(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記最適化するステップが、ねじられたファイバでは、影をつくらないための前記ファイバの有効長およびねじれ率を最適化することをさらに含む、請求項1に記載のマルチコア光ファイバを設計する方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明によるファイバ表面で屈折する光線(実線)の概略図である。さらに、ファイバ内部のコア円を示す。計算に使用される角度および寸法がすべて示される。
【
図2】本発明による7コア・ファイバのファイバ表面で屈折する光線を示す概略図である。破線の円はレンズ効果の後の光伝搬の最大半径である。
【
図3】光線が2つのコアに接する4つの方向の概略図である。左端および右端のみが影を画定する。
【
図4A】ファイバ方向がねじれているときの外側コアからの影を示す中心コア反射対方向角度を示すグラフである。
【
図4B】すべてのコアからの5つの影を示す外側コア反射を示すグラフである。影のうちの2つはθ=270°のときに重なる。陰領域(shaded region)は式11を使用して計算された幾何学的影である。
【
図5A】高いバーはすべて、外側コアが
図2のファイバの右側を通って回転するときの外側コア上の影であるグラフである。低いバーは、60°だけ後ろの隣接する外側コアである。270°で、「高い」コアは中心コアと一直線をなす。330°で、「低い」コアは中心コアと一直線をなす。300°で、それらは
図2に示した方向にある。これは、これらのコアにとって開放開口(open aperture)の位置であり、その結果、すべてのコアは側面散乱光(side scattered light)によって照射され得る。
【
図5B】300°での開放開口位置を示す光線のグラフである。これらの光線は、各コアがこの方向で影をつくることなく照射されることを示す。「黄色」は「高い」外側コアに対応し、「青緑色」は「低い」隣接する外側コアに対応する。
【
図6】垂直入射で(
図6A)、および1550nmの回折格子で使用されるものであるasin(0.248/1.07)の斜角で(
図6B)ファイバに入る光線を示す図である。変化はほとんど分からない。内側境界円は
図6Aおよび
図6Bの両方で同じである。
【
図7A】すべてのコアを入射平面波ビームで照射することができる、六角形アレイのファイバの場合の本発明によるファイバ設計空間を示す図である。有効なファイバは、実線より下であり、ゼロよりも大きい点線および破線の両方を有する。
【
図7B】入射ビームに対して開放開口を可能にするこれらのパラメータの最大値を定義するコア配置およびサイズを示す図である。
【
図8A】ファイバ内に様々なサイズおよび非対称配置のコアを有する5コア・ファイバの概略図である。
【
図8B】表面でのレンズ効果が含まれるときの影のないコア配列の概略図である。
【
図9A】本発明による、コア番号を示すマルチコア・ファイバの画像およびUV書込みビームの方向を示す図である。
【
図9B】本発明による、すべてのコアの遮られていない照射を示すUV書込みビームの光線追跡を示す概略図である。
【
図9C】走査型レーザにより測定された、各コアに刻み込まれたDFB空洞共振器の透過スペクトルを示すグラフである。ゼロ波長オフセットは1545.762nmに対応する。プロットは明瞭にするために30dBだけオフセットしている。
【
図10A】本発明による、マルチコア・ファイバDFBを測定するのに使用された実験セットアップの概略図である。
【
図10B】WDMの後の信号パワー対DFB空洞共振器の後に測定された残留ポンプ・パワーのグラフである。
【
図10C】コアごとに測定された光スペクトルのグラフである。プロットは明瞭にするためにオフセットしている。ゼロ波長オフセットは1545.434nmに対応する。
【
図11】遅延自己ホモダイン干渉計の後のコアごとに測定されたRFスペクトルを示すグラフである。曲線は明瞭にするためにオフセットしている。
【
図12】それぞれ、各コアへの独立した結合を達成する、六方格子に配列された19個のコアを有する本発明によるファイバ設計を示す概略図である。各図の一番上には、影をつくらないためのファイバの方向と、コア格子間隔に対するコアの最大部直径とがある。
【
図13】それぞれ、各コアへの独立した結合を達成する、六方格子に配列された7つのコアを有する本発明によるファイバ設計を示す概略図である。各図の一番上には、影をつくらないためのファイバの方向と、コア格子間隔に対するコアの最大部直径とがある。
【
図14】本発明によるマルチコア・ポンプ・カプラの概略図である。
【
図15】リング空洞共振器における本発明によるマルチコア・ポンプ・カプラの概略図である。
【
図16】ファブリー・ペロ空洞共振器における本発明によるマルチコア・ポンプ・カプラの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、添付した
図1〜16を参照して説明を行う。これらの図は本質的に例示であり、本明細書で以下に現れる特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定する役割を全くしないことを理解されたい。
【0017】
本発明は、すべてのコアの露光を可能にし、コアのいずれも他のコアによる影ができないようにコア半径およびコア間隔を設計しながら、ファイバに多数のコアを配置できるようにするファイバ設計を考える。コア配列の特定の幾何学的配置は、対称であるかそうでないかのいずれかに選ばれる。次に、入射光、出射光、または少なくとも部分的にトラバースする光に対してのコア間隔、コア・オフセット、および方向を最適化して、入射光、出射光、または少なくとも部分的にトラバースする光に対して、他のコアに対して影をつくるかまたは遮るコアが1つもない設計をもたらす。そのような最適化は、多くのコア間隔、半径、およびビーム方向の設計空間をもたらすことになる。そのような空間は、以下で説明するようにファイバ用途で必要とされる他のパラメータのさらなる最適化を可能にする。以下で説明する1つの実施形態は六角形配列コアをもつファイバを含み、そのようなファイバの最適方向は影を最小にするように決定される。さらに、コア半径および間隔は、影をつくらないように最適化される。次に、この最適化により、そのようなファイバの設計空間が示される。
【0018】
以下の説明では、入射光への言及はすべて出射光または少なくとも部分的にトラバースする光を同様に含むと考えることができる。
【0019】
図1を参照すると、回折格子の側面露光書込み中にマルチコア・ファイバ中のあるコアが別のコアにもたらす影の推定を、光線追跡を使用して得ることができる。この手法では、最初に、入射平面波を仮定してファイバの内部の光線を計算する。次に、コアがファイバの内部に配置された状態でこれらの光線の接線を計算して、あるコアが別のコアに影をつくる角度を得る。まず最初に、
図1の線図を参照する。入射平面波光線は入口点x
r、y
rで屈折する。この入口点は、
x
r=−R
fcosα (1)
y
r=R
fsinα (2)
として表すことができる。ここで、R
fはファイバ半径(正としてとられる)であり、αは半径方向角度である。
【0020】
このビームの入射角および屈折角は、
n
ssinθ
i=n
fsinθ
r=n
ssinα (3)
によって関連づけられる。ここで、n
sおよびn
fは、それぞれ、周囲の屈折率およびファイバの屈折率である。最後の式は等式θ
i=αに由来する。これらの定義により、光線の式は、
y(x)=m(x−x
r)+y
r (4)
または
y(x)=mx+y
0 (5)
である。勾配mにより、
m=tan(θ
r−α) (6)
である。また、切片は、
y
0=−mx
r+y
r (7)
である。
【0021】
1組の光線の一例が
図2に示される。この図は、さらに、レンズ効果により光の伝搬が妨げられることのないような半径を画定する破線の円を示す。この半径は、αが最大の光線の接触条件から導き出すことができる。この半径は、
【0022】
【数1】
である。(この解は、原点に中心があり、可能な限り大きい半径をもつ円の光線接線条件を以下の分析を使用して計算することによって得ることもできる。)所与の光線がファイバの内部のコアと交差しているかどうかを決定するには、ファイバ内での光線と円との交点の値を求めなければならない。これらの2つの式は、
y=mx+y
0 (8)
(y−y
c)
2+(x−x
c)
2=r
2
と書くことができる。ここで、rはコア円の半径であり、y
cおよびx
cは中心座標である。この式の根は二次方程式を解くことによって得ることができる。
{m
2+1}x
2+{2m(y
0−y
c)−2x
c}x+(y
0−y
c)
2+x
c2−r
2=ax
2+bx+c=0 (9)
【0023】
この方程式の根は二次方程式の解の公式によって与えられ、判別式b
2−4acの値に応じて、2つの実数または2つの複素数のいずれかになることになる。根が実数である場合、光線は円を通過し、2つ交点がある。根が複素数である場合、光線は円を通過しない。判別式が0である場合、根は縮退しており、光線は円の接線となる。これは、影の境界を画定するのに必要な条件である。それゆえに、b
2−4ac=0である場合に円と光線パラメータとを関連づける必要がある。いくつかの単純化の後、この関係は、
(mx
c+y
0−y
c)
2−(m
2+1)r
2=0 (10)
として表すことができる。この式が満たされる場合、光線は円の接線である。
【0024】
どの方向角θで、所与のコアが別のコアに影を投じることになるかを知る必要がある。これが起こる範囲は、光線の一方が両方の円の接線であるときに開始し終了する。それ故に、以下の非線形系の式を解かなければならない。
(mx
c1+y
0−y
c1)
2−(m
2+1)r
2=0 (11)
(mx
c2+y
0−y
c2)
2−(m
2+1)r
2=0
ここで、円は同じ半径rと、異なる中心{x
c1,y
c1}および{x
c2,y
c2}とを有する。7コア・ファイバでは、コア中心は、
x
c=−R
0sin(θ+χ) (12)
y
c=R
0cos(θ+χ)
によって与えられる。ここで、R
0はコア中心のオフセットであり、χ=Nπ/3はπ/3の倍数である。中心コアはR
0=0およびχ=0を有する。
【0025】
これらの式の解は、入射光線が両方のコア円の接線となるαおよびθの値を与える。これはθの8つの異なる値で生じ得ることに留意されたい。これらのうちの4つはあるコアによる影であり、4つは他のコアによる影である。各4つの解の内で、外側の2つのみが影の境界に対応する。内側の2つは、影の内部で生じる二重接点に対応する。
【0026】
これらの式の解を得るのに、数値ソルバを使用することができる。そのようなソルバは、異なる解を得るために適切な始点を必要とする。これらの解は、考慮しているαおよびθの範囲にわたって判別式ベクトルの大きさを計算することによって得ることができる。すなわち、
【0028】
ここで、αおよびθへの依存関係が明確に与えられる。α値およびθ値の所与の格子では、Dは、連立方程式のゼロの近くで低くなることになる。ある閾値D
thresholdより下のDのα値およびθ値を記録することによって、1組の初期の推測を得ることができる。初期推測点が4つより多いことがある。次に、これらを数値ソルバで使用して、推測ごとに正確な解が得られる。その結果、最初の推測の多くがすべて4つ(または8つ)の解のうちの1つに収束することになる。
【0029】
あるコアの別のコアへの影について解くには、αおよびθの範囲を制限しなければならない。
図1に示した申し合わせでは、光線はすべて左から来るので、
【0030】
【数3】
を使用し、コアは、影の中にあるためにはファイバ円の右半分になければならないのでπ<θ<2πに制限する。
【0031】
解を示すために、発明者等は、中心コアによる外側コアへの影の4つの解を
図3に示す。4つの場合はすべて2つの接線をもつ光線を有するが、2つの最端の場合のみが影の開始および終了を画定する。
【0032】
次に、これらの結果を7つのコアをもつねじられたファイバの場合に適用する。このファイバの幾何学的配置は
図2のものと同様である。この場合、すべてのコアは、コアが影の内外でねじれるのでファイバに沿って影ができることになる。
図4は、中心コアの外側コアによる影を示す。
図5は、外側コアの他のコアによる影を示す。影で観察される最小値および最大値は、部分的に不透明なコアからのフレネル回折に由来する。
図5では、影のうち1つについては中心コアが外側コアのうちの1つと一直線をなすので5つの影がある。両方の図において、黄色の領域は式11を使用して計算された幾何学的影である。
【0033】
図4A〜4Bでは、以下が仮定された。R
f=95、R
0=36.4、R
c=3.3、n
s=1、n
f=1.45。回折格子機構の位置は、ねじれ率=51回/mをもつ角度に変換された。
【0034】
別の例として、すべてのコアが側面インスクリプションの際に影なしに露光されるようにファイバの最良の方向を計算することができる。n
s=1、n
f=1.45の場合には、この方向は
図2に与えられたものである。この場合、発明者等は、R
f=148/2、R
0=41、R
c=3.2、n
s=1、n
f=1.45を採用した。ファイバの右半分のコアの唯一の開放開口(または影のない状態)は、対称位置で生じる。開放開口は、
図2の円の右側で2つのコアの影のパターンを重ね合わせることによって計算することができる。θ=0で始まるコア円では、この方向は300°に相当する。
【0035】
図5A〜5Bを参照すると、高いバーはすべて、外側コアが
図2のファイバの右側を通って回転するときの外側コア上の影である。低いバーは、60°だけ後ろの隣接する外側コアである。270°で、「高い」コアは中心コアと一直線をなす。330°で、「低い」コアは中心コアと一直線をなす。300°で、それらは
図2に示される方向にある。これは、これらのコアにとって開放開口の位置であり、その結果、すべてのコアは側面散乱光によって照射され得る。(b)光線は、300°での開放開口位置を示す。これらの光線は、各コアがこの方向で影ができることなく照射されることを示す。
【0036】
実際には、書込みビームは角度γでファイバに入る。この場合には、入射ビームはx方向およびz方向の両方に成分を有する。
【0038】
【数5】
である。スネルの法則の要求は、表面と平行なkの成分が表面を横切って連続的でなければならないことである。それゆえに、スネルの法則を適用するために、表面に平行な入射kベクトルの成分を計算することが必要である。この変換のために円柱座標を使用する。
【0039】
【数6】
境界面でのスネルの法則は、kのz成分およびθ成分が境界を横切って連続であることを要求する。次に、r成分が、媒体中の伝搬定数の構成関係から計算される。
【0042】
光線が+x方向に進むことは分かっているので、負の根を選ぶ。次に、勾配を求めるために、x座標およびy座標に変換しなければならない。
【0043】
【数9】
これは、行列形式でより明確に表わされる。
【0044】
【数10】
この式から、前のように勾配mを計算することができる:
【0045】
【数11】
これは、行列を乗算せずに、
【0046】
【数12】
として表すことができる。さらにz勾配を計算することができる。
【0047】
【数13】
ここで、材料および入射パラメータへの依存が明確に含まれている。
次に、光線の式は、
y(x)=mx+y
0
z(x)=m
zx+z
0
である。今では、入口点は、
x
r=−R
fcosα
y
r=R
fsinα
z
r=0
である。切片は、
y
r=mx
r+y
0
0=m
zx
r+z
0
から計算される。円柱と交差する点は、
y=mx+y
0
z=m
zx+z
0
(y−y
0)
2+(x−x
c)
2=r
2
から与えられる。これらの式から、z勾配は交点に影響を与えないことが明らかである。それゆえに、この点から、接触点の解は同じである。
(mx
c1+y
0−y
c1)
2−(m
2+1)r
2=0 (11)
(mx
c2+y
0−y
c2)
2−(m
2+1)r
2=0
【0048】
図6に、発明者等は、1550nmのブラッグ回折格子を書き込むときの斜め入射の場合の光線を示す。光線は非常に類似している。したがって、垂直入射の近似はかなり正確である。
【0049】
次に、所与の方向からの照射の影のできない六角形配列の7つのコアの配置を目的とした例示のファイバ設計を考える。
【0050】
図2で上述した対称位置が影にとっての臨界位置であるとすれば、それは、コア・サイズを変えたとき影が最初にできる場所であり、この位置で影がない光ファイバのための設計プロットを導き出すことができる。開放開口(すなわち、影がない)がない場合の臨界y
0値は、R
0/2である(ここでは導き出さないが、対称位置の分析から明らかである)。このy
0値を用いて、任意のR
0およびR
fに対するR
cの値の限界を得ることが可能になる。これが、146/2ミクロンのファイバ半径について
図7Aにプロットされている。
【0051】
ファイバは、ファイバ半径で規格化したコア半径が実線より下でなければならず、ファイバは、点線が0よりも大きいような、半径で規格化したコア・オフセットを有しなければならない。この条件がまさに述べていることは、コア・オフセットと半径とがファイバ半径よりも小さくなければならないということである。
【0052】
これらの条件は影の防止を目的としているが、所与のコアが
図2に示したファイバ光線画像の上部および下部の右側部分の照射されない領域に部分的に存在しないようにする制約条件を設計に課すことも可能である。例えば、上部および下部のコアの照射は、ファイバ設計に制約条件を課すことができる。上述の説明から、光は、
【0053】
【数14】
の半径の後に存在しないことになる。空間的に、レンズ効果に起因して光がない境界は、ファイバ中でsin(θ
r)=n
s/n
fの角度で下方に傾斜する
図2の上部の光線で近似することができる。上部のコアのR
0およびR
cの限界を検査すると、それらの最大値について以下の式がもたらされる。
(n
s/n
f)(R
f−R
0)−R
c>0
【0054】
この場合も
図7Aにプロットされている。したがって、ファイバは破線を同様に正にしなければならない。
【0055】
ここでは計算されないが、他の制約条件を設計問題に付け加えることもできる。例えば、
図7bの右のコアが
図2の照射されていない領域に入らないという条件を付け加えることもできる。しかしながら、そのような制約条件はあるコアに別のコアによる影ができない制約条件の他に付け加えられることに留意されたい。
【0056】
対応する光線が
図7Bに示される。この場合、146/2のコア半径が明白であることに留意されたい。最大のコア・オフセットR
0では、ファイバ半径の内部に納まらない不可能なコアがもたらされる。これらは、
図7(a)の点線を正にするという制約条件によって除外される。
【0057】
図1〜7に関連して上述した説明は、高度に対称なコア設計の場合である。しかしながら、対称性は、コア配置、コア・サイズ、または任意のパラメータのいずれかでは必要とされない。例えば、
図8Aは、5つのコアC1〜C5を有する仮定の非対称ファイバの概略図である。5つのコアC1〜C5は同じ幅または直径を有しておらず、ファイバ内にいかなる規則的な多角形または格子型配列も有していない。しかしながら、当業者は、コアが円形である必要がないことを認識するであろう。それにもかかわらず、同じ設計基準、すなわち、コア幅/直径、コア位置(例えば、X、Y座標)、およびファイバの方向の全体的角度が考慮に入れられる。したがって、5コア・ファイバでは、考えるべき16個のパラメータ、すなわち、5つのコア幅/直径、5つのコアX座標、5つのコアY座標、および1つの全体的角度方向がある。
図8Aは、あるコアに別のコアによる影ができないファイバを示す。すなわち、コア幅の接線を直交x軸に対して投影または追跡し、結果として生じる軸上へのコア投影の重なりがないことを確認する。
図8Bは、表面でのレンズ効果が含まれる影のないコア配列を有するファイバを示す。上述の本発明の方法の実際の用途は、六角形配列された7コア・ファイバの7つのコアのすべてへのファイバDFBレーザの並列製作である。レーザは、二重偏光および単一縦モードであることが見いだされた。発明者等は、さらに、遅延自己ホモダイン干渉計を使用した線幅測定を報告する。レーザの線幅はすべて300kHz未満である。
【0058】
図9Aは、発明者等のマルチコアEDF(MC−EDF)の断面を示す。ファイバは、先行するファイバで使用されるものと同じプリフォームおよび線引きからのものである。MCFのコアは、OFS Opticsによって製造された既存のコアOFS MP980と同様であり、直径3.2μm、開口数0.23、および1530nmにおける約6dB/mの減衰定数を有する。コアは、40μmピッチで六角形アレイに配列されている。ファイバ外径は146μmである。大きいコア間隔は、コア間の非常に低い結合およびクロストークをもたらし、それにより、コアは互いに独立している。
【0059】
ファイバ回折格子は、244nmで動作するUV干渉計逐一書込システム(UV interferometer point by point writing system)を使用してすべてのコアに同時に刻み込まれた。回折格子屈折率変調は、均一なプロファイルおよび長さ8cmを有していた。効率的な一方向レージングを生じさせるために、個別の位相シフトが回折格子の物理的中心から0.64cmオフセットして配置された。オフセット位相シフトが
図10Aに示される。回折格子は、インスクリプションの後に熱的にアニールされた。
【0060】
各コアへのUV線量は、ファイバ・レンズ効果およびコアの影の両方の結果として変化することが予想される。1つの露光を使用してすべてのコアに確実に均一に照射するために、いくつかのステップが採用された。第1に、書込みビームの横断寸法を、ファイバ直径と比較して大きい370μmに調節した。第2に、ファイバ・コアの横断画像から測定したファイバねじれを露光の前に除去した。第3に、
図9Aに示した書込みビームに対してファイバの向きを定めた。書込みビームのうちの1つを近似する平面波の光線追跡が
図9Bに示されている。コア6はコア2への光の経路を遮っているように見えるが、実際には、ファイバ表面のレンズ効果を考慮に入れると、コア2は、6または1からのいかなる妨害もなしに照射されることに留意されたい。
図9Cは、0.2pmの走査解像度をもつチューナブル外部空洞共振器半導体レーザを使用して測定された各コアの透過スペクトルを示す。これらのスペクトルは、コア2および3が最大スペクトル幅を有していたことを示している。これは、
図9Bで明白であるようにファイバの前面のレンズ効果から予想される。コア0、1、4、および5は、2つのDFB空洞共振器共振を示している。以下で説明するように、これらは、DFB空洞共振器共振の偏光分割に起因する可能性がある。発明者等の走査型レーザ・スペクトルのダイナミック・レンジは、コア2および3のDFB共振を調べるには十分ではなかった。
【0061】
図10Aは、7コアDFBレーザ出力の特性評価を行うのに使用されたセットアップを示す。DFB回折格子は、1×7テーパ化ファイバ束(TFB)ファンアウト・カプラにスプライス接続された。ファンアウト・カプラは、一束の特別に設計した7つのファイバをテーパ化する(テーパ比:約3)ことによって製作された。ファイバ束のテーパ化端部は、6μmのモード・フィールド径および40μmコア間ピッチをもつ7つのコアを有しており、ある長さのMC−EDFに直接スプライス接続された。次に、これは、DFBを含むMC−EDFファイバ・セクションにスプライス接続された。TFBとDFBとの間のMC−EDFの長さは、約1.2mであった。位相シフトは、ファンアウトを通る逆方向のレージングを確立するように向きを定められた。WDMを使用して、ポンプと信号とを分割した。発明者等の測定において、各DFBは、対応するファンアウト・ピグテイルにポンプをスプライス接続することによって別々に測定された。ポンプ・パワーは、レーザごとに0mWから257mWまで変えられた。中心コアから測定されたポンプ吸収は約15%であった。信号パワーはWDMの後で記録された。MCFは測定の間直線に保持された。
【0062】
各レーザの性能を比較するために、コア間の相対的損失の推定値が必要であった。DFBに達するポンプは、TFBファンアウト・カプラおよびMC−EDFスプライス接続の損失の差に起因してコアごとに変化する。DFBにおけるポンプ・パワーの推定値を得るために、発明者等は、DFBの後にMC−EDFを出る残留ポンプを記録した。このファイバは短く(<20cm)、スプライス接続されておらず、そのため、ファイバを出るパワーは、DFBごとの実際のポンプならびにTFBおよびMC−EDFスプライス接続の相対的損失の良好な推定値を与えた。相対的損失(中心コア0と比較した)は、コア5では最大3.2dBまでであった。これらの同じ損失が、各レーザからWDMに伝搬するDFB信号に同様に影響を与えていた。発明者等は、ポンプに対する推定した相対的損失を使用して、各信号パワーを補正した。発明者等は、さらに、MC−EDFの信号の利得を計算し、利得が発明者等の測定の範囲でポンプおよび信号パワーの両方に概して無関係に概略で5dBであったことを見いだした。それゆえに、発明者等は相対利得を補正しなかった。信号損失を補正する際に、発明者等は中心コアを不変とした。
【0063】
図10Bは、測定した補正済みDFB出力パワー対回折格子の後に測定した残留ポンプパワーを示す。すべてのコアについて4〜8mWの残留ポンプ・パワーで閾値が観察された。スロープ効率はレーザ間で11dBだけ変化し、上記した先行するDFBと比べて実質的に改善しており、あるコアは他のコアよりも100分の1小さいパワーでレーザ発振した。スロープ効率の変動は、回折格子の性質の変動、おそらくは、ファイバ内のUV露光条件の変動および書込みビームの不均一性の結果に起因している可能性がある。2つの最も弱いレーザ(コア2および3)の透過スペクトルは、最大UV線量および最大帯域幅を有していたことに留意されたい。これらのコアは過度に露光された可能性があり、または位相シフトを所望値のπから逸脱させた欠陥があった可能性がある。
図10Cは、各コアからのDFBスペクトル(解像度0.06nm)を示す。これらのスペクトルは、コアがすべて0.2nmの範囲内でレーザ発振したことを示している。各レージング・ピークの場所は、
図9Cの透過スペクトルの欠乏の場所と同様である。レージング波長の変動は、コアの実効屈折率の差に起因する。
【0064】
別個の実験で、発明者等は遅延自己ホモダイン干渉計を使用して各レーザの線幅の推定値を得た。発明者等の干渉計は21.5km長の遅延線を有していた。各測定は、DFBを用いて最大出力パワーで行われた。干渉計を出たRFスペクトルが
図11に示される。これらのスペクトルは、100回の測定にわたる平均である。単一の測定はより多くの雑音を示し、変わりやすかったが、しかしながら、線幅は、単一のスペクトルの場合でさえ依然として1MHz未満であった。1GHzまでのRF測定も行われ、ビート・ノートは、すべてのレーザで400〜800MHzの範囲において観察された。この周波数範囲は、
図1(c)で観察された2つの共振の分割と同様である。偏光ビート・ノートがファイバDFBレーザでは0.1〜1GHz周波数範囲で生じることがあることが知られており、発明者等は、このビート・ノートがDFB空洞共振器共振の偏光分割に起因すると考えている。
【0065】
発明者等は、UVインタフェログラムへの単一露光を使用して、7コアErドープ・ファイバのコアのすべてに、機能するファイバ・ブラッグ回折格子DFBレーザを並列製作することを実証した。発明者等は、7つのコアすべてでサブMHz線幅レージングを検証した。発明者等は、精密に製作されたマルチコア・ファイバ回折格子およびレーザが、センシング、電気通信、およびハイパワー・レーザを含む様々な用途分野でのマルチコア・ファイバ技術への期待をかなえるのに役立つことになると予想する。
【0066】
本発明の方法の別の用途は、マルチコア光増幅器などのデバイスに有用なマルチコア・ポンプ・カプラである。そのようなカプラの1つのタイプは、入射自由空間ポンプ・ビームを多数のコアに外部から結合させるのに回折格子を使用する。そのようなデバイスが効果的であるために、入射ポンプが、他のコアからのいかなる影もなしに各コアと同等に相互作用することが望ましい。すなわち、各コアは、他のコアからの干渉なしにまたはファイバ中のいかなる他の微細構造もなしに、所与の1つまたは複数の方向からの自由空間ビームにより独立してアドレッシングされるべきである。
【0067】
図12および13は、それぞれ、各コアへのそのような独立した結合を達成する、六方格子に配列された19個および7つのコアをもつファイバ設計を示す。ファイバの方向と、コア格子間隔に対するコアの最大直径が、各図の一番上に見える。所与の方向では、図に示したコア直径よりも小さいいかなるコア直径も、影なしにコアのすべてを独立してアドレッシングを行う入力ビームをもたらすことになる。
【0068】
発明者等は、書込みビーム(例えば、UV干渉パターン)が同じ方向によってファイバに入り、それによって、いかなる他のコアからの影もなしにすべてのコアに回折格子を刻み込むことによって回折格子が刻み込まれ得ることについて述べる。さらに、追加の設計ステップは、ある方向から来るインスクリプションと、別の方向から来るポンプ・ビームとのための別個の影にされない経路を可能にする。
【0069】
図14は1つのそのようなポンプ・カプラを示す。水平に伝搬するポンプ・ビームは、屈折率整合された結合ブロックを通って角度シータでファイバに入る。コアはすべて他のコアによる影なしにアドレッシングされる。
【0070】
図15および16はポンプ結合配列を示す。
図15はリング空洞共振器中の回折格子カプラを示す。
図16はファブリー・ペロ空洞共振器中の回折格子カプラを示す。以下の例示的な式を使用して、回折格子がどれくらいの強さで光をコアに結合させることができるべきかを推定することができる。
・ A=(Ysinθ−d
f)/cosθ≒Yθ
・ A≒2w(Y/2)=2w
0(1+(λY/4πw
02)
2)
1/2
・ 回折格子結合≒(κL
eff)
2
・ κ=πΔnη/λ
・ L
eff=d
c/sinθ
・ 回折格子結合≒πΔnηd
c/λsinθ
・ V≒d×NA
・ L
eff≒d/NA≒d^2/V≒V/NA^2
【0071】
本発明は上述の説明に限定されない。例えば、上述で図示および説明した例示的なコアはすべて断面が円形であるが、しかしながら、任意の他の幾何学的配置を所与の設計空間内で利用することができる。例えば、円形コアでコア幅を最適化することにはコア直径を最適化することが含まれる。しかしながら、コアが円形でない(例えば、楕円である)場合、幅は入射光/出射光から見た寸法を表す。通常、この寸法はコアの最短寸法となることになる。
【0072】
さらに、「コア」という用語は本明細書の全体にわたって最適化されるべき要素として使用されているが、応力ロッドおよび空気領域などの導波しない領域も本発明の範囲内に包含される。「コア」という用語は、一般には、高屈折材料を意味し、そのため、光を導波することができる。しかしながら、本明細書の文脈では、「コア」は低屈折率領域および高屈折率領域の両方を含む。そのような導波しない領域は照射される必要がないことがある。それゆえに、そのような導波しない領域は影の中に置くことができるが、影を形成することはできない(おそらく、他の導波しない領域への影を除いて)。他の変形も考えられる。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は上述の説明または添付の例示的な図面に限定されないことを理解されるべきである。むしろ、本発明の範囲は以下で本明細書に現れる特許請求の範囲によって定義され、また、当業者によって十分理解される本発明のいかなる均等物も含む。