJ. 91,4258−427(2006)
【非特許文献4】シュロフ(Shroff)ら、PNAS 104,20308−2031(2007)
【非特許文献5】ルスト(Rust)ら、Nat Methods 3,793−796(2006)
【非特許文献6】エグナー(Egner)ら、BiophysJ. 93,3285−3290(2007)
【非特許文献7】トプラク(Toprak)ら、Nano Lett. 7,3285−3290(2007)
【非特許文献8】ジュエット(Juette)ら、Nature Methods 5,527(2008)
【非特許文献9】フアング(Huang)ら、Science 319,810(2008)
【非特許文献10】マリオット(Marriot)ら、PNAS 2008,イヴァンチェンコ(Ivanchenko)ら、 BiophysJ. 2007,ワタナベ(Watanabe)ら、OptExp. 2007,シュナイダー(Schneider)ら、BioPhysJ 2007
【非特許文献11】オロン(Oron)ら、Optics Express 13,1468(2005)
【非特許文献12】ヴァツィリ(Vaziri)ら、PNAS 105,20221(2008)
【非特許文献13】フェリング(Foelling)ら、ChemPhysChem9,321(2008)
【非特許文献14】パウレイ(Pawley), Handbook of Biological Confocal Microscopy(第3版)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明はさらに、独立請求項の特徴によって特徴づけられる。これは高解像度顕微鏡の中で、および方法によって実現され、物体の、特に個々の蛍光色素分子の2次元または3次元の位置調整のために、好ましくはマーキング分子によってマーキングされている試料の空間的に高解像度の蛍光顕微鏡検査法のために、マーキング分子は信号によって、それが活性化されたまたは切り替えられた状態で初めて蛍光ビームの放出のために励起可能であるように活性化が可能または切り替え可能であり、その際その方法は以下のステップを備えている:
1)試料中に存在するマーキング分子のただ1つのサブセットだけが活性化されるよう試料に信号を与える。その際試料に部分領域が存在し、その中で活性化されたマーキング分子が隣接する活性化されたマーキング分子に対して少なくとも1つの間隔を空けており、この間隔の大きさがあらかじめ定められた光学解像度から生じた長さより大きいかまたは同じである。
2)蛍光ビームを放出するための活性化された分子の励起
3)あらかじめ定められた光学解像度を使用した蛍光ビームの検出、および
4)ステップ3)で記録した蛍光ビームから単一画像を生成、その際蛍光ビームを放出するマーキング分子の幾何学的位置が、あらかじめ定められた光学解像度によって高められた空間解像度を使用して算出され、その際これらのステップが何度も繰り返され、およびそのようにして得られた複数の単一画像が1つの全体画像につなぎ合わせられる。
【0023】
本発明はさらに、有利には、請求項1の装置a)からq)の少なくとも1つから成り立っている。
本発明はさらに、有利には、請求項2の手順ステップa)からo)の少なくとも1つから成り立っている。
【0024】
以下、模式図を使用して本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】解像度が限定された量の、活性化されたマーキング分子の模式図である。
図2】空間解像度検出器上の、さまざまな活性化されたおよび活性化されていないマーキング分子の結像の模式図である。
図3】PALM方法による画像生成のフローチャートである。
図4図3のフローチャートに属する、図2の検出器上に結像されたマーキング分子の解説図である。
図5】PAL顕微鏡法のための顕微鏡の模式図である。
図6】深さ選択的3D高解像度蛍光顕微鏡の2チャンネル仕様を模式的に示す図である。
図7】a)中において点スキャニング切り替えレーザの切り替え強度の適合が、試料内でマーキング密度に行われ、b)には、模式的な画像スタックがx−z断面で示されている図である。
図8】深さ選択的3D高解像度顕微鏡を模式的に示す図である。
図8a】光源から試料までの光路が拡大して示されている図である。
図9】スキャニングマイクロレンズディスク(SML)を備えた深さ選択的3D高解像度顕微鏡を模式的に示す図である。
図10】a)はラインセンサ付きの定位ベースの共焦点高解像度顕微鏡法の原理を示し、b)は歯を刻んだピクセル構造付きセンサ、c)は現状のピクセルジオメトリを備えた、歯を刻んだピクセル構造をマスキングによって実現するための例を示す図である。
図11】深さ選択的高解像度顕微鏡の可能な実施形態を模式的に示す図である。
図12】拡大された光源と空間分解の面検出器を備えた広視野ビーム路を示す図である。
図13】a)には、カメラ画像をz高解像度のための強度が同じ、4つの部分画像に分割するためのモジュールの別の有利な実施形態が示され、b)には、モノリシックな実施形態で、3つのビームスプリッタキューブをT1からT3のために、および3つの鏡面仕上げのプリズムがS1からS3のために、側面から、上面から、および遠近法で示されている図である。
図14図13に従った実施形態と図12に相応なスライド可能なプリズムとの組み合わせを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、蛍光励起されたマーキング分子1の模式図である。当然ながら蛍光検出には多数の励起が必要である。なぜなら各励起は厳密に1つの蛍光光子を供給し、ビーム検出は多くの蛍光光子の統合を必要とするからである。マーキング分子1から放出された蛍光ビームは、顕微鏡内で、物理学の原理に基づいて単に1つの制限された光学解像度によって検出可能である。たとえ顕微鏡が光学解像度の回折限界に達しても、蛍光を発するマーキング分子1の光子は依然として回折が原因で散乱し、それによって回折円盤2内で検出される。顕微鏡は、基本的に、マーキング分子1の幾何学的拡大の代わりに図1に黒い円として模式的に、1つの大きな物体を描写し、これは図1に回折円盤2によって具体的に示されている。回折円盤2の大きさは使用される顕微鏡法装置の質に依存しており、光学結像の点像分布関数の半減幅によって定義される。実際は当然ながら2次元の物体ではなく、回折体積であり、この中に蛍光光子が到達する。図1の2次元の表示では、これはしかし円盤として示されている。回折円盤という用語は、ここではしたがってまったく一般的に最大解像体積であり、使用されるレンズ系はこの体積を達成可能である。使用されるレンズ系はしかし、たとえそれが好ましいとしても、必ずしも回折限界で機能する必要はない。
【0027】
そこでマーキング分子1を回折円盤2内により正確に定位することができるよう、上述の一般的に描写されたPALM方法が使用される。このことは個々のマーキング分子を活性化し、その際本明細書では、まったく一般的に、活性化という用語をマーキング分子の特定の蛍光特性の活性化と理解する。つまり蛍光励起可能性をオンに切り替えることも蛍光放出スペクトルの変化も意味し、このことは特定の蛍光特性のオンへの切り替えに相当する。ここに記述された実施例では、活性化は光学的活性化ビームによって生じる。しかしまた他の非光学的活性化メカニズムでも可能である。
【0028】
活性化は、少なくともいくつかの活性化された分子があり、その重心が別の活性化された分子の回折円盤内になく、つまり光学解像度内に少なくともかろうじてまだ区別され得るように行われる。
【0029】
図2は、模式的に検出器5上の典型的な状態を示しており、この検出器は光子を空間解像度的に統合する。図からわかるように、範囲3があり、この中では回折円盤が隣接するマーキング分子と重なり合っている。しかしこの場合、図2左の範囲3で見られるように、あらかじめ活性化されたマーキング分子だけが該当する。活性化されていないマーキング分子1’は、特定の蛍光ビームを放出し、このビームはマトリックス検出器5上で受容されるが捕捉されず、したがってなんら役割を果たさない。
【0030】
範囲4では、例えばマトリックス検出器5の中央に位置している範囲4の中には、マーキング分子1が、その回折円盤2が他の活性化されたマーキング分子1のどの回折円盤とも重ならないように位置している。マトリックス検出器5の右側の範囲は、その中で回折円盤が活性化されたマーキング分子と重なり合っている範囲3が、重なり合っていない範囲4に対し完全に隣接して位置することができる。それに加えて、右の範囲4は、活性化されたマーキング分子1が活性化されていないマーキング分子1’に対する隣接関係が、検出にとって何の役割も果たさないことを明確にしている。なぜなら、そのようなマーキング分子1’はマトリックス検出器5によって検出される蛍光ビームを放出しない、つまり蛍光を発しないからである。
【0031】
本明細書では高解像度の画像を意味する、機器によってあらかじめ設定された光学解像度を超えて詳細な画像を撮影するため、図3に模式的に示されたステップが適用される。
第1のステップS1では、切り替え信号を使用してマーキング分子のサブセットが活性化される;このサブセットは、特定の蛍光ビームを放出するために励起不可能である第1の状態から、特定の蛍光ビームを放出するために励起可能である第2の状態へと切り替えられる。当然ながら、活性化信号は選択的に非活性化を生じさせることもできる。つまりステップS1で逆の手順が使用されてもよい。基本的に、ステップS1の後でマーキング分子の1つのサブセットだけが特定の蛍光ビームを放出するために励起され得る。活性化乃至非活性化(以下では簡素化のために活性化の場合だけを描写する)は、使用されるマーキング分子に依存して行われる。例えばDRONPA、PA−GFPのような色素または可逆的に切り替え可能な合成色素(Alexa/Cyan構造など)では、活性化が光学的ビームによって行われ、切り替え信号はしたがって切り替えビームである。
【0032】
図3の下に示された図4は、ステップS1後の状態を部分図で示している。マーキング分子l_nのただ1つのサブセットが活性化される。このサブセットのマーキング分子は、完全に目立たせた黒点で表されている。残っているマーキング分子はこのステップで活性化されない。これらは図4の部分図でl_n+1が付けられている。
【0033】
活性化されたマーキング分子は、さらに第2のステップS2で蛍光ビームを放出するために励起され得る。蛍光色素として、好ましくは従来技術で公知の蛍光蛋白質、PA−GFPまたはDRONPAなども使用される。活性化は、そのような分子では、405nmの範囲のビームで、蛍光ビームのための励起は波長が約488nmで、蛍光ビームは490nmを上回る範囲で行われる。
【0034】
第3のステップS3では、放出された蛍光ビームが、例えば記録された蛍光光子の統合により検出され、その結果図4でその下にある部分図に示された状態がマトリックス検出器5上に生じる。見て取れるように、活性化されたマーキング分子l_nの回折円盤は重なり合っていない。回折円盤の大きさは、マトリックス検出器5上の結像の光学解像度によって確定される。さらに図4の部分図bには、蛍光分子の(理論的な)回折円盤が描かれており、この回折円盤は活性化されていないグループl_n+1に属している。なぜなら、これらの活性化されていないマーキング分子は蛍光ビームを放出しないため、それ自身の(理論的な)回折円盤内にある蛍光ビームは、活性化されたマーキング分子のサブセットl_nの蛍光ビームの検出を妨害しない。
【0035】
サブセットl_n中で、マーキング分子がもはや区別がつかないほどに重なり合う回折円盤を可能な限り少なくするため、活性化エネルギーは、サブセットl_nがマーキング分子の総量の比較的小さい比率からのみ構成され、その結果統計的に多くのマーキング分子が、光学的装置によって解像可能な容積に関して区別がつくように調整される。
【0036】
第4のステップS4では、蛍光を発するマーキング分子の位置が計算によって蛍光円盤の回折分布から求められ、それによって活性化されたマーキング分子の位置がわかる解像度が、図4の部分図cに示されたように、光学的装置の解像度を超えて高められる。
【0037】
計算による特定の別法として、記録された蛍光ビームを非直線に増大し、それによって消耗が低減され、光学的装置を超えて解像度を高めることが、まったく原則的に可能である。非直線的な増大は、例えば関数S=A・F(方程式1)またはS=A・expF/w(w=10−Nと共に(方程式2))で記述することができ、その際Fは蛍光信号の振幅、Aはスケール係数およびNは1より大きい整数である。パラメーターSのFに対する強い非直線的依存性が強い、つまり例えば方程式1または2でNの値が高いと特に有利である。当然ながら、他の関数も使用され得る。基本的に非直線性は好ましくは、回折円盤の半減幅が、マーキング分子の位置情報のために取得した空間的な解像度と一致するように選択される。非直線的増大と並んで、非直線の減衰も使用され得る。ここで、蛍光信号はより小さい振幅または強度に減衰され、それに反して強い信号は少なくとも大幅には減衰されないままである。当然ながら非直線の増大と減衰の組み合わせも使用され得る。
【0038】
第5のステップS5では、その位置情報の精度が高められたマーキング分子が、1つの単一画像にまとめられ、この単一画像の空間解像度は、光学解像度を超えて高められる。しかしこれには、その前に活性化されたマーキング分子のサブセットの情報だけが含まれている。
【0039】
第6のステップS6では、単一画像が公知の方法で1つの全体像に調節される。続いてステップS1にジャンプして戻り、その際それまで蛍光を発していた分子は再び非活性化されなければならない。非活性化は、マーキング分子の種類に応じて、別途のビームによりまたは活性化状態の収束により、達成され得る。また、すでに結像したマーキング分子を励起ビームによって退色させることも可能である。
【0040】
各サイクルにより、全体像に寄与する1つの別の単一画像が得られる。次のサイクルでは、マーキング分子の他のサブセット、例えば図4に示されたサブセットl_n+1が活性化される。
【0041】
ステップS1からS6までの複数のサイクルにより、個々のサイクルの単一画像から全体像が作られ、これら単一画像がマーキング分子の位置を空間解像度によって示し、この空間解像度は光学的結像の解像度に対して高められている。適切な回数反復することにより、高解像度の全体像が順次構成される。この方法における回折円盤数の削減は、好ましくは3つすべて空間次元で、z方向に間隔を空けた複数の画像スタックが記録された場合に行われる。そうすれば、全体像には3つすべての空間方向に高解像度でマーキング分子の位置情報が含まれる。
【0042】
図5は、試料7の高解像度の結像のための顕微鏡6を模式的に示している。試料は例えば色素DRONPA(WO2007009812A1参照)によってマーキングされている。活性化ならびに蛍光励起のために、顕微鏡6はビーム源8を備えており、このビーム源は個々のレーザ9および10を持っており、これらレーザのビームはビーム統合器11によって1つに合流される。レーザ9および10は、例えば405nm(活性化ビーム)および488nm(蛍光励起および非活性化)でビームを放出してよい。色素も公知であり(例えば名称DENDRAの色素(グルスカヤ(Gurskaya)ら、Nature
Biotech.,Band 24,p.461〜465,2006参照))、この色素では活性化および蛍光励起が1つの同じ波長で実施可能である。そのため1つのレーザで十分である。
【0043】
音響的光学的フィルタ12は、波長選択のために、および迅速な切り替えのために、または個々のレーザ波長を弱めるために使用される。レンズ系13はビームをダイクロイックビームスプリッタ14で対物レンズ15の瞳に集め、その結果試料7上にはビーム源8のビームが広視野照明として入射する。
【0044】
試料7内に生じる蛍光ビームは、対物レンズ15によって集められる。ダイクロイックビームスプリッタ14は、スプリッタが蛍光ビームを透過させるように設計され、その結果蛍光ビームはフィルタ16を通って結像レンズ17に到達し、その結果蛍光を発する試料7がすべて、検出器5上に結像される。
【0045】
顕微鏡6の操作を制御するために、制御装置が備えられており、ここでは表示部19とキーボード20を備えたコンピュータ18として形成される。方法ステップS2からS6は、コンピュータ18内で行われる。その際マトリックス検出器のフレームレートは、測定の全体時間に重要な影響を及ぼし、その結果測定時間を短縮するためには、可能な限り高いフレームレートを備えているマトリックス検出器5が有利である。
【0046】
図6から図11の符号の意味は次の通りである:
Pr:試料
O:対物レンズ
D、D1、D2、D3、D4:ダイクロイックビームスプリッタ
L1〜L2:光源
Bt1、Bt2:画像スプリッタモジュール(マルチレベル検出)
K1、K2:面レシーバ(カメラ)
S スキャンモジュール(模式的)、X/Yスキャナ付き
Sx:1次元スキャナ(X方向)
TL:結像レンズ
SO:スキャン対物レンズ
SLM:光空間変調器(空間的光変調器)
G:格子
SML:マイクロレンズアレイ
SE:センサ装置の個別センサ
B1、B2 調整可能なスリット絞り
Ld1、Ld2:ライン検出器
ZL:円柱レンズのようなアナモルフィックレンズ
SF:ライン状焦点用ビームフォーマ(アナモルフィックレンズ)
ほとんどの図面は共通して、図6から図10でPAL−M方法の例に記述されているように、第1のレーザL1は色素を切り替える(活性化する)ために備えられていてよく、レーザL2、L3は試料Pr中の色素の蛍光励起/非活性化のために広視野で備えられていてよく、1つまたは複数のカメラ(好ましくはCCDE)が広視野検出のために備えられていてよい。
【0047】
開示中に入れられているのは、冒頭の従来技術で記述されているように、高解像度の顕微鏡画像を生成するための、時間に依存した色素の活性化/非活性化のための別の方法である。
【0048】
マルチレベル検出においては、例えば特に画像スプリッタモジュールが図12から図14による、乃至アナモルフィック結像、ならびに従来技術(非特許文献7、8)の実施形態であると理解される。
【0049】
「ROI」(Regions of Interest、関心領域)とは、自動でまたは手動で、例えば一覧画像を使ってあらかじめ選択した領域と理解され、この領域には選択的にビームが当てられてよい。
点スキャナによる2P切り替え付きバイプレイン検出スキーム
図6は、深さ選択的3D高解像度蛍光顕微鏡の2チャンネル仕様を(模式的に)示している(2つの異なる、同時に観察する蛍光色素分子、2つのカメラK1、K2を使用)。
【0050】
点スキャニング式スキャンモジュール(S)は、照明方向にレーザ(L1)を切り替えのために、非直線の励起を介して、特に2P励起を介して行い、これはpsレーザダイオードまたはそれどころかcwダイオードレーザで範囲780から830nmであってよく(または他の、2P切り替えプロセスに適切な波長)、コージエライトD1を介してレーザL1が照明ビーム路に連結されている。
【0051】
広視野励起のためのレーザL2およびL3は、異なった波長で、Dを介して照明ビーム路に連結されている。蛍光検出は、D2を介してカメラK1、K2の伝達方向に行われ、D3を介して異なった波長の2つの蛍光色素分子のための2つのカラーチャンネルへ分割されている。各色のために、1つの画像分割が、画像スプリッタモジュール(Bt1およびBt2)によって図12から図14に記述されているように行われ得る。
【0052】
ここでは有利には、蛍光励起がレーザ広視野照明によって行われ、ならびにPALMおよび同等の定位ベースの高解像度方法のように普通である、広視野検出が(高感度)カメラによって行われる。
【0053】
検出はここでは有利には、バイプレイン(マルチレベル)検出スキーム(非特許文献7、8)、図12から図14を使って分子の高精度の定位のために、z軸上でも行われる。
その際画像は有利には(図12から図14参照)、画像スプリッタモジュール(Bt1/2、図6)によって、2つの部分画像がそれぞれ半分の強度で生じ、その結合された物体レベルが例えば軸方向のPSFの約半分だけずらされるように分割される。
【0054】
この部分画像は、隣り合ってカメラセンサ(K1/K2)上に結像し、1つの蛍光色素分子の2つの部分画像からそのzポジションを特定するために、(非特許文献7、8)に応じて評価され得る。
【0055】
この画像スプリッタモジュールの特に有利な実施形態では、図12から図14の対象が以下の利点を備えている:
− テレセントリシティ − zポジションの関数として結像基準に変化がない
− 検出器上へ平行に入射(z依存のPSFひずみがない)
− 調整可能なz分割およびそれによる、異なった対物レンズおよび埋込み媒体への適合可能性
− 分割をゼロに調節する可能性、その際
− 参照画像レベルが試料表面にあってよい;調節可能な分割は、試料の中へと実施される(およびカバーガラスの中へではない、公知の実施形態のように)
− 完全なセンサによる通常のカメラ結像を有効に利用するため分割を取り除く可能性。
【0056】
特に有利には、図12から図14による、描写された画像スプリッタモジュールが達成した被写界深度範囲、2光子励起の最小の層厚さ(例えば700nm)のような類似の範囲内にあり、あるいは図12から図14による装置によって変動して適合され得る。こうして活性化された(=切り替えられた)層と高解像度で測定された層との最適な重なり合いが生じる。
【0057】
その励起不可能な状態から励起可能な状態(PALMの前提条件)への、蛍光色素分子の切り替え(フォト変換)は、ここでは焦点に集められた点スキャニング励起ビームによって行われ、この励起ビームの波長が、切り替えプロセスが2光子(または3光子、一般的な多光子)の吸収プロセスによって行われるように選択され、他方でそのように切り替えられた蛍光色素分子の蛍光励起および蛍光検出が広視野で行われる。
【0058】
PALM方法における光電スイッチの確率的な活性化に基づき、ラスタライズされた活性化はその際必ずしもカメラの写真撮影と同期される必要はない。
2P切り替え(変換)は有利には、2光子顕微鏡法から公知の「セクショニング」、つまり焦点面にある分子のみの選択的な励起をもたらす。こうして、共焦点ピンホールを入れる必要なく、共焦点顕微鏡法と同等のz解像度が達成される。これにより、この方法は簡単にPALMに必要なカメラ広視野検出と組み合わせられ得る。
【0059】
加えて、共焦点の検出とは対照的に、共焦点の外の切り替えが回避される。このことは特に高解像度のzスタックの記録のために重要である。
PALM顕微鏡法のフォト変換(切り替え)に通常使用されている光電スイッチが必要とする強度が極度に少ないことが公知である。したがって2P効果は安価なcwレーザでも達成可能であり、2P顕微鏡法のための高価なショートパルスレーザに対して有利である。
【0060】
2P切り替えプロセスのためにより高い出力を必要とする蛍光色素分子または応用乃至試料準備のために、ピコ秒モードで操作されるレーザダイオード(実施例)、または他の、安価なpsレーザシステムを使用され得る。
【0061】
典型的な2P切り替え波長は、普通のPALM蛍光色素分子のために、760から850nmにある。これは安価な半導体レーザがカバーできる範囲である。
図7では、a)中において点スキャニング切り替えレーザの切り替え強度の適合が、試料内でマーキング密度に行われる。定位された分子のレートがより高密度にマーキングされた範囲IIに合わせるために、薄くマーキングされた範囲Iでは切り替え強度が高められる。7bは、模式的な画像スタックがx−z断面で示されている。
【0062】
スキャニング活性化レーザの目的に合わせたオン切り替えが、前もって手動でまたは自動で定義されたROIの中でのみ行われることにより、現在撮影している層の上または下で望ましくない切り替えがされないよう回避される。このことは、複数のそのような層から構成されるzスタックを撮影する場合に特に有利である。
【0063】
点スキャニング切り替えビームにより、ROI(Region of Interest、参照:独国特許第19829981A1号明細書)に定義された、その蛍光色素分子内で活性化される;TIRF−PALMでは反対に常にすべての試料範囲が活性化される。こうして、ここで記述された方法を使用して例えば、切り替え強度が1つのフレーム内で最適に試料のマーキング密度に適合され得る(図7a)参照)。これにより、画像撮影時間が短縮されてよく、このことは特に3D画像スタックの撮影に重要である。加えて、異なった蛍光色素分子によってマーキングされた試料範囲の定位レートも、互いに適合されてよい。
【0064】
別の利点は、現在撮影しているz層の上または下で試料範囲の分子の望ましくない切り替えの最小化されてよく(上記の2P励起の内在するセクショニングに加えて)、それは活性化ビームが試料範囲内でのみ、染色された構造によってまったくオン切り替えされる(図7b))。
【0065】
両方の効果は、それが焦点に集められてスキャンされる場合、原則として従来型の1P切り替え源によっても達成される。とはいえ、非常に有利な2P吸収のセクショニングがそれによって達成されない。
【0066】
2P切り替え用の個数制御のフィードバックのための連続的な手順のために有利な方法は、発明に従って実施することができる。
これによって、不均質に着色された試料が異なった試料範囲で、比較可能な定位密度に迅速に達し、それによって撮影時間の加速が可能になる:
カメラ画像の撮影後(オプション:リアルタイム定位)、
ROIごとに定位された分子の数量または数密度の特定が行われ、
ならびに{面ROI:Anzahl}とPSFの比較が以下のように行われる:
PSFより{面ROI:Anzahl}がより大きい場合、2P切り替えビームの強度はこのROIのために高められる
PSFと{面ROI:Anzahl}が同じ(範囲内)場合、2P切り替えビームの強度はこのROIのために低減される
適切な強度変調がスキャニング2P切り替えビームに出力され、次のカメラ画像が撮影される。
2P切り替えのための、ROI制御のフィードバックのための発明による方法:
現在測定している試料レベルの上または下で試料範囲の分子の望ましくない切り替えが、以下のステップで最小化される:
− 1つまたは複数のROIの定義は、自動または手動で、より高い切り替え強度および/または励起強度で撮影された第1の画像を使用してまたは他のコントラスト関数によって得られた画像(DIC)を使用して行われる
− スキャニング2P切り替えビームに適切な強度変調を出力、その結果あらかじめ設定されたROIの範囲にだけ切り替えビームが「オン」になる。
【0067】
− あらかじめ定義されたこのROIの範囲内で、9.3.2にあるように、切り替え強度の適合が分子の計数率に対して行われてよい。
記述された切り替え強度の調整は、同時に測定され、異なった蛍光色素分子で染色された試料には特に有利である。
【0068】
こうして、異なった分子の、場合によって異なった切り替えレートが、切り替え強度の空間的な適合に合わせられ、それによって多色測定のための撮影時間が低減されてよい。ROIは、試料特徴に基づいて定義されてよく、またはしかし、フィールドに適した大きさを持つ規則正しいラスターとして画像の上に置かれてよい;後者は、特に広視野切り替え照明(temporal focussing、テンポラルフォーカシング、spinning microlens disc、マイクロレンズディスク回転)を備えた以下の実施形態にとって有利である。
レンズスキャナを使用した2P切り替え付きバイプレイン検出スキーム
蛍光色素分子の確率的なサブセットのPALMに必要な活性化をカメラフレームごとに達成するために、点スキャナの非常に高いスキャン速度の特に迅速な画像撮影レートが必要であり得る。2P切り替えのためのラインを使用することで、スキャナ速度が相応して低下する。ラインと結びついている、ピーク強度の低減は、必要となる切り替え強度が小さいことを理由に甘受し得る。
【0069】
2P励起の図6にある点スキャナの代わりに、ラインスキャナも使用され得る(図11も参照)。
色素を切り替えるために必要な強度が少ないことにより、スキャンされたラインを2P切り替えプロセスと合わせて使用することも可能になる。
【0070】
このラインは、例えばアナモルフィックレンズ系によって生成され得る、および1次元スキャナを使用して物体を通って動かされ得る。
利点は、迅速なスキャンが可能なことである。なぜなら1次元スキャンだけが必要だからである。
【0071】
活性化が確率的に行われ、広視野内で検出されるという理由で、ラインは画像撮影と同期されてはならない。
テンポラルフォーカシングを使用した2P切り替え付きバイプレイン検出スキーム
図8は、深さ選択的3D高解像度顕微鏡を(模式的に)示しており、これは以下を備えている;活性化レーザとしてのL1、L2、励起レーザとしてのL2、格子G:格子;SLM:光空間変調器(これに関して例えばDE19930532A1を参照);D1からD4はダイクロイックビームスプリッタ乃至ユニファイヤー、Bt1および2:画像スプリッタモジュール、それに対してK1およびK2はカメラ。
【0072】
図8aには、光源から試料までの光路が拡大して示されている。
照明ビーム路は実線で、結像は点線で示されている。
これは、図9の表示にも当てはまる。
【0073】
対物レンズOは、模式的に1つのレンズで示されている。
格子は中間画像内にあり、次の中間画像へ結像され(点線)、その中にはSLMがある。これは再度、試料へ結像される。
【0074】
それに対してレーザの照明束(実線)は「ずらされ」、この中ではシャープな中間画像距離(格子、SLM、試料)内には照明スポットがある。スポットはそれぞれ最大でピントが外れている。
【0075】
ここではやはり、ROI関数が上述のように実施されるが、違いは各切り替え強度がここではSLMを介して中間画像内で調整されることである。
この装置は可動部品のないこと(非スキャニング)で有利であり、前述のスキャン装置と比べて同程度の柔軟性を達成する。
【0076】
深さ選択はここでは2P切り替え効果により、時間的合焦との組み合わせで達成される(非特許文献11およびその中の参照)。そのために、ショートパルスレーザL1の膨らんだビームは、2P励起の切り替えプロセスに適した波長によって格子Gが照らされる。格子の照らされた範囲は、試料内に写し取られる。格子はレーザパルスのスペクトル成分を分割し、その結果元の短いパルス形状は結像の焦点(および場合によって中間画像)だけに到達され、相応してそこだけに、高いピーク強度が2P活性化プロセスにある。
【0077】
非特許文献11に示されたように、テレスコピックビーム路は試料中で初めて試料(テレスコープの画像レベル)ショートパルスに回復される。
SLMが分割された波長のモジュレーターとして、結像の中間画像中に位置決めされ、そこでは元々のパルス形状が再び作り出される。
【0078】
SLM要素の選択的切り替えによりROIが生じる。
ここではROI関数が広視野励起でも(切り替えに加えて)行われてよい。そのために、レーザ広視野励起がSLMによってもたらされなければならないかまたは固有のSLMが得られなければならない;それから、ROIの別々の定義が励起および切り替えのために可能である。この実施形態は図8に、2色励起および検出のために示されている。
【0079】
SLMの別法として、DMD(Digital Micromirror Device、デジタルマイクロミラーデバイス)アレイも使用され得る;構成は図8と同様で、DMDアレイはここではしかし反射が使用されなければならない(やはり中間画像中)。
点スキャナによる2P切り替え付き非点収差/円柱レンズ検出スキーム
構成は図6、8、9に相当するが、円柱レンズZLが検出ビーム経路中に、Bt1および/またはBt2の代わりに使用されている。
【0080】
これは図6、8、9中ではオプションで矢印によって示されている。
回転するマイクロレンズディスクを使用した2P切り替え付きバイプレイン検出スキーム
図9には、スキャニングマイクロレンズディスク(SML)を備えた深さ選択的3D高解像度顕微鏡が(模式的に)示されている。それ以外では名称は図8と同じである。
【0081】
照明が2PレーザL1によって例えば800nmで(例えばpsレーザダイオード)で行われる。マイクロレンズアレイ(scanning microlens array)(SML)へのビーム適合後、(回転する)マイクロレンズの焦点は、中間画像を介してその中にあるSLMと共に試料内に結像される。これによって迅速にスキャンされた2P点光源が蛍光色素分子の切り替えのためにROI関数によってSLMを介して実現される。
【0082】
さらに、レーザ広視野照明の連結が蛍光色素分子を励起するためにコージエライト1(D1)を介して行われる。検出およびz情報は上記の例と一致する。
利点は:
− 速さ、
− および広視野照明による共焦点の深さ識別、ROI関数との組み合わせでSLMまたはDMDによる。
レンズスキャナ付き共焦点高解像度顕微鏡
記述された定位ベースの高解像度方法は、原理上標準LSMでは実施できない:サブPSF精密定位は、同時の空間的なオーバーサンプリングにより、カメラピクセルによって行われなければならない。なぜなら分子は限定された時間だけ蛍光を発するかあるいは予測不能な時点に(確率的に)活性化されるからである。これにより、分子の重心が連続的に特定される方法(ラスター法)が排除される。
【0083】
これまで実践されたような広視野結像ではやはり、望ましい深さ選択はLSMの共焦点結像によって省略する。
ここで提示される装置は特殊なラインセンサ(図10)から成り、対応する顕微鏡(図11)はしかし、共焦点ラインスキャンと定位ベースの高解像度との有利な組み合わせを可能にし、それによってPALMのような高解像度顕微鏡法が共焦点顕微鏡深さ選択との組み合わせで可能になる。
【0084】
レンズの焦点深度を高めるため、切り替えおよび/または励起のためのライン照明が多光子プロセスによっても行われる。
このアプローチは、ここで深さ選択が共焦点線結像によって達成されることによって、図6と異なっている。
【0085】
図10:a)はラインセンサ付きの定位ベースの共焦点高解像度顕微鏡法の原理を示し、10b)は歯を刻んだピクセル構造付きセンサ、10c)は現状のピクセルジオメトリを備えた、歯を刻んだピクセル構造をマスキングによって実現するための例である。
【0086】
図10a)は、2行ラインセンサ(例えば機械視覚にしばしば使用されているようなラインスキャンカメラのセンサ)を使用して原理を説明している。
横向きの定位(行方向に沿って)は、周知のように、重心形成または適切な関数(1D−ガウス)を当てることで行われてよく、その際、両方の行の、相互に入り込んでかみ合っているピクセルを考慮に入れなければならない。行方向に直交している定位は、向かい合っているピクセル行に対応するピクセルの差違信号の形成により行われてよい。ここでこの原理は位置敏感検出器(position sensitive detector、PSD)に相当する。PSD関数が保証されるよう、共焦点スリット絞りがエアリユニットよりも少し多く開かれなければならない。
【0087】
このアプローチでもたらされてよい、x方向およびy方向の異なった定位精度は、別法のセンサ設計によって適合され得る。図10b)は、2つの相互に入り込んでかみ合ったコームを備える可能なセンサ構造を示している。
【0088】
ここでは、y座標を特定するためにあらかじめ算出されたxポジションが評価され、考慮されなければならない。なぜなら、歯を刻んだピクセル構造により、PSD関数(y重心特定)は定位するべき分子のxポジションに依存するからである。
【0089】
ラインの結像は、PSF幅がちょうど1つのピクセル行の幅と一致するように選択される;これはしかし、相互に入り込んでかみ合ったコーム構造の中央にセンタリングされる。
【0090】
図10c)は、従来型の、正方形のピクセルジオメトリをベースにした別法の実現提案を示している。ここでは、このピクセルオリエンテーションを保つために例えば通常のセンサが45度回転されてよい。原理的に、これに加えて面センサが使用されてもよく、この面センサは所望のラインを除いて検出のためにマスキングされる。このマスクは可変の絞りとして仕上げられてもよい。
【0091】
本発明に従い、複数の有利な2つのピクセル行が評価のために使用される。10a)から10c)では、それぞれ模式的に点線で分子が描かれており、これは複数の検出器要素によって把握される。
【0092】
この目的のために、2つの行が同時に把握されるよう、レンズスキャナの既存のスリット絞りがいくらか開かれる。10aおよび10bでは、これによって把握されたスリット画像が示されている。図10c)では、把握された範囲が例として、その上およびその下にある非表示範囲と比べていくらか明るく示されている。
【0093】
有利には隣り合っている、それぞれ1つの信号を把握する4つの検出器要素から相互に減法することにより、把握された分子の重心が正確に特定され得る(数量と減法結果の符号により)。
【0094】
それに加えて、深さ情報が形状および大きさから、例えば前に引用した方法によってもたらされる。
図11はこのセンサ原理をベースにした、深さ選択的高解像度顕微鏡の可能な実施形態を模式的に示している。
【0095】
図11は、例えば2色検出のための、レンズスキャナを備えた深さ選択的2D高解像度共焦点顕微鏡を(模式的に)示している。切り替えレーザおよび励起レーザ(L1からL3)は、ビームフォーマ(SF)によってライン形状にされ、空間方向もラスタライズされる(スキャナSx)。検出では、ラインが対応するスリット絞りによって共焦点にライン検出器(Ld1、Ld2)上に、本願で前述されたように結像される。D1からD4は、ダイクロイックビームスプリッタ乃至ダイクロイックユニファイヤーである;
照明のためのラインは、ビーム成形レンズ系SF(円柱レンズ)によって制御され、空間方向にラスタライズされる(スキャナSx)。蛍光はスリット絞りB1およびB2を通って(ここでは実施例が2つのカラーチャンネルを備えている)共焦点で図10に示されたようなライン検出器Ld1およびLd2に結像される。
【0096】
図12から図14は、有利な可変画像スプリッタモジュールBt1、Bt2(例えば図6参照)がz分割のために示されている。
符号の個別の意味:
E1、E2:物体レベル
BM:画像スプリッタモジュール
O:対物レンズ
Dic1:メインカラースプリッタ
L1 光源
EF:エミッションフィルタ
TL:結像レンズ
SP:偏向ミラー
B:絞り(テレセントリック絞り)
L1、L2:レンズグループ
Dic2:オプションのフェードアウト用カラースプリッタ
BS:ビームスプリッタキューブ
P1 重偏向プリズム、光学軸に対して調整可能に垂直に
P2 偏向プリズム
DE 広視野検出器
S1、S2:センサの半分
e1、e2 画像レベル
図12は、拡大された光源と空間分解の面検出器、例えばCCDカメラを備えた広視野ビーム路を示している。
【0097】
光源L1の光は、Dic1および対物レンズOを通って試料Prに到達する(反射する)。反射するおよび蛍光を発する試料光は、対物レンズを通って検出の方向に到達する。
スプリッタDic1のところでおよびフィルタEFを通って、所望の光の選択、ここでは反射光の抑制が行われ、つまり蛍光だけが検出方向に到達する。
【0098】
SP、L1、L2を通って試料光は本発明による配置内でBS、P1およびP2から出て検出器DE上に到達する。
E1およびE2は、試料Pr中の異なった物体レベルである。
【0099】
図12aは、発明に従った可変画像スプリッタモジュールBMの拡大図である。試料Prの画像はビームスプリッタキューブBSを通って検出器DE上で2つの部分画像に分割される。プリズムP1は、2つの物体レベルの分割を調整するために、モータ駆動で光学軸に垂直にずらされる。P2(固定)により、ずらされた部分図は再び連続したビーム路に入射し、P2によって空間的に、ビーム路に対してずらされ、つまりDE上で横へずらされる。
【0100】
Pr内の1つおよび同じ物体レベル、例えばE1の画像レベルe1からe3に基づき、本発明がさらに説明される:
点線で表されたP1のポジションは、BMから可能な最短距離の位置を示している;これによって得られた画像レベルe3は検出器DEの背後にあるはずである。
【0101】
偏向されていない部分図の画像レベルe2は、センサ上にある(センサの部分領域S2)。プリズムP1を外側へ、図12aの下側の位置へずらすことで、経路が延長され、画像レベルe1が前側に移動する(光経路に対して逆に)。その結果、物体レベルE2にある物体(分子)が、センサの半分S2の上でシャープになり、センサの半分S1がピントが外れて結像される。同様のことが物体レベルE1上乃至E1とE2の間にあるにある物体でも当てはまる。
【0102】
E1はシャープにS1上に、E2はシャープにS2上に、そのほかすべてはピントが外れているはずである(同じプリズムポジションで)。
図12bでは、分子1、2、3の拡大された点画像が、それぞれ物体レベルE1、E2からセンサの半分S1およびS2上へ、示されている。
【0103】
ここからわかるのは、E1およびE2ではそれぞれ異なったレベルに配置されている分子(E1の1およびE2の3)がS1(分子1)で、およびS2(分子3)でシャープに検出され、その一方で分子2がそれぞれ同じに、ピントが外れて検出される。なぜならそれは明らかにE1とE2の間にあるからである。
【0104】
検出器セクション上の分子の大きさから、その試料中のz方向の正確な位置も推論され得る。
図面中にはさらに、両方物体レベルE2上にある2つの分子のビーム経路が示されている。
【0105】
絞りBは半分に減らされた画像セクション(センサの半分S1およびS2の大きさに相当)を定義し、およびこの範囲の外から光が2つの部分ビーム経路に混ざることを阻止する。
【0106】
2つの部分画像への分割は、50/50ビームスプリッタキューブBSで行われる。
向きを変えられた部分図を直接結像した部分図内で異なった画像レベルに焦点を集めるタスクは、プリズムP1によって行われる。このプリズムP1は、空中の対応する経路と比較して、対応する光束の後部焦点距離を延長する;したがってこのプリズムは、可能な限り大きな作用範囲を得るために、好ましくは高屈折ガラスから作られている。この光束はプリズムP2を通って再び直接ビーム路に対して平行に入射され、および画像センサDE上のセクションS1に偏向される。
【0107】
プリズムP1内の最後のレンズ系/レンズL2の後ろで後部焦点距離を延長することにより、偏向された部分図の経路長が不可避的に大きくなったにも関わらず、異なった物体レベルE1、E2からの両方の部分画像が同時にシャープに検出器DE上に結像されるよう、プリズム長さを選択され得る。
【0108】
プリズムP1の方法により、直接のビーム路の光学軸に対して垂直に、両方の部分画像の焦点レベルのz移動は、異なった物体レベルから)試料中に調整され得る。
こうして分割は例えば有利には、異なった対物レンズに適合され得る。
【0109】
このことはここで、システムの後合焦なしでも可能である。なぜならシステムは「ゼロ」からの移動が調整され、特にカバーガラス表面観察時に第2の焦点レベルが試料中に(およびカバーガラス中にではなく)動かされるよう設計されていたからである。
【0110】
プリズムP1のガラス経路を省略し、光学軸に対して垂直に移動可能な共通の偏向ミラーをただ2つだけ使用した別の装置では、有利には、2つの異なった物体レベルがシャープにカメラ上に結像できるはずである。
【0111】
しかし横側の経路が理由で、ゼロ調整ができないはずであり、ミラーの横方向への出発は常にさらに「カバーガラス」内へと動くはずである。試料空間内の第2の物体レベルの変動のために、物体レベル分割をミラーによって調節しなければならないはずで、対物レンズ側でカバーガラスが再びシャープに、方向転換を通って検出器上に結像するように後合焦される。しかし、この説明された装置は、それにもかかわらず個々に開示される発明の範囲内にある。
【0112】
プリズムP1を異なったガラス経路を持つ他のプリズムと交換することは、本発明に従い可能である。
ビームスプリッタDic2の左にあるレンズ系L1と共にレンズL2を通って物体から検出器上への結像は、全体として有利にはテレセントリックである。
【0113】
調整可能な、好ましくは長方形の絞りBは、中間画像内で、長方形の、およびP1、P2を通って分割された画像領域を定義するため、および蛍光およびこの新領域の外のフィールド範囲からの散乱光を抑制するために使用される。
【0114】
多色実験のために、第2のエミッション長がカラースプリッタDic2を通って出射されてよく、および第2の、好ましくは同じz分割モジュールおよび別の検出器を使用してこのビーム路が同じように高解像度の定位のために使用されてよい。
【0115】
場合によっては、対物レンズの軸方向色収差または個々の分子のz定位に影響のある、色に関する他のエラーは、第2のカラーチャンネルのために分割を適合することによって補正され得る。
【0116】
図13a)は、カメラ画像をz高解像度のための強度が同じ、4つの部分画像に分割するためのモジュールの別の有利な実施形態を示している。
図13aの左は、独立したミラーおよびビームスプリッタを備えた実施形態を示している。第1のスプリッタT1、ここでは25/75スプリットは、伝送および反射に関して光の1つの部分を、検出器DE4の面Q1上に偏向する。
【0117】
第2の部分はT1で反射され、ミラーS1を通って第2のスプリッタT2の方向に66/33の比率で偏向される。これにより光の1つの部分がDE4の面Q2の方向に通り、1つの部分がミラーS3の方向に反射し、このミラーが光を50/50スプリッタT3の方向に偏向する。1つの部分はT3を通ってDE4の面Q3の到達し、1つの部分がS3を通ってDE4の面Q4の方向に偏向される。
【0118】
zレベルの分割により、モータ駆動の仕様では、ビームスプリッタキューブのそれぞれ1つの「キューブ長」分の、4つの均等に移動された画像レベル乃至物体レベルが生じ、その際DE4の四半分Q1で画像が直接の通路内に見え、四半分Q2は「規格距離」(=モノリシック構造右のビームスプリッタキューブ長)だけ、四半分Q3が2つだけ、および四半分Q4が3つの距離だけずらされた画像である。
【0119】
ここで制限なしに示された3ビームスプリッタの分割比率は、4つすべての四半分が好ましくは同じ強度になるよう働く。
図13bは、モノリシックな実施形態で、3つのビームスプリッタキューブをT1からT3のために、および3つの鏡面仕上げのプリズムがS1からS3のために、側面から、上面から、および遠近法で示されている。
【0120】
図3a)およびb)の装置は、図12を使用して記述されたように、有利にはテレセントリック検出ビーム経路にも適している。
図13の発明に従った装置の利点は特に、4つの試料レベルからの4つの画像によって、有利にはz決定のための4つのサポート箇所があり、それによってより正確なz決定がより大きい作用範囲で可能であることでもある。
【0121】
高感度EMCCDカメラの正方形のセンサフォーマットはより一層効率的に利用される。
図14では、有利には、図13に従った実施形態と図12に相応なスライド可能なプリズムとが組み合わさる。
【0122】
右はセンサ方向からの図であり、左は平面図である。
ミラーS1からS3の代わりに、図14ではプリズム1から3が備えられ、これらのプリズムは光経路が光学軸に平行に、媒体よってより高い光学的密度に定義されている。図13と比べて、ここでは追加の偏向要素1から3を各部分ビーム経路への再入射のために使用する。
【0123】
光学軸(光方向)に対して垂直に調整可能な3つのプリズム1から3はそれぞれ、センサのそれぞれ1つの四半分Q2から4(図13)を備え、第4の四半分Q1は直接通路で露光される。これで各プリズムは、異なったレベル層に調節され得るはずである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図8a
図9
図10
図11
図12
図13
図14