特許第6018300号(P6018300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6018300通信制御方法、ユーザ端末及びプロセッサ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018300
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】通信制御方法、ユーザ端末及びプロセッサ
(51)【国際特許分類】
   H04W 48/18 20090101AFI20161020BHJP
   H04W 28/08 20090101ALI20161020BHJP
   H04W 76/06 20090101ALI20161020BHJP
【FI】
   H04W48/18 113
   H04W28/08
   H04W76/06
【請求項の数】6
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2015-515892(P2015-515892)
(86)(22)【出願日】2014年5月8日
(86)【国際出願番号】JP2014062369
(87)【国際公開番号】WO2014181830
(87)【国際公開日】20141113
【審査請求日】2016年2月16日
(31)【優先権主張番号】61/864,250
(32)【優先日】2013年8月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】特願2013-100600(P2013-100600)
(32)【優先日】2013年5月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-100777(P2013-100777)
(32)【優先日】2013年5月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-100779(P2013-100779)
(32)【優先日】2013年5月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-100780(P2013-100780)
(32)【優先日】2013年5月10日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】キュリーズ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】長坂 優志
(72)【発明者】
【氏名】藤代 真人
(72)【発明者】
【氏名】安達 裕之
(72)【発明者】
【氏名】守田 空悟
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 智春
(72)【発明者】
【氏名】チャン ヘンリー
【審査官】 小林 正明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−109899(JP,A)
【文献】 特表2013−522986(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/100085(WO,A1)
【文献】 China Unicom,Consideration on WLAN/3GPP inteworking[online], 3GPP TSG-RAN WG2#81bis R2-131029,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ra,2013年 4月19日
【文献】 3GPP TR 37.834 V0.2.0 (2013-04),3GPP,2013年 4月,第6頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
E−UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)のトラフィックをWLAN(Wireless Local Area Network)へ移行するオフロードを行うための通信制御方法であって、
ユーザ端末が、前記オフロードを開始するステップと、
前記ユーザ端末が、前記オフロードの開始後において、前記WLANでの通信状況に基づいて前記オフロードを中止するか判断する判断ステップと、
前記ユーザ端末が、前記E−UTRANとの接続の解放前において、前記E−UTRANから設定情報を受信するステップと、を有し、
前記設定情報は、前記オフロードの開始後かつ前記接続の解放後における前記ユーザ端末の動作を設定するための情報であることを特徴とする通信制御方法。
【請求項2】
前記ユーザ端末が、前記判断ステップにおいて前記オフロードを中止すると判断した場合に、前記オフロードを中止するとともに、前記設定情報を破棄するステップをさらに有することを特徴とする請求項に記載の通信制御方法。
【請求項3】
ユーザ端末であって、
E−UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)のトラフィックをWLAN(Wireless Local Area Network)へ移行するオフロードを開始するコントローラを備え
前記コントローラは、
前記オフロードの開始後において、前記WLANでの通信状況に基づいて前記オフロードを中止するか判断する処理と、
前記E−UTRANとの接続の解放前において、前記E−UTRANから設定情報を受信する処理と、を実行し、
前記設定情報は、前記オフロードの開始後かつ前記接続の解放後における前記ユーザ端末の動作を設定するための情報であることを特徴とするユーザ端末。
【請求項4】
前記コントローラは、前記オフロードを中止すると判断した場合に、前記オフロードを中止するとともに、前記設定情報を破棄することを特徴とする請求項3に記載のユーザ端末。
【請求項5】
ユーザ端末を制御するためのプロセッサであって、
E−UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)のトラフィックをWLAN(Wireless Local Area Network)へ移行するオフロードを開始する処理と、
前記オフロードの開始後において、前記WLANでの通信状況に基づいて前記オフロードを中止するか判断する処理と、
前記E−UTRANとの接続の解放前において、前記E−UTRANから設定情報を受信する処理と、を実行し、
前記設定情報は、前記オフロードの開始後かつ前記接続の解放後における前記ユーザ端末の動作を設定するための情報であることを特徴とするプロセッサ。
【請求項6】
前記オフロードを中止すると判断した場合に、前記オフロードを中止するとともに、前記設定情報を破棄する処理を実行することを特徴とする請求項5に記載のプロセッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LANシステム(WLANシステム)と連携可能なセルラ通信システムにおいて用いられる通信制御方法ユーザ端末及びプロセッサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セルラ通信部及びWLAN通信部を有するユーザ端末(いわゆる、デュアル端末)の普及が進んでいる。また、セルラ通信システムのオペレータにより管理されるWLANアクセスポイント(以下、単に「アクセスポイント」という)が増加している。
【0003】
そこで、セルラ通信システムの標準化プロジェクトである3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、セルラ通信システムとWLANシステムとの連携を強化できる技術が検討される予定である(非特許文献1参照)。
【0004】
このような技術の目的の一つは、アクセスポイントの使用率を向上させることにより、セルラ基地局及びアクセスポイントで負荷レベルのバランスをとることである。
【0005】
例えば、セルラ基地局とユーザ端末との間で送受信されるトラフィックを、アクセスポイントとユーザ端末との間で送受信するよう切り替えることにより、セルラ基地局のトラフィック負荷をアクセスポイントに移行(オフロード)できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】3GPP寄書 RP−1201455
【発明の概要】
【0007】
ところで、ユーザ端末は、アクセスポイントとの接続を確立する場合に、セルラ基地局との接続を解放することが一般的である。従って、上述したオフロードの実行中において、ユーザ端末はセルラ通信のアイドル状態になる。
【0008】
しかしながら、ユーザ端末がアクセスポイントとの接続を確立した後、ユーザ端末とアクセスポイントとの間の通信状況が悪化したような場合には、ユーザ端末とセルラ基地局との間の接続を改めて確立するという非効率な動作(いわゆる、ピンポン現象)が生じ得る。
【0009】
そこで、本発明は、セルラ基地局のトラフィック負荷をアクセスポイントに移行するオフロードを効率的に制御することを目的とする。
【0010】
一実施形態に係る通信制御方法は、セルラ基地局のトラフィック負荷をアクセスポイントに移行するオフロードを行うための方法である。前記通信制御方法は、前記セルラ基地局との第1の接続を確立しているユーザ端末が、前記アクセスポイントとの第2の接続を確立して前記オフロードを開始しても、前記第1の接続を解放せずに維持するステップと、前記ユーザ端末が、前記オフロードの開始後において、前記オフロードを継続するか中止するかの判断を行う判断ステップと、を有する。
一実施形態に係るユーザ端末は、移動通信ネットワークを構成する基地局との第1の接続を確立している場合に、無線LANを構成するアクセスポイントとの第2の接続を確立して前記移動通信ネットワークのトラフィックを前記無線LANへ移行するオフロードを開始するコントローラを備える。前記コントローラは、前記オフロードの開始後も前記第1の接続を維持する。前記コントローラは、前記オフロードを継続するか否かの判断を行う。
一実施形態に係るプロセッサは、ユーザ端末を制御するためのプロセッサである。前記プロセッサは、前記ユーザ端末が、移動通信ネットワークを構成する基地局との第1の接続を確立している場合に、無線LANを構成するアクセスポイントとの第2の接続を確立して前記移動通信ネットワークのトラフィックのオフロードを開始するステップと、前記オフロードの開始後も前記第1の接続を維持するステップと、前記オフロードを継続するか否かの判断を行うステップと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態及び第2実施形態に係るシステム構成図である。
図2図2は、第1実施形態及び第2実施形態に係るUE(ユーザ端末)のブロック図である。
図3図3は、第1実施形態及び第2実施形態に係るeNB(セルラ基地局)のブロック図である。
図4図4は、第1実施形態及び第2実施形態に係るAP(アクセスポイント)のブロック図である。
図5図5は、LTEシステムにおける無線インターフェイスのプロトコルスタック図である。
図6図6は、LTEシステムで使用される無線フレームの構成図である。
図7図7は、第1実施形態及び第2実施形態に係る動作環境を説明するための図である。
図8図8は、第1実施形態に係る動作パターン1のシーケンス図である。
図9図9は、第1実施形態に係る動作パターン2のシーケンス図である。
図10図10は、第2実施形態に係る動作パターン2のシーケンス図である。
図11図11は、第2実施形態に係る動作パターン3のシーケンス図である。
図12図12は、第2実施形態に係る動作パターン4のシーケンス図である。
図13図13は、第3実施形態及び第4実施形態に係る動作環境を説明するための図である。
図14図14は、第3実施形態に係るUE100の動作フロー図である。
図15図15は、第3実施形態の変更例及び第4実施形態の変更例に係るシーケンス図である。
図16図16は、第4実施形態に係るUE100の動作フロー図である。
図17図17は、第5実施形態に係るシステム構成図である。
図18図18は、第5実施形態に係る動作環境を説明するための図である。
図19図19は、第5実施形態に係るオフロード動作のシーケンス図である。
図20図20は、第6実施形態及び第7実施形態に係るシステム構成図である。
図21図21は、第6実施形態及び第7実施形態に係るHeNBのブロック図である。
図22図22は、第6実施形態に係るUE100、eNB200、HeNB400、及びAP300の位置関係を示す図である。
図23図23は、第6実施形態に係る動作を説明するためのシーケンス図である。
図24図24は、第6実施形態に係る動作を説明するためのシーケンス図である。
図25図25は、第7実施形態に係るUE100、eNB200、HeNB400、及びAP300の位置関係を示す図である。
図26図26は、第7実施形態に係る動作を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態の概要]
第1実施形態及び第2実施形態に係る通信制御方法は、セルラ基地局のトラフィック負荷をアクセスポイントに移行するオフロードを行うための方法である。前記通信制御方法は、前記セルラ基地局との第1の接続を確立しているユーザ端末が、前記アクセスポイントとの第2の接続を確立して前記オフロードを開始しても、前記第1の接続を解放せずに維持するステップと、前記ユーザ端末が、前記オフロードの開始後において、前記オフロードを継続するか中止するかの判断を行う判断ステップと、を有する。
【0013】
第1実施形態及び第2実施形態では、前記判断ステップにおいて、前記ユーザ端末は、前記アクセスポイントとの通信状況に基づいて前記判断を行う。
【0014】
第1実施形態に係る動作パターン1では、前記通信制御方法は、前記ユーザ端末が、前記第1の接続の解放前において、前記第1の接続を解放した後における前記ユーザ端末の動作を設定するための設定情報を前記セルラ基地局から受信するステップをさらに有する。
【0015】
第1実施形態に係る動作パターン1では、前記通信制御方法は、前記ユーザ端末が、前記判断ステップにおいて前記オフロードを継続すると判断した場合に、前記オフロードを継続することを示す通知を前記セルラ基地局に送信するステップと、前記ユーザ端末が、前記通知の送信後において、前記第1の接続を解放するステップと、をさらに有する。
【0016】
第1実施形態に係る動作パターン1では、前記通信制御方法は、前記ユーザ端末が、前記判断ステップにおいて前記オフロードを中止すると判断した場合に、前記オフロードを中止するとともに、前記設定情報を破棄するステップをさらに有する。
【0017】
第1実施形態に係る動作パターン2では、前記通信制御方法は、前記ユーザ端末が、前記オフロードの開始前において、前記第1の接続の解放指示の送信停止を要求するための送信停止要求を前記セルラ基地局に送信するステップをさらに有する。
【0018】
第1実施形態に係る動作パターン2では、前記通信制御方法は、前記ユーザ端末が、前記判断ステップにおいて前記オフロードを継続すると判断した場合に、前記解放指示の送信を要求するための送信要求を前記セルラ基地局に送信するステップと、前記ユーザ端末が、前記解放指示を前記セルラ基地局から受信するステップと、をさらに有する。前記解放指示は、前記第1の接続を解放した後における前記ユーザ端末の動作を設定するための設定情報を含む。
【0019】
第1実施形態及び第2実施形態では、前記ユーザ端末は、前記オフロードを開始した後に前記第1の接続を維持すべき接続維持期間を規定する端末側タイマを備えている。前記通信制御方法は、前記ユーザ端末が、前記オフロードを開始した際に前記端末側タイマを起動するステップと、前記ユーザ端末が、前記端末側タイマが満了するまで前記第1の接続を維持する維持ステップと、をさらに有する。
【0020】
第2実施形態に係る動作パターン1では、前記セルラ基地局は、前記ユーザ端末とのトラフィック送受信を停止した後に前記第1の接続を維持すべき接続維持期間を規定する基地局側タイマを備えている。前記端末側タイマに設定されている接続維持期間は、前記基地局側タイマに設定されている接続維持期間以下である。
【0021】
第2実施形態に係る動作パターン2では、前記セルラ基地局は、前記ユーザ端末とのトラフィック送受信を停止した後に前記第1の接続を維持すべき接続維持期間を規定する基地局側タイマを備えている。前記維持ステップにおいて、前記ユーザ端末は、前記アクセスポイントとのトラフィック送受信を行いつつ、前記基地局側タイマを停止するために前記セルラ基地局とのトラフィック送受信を行う。
【0022】
第2実施形態に係る動作パターン3では、前記セルラ基地局は、前記ユーザ端末とのトラフィック送受信を停止した後に前記第1の接続を維持すべき接続維持期間を規定する基地局側タイマを備えている。前記通信制御方法は、前記セルラ基地局において前記基地局側タイマが満了した際に前記第1の接続の解放要求を前記ユーザ端末から受信していない場合に、前記第1の接続の解放可否について前記セルラ基地局から前記ユーザ端末に問い合わせるステップをさらに有する。
【0023】
第2実施形態に係る動作パターン4では、前記セルラ基地局は、前記ユーザ端末とのトラフィック送受信を停止した後に前記第1の接続を維持すべき接続維持期間を規定する基地局側タイマを備えている。前記通信制御方法は、前記セルラ基地局が、前記端末側タイマが満了するよりも先に前記基地局側タイマが満了することを防止するために、前記基地局側タイマを制御する制御ステップをさらに有する。
【0024】
第2実施形態に係る動作パターン4−1では、前記基地局側タイマは、前記オフロード以外の用途に使用される第1の基地局側タイマと、前記オフロードの用途に使用される第2の基地局側タイマと、を含む。前記第2の基地局側タイマに設定されている接続維持期間は、前記第1の基地局側タイマに設定されている接続維持期間よりも長い。前記制御ステップにおいて、前記セルラ基地局は、前記オフロードを開始したことに応じて、前記第2の基地局側タイマを選択した上で前記第2の基地局側タイマを起動する。
【0025】
第2実施形態に係る動作パターン4−2では、前記通信制御方法は、前記セルラ基地局が、前記端末側タイマに設定すべき接続維持期間を前記ユーザ端末に通知するステップをさらに有する。前記制御ステップにおいて、前記セルラ基地局は、前記ユーザ端末に通知した接続維持期間以上の接続維持期間を前記基地局側タイマに設定する。
【0026】
第2実施形態に係る動作パターン4−3では、前記制御ステップにおいて、前記セルラ基地局は、前記オフロードを開始したことに応じて、前記基地局側タイマの起動を中止する。
【0027】
第3実施形態に係るユーザ端末は、セルラ通信部及びWLAN通信部を有する。前記ユーザ端末は、前記WLAN通信部がオン状態である場合に、前記ユーザ端末の移動速度を測定する制御部を備える。前記制御部は、前記移動速度の急激な低下を検知した場合に、前記WLAN通信部によるアクセスポイントとの接続開始を規制する。
【0028】
第3実施形態では、前記制御部は、前記移動速度の急激な低下を検知した後において、前記移動速度の急激な上昇を検知した場合に、前記接続開始の規制を解除する。
【0029】
第3実施形態の変更例では、接続規制の対象とすべき前記アクセスポイントのリストを記憶する記憶部をさらに備える。前記制御部は、前記リストに含まれる前記アクセスポイントとの接続開始を規制する。
【0030】
第3実施形態の変更例では、前記セルラ通信部は、セルラ基地局から前記リストを受信している。前記記憶部は、前記セルラ基地局から受信した前記リストを記憶する。
【0031】
第4実施形態に係るユーザ端末は、セルラ通信部及びWLAN通信部を有する。前記ユーザ端末は、前記WLAN通信部がオン状態である場合に、アクセスポイントからの受信レベルを測定する制御部を備える。前記制御部は、前記受信レベルの急激な上昇を検知した場合に、前記WLAN通信部による前記アクセスポイントとの接続開始を規制する。
【0032】
第4実施形態では、前記制御部は、前記受信レベルの急激な上昇を検知した後において、前記受信レベルの急激な低下を検知した場合に、前記接続開始の規制を解除する。
【0033】
第4実施形態の変更例では、接続規制の対象とすべき前記アクセスポイントのリストを記憶する記憶部をさらに備える。前記制御部は、前記リストに含まれる前記アクセスポイントとの接続開始を規制する。
【0034】
第4実施形態の変更例では、前記セルラ通信部は、セルラ基地局から前記リストを受信している。前記記憶部は、前記セルラ基地局から受信した前記リストを記憶する。
【0035】
第5実施形態に係るユーザ端末は、セルラ無線信号をセルラ基地局と送受信するセルラ通信部と、WLAN無線信号をアクセスポイントと送受信するWLAN通信部と、前記WLAN通信部がオフ状態である場合で、かつ、前記WLAN通信部をオン状態に切り替えるためのWLANオン要求を前記セルラ基地局から前記セルラ通信部が受信した場合に、前記WLAN通信部をオン状態に切り替える制御部と、を備える。前記WLANオン要求は、前記WLAN通信部によりWLAN無線信号の受信をWLANチャネルごとに試行する動作であるWLANスキャンを制御するためのスキャン制御情報を含む。前記制御部は、前記WLAN通信部をオン状態に切り替えた後、前記WLANオン要求に含まれる前記スキャン制御情報に従って前記WLANスキャンを制御する。
【0036】
第5実施形態では、前記制御部は、前記WLANオン要求を受信するよりも前において、前記ユーザ端末のWLAN通信能力を示す情報、前記WLAN通信部がオフ状態であることを示す情報、のうち少なくとも1つを前記セルラ基地局に通知する。
【0037】
第5実施形態では、前記スキャン制御情報は、前記WLANスキャンの対象とするWLANチャネル又は前記WLANスキャンの対象としないWLANチャネルを指定するためのチャネル情報、前記WLANスキャンの対象とするWLAN周波数帯又は前記WLANスキャンの対象としないWLAN周波数帯を指定するための周波数帯情報、のうち少なくとも1つを含む。
【0038】
第5実施形態では、前記スキャン制御情報は、前記WLANスキャンにおいて前記WLAN無線信号の受信を優先的に試行すべきWLANチャネル又はWLAN周波数帯を指定するための優先度情報を含む。
【0039】
第5実施形態では、前記スキャン制御情報は、前記WLANスキャンを継続すべき期間を指定するための期間情報、前記WLANスキャンを行うべきタイミングを指定するためのタイミング情報、のうち少なくとも1つを含む。
【0040】
第5実施形態では、前記ユーザ端末は、GNSS(Global Navigation Satellite System)信号を受信するGNSS受信機をさらに備える。前記制御部は、前記WLANオン要求を受信するよりも前において、前記GNSS信号の受信レベルに関する情報を前記セルラ基地局に通知する。
【0041】
第5実施形態では、前記制御部は、前記WLAN通信部がオン状態である場合で、かつ、前記WLANオン要求を前記セルラ基地局から前記セルラ通信部が受信した場合に、前記WLANオン要求を無視する。
【0042】
第6実施形態に係る通信制御方法は、セルラ通信システムを無線LANシステムと連携させるための通信制御方法であって、小セル基地局と直接的に接続される無線LANアクセスポイントと、前記無線LANアクセスポイントに接続しているユーザ端末との接続が困難になるか否かを判定する判定ステップと、前記ユーザ端末と前記無線LANアクセスポイントとの接続が困難になると判定された場合に、前記ユーザ端末が、他の基地局が管理するセルへ接続する接続ステップと、前記ユーザ端末と前記無線LANアクセスポイントとの接続が困難になると判定された場合に、前記無線LANアクセスポイントが、前記無線LANアクセスポイントが有する前記ユーザ端末に関するユーザデータを、前記小セル基地局を経由して前記他の基地局に転送する転送ステップと、を有する。
【0043】
第6実施形態に係る通信制御方法では、前記ユーザ端末が、前記判定ステップにおいて、前記ユーザ端末と前記無線LANアクセスポイントとの接続が困難になると判定した場合、前記ユーザデータを前記他の基地局に転送させるための要求を行う要求ステップをさらに有し、前記転送ステップにおいて、前記要求ステップにおける要求に起因して、前記無線LANアクセスポイントが、前記小セル基地局を経由して前記他の基地局に前記ユーザデータを転送する。
【0044】
第6実施形態に係る通信制御方法では、前記判定ステップにおいて、前記ユーザ端末は、前記無線LANアクセスポイントから受信する信号強度が通信品質を確保できる値である所定値以上であっても、前記無線LANアクセスポイントが前記小セル基地局と同じ場所に配置された併設タイプであり、且つ、前記小セル基地局から受信する信号強度が所定値未満になった場合に、前記無線LANアクセスポイントとの接続が困難になると判定する。
【0045】
第6実施形態に係る通信制御方法は、前記他の基地局が、前記要求ステップにおける要求を受信した場合に、前記無線LANアクセスポイントから、前記小セル基地局を経由して、前記他の基地局に前記ユーザデータを転送することを前記小セル基地局に要求する第1転送要求ステップと、前記小セル基地局が、前記第1転送要求ステップにおける要求を受信した場合に、前記小セル基地局に前記ユーザデータを転送することを前記無線LANアクセスポイントに要求する第2転送要求ステップと、をさらに有し、前記転送ステップにおいて、前記無線LANアクセスポイントが、前記第2転送要求ステップにおける要求を受信した場合に、前記小セル基地局を経由して、前記他の基地局に前記ユーザデータを転送する。
【0046】
第6実施形態に係る通信制御方法では、前記転送ステップにおいて、前記小セル基地局は、アクセス権を有する特定ユーザ端末のみが接続可能な特定セルを管理するホーム基地局である場合で、且つ、前記ユーザ端末が前記特定ユーザ端末でない場合であっても、前記無線LANアクセスポイントから転送された前記ユーザデータを前記他の基地局へ転送する。
【0047】
第6実施形態に係る通信制御方法は、前記他の基地局が、前記要求ステップにおける要求を満たすことができない場合、前記要求ステップにおける要求に対して否定応答を行う否定応答ステップと、前記ユーザ端末が、前記否定応答を受信した場合に、前記要求ステップにおける要求を再度行う再要求ステップと、をさらに有する。
【0048】
第6実施形態に係る通信制御方法では、再要求ステップにおいて、前記ユーザ端末は、前記否定応答の受信回数が所定値に達するまで、前記要求ステップにおける要求を繰り返し行う。
【0049】
その他実施形態に係る通信制御方法では、前記判定ステップにおいて、前記無線LANアクセスポイントは、前記ユーザ端末から受信する信号強度が所定値未満になった場合に、前記ユーザ端末と前記無線LANアクセスポイントとの接続が困難になると判定する。
【0050】
第7実施形態に係る通信制御方法は、セルラ通信システムを無線LANシステムと連携させるための通信制御方法であって、小セル基地局と直接的に接続される無線LANアクセスポイントと、前記無線LANアクセスポイントに接続しているユーザ端末との接続が困難になるか否かを判定する判定ステップと、前記ユーザ端末と前記無線LANアクセスポイントとの接続が困難になると判定された場合に、前記ユーザ端末が、前記小セル基地局が管理する小セルへ接続する接続ステップと、前記ユーザ端末と前記無線LANアクセスポイントとの接続が困難になると判定された場合に、前記無線LANアクセスポイントが、前記無線LANアクセスポイントが有する前記ユーザ端末に関するユーザデータを、前記小セル基地局に転送する転送ステップと、を有する。
【0051】
第7実施形態に係る通信制御方法は、前記ユーザ端末が、前記判定ステップにおいて、前記ユーザ端末と前記無線LANアクセスポイントとの接続が困難になると判定した場合、前記ユーザデータを前記小セル基地局に転送させるための要求を行う要求ステップをさらに有し、前記転送ステップにおいて、前記要求ステップにおける要求に基づいて、前記無線LANアクセスポイントが、前記小セル基地局に前記ユーザデータを転送する。
【0052】
第7実施形態に係る通信制御方法では、前記判定ステップにおいて、前記ユーザ端末は、前記無線LANアクセスポイントが前記小セル基地局と同じ場所に配置された併設タイプである場合で且つ、前記小セル基地局から受信する信号強度が通信品質を確保できる値である所定値未満になる前に、前記無線LANアクセスポイントから受信する信号強度が所定値未満になった場合に、前記無線LANアクセスポイントとの接続が困難になると判定する。
【0053】
第7実施形態に係る通信制御方法では、前記判定ステップにおいて、前記無線LANアクセスポイントは、前記ユーザ端末から受信する信号強度が所定値未満になった場合に、前記ユーザ端末と前記無線LANアクセスポイントとの接続が困難になると判定する。
【0054】
第7実施形態に係る通信制御方法は、前記小セル基地局が、アクセス権を有する特定ユーザ端末のみが接続可能な特定セルを管理するホーム基地局であり、且つ、前記ユーザ端末が特定ユーザ端末でない場合、前記無線LANアクセスポイントから前記ユーザデータが転送され、且つ、前記小セルと前記ユーザ端末とが接続するとすぐに前記セルへのハンドオーバを行うことを要求するハンドオーバ要求を前記小セル基地局に隣接する他の基地局へ行うハンドオーバ要求ステップ、をさらに有する。
【0055】
次に、第1実施形態から第7実施形態について、説明する。なお、各実施形態において、他の実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様の部分は、説明を適宜省略する。
【0056】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して、3GPP規格に準拠して構成されるセルラ通信システム(LTEシステム)を無線LAN(WLAN)システムと連携させる場合の実施形態を説明する。
【0057】
(システム構成)
図1は、第1実施形態に係るシステム構成図である。図1に示すように、セルラ通信システムは、複数のUE(User Equipment)100と、E−UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)10と、EPC(Evolved Packet Core)20と、を含む。E−UTRAN10は、無線アクセスネットワークに相当する。EPC20は、コアネットワークに相当する。
【0058】
UE100は、移動型の無線通信装置であり、接続を確立したセルとの無線通信を行う。UE100はユーザ端末に相当する。UE100は、セルラ通信及びWLAN通信の両通信方式をサポートする端末(デュアル端末)である。
【0059】
E−UTRAN10は、複数のeNB200(evolved Node−B)を含む。eNB200はセルラ基地局に相当する。eNB200は、1又は複数のセルを管理しており、自セルとの接続を確立したUE100との無線通信を行う。なお、「セル」は、無線通信エリアの最小単位を示す用語として使用される他に、UE100との無線通信を行う機能を示す用語としても使用される。また、eNB200は、例えば、無線リソース管理(RRM)機能と、ユーザデータのルーティング機能と、モビリティ制御及びスケジューリングのための測定制御機能と、を有する。
【0060】
eNB200は、X2インターフェイスを介して相互に接続される。また、eNB200は、S1インターフェイスを介して、EPC20に含まれるMME/S−GW500と接続される。
【0061】
EPC20は、複数のMME(Mobility Management Entity)/S−GW(Serving−Gateway)500を含む。MMEは、UE100に対する各種モビリティ制御等を行うネットワークノードであり、制御局に相当する。S−GWは、ユーザデータの転送制御を行うネットワークノードであり、交換局に相当する。
【0062】
WLANシステムは、WLANアクセスポイント(以下、「AP」と称する)300を含む。WLANシステムは、例えばIEEE 802.11諸規格に準拠して構成される。AP300は、セルラ周波数帯とは異なる周波数帯(WLAN周波数帯)でUE100との通信を行う。AP300は、ルータなどを介してEPC20に接続される。
【0063】
尚、WLAN周波数帯は、1つの場合に限らず、複数のWLAN周波数帯(例えば、2.4GHz帯、5GHz帯)が存在することがある。1つのWLAN周波数帯には、複数のWLANチャネルが含まれてもよい。
【0064】
また、eNB200及びAP300が個別に配置される場合に限らず、eNB200及びAP300が同じ場所に配置(Collocated)されていてもよい。Collocatedの一形態として、eNB200及びAP300がオペレータの任意のインターフェイスで直接的に接続されていてもよい。
【0065】
次に、UE100、eNB200、及びAP300の構成を説明する。
【0066】
図2は、UE100のブロック図である。図2に示すように、UE100は、アンテナ101及び102と、セルラ通信部(セルラ送受信機)111と、WLAN通信部(WLAN送受信機)112と、ユーザインターフェイス120と、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機130と、バッテリ140と、メモリ150と、プロセッサ160と、を有する。メモリ150及びプロセッサ160は、制御部を構成する。或いは、メモリ150は、記憶部を構成し、プロセッサ160は、制御部を構成する。UE100は、GNSS受信機130を有していなくてもよい。また、メモリ150をプロセッサ160と一体化し、このセット(すなわち、チップセット)を、制御部(及び記憶部)を構成するプロセッサ160’としてもよい。
【0067】
アンテナ101及びセルラ通信部111は、セルラ無線信号の送受信に用いられる。セルラ通信部111は、プロセッサ160が出力するベースバンド信号をセルラ無線信号に変換してアンテナ101から送信する。また、セルラ通信部111は、アンテナ101が受信するセルラ無線信号をベースバンド信号に変換してプロセッサ160に出力する。
【0068】
アンテナ102及びWLAN通信部112は、WLAN無線信号の送受信に用いられる。WLAN通信部112は、プロセッサ160が出力するベースバンド信号をWLAN無線信号に変換してアンテナ102から送信する。また、WLAN通信部112は、アンテナ102が受信するWLAN無線信号をベースバンド信号に変換してプロセッサ160に出力する。
【0069】
ユーザインターフェイス120は、UE100を所持するユーザとのインターフェイスであり、例えば、ディスプレイ、マイク、スピーカ、及び各種ボタンなどを含む。ユーザインターフェイス120は、ユーザからの入力を受け付けて、該入力の内容を示す信号をプロセッサ160に出力する。GNSS受信機130は、UE100の地理的位置を示す位置情報を得るために、GNSS信号を受信して、受信した信号をプロセッサ160に出力する。バッテリ140は、UE100の各ブロックに供給すべき電力を蓄える。
【0070】
メモリ150は、プロセッサ160によって実行されるプログラムと、プロセッサ160による処理に使用される情報と、を記憶する。プロセッサ160は、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号などを行うベースバンドプロセッサと、メモリ150に記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行うCPUと、を含む。プロセッサ160は、さらに、音声・映像信号の符号化・復号を行うコーデックを含んでもよい。プロセッサ160は、後述する各種の処理及び各種の通信プロトコルを実行する。
【0071】
図3は、eNB200のブロック図である。図3に示すように、eNB200は、アンテナ201と、セルラ通信部(セルラ送受信機)210と、ネットワークインターフェイス220と、メモリ230と、プロセッサ240と、を有する。メモリ230及びプロセッサ240は、制御部を構成する。なお、メモリ230をプロセッサ240と一体化し、このセット(すなわち、チップセット)を、制御部を構成するプロセッサとしてもよい。
【0072】
アンテナ201及びセルラ通信部210は、セルラ無線信号の送受信に用いられる。セルラ通信部210は、プロセッサ240が出力するベースバンド信号をセルラ無線信号に変換してアンテナ201から送信する。また、セルラ通信部210は、アンテナ201が受信するセルラ無線信号をベースバンド信号に変換してプロセッサ240に出力する。
【0073】
ネットワークインターフェイス220は、X2インターフェイスを介して隣接eNB200と接続され、S1インターフェイスを介してMME/S−GW500と接続される。また、ネットワークインターフェイス220は、EPC20を介したAP300との通信に使用される。
【0074】
メモリ230は、プロセッサ240によって実行されるプログラムと、プロセッサ240による処理に使用される情報と、を記憶する。プロセッサ240は、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号などを行うベースバンドプロセッサと、メモリ230に記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行うCPUと、を含む。プロセッサ240は、後述する各種の処理及び各種の通信プロトコルを実行する。
【0075】
図4は、AP300のブロック図である。図4に示すように、AP300は、アンテナ301と、WLAN通信部(WLAN送受信機)311と、ネットワークインターフェイス320と、メモリ330と、プロセッサ340と、を有する。メモリ330及びプロセッサ340は、制御部を構成する。なお、メモリ330をプロセッサ340と一体化し、このセット(すなわち、チップセット)を、制御部を構成するプロセッサとしてもよい。
【0076】
アンテナ301及びWLAN通信部311は、WLAN無線信号の送受信に用いられる。WLAN通信部311は、プロセッサ340が出力するベースバンド信号をWLAN無線信号に変換してアンテナ301から送信する。また、WLAN通信部311は、アンテナ301が受信するWLAN無線信号をベースバンド信号に変換してプロセッサ340に出力する。
【0077】
ネットワークインターフェイス320は、ルータなどを介してEPC20と接続される。また、ネットワークインターフェイス320は、EPC20を介したeNB200との通信に使用される。
【0078】
メモリ330は、プロセッサ340によって実行されるプログラムと、プロセッサ340による処理に使用される情報と、を記憶する。プロセッサ340は、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号などを行うベースバンドプロセッサと、メモリ330に記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行うCPUと、を含む。
【0079】
図5は、セルラ通信システムにおける無線インターフェイスのプロトコルスタック図である。図5に示すように、無線インターフェイスプロトコルは、OSI参照モデルのレイヤ1乃至レイヤ3に区分されており、レイヤ1は物理(PHY)レイヤである。レイヤ2は、MAC(Media Access Control)レイヤと、RLC(Radio Link Control)レイヤと、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤと、を含む。レイヤ3は、RRC(Radio Resource Control)レイヤを含む。
【0080】
物理レイヤは、符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、及びリソースマッピング・デマッピングを行う。UE100の物理レイヤとeNB200の物理レイヤとの間では、物理チャネルを介してデータが伝送される。
【0081】
MACレイヤは、データの優先制御、及びハイブリッドARQ(HARQ)による再送処理などを行う。UE100のMACレイヤとeNB200のMACレイヤとの間では、トランスポートチャネルを介してデータが伝送される。eNB200のMACレイヤは、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式など)、及び割当リソースブロックを選択するスケジューラを含む。
【0082】
RLCレイヤは、MACレイヤ及び物理レイヤの機能を利用してデータを受信側のRLCレイヤに伝送する。UE100のRLCレイヤとeNB200のRLCレイヤとの間では、論理チャネルを介してデータが伝送される。
【0083】
PDCPレイヤは、ヘッダ圧縮・伸張、及び暗号化・復号化を行う。
【0084】
RRCレイヤは、制御プレーンでのみ定義される。UE100のRRCレイヤとeNB200のRRCレイヤとの間では、各種設定のための制御メッセージ(RRCメッセージ)が伝送される。RRCレイヤは、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル、及び物理チャネルを制御する。UE100のRRCとeNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がある場合、UE100は接続状態(RRC connected state)であり、そうでない場合、UE100はアイドル状態(RRC idle state)である。
【0085】
RRCレイヤの上位に位置するNAS(Non−Access Stratum)レイヤは、セッション管理及びモビリティ管理などを行う。
【0086】
図6は、LTEシステムで使用される無線フレームの構成図である。LTEシステムは、下りリンクにはOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiplexing Access)、上りリンクにはSC−FDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access)がそれぞれ適用される。
【0087】
図6に示すように、無線フレームは、時間方向に並ぶ10個のサブフレームで構成され、各サブフレームは、時間方向に並ぶ2個のスロットで構成される。各サブフレームの長さは1msであり、各スロットの長さは0.5msである。各サブフレームは、周波数方向に複数個のリソースブロック(RB)を含み、時間方向に複数個のシンボルを含む。リソースブロックは、周波数方向に複数個のサブキャリアを含む。
【0088】
UE100に割り当てられる無線リソースのうち、周波数リソースはリソースブロックにより特定でき、時間リソースはサブフレーム(又はスロット)により特定できる。
【0089】
下りリンクにおいて、各サブフレームの先頭数シンボルの区間は、主に物理下りリンク制御チャネル(PDCCH)として使用される制御領域である。また、各サブフレームの残りの区間は、主に物理下りリンク共有チャネル(PDSCH)として使用できる領域である。また、下りリンクにおいて、各サブフレームには、セル固有参照信号などの参照信号が分散して配置される。
【0090】
上りリンクにおいて、各サブフレームにおける周波数方向の両端部は、主に物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)として使用される制御領域である。また、各サブフレームにおける周波数方向の中央部は、主に物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)として使用できる領域である。
【0091】
(第1実施形態に係る動作)
次に、第1実施形態に係る動作について説明する。
【0092】
(1)動作環境
図7は、第1実施形態に係る動作環境を説明するための図である。図7に示すように、eNB200のカバレッジ内にAP300が設けられている。AP300は、オペレータにより管理されるAP(Operator controlled AP)である。
【0093】
また、eNB200のカバレッジ内であって、かつAP300のカバレッジ内に複数のUE100が位置している。UE100は、eNB200との接続を確立しており、eNB200とのセルラ通信を行っている。具体的には、UE100は、トラフィック(ユーザデータ)を含んだセルラ無線信号をeNB200と送受信している。或いは、一部のUE100は、eNB200との接続を確立していなくてもよい。
【0094】
eNB200が多数のUE100との接続を確立する場合、eNB200の負荷レベルが高くなる。負荷レベルとは、eNB200のトラフィック負荷又はeNB200の無線リソース使用率など、eNB200の混雑度を意味する。
【0095】
ここで、eNB200とUE100との間で送受信されるトラフィックを、AP300とUE100との間で送受信するよう切り替えることにより、eNB200のトラフィック負荷をAP300に移行(オフロード)できる。
【0096】
しかしながら、一般的なUE100は、AP300との接続を確立する場合に、eNB200との接続を解放するため、オフロードの実行中においてUE100はセルラ通信のアイドル状態になる。
【0097】
よって、UE100がAP300との接続を確立した後、UE100とAP300との間の通信状況が悪化したような場合には、UE100とeNB200との間の接続を改めて確立するという非効率な動作(いわゆる、ピンポン現象)が生じ得る。
【0098】
以下において、このような不具合を解消するための第1実施形態に係る動作について説明する。
【0099】
(2)第1実施形態に係る動作パターン1
図8は、第1実施形態に係る動作パターン1のシーケンス図である。本シーケンスの初期状態において、UE100は、eNB200とのRRC接続(第1の接続)を確立した状態にある。
【0100】
図8に示すように、ステップS101において、UE100は、オフロードの開始を決定すると、その旨のオフロード通知をeNB200に送信する。
【0101】
ステップS102において、eNB200は、UE100からのオフロード通知の受信に応じて、肯定応答(Ack)をUE100に送信する。ここで、eNB200は、RRC接続を解放した後におけるUE100の動作(すなわち、アイドル状態における動作)を設定するための設定情報(以下、「アイドル時設定情報」という)をAckと共にUE100に送信する。UE100は、Ackと共にアイドル時設定情報を受信すると、受信したアイドル時設定情報を記憶する。アイドル時設定情報は、RRC解放メッセージ(RRC Connection Release)に含まれる情報と同様の情報であり、セルリセレクションの優先度を提供する情報(freqPriorityList、idleModeMobilityControlInfoなど)である(3GPP技術仕様「TS36.331」参照)。
【0102】
ステップS103において、UE100は、eNB200からのAckの受信に応じて、AP300との接続(第2の接続)を確立し、オフロードを開始する。具体的には、UE100は、eNB200と送受信していたトラフィックを、AP300と送受信するよう切り替える。
【0103】
UE100及びeNB200は、オフロードを開始してもRRC接続を解放せずに維持する。よって、UE100は、オフロードを開始しても、セルラ通信のアイドル状態に遷移せずに、セルラ通信の接続状態を維持する。
【0104】
ステップS104において、UE100は、所定時間を計時するためのタイマを起動する。
【0105】
ステップS105においてタイマが満了すると、ステップS106において、UE100は、オフロードを継続するか否かの判断を行う。すなわち、UE100は、AP300と送受信しているトラフィックをeNB200と送受信するよう切り替えるか否かを判断する。UE100は、AP300との通信の状況に基づいて判断を行う。AP300との通信の状況とは、AP300との間の無線リンク状況及び/又はAP300に関するネットワーク状況である。AP300との間の無線リンク状況とは、ビーコン信号の信号強度及び無線リンク安定度などである。AP300に関するネットワーク状況とは、AP300の負荷レベルなどである。例えば、UE100は、AP300との間の通信状況が良好であれば、オフロードを継続すると判断し、そうでなければ、オフロードを中止すると判断する。
【0106】
オフロードを中止すると判断した場合(ステップS106:No)、ステップS107において、UE100は、オフロードを中止する。すなわち、UE100は、AP300と送受信しているトラフィックをeNB200と送受信するよう切り替える。また、ステップS108において、UE100は、ステップS102で記憶したアイドル時設定情報を破棄する。尚、UE100は、AP300との接続を解放してもよい。
【0107】
一方、オフロードを継続すると判断した場合(ステップS106:Yes)、ステップS109において、UE100は、オフロードを継続することを示す通知をeNB200に送信する。その結果、UE100及びeNB200は、RRC接続を解放する。また、UE100は、セルラ通信の接続状態からアイドル状態に遷移する。
【0108】
ステップS110において、UE100は、ステップS102で記憶したアイドル時設定情報を適用する。そして、ステップS111において、UE100は、アイドル時設定情報に基づいてアイドル状態での動作を行う。
【0109】
(3)第1実施形態に係る動作パターン2
図9は、第1実施形態に係る動作パターン2のシーケンス図である。本シーケンスの初期状態において、UE100は、eNB200とのRRC接続(第1の接続)を確立した状態にある。
【0110】
図9に示すように、ステップS201において、UE100は、オフロードの開始を決定すると、その旨のオフロード通知をeNB200に送信する。ここで、UE100は、RRC接続の解放指示(RRC解放メッセージ)の送信停止を要求するための送信停止要求をオフロード通知と共にeNB200に送信する。eNB200は、送信停止要求の受信に応じて、UE100に対するRRC解放メッセージの送信停止を設定する。
【0111】
ステップS202において、eNB200は、UE100からのオフロード通知の受信に応じて、肯定応答(Ack)をUE100に送信する。
【0112】
ステップS203において、UE100は、eNB200からのAckの受信に応じて、AP300との接続(第2の接続)を確立し、オフロードを開始する。具体的には、UE100は、eNB200と送受信していたトラフィックを、AP300と送受信するよう切り替える。
【0113】
UE100及びeNB200は、オフロードを開始してもRRC接続を解放せずに維持する。よって、UE100は、オフロードを開始しても、セルラ通信のアイドル状態に遷移せずに、セルラ通信の接続状態を維持する。
【0114】
ステップS204において、UE100は、所定時間を計時するためのタイマを起動する。
【0115】
ステップS205において、UE100は、オフロードを継続するか否かの判断を行う。判断方法は動作パターン1と同様である。
【0116】
オフロードを中止すると判断した場合(ステップS205:No)、ステップS206において、UE100は、オフロードを中止する。すなわち、UE100は、AP300と送受信しているトラフィックをeNB200と送受信するよう切り替える。尚、UE100は、AP300との接続を解放してもよい。
【0117】
一方、オフロードを継続すると判断した場合(ステップS205:Yes)で、かつタイマが満了した場合(ステップS207)、ステップS208において、UE100は、RRC解放メッセージの送信を要求するための送信要求をeNB200に送信する。
【0118】
ステップS209において、eNB200は、RRC解放メッセージの送信要求の受信に応じて、RRC解放メッセージをUE100に送信する。RRC解放メッセージは、RRC接続を解放した後におけるUE100の動作を設定するためのアイドル時設定情報を含む。その結果、UE100及びeNB200は、RRC接続を解放する。また、UE100は、セルラ通信の接続状態からアイドル状態に遷移する。そして、ステップS210において、UE100は、アイドル時設定情報に基づいてアイドル状態での動作を行う。
【0119】
(第1実施形態のまとめ)
第1実施形態では、eNB200とのRRC接続を確立しているUE100は、AP300との接続を確立してオフロードを開始しても、RRC接続を解放せずに維持する。また、UE100は、オフロードの開始後において、オフロードを継続するか中止するかの判断を行う。このように、オフロードを開始してもRRC接続を解放せずに維持することにより、上述したピンポン現象を回避できる。
【0120】
第1実施形態では、UE100は、AP300との通信状況に基づいて、オフロードを継続するか中止するかの判断を行う。これにより、オフロード後におけるAP300との通信状況の変化に対応できる。
【0121】
動作パターン1では、UE100は、RRC接続の解放前において、RRC接続を解放した後におけるUE100の動作を設定するためのアイドル時設定情報をeNB200から受信する。これにより、UE100は、RRC接続の解放後(すなわち、アイドル状態)における動作を適切に行うことができる。
【0122】
動作パターン1では、UE100は、オフロードを継続すると判断した場合に、オフロードを継続することを示す通知をeNB200に送信する。そして、UE100は、通知の送信後において、RRC接続を解放する。これにより、UE100は、RRC接続を解放しても問題ない場合には、自発的にRRC接続を解放できる。また、RRC接続を解放することで、セルラリソースを節約できる。
【0123】
動作パターン1では、UE100は、オフロードを中止すると判断した場合に、オフロードを中止するとともに、アイドル時設定情報を破棄する。これにより、不要になったアイドル時設定情報を破棄してメモリを節約できる。
【0124】
動作パターン2では、UE100は、オフロードの開始前において、RRC解放メッセージの送信停止を要求するための送信停止要求をeNB200に送信する。これにより、UE100は、eNB200がRRC接続を解放してしまうことを防止できる。
【0125】
動作パターン2では、UE100は、オフロードを継続すると判断した場合に、RRC解放メッセージの送信を要求するための送信要求をeNB200に送信し、RRC解放メッセージをeNB200から受信する。これにより、UE100は、RRC接続を解放しても問題ない場合には、自発的にRRC接続を解放できる。また、RRC解放メッセージは、アイドル時設定情報を含む。従って、UE100は、RRC接続の解放後(すなわち、アイドル状態)における動作を適切に行うことができる。
【0126】
[第2実施形態]
第2実施形態について、第1実施形態との相違点を主として説明する。なお、第2実施形態は、システム構成及び動作環境については第1実施形態と同様である。
【0127】
(第2実施形態に係る動作)
上述した第1実施形態では、eNB200及びUE100のそれぞれが備えるタイマについて詳しく触れていないが、第2実施形態は、かかるタイマに着目した実施形態である。上述したように、UE100は、オフロードを開始した後にRRC接続を維持すべき接続維持期間を規定する端末側タイマ(以下「UEタイマ」という)を備えている。UE100は、オフロードを開始した際にUEタイマを起動する(図8のステップS104及び図9のステップS204参照)。そして、UE100は、UEタイマが満了するまでRRC接続を維持する。
【0128】
一方、eNB200は、UE100とのトラフィック送受信を停止した後にRRC接続を維持すべき接続維持期間を規定する基地局側タイマ(以下「eNBタイマ」という)を備えている。かかるeNBタイマは、Inactivityタイマと称されることがある。eNB200は、UE100とのトラフィック送受信を停止した際にeNBタイマを起動する。また、eNB200は、eNBタイマが満了するまではRRC接続を維持し、eNBタイマが満了するとRRC解放メッセージをUE100に送信してRRC接続を解放する。
【0129】
ここで、UEタイマとeNBタイマとの間で競合が生じる可能性がある。具体的には、eNBタイマに設定されている接続維持期間が、UEタイマに設定されている接続維持期間よりも短い場合には、UEタイマが満了する前にeNBタイマが満了し、eNB200がRRC接続を解放してしまう。以下において、このような不具合を解消するための第2実施形態に係る動作について説明する。
【0130】
(1)第2実施形態に係る動作パターン1
第2実施形態に係る動作パターン1は、UEタイマに、予め適切な接続維持期間を設定しておくパターンである。具体的には、UEタイマに設定されている接続維持期間は、eNBタイマに設定されている接続維持期間以下である。言い換えると、eNBタイマに設定されている接続維持期間は、UEタイマに設定されている接続維持期間以上である。これにより、UEタイマが満了する前にeNBタイマが満了することを防止できる。
【0131】
(2)第2実施形態に係る動作パターン2
第2実施形態に係る動作パターン2は、UE100が、オフロード開始後において、AP300とのトラフィック送受信を行いつつ、eNBタイマの満了を防止する(eNBタイマを停止する)ためにeNB200とのトラフィック送受信を行うパターンである。
【0132】
「eNBタイマの満了を防止するためにeNB200とのトラフィック送受信を行う」とは、例えば、一部のトラフィック(ベアラ)をeNB200に残す動作である。かかる動作は、基本的には、UE100がeNB200経由で複数のサービスを使用していた場合に適用できる。しかしながら、UE100が一つしかサービスを使用していなかった場合においても、ダミートラフィック(keep arrive message)を生成し、eNB200に周期的に送信することで接続状態を維持してもよい。keep arrive messageは、上位レイヤのメッセージ(例えば、オペレータ所有のサーバに宛てて送信されるメッセージ)であってもよく、下位レイヤのメッセージ(例えば、MACレイヤでやり取りされるメッセージ)であってもよい。
【0133】
図10は、第2実施形態に係る動作パターン2のシーケンス図である。本シーケンスでは、一部のトラフィックをeNB200に残す動作を例に説明する。本シーケンスの初期状態において、UE100は、eNB200とのRRC接続(第1の接続)を確立した状態にある(ステップS301)。
【0134】
図10に示すように、ステップS302において、UE100は、オフロードの開始を決定すると、eNB200に残すトラフィックを選択する。選択基準は、QoS種別又はサービス種別などである。例えば、UE100は、オペレータ特有のサービス(WLAN経由では提供できないようなオペレータ回線特有のサービス)を優先的にeNB200に残すよう判断してもよい。
【0135】
ステップS303において、UE100は、AP300との接続(第2の接続)を確立し、オフロードを開始する。具体的には、UE100は、eNB200と送受信していたトラフィックのうち、eNB200に残すトラフィック以外のトラフィックを、AP300と送受信するよう切り替える。
【0136】
UE100及びeNB200は、オフロードを開始してもRRC接続を解放せずに維持する。よって、UE100は、オフロードを開始しても、セルラ通信のアイドル状態に遷移せずに、セルラ通信の接続状態を維持する。
【0137】
ステップS304において、UE100は、オフロードの開始に応じて、UEタイマを起動する。
【0138】
ステップS305において、UE100は、オフロードを継続するか否かの判断を行う。判断方法は第1実施形態と同様である。
【0139】
オフロードを中止すると判断した場合(ステップS305:No)、ステップS306において、UE100は、オフロードを中止する。すなわち、UE100は、AP300と送受信しているトラフィックをeNB200と送受信するよう切り替える。尚、UE100は、AP300との接続を解放してもよい。
【0140】
一方、オフロードを継続すると判断した場合(ステップS305:Yes)で、かつUEタイマが満了した場合(ステップS307)、ステップS308において、UE100は、eNB200に残していたトラフィックを、AP300と送受信するよう切り替える。
【0141】
eNB200は、UE100のトラフィックが無くなったことに応じてeNBタイマを起動し、その後、eNBタイマが満了する。
【0142】
ステップS309において、eNB200は、RRC解放メッセージをUE100に送信する。RRC解放メッセージは、RRC接続を解放した後におけるUE100の動作を設定するためのアイドル時設定情報を含む。その結果、UE100及びeNB200は、RRC接続を解放する。また、UE100は、セルラ通信の接続状態からアイドル状態に遷移する(ステップS310)。そして、UE100は、アイドル時設定情報に基づいてアイドル状態での動作を行う。
【0143】
(3)第2実施形態に係る動作パターン3
第2実施形態に係る動作パターン3は、eNB200においてeNBタイマが満了した際にRRC接続の解放要求をUE100から受信していない場合に、RRC接続の解放可否についてeNB200からUE100に問い合わせるパターンである。すなわち、eNB200は、UE100の了承が得られなければ、RRC接続を解放できない。
【0144】
図11は、第2実施形態に係る動作パターン3のシーケンス図である。本シーケンスの初期状態において、UE100は、eNB200とのRRC接続(第1の接続)を確立した状態にある。
【0145】
図11に示すように、ステップS401において、UE100は、オフロードの開始を決定すると、その旨のオフロード通知をeNB200に送信する。
【0146】
ステップS402において、eNB200は、UE100からのオフロード通知の受信に応じて、肯定応答(Ack)をUE100に送信する。
【0147】
ステップS403において、UE100は、eNB200からのAckの受信に応じて、AP300との接続(第2の接続)を確立し、オフロードを開始する。具体的には、UE100は、eNB200と送受信していたトラフィックを、AP300と送受信するよう切り替える。また、UE100は、オフロードの開始に応じて、UEタイマを起動する。
【0148】
UE100及びeNB200は、オフロードを開始してもRRC接続を解放せずに維持する。よって、UE100は、オフロードを開始しても、セルラ通信のアイドル状態に遷移せずに、セルラ通信の接続状態を維持する。
【0149】
ステップS404において、eNB200は、UE100のトラフィックが無くなったことに応じて、eNBタイマを起動する。
【0150】
ステップS405においてeNBタイマが満了する。eNBタイマが満了すると、ステップS406において、eNB200は、RRC接続の解放要求をUE100に送信する。RRC接続の解放要求は、RRC接続の解放可否についての問い合わせに相当する。また、RRC接続の解放要求は、eNBタイマが満了した旨の通知とみなすこともできる。
【0151】
ステップS407において、UE100は、eNB200から受信したRRC接続の解放要求を許可するか否かを判断する。UEタイマが稼働中にUE100はオフロードを継続するか否かの判断を行っているため、UE100は、RRC接続の解放要求をUEタイマの稼働中にeNB200から受信した場合には、RRC接続の解放要求を拒否すると判断する。これに対し、UE100は、RRC接続の解放要求をUEタイマの満了後にeNB200から受信した場合には、RRC接続の解放要求を許可すると判断する。
【0152】
ステップS408において、UE100は、RRC接続の解放要求を許可するか否かの判断結果をeNB200に送信する。UE100は、RRC接続の解放要求を許可する場合にはAckをeNB200に送信し、RRC接続の解放要求を拒否する場合にはNackをeNB200に送信する。
【0153】
ステップS409において、eNB200は、UE100からAckを受信したかNackを受信したかを確認する。
【0154】
UE100からAckを受信した場合(ステップS409:Yes)、ステップS410において、eNB200は、RRC解放メッセージをUE100に送信する。
【0155】
これに対し、UE100からNackを受信した場合(ステップS409:No)、ステップS411において、eNB200は、eNBタイマを再起動する。再起動においてeNBタイマに設定される接続維持期間は、1回目と同じ接続維持期間であってもよく、1回目とは異なる接続維持期間(例えば1回目よりも短い接続維持期間)であってもよい。
【0156】
(4)第2実施形態に係る動作パターン4
第2実施形態に係る動作パターン4は、eNB200が、UEタイマが満了するよりも先にeNBタイマが満了することを防止するために、eNBタイマを制御するパターンである。eNBタイマを制御する方法は、以下の3通りの方法(動作パターン4−1乃至4−3)がある。
【0157】
第2実施形態に係る動作パターン4−1では、eNBタイマは、オフロード以外の用途に使用される通常eNBタイマ(第1のeNBタイマ)と、オフロードの用途に使用されるオフロード用eNBタイマ(第2のeNBタイマ)と、を含む。オフロード用eNBタイマに設定されている接続維持期間は、UE100に通知した接続維持期間以上の期間である。eNB200は、オフロードを開始したことに応じて、オフロード用eNBタイマを選択した上でオフロード用eNBタイマを起動する。
【0158】
第2実施形態に係る動作パターン4−2では、eNB200は、UEタイマに設定すべき接続維持期間をUE100に通知する。かかる通知は、ブロードキャストによる通知(例えば、SIBによる通知)とすること好ましいが、ユニキャストによる通知でもあってもよい。そして、eNB200は、UE100に通知した接続維持期間以上の接続維持期間をeNBタイマに設定する。
【0159】
第2実施形態に係る動作パターン4−3では、eNB200は、オフロードを開始したことに応じて、eNBタイマの起動を中止する。この場合、eNB200は、UEタイマに設定される接続維持期間を把握していれば、UEタイマに設定される接続維持期間以上の接続維持期間をeNBタイマに設定してもよい。或いは、第1実施形態で説明したように、RRC接続の解放処理をUE主導で行なってもよい。
【0160】
なお、第2実施形態に係る動作パターン4−2及び4−3では、eNB200は、UEタイマに設定される接続維持期間を示す情報をUE100から取得してもよい。この場合、UE100は、UEタイマに設定される接続維持期間を示す情報を例えばUE Capabilityメッセージに含めてeNB200に送信してもよい。
【0161】
図12は、第2実施形態に係る動作パターン4のシーケンス図である。ここでは、主として動作パターン4−2を想定する。本シーケンスの初期状態において、UE100は、eNB200とのRRC接続(第1の接続)を確立した状態にある。
【0162】
図12に示すように、ステップS501において、eNB200は、UEタイマに設定すべき接続維持期間を示す情報をブロードキャストでUE100に送信する。UE100は、eNB200から受信した情報により示される接続維持期間をUEタイマに設定する。
【0163】
ステップS502において、UE100は、オフロードの開始を決定すると、その旨のオフロード通知をeNB200に送信する。
【0164】
ステップS503において、eNB200は、UE100からのオフロード通知の受信に応じて、肯定応答(Ack)をUE100に送信する。
【0165】
ステップS504において、eNB200は、UE100に通知した接続維持期間以上の接続維持期間をeNBタイマに設定する。なお、ステップS504は、ステップS501とステップS502との間、又はステップS502とステップS503との間であってもよい。
【0166】
ステップS505において、UE100は、eNB200からのAckの受信に応じて、AP300との接続(第2の接続)を確立し、オフロードを開始する。具体的には、UE100は、eNB200と送受信していたトラフィックを、AP300と送受信するよう切り替える。
【0167】
UE100及びeNB200は、オフロードを開始してもRRC接続を解放せずに維持する。よって、UE100は、オフロードを開始しても、セルラ通信のアイドル状態に遷移せずに、セルラ通信の接続状態を維持する。
【0168】
ステップS506において、UE100は、オフロードの開始に応じて、UEタイマを起動する。
【0169】
ステップS507において、eNB200は、UE100のトラフィックが無くなったことに応じて、eNBタイマを起動する。
【0170】
ステップS508において、UE100は、UEタイマの稼働中に、オフロードを継続するか否かの判断を行う。判断方法は第1実施形態と同様である。
【0171】
オフロードを中止すると判断した場合(ステップS508:No)、ステップS509において、UE100は、オフロードを中止する。すなわち、UE100は、AP300と送受信しているトラフィックをeNB200と送受信するよう切り替える。尚、UE100は、AP300との接続を解放してもよい。
【0172】
ステップS510において、UEタイマが満了する。
【0173】
ステップS511において、eNBタイマが満了する。eNBタイマが満了するタイミングは、UEタイマが満了するタイミングよりも後である。
【0174】
ステップS512において、eNB200は、eNBタイマの満了に応じて、RRC解放メッセージをUE100に送信する。RRC解放メッセージは、RRC接続を解放した後におけるUE100の動作を設定するためのアイドル時設定情報を含む。その結果、UE100及びeNB200は、RRC接続を解放する。また、UE100は、セルラ通信の接続状態からアイドル状態に遷移する(ステップS513)。そして、UE100は、アイドル時設定情報に基づいてアイドル状態での動作を行う。
【0175】
(第2実施形態のまとめ)
第2実施形態に係る動作パターン1では、UEタイマに設定されている接続維持期間は、eNBタイマに設定されている接続維持期間以下である。これにより、既存のeNBタイマを変更することなく、UEタイマが満了する前にeNBタイマが満了することを防止できる。
【0176】
第2実施形態に係る動作パターン2では、UE100は、オフロード開始後において、AP300とのトラフィック送受信を行いつつ、eNBタイマの満了を防止する(eNBタイマを停止する)ためにeNB200とのトラフィック送受信を行う。これにより、既存のeNBタイマを変更することなく、UEタイマが満了する前にeNBタイマが満了することを防止できる。
【0177】
第2実施形態に係る動作パターン3では、eNB200は、eNBタイマが満了した際にRRC接続の解放要求をUE100から受信していない場合に、RRC接続の解放可否についてUE100に問い合わせる。これにより、UEタイマが満了する前にeNBタイマが満了しても、UE100の了承が得られなければRRC接続が解放されないため、予期しないRRC接続の解放を防止できる。
【0178】
第2実施形態に係る動作パターン4では、eNB200は、UEタイマが満了するよりも先にeNBタイマが満了することを防止するために、eNBタイマを制御する。これにより、UEタイマが満了する前にeNBタイマが満了することを防止できる。
【0179】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。
【0180】
eNB200及びAP300のそれぞれの通信状況をUE100が比較して、eNB200及びAP300の中から接続先をUE100自身で選択できる場合を想定する。
【0181】
この場合、複数のUE100が、同じAP300を接続先として選択し、そのAP300に対して一斉に接続処理を開始し得る。従って、接続処理の競合により、AP300との接続を確立できないUE100が生じる虞がある。
【0182】
また、これらUE100の全てがAP300との接続を確立できても、AP300の負荷レベルが上昇することにより、十分なスループットを確保できなかったり、eNB200の未使用リソースが過多になったりする問題がある。
【0183】
そこで、第3実施形態では、複数のUE100が同じAP300に対して一斉に接続することによる不具合を解消することを目的とする。
【0184】
(第3実施形態に係る動作)
第3実施形態に係る動作について説明する。
【0185】
(1)動作環境
図13は、第3実施形態に係る動作環境を説明するための図である。
【0186】
図13に示すように、eNB200のカバレッジ内であって、電車又はバスなどの乗り物T内に複数のUE100が位置している。乗り物Tは、所定の経路(線路又は道路など)に沿って移動する。
【0187】
UE100は、eNB200との接続を確立しており、eNB200とのセルラ通信を行っている。具体的には、UE100は、トラフィック(ユーザデータ)を含んだセルラ無線信号をeNB200と送受信している。或いは、一部のUE100は、eNB200との接続を確立していなくてもよい。
【0188】
また、eNB200のカバレッジ内にAP300が設けられている。AP300は、オペレータにより管理されるAP(Operator controlled AP)である。具体的には、AP300は、乗り物Tが停止する停止地点(駅又は停留所など)に設けられている。
【0189】
尚、第3実施形態では、eNB200及びAP300のそれぞれの通信状況をUE100が比較して、eNB200及びAP300の中から接続先をUE100自身で選択できる場合を想定する。
【0190】
このような動作環境において、乗り物TがAP300のカバレッジ内に移動(移動1)する際に、乗り物T内の複数のUE100は、AP300への接続処理を開始する。AP300との接続を確立したUE100は、eNB200との接続を解放する。
【0191】
また、乗り物Tは、停止地点で停止した後、AP300のカバレッジ外に移動(移動2)する。その際、乗り物T内の複数のUE100は、AP300との接続を解放し、eNB200との接続を確立する。
【0192】
このように、乗り物Tが停止する停止地点(駅又は停留所など)にAP300が設けられる動作環境において、eNB200及びAP300の中から接続先をUE100自身で選択できる場合、UE100が接続をeNB200からAP300に切り替え、その後、UE100が接続をAP300からeNB200に切り替えるという非効率な動作が生じ得る。また、複数のUE100が一斉に接続処理を行うことにより、接続処理の競合が生じ得る。
【0193】
以下において、このような不具合を解消するための動作について説明する。
【0194】
(2)UE動作フロー
図14は、第3実施形態に係るUE100の動作フロー図である。ここでは、UE100のWLAN通信部112がオン状態である場合を想定する。第3実施形態では、UE100のプロセッサ160は、WLAN通信部112がオン状態である場合に、例えばGNSS受信機130により求められる位置情報に基づいて、UE100の移動速度(以下、「UE移動速度」という)を測定する。尚、UE100に加速度センサが設けられていれば、加速度センサによりUE移動速度(加速度)を測定してもよい。
【0195】
図14に示すように、ステップS601において、プロセッサ160は、UE移動速度が急激に低下したか否かを判断する。「UE移動速度が急激に低下」とは、単位時間当たりのUE移動速度の低下量が一定量を超えることを意味する。
【0196】
尚、プロセッサ160は、UE移動速度が高速であることが検知されている場合にステップS601の処理を実行し、それ以外の場合にはステップS601の処理を実行しなくてもよい。UE100が乗り物T内に位置することがステップS601の前提となるからである。
【0197】
UE移動速度が急激に低下した場合(ステップS601:Yes)、ステップS602において、プロセッサ160は、WLAN通信部112によるAP300との接続を規制するAP接続規制の期間を規定するタイマ(以下、「AP接続規制タイマ」という)を起動する。尚、AP接続規制の期間(すなわち、AP接続規制タイマのタイマ値)は、メモリ150に予め記憶されていてもよく、eNB200がUE100に対して指定してもよい。
【0198】
AP接続規制の期間では、プロセッサ160は、WLAN通信部112をオフ状態に切り替える。或いは、プロセッサ160は、WLAN通信部112をオン状態に維持しつつ、AP300のビーコン信号のデコード又はAP300への送信を中止してもよい。
【0199】
ステップS603において、プロセッサ160は、UE移動速度が急激に上昇したか否かを判断する。「UE移動速度が急激に上昇」とは、単位時間当たりのUE移動速度の上昇量が一定量を超えることを意味する。
【0200】
UE移動速度が急激に上昇した場合(ステップS603:Yes)、ステップS605において、プロセッサ160は、AP接続規制を解除する。すなわち、AP300との接続が可能な状態にする。
【0201】
これに対し、UE移動速度が急激に上昇していない場合(ステップS603:No)、ステップS604において、プロセッサ160は、AP接続規制タイマが満了したか否かを確認する。AP接続規制タイマが満了した場合(ステップS604:Yes)、ステップS605において、プロセッサ160は、AP接続規制を解除する。一方、AP接続規制タイマが満了していない場合(ステップS604:No)、プロセッサ160は、処理をステップS603に戻す。
【0202】
(第3実施形態のまとめ)
第3実施形態に係るUE100は、WLAN通信部112がオン状態である場合に、UE移動速度を測定する。UE100は、UE移動速度の急激な低下を検知した場合に、WLAN通信部112によるAP300との接続開始を規制する。これにより、図13に示すような動作環境において、UE100が接続をeNB200からAP300に切り替え、その後、UE100が接続をAP300からeNB200に切り替えるという非効率な動作を防止できる。また、複数のUE100が一斉に接続処理を行うことによる接続処理の競合も防止できる。
【0203】
第3実施形態では、UE100は、UE移動速度の急激な低下を検知した後において、UE移動速度の急激な上昇を検知した場合に、WLAN通信部112によるAP300との接続開始の規制を解除する。これにより、AP接続規制の状態から通常の動作に復帰することができる。
【0204】
[第3実施形態の変更例]
図15は、第3実施形態の変更例に係るシーケンス図である。
【0205】
図15に示すように、eNB200のプロセッサ240は、接続規制の対象とすべきAP300のリスト(以下、「APブラックリスト」という)をUE100に送信する。APブラックリストは、例えば、乗り物Tが停止する停止地点(駅又は停留所など)に設けられたAP300の識別子を含む。AP300の識別子(AP識別子)とは、SSID(Service Set Identifier)又はBSSID(Basic Service Set Identifier)である。
【0206】
無線リソースの使用効率の観点から、プロセッサ240は、APブラックリストをブロードキャストでUE100に送信してもよい。また、プロセッサ240は、APブラックリストを定期的に送信してもよい。或いは、eNB200は、WLAN通信部112がオン状態であるか否かの情報をUE100から受信し、WLAN通信部112がオン状態であるUE100に対してAPブラックリストをユニキャストで送信してもよい。
【0207】
UE100のセルラ通信部111は、eNB200からのAPブラックリストを受信する。メモリ150は、APブラックリストを記憶する。プロセッサ160は、WLAN通信部112がAP300から受信するビーコン信号に含まれるAP識別子がAPブラックリスト内のAP識別子と一致する場合に、そのAP300との接続開始を規制する。
【0208】
但し、このような方法は、乗り物T内に位置するUE100以外のUE100には適用されないようにする必要がある。よって、プロセッサ160は、UE移動速度が急激に低下したことを検知した場合にメモリ150内のAPブラックリストを有効にし、それ以外の場合はAPブラックリストを無効にしてもよい。
【0209】
或いは、プロセッサ160は、WLAN通信部112がAP300から受信するビーコン信号に含まれるAP識別子がAPブラックリスト内のAP識別子と一致する場合に、そのAP300との接続開始を一定期間において規制し、その一定期間が経過した後は接続規制を解除してもよい。このような一定期間は、乗り物Tが停止地点(駅又は停留所など)において停止する平均的な時間に基づいて定めることができる。
【0210】
[第4実施形態]
第4実施形態について、上述した第3実施形態との相違点を主として説明する。
【0211】
第4実施形態は、UE100の動作フローが第3実施形態とは異なる。尚、第4実施形態のシステム構成及び動作環境については、第3実施形態と同様である。
【0212】
図16は、第4実施形態に係るUE100の動作フロー図である。ここでは、UE100のWLAN通信部112がオン状態である場合を想定する。第4実施形態では、UE100のプロセッサ160は、WLAN通信部112がオン状態である場合に、WLAN通信部112がAP300から受信するビーコン信号の受信レベル(以下、「AP受信レベル」という)を測定する。
【0213】
図16に示すように、ステップS701において、プロセッサ160は、AP受信レベルが急激に上昇したか否かを判断する。「AP受信レベルが急激に上昇」とは、単位時間当たりのAP受信レベルの上昇量が一定量を超えることを意味する。
【0214】
AP受信レベルが急激に上昇した場合(ステップS701:Yes)、ステップS702において、プロセッサ160は、AP接続規制タイマを起動する。上述したように、AP接続規制の期間(すなわち、AP接続規制タイマのタイマ値)は、メモリ150に予め記憶されていてもよく、eNB200がUE100に対して指定してもよい。
【0215】
第4実施形態では、AP接続規制の期間では、プロセッサ160は、WLAN通信部112をオン状態に維持しつつ、AP300のビーコン信号のデコード又はAP300への送信を中止してもよい。すなわち、AP300との接続は不能な状態であるものの、AP受信レベルは測定可能な状態にする。
【0216】
ステップS703において、プロセッサ160は、AP受信レベルが急激に低下したか否かを判断する。「AP受信レベルが急激に低下」とは、単位時間当たりのAP受信レベルの低下量が一定量を超えることを意味する。
【0217】
AP受信レベルが急激に低下した場合(ステップS703:Yes)、ステップS705において、プロセッサ160は、AP接続規制を解除する。すなわち、AP300との接続が可能な状態にする。
【0218】
これに対し、AP受信レベルが急激に低下していない場合(ステップS703:No)、ステップS704において、プロセッサ160は、AP接続規制タイマが満了したか否かを確認する。AP接続規制タイマが満了した場合(ステップS704:Yes)、ステップS705において、プロセッサ160は、AP接続規制を解除する。一方、AP接続規制タイマが満了していない場合(ステップS704:No)、プロセッサ160は、処理をステップS703に戻す。
【0219】
(第4実施形態のまとめ)
第4実施形態に係るUE100は、WLAN通信部112がオン状態である場合に、AP受信レベルを測定する。UE100は、AP受信レベルの急激な上昇を検知した場合に、WLAN通信部112によるAP300との接続開始を規制する。これにより、図13に示すような動作環境において、UE100が接続をeNB200からAP300に切り替え、その後、UE100が接続をAP300からeNB200に切り替えるという非効率な動作を防止できる。また、複数のUE100が一斉に接続処理を行うことによる接続処理の競合も防止できる。
【0220】
第4実施形態では、UE100は、AP受信レベルの急激な上昇を検知した後において、AP受信レベルの急激な低下を検知した場合に、WLAN通信部112によるAP300との接続開始の規制を解除する。これにより、AP接続規制の状態から通常の動作に復帰することができる。
【0221】
[第4実施形態の変更例]
上述した第3実施形態の変更例と同様に、第4実施形態においてもAPブラックリストを適用してもよい。但し、APブラックリストは、乗り物T内に位置するUE100以外のUE100には適用されないようにする必要がある。よって、プロセッサ160は、AP受信レベルの急激な上昇を検知した場合にメモリ150内のAPブラックリストを有効にし、それ以外の場合はAPブラックリストを無効にしてもよい。
【0222】
或いは、上述したように、プロセッサ160は、WLAN通信部112がAP300から受信するビーコン信号に含まれるAP識別子がAPブラックリスト内のAP識別子と一致する場合に、そのAP300との接続開始を一定期間において規制し、その一定期間が経過した後は接続規制を解除してもよい。
【0223】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について説明する。
【0224】
一般的に、UE100は、接続可能なAP300を発見するためにWLANスキャンを行う。WLANスキャンは、WLAN通信部112によりWLAN無線信号(例えば、ビーコン信号)の受信をWLANチャネルごとに試行する動作である。
【0225】
UE100は、全WLANチャネルについて試行が完了するまで、又はWLAN無線信号の受信に成功するまで、WLANチャネルを切り替えながらWLANスキャンを継続する。よって、UE100の消費電力(特に、WLAN通信部112の消費電力)が増大する。
【0226】
従って、オフロードにおいては、WLANスキャンに起因して、UE100の消費電力が増大するという問題がある。
【0227】
そこで、第5実施形態では、WLANスキャンに起因する消費電力の増大を抑制しつつ、eNB200のオフロードを実現可能とすることを目的とする。
【0228】
(システム構成)
図17は、第5実施形態に係るシステム構成図である。
【0229】
図17に示すように、EPC20は、UE100の地理的位置を示す位置情報を提供するサーバ装置であるE−SMLC(Evolved Serving Mobile Location Centre)600を含む。E−SMLC600は、UE100及び/又はeNB200における無線測定の結果を収集し、UE100の地理的位置を示す位置情報を算出する。位置情報を算出する仕組みの詳細については、3GPP技術仕様「TS36.305」を参照されたい。
【0230】
(第5実施形態に係る動作)
次に、第5実施形態に係る動作について説明する。
【0231】
(1)動作環境
図18は、第5実施形態に係る動作環境を説明するための図である。図18に示すように、eNB200のカバレッジ内にAP300が設けられている。AP300は、オペレータにより管理されるAP(Operator controlled AP)である。
【0232】
また、eNB200のカバレッジ内であって、かつAP300のカバレッジ内にUE100が位置している。UE100は、eNB200との接続を確立しており、eNB200とのセルラ通信を行っている。具体的には、UE100は、トラフィック(ユーザデータ)を含んだセルラ無線信号をeNB200と送受信している。尚、図18では、eNB200との接続を確立したUE100を1つのみ図示しているが、実環境では多数のUE100がeNB200との接続を確立していることがある。
【0233】
eNB200が多数のUE100との接続を確立する場合、eNB200の負荷レベルが高くなる。負荷レベルとは、eNB200のトラフィック負荷又はeNB200の無線リソース使用率など、eNB200の混雑度を意味する。ここで、UE100とeNB200との間で送受信されるトラフィックの少なくとも一部をWLANシステムに移行させることにより、eNB200のトラフィック負荷をWLANシステムに分散できる。
【0234】
以下において、UE100とeNB200との間で送受信されるトラフィックをWLANシステムに移行(オフロード)させるための動作を説明する。尚、オフロードとは、UE100とeNB200との間で送受信されるトラフィックの全てをWLANシステムに移行させる場合に限らず、UE100とeNB200との接続を維持しながら少なくとも一部のトラフィックをWLANシステムに移行させる場合も含む。
【0235】
(2)WLANスキャン
オフロード動作の説明に先立ち、一般的なWLANスキャンについて説明する。
【0236】
UE100は、接続可能なAP300を発見するためにWLANスキャンを行う。WLANスキャンは、WLAN通信部112により、AP300からのWLAN無線信号の受信をWLANチャネルごとに試行する動作である。WLANスキャンには、パッシブスキャン方式及びアクティブスキャン方式の2つの方式があるが、第5実施形態では何れの方式であってもよい。
【0237】
パッシブスキャン方式は、AP300が運用中のWLANチャネルにおいて周期的に送信するビーコン信号の受信をUE100が試行する方式である。ビーコン信号は、AP300の識別子など、AP300に関する情報を含む。AP300の識別子とは、SSID(Service Set Identifier)又はBSSID(Basic Service Set Identifier)である。UE100は、1つのWLANチャネルにつき、ビーコン信号の送信周期以上の所定時間に亘ってビーコン信号の受信を試行する。所定時間が経過した場合、又は所定時間内にビーコン信号の受信に成功しない場合、次のWLANチャネルに切り替えた上で、改めてビーコン信号の受信を試行する。
【0238】
アクティブスキャン方式は、UE100がWLANチャネルにおいてプローブ要求を送信し、そのWLANチャネルを運用中のAP300がプローブ要求に応じてプローブ応答を送信し、プローブ応答の受信をUE100が試行する方式である。プローブ応答に含まれる情報は、ビーコン信号に含まれる情報と同様である。よって、プローブ応答はビーコン信号の一種とみなすことができる。UE100は、1つのWLANチャネルにつき、プローブ要求を送信してから所定時間に亘ってプローブ応答の受信を試行する。所定時間が経過した場合、又は所定時間内にプローブ応答の受信に成功しない場合、次のWLANチャネルに切り替えた上で、改めてプローブ要求を送信してプローブ応答の受信を試行する。
【0239】
このように、UE100は、少なくともビーコン信号(又はプローブ応答)の受信に成功するまでWLANチャネルを切り替えながらWLANスキャンを継続するので、UE100の消費電力(特に、WLAN通信部112の消費電力)が増大する。そこで、第5実施形態に係るオフロード動作では、WLANスキャンを効率化することにより、WLANスキャンにおける消費電力を削減する。
【0240】
(3)オフロード動作
図19は、第5実施形態に係るオフロード動作のシーケンス図である。本シーケンスの初期状態において、UE100は、eNB200との接続を確立しており、かつWLAN通信部112をオフ状態(WLAN無線信号の送受信が不能な状態)にしている。また、例えばeNB200の負荷レベルが高まっており、オフロードを行うことが好ましい状況であると仮定している。
【0241】
図19に示すように、ステップS801において、UE100のプロセッサ160は、UE100のWLAN通信能力を示す情報(以下、「WLAN能力情報」という)をセルラ通信部111によりeNB200に通知する。WLAN能力情報は、UE100がWLAN通信をサポートしている否かを示す情報である。UE100がWLAN通信をサポートしている場合、WLAN能力情報は、サポートしているWLAN通信の機能を示す情報(以下、「WLAN機能情報」)を含んでもよい。サポートしているWLAN通信の機能とは、例えば、サポートしているWLAN通信の規格(IEEE802.11a/b/g/n)、サポートしているQoS機能(WMM:Wi−Fi MultiMediaなど)、サポートしているWLAN周波数帯(2.4GHz帯、5GHz帯など)である。
【0242】
尚、UE100は、eNB200との接続時にWLAN能力情報を自律的にeNB200に通知してもよく、eNB200との接続後にeNB200からの要求に応じてWLAN能力情報をeNB200に通知してもよい。
【0243】
eNB200のプロセッサ240は、セルラ通信部210がWLAN能力情報を受信すると、受信したWLAN能力情報に基づいて、オフロード可能なUE100(すなわち、WLAN通信をサポートしているUE100)であるか否かを判断する。また、プロセッサ240は、eNB200のカバレッジ内のAP300のうち、WLAN機能情報に合致するAP300が存在しない場合には、オフロード不能と判断してもよい。ここでは、オフロード可能なUE100であると判断されたと仮定して、説明を進める。
【0244】
ステップS802において、UE100のプロセッサ160は、WLAN通信部112がオフ状態であることを示す情報(以下、「WLANオフ情報」という)をセルラ通信部111によりeNB200に通知する。プロセッサ160は、WLAN通信部112をオフ状態にする際にWLANオフ情報をeNB200に通知してもよく、eNB200からの問い合わせに応じてWLANオフ情報をeNB200に通知してもよい。或いは、WLAN通信部112がオフ状態であるかオン状態であるかを周期的にeNB200に通知してもよい。
【0245】
ステップS803において、eNB200のプロセッサ240は、AP300の運用状況を示す情報(以下、「AP運用情報」という)をネットワークインターフェイス220によりAP300から取得する。AP運用情報は、AP300において運用中のWLANチャネルを示す情報と、そのWLANチャネルを含むWLAN周波数帯を示す情報と、を含む。また、AP運用情報は、AP300がビーコン信号を送信するタイミング(周期)を示す情報を含んでもよい。AP300は、AP運用情報を周期的にeNB200に通知してもよく、eNB200からの要求に応じてAP運用情報をeNB200に通知してもよい。ここでの通知は、コアネットワーク経由の通知であってもよい。
【0246】
ステップS804において、eNB200のプロセッサ240は、UE100の地理的位置を示す情報(以下、「UE位置情報」という)をネットワークインターフェイス220によりE−SMLC600から取得する。或いは、UE100がGNSS受信機130を有しており、かつGNSS受信機130がオン状態である場合、プロセッサ240は、GNSS受信機130を用いて生成されたUE位置情報をセルラ通信部111によりUE100から取得してもよい。
【0247】
尚、ステップS801乃至S804は、この順に行われる場合に限らず、任意の順番で行われてもよい。
【0248】
ステップS805において、eNB200のプロセッサ240は、UE位置情報と、AP300の地理的位置を示す情報(以下、「AP位置情報」という)と、を比較して、UE100がAP300に近接したか否かを判断する。具体的には、プロセッサ240は、AP300のカバレッジ内にUE100が位置するか否かを判断する。尚、AP位置情報は、eNB200のメモリ230に予め記憶されていてもよく、AP300からeNB200に通知されてもよい。ここでは、UE100がAP300に近接したと判断されたと仮定して、説明を進める。
【0249】
eNB200のプロセッサ240は、WLAN通信をサポートしているUE100がWLAN通信部112をオフ状態にしており、かつAP300に近接しているので、UE100をオフロード対象として決定する。そして、プロセッサ240は、AP運用情報に基づいて、UE100によるWLANスキャンを制御するためのスキャン制御情報を生成する。尚、スキャン制御情報を生成する際に、AP運用情報に加えて、WLAN能力情報を考慮してもよい。
【0250】
スキャン制御情報は、スキャン周波数に関する情報と、スキャン時間に関する情報と、の少なくとも一方を含む。さらに、スキャン制御情報は、優先度に関する情報(優先度情報)を含んでもよい。
【0251】
スキャン周波数に関する情報は、WLANスキャンの対象とするWLANチャネル又はWLANスキャンの対象としないWLANチャネルを指定するためのチャネル情報を含む。WLANスキャンの対象とするWLANチャネルとは、UE100の近傍のAP300において運用中のWLANチャネルである。WLANスキャンの対象としないWLANチャネルとは、UE100の近傍のAP300において運用していないWLANチャネルである。
【0252】
また、スキャン周波数に関する情報は、WLANスキャンの対象とするWLAN周波数帯又はWLANスキャンの対象としないWLAN周波数帯を指定するための周波数帯情報を含む。WLANスキャンの対象とするWLAN周波数帯とは、UE100の近傍のAP300において運用中のWLAN周波数帯である。WLANスキャンの対象としないWLAN周波数帯とは、UE100の近傍のAP300において運用していないWLAN周波数帯である。
【0253】
優先度情報とは、WLANスキャンにおいてWLAN無線信号(ビーコン信号など)の受信を優先的に試行すべきWLANチャネル及び/又はWLAN周波数帯を指定するための情報である。UE100の近傍のAP300において運用中のWLANチャネル及び/又は運用中のWLAN周波数帯を優先的にスキャンさせるように優先度情報を設定することが好ましい。
【0254】
スキャン時間に関する情報は、WLANスキャンを継続すべき期間(すなわち、WLANをオン状態に維持すべき期間)を指定するための期間情報を含む。
【0255】
また、スキャン時間に関する情報は、WLANスキャンを行うべきタイミングを指定するためのタイミング情報を含む。タイミング情報は、UE100の近傍のAP300がビーコン信号を送信するタイミング(周期)を示す情報とすることが好ましい。
【0256】
ステップS806において、eNB200のプロセッサ240は、WLAN通信部112をオン状態に切り替えるためのWLANオン要求をセルラ通信部210によりUE100に送信する。プロセッサ240は、スキャン制御情報をWLANオン要求に含めて送信する。UE100のセルラ通信部111は、WLANオン要求を受信する。
【0257】
ステップS807において、UE100のプロセッサ160は、WLANオン要求の受信に応じて、WLAN通信部112をオン状態に切り替える。そして、プロセッサ160は、WLAN通信部112をオン状態に切り替えた後、WLANオン要求に含まれるスキャン制御情報に従ってWLANスキャンを制御する。
【0258】
具体的には、プロセッサ160は、チャネル情報に基づいて、WLANスキャンの対象とするWLANチャネルのみについてWLANスキャンを行うと共に、周波数帯情報に基づいて、WLANスキャンの対象とするWLAN周波数帯のみについてWLANスキャンを行う。また、プロセッサ160は、優先度情報に基づいて、優先度の高いWLANチャネル及び/又はWLAN周波数帯についてWLAN無線信号(ビーコン信号など)の受信を優先的に試行する。さらに、プロセッサ160は、期間情報に基づいて、WLANスキャンを継続すべき期間を計時するためのタイマを起動する。プロセッサ160は、タイミング情報に基づいて、WLANスキャンを行うべきタイミングにおいてのみWLANスキャンを行う。尚、期間情報が無い場合、プロセッサ160は、WLANオン要求受信をトリガとして一度だけスキャン(ワンショットスキャン)してもよい。
【0259】
尚、プロセッサ160は、WLANオン要求に応じてWLAN通信部112をオン状態に切り替えても、その旨をユーザインターフェイス120により表示しないことが好ましい。ユーザがWLAN通信部112をオン状態に切り替える操作を行う場合とは異なり、自動的なWLANオンが誤動作であるとユーザに認識されないようにするためである。
【0260】
ステップS808において、UE100のWLAN通信部112は、AP300からのビーコン信号を受信する。該当するWLANチャネル及びタイミングにおいてWLANスキャンを行っている場合、プロセッサ160は、AP300からのビーコン信号を検出することにより、接続可能なAP300を発見する。
【0261】
ステップS809において、プロセッサ160は、WLANスキャンを継続すべき期間を示すタイマが満了したか否かを判断する。接続可能なAP300が発見されることなくタイマが満了した場合、プロセッサ160は、WLAN通信部112をオフ状態に切り替える。ここでは、タイマ稼働中に、接続可能なAP300が発見された(ステップS810)と仮定して、説明を進める。
【0262】
ステップS811において、UE100のプロセッサ160は、AP300への接続要求をWLAN通信部112によりAP300に送信する。その結果、UE100とAP300との間の接続が確立される。
【0263】
(第5実施形態のまとめ)
第5実施形態に係るeNB200は、WLANオン要求をUE100に送信する。WLANオン要求は、WLANスキャンを制御するためのスキャン制御情報を含む。UE100は、WLANオン要求の受信に応じてWLAN通信部112をオン状態に切り替えた後、WLANオン要求に含まれるスキャン制御情報に従ってWLANスキャンを制御する。よって、eNB200によりWLAN通信部112をオン状態に切り替えることにより、eNB200のオフロードが可能な状態にすることができる。また、UE100は、eNB200からのスキャン制御情報に従ってWLANスキャンを効率的に行うことができるので、WLANスキャンにおける消費電力を削減できる。
【0264】
第5実施形態では、eNB200は、UE100の地理的位置を示すUE位置情報、AP300の運用状況を示すAP運用情報のうち少なくとも1つを取得する。そして、eNB200は、取得した情報に基づいて、WLANオン要求の送信を制御する。これにより、eNB200は、WLANオン要求をUE100に送信すべきか否かを適切に判断できる。また、WLANオン要求に含めるスキャン制御情報の内容を適切に設定できる。
【0265】
第5実施形態では、UE100は、WLANオン要求を受信するよりも前において、UE100のWLAN通信能力を示すWLAN能力情報、WLAN通信部112がオフ状態であることを示すWLANオフ情報、のうち少なくとも1つをeNB200に通知する。eNB200は、UE100から受信した情報に基づいて、WLANオン要求の送信を制御する。これにより、eNB200は、WLANオン要求をUE100に送信すべきか否かを適切に判断できる。
【0266】
第5実施形態では、スキャン制御情報は、WLANスキャンの対象とするWLANチャネル又はWLANスキャンの対象としないWLANチャネルを指定するためのチャネル情報、WLANスキャンの対象とするWLAN周波数帯又はWLANスキャンの対象としないWLAN周波数帯を指定するための周波数帯情報、のうち少なくとも1つを含む。これにより、UE100がWLANスキャンの対象とするWLANチャネル及び/又はWLAN周波数帯を限定できるので、WLANスキャンにおける消費電力を削減できる。
【0267】
第5実施形態では、スキャン制御情報は、WLANスキャンにおいてWLAN無線信号の受信を優先的に試行すべきWLANチャネル及び/又はWLAN周波数帯を指定するための優先度情報を含む。これにより、WLANスキャンにおいて、利用可能なWLANチャネルをUE100が早期に発見可能になるので、WLANスキャンにおける消費電力を削減できる。
【0268】
第5実施形態では、スキャン制御情報は、WLANスキャンを継続すべき期間を指定するための期間情報、WLANスキャンを行うべきタイミングを指定するためのタイミング情報、のうち少なくとも1つを含む。これにより、UE100がWLANスキャンを行う期間及び/又はタイミングを限定できるので、WLANスキャンにおける消費電力を削減できる。
【0269】
[第5実施形態の変更例1]
上述した動作シーケンスでは、UE100のWLAN通信部112がオフ状態であり、その旨のWLANオフ情報をUE100からeNB200に通知する場合について説明した。しかしながら、eNB200は、WLANオフ情報とは無関係に、WLANオン要求をUE100に送信してもよい。UE100のプロセッサ160は、WLAN通信部112がオン状態である場合で、かつ、WLANオン要求をeNB200から受信した場合に、WLANオン要求を無視する。
【0270】
また、上述した動作シーケンスでは、UE100がWLAN通信をサポートしており、その旨のWLAN能力情報をUE100からeNB200に通知する場合について説明した。しかしながら、eNB200は、WLAN能力情報とは無関係に、WLANオン要求をUE100に送信してもよい。WLAN通信をサポートしないUE100は、WLANオン要求をeNB200からセルラ通信部111が受信しても、WLANオン要求を無視する。
【0271】
[第5実施形態の変更例2]
UE100は、WLANオン要求を受信するよりも前において、GNSS信号の受信レベルに関する情報をeNB200に通知してもよい。GNSS信号の受信レベルが低い場合には、UE100が屋内に位置すると推測でき、それ以外の場合はUE100が屋外に位置すると推測できる。また、WLAN周波数帯の中には、屋外での使用が禁止されているものがある。よって、UE100が屋外に位置すると推測できる場合には、eNB200は、屋外での使用が禁止されているWLAN周波数帯をWLANスキャンの対象外とするようにWLAN周波数帯情報を生成することが好ましい。
【0272】
[第6実施形態]
次に、第6実施形態について説明する。
【0273】
UE100が、eNB200が管理するセルと接続されずに、無線LANシステムにおけるAP300とデータ通信を行っているケースを想定する。このケースにおいて、UE100が、AP300のカバレッジから外れた場合、eNB200のセルと接続するまでの間、データ通信が中断するという問題がある。
【0274】
そこで、第6実施形態では、無線LANシステムにおけるデータ通信からセルラ通信システムにおけるデータ通信へシームレスに移行することを目的とする。
【0275】
(システム構成)
図20は、第6実施形態に係るシステム構成図である。
【0276】
図20に示すように、第6実施形態では、E−UTRAN10は、eNB200(evolved Node−B)と、HeNB400(Home evolved Node−B)とを含む。eNB200はセルラ基地局に相当する。
【0277】
HeNB400は、eNB200が管理するセル(大セル:マクロセル)よりもカバー範囲が狭い特定セル(小セル:スモールセル/フェムトセル)を管理する(図22参照)。HeNBは、特定セルとの接続(RRC接続)を確立したUEとの無線通信を行う。
【0278】
特定セルは、設定されるアクセスモードに応じて、「CSGセル」、「ハイブリッドセル」、又は「オープンセル」と称される。
【0279】
CSGセルは、アクセス権を有するUE100(「メンバーUE」と称される)のみがアクセス可能なセルであり、CSG IDをブロードキャストする。UE100は、自身がアクセス権を有するCSGセルのCSG IDのリスト(ホワイトリスト)を保持しており、当該ホワイトリストと、CSGセルがブロードキャストするCSG IDと、に基づいて、アクセス権の有無を判断する。
【0280】
ハイブリッドセルは、メンバーUEが非メンバーUEよりも有利に取り扱われるセルであり、CSG IDに加えて、非メンバーUEにも解放されたセルであることを示す情報をブロードキャストする。UE100は、ホワイトリストと、ハイブリッドセルがブロードキャストするCSG IDと、に基づいて、アクセス権の有無を判断する。
【0281】
オープンセルは、メンバーであるか否かを問わずUE100が同等に取り扱われるセルであり、CSG IDをブロードキャストしない。UE100の視点では、オープンセルはセルと同等である。
【0282】
なお、MME/S−GW500は、CSGセルへのアクセス権についてUE100の認証を行う。
【0283】
また、HeNB400及びAP300は、オペレータの任意のインターフェイスで直接的に接続されている。従って、HeNB400は、AP300からデータが直接的に転送される。
【0284】
HeNB400とAP300とは、同じ場所に配置(Collocated)されていてもよい。すなわち、HeNB400は、併設タイプであってもよい。例えば、併設タイプのHeNB400として、HeNB400とAP300とが、同一の筐体に配置された一体型であってもよい。この場合、HeNB400とAP300とは、制御部を共有していてもよい。
【0285】
次に、HeNB400の構成を説明する。
【0286】
図21は、HeNB400のブロック図である。図21に示すように、HeNB400は、アンテナ401と、セルラ通信部410と、ネットワークインターフェイス420と、メモリ430と、プロセッサ440と、を有する。メモリ430及びプロセッサ440は、制御部を構成する。なお、メモリ430をプロセッサ440と一体化し、このセット(すなわち、チップセット)を、制御部を構成するプロセッサとしてもよい。
【0287】
アンテナ401及びセルラ通信部410は、セルラ無線信号の送受信に用いられる。セルラ通信部410は、プロセッサ440が出力するベースバンド信号をセルラ無線信号に変換してアンテナ401から送信する。また、セルラ通信部410は、アンテナ401が受信するセルラ無線信号をベースバンド信号に変換してプロセッサ440に出力する。本実施形態において、セルラ通信部410は、CSGセルを形成する。
【0288】
ネットワークインターフェイス420は、X2インターフェイスを介して隣接eNB200又は隣接HeNB400と接続され、S1インターフェイスを介してMME/S−GW500と接続される。また、ネットワークインターフェイス420は、AP300とHeNB400とを直接的に接続するインターフェイス(以下、特定インターフェイスと適宜称する)を介して、AP300と接続される。特定インターフェイスは、AP300との通信に使用される。例えば、特定インターフェイスを介して、AP300からユーザデータが転送される。
【0289】
メモリ430は、プロセッサ440によって実行されるプログラムと、プロセッサ440による処理に使用される情報と、を記憶する。プロセッサ440は、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号などを行うベースバンドプロセッサと、メモリ430に記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行うCPUと、を含む。プロセッサ440は、後述する各種の処理及び各種の通信プロトコルを実行する。
【0290】
なお、本実施形態において、AP300におけるネットワークインターフェイス320は、AP300とHeNB400とを直接的に接続する特定インターフェイスを介して、HeNB400と接続される。AP300における特定インターフェイスは、HeNB400との通信に使用される。例えば、特定インターフェイスを介して、HeNB400にユーザデータが転送される。
【0291】
(コロケーティッドAPリスト)
本実施形態において、UE100は、コロケーティッドAPリスト(collocated AP list;併設リスト)を有する。UE100とeNB200とは、コロケーティッドAPリストを共有する。
【0292】
コロケーティッドAPリストは、AP300と同じ場所に配置された併設タイプであり、且つAP300と直接的に接続される併設タイプであるHeNB400が管理する小セルのセルIDと、当該HeNB400の位置情報とを含む。コロケーティッドAPリストは、HeNB400と直接的に接続されるAP300の識別子を示す情報を含んでもよい。
【0293】
UE100は、コロケーティッドAPリストをeNB200から取得する。例えば、UE100は、コネクションを確立する時、ハンドオーバを実行する時、又は、ページングエリアを変更する時のタイミングで、eNB200からコロケーティッドAPリストを受信する。
【0294】
eNB200は、UE100がセルラ通信及びWLAN通信の両通信方式をサポートすることを示すケーパビリティ情報に基づいて、コロケーティッドAPリストをUE100に送信してもよい。
【0295】
(第6実施形態に係る動作)
次に、第6実施形態に係る動作について、図22から図24を用いて説明する。図22は、第6実施形態に係るUE100、eNB200、AP300及びHeNB400の位置関係を示す図である。図23及び図24は、第6実施形態に係る動作を説明するためのシーケンス図である。
【0296】
図22に示すように、UE100は、eNB200が管理する大セルに在圏する。また、HeNB400及びAP300は、同じ場所に配置されており、HeNB400及びAP300は、直接的に接続されている。具体的には、AP300は、HeNB400と一体型のAP(併設タイプのAP)である。
【0297】
HeNB400が管理する小セルのカバレッジとAP300のカバレッジとは、少なくとも一部が重複している。本実施形態において、AP300のカバレッジと小セルのカバレッジとが同じであるか、AP300のカバレッジの方が、小セルのカバレッジよりも大きい。また、小セルのカバレッジ及びAP300のカバレッジは、大セルのカバレッジに包含されている。
【0298】
また、本実施形態において、UE100は、HeNB400から離れる方向へ移動し、小セルのカバレッジから外れると仮定して説明を進める。また、UE100は、HeNB400へのアクセス権を有すると仮定して説明を進める。すなわち、UEが、CSGメンバーであるか、小セルが、ハイブリッドセル又はオープンセルである。
【0299】
図23に示すように、UE100は、AP300と接続中であり、且つ、接続しているAP300がHeNB400と一体型のAP300であることを認識している。例えば、UE100は、AP300から一体型のAP300である旨の情報を受信したり、HeNB400から一体型のAP300である旨の報知情報を受信したりすることによって、一体型のAP300であることを認識している。または、UE100は、コロケーティッドAPリストに基づいて、接続しているAP300が一体型のAP300であることを認識してもよい。具体的には、UE100は、接続しているAP300の識別子とコロケーティッドAPリストに含まれるAP300の識別子とが一致した場合に、接続しているAP300が一体型のAP300であることを認識する。
【0300】
また、図23に示すように、UE100は、HeNB400からの参照信号及びeNB200からの参照信号を受信している。UE100は、それぞれの参照信号の信号強度を測定している。また、UE100は、AP300と接続しており(Offloading)、且つ、アイドル状態(IDLE)である。すなわち、UE100は、eNB200及びHeNB400と接続していない。
【0301】
図23に示すように、ステップS901において、UE100は、HeNB400からの参照信号の信号強度の劣化を検出する。
【0302】
UE100は、HeNB400から離れる方向へ移動しているため、参照信号の信号強度が次第に弱くなる。UE100は、HeNB400からの参照信号の信号強度が通信品質を確保できる値である所定値未満になった場合に、信号強度の劣化を検出する。これにより、UE100は、HeNB400からの信号強度の劣化に基づいて、AP300との接続が困難になると判定する。
【0303】
なお、本実施形態において、AP300は、HeNB400と一体型のAPであるため、HeNB400からの参照信号の信号強度が弱くなれば、AP300のカバレッジ端に近づいていると推定できるため、UE100は、AP300からのビーコン信号の信号強度が通信品質を確保できる値である所定値以上であっても、HeNB400からの信号強度がAP300との接続が困難になる値である所定値未満であれば、AP300との接続が困難になると判定する。
【0304】
なお、UE100は、大セルに在圏しているため、eNB200からの信号強度は通信品質を確保できる所定値以上である。
【0305】
ステップS902において、UE100は、転送要求を含むRRC接続要求をeNB200に行う。eNB200は、RRC接続要求を受信する。
【0306】
転送要求は、UE100と接続しているAP300が有するUE100に関するユーザデータを、HeNB400を経由してeNB200に転送させるための要求である。
【0307】
ステップS903において、eNB200は、RRC接続要求に対するACK/NACKをUE100に送信する。UE100は、RRC接続要求に対するACK/NACKを受信する。
【0308】
本実施形態において、eNB200が、ACK(肯定応答)をUE100に送信したと仮定して説明を進める。
【0309】
ステップS904において、接続手続(Connection Procedure)が行われる。
【0310】
ステップS905において、UE100は、接続手続が完了したことを示す完了メッセージ(Connection complete message)をeNB200に送信する。本実施形態において、完了メッセージには、転送中止タイマの情報が含まれる。
【0311】
転送中止タイマは、AP300からユーザデータをeNB200に転送させる処理を中止するために用いられる。転送中止タイマが満了した場合、eNB200は、AP300からユーザデータをeNB200に転送させる処理を中止する。
【0312】
ステップS906において、UE100及びeNB200のそれぞれは、転送中止タイマを起動する。
【0313】
ステップS907において、eNB200は、HeNB400がユーザデータを転送させることが可能か否かを確認するメッセージをHeNB400に送信する。具体的には、eNB200は、ユーザデータの転送のためにHeNB400のバッファを一時的に借りることを要求するバッファ借用要求(Buffer borrowing request)を行う。HeNB400は、バッファ借用要求を受信する。
【0314】
ステップS908において、HeNB400は、バッファ借用要求に対するACK/NACKをeNB200に送信する。
【0315】
なお、HeNB400は、UE100が、HeNB400へのアクセス権を有しない場合であっても、ACKをeNB200に送信してもよい。また、HeNB400は、UE100が、CSGメンバーでない(すなわち、HeNB400へのアクセス権を有しない)場合であっても、バッファ借用要求を受信した場合にのみ、eNB200の転送要求を受け入れるか判定してもよい。または、バッファ借用要求を受信して、バッファ借用要求に対するACKを送信したeNB200の転送要求にのみ、転送要求を受け入れてもよい。
【0316】
また、HeNB400は、バッファ容量が所定値以上であり、十分に空きがない場合に、NACK(否定応答)を送信する。また、HeNB400は、UE100がHeNB400へのアクセス権を有しない場合に、NACK(否定応答)を送信してもよい。
【0317】
本実施形態において、HeNB400が、ACK(肯定応答)をeNB200に送信したと仮定して説明を進める。なお、HeNB400が、NACK(否定応答)をeNB200に送信したケースは、後述にて説明する。
【0318】
ステップS909において、eNB200は、HeNB400に転送要求(Forwarding Request)を行う。HeNB400は、転送要求を受信する。
【0319】
ステップS910において、HeNB400は、eNB200からの転送要求に基づいて、AP300にUE100のユーザデータを転送するように転送要求(Forwarding Request)を行う。
【0320】
なお、本実施形態では、UE100が、CSGメンバーであるため、HeNB400のリソースを使用できる。通常、CSGメンバーでないUE100は、HeNB400のリソースを使用できない。しかしながら、CSGメンバーでないUE100のためであっても、HeNB400は、eNB200からの転送要求に基づいて、AP300にUE100のユーザデータを転送するように転送要求を行ってもよい。
【0321】
ステップS911において、AP300は、HeNB400からの転送要求に基づいて、UE100のユーザデータをHeNB400に転送する。ここで、AP300は、特定インターフェイスを介して、HeNB400と直接的に接続されているため、AP300からHeNB400への転送が迅速に行われる。
【0322】
ステップS912において、HeNB400は、AP300から転送されたユーザデータをeNB200に転送する。具体的には、HeNB400は、X2インターフェイスを介してeNB200ユーザデータを転送する。これにより、ユーザデータが、AP300から、HeNB400を経由して、eNB200に転送される。
【0323】
ステップS913において、UE100とeNB200とは、転送されたユーザデータを利用して、データ通信を行う。
【0324】
UE100は、AP300と接続している場合は、AP300との接続を終了してもよい。
【0325】
次に、図24を用いて、HeNB400が、NACK(否定応答)をeNB200に送信したケースを説明する。
【0326】
図24のステップS1001からS1008は、図23のステップS901からS908に対応する。
【0327】
図24に示すように、ステップS1009において、eNB200は、バッファ借用要求に対して、NACKを受信したか否かを判定する。eNB200は、ACKを受信した場合には、図23におけるステップS909の処理を行う。
【0328】
一方、eNB200は、NACKを受信した場合には、ステップS1010において、UE100からの転送要求に対して、AP300からユーザデータが転送されない旨の応答(NACK)を送信する。UE100は、転送要求の応答(NACK)を受信する。
【0329】
ステップS1011において、UE100は、転送要求の応答(NACK)を受信した場合、UE100が有する転送失敗カウンタ(Forwarding trial Counter)の数を1増加させる。
【0330】
ステップS1012において、UE100は、ステップS1002(すなわち、ステップS902における転送要求を再度行うか否かを判定する。UE100は、転送要求を行うと判定した場合(Yesの場合)、eNB200に転送要求を再度行う。例えば、UE100は、転送失敗カウンタが所定値に達していない場合に、eNB200に転送要求を再度行う。従って、UE100は、転送失敗カウンタが所定値に達するまで、eNB200に転送要求を繰り返す。転送要求を受信したeNB200は、ステップS1007(すなわち、ステップS907)の処理を開始する。なお、転送要求に転送中止タイマの情報が含まれている場合には、eNB200は、ステップS1006(すなわち、ステップS906)の処理を開始する。eNB200は、転送中止タイマを起動している場合には、起動している転送中止タイマをリセットして、転送中止タイマの情報に基づいて、転送中止タイマを起動させる。
【0331】
一方、UE100は、例えば、転送失敗カウンタが所定値に達している場合には、転送要求を行わないと判定する。この場合、UE100は、通常通りの処理を行う。例えば、UE100は、リセレクションによって、RRC接続要求をeNB200又は/及びHeNB400に送信してもよい。この場合、UE100は、AP300と接続した状態で、RRC接続要求を送信してもよい。
【0332】
(第6実施形態のまとめ)
本実施形態において、UE100とHeNB400に直接的に接続されたAP300との接続が困難になると判定された場合に、UE100は、eNB200へ接続し、AP300は、UE100のユーザデータを、HeNB400を経由してeNB200に転送する。これにより、AP300は、特定インターフェイスを介して、HeNB400にユーザデータを転送できるため、eNB200は、AP300が有するUE100のユーザデータを迅速に取得できる。これにより、ユーザデータの流れが途絶えることを抑制でき、シームレスなデータ通信が可能となる。
【0333】
本実施形態において、UE100は、AP300との接続が困難になると判定し、且つ、大セルとの接続が可能であると判定した場合に、RRC接続要求と、AP300が有するユーザデータをeNB200に転送させるための転送要求と、をeNB200へ行う。また、AP300は、UE100からの転送要求に起因して、eNB200にユーザデータを転送する。これにより、UE100自身がAP300との接続が困難になると判定しているため、実際のUE100の無線状況に基づいて、適切な判定ができ、シームレスなデータ通信が可能となる。
【0334】
本実施形態において、UE100は、AP300がHeNB400と同じ場所に配置されている併設タイプである場合に、AP300からのビーコン信号の信号強度が通信品質を確保できる値である所定値以上であっても、HeNB400からの信号強度が通信品質を確保できる値である所定値未満であれば、AP300との接続が困難になると判定してもよい。これにより、AP300が併設タイプであるため、HeNB400からの信号強度が所定値未満であれば、UE100がAP300のカバレッジ付近に存在すると予測できるため、前もって転送要求を行うことにより、シームレスなデータ通信がより可能となる。
【0335】
本実施形態において、eNB200が、UE100からの転送要求を受信した場合に、HeNB400へ転送要求を送信し、HeNB400が、eNB200からの転送要求を受信した場合に、AP300へ転送要求を送信し、AP300が、HeNB400からの転送要求を受信した場合に、HeNB400を経由して、eNB200にユーザデータを転送する。これにより、HeNB400とAP300とは直接的に接続されているため、eNB200がコアネットワークを経由して、AP300に転送要求を行うよりも迅速に転送要求を行うことができる。その結果、シームレスなデータ通信がより可能となる。
【0336】
本実施形態において、UE100が、CSGメンバーでない場合であっても、HeNB400は、AP300から転送されたユーザデータをeNB200に転送する。これにより、CSGメンバーでないUE100であっても、eNB200は、AP300が有するUE100のユーザデータを迅速に取得できるため、シームレスなデータ通信がより可能となる。
【0337】
本実施形態において、UE100は、UE100からの転送要求に対するeNB200からNACKを受信した場合に、転送要求を再度行う。これにより、転送要求が1度受け入れられなかったとしても、転送要求を再度行うことで、転送要求を再度行った場合にHeNB400のバッファ容量が低減していた場合には、転送要求が受け入れられるため、シームレスなデータ通信が可能となる。
【0338】
本実施形態において、UE100は、NACKの受信回数が所定値に達するまで、転送要求を繰り返し行う。これにより、UE100は、転送要求を繰り返すことによって、転送要求が受け入れられた場合には、シームレスなデータ通信が可能となる。一方で、UE100は、転送要求を所定回数送っても転送要求が受け入れられない場合には、転送要求を中止することにより、無駄な転送要求を送信することを抑制できる。
【0339】
[第7実施形態]
(第7実施形態に係る動作)
次に、第7実施形態に係る動作について、図25及び図26を用いて説明する。図25は、第7実施形態に係るUE100、eNB200、HeNB400、及びAP300の位置関係を示す図である。図26は、第7実施形態に係る動作を説明するためのシーケンス図である。なお、上述した実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様の部分は、説明を適宜省略する。
【0340】
なお、第7実施形態において、第6実施形態と同様に、UE100は、AP300と接続中であり、且つ、接続しているAP300がHeNB400と一体型のAP300であることを認識している。
【0341】
上述した第6実施形態では、AP300のカバレッジの方が、小セルのカバレッジよりも大きかった。本実施形態において、AP300のカバレッジと小セルのカバレッジとが同じであるか、図25に示すように、小セルのカバレッジの方が、AP300のカバレッジよりも大きい。
【0342】
図26に示すように、ステップS1101において、UE100は、AP300からのビーコン信号の信号強度の劣化を検出する。
【0343】
UE100は、HeNB400から離れる方向へ移動しているため、ビーコン信号の信号強度が次第に弱くなる。UE100は、AP300からのビーコン信号の信号強度が所定値未満になった場合に、信号強度の劣化を検出する。これにより、UE100は、AP300からの信号強度の劣化に基づいて、AP300との接続が困難になると判定する。本実施形態において、UE100は、HeNB400から受信する信号強度が通信品質を確保できる値である所定値未満になる前に、AP300からのビーコン信号の信号強度が所定値未満になった場合に、AP300との接続が困難になると判定する。
【0344】
なお、UE100は、小セルに在圏しているため、HeNB400からの信号強度は所定値以上である。
【0345】
ステップS1102において、UE100は、転送要求を含むRRC接続要求をHeNB400に行う。HeNB400は、RRC接続要求を受信する。
【0346】
UE100は、HeNB400からの参照信号の信号強度が所定値以上である場合に、接続要求をHeNB400に行う。
【0347】
なお、UE100は、HeNB400からの参照信号の信号強度が所定値未満である場合には、接続要求をeNB200に行う。
【0348】
ステップS1103において、HeNB400は、RRC接続要求に対するACK/NACKをUE100に送信する。UE100は、RRC接続要求に対するACK/NACKを受信する。
【0349】
本実施形態において、HeNB400が、ACK(肯定応答)をUE100に送信したと仮定して説明を進める。
【0350】
ステップS1104において、接続手続(Connection Procedure)が行われる。
【0351】
ステップS1105において、HeNB400は、UE100からの転送要求に基づいて、AP300からユーザデータをHeNB400に転送させるための転送要求をAP300に送信する。AP300は、転送要求を受信する。
【0352】
ステップS1106において、AP300は、HeNB400にユーザデータを転送する。
【0353】
ステップS1107において、HeNB400は、ユーザデータが転送された場合に、ハンドオーバ要求(H.O. Request)をeNB200に送信する。eNB200は、ハンドオーバ要求を受信する。
【0354】
HeNB400は、UE100が受信するHeNB400からの信号強度が所定値未満である旨の測定報告を受けた場合に、ハンドオーバ要求をeNB200に送信してもよい。
【0355】
また、HeNB400は、UE100がCSGメンバーでない場合、CSGメンバーでないUEのためにHeNB400のリソース(制御信号用のリソース及びHeNB400のバッファ)を使用できない。しかしながら、HeNB400は、UE100がCSGメンバーでない場合、HeNB400にユーザデータが転送され、且つ、HeNB400のCSGセルとUE100とが接続した場合に、すぐにハンドオーバ要求をeNB200に送信することを条件として、HeNB400のリソースの使用を許可してもよい。
【0356】
ステップS1108において、ハンドオーバ要求に対するハンドオーバ要求応答(H.O. Request Response)をHeNB400に送信する。
【0357】
ステップS1109において、ハンドオーバ手続(H.O. Procedure)が行われる。
【0358】
ステップS1110において、UE100とeNB200とは、転送されたユーザデータを利用して、データ通信を行う。
【0359】
(第7実施形態のまとめ)
本実施形態において、UE100が、AP300との接続が困難になると判定し、且つ、小セルとの接続が可能であると判定した場合に、RRC接続要求と、AP300が有するユーザデータをHeNB400に転送させるための転送要求と、をHeNB400へ行う。また、AP300は、UE100からの転送要求に基づいて、HeNB400にユーザデータを転送する。これにより、HeNB400は、AP300が有するUE100のユーザデータを迅速に取得できるため、ユーザデータの流れが途絶えることを抑制でき、シームレスなデータ通信が可能となる。
【0360】
本実施形態において、UE100は、HeNB400から受信する信号強度が通信品質を確保できる値である所定値未満になる前に、AP300からのビーコン信号の信号強度が所定値未満になった場合に、AP300との接続が困難になると判定する。これにより、UE100は、転送要求の要求先をHeNB400として適切に選択することができる。
【0361】
本実施形態において、HeNB400は、UE100がCSGメンバーでない場合、ユーザデータが転送され、且つ、HeNB400のCSGセルとUE100とが接続すると、すぐにハンドオーバ要求をeNB200に送信してもよい。これにより、CSGメンバーでないUE100であっても、HeNB400を利用することにより、シームレスなデータ通信が可能となる。
【0362】
[その他の実施形態]
上述した第1及び第2実施形態に係る動作シーケンスにおいて、eNB200(基地局)が行っている動作は、eNB200に代えて、eNB200の上位装置(例えばRNC)などの他のネットワーク装置が行ってもよい。
【0363】
上述した第3実施形態及び第4実施形態では、乗り物T内に、移動可能なAP(モバイルルータなど)が存在する動作環境を考慮していなかった。しかしながら、そのような動作環境にも本発明を適用可能である。例えば、UE100のプロセッサ160は、WLAN通信部112によりAP(移動可能なAP)と接続している場合で、かつUE移動速度が急激に低下したことを検知した場合に、そのAP(移動可能なAP)との接続を維持しながら、他のAP(AP300)との接続開始を規制すればよい。
【0364】
上述した第3実施形態の変更例及び第4実施形態の変更例では、APブラックリストがeNB200から提供される一例を説明した。しかしながら、UE100は、APブラックリストを予め保持していてもよい。
【0365】
上述した第5実施形態において、UE100及びeNB200が送受信する情報は、RRCメッセージ又はその情報要素としてもよい。
【0366】
上述した第5実施形態では、eNB200が広いカバレッジを有するマクロセル基地局である場合を想定していたが、eNB200は、AP300と同程度のカバレッジを有する小セル基地局であってもよい。また、eNB200が小セル基地局である場合で、AP300がeNB200と併設(Collocated)されている場合には、UE100がAP300に近接するか否かの判断(ステップS805)を省略してもよい。
【0367】
上述した第5実施形態の変更例2は、UE100で閉じた処理に応用してもよい。具体的には、UE100は、GNSS信号の受信レベルに基づいて自身が屋外に位置すると推測できる場合には、屋外での使用が禁止されているWLAN周波数帯をWLANスキャンの対象外とする。
【0368】
上述した第6及び第7実施形態では、UE100が、UE100とAP300との接続が困難になるか否かを判定していたが、これに限られない。AP300が、UE100とAP300との接続が困難になるか否かを判定してもよい。
【0369】
具体的には、AP300は、UE100から受信する信号強度を測定し、UE100から受信する信号強度が通信品質を確保できる値である所定値未満になった場合に、UE100とAP300との接続が困難になると判定する。
【0370】
AP300が、UE100とAP300との接続が困難になると判定した場合、以下に示すように、(A)UE主導又は(B)AP300主導でユーザデータの転送が行われる。
【0371】
(A)UE100主導
AP300は、UE100とAP300との接続が困難になると判定した場合、UE100とAP300との接続が困難になる旨をUE100に通知する。UE100は、当該通知を受信した場合、eNB200及びHeNB400のそれぞれの参照信号の信号強度を測定する。
【0372】
UE100は、eNB200及びHeNB400の参照信号のうち、信号強度が所定値以上であるeNB200又はHeNB400に転送要求を含むRRC接続要求を行う。後の処理は、第6又は第7実施形態と同様に行われる。
【0373】
このような処理が行われることによって、UE100は、UE100とAP300との接続が困難になると判定処理を行わなくて済むため、UE100の処理負荷を抑制することができる。
【0374】
(B)AP300主導
AP300は、UE100とAP300との接続が困難になると判定した場合、AP300に隣接するeNB200又はHeNB400がUE100と接続するように、AP300に隣接するeNB200又はHeNB400に要求する。AP300は、eNB200に接続要求を行う場合、HeNB400を経由して、eNB200に要求する。以下、AP300が、HeNB400にUE100と接続するように要求したと仮定して説明を進める。
【0375】
HeNB400は、AP300から接続要求を受信した場合、例えば、ページングによって、UE100との接続を行う旨の通知をUE100に送信する。UE100は、当該通知に基づいて、HeNB400との接続を行う。
【0376】
HeNB400は、UE100との接続を完了した場合、AP300に接続完了通知を送信する。AP300は、接続完了通知を受信した場合、HeNB400にユーザデータの転送を開始する。
【0377】
なお、AP300は、eNB200に接続要求を行う場合、HeNB400を経由して、eNB200からAP300に接続完了通知を受信する。
【0378】
このような処理が行われることによって、UE100は、転送要求を送信せずに済むため、UE100の処理負荷を抑制することができる。
【0379】
なお、eNB200又はHeNB400との接続が完了した場合、UE100は、UE100とAP300との接続を終了するための処理を行ってもよい。
【0380】
また、上述した第6及び第7実施形態では、UE100は、AP300との接続が困難になると判定された場合に、UE100が接続しているAP300に直接的に接続されたHeNB400又はAPのカバレッジを包含する大セルを管理するeNB200と接続していたが、これに限られない。例えば、UE100が接続しているAP300に直接的に接続されたHeNB400に隣接するHeNB400に、UE100は、接続をしてもよい。この場合、UE100が接続しているAP300に直接的に接続されたHeNB400は、X2インターフェイスを介して隣接HeNB400にユーザデータを転送する。
【0381】
また、上述した第6及び第7実施形態では、小セルのカバレッジとAP300のカバレッジとは、大セルのカバレッジに包含されていたが、これに限られない。小セルのカバレッジとAP300のカバレッジとが、大セルのカバレッジと一部重複している場合であってもよい。
【0382】
また、上述した第6及び第7実施形態では、小セル基地局として、HeNB400を例に挙げて説明せいたが、これに限られない。例えば、小セル基地局は、スモールセルを管理するフェムトセル又はピコセルであってもよい。
【0383】
また、上述した第6実施形態では、eNB200は、バッファ借用要求を行っていたが、これに限られない。eNB200は、バッファ借用要求を行わずに、HeNB400へ転送要求を行ってもよい。
【0384】
なお、UE100は、HeNB400からの参照信号と、AP300からのビーコン信号とが同時に所定値未満になった場合、又は、HeNB400からの参照信号が所定値未満になってから、所定時間経過する前にAP300からのビーコン信号が所定値未満になった場合には、転送要求を含むRRC接続要求をeNB200に行ってもよい。
【0385】
なお、上述した第6及び第7実施形態では、UE100が、アイドル状態であったが、UE100が、HeNB400と接続状態である場合には、eNB200への通常のハンドオーバを実施する。
【0386】
また、上述した各実施形態では、セルラ通信システムの一例としてLTEシステムを説明したが、LTEシステムに限定されるものではなく、LTEシステム以外のシステムに本発明を適用してもよい。
【0387】
なお、日本国特許出願第2013−100600号(2013年5月10日出願)、日本国特許出願第2013−100777号(2013年5月10日出願)、日本国特許出願第2013−100779号(2013年5月10日出願)、日本国特許出願第2013−100780号(2013年5月10日出願)、及び、米国仮出願第61/864250号(2013年8月9日出願)の全内容が、参照により、本願明細書に組み込まれている。
【産業上の利用可能性】
【0388】
以上のように、本発明に係る通信制御方法及びユーザ端末は、移動通信分野において有用である。
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