特許第6018299号(P6018299)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6018299単一ドナーのトロンビン血清を調製する方法および機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018299
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】単一ドナーのトロンビン血清を調製する方法および機器
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/36 20060101AFI20161020BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20161020BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   A61K37/46
   A61P7/04
   A61M1/36
【請求項の数】30
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-515297(P2015-515297)
(86)(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公表番号】特表2015-521203(P2015-521203A)
(43)【公表日】2015年7月27日
(86)【国際出願番号】US2013061756
(87)【国際公開番号】WO2014052496
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2014年11月28日
(31)【優先権主張番号】61/705,535
(32)【優先日】2012年9月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514206411
【氏名又は名称】ステム セル パートナーズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】チャップマン ジョン アール
【審査官】 鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−515853(JP,A)
【文献】 特表2004−500026(JP,A)
【文献】 特表2003−517272(JP,A)
【文献】 特表2002−506038(JP,A)
【文献】 特表平11−503125(JP,A)
【文献】 特開2006−305365(JP,A)
【文献】 特表2002−541924(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/110948(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00−38/58
A61M 1/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロンビン血清を調製する方法であって、
第1の血液アリコートを凝固促進剤と接触させて活性化された凝固促進剤を形成する工程と;
前記活性化された凝固促進剤を保存する工程と;
第2の血液アリコートを前記保存された活性化された凝固促進剤と接触させてトロンビン血清を含む混合物を形成する工程と;
前記混合物から前記トロンビン血清を抽出する工程と
を含む方法。
【請求項2】
トロンビン血清を調製する方法であって、
第1の血液アリコートを凝固促進剤と接触させて、凝固促進剤の表面へ結合されたプロトロンビナーゼ酵素複合体を含む活性化された凝固促進剤を形成する工程と;
前記活性化された凝固促進剤を保存する工程と;
前記保存された活性化された凝固促進剤を第2の血液のアリコートと接触させてフィブリンゲルを含む混合物を形成する工程と;
前記フィブリンゲルを粉砕する工程と;
前記粉砕工程後に、前記混合物からトロンビン血清を抽出する工程と;
前記抽出されたトロンビン血清をフィブリノーゲンと接触させてフィブリンを得る工程とを含む方法。
【請求項3】
エタノールにより安定化したトロンビン血清を調製する方法であって、
第1の血液アリコートを凝固促進剤と接触させて、凝固促進剤の表面上のプロトロンビナーゼ酵素複合体を含む活性化された凝固促進剤を形成する工程と;
前記活性化された凝固促進剤を保存する工程と;
前記保存工程後に、活性化された凝固促進をエタノールが体積で約15%〜25%の間の濃度で存在する第2の血液のアリコートと接触させて、エタノールを補足したトロンビン血清を得て、フィブリンゲルを含む混合物を形成する工程と;
前記フィブリンゲルを粉砕する工程と;
前記粉砕工程後に、前記混合物からエタノールを補足したトロンビン血清を抽出する工程と;
前記抽出されたエタノールを補足したトロンビン血清をフィブリノーゲンと接触させてフィブリンを得る工程と
を含む方法。
【請求項4】
単一ドナーから血液を採取し、前記血液アリコートが前記血液から抽出される工程をさらに含む、請求項1、2、または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記得られた血液が自己由来血液である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記血液が、全血、クエン酸抗凝固全血もしくは血漿、多血小板血漿を含む血漿、バフィーコートに富む血漿、乏血小板血漿、全骨髄、クエン酸抗凝固骨髄、全臍帯血、クエン酸抗凝固骨髄、プロトロンビンを含む血液画分物質、およびその組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記血液のアリコートが、遊離カルシウムイオンを含有するように再カルシウム化される、請求項1、2、または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記凝固促進剤が、ガラス、ガラス球体、グラスウール、カオリン、セラミック、コットン、エラグ酸およびその組み合わせからなる群から選択される、請求項1、2、または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記トロンビン血清の抽出がシリンジのプランジャーを引き抜くことによって実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記エタノールを補足したトロンビン血清の抽出が、シリンジのプランジャーを引き抜くことによって実行される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記活性化された凝固促進剤が、約1分〜10時間の間の期間で保存される、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記活性化された凝固促進物が、追加の血液アリコートと共に反復的に使用されて、需要に応じてトロンビン血清を産出する、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記フィブリンゲルの粉砕が1または複数回実行される、請求項2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記フィブリンゲルの粉砕が機械的撹拌で実行される、請求項2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
血液を処理するための機器であって、
実質的な漏洩なしに凝固促進剤および血液を保持するために構成された1つまたは複数のコンパートメントを含み、そこで保持された前記凝固促進剤が前記血液と反応してフィブリンゲルを形成するために構成される、反応チャンバーと;
反応チャンバーの中へおよび反応チャンバーから外への液体の導入のための手段と;
反応チャンバー中の微粒子物質の保持のための手段と;
フィブリンゲルからトロンビン血清を隔離する手段と;
を含み、
1つまたは複数の固体の分離した物体が反応チャンバー中に存在し、前記固体の分離した物体がフィブリンゲルの粉砕のためにサイズ合わせされる、
機器。
【請求項16】
前記分離した物体が少なくとも4mmの横断面を有する、請求項15に記載の機器。
【請求項17】
前記反応チャンバーが、少なくとも1つのルアーロックを含むキャップで密封される狭い端部を含む円筒状のボトルである、請求項15に記載の機器。
【請求項18】
液体の導入のための前記手段がアダプターであり、四方活栓が前記アダプターへ連結され、前記四方活栓が少なくとも2つの一方向のバルブを含む、請求項15に記載の機器。
【請求項19】
前記機器が微粒子物質の保持のためのフィルターをさらに含み、前記フィルターが凝固促進剤のサイズよりも小さい孔サイズを有する、請求項15に記載の機器。
【請求項20】
前記フィルターが、直径約30ミクロンを超える微粒子物質を保持するようにサイズ合わせされる、請求項19に記載の機器。
【請求項21】
前記導入のための手段が、液体の導入および除去のための少なくとも1つの拭き取り可能なポートを備えている、請求項15に記載の機器。
【請求項22】
前記機器が、反応チャンバーの持続的加圧を回避するように構成された空気抜きをさらに含む、請求項15に記載の機器。
【請求項23】
前記反応チャンバーがプラスチックから構成される、請求項15に記載の機器。
【請求項24】
前記反応チャンバーがガラスから構成される、請求項15に記載の機器。
【請求項25】
前記固体の分離した物体が、ガラス物体、金属物体、プラスチック物体およびその組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の機器。
【請求項26】
固体の分離した物体が凝固促進剤ではない、請求項15に記載の機器。
【請求項27】
前記血液が、全血、クエン酸抗凝固全血もしくは血漿、多血小板血漿を含む血漿、バフィーコートに富む血漿、乏血小板血漿、全骨髄、クエン酸抗凝固骨髄、全臍帯血、クエン酸抗凝固骨髄、プロトロンビンを含む血液画分物質、およびその組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の機器。
【請求項28】
前記反応チャンバーが乾燥カルシウム塩により補足される、請求項15に記載の機器。
【請求項29】
前記反応チャンバーがカルシウム塩溶液により補足される、請求項15に記載の機器。
【請求項30】
前記カルシウム塩が塩化カルシウムである、請求項28および請求項29のいずれか一項に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は非仮出願であり、2012年9月25日に出願された米国仮特許出願第61/705,535号に対する優先権を主張する。その特許出願の全体は、あたかも完全に述べられたかのように本明細書において援用される。
本発明は、血液中に存在するプロトロンビンのトロンビンへの転換、より詳細には血中の活性化されたカスケード凝固タンパク質の濃度の増加のための機器および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血漿凝固は、強力なセリンプロテアーゼであるトロンビン(FIIa)を最後から2番目に生産する、1シリーズの相互に連結した自己増幅性の酵素原−酵素転換(図1)を介して起こると考えられる。これは「凝固カスケード」と命名され、最終的な工程において、プロトロンビンは、プロトロンビナーゼ酵素複合体と呼ばれるカルシウムとの多重タンパク質複合体によってトロンビンに転換される。トロンビンは、微細な網目へ重合するフィブリン単位へとフィブリノーゲンを加水分解し、次に血漿にゲルまたは凝血を形成させる酵素である。トロンビンは、およそ34kDaの分子量を備えたトリプシンファミリーのセリンプロテアーゼである。それは2つのポリペプチド鎖からなる。
【0003】
凝固カスケードは、通常、考察の利便性および凝固障害試験で2つの分岐へと分類される。内因性分岐および外因性分岐は個別に効果が高められ得るが、トロンビンを導く一般的な経路へと合流することができる。外因性経路は止血制御および血管外傷に対する応答に関与する。血液が凝固促進性材料と接触する場合に内因性経路が開始し、第XII因子活性化を引き起こす。J Biomed Mater Res.1995 Aug;29(8):1005−16およびJ Biomed Mater Res.1995 Aug;29(8):1017−28(その内容全体は参照として本明細書に援用される)中でのように、凝固促進性材料による血漿凝固の接触活性化はよく研究されてきた。
【0004】
凝固促進とは、血液にトロンビン媒介性フィブリン凝血を形成させる任意の要素または活性を指す。凝固促進剤は、カオリン、コットン、セラミック、ガラス、エラグ酸および同種のものを含む有機材料および無機材料を含む多様な負に荷電した表面を含む。凝固促進剤は単独でまたは組み合わせで使用されることが公知である。
【0005】
これらの負に荷電した表面への結合は、プレカリクレイン(PK)をタンパク質分解的に活性化することを可能にする、第XII因子(FXII)における立体配座的変化を誘導する。PKはFXIIをタンパク質分解的に活性化し、システムを増幅し、カリクレインによるFXIの活性化および高分子量キニノーゲン(HK)の切断を導くポジティブフィードバックループを生産する。
【0006】
凝固促進性材料による第XIIa因子活性化に後続する産物は、セリンプロテアーゼ、第Xa因子およびタンパク質コファクター(第Va因子)からなるプロトロンビナーゼ酵素複合体の形成である。複合体はカルシウムイオンの存在下において負に荷電したリン脂質膜上に集合する。凝固カスケードが進行することを可能にするクエン酸抗凝固血液へのカルシウム塩の添加は、しばしば特に再カルシウム化と称される。プロトロンビナーゼ酵素複合体は、不活性な酵素原であるプロトロンビン(第II因子)を活性のあるセリンプロテアーゼであるトロンビン(第IIa因子)へと転換することを触媒する。第Xa因子がプロトロンビナーゼ酵素複合体と会合しない場合にプロトロンビンを活性化できることは示されたが、トロンビン形成の率はかかる状況下で著しく減少する。
【0007】
正常血中で循環する凝固に関与する重要な血中因子は、おびただしい量の他の血中タンパク質(それらのうちの約490は60年間にわたって濃度が変動する)よりもはるかに低い濃度である。多くの未解決の問題の中で、1つは、高い濃度の血中タンパク質(アルブミン、フィブリノーゲンまたはIgG等)が、かなり低い血中濃度のタンパク質から構成される、凝固促進性表面での活性化複合タンパク質の集合体とどのような様式で競合しないかということである(「吸着希釈」効果と称される)。Zhuo et al.,Biomaterials 2007 October;28(30):4355−4369(その内容全体は参照として本明細書に援用される)は、全血漿中のFXIIa蓄積の率が、活性化表面の継続的な存在下において時間とともに減少し、血漿中で懸濁された凝固促進性粒子についての最初のFXII溶液濃度に依存した定常状態のFXIIa収率を導くことが見出されると開示する。著者らは、活性化が自己阻害反応(FXIIaそれ自体がFXII→FXIIaを阻害する)と競合することが、結果から強く示唆されると説明する。Erwin A.Vogler and Christopher A.Siedlecki,Biomaterials.2009 April;30(10):1857−1869(その内容全体は参照として本明細書に援用される)は、自己活性化、自己加水分解および自己阻害反応を含む接触活性化凝固化学に存在する追加の不確実性を包括的に概説している。一般的には図1を参照されたい。
【0008】
プロトロンビナーゼ酵素複合体の集合は、原形質膜上で負に荷電したリン脂質への第Xa因子および第Va因子の結合から始まる。原形質膜へ結合したならば、第Xa因子および第Va因子は1:1の化学量論比で急速に会合してプロトロンビナーゼ酵素複合体を形成する。プロトロンビナーゼ酵素複合体の集合はカルシウム依存性である。完全に集合したプロトロンビナーゼ酵素複合体は、酵素原プロトロンビンをセリンプロテアーゼトロンビンへと転換することを触媒する。プロトロンビナーゼ酵素複合体と会合した場合、第Xa因子の触媒効率は300,000倍に増加する。
【0009】
凝固システムは化学量論的におよび動力学的な阻害システムによる非常に厳格な調節下にある。血漿凝固促進物の濃度、化学量論的な阻害剤、および動力学的な阻害プロセスの構成要素は、生産されるトロンビンの最終的な量を大きく調節する。例えば、プロトロンビナーゼ酵素複合体の第Va因子は、活性化されたプロテインCによる切断に続いて不活性化され、それは第V因子が第Xa因子に結合する能力を低下させる。プロトロンビナーゼ酵素複合体の第Xa因子は抗トロンビンIIIによって阻害され、それはトロンビンを阻害するようにも作用する。血漿中のトロンビンは、一時的にのみ安定的であり、およそ10〜15秒の半減期を有し、大部分は血漿タンパク質抗トロンビンIIIの阻害特性を介するものである(Advanced Engineering Materials第11巻、12号、B251−B260ページ、2009年12月、その内容全体は参照として本明細書に援用される)。
【0010】
凝固システムの自己活性化、自己加水分解および自己阻害反応の正確な化学は、依然として未知である。接触活性化のための改善された反応スキームの解明には、タンパク質吸着およびタンパク質吸着競合の厄介な問題の解決に加えて、酵素原の表面活性化に関与する生化学の大幅に改善された理解が要求されるだろう。
【0011】
凝固カスケードにおけるトロンビンの役割およびフィブリンゲルの生物工学的な応用のための用途は、例えばJanmey et al.,J.R.Soc.Interface(2009)10,1−10(その内容全体は参照として本明細書に援用される)によって概説されている。トロンビンは、外科手術の間に出血を制御するため、やけどのため、および特定の外傷状況において臨床的に使用される。ウシトロンビンは、商業的な組織用糊の成分でもある。
【0012】
従来の商業的なトロンビン治療剤はプールされたヒトおよび動物の血液製品から精製され、それゆえウイルス(HIVおよび肝炎ウイルス等)による混入のリスクがある。3つの商業的なトロンビン調製物の比較において、Suzuki and Sakuragawaは、調製物は混入タンパク質を含有し、ヒト調製物は免疫グロブリンG、B型肝炎表面抗原抗体およびヒト免疫不全抗体を含有することを見出した。ヒトトロンビンおよびヒト第V因子(第V因子はウシトロンビン調製物中の混入物である)の両方に対する自己反応性抗体を生じた患者において、ウシトロンビンによる異種免疫付与が報告されている。加えて、最近、病原体(牛海綿状脳症病原因子等、それは従来の手段によって検出可能でないかまたは不活性化されない)を伴うウシ製品の混入の可能性に関して、懸念が示された。さらに、治療上のヒト血液製品は、ウイルス粒子(肝炎ウイルスおよびヒト免疫不全ウイルス等)が混入しやすい。ウシトロンビンが臨床用途に許容可能だと思われない、文化および宗教上の理由もある。
【0013】
組換えトロンビンはFDAによって最近承認されており、ウシ血漿ベースのトロンビン(それはウシトロンビンに対する阻害抗体の形成および動物由来の血液製品に関連する他の安全性の懸念を引き起こす可能性がある)に対する代替物として商業上促進されている。しかしながら、組換えトロンビンも製品を受け入れた何人かの患者において免疫原性の問題があることが実証されている。
【0014】
しかしながら、フィブリンシーラントを必要とする外科患者のための最も安全な条件は、トロンビン成分が同じドナーから採取され、その中でフィブリノーゲンタンパク質成分が採取され、血液感染性疾病伝播のいかなるリスクも回避するように完全に自己由来の生物学的シーラントまたは糊を形成する、2成分の生物学的シーラント調製物からもたらされるであろうことは長い間理解されていた。
【0015】
医学的手順において患者を起源とするトロンビンおよび/またはフィブリノーゲンを利用する概念は、1974年に患者に実行され、目新しいものではない。Cederholm−WilliamsのPCT特許(W094/00566、1994年1月10日)は改善されたフィブリン糊を記載し、その中でトロンビン成分(それは、調製するために、遠心分離ならびに中間沈殿物の分別ならびに血液のイオン強度および血漿のpHの調整を含む13工程が要求される)は、同じドナーの血漿を起源とするフィブリノーゲン成分と組み合わせられた。しかしながら、これらの多くの調製工程は非常に時間がかかるので、加工時間が1時間未満でなくてはならない手術場における使用には実践的でなくなる。
【0016】
3年後の1997年に、Hirsh,et al.(米国特許第5,643,192号)は、フィブリン糊のフィブリノーゲン成分およびトロンビン成分の両方が同じドナーの血漿を起源とするフィブリン糊を調製する別の方法の教示によって、Cederholm−Williamに従う。Hirshの特許はトロンビンを調製する方法を記載し、その中で、血漿中の大部分のフィブリノーゲンを最初に沈殿および除去して上清を調製し、次いで上清中に残存するフィブリノーゲンを凝血させる。それはCederholm−Williamによって教示された方法とは異なりそれよりも単純であるが、トロンビンが4分間だけ5秒以下および47分間だけ10秒未満の凝血速度を提供するという点で商業上有用なトロンビンをもたらさない。
【0017】
外科医はHirsh,et al.のフィブリン糊の限定に沿って全体の外科手術を計画することができず、これらの凝血速度は外科医のニーズに適さない。
【0018】
外科医は、止血および組織のシーリングまたは接着のために速く作用する凝血時間(<5秒)を優先して要求する。遅い凝血の生物学的糊(>5秒)は多くの場合、機能を実行できる前に、浸出および出血によって創傷部位から離れて運ばれてしまうであろう。Hirshのフィブリン糊を利用する外科医には、Hirshのフィブリン糊による処理のために意図される止血および組織シーリングが、5秒未満の凝血時間が4分間のウィンドウ内に起こるように、外科手術をアレンジすることが要求され、そのことにより、外科手術の全体にわたって迅速な止血および組織接着が優先的に要求され、その時間のスパンは6時間まで延長し得る大部分の外科手術にとっては、Hirshの発明は全く実践的でないものとなる。
【0019】
Sternbergerは、血漿中のトロンビン活性を安定化するためにエタノールを使用することができることを、Br J Exp Pathol.1947 June;28(3):168−177(その内容全体は参照として本明細書に援用される)中で開示する。Coelho et al.は、トロンビン安定剤としてエタノールを使用して、ドナーの血液からの安定したヒトトロンビンを調製する単純で実践的で速い方法のための発明を、米国特許第7,056,722号(その内容全体は参照として本明細書に援用される)中で開示する。方法は、8%〜18%の濃度でのエタノールの添加によって長い外科手術(例えば6時間)を通して安定的で速い凝血(5秒未満)を提供する。Coelho et al.は、エタノールにより安定化されない血液からのトロンビン調製物の製造のための機器は、トロンビンが使用される広範囲の外科手術には全く実践的でないことをさらに教示する。発明者は、トロンビンの生成を阻止する凝固カスケードの阻害を回避するには十分に低いが、トロンビンの安定化には十分に高いようなエタノール濃度の非常に狭い範囲を同定しなければならなかった。
【0020】
Kumar et al.は、トロンビン生産を開始する最も容易な手法がクエン酸血漿へのカルシウムイオンの添加であるという教示を、JECT 2005;37:390−395およびJECT.2007;39:18−23(その内容全体は参照として本明細書に援用される)中で開示する。ここで、過剰のカルシウムは、凝血カスケードの開始およびトロンビンの生産を可能にする。Kumarは、この手順の短所は、生産されたトロンビンにおけるトロンビン活性の安定性が短いということであり、プロテインS、プロテインCおよび抗トロンビンIIIによる凝固カスケードの阻害があるので、活性は、典型的には生産の20分以内に非機能状態へ減少することをさらに教示する。Kumar et al.は、これらの限定を回避する方法および装置をさらに開示し、その中で、エタノールを使用して阻害酵素が部分的に不活性化される場合に安定したトロンビン製品を生産することができる。トロンビンを濃縮および活性化するために、塩化カルシウムおよびエタノールの混合物は負に荷電した表面の存在下においてクエン酸抗凝固血漿に添加される。負に荷電した表面はプロトロンビン−FV−FXa複合体の形成を開始させるが、塩化カルシウムおよびエタノール(トロンビン試薬)の混合物は、トロンビンの阻害剤を不活性化し、生産の数時間後にそれを使用することができるように部分的にトロンビンを安定化する化学的構成要素を提供する。Kumar and Chapmanは、出発源の生物学的液体として血漿の代わりに全血から自己由来ヒトトロンビンを30分間の期間内に生成する方法も、JECT.2007;39:18−23(その内容全体は参照として本明細書に援用される)中で開示するが、他の先行技術のほとんどのように、まだトロンビン製品を安定化するために添加剤としてエタノールを用いるが、トロンビン活性は4℃での保存でさえ連続的に経時的に減衰する。
【0021】
トロンビン血清/エタノール調製物(米国特許第7,056,722号におけるCoelho et al.およびKumar中で開示したもの等)は、J Oral Maxillofacial Surg 66:632−638,2008(その内容全体は参照として本明細書に援用される)中でSemple et al.によって開示されたように、生体適合性溶液ではない。もし4%未満の最終的なエタノール濃度まで投与の前に実質的に希釈されなかったならば、調製物は細胞毒性である。
【0022】
McGinnis et al.は、トロンビンのための安定剤としてのエタノールの使用を、米国特許公開第2004/0120942号(その内容全体は参照として本明細書に援用される)中で開示する。McGinnis et al.は、「接触活性化剤」(それは凝固の内因性経路に関与する薬剤を意味し、ガラス、ガラスビーズ、珪藻土、セラミック、カオリンおよびその任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない)の使用も開示する。
【0023】
Kanayinkal et al.は、トロンビン組成を安定剤と接触させて約10時間よりも長い安定した寿命を有するトロンビン組成を提供し、安定剤は8%〜25%の範囲中のエタノール、ポリオール、PEG、硫酸アンモニウム、無極性溶媒、極性溶媒、メチルイソブチルケトンアルコール、グリコール、トリクロロ酢酸、酢酸塩またはその任意の組み合わせを含むことを、米国特許公開第2009/0044852号(その内容全体は参照として本明細書に援用される)中で開示する。このシステムは延長した寿命のトロンビン生産組成物を提供するが、生物学的適合性の合併症は安定剤の存在に起因して導入され得る。
【0024】
Nowakowskiは、体液が体の外側にあり実質的に封入された滅菌容器内にある間に血液の凝血カスケードが最初に開始される、創傷閉鎖方法および機器を、2000年12月12日に交付された米国特許第6,159,232号;2002年11月12日に交付された米国特許第6,478,808号;2002年11月19日に交付された米国特許第6,482,223号;および2006年1月4日に交付された米国特許第6,989,022号および2006年8月10日に出版された米国特許公開第2006/0178610号(その全ての内容全体は参照として本明細書に援用される)中で開示する。凝血カスケード開始機器は、凝固促進剤(血液に凝血を形成させることができる成分)、抗凝固剤を実質的に中和するメカニズム(抗凝固ヘパリンを阻害するように血液へ液体硫酸プロタミンを添加すること等)、または抗凝血を実質的に中和するメカニズム(抗凝血塊阻害剤の例はトラネキサム酸およびプラスミノゲン結合材料として記載される)を含むことができる。次いで、凝血活性化された血液は創傷のまわりで沈着し、そこで凝血が継続する。
【0025】
最近、凝血プロセスにおけるその鍵となる役割以外のトロンビンの重要性が調査された。Bae et al.は、J Cell Physiol.2009;219(3):744−751(その内容全体は参照として本明細書に援用される)中で、トロンビンが、フィブリノーゲンをフィブリンへ切断することによって凝血の形成において中心的な役割を果たすことに加えて、炎症、アレルギー、腫瘍増殖、転移、アポトーシスおよび組織再構築に関連する多様な生物学的活性を持つことを再検討する。多様な細胞機能を修飾するトロンビンの能力は多くの事例において特異的な細胞表面受容体による相互作用を介して達成される。すべての公知のトロンビン受容体はプロテアーゼ活性化受容体(PAR)ファミリーに属し、特有のタンパク質分解による活性化のメカニズムによって特徴づけられる。トロンビンが受容体の細胞外ドメインを切断して繋がれたリガンドを露出する場合、受容体活性化が起こる。PARファミリーの受容体の中でも、トロンビンは特にPAR−1、PAR−3およびPAR−4と相互作用することができる。加えて、トロンビンはいくつかの細胞については強力な分裂促進剤である。
【0026】
この進歩にもかかわらず、単一ドナートロンビン血清をポイントオブケアで製造する理想的な方法は依然として不足している。理想的なトロンビン調製機器および方法は、体内の使用に安全であるべきであり、したがって患者自身の血液に由来するべきであり、細胞毒性添加剤(エタノール等)を要求せずにトロンビン安定性の問題を克服すべきである。上記の先行技術は出願人が承知する技術水準を反映し、これにより関連する先行技術を開示する出願人の承認義務を免除することを含む。しかしながら、これらの参照文献のどれも、より詳しく以下に開示されるようなおよび特に請求されるような本発明の集合体を、単独で教示しないし、任意の考えられる組み合わせにおいて考慮した場合に自明なものにしないことが明記される。
【発明の概要】
【0027】
本発明の目的は、トロンビン血清の調製のための新規の改善された方法および機器を提供することである。他の目的および利点は本明細書および請求項の読了後に当業者に明らかになる。本発明は、単一ドナーの血液からの医療用適用のために安全で効果的なトロンビン血清をポイントオブケアで調製する、単純で実践的で迅速な手段の未解決のニーズを十分に検討する。処理する医師の需要に応じて迅速で反復的な様式で血液からトロンビン血清を作製することができる、トロンビン血清の調製のための方法および機器を開示する。本発明は、血液からトロンビン血清を得る2ステージ法を教示する。第1のステージにおいて、凝固促進剤は、凝固促進剤の表面上でプロトロンビナーゼ酵素複合体を得ることを用いて、活性化された凝固促進剤へ転換される。プロトロンビナーゼ酵素複合体は血液中に存在する凝固タンパク質に由来する。第2のステージ(それは操作者の需要に応じて一時的に実行することができる)において、トロンビンは、活性化された凝固促進剤をプロトロンビンを含む凝固タンパク質を含む生物学的液体と接触させることによって、プロトロンビンから得られる。これらの凝固経路反応がカルシウム依存性であるので、好適な濃度のカルシウムイオンを反応混合物に提供しなくてはならない。本発明は、液体移行の添加および抽出の手段に加えて反応混合物の含有のための機器をさらに教示する。
【0028】
本発明の目的のために、凝固促進剤は、少なくともトロンビン生産を得る時点、および好ましくはフィブリンを得る時点までに、血液系の凝固カスケードを活性化する能力を有する材料である(図1)。好ましい凝固促進物は高表面積を有するように血液に対して提示され、それは5mm未満の直径を有するかまたは多孔性粒子である凝固促進性粒子の使用によって最も良好に達成される。活性化工程は、凝固促進剤を、遊離カルシウムイオンの存在下において第1の血液アリコートと接触させることによって達成される。理論に束縛されることは意図しないが、機器の第1のステージ活性化は、分子レベルで、凝固促進剤の表面上に準安定形態で生成されるプロトロンビナーゼ酵素複合体に起因すると考えられている。機器の活性化は血液と共にわずか約5〜10分間しか要求しない。活性化状態は、24時間までに不活性のレベルへと徐々に減衰する前に、少なくとも10時間は高いレベルで存続する。この持続的活性化状態の時間的な継続は、この機能的安定性の時間的な継続を有するプロトロンビナーゼ酵素複合体に帰着し、過度の血液の凝血を回避するように存続する凝固カスケードの他の要素の半減期がいかに短いかを考慮すると、これは意外で予測不能なことである。10時間維持される凝固促進物活性化は大部分の外科手術よりも長い期間であるので、思いがけないことである。一旦活性化されたならば、機器を使用して、医学的に有用な量のトロンビンを機器へ添加された第2の血液アリコートから迅速に(例えば約1分間)調製することができる。トロンビンの迅速な生産は、プロトロンビンをトロンビンへと転換することを触媒する、凝固促進剤の高表面積上に形成された多数のプロトロンビナーゼ酵素複合体に帰着する。トロンビンが形成される迅速性は、プロトロンビナーゼ酵素複合体の反応動態vsトロンビンと抗トロンビンIIIが不活性複合体を形成する反応動態における差異に起因して、トロンビン中和剤(抗トロンビンIII等)がトロンビンを中和できる率をはるかに超過する。トロンビン生産とトロンビン中和との間の動態におけるこの差異は、臨床的に有用な量の利用可能なトロンビンを有する能力についての時間ウィンドウを生ずる。達成できるトロンビン生産が迅速であればあるほど(例えば形成されたプロトロンビナーゼ酵素複合体が多い)、臨床的に有用な量のトロンビンの時間的な継続は、より長くトロンビン血清において存在するだろう。さらに、トロンビンと抗トロンビンIIIの反応動態はトロンビンの生産よりもはるかにより温度感受性であり(<10℃の温度によって阻害される)、従って、有用な量のトロンビンでさえ冷却した血液製品を使用して保存することができ、形成されたトロンビン血清の有用なシェルフライフは冷蔵によって有意に改善できることが実験を介して明らかになった。したがって、本発明は、患者の外科チームの需要に応じて自身の血液から生体適合性トロンビン血清の迅速な生産を可能にする。本発明は、機器を反復的に(第2、第3、第4などを意味する)使用し、血液アリコートを同じ様式で同じ機器へ添加して、トロンビン血清の独立した追加のアリコートを生成することができる手段をさらに教示する。さらに、本発明は、トロンビン血清を調製する機器の各々の使用が、追加の10時間更新される凝固促進剤の活性化状態をもたらし、操作者が単一装置から継続的で迅速なトロンビン生産を受け続けることを可能にすることを教示する。ポイントオブケアで患者の自身の血液を使用して、大量のトロンビン生産を可能にすることに由来するコスト削減についての経済的な価値および可能性は、本発明の別の有益な態様である。
【0029】
血漿は血液の非細胞性画分であり、凝固カスケードのタンパク質およびフィブリノーゲンが含まれる多数のタンパク質を含む。フィブリノーゲンがトロンビンの作用によってフィブリンに転換される場合、血漿のフィブリノーゲン濃度が大幅に減少するようになり、血漿の代わりに血清と表記される。本発明の目的のために、トロンビン血清は、細胞性含有物にかかわらず、フィブリノーゲンをフィブリンへと転換する、検出可能なトロンビン酵素凝血活性を含有する任意の生物学的液体を記載する用語として使用される。本発明の目的のために、血液とは、凝固カスケードの活性化に際してプロトロンビナーゼ酵素複合体を生成する機能的能力を有する、ドナーに由来する生物学的液体を記載するのに本明細書において使用される用語であり、それは、全血、クエン酸抗凝固全血もしくは血漿、または構成要素としてプロトロンビンを有する他の好適な血液画分物質、多血小板血漿を含む血漿、バフィーコートに富む血漿、乏血小板血漿、全骨髄、クエン酸抗凝固骨髄、全臍帯血、クエン酸抗凝固骨髄、および他の凝固カスケードの能力のある血液調製物を含むリストから選択される。さらに、本発明は異なる血液を同じ機器において使用できることを教示する。非限定的な例によれば、凝固促進剤の活性化の第1のステージは機器への全血の添加によって達成することができ、トロンビン血清を生成する第2のステージについては、用いられる血液は異なる血液(多血小板血漿等)でありえる。
【0030】
より詳しく以下に開示されるようなおよび特に請求されるような本発明は、予想外で予測不能で意外な多数の実験観察によって見出され、それには以下のことが含まれる。1)プロトロンビナーゼ酵素複合体が、血液を混合する最初の数分間の間に好ましい凝固促進剤の高表面積上に一旦形成されたならば、少なくとも6時間、しかし24時間未満の臨床的に有用な期間の間にプロトロンビンのトロンビンへの迅速な転換を促進することができるように、機器中の凝固促進剤とカルシウムは、持続的酵素活性の存続的機能状態でとどまり、それによって保存した活性化された機器から「オンデマンドの」トロンビン調製を可能にすること;2)活性化された凝固促進剤と血液プロトロンビン源の接触に際して、数分ではなく数秒以内にトロンビンを多量に非常に迅速に生成することができ、それによって、トロンビンの臨床的に有用な濃度が以前に可能なよりも速く(例えば1分のインキュベーション)確実に達成されることを可能にし、保存した活性化された機器から「オンデマンドの」トロンビン調製をさらに可能にするという解明;3)採取されたトロンビン血清の<10℃での保存は、Kumar et al.2007によって開示されるような安定剤として存在するエタノールなしにトロンビン安定性を有意に促進し、生体適合性トロンビン血清の調製のために「オンデマンドの」アプローチの実践性をさらに支持するという解明;4)単一機器はトロンビンの複数のバッチの生成のために反復的に使用することができ、各々のトロンビン生産は少なくとも追加の10時間の期間に機器内の凝固促進剤を活性化状態で維持する役目もさらに果たし、単一機器としての機器の商業的実用化は単一ドナーから多量の新鮮なトロンビン血清を生産するために使用できることをさらに支援するという解明;5)単一ドナートロンビンの調製のための先行技術によって教示されるように血液からエタノールを排除することは、臨床的に有用なトロンビンを生産する性能を有するのに30〜60分間(患者に対するより迅速な単一ドナートロンビン利用可能性を可能にする先行技術によって教示されるようにエタノールが血液へ添加された場合)が要求されるのではなく、10分間だけ時間が要求されるように、凝固促進物のより迅速な活性化を可能にするという解明、10)先行技術(それは、凝固カスケードの破壊(過度のエタノール濃度)を回避するかまたはトロンビンの安定化の失敗(不十分なエタノール濃度)を回避するように正確な濃度でエタノールが存在しなければならないことに起因して、トロンビンの生産が遅く信頼性の低いことに悩まされる)を改良するように、凝固促進物の第1の活性化が達成された後に、エタノールの添加が非常に所望されるならば、18%〜25%v/vの濃度でのエタノールの血液への添加は、トロンビンを安定化するためにまだ用いることができるという解明。
【0031】
本発明は、1つまたは複数の追加の血液アリコートとの接触によって10時間の期間にわたってオンデマンドで作製された1つまたは複数のトロンビン調製物中に含有されるトロンビンの利用可能性および量を大幅に加速するように、カルシウムイオンの存在下において第1の血液アリコート接触によって活性化された単一機器を反復的に使用し保存する手段を開示する。本発明によって生産される一時的に安定的であるトロンビンは、トロンビン安定化添加物の使用なしにそのように行われる。したがって、本発明の好ましい実施形態は、血液(それは、血、単一ドナー全血、血漿、プールされた血漿、多血小板血漿、乏血小板血漿または凝固カスケードをインタクトで有する血漿を含む全血画分(本明細書において血液と表記される)を含むリストから選択される)からオンデマンドで臨床的に有用なトロンビン調製物を生産するための実践的方法の開示によって、先行技術の1つまたは複数の著しい欠点を向上または克服する。トロンビンの調製のための本発明の実践によって、制御、有効性、信頼性、安全性およびコストパフォーマンスに関して劇的な改善を実現することができる。特に、開示された方法および機器は、止血の達成、創傷治癒の促進、または長い外科手術の継続時間を通して当業者による実行が容易な様式での細胞組成物の送達のために、単一機器の使用を介して、容易に利用可能な生物学的液体からの多量の臨床的に有用なトロンビン調製物の迅速で再現性があり反復的で計画された生産を可能にする。本発明は、トロンビン血清調製物を使用して方法を実行する機器を提供することによって、都合よく方法を実践する方法をさらに提供する。
【0032】
凝固促進剤は、ガラス、ガラスビーズ、ガラス繊維、セラミック、エラグ酸および珪藻土、または機能的なプロトロンビナーゼ酵素複合体と会合し、活性化された凝固促進物として定義される同種のものを含むが、これらに限定されないリストから好ましくは選択される。好ましい凝固促進剤は、反応チャンバー内に容易に保持されるが、当業者に容易に分かる手段(フィルタースクリーン、デプスフィルターおよび同種のもの等)によって血球(およそ6〜10ミクロンの直径)が通過することを可能にするような、50ミクロン〜2mmの直径を有する硼ケイ酸塩ガラスビーズである。反応チャンバーの底部に位置する凝固促進剤が大きな表面積を提供することは有利である。物理的な撹拌(手動での機器の振盪等)によって形成されたフィブリンゲルを粉砕するために使用されるより大きな直径およびより大きな質量を有する他の分離した物体を、反応チャンバー中に含むことは特に有利である。例示的な好適な分離した物体は、血液接触に医学的に許容可能な材料(ガラス、ポリスチレン、ポリカーボネートおよびポリエチレン等)から調製された6〜8mmのビーズであるが、形成されたフィブリンゲルの粉砕のための他の手段が利用できることは容易に理解されるに違いない。好ましくは、機器のポーションはすべてヒト使用に生体適合性であり、ガンマ線照射、e−ビームまたはあまり好ましくはないがエチレンオキサイドガスを含む1つまたは複数の公知の殺菌方法による滅菌に耐え得る。
【0033】
プロトロンビナーゼ酵素複合体の阻害剤(抗トロンビンIIIならびに活性化されたプロテインCおよびプロテインS)および多量の他の吸着タンパク質(反応混合物中のアルブミンおよび免疫グロブリン等)の存在にもかかわらず、プロトロンビナーゼ酵素複合体の十分な安定性が延長された期間にわたって維持されたことは、予想外で意外なことであった。しかしながら、この高められたトロンビン生産化学は不変でなく、室温で保存の24時間以内に終了した。延長された安定性についての理由が未知で意外であるという指摘があるが、凝固システムのチェックとバランスにより大部分の活性化された凝固タンパク質がどのくらい迅速に期限が切れるかを考慮すると、当業者が、かかる有効な安定性時間枠が見出されるだろうことを実験なしに予測することを可能にする科学的証拠は存在しない。当業者は、少なくとも10時間、しかし24時間未満の安定性が起こることを予測することができないだろう。
【0034】
本発明は、好ましくは単一ドナーまたは好ましくは血液の自己由来源によりポイントオブケアでの使用のための、使用が容易で携帯型で低価格で信頼できる機器である機器を提供する(図4〜6を参照)。
【0035】
本発明は、既存のトロンビン製品と比較して、トロンビン調製物のレシピエントにとってより安全なトロンビン調製物を医師に提供する。改善された安全性の第1の手段は、本発明が化学的混ぜ物(細胞毒性濃度の安定剤としてのエタノール等)の添加の回避によって、既存のトロンビン調製物と関連するリスクを減少させるということである。トロンビン調製物がレシピエントに適用される場合、かかる化学添加物の非存在は化学的毒性反応のリスクを排除するので特に価値がある。改善された安全性の第2の手段として、本発明において記載されるトロンビン調製物は、ウシトロンビンまたは遺伝的に修飾されたハムスター細胞株についての事例のように異なる種に由来せず、それによって病原体伝播および免疫原性反応のリスクを回避する。改善された安全性の第3の手段として、本発明により、トロンビン調製物を、現在実践されるように何百または場合によっては何千のドナーからの可能性のある血漿のプールからではなく、単一ドナーに由来させることができ、それによってプールされた製品中に残存する感染性疾患を伝播するリスクが軽減する。改善された安全性の第4の手段として、トロンビン調製物は使用時点で調製できるほど十分に単純で迅速であり、それによって患者の自身の血液を使用してトロンビンを調製することを可能にする。自己由来血液製品は最も安全な生物学的調製物として普遍的に認識される。改善された安全性の第5の手段として、本方法および機器は操作室の滅菌野内で利用することができるほど十分に単純であり、それによって材料を滅菌野から外へ移行させ、次いで中へ戻す必要性を回避し、それによって滅菌野の微生物汚染のリスク増加および最終的に患者の院内感染の獲得のリスク増加を回避する。
【0036】
本発明の方法に従って生産されたトロンビンは、公知であるように同じ従来のトロンビンの治療上の適用に有用であり、Ham et al.,Journal of Blood Medicine 2010:1135−142(その内容全体は参照として本明細書に援用される)中で最近概説された。本発明は、フィブリノーゲンからフィブリンを生産するという意図した目的に有効であるように、使用時でトロンビンの十分な濃度を有するトロンビン調製物の生産のための手段を提供する。本発明は、細胞(血小板および幹細胞等)の送達のためのフィブリンゲルの生成に特によく適している。多血小板血漿へトロンビン調製物を添加して血小板に富むゲルを形成することは、Akingboye et al.,AA,J Extra Corpor Technol.2010 Mar;42(1):20−9(その内容全体は参照として本明細書に援用される)によって最近概説されるように、医学実践において広く使用される。
【0037】
開示されたトロンビン調製物の生産のために記述された方法および材料は、多様な異なる状況(手術室の中から、ポイントオブケア、もしくは実験室設定にわたって、または一様でないノウハウの能力を有するユーザーによって)において使用することができ、操作を実行する看護師の技能内であるように、迅速で信頼でき容易に使用できるので、実践的である。さらに、本機器および方法は実務時間および始めから終わりの合計時間の量を約10分間へと最小化し、それは現在使用される他の方法よりも短い時間である。本方法は、トロンビン血清の調製に使用される電気機械的装置(遠心分離機またはヒーター等)を必要としない。
【0038】
Nowakowski、CoelhoおよびKumarおよび残りの先行技術は、単独または組み合わせで、以下のことを、教示、示唆、または動機付けない。1)トロンビン血清を作製する開示された2ステージプロセス;2)活性化された凝固促進剤の保存によってトロンビン血清不安定性を克服する実践的手段;3)単一装置からのトロンビン血清の複数のバッチの調製のための活性化された凝固促進剤の反復的な使用のための手段、または4)分離した物体を使用して、反応チャンバー内で形成されたフィブリンゲルを粉砕してフィブリンゲルからトロンビン血清を放出するための手段の組入れ。
【0039】
先行技術の不備を考慮して、本発明の主要な目的は、医療スタッフ(外科の看護師等)によってポイントオブケアで実行されるように、十分に単純なプロセスにおける細胞毒性のトロンビン安定化化学物質の使用の要求なしに、単一ドナーの血液からの生体適合性トロンビン血清をオンデマンドで提供することである。
【0040】
本発明のさらなる目的は、約10分間の最小プロセス時間のトロンビン血清の調製のための実践的方法を提供することである。
【0041】
本発明のなおさらなる目的は、10秒未満の凝血を提供する生体適合性トロンビン血清を提供することである。
【0042】
本発明のなおさらなる目的は、単独でまたはフィブリノーゲン源と組み合わせて、小さなオリフィスを介してスプレーするかまたは細いチューブを介して出すことができるトロンビンを提供することである。
【0043】
本発明のなおさらなる目的は、生体適合性トロンビンを調製する方法であって、第1の血液のアリコートを得る工程と;第1の血液のアリコートへ十分なCaCl2を添加して血液を再カルシウム化し、凝固促進剤を添加し、そこからの第1の混合物を形成する工程であって、第1の組成物を一時的に撹拌して混合することと;少なくとも約10分〜6時間未満の間第1の組成物を保存することと;利用可能になるトロンビン血清が所望されるまでの期間の間前記第1の混合物を保存することとを含む形成工程と;第2の血液のアリコートを得る工程と;第2の血液のアリコートへ十分なCaCl2を添加して血液を再カルシウム化し、保存された第1の混合物へCaCl2を含有する第2のアリコートを添加して第2の混合物組成物を生じる工程と;第2の混合組成物を一時的に撹拌して混合する工程と;フィブリンゲルが形成されるまで第2の組成物をインキュベーションし、フィブリンゲルを粉砕してトロンビン血清を放出する工程と;トロンビン血清を濾過して微粒子を除去し、それによって液体のトロンビン血清の流動を可能にするが凝固促進剤の通過を阻止するのに十分に大きな孔サイズ(例えば20ミクロンの孔サイズ)を有するフィルター膜を介してトロンビンを通過させる工程と;室温で、およびより好ましくは水の混じった氷(<10℃)上で採取されたトロンビン血清を保存し、最終的にトロンビン血清をフィブリノーゲン源と接触させてフィブリンを生じる工程とを含む方法を提供することである。
【0044】
本発明のなおさらなる目的は、組織移植片の調製の目的で、細胞培養を実行するために、診断試験を行うために、または当技術分野において公知のフィブリンシーラントと細胞および組織を組み合わせる他の目的で、フィブリンゲルの中へ取り込まれた生存細胞懸濁物の調製に好適なトロンビン血清の生産のための方法を提供することである。生体適合性トロンビンを使用する重要性は、フィブリン移植片中に含有される細胞の生存能力を維持するように生細胞複合移植片を調製するために特に重要である。
【0045】
本発明のなおさらなる目的は、反復的に使用して活性化の必要性なしにトロンビン血清を複数回抽出することができる機器を提供することである。第3、第4もしくは第5またはそれ以上のアリコートの血液の機器への添加は、機器への前の血液添加の最後の添加の10時間以内に迅速にこれを達成することができる。各々の血液アリコートは、カルシウムキレート剤(クエン酸ナトリウム等)が抗凝固剤として使用されるならば、CaCl2溶液により処理して血液を再カルシウム化すべきである。本発明は、血液からヘパリンを除去するためにNowakowskiによって開示されるような採用された工程が用いられなければ、ヘパリンによる抗凝固血液との使用に好適ではない。
【0046】
本発明は、当分野における他の研究の取り組みにより例証された限定を克服することによって、医学的用途のためのトロンビンを提供する改善された方法を提供する。本発明は、長い外科手術(例えば10時間)を通してフィブリノーゲン源と必要に応じて組み合わせた場合に速い凝血(<5〜10秒)を提供する濃度でトロンビンを提供する。当分野における従来の研究(Hirsch,et al.)は、トロンビンがフィブリノーゲンの迅速な凝血(すなわち5秒未満)を達成したことについては、トロンビンが非常に狭い4〜5分間の期間でのみ存在する最小の安定性のみを有する、または、手術時の調製のために好適でない非常に多くの工程および経過時間を要求する、という問題を例示し、その両方は広範囲の外科手術にとっては全く実践的でない。当分野における従来の取り組み(例えばCoelho et al.)は、トロンビンのための化学的安定剤としてエタノールを添加することによってトロンビン血清の短い安定性のこの限定を克服することを試みたが、そのようにすることで、改善されたトロンビン安定性の達成のために要求されるエタノールの細胞毒性の濃度に起因して新たな生物学的適合性の問題を招いた。
【0047】
したがって、トロンビン不安定性の問題は本発明においてより完全に解決される。2ステージプロセスを作り出すことによって、活性化された凝固促進剤は、トロンビン血清が必要とされる時間の直前までに作製および保存され、それによってトロンビンの周知の一時的な安定性問題を克服するようにトロンビン血清の調製を遅らせることができる。活性化された機器から採取されたトロンビン調製物は、室温で保存した場合少なくとも15分間および<10℃保存した場合少なくとも1時間、迅速な凝血性能を化学添加物の必要性なしに保持する。Coelho and Kumar他の先行技術によって教示されるようなエタノールにより安定化したトロンビン血清を保存するのではなく、活性化された機器を保存することによって、本発明は、単一ドナーからの生体適合性と迅速な凝血塊時間(例えば10秒未満)の両方を備えた臨床的に有用なトロンビン血清調製物を、より迅速にポイントオブケアで提供する手段を提供する。
【0048】
添付のチャートおよび図と共に以下の詳細な記載を参照することにより、前述の態様および本発明の付随する多くの利点をより充分に理解することができ、それにより、より容易にそれらの態様及び発明の利点を認識することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】先行技術において公知である通りの凝固カスケードの要約である。
図2】本発明の好ましい実施形態における方法を詳述するフローチャートである。
図3】本発明の好ましい実施形態における方法を詳述するフローチャートである。
図4a】本発明の実施形態に記載の反応チャンバーカバーの一実施形態である。
図4b】本発明の実施形態に記載の反応チャンバーカバーおよび反応チャンバーの平面図である。
図4c】本発明の実施形態に記載の反応チャンバーカバーおよび反応チャンバーの側面図である。
図4d】本発明の実施形態に記載の反応チャンバーカバーおよび反応チャンバーの分解斜視図である。
図5】トロンビン血清を採取するためのアレンジと共に例示的な組み立てられた反応チャンバーの図面である。
図6】トロンビン血清を採取するための例示的な反応チャンバーと併用して使用するためのシリンジと共に例示的な反応チャンバーの図面である。
図6A】採取されたトロンビンを送達して必要時にフィブリンを形成するために使用されるスプレーチップアプリケーターの先行技術図面である。
図7】本発明の実施形態に記載の例示的な反応チャンバーからのトロンビン血清の採取を図示する図面である。
図8】形成されたフィブリンゲルが十分に強いので、それ自身の重量を支持することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下の記載は当業者が本発明の様々な態様および実施例を作製し使用することを可能にするように提示される。具体的な材料、技法および適用の記載は実施例としてのみ提供される。本明細書において記載される実施例に対する様々な修飾は当業者に容易に明らかになり、本明細書において定義された一般原理は本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに他の実施例および出願に適用することができる。したがって、本発明は記載され示された実施例に限定されることは意図しないが、添付の請求項と矛盾しない範囲を与えられる。
【0051】
最初に図2では、好ましい実施形態における本発明の手順は4工程を含み、それは好ましくは以下の通り連続して起こる。1)活性化された凝固促進剤表面は、遊離カルシウムイオンの存在下において凝固カスケードの能力のある第1の生物学的液体アリコートを組み合わせることおよび次いで約10分間インキュベーションすることを介して調製される;2)次いで活性化された凝固促進剤は約10時間までの期間の間保存することができる;3)第1の血液の添加からおよそ1分間〜10時間の間で、およびトロンビンが必要とされることが予想される時間(計画されたトロンビンの使用)で、生物学的液体および遊離Ca++イオンの追加のアリコートを活性化された凝固促進剤に添加する;および4)続いて形成されたフィブリンゲルを粉砕してトロンビン血清を放出し、次いでそれを採取することができる。トロンビンをフィブリノーゲン源に適用してフィブリンを生成することができる。トロンビンは、液体として局所的に単独で適用するか、ミストでスプレーするか、または別の担体(ゼラチンスポンジ、酸化再生セルロースおよび微小繊維コラーゲンを含む、吸収可能な止血剤等)と共にもしくはフィブリノーゲンと組み合わせて使用して、「糊」または「ゲル」を生じることができる。
【0052】
本出願の目的のために、「活性化された」凝固促進剤と凝固促進剤が同じものでないことが指摘されるべきである。活性化された凝固促進剤は活性化されていない凝固促進剤よりもはるかに速い速度で血漿のゲル化を引き起こすだろう。同定スキームにおいて、活性化された凝固促進剤は、各々の凝固促進剤サンプルが抗凝固剤としてクエン酸を含有する新鮮凍結血漿でゲル化を引き起こすのにかかる時間(そこで血漿は意図される使用の2時間以内に融解される)を2つのサンプルで比較することによって、同定することができる。具体的には、第1の12mm×75mmのポリスチレン試験チューブ中に、事前に血液と接触させた0.5グラムの凝固促進剤を添加する。第2の類似の試験チューブ中に、血液との事前の接触を有していない同じ凝固促進剤を対照として添加する。抗凝固剤としてクエン酸を含有する2mlの融解された新鮮凍結血漿を各々のチューブに添加し、そこで血漿は意図される使用の2時間以内に融解され、添加の時間を時間0として記録する。各々のチューブ中の液体血漿がゲルに転換されるのにかかる時間の長さを記録し、試験凝固促進物が血漿ゲル化を引き起こす経過時間が、対照凝固促進物が血漿ゲル化を引き起こす時間の2倍以上速いならば、そのとき試験凝固促進物は活性化された凝固促進剤であると決定される。試験凝固促進物が血漿ゲル化を引き起こす経過時間が、対照凝固促進物が血漿ゲル化を引き起こす時間の2倍以上速くないならば、そのとき試験凝固促進物は活性化された凝固促進剤でないと決定される。
【0053】
好ましい実施形態における本発明に戻って、採取されたトロンビンが一時的に安定的であり、フィブリノーゲン源に添加して室温で保存される30分間の期間内にフィブリンを形成することができることも指摘される。フィブリンの迅速な形成が所望されるならば(速い凝血塊時間)、トロンビンの採取後の15分間の期間内に、およびさらにより好ましくは直ちに(5分間以内に)採取したトロンビンとフィブリノーゲンを接触させることが好ましい。計画されたトロンビン使用が遅れるならば、トロンビンは氷(<10℃)上で保存することができ、それはトロンビンの安定性を有意に促進し、その結果、3時間以内およびより好ましくは60分間以内に使用することができる。
【0054】
多孔質膜(例えば20〜80ミクロンの孔サイズ)を含有するフィルターを介してトロンビン溶液を出すことは、凝固促進剤を保持し、フィブリン微粒子物質を除去し、さもなくば、図6A中で示されるような装置を使用して、創傷部位上に小さなオリフィスを介してトロンビンをスプレーすることまたは細いチューブを介してトロンビンを出すことが阻止され得る。図6Aはスプレーチップアプリケーターの先行技術図面であり、1つのシリンジはフィブリノーゲン源により満たされ、第2のシリンジはトロンビン血清により満たされ、そこでそれらがアトマイザー要素を介して排出されるので、2つのシリンジの内容物は混合されてエアゾールスプレーを生じ、それはフィブリンの形成に起因して急速に固体になりシーラントとして作用する液体として、混合物を送達するだろう。
【0055】
ここで図4A図4Dに移って、本発明の一態様が示される。図4A図4Cは方法の実践に使用される機器の様々な概観図を示す。機器は反応チャンバー2を封入するケーシング1を含む。反応チャンバー2は、広い端部2aおよび狭い端部2bを有する円筒状のチャンバーが好ましい。広い端部2aは、広い端部2aの開口の中へプレス嵌めするように構成されるキャップ構造3を有する。狭い端部2bはアダプター4を受け入れるように構成される。ここで図4Dを参照すると、図は本発明の実施形態に記載のキャップ構造3およびアダプター4の分解組立図を示す。狭い端部2bはノズル様の構造を2c形成するように構成され、ノズル様の構造2cはアダプター4に連結される(図4A図4Cを参照)。アダプター4は二重ルアーメスアダプター5を含む。二重ルアーメスアダプター5は第1の端部5aおよび第2の端部5bを有する。5aはノズル様の構造2cの中への嵌め合いに適合する。5bは無針アクセスポート6の第1の端部6aの受け入れに適合する。不必要な(needless)アクセスポート6の第2の端部6bはネジ山の付いた構造6bを形成するように構成される。無針アクセスポート6のネジ山の付いた構造6bはキャップ7に連結される。キャップ7は無針アクセスポート6の混入を阻止する。キャップ構造3はシール8を含む。シール8は環状の構造であり、内リング8aはキャップ9による受け入れのために構成され、外リング8bは容器2の広い端部2aへの滑り嵌めのために構成される。キャップ9は、フィルター膜10を受け入れ保持するために構成されたくぼみ9aを有する。フィルター膜10はリテイナー11を介してキャップ9のくぼみ9a中で保持される。
【0056】
本明細書において記載されるような機器は、漏出せずに、好ましくは微生物汚染のリスクを減少させるように液体が開放室内空気と直接的に接触せずに、液体を導入、含有および除去する手段を有する滅菌済みで非発熱性の液体経路容器を含み、容器は、凝固カスケードの活性化のための反応チャンバーとしても作用し、反応チャンバーは、用いられることが意図される生物学的液体の体積で凝固カスケードを効率的に活性化するのに十分な量および表面積で凝固促進剤を含有し、反応チャンバーは、各々のインキュベーション工程の間の生物学的液体と凝固促進剤の緻密な接触を可能にする形状をさらに有し、好ましくは凝固促進剤よりも大きな質量を備えた比較的より大きな分離した物体を含有することによって、その中で形成されたフィブリンゲルを粉砕する手段を含有し、反応槽はチャンバー内に十分な内部表面積を有するようにデザインされ、その結果、操作者による反応チャンバーの機械的撹拌(例えば振盪)がより大きな分離した物体を移動させ、より小さな凝固促進剤を取り囲むフィブリンゲルを破壊する。生物学的液体、凝固促進剤および分離した大きな物体の合わせた体積の少なくとも2倍の体積の比が好ましい。ゲルの粉砕に際して、反応チャンバー内の大きな分離した物体の移動は、粉砕が遂行されたことを操作者に知らせる可聴音を生じる。より大きな分離した物体は、医療グレードのプラスチック球体またはガラス球体から作製される。かかる大きな分離した物体の好ましい形状および直径は、医療グレードのプラスチックまたはガラスからなる5〜15mmの直径を有する球体である。反応チャンバーは、好ましくは意図される血液アリコートの体積の10%未満である溶液の量で溶液中へカルシウムイオンを導入するためであり、さらにカルシウムイオンが塩化カルシウムに由来する手段を、好ましくは提供する。添加が要求されるカルシウムイオンの量は、当業者による実験によって容易に決定することができるが、一般的には生じる血液アリコートを再カルシウム化するのに十分であるべきであり、添加される塩化カルシウムの最終的な濃度は5〜30mMおよびより好ましくは10〜20mMである。系に注入された血漿が反応チャンバーへカルシウムを運ぶので、カルシウムは拭き取り可能なバルブより後に液体経路のどこでも添加することができる。さらに詳細に以下に記述される、好ましさは劣るが有用な1つの実施例により提供されるように、乾燥カルシウムを活栓と一方向ダックビルバルブとの間に置くことができる。
【0057】
以下のものは、本発明の好ましい実施形態に記載のヒト血漿からトロンビン血清を調製する例示的な方法の詳細な記載である。
【0058】
方法の実践に使用される例示的な機器の図面は図5として示される。この例示的な実施形態において、機器は凝固促進剤12を有する反応チャンバー2を含む。反応チャンバー2はフィブリンゲルの粉砕のために分離した球体13も有する。流動制御ハンドル14aを含む四方活栓14は、反応チャンバー2からおよび反応チャンバー2への液体の流動の制御のために提供される。1方向のダックビルバルブ15は反応チャンバー2に連結され、液体が反応チャンバー2の外に出ていくことを阻止する。約20ミクロンの孔サイズを備えた膜を含有するフィルターハウジング16を、凝固促進剤およびフィブリン粒子を含む微粒子物質の保持のために四方活栓14の端部のうちの1つで連結する。機器は拭き取り可能な一方向の無針アクセスポート17をさらに含んで、反応チャンバー2の中へおよび反応チャンバー2から外への液体の移行の間の外気接触を回避することによって、機器の微生物に対する安全性を改善する。
【0059】
反応チャンバーの調製
様々な好適な槽を用いることができるが、この例示的な実施形態において、60mlのシリンジは好都合なプロトタイプ反応チャンバー2を提供する。反応チャンバー2は、シリンジプランジャーを除去し、凝固促進物12としてガラス球体を添加することによって、調製することができる。この例示的な方法において、および1つの例として、0.5〜5mmの間の直径を有する20グラムのガラスビーズを凝固促進剤12として使用することができる。加えて、7グラムの大きなポリスチレンビーズ(10mmの直径)または他の好適な材料を、形成されたフィブリンゲルの粉砕のための堅固な分離した物体13として反応チャンバーへ添加することができる。次いでプランジャーをシリンジ上の50mLの印に戻して、形成されたフィブリンゲルを破壊する(粉砕する)ように、振盪する間に大きな分離したビーズ13が移動するための十分な空間を生ずることができる。プランジャーの移動は要求されず、トロンビン血清生産の継続時間の間は固定した位置でとどまることができる。本発明の商業的な実施形態は、反応槽としてシリンジではなく代わりに射出成形槽を使用することができる。ハンドレバー14aを備えた四方活栓14は、反応チャンバーの中へおよび反応チャンバーから外への液体移動の方向制御の手段を提供するように、好ましい実施形態において含まれる。活栓14が第1の位置Aに向けられると、液体経路は、第1の無針アクセスポート17から一方向のダックビルバルブ15を介し、次いで反応チャンバー2(本実施例においてシリンジバレル)の中へと入る。図6は、トロンビン血清の採取のための例示的な反応チャンバーと併用した使用のためのシリンジと共に例示的な反応チャンバーの図面である。本明細書において記載されるような例示的な反応チャンバーは、液体(生物学的液体およびカルシウムイオン含有液体等)を送達するための他のシリンジ19、20および21と併用して使用される。活栓が位置Aである場合、液体は装置の中へ注入することができる。活栓ハンドル14aが第2の位置Bに向けられると、液体経路は、第2の不必要な(needless)アクセスポート18からフィルター16を介し、次いで反応チャンバー2(本実施例においてシリンジバレル)の中へと入る。この活栓ハンドル位置Bにおいて、シリンジを第2の拭き取り可能なアクセスポートへ取り付けることができ、シリンジプランジャーを低圧体積または真空を生じるように引き抜くことができ、それは、フィルター16を介しておよびシリンジの中へ反応チャンバー2の抜き取られたトロンビン血清をもたらす。本発明の好ましい実施形態において、多孔質膜を有し、凝固促進剤(小さすぎてこの図中では示されるない)およびフィブリン微粒子を保持するが、トロンビン血清の流動が起こることを可能にするのに十分に小さな孔メッシュサイズを備えたフィルターが含まれる。機器の微生物安全性は、シリンジが機器にアクセスするための無漏出の無菌性の拭き取り可能なアクセスポートを含むことで達成される閉鎖系の提供によって、促進することができる。
【0060】
CaCl2溶液の調製
354mMの塩化カルシウム六水和物(Sigma、St.Louis、Mo、製品番号21110−1KG−F、ロット#BCBC3343、分子量219.08)溶液は、15.5グラムを200mlの水中に溶解することによって調製することができる。各々の5mlのクエン酸抗凝固血液について、0.2mlのCaCl2溶液を添加して、約14mMの最終的な濃度で血液溶液を再カルシウム化することができる。1mLシリンジを使用して、拭き取り可能なポートを介して反応チャンバーの中へCaCl2を送達することができる。あるいは、乾燥カルシウムは、手順が開始する前に、チャンバー中に存在してもよく、乾燥カルシウムの存在は、液体カルシウムが方法における後の工程で使用される必要性を除く。
【0061】
血液
非限定的な例によれば、クエン酸抗凝固全血またはクエン酸抗凝固ヒト新鮮血漿は、好都合な血液として実験目的のために使用することができる。
【0062】
トロンビン血清のスプレー適用
トロンビン血清の採取に際して、Micromedics Corp.、St.Paul、Minnesotaによって製造されたもの等のスプレーチップアプリケーター(以前に図6Aで示されるようなスプレーチップSA−3674を備えたFibrijet Blendingコネクターを参照)を使用して、フィブリノーゲン源として融解された血漿の別のアリコートと組み合わせてトロンビン血清を適用することができる。
【0063】
本発明に記載のトロンビン血清の生産のための好ましい手順の一実施形態は、以下に詳述される。
【0064】
工程1:上述のように調製された反応チャンバーに、第1のインキュベーション反応物をロードする。
a.CaCl2溶液を含有する1mlのシリンジを無針アクセスポートを介して反応チャンバーへ取り付け、0.2mLを注入し、次いでシリンジを外す。
b.5mlの血漿を含有する5mlのシリンジを不必要な(needless)アクセスポートを介して反応チャンバーへ取り付け、すべての血漿を反応チャンバーの中へ注入し、次いでシリンジを外す。
c.水平位で反応チャンバーを保ったまま内容物を混合して、穏やかに十分に反応チャンバーを振盪することによって凝固促進剤を完全に湿らせ、凝固促進剤および分離した大きなプラスチックビーズの移動を引き起こす。
【0065】
工程2:第1のインキュベーション
a.シリンジを均一に分布させた凝固促進剤と共に平面上に置き、第1のインキュベーションサイクルを開始し、それは約10分間〜約10時間であり得る。
b.約10分後に、十分なトロンビンが生成され、生物学的液体中の可溶性フィブリノーゲンを転換して不溶性フィブリンにし、第1のフィブリンゲルの形成を導く。フィブリンゲルは、混合物の流動性の損失に起因する目視検査によって、および反応チャンバーが垂直位で保たれる場合でさえ、反応壁へ固まるようになる凝固促進物とプラスチックビーズの観察によって、容易に明らかである。
【0066】
工程3:トロンビン血清が使用のために必要とされる場合、反応チャンバーに第2のインキュベーション反応物をロードする。
a.CaCl2溶液を含有する1mlのシリンジを不必要な(needless)アクセスポートを介して反応チャンバーへ取り付け、シリンジを外す前に0.2mLを注入する。
b.5mlの血漿を含有する5mlのシリンジは不必要な(needless)アクセスポートを介して反応チャンバーへ注入する。
c.垂直位で反応チャンバーを保ったまま、第1の形成されたフィブリンゲルを粉砕し、チャンバー内容物を、すべてのビーズが反応チャンバー内で自由に移動しているまで(およそ3〜10秒)、反応チャンバーをしっかりと上下に振盪することによって混合する。
【0067】
工程4:第2のインキュベーション
a.シリンジを均一に分布させたガラスビーズと共に平面上に置き、第2のインキュベーションサイクルを開始し、それは約1分間〜約60分間であり得る。トロンビン血清は、第2のフィブリンゲルが形成されるとすぐに採取される準備ができている。血漿がもはや液体状態でなく、ビーズ内容物が反応槽壁へ安定的に貼り付くので、フィブリンゲルは明らかである。この方法は、一時的に安定的であり、トロンビンのフィブリノーゲンを凝血する活性がフィブリンゲルの保存時間と共に減少する、トロンビン調製物を生産する。したがって、トロンビン血清中に存在する最大のトロンビン反応性のために、フィブリンゲルが形成されるとすぐに以下に記載されるようにフィブリンゲルを粉砕し、トロンビン血清を採取することが好ましい(例えば追加の第2のフィブリンゲルが形成されて約15分または15分未満後に、より好ましくは第2のフィブリンゲルが形成されて約5分または5分未満後に、最も好ましくは第2のフィブリンゲルが形成されて約1分または1分未満後に)。
【0068】
工程5:10mlのシリンジを使用するトロンビン血清採取
a.第2のフィブリンゲルが形成された後、存在するフィブリンゲルを破壊するように、チャンバー中のビーズを押しのける十分な力により反応チャンバーを撹拌する。
b. 多孔質膜を備えたフィルターを、10mlの採取シリンジの中への微粒子物質の通過を阻止するように、反応チャンバーへ取り付けられた拭き取り可能なポートへ取り付ける。
c.図7中で示されるように、10mlのシリンジが反応チャンバーより下であり、所望される量のトロンビン血清(最大約5ml)が採取されるまで、10mlのシリンジのプランジャーを引き戻して反応チャンバー内に低圧領域または真空を生じさせることによって、トロンビン血清が採取されるように、反応チャンバーを垂直位に置く。図7は、シリンジプランジャー21を引き戻して真空を生じさせ、次いで所望される量のトロンビン血清が反応チャンバーから出てシリンジ21に入るまで待つことを介して達成される、例示的な反応チャンバー2からのトロンビン血清の採取を示すイラストである。
d.採取された血漿を室温で保存し、第2の血液アリコートの添加の15分以内に、フィブリノーゲンを接触させてフィブリンを形成するために使用することができるか、またはそれを水の混じった氷(<10℃)上で保存し、第2の血液アリコートの添加の1時間以内に、フィブリノーゲンを接触させてフィブリンを形成するために使用することができる。
【0069】
工程6:(任意)追加のトロンビン血清調製物を作製することが所望されるならば、工程3、4および5は、少なくとも6回まで血液の新鮮なアリコートを使用して反復することができる。
【0070】
プロトロンビナーゼ酵素複合体が、血液を混合する最初の接触の間に凝固促進剤表面上に一旦形成されたならば、少なくとも10時間、しかし24時間未満の臨床的に有用な期間の間にプロトロンビンをトロンビンへ迅速に転換することができるように、機器中のカルシウムおよび凝固促進剤は、持続的酵素活性の存続的機能状態でとどまるという解明は、以下に要約される実験において例証された。
【0071】
この研究において、6つの反応チャンバーを上述のように調製した。この実験のために用いられた代表的な血液は新鮮血漿であった。反応チャンバーへの血漿およびカルシウムの添加(工程1)を、時間ゼロとして指定された時間で6つのシリンジすべてについて上述のように実行した。0時間、1時間、3時間、10時間、12時間および24時間のインキュベーション試験条件を有するように、第1のインキュベーション期間の継続時間(工程2)を、各々の6シリンジについて変動させた。反応チャンバーへの第2のカルシウムおよび血漿アリコートの添加(工程3)を、第1のインキュベーション時間の終了時に上述のように実行した。第2のインキュベーション(工程4)を第2のゲルの形成について要求される時間へ固定し、それを記録した。トロンビン血清の採取を上述のように(工程5)実行し、トロンビン活性をトロンビン血清採取後の5分間後に測定した。この実験におけるトロンビン活性は、Diagnostica Stago Inc.、Troy Hills、New Jerseyによって製造されたSTart Hemostasis Analyzerを使用して、フィブリノーゲン凝血時間を記録することによって測定した。表中で以下に提示されたデータは、トロンビン活性がより少ないせいでフィブリノーゲン凝血のための時間が増加し始めるので、12時間以上の保存時間が凝固促進活性化の損失をもたらすが、12時間でさえ、24時間の保存後の事例のように完全に失われなかったことを実証する。興味深いことには、調製されたトロンビンの各々のバッチは凝固促進活性を追加の10時間以上延長した。以下の表中のデータは、室温で少なくとも10時間の保存時間で活性化された凝固促進剤の安定性を実証する。
【0072】
表A 凝固促進剤の活性化の存続性に対する保存時間の効果
【0073】
トロンビン血清の複数の調製が単一機器に由来し得るという概念の証明を実証する実験を、上で教示された方法に従って行った。ここで、トロンビン血清調製物は、単一機器を使用して、30分間の間隔で融解された新鮮凍結血漿から5回調製された。以下の表中のデータは、単一機器を反復的に使用してオンデマンドで高反応性を備えたトロンビンを生産できることを実証する。凝固促進剤は、0.2mLのCaCl2溶液および5mlの新たに融解された血漿を反応チャンバーへ添加することによって活性化され、第1のゲル化が起こるまでインキュベーションし、それはおよそ5分間を要求した。この時点で、凝固促進表面は活性化され、オンデマンドでトロンビン血清を生産することができる。トロンビン血清を生成するために、追加の0.2mLのCaCl2溶液および5mlの血漿を反応チャンバーへ添加し、第2のゲル化が起こるまでインキュベーションし、それはおよそ30秒を要求した。ゲルが形成された後の約1分間保った後に、機器を撹拌してゲルを破壊し、約5mlのトロンビン血清を採取した。隔離された血清におけるトロンビン反応性を凝血試験を行なうことによって決定した。例示的な凝血試験において、0.5mlのトロンビン血清を1.5mLエッペンドルフチューブ中の0.5mlのフィブリノーゲン源(血漿等)へ添加した。サンプルを転倒によって混合し、液体溶液が固体またはゲルになるのに要求される時間を観察によって決定する。データは、単一機器が少なくとも4バッチの5mlのトロンビン血清/バッチを生産できることを実証する。
【0074】
表B 複数のバッチのトロンビン血清の単一機器調製の実証
【0075】
本発明の教示により調製されたトロンビン血清の安定性を測定するための実験も行われた。ここで、トロンビン血清調製物を、融解された新鮮凍結血漿から単一機器を使用して調製した。凝固促進剤は、0.2mLのCaCl2溶液および5mlの新たに融解された血漿を反応チャンバーへ添加することによって活性化され、第1のゲル化が起こるまでインキュベーションし、それはおよそ5分間を要求した。トロンビン血清を生成するために、追加の0.2mLのCaCl2溶液および5mlの血漿を反応チャンバーへ添加し、第2のゲル化が起こるまでインキュベーションし、それはおよそ30秒を要求した。ゲルが形成された後の約1分間保った後に、機器を撹拌してゲルを破壊し、約5mlのトロンビン血清を採取した。次いでトロンビン血清調製物を室温または<10℃で保存し、トロンビン反応性をその後に定期的に測定した。隔離された血清におけるトロンビン反応性は凝血試験を行なうことによって決定した。トロンビン血清についての凝血時間を30分の期間にわたって測定し、室温でおよび<10℃で保存された場合の両方の安定性を検出した。凝血時間は3時間の期間にわたって徐々に増加した。最速の凝血時間(例えば最大のトロンビン濃度)はトロンビン血清の採取後に達成された。速い凝血活性は調製後に最初の15分間残存し、90秒未満の凝血時間が30分間以上存続した。トロンビン血清を低温で保存した場合、迅速な凝血活性は60分間の期間にわたって良好に維持され、少なくとも最大3時間存続した。
【0076】
乾燥塩化カルシウム(液体カルシウムとは対照的に)が用いられる代替の実施形態へ少し戻って、さらに別の実施形態において、機器の製造の時に反応チャンバーへこの乾燥塩化カルシウムを導入することができた。導入された各々の血液アリコートは存在するカルシウムと必ず接触するだろう。この実施形態は、操作者によって要求される工程の数が減少し、結果的に過失のリスクを減少させるという点で利益を提供する。
【0077】
この乾燥カルシウム代替の実施形態の1つの例示的な事例として、1つの実験は、融解された新鮮凍結血漿から単一機器を使用して調製されたトロンビン血清調製物を利用した。機器は、0.4mlのCaCl2溶液(200mlの無水エタノール中で15.5グラムを溶解することによって調製された354mM塩化カルシウム六水和物)を、凝固促進剤を含有する反応チャンバーへ添加することによって調製した。反応チャンバー中の乾燥カルシウム塩を残して、エタノールを蒸発させることができた。5mlのクエン酸抗凝固血漿による凝固促進試薬の活性化によって、乾燥カルシウム塩を含有するこの機器により、液体塩化カルシウム溶液の添加なしに、トロンビン血清を調製した。次に活性化された凝固促進物を使用して、追加の5mlのクエン酸抗凝固血漿の添加によって、トロンビン血清を調製した。通常使用されるものの2倍の第1の血漿のアリコート中に存在するカルシウムの初期濃度は凝固促進剤の形成の成功を阻害しないことが明らかになったことは意外であった。反応チャンバー中の乾燥カルシウムの量が0.8mlのCaCl2溶液(354mM塩化カルシウム)へ増加された場合、活性化された凝固促進剤の形成においてかかる阻害が観察された。
【0078】
多くの適用には一般的にはそれほど所望されないが、2ステージトロンビン血清生産の現在の発明とトロンビンの安定化にエタノールを使用する先行技術の教示を組み合わせることは可能である。図3はかかる実施形態における現在の発明の手順を示し、そこで2ステージ手順は以下の4工程を含み、それは好ましくは連続して起こる。1)活性化された凝固促進剤(材料の表面上のプロトロンビナーゼ酵素複合体)は、遊離カルシウムイオンの存在下において凝固カスケードの能力のある第1の生物学的液体アリコートを組み合わせることおよび次いで少なくとも約10分間混合物をインキュベーションすることによって調製される;2)次いで活性化された凝固促進剤は約10時間までの期間の間保存することができる;3)トロンビンを使用することが計画される時間で、15〜25%のエタノール(v/v)および遊離Ca++イオンを補足した生物学的液体の追加のアリコートを活性化された凝固促進剤へ添加することができる;および4)続いて形成されたフィブリンゲルを粉砕する。次いでエタノールを補足したトロンビン血清を採取することができる。エタノールを補足した採取されたトロンビンは、特に<10℃で保存した場合に促進された安定性を有し、第2の血液アリコートの添加の10時間以内に、フィブリノーゲンに接触させてフィブリンを形成するために使用することができる。好ましさは劣るが、これは第2の血液アリコートの添加の6時間以内に起こる。本発明のこの実施形態に記載のトロンビン血清の生産のための手順は、以下に詳述される。
【0079】
工程1:上述のように調製された反応チャンバーに、第1のインキュベーション反応物を以下のようにロードする。
a.CaCl2溶液を含有する1mlのシリンジを無針アクセスポートを介して反応チャンバーへ取り付け、0.2mLを注入し、次いでシリンジを外す。
b.5mlの血漿を含有する5mlのシリンジを不必要な(needless)アクセスポートを介して反応チャンバーへ取り付け、すべての血漿を反応チャンバーの中へ注入し、次いでシリンジを外す。
c.水平位で反応チャンバーを保ったまま内容物を混合して、穏やかに十分に反応チャンバーを振盪することによって凝固促進剤を完全に湿らせ、凝固促進剤および分離した大きなプラスチックビーズの移動を引き起こす。
【0080】
工程2:第1のインキュベーション
a.シリンジを均一に分布させた凝固促進剤と共に平面上に置き、第1のインキュベーションサイクルを開始し、それは約10分間〜約10時間であり得る。
b.約10分後に、十分なトロンビンが生成され、生物学的液体中の可溶性フィブリノーゲンを転換して不溶性フィブリンにし、第1のフィブリンゲルの形成を導く。フィブリンゲルは、混合物の流動性の損失に起因する目視検査によって、および反応チャンバーが垂直位で保たれる場合でさえ、反応壁へ固まるようになる凝固促進物とプラスチックビーズの観察によって、容易に明らかである。
【0081】
工程3:トロンビン血清が使用のために必要とされる場合、反応チャンバーに第2のインキュベーション反応物をロードする。
a.CaCl2溶液を含有する1mlのシリンジを無針アクセスポートを介して反応チャンバーへ取り付け、シリンジを外す前に0.2mLを注入する。
b.4mlの水中の72%エタノール(v/v)を含有する5mlのシリンジを無針アクセスポートを介して反応チャンバーへ取り付け、シリンジ内容物を反応チャンバーの中へ注入する。
c.5mlの血漿を含有する5mlのシリンジを無針アクセスポートを介して反応チャンバーへ取り付け、シリンジが外される前にシリンジの全体の内容物を注入する。
d.垂直位で反応チャンバーを保ったまま、第1の形成されたフィブリンゲルを粉砕し、チャンバー内容物を、すべてのビーズが反応チャンバー内で自由に移動するまで(およそ3〜10秒)、反応チャンバーの液体内容物中で約20%のエタノール(v/v)の最終的な濃度を達成するように、反応チャンバーをしっかりと上下に振盪することによって混合する。
【0082】
工程4:第2のインキュベーション
a.シリンジを均一に分布させたガラスビーズと共に平面上に置き、第2のインキュベーションサイクルを開始し、それは約1分間〜約6時間であり得る。トロンビン血清は、第2のフィブリンゲルが形成されるとすぐに採取される準備ができている。血漿がもはや液体状態でなく、ビーズ内容物が反応槽壁へ安定的に貼り付くので、フィブリンゲルは明らかである。この方法は、一時的に安定的であり、トロンビンのフィブリノーゲンを凝血する活性がフィブリンゲルの保存時間と共に減少する、トロンビン調製物を生産する。したがって、トロンビン血清中に存在する最大のトロンビン反応性のために、フィブリンゲルが形成されるとすぐに以下に記載されるようにフィブリンゲルを粉砕し、トロンビン血清を採取することが好ましい(例えば追加の第2のフィブリンゲルが形成されて約15分または15分未満後に、より好ましくは第2のフィブリンゲルが形成されて約5分または5分未満後に、最も好ましくは第2のフィブリンゲルが形成されて約1分または1分未満後に)。
【0083】
工程5:トロンビン血清採取
a.第2のフィブリンゲルが形成された後、チャンバー中のビーズを押しのける十分な力により反応チャンバーを撹拌し、存在するフィブリンゲルを破壊する。
b.多孔質膜を備えたフィルターを、10mlの採取シリンジの中への微粒子物質の通過を阻止するように、反応チャンバーへ取り付けられた拭き取り可能なポートへ取り付ける。
c.図7中で示されるように、10mlのシリンジが反応チャンバーより下であり、所望される量のトロンビン血清(最大約5ml)が採取されるまで、10mlのシリンジのプランジャーを引き戻して反応チャンバー内に低圧領域または真空を生じさせることによって、トロンビン血清が採取されるように、反応チャンバーを垂直位に置く。図7は、シリンジプランジャー21を引き戻して真空を生じさせ、次いで所望される量のトロンビン血清が反応チャンバーから出てシリンジ21に入るまで待つことを介して達成される、例示的な反応チャンバー2からのトロンビン血清の採取を図示する。
d.採取された血漿を室温で保存し、第2の血液アリコートの添加の4時間以内に、フィブリノーゲンを接触させてフィブリンを形成するために使用することができるか、またはそれを水の混じった氷(<10℃)上で保存し、第2の血液アリコートの添加の6時間以内に、フィブリノーゲンを接触させてフィブリンを形成するために使用することができる。
【0084】
工程6:(オプション)追加のトロンビン血清調製物を作製することが所望されるならば、工程3、4および5は、少なくとも6回まで血液の新鮮なアリコートを使用して反復することができる。
【0085】
本発明は特定の実施形態に関して示され記載されてきたが、明細書を読了し理解すれば、当業者が同等の改変および修飾を思いつくであろうことは明らかである。特に、上述の構成要素によって実行される様々な機能に関して、かかる構成要素を記載するのに使用される用語(「手段」への任意の参照を含む)は、特別の指示の無い限り、本明細書における本発明の例示的な実施形態の機能を実行する開示の構成要素と構造的に同等でなくても、記述された構成要素の指定された機能を実行する任意の構成要素(例えば機能的に同等であるもの)に対応することが意図される。加えて、本発明の特定の特色を一実施形態のみに関して開示することができるが、かかる特色は、任意の規定または特定の適用に所望または有利であり得るとき、他の実施形態の1つまたは複数の他の特色と組合せることができる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図6A
図7
図8