(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a) 前記プレ重合反応器(PR)において、エチレン並びに前記プロ触媒(PC)、前記外部ドナー(ED)及び前記助触媒(Co)を有する前記チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)の存在下でプロピレンを反応させて、製造されるポリプロピレン(Pre−PP)と用いられるチーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)との混合物(MI)を得、
(b) 前記チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)と、前記ポリプロピレン(Pre−PP)と未反応エチレンとを有する前記混合物(MI)を第1重合反応器(R1)に送り、
(c) 前記第1重合反応器(R1)において、プロピレン、エチレン、及び任意に少なくとも1種のその他のα−オレフィンを、前記チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)の存在下で重合し、前記ポリプロピレン(PP)の第1ポリプロピレン部分(PP−A)を得、
(d) 前記第1ポリプロピレン部分(PP−A)を第2重合反応器(R2)に送り、
(e) 前記第2重合反応器(R2)において、プロピレン、及び任意に少なくとも1種のその他のα−オレフィンを、前記第1ポリプロピレン部分(PP−A)の存在下で重合し、前記ポリプロピレン(PP)の第2ポリプロピレン部分(PP−B)を得、当該第1ポリプロピレン部分(PP−A)及び当該第2ポリプロピレン部分(PP−B)は第1混合物(1stM)を形成し、
(f) 前記第1混合物(1stM)を前記第3重合反応器(R3)に送り、そして
(g) 前記第3重合反応器(R3)において、プロピレン、及び任意に少なくとも1種のその他のα−オレフィンを、前記第1混合物(1stM)の存在下で重合して、前記ポリプロピレン(PP)の第3ポリプロピレン部分(PP−C)を得、当該第1混合物(1stM)及び当該第3ポリプロピレン部分(PP−C)は前記ポリプロピレン(PP)を形成する、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0012】
重合プロセス
本発明に係る方法は、プレ重合反応器(PR)におけるプレ重合工程を有する。その後に、少なくとも2つの反応器(R1及びR2)にて(本)重合が行われる。したがって、全ての反応器、即ちプレ重合反応器(PR)及び、プレ重合反応器(PR)よりも下流に配置されるその他の反応器、即ち少なくとも2つの反応器(R1及びR2)は、直列に接続される。
【0013】
用語「プレ重合」並びに用語「プレ重合反応器(PR)」は、本ポリプロピレン(PP)が製造される本重合でないことを示す。「少なくとも2つの反応器(R1及びR2)」が順に本重合箇所を担う、即ち、本発明のポリプロピレン(PP)を製造する。したがって、プレ重合反応器(PR)では、即ちプレ重合工程では、低量のエチレンの存在下で、プロピレンがポリプロピレンに重合される(Pre−PP)。通常、プレ重合反応器(PR)にて製造されるポリプロピレン(Pre−PP)とチーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)の遷移金属(TM)との重量比は4.0kg Pre−PP/g TM未満であり、より好ましくは0.5から4.0までの範囲内、さらにより好ましくは0.8から3.0までの範囲内、いっそうより好ましくは1.0から2.5kg Pre−PP/g TMの範囲内である。
【0014】
さらに、プレ重合反応器(PR)にて製造されたポリプロピレン(Pre−PP)の重量平均分子量(Mw)は幾分低い。よって、プレ重合反応器(PR)にて製造されたポリプロピレン(Pre−PP)は300,000g/mol以下、より好ましくは200,000g/mol未満の重量平均分子量(Mw)を有する。好ましい実施形態では、プレ重合反応器(PR)にて製造されたポリプロピレン(Pre−PP)の重量平均分子量(Mw)は5,000g/molから200,000g/molまでの範囲内、より好ましくは5,000g/molから100,000g/molまでの範囲内、さらにより好ましくは5,000g/molから50,000g/molまでの範囲内である。
【0015】
本発明の本質的な側面の1つは、プレ重合反応器(PR)へのプロピレン(C3)及びエチレン(C2)供給において特定の比率が用いられなければならないことである。したがって、エチレンは、プロピレンに加えて、プレ重合反応器(PR)内に、0.5g/kgから10.0g/kgまで、好ましくは1.0g/kgから8.0g/kgまで、より好ましくは1.5g/kgから7.0g/kgまで、さらにより好ましくは2.0g/kgから6.0g/kgまでのC2/C3供給比で供給される。好ましくは、この供給比はプレ重合反応器(PR)内における好ましいC2/C3比を得るために用いられる。プレ重合反応器(PR)のC2/C3比は、0.5mol/kmolから5.0mol/kmolまで、好ましくは0.8mol/kmolから3.0mol/kmolまで、より好ましくは1.0mol/kmolから2.0mol/kmolまで、さらにより好ましくは1.1mol/kmolから1.8mol/kmolまでであることが好ましい。
【0016】
プレ重合反応は、通常、0℃から60℃まで、好ましくは15℃から50℃まで、及びより好ましくは20℃から45℃までの温度で行われる。
【0017】
プレ重合反応器における圧力は重要ではないが、反応混合物を液相に保つために十分に高くなければならない。よって、圧力は20barから100bar、例えば30barから70barであってもよい。
【0018】
好ましい実施形態では、プレ重合は液体プロピレンにおけるバルクスラリー重合として行われ、即ち、液相は主にプロピレンを含み、任意に不活性成分がその中に溶解されている。さらに、本発明によれば、上述されるようにプレ重合中でのエチレン供給が活用される。
【0019】
上述の通り、プレ重合はチーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)の存在下で行われる。したがって、チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)の全ての成分、即ち、プロ触媒(PC)、助触媒(Co)、及び外部ドナー(ED)は、全てプレ重合工程に導入される。しかしながら、これは後続の段階で例えばさらなる助触媒(Co)が重合工程に、例えば第1反応器(R1)に添加される選択肢を除外するものではない。好ましい実施形態では、プロ触媒(PC)、助触媒(Co)、及び外部ドナー(ED)はプレ重合反応器(PR)のみで添加される。
【0020】
プレ重合段階にて、その他の成分を添加することも可能である。よって、水素をプレ重合段階で添加して、従来技術で周知のようにポリプロピレン(Pre−PP)の分子量を制御してもよい。さらに、帯電防止添加物を用いて、互いに又は反応器の壁に粒子が接着するのを防止してもよい。
【0021】
プレ重合条件及び反応パラメータの正確な制御は、当業者に周知である。
【0022】
上記に定義したプロセス条件によって、チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)とプレ重合反応器(PR)にて製造されるポリプロピレン(Pre−PP)との混合物(MI)が得られる。好ましくは、チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)は、ポリプロピレン(Pre−PP)に(細かく)分散される。言い換えると、プレ重合反応器(PR)に導入されるチーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)粒子はより小さい断片に分かれて、成長ポリプロピレン(Pre−PP)内で均一に分配される。導入されるチーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)粒子及び得られる断片の大きさは、本発明に本質的に関連せず、当業者の知識の範囲内である。
【0023】
プレ重合に続いて、チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)とプレ重合反応器(PR)にて製造されるポリプロピレン(Pre−PP)との混合物(MI)は、第1反応器(R1)に移される。通常、最終ポリプロピレン(PP)におけるポリプロピレン(Pre−PP)の全量は幾分低く、通常は5.0重量%以下、より好ましくは4.0重量%以下、さらにより好ましくは0.5重量%から4.0重量%までの範囲内、例えば1.0重量%から3.0重量%までの範囲内である。
【0024】
本発明のさらなる要件の1つは、ポリプロピレン(PP)の(本)調製のプロセスが、少なくとも2つの重合反応器(R1及びR2)を有する連続重合法を有することである。好ましい実施形態では、連続重合法は少なくとも3つの重合反応器(R1、R2及びR3)を有する。
【0025】
用語「連続重合法」とは、ポリプロピレンが、直列に接続された少なくとも2つ、好ましくは3つの重合反応器において製造されることを指す。したがって、本方法は、好ましくは少なくとも第1重合反応器(R1)、第2重合反応器(R2)及び第3重合反応器(R3)を有する。用語「重合反応器」とは、本重合が起こることを指すものとする。これは、「重合反応器」という表現の中に、本発明によって用いられるプレ重合反応器が含まれないことを意味する。よって、本プロセスが3つの重合反応器「からなる」とする場合でも、この定義は、全プロセス中に、例えばプレ重合反応器におけるプレ重合工程を有することを何ら除外するものでは無い。用語「からなる」は、主たる重合反応器について限定する表現にすぎない。
【0026】
したがって、上記少なくとも2つの反応器(R1及びR2)、好ましくは少なくとも3つの反応器(R1、R2、及びR3)、より好ましくは3つの反応器(R1、R2、及びR3)において、ポリプロピレン(PP)が製造される。よって、本発明に係るポリプロピレン(PP)は、好ましくは少なくとも2つの部分(PP−A及びPP−B)を含み、より好ましくは2つの部分からなり(PP−A及びPP−B)、さらにより好ましくは少なくとも3つの部分(PP−A、PP−B及びPP−C)を含み、いっそうより好ましくは3つの部分からなる(PP−A、PP−B及びPP−C)。好ましくは、これらの部分は少なくとも1つの特性、好ましくは分子量、つまりはメルトフローレート及び/又はコモノマー含有量において異なる(以下を参照のこと)。
【0027】
前の段落で規定する部分に加えて、ポリプロピレン(PP)は前記のポリプロピレン(Pre−PP)を少量含む。
【0028】
第1反応器(R1)は、好ましくはスラリー反応器(SR)であり、いかなる連続式若しくは単純撹拌バッチ式の槽反応器又はバルク若しくはスラリーのループ反応器であってよい。バルクとは、少なくとも60%(w/w)のモノマーを有する反応媒中での重合を意味する。本発明によれば、スラリー反応器(SR)は、好ましくは(バルク)ループ反応器(LR)である。
【0029】
好ましくは、第1反応器(R1)のポリプロピレン(PP)、即ちポリプロピレン(PP)の第1ポリプロピレン部分(PP−A)、より好ましくはポリプロピレン(PP)の第1ポリプロピレン部分(PP−A)を含むループ反応器(LR)のポリマースラリーは、間にフラッシュ工程を挟むことなく直接第2反応器(R2)、即ち、第1の気相反応器(GPR−1)へと供給される。この種の直接供給は、EP887379A、EP887380A、EP887381A及びEP991684Aに記載されている。「直接供給」とは、第1反応器(R1)、即ちループ反応器(LR)の内容物である、ポリプロピレン(PP)の第1ポリプロピレン部分(PP−A)を含むポリマースラリーが、次の段階の気相反応器へと直接導かれる方法を意味する。
【0030】
あるいは、第1反応器(R1)のポリプロピレン(PP)、即ちポリプロピレン(PP)の第1ポリプロピレン部分(PP−A)、より好ましくはポリプロピレン(PP)の第1ポリプロピレン部分(PP−A)を含むループ反応器(LR)のポリマースラリーは、第2反応器(R2)、即ち第1の気相反応器(GPR−1)に供給される前に、フラッシュ工程又はさらなる濃縮工程に送られてもよい。したがって、この「間接供給」とは、第1反応器(R1)であるループ反応器(LR)の内容物、即ちポリマースラリーが、反応媒分離部を経て例えば第1の気相反応器(GPR−1)である第2反応器(R2)へと送られ、分離部から反応媒がガスとして分離される方法を言う。
【0031】
本発明に係る気相反応器(GPR)は、好ましくは流動床反応器、高速流動床反応器若しくは固定床反応器又はこれらのいずれかの組み合わせである。
【0032】
より好ましくは、第2反応器(R2)、第3反応器(R3)及びそれらに続くすべての反応器は、存在する場合、好ましくは気相反応器(GPR)である。これらの気相反応器(GPR)は、いかなる機械混合式又は流動床反応器であってよい。好ましくは、気相反応器(GPR)は、ガス速度が少なくとも0.2m/秒である機械撹拌型の流動床反応器を有する。よって、気相反応器は、機械式攪拌機を備えた流動床式の反応器であることが好ましい。
【0033】
よって、好ましい実施形態において、第1反応器(R1)は、ループ反応器(LR)などのスラリー反応器(SR)である一方、第2反応器(R2)、第3反応器(R3)及びこれらに続くその他任意の反応器は、気相反応器(GPR)である。したがって、本方法には、直列に接続された少なくとも3つ、好ましくは3つの重合反応器、即ちループ反応器(LR)等のスラリー反応器(SR)、第1の気相反応器(GPR−1)及び第2の気相反応器(GPR−2)が用いられる。スラリー反応器(SR)の前に、本発明にしたがってプレ重合反応器を備える。
【0034】
前に記載のとおり、チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)は、プレ重合反応器(PR)に供給され、続いてプレ重合反応器(PR)にて得られたポリプロピレン(Pre−PP)と共に第1反応器(R1)へと送られる。
【0035】
好ましくは、チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)はスラリーとしてループ反応器(LR)などの第1反応器(R1)に送られる。好ましくは、スラリーはチーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)及びポリプロピレン(Pre−PP)の他に、未反応プロピレン及びエチレンをいくらか含有する。よってループ反応器(LR)などの第1反応器(R1)もまた、プレ重合反応器(PR)に最初に供給されたエチレンをいくらか含有していてもよい。したがって、ループ反応器(LR)などの第1反応器(R1)におけるC2/C3比は0.05mol/kmolから1.50mol/kmol、好ましくは0.08mol/kmolから1.00mol/kmol、より好ましくは0.10mol/kmolから0.80mol/kmol、さらにより好ましくは0.15mol/kmolから0.50mol/kmolである。好ましくは、この特定の比率は、第1反応器(R1)、例えばループ反応器(LR)に追加のエチレン供給をすることなく得られる。
【0036】
第1反応器(R1)、例えばループ反応器(LP)に続く任意の反応器では、プレ重合反応器からのエチレンは存在しない。
【0037】
好ましい多段プロセスは、「ループ−気相」法であり、例えばBorealis A/S、デンマークが開発したもの(BORSTAR(登録商標)テクノロジーとして知られる)があり、例えば特許文献であれば、EP0887379、WO92/12182、WO2004/000899、WO2004/111095、WO99/24478、WO99/24479又はWO00/68315に記載されている。
【0038】
さらなる好適なスラリー−気相法は、BasellのSpheripol(登録商標)法である。
【0039】
特に良い結果が得られるのは、反応器内の温度を注意深く設定した場合である。したがって、3つの反応器の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも第1反応器(R1)、即ちループ反応器(LR)の温度が、50℃から130℃の範囲内、より好ましくは70℃から100℃の範囲内、さらにより好ましくは70℃から90℃の範囲内、いっそうより好ましくは80℃から90℃の範囲内、例えば82℃から90℃、即ち85℃であることが好ましい。好ましい実施形態の1つでは、プロセスは3つの重合反応器を含み、3つの反応器すべての温度が、50℃から130℃の範囲内、より好ましくは70℃から100℃の範囲内、さらにより好ましくは70℃から90℃の範囲内、いっそうより好ましくは80℃から90℃の範囲内、例えば82℃から90℃範囲内、即ち85℃または90℃である。
【0040】
通常、第1反応器(R1)、好ましくはループ反応器(LR)の圧力は、20barから80bar、好ましくは30barから60barの範囲内である一方、第2反応器(R2)、即ち第1の気相反応器(GPR−1)、第3反応器(R3)、即ち第2の気相反応器(GPR−2)、及び存在する場合のそれに続く他の反応器の圧力は、5barから50bar、好ましくは15barから35barの範囲内である。
【0041】
分子量、即ちメルトフローレートMFR
2を調整するため、各反応器には水素が添加される。
【0042】
好ましくは、プロピレン(C3)に対する助触媒(Co)の重量比[Co/C3]は、特にプレ重合反応器及び重合反応器へのプロピレンの全供給を併せて考慮すると、25g/tから40g/tの範囲内、より好ましくは28g/tから38g/tの範囲内、さらに好ましくは31g/tから37g/tの範囲内である。
【0043】
好ましくは、プロピレン(C3)に対する外部ドナー(ED)の重量比[ED/C3]は、特にプレ重合反応器及び重合反応器へのプロピレンの全供給を併せて考慮すると、2.8g/tから4.8g/tの範囲内、より好ましくは3.0g/tから4.6g/tの範囲内、さらにより好ましくは3.5g/tから4.5g/tの範囲内である。
【0044】
滞留時間は、上記の反応器によって様々である。いくつかの実施形態としては、第1反応器(R1)、例えばループ反応器(LR)での滞留時間は、0.3時間から5時間、例えば0.4時間から2時間の範囲内であり、一方、続く反応器、即ち気相反応器での滞留時間は、一般に1時間から8時間、例えば1時間から4時間となるであろう。
【0045】
したがって、本発明に係る方法は、上記に定める条件下において、以下の工程:
(a) プレ重合反応器(PR)において、プロピレンを、エチレン、及びプロ触媒(PC)、外部ドナー(ED)並びに助触媒(Co)を含むチーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)の存在下で反応させて、製造されるポリプロピレン(Pre−PP)と用いられたチーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)との混合物(MI)を得る工程と、
(b) チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)及びポリプロピレン(Pre−PP)を含む前記混合物(MI)を第1重合反応器(R1)、好ましくはループ反応器(LR)に移す工程と、
(c) 第1重合反応器(R1)、好ましくはループ反応器(LR)において、プロピレン及び任意に少なくとも1種のその他のα−オレフィン、例えば任意でプロピレン以外のC
2〜C
10α−オレフィンを、チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)の存在下で重合して、ポリプロピレン(PP)の第1ポリプロピレン部分(PP−A)を得る工程と、
(d) 前記第1ポリプロピレン部分(PP−A)を第2重合反応器(R2)、好ましくは第1気相反応器(GPR−1)に送る工程と、
(e) 第2重合反応器(R2)、好ましくは第1気相反応器(GPR−1)において、プロピレン、及び任意に少なくとも1種のその他のα−オレフィン、例えば任意でプロピレン以外のC
2〜C
10α−オレフィンを、第1ポリプロピレン部分(PP−A)の存在下で重合してポリプロピレン(PP)の第2ポリプロピレン部分(PP−B)を得て、前記第1ポリプロピレン部分(PP−A)及び前記第2ポリプロピレン部分(PP−B)が第1混合物(1
stM)を形成する工程と、
(f) 前記第1混合物(1
stM)を第3重合反応器(R3)、好ましくは第2気相反応器(GPR−2)に送る工程と、
(g) 第3重合反応器(R3)、好ましくは第2気相反応器(GPR−2)において、プロピレン、及び任意に少なくとも1種のその他のα−オレフィン、例えば任意でプロピレン以外のC
2〜C
10α−オレフィンを、第1混合物(1
stM)の存在下で重合して、ポリプロピレン(PP)の第3ポリプロピレン部分(PP−C)を得て、前記第1混合物(1
stM)及び前記第3ポリプロピレン部分(PP−C)がポリプロピレン(PP)を形成する工程と、を有するのが好ましい。
【0046】
特定の側面によれば、本発明に係る方法は、好ましくは、上記に定める条件下において、以下の工程:
(a) プレ重合反応器(PR)において、プロピレンを、エチレン、及びプロ触媒(PC)、外部ドナー(ED)並びに助触媒(Co)を含むチーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)の存在下で反応させて、製造されるポリプロピレン(Pre−PP)と用いられるチーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)との混合物(MI)を得る工程と、
(b) チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)、ポリプロピレン(Pre−PP)及び未反応エチレン(C2)を含む前記混合物(MI)を、第1重合反応器(R1)、好ましくはループ反応器(LR)に送る工程と、
(c) 第1重合反応器(R1)、好ましくはループ反応器(LR)において、プロピレン、エチレン及び任意に少なくとも1種のその他のα−オレフィン、例えば任意でC
4〜C
10α−オレフィンを、チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)の存在下で重合させて、ポリプロピレン(PP)の第1ポリプロピレン部分(PP−A)を得る工程と、
(d) 前記第1ポリプロピレン部分(PP−A)を第2重合反応器(R2)、好ましくは第1気相反応器(GPR−1)に送る工程と、
(e) 第2重合反応器(R2)、好ましくは第1気相反応器(GPR−1)において、プロピレン、及び任意に少なくとも1種のその他のα−オレフィン、例えば任意でプロピレン以外のC
2〜C
10α−オレフィンを、第1ポリプロピレン部分(PP−A)の存在下で重合してポリプロピレン(PP)の第2ポリプロピレン部分(PP−B)を得て、前記第1ポリプロピレン部分(PP−A)及び前記第2ポリプロピレン部分(PP−B)が第1混合物(1
stM)を形成する工程と、
(f) 前記第1混合物(1
stM)を第3重合反応器(R3)、好ましくは第2気相反応器(GPR−2)に送る工程と、
(g) 第3重合反応器(R3)、好ましくは第2気相反応器(GPR−2)において、プロピレン、及び任意に少なくとも1種のその他のα−オレフィン、例えば任意でプロピレン以外のC
2〜C
10α−オレフィンを、第1混合物(1
stM)の存在下で重合させて、ポリプロピレン(PP)の第3ポリプロピレン部分(PP−C)を得て、前記第1混合物(1
stM)及び前記第3ポリプロピレン部分(PP−C)がポリプロピレン(PP)を形成する工程と、を有することが好ましい。
【0047】
第1ポリプロピレン部分(PP−A)及び第1混合物(1
stM)をそれぞれ送ることによって、自動的にチーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)も次の反応器に送られる。
【0048】
工程(g)の後、ポリプロピレン(PP)は、好ましくはいかなる洗浄工程を経ることなく放出される。したがって、好ましい実施形態の1つでは、ポリプロピレン(PP)は洗浄工程に付されない。言い換えると、特定の実施形態では、ポリプロピレン(PP)は洗浄工程に付されず、用途に応じた成形プロセスにおいて未洗浄で用いられる。
【0049】
チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)
上記に指摘したように、上記に定めるポリプロピレン(PP)の具体的な製造方法では、チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)を用いる。したがって、ここでチーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)についてより詳細に説明する。
【0050】
したがって、チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)は、
(a) プロ触媒(PC)であって、
(a1) 遷移金属(TM)の化合物、
(a2) 周期律表(IUPAC)の1族から3族のうち1つから選択される金属(M)の化合物、及び
(a3) 内部電子ドナー(ID)、を有するプロ触媒と、
(b) 助触媒(Co)と、
(c) 外部ドナー(ED)と、を有する。
【0051】
遷移金属(TM)の化合物の金属は、周期律表(IUPAC)の好ましくは4族から6族のうちの1つから、特に4族から選択され、例えばチタン(Ti)である。したがって、遷移金属(TM)の化合物は、好ましくは酸化度3又は4のチタン化合物、バナジウム化合物、クロム化合物、ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物及び希土類金属化合物からなる群から選択され、より好ましくはチタン化合物、ジルコニウム化合物及びハフニウム化合物からなる群から選択される。最も好ましくは、当該遷移金属はチタン化合物である。さらに、遷移金属(TM)の化合物は、特に遷移金属ハライド、例えば遷移金属塩化物などである。三塩化チタン及び四塩化チタンが特に好ましい。とりわけ好ましいのは四塩化チタンである。
【0052】
本発明によれば、用語「遷移金属の化合物」及び用語「遷移金属化合物」は、同義である。
【0053】
金属(M)の化合物は、周期律表(IUPAC)の1族から3族のいずれかから、好ましくは2族から選択される金属の化合物である。通常、金属(M)の化合物は、チタンを含まない。特に、金属(M)の化合物は、マグネシウム化合物、例えばMgCl
2である。
【0054】
さらに、上記のようにプロ触媒(PC)は、内部電子ドナー(ID)を有するが、これはチーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)の外部ドナー(ED)とは化学的に異なる。即ち、内部ドナー(ID)は、好ましくは式(II)のフタル酸ジアルキルを有し、さらにより好ましくは式(II)のフタル酸ジアルキルである。
【化1】
【0055】
式中、R
1及びR
2は、独立にC
1〜C
4アルキルから選択することができ、好ましくはR
1及びR
2は同一、即ち同一のC
1〜C
4アルキル残基を表す。
【0056】
好ましくは、内部ドナー(ID)は、式(II)のフタル酸n−ジアルキルを有し、例えば式(II)のフタル酸n−ジアルキルであり、ここでR
1及びR
2は、独立にC
1〜C
4n−アルキルから選択することができ、好ましくはR
1及びR
2は同一、即ち同一のC
1〜C
4n−アルキル残基を表す。さらにより好ましくは、内部ドナー(ID)は、式(II)のフタル酸n−ジアルキルを有し、例えば式(II)のフタル酸n−ジアルキルであり、ここでR
1及びR
2は、独立にC
1及びC
2アルキルから選択することができ、好ましくはR
1及びR
2は同一、即ち同一のC
1又はC
2アルキル残基を表す。さらにより好ましくは、内部ドナー(ID)は、フタル酸ジエチルを有し、例えばフタル酸ジエチルである。
【0057】
当然ながら、上記で定義され、下記でさらに定義されるプロ触媒(PC)は、好ましくは固体の担持プロ触媒組成物である。
【0058】
さらに、プロ触媒(PC)は、遷移金属(TM)、好ましくはチタンを2.5重量%を超えては含有しない。さらにより好ましくは、プロ触媒は、遷移金属(TM)、好ましくはチタンを1.7重量%から2.5重量%含有する。加えて、プロ触媒の金属(M)、例えばMgに対する内部ドナー(ID)のモル比[ID/M]は、0.03から0.08の間、さらにより好ましくは0.04から0.06の間であり、及び/又はその内部ドナー(ID)含有量は、4重量%から15重量%の間であることが好ましく、いっそうより好ましくは6重量%から12重量%の間である。
【0059】
さらに、内部ドナー(ID)は、式(I)のフタル酸ジアルキルがアルコールとトランスエステル反応した結果物であることが好ましい。特に、プロ触媒(PC)は、特許出願WO87/07620、WO92/19653、WO92/19658及びEP0491566のようにして製造されたプロ触媒(PC)であることが好ましい。これらの文書の記載内容は、ここに本明細書の一部を構成するものとして援用される。
【0060】
遷移金属(TM)の化合物の金属は、周期律表(IUPAC)の好ましくは4族から6族のいずれか、特に4族から選択され、例えばチタン(Ti)である。
【0061】
したがって、プロ触媒(PC)は、好ましくは以下を合わせることにより製造される:
(a) 遷移金属(TM)の化合物、好ましくは周期律表(IUPAC)の4族から6族のいずれかから選択される遷移金属(TM)化合物、さらに好ましくは4族の遷移金属(TM)化合物、例えばチタン(Ti)化合物、特に塩化チタン、例えばTiCl
3又はTiCl
4、このうち後者が特に好ましい;
(b) 周期律表(IUPAC)の1族から3族のいずれかから選択される金属(M)の化合物、好ましくはマグネシウムの化合物、例えばMgCl
2;
(c) C
1〜C
4アルコール、好ましくはC
1〜C
2アルコール、例えばメタノール又はエタノール、最も好ましくはエタノール;及び
(d) 式(I)のフタル酸ジアルキル、
【化2】
(式中、R
1’及びR
2’は、前記アルコールよりも多くの炭素原子を有し、好ましくは独立に少なくともC
5アルキルであり、例えば少なくともC
8アルキルであり、より好ましくはR
1’及びR
2’は同一であって少なくともC
5アルキル、例えば少なくともC
8アルキルである。)、
又は、
好ましくは、式(I)のフタル酸n−ジアルキルであって、R
1’及びR
2’が、前記アルコールよりも多くの炭素原子を有し、好ましくは独立に少なくともC
5n−アルキルであり、例えば少なくともC
8n−アルキルであり、より好ましくはR
1’及びR
2’は同一であって少なくともC
5n−アルキル、例えば少なくともC
8n−アルキルである、式(I)のフタル酸n−ジアルキル、
又は、
より好ましくは、フタル酸ジオクチル、例えばフタル酸ジイソオクチル又はフタル酸ジエチルヘキシル、さらにより好ましくはフタル酸ジエチルヘキシル;
前記アルコールと式(I)の前記フタル酸ジアルキルとの間で、好適なトランスエステル反応条件下、即ち130℃から150℃の間の温度にてトランスエステル反応が行われる。
【0062】
中でも、上記及び下記のプロ触媒(PC)の製造方法に用いられる好ましい式(I)のフタル酸ジアルキルは、フタル酸プロピルヘキシル(PrHP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジエチルヘキシル及びフタル酸ジトリデシル(DTDP)からなる群から選択される。最も好ましいフタル酸ジアルキルは、フタル酸ジオクチル(DOP)、例えばフタル酸ジイソオクチル又はフタル酸ジエチルヘキシル、特にフタル酸ジエチルヘキシルである。
【0063】
好ましくは、式(I)のフタル酸ジアルキルの少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%が、上記に定義される式(II)のフタル酸ジアルキルにトランスエステル化されている。
特に好ましくは、プロ触媒(PC)が、
(a) スプレー法で結晶化又は固体化された式MgCl
2 x nEtOH(式中、nは1から6である。)の付加物とTiCl
4とを接触させて、チタン化担体を形成し、
(b) 当該チタン化担体に、
(i) R
1’及びR
2’が独立に少なくともC
5アルキル、例えば少なくともC
8アルキルである、式(I)のフタル酸ジアルキルか、
又は、好ましくは
(ii) R
1’及びR
2’が同一であって、少なくともC
5アルキル、例えば少なくともC
8アルキルである、式(I)のフタル酸ジアルキルか、
又は、より好ましくは
(iii) フタル酸プロピルヘキシル(PrHP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)及びフタル酸ジトリデシル(DTDP)からなる群から選択される式(I)のフタル酸ジアルキル、いっそうより好ましくは、フタル酸ジオクチル(DOP)、例えばフタル酸ジイソオクチル又はフタル酸ジエチルヘキシル、特にフタル酸ジエチルヘキシルである式(I)のフタル酸ジアルキル
を添加して、第1の生成物を形成し、
(c) 前記エタノールが、式(I)の前記フタル酸ジアルキルのエステル基とトランスエステル化反応して、好ましくは少なくとも80mol%、より好ましくは90mol%、より好ましくは95mol%のR
1及びR
2が−CH
2CH
3である式(II)のフタル酸ジアルキルを形成するように、前記第1の生成物を、好適なトランスエステル化反応条件下、即ち130℃から150℃の間の温度下に供し、
(d) 前記トランスエステル化反応の生成物を、プロ触媒(PC)として回収する、ことにより調製される。
【0064】
さらなる要件として、チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)は、助触媒(Co)を有する。好ましくは、助触媒(Co)は、周期律表(IUPAC)の13族の化合物、例えば有機アルミニウム、例えばアルキルアルミニウム、アルミニウムハライド又はアルキルアルミニウムハライド化合物といったアルミニウム化合物である。したがって、具体的な実施形態の1つにおいて、助触媒(Co)は、トリアルキルアルミニウム、例えばトリエチルアルミニウム(TEA)、ジアルキルアルミニウムクロライド又はアルキルアルミニウムセスキクロライドである。具体的な実施形態の1つにおいて、助触媒(Co)はトリエチルアルミニウム(TEA)である。
【0065】
加えて、チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)は、外部ドナー(ED)を有さなければならない。好ましくは、外部ドナー(ED)は、ヒドロカルビルオキシシラン誘導体である。したがって、具体的な実施形態の1つにおいて、外部ドナー(ED)は、式(IIIa)又は式(IIIb)により表される。
【0066】
式(IIIa)は、以下のように定義される。
Si(OCH
3)
2R
25 (IIIa)
式中、R
5は、炭素原子数3から12の分岐アルキル基、好ましくは炭素原子数3から6の分岐アルキル基、又は炭素原子数4から12のシクロアルキル、好ましくは炭素原子数5から8のシクロアルキルを表す。
【0067】
特に、R
5は、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、tert.−ブチル、tert.−アミル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル及びシクロヘプチルからなる群から選択されることが好ましい。
【0068】
式(IIIb)は、以下のように定義される。
Si(OCH
2CH
3)
3(NR
xR
y) (IIIb)
式中、R
x及びR
yは、同一であっても異なっていてもよく、炭素原子数1から12の炭化水素基を表す。
【0069】
R
x及びR
yは、炭素原子数1から12の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素原子数1から12の分岐状脂肪族炭化水素基及び炭素原子数1から12の環状脂肪族炭化水素基からなる群から独立に選択される。特に、R
x及びR
yは、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、オクチル、デカニル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、tert.−ブチル、tert.−アミル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル及びシクロヘプチルからなる群から独立に選択されることが好ましい。
【0070】
より好ましくは、R
x及びR
yは、どちらも同一であり、いっそうより好ましくはR
x及びR
yは、どちらもエチル基である。
【0071】
より好ましくは、外部ドナー(ED)は、ジエチルアミノトリエトキシシラン[Si(OCH
2CH
3)
3(N(CH
2CH
3)
2)](U−ドナー)、ジクロロペンチルジメトキシシラン[Si(OCH
3)
2(シクロペンチル)
2](D−ドナー)、ジイソプロピルジメトキシシラン[Si(OCH
3)
2(CH(CH
3)
2)
2](P−ドナー)及びそれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましくは、外部ドナーは、ジクロロペンチルジメトキシシラン[Si(OCH
3)
2(シクロペンチル)
2](D−ドナー)である。
【0072】
したがって、特に良い結果が得られるのは、以下を有するチーグラー・ナッタ触媒である:
(a) チタン、MgCl
2及び内部ドナー(ID)を有するプロ触媒(PC)であって、前記内部ドナー(ID)が、
(i) 式(II)のフタル酸ジアルキル
【化3】
(式中、R
1及びR
2は、独立にC
1〜C
4アルキルから選択され、好ましくはR
1及びR
2は同一、即ち同一のC
1〜C
4アルキル残基を表す。)、
又は、好ましくは
(ii) R
1及びR
2が、独立にC
1〜C
4n−アルキルから選択され、好ましくはR
1及びR
2が同一、即ち同一のC
1〜C
4n−アルキル残基を表す式(II)のフタル酸n−ジアルキル、
又は、より好ましくは
(iii) R
1及びR
2が、独立にC
1〜C
2アルキルから選択され、好ましくはR
1及びR
2が同一、即ち同一のC
1〜C
2アルキル残基を表す式(II)のフタル酸n−ジアルキル、
又は、さらにより好ましくは
(iv)フタル酸ジエチル、
を有するか、好ましくは前記内部ドナー(ID)が上記(i)〜(iv)のいずれかである、プロ触媒(PC)と;
(b) トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムクロライド又はアルキルアルミニウムセスキクロライド、好ましくはトリエチルアルミニウム(TEA)である助触媒(Co)と;
(c) ジエチルアミノトリエトキシシラン[Si(OCH
2CH
3)
3(N(CH
2CH
3)
2)]、ジシクロペンチルジメトキシシラン[Si(OCH
3)
2(シクロペンチル)
2](D−ドナー)、ジイソプロピルジメトキシシラン[Si(OCH
3)
2(CH(CH
3)
2)
2](P−ドナー)及びそれらの混合物から選択される、より好ましくはジシクロペンチルジメトキシシラン[Si(OCH
3)
2(シクロペンチル)
2]である、外部ドナー(ED)。
【0073】
必要に応じて、チーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)は、ビニル化合物を当該触媒の存在下で重合することにより改変され、当該ビニル化合物は、以下の式を有する:
CH
2=CH−CHR
3R
4
式中、R
3及びR
4は、一緒に5員又は6員の飽和、不飽和又は芳香族性の環を形成するか、又は、独立に、炭素原子数1から4のアルキル基を表す。
【0074】
より好ましくは、前記プロ触媒(PC)は、上記に定義されるようにして製造されており、また、特許出願WO92/19658、WO92/19653及びEP0491566A2に記載されている。助触媒(Co)及び外部ドナー(ED)が、プレ重合反応器に供給される。
【0075】
本発明の好ましい側面は、一方では助触媒(Co)と外部ドナー(ED)との比[Co/ED]が、また他方では助触媒(Co)と遷移金属(TM)との比[Co/TM]が、注意深く設定されることである。
【0076】
したがって、
(a) 外部ドナー(ED)に対する助触媒(Co)のモル比[Co/ED]が、好ましくは10を超え25未満の範囲内であり、好ましくは12から23の範囲内であり、いっそうより好ましくは15から22の範囲内であり、及び/又は、
(b) 遷移金属(TM)に対する助触媒(Co)のモル比[Co/TM]が、好ましくは100を超え200未満の範囲内であり、好ましくは110から195の範囲内であり、より好ましくは120から190の範囲内であり、さらにより好ましくは125から185の範囲内であり、いっそうより好ましくは128から182の範囲内である。
【0077】
ポリプロピレン(PP)
定義された特定のチーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)を用いた上記の方法によって、高い生産性でポリプロピレン(PP)を製造することができる。したがって、ポリプロピレン(PP)は、特に低灰分であること、特にいかなる精製、即ち洗浄工程を経なくとも低灰分であることを特徴とする。したがって、ポリプロピレン(PP)は、灰分含有量が45ppm未満、即ち10ppm以上45ppm未満の範囲内、好ましくは40ppm未満、即ち15ppm以上40ppm未満の範囲内、より好ましくは20ppmから38ppmの範囲内である。
【0078】
本方法を用いることによっていかなるポリプロピレン(PP)、例えば異相系、即ちポリプロピレンマトリクス中に弾性プロピレンコポリマーが分散している組成物などの複合構造を含むものをも製造することができる。しかしながら、本発明に係るポリプロピレン(PP)は低温キシレン可溶分(XCS)が幾分低いこと、即ち低温キシレン可溶分(XCS)が10重量%未満であることを特徴とすることが好ましく、したがって異相系であるとは考えられない。したがって、ポリプロピレン(PP)は、好ましくは0.3重量%から6.0重量%の範囲内、より好ましくは0.5重量%から5.5重量%、さらにより好ましくは1.0重量%から4.0重量%の低温キシレン可溶分(XCS)を有する。
【0079】
したがって、ポリプロピレン(PP)は、好ましくは結晶性である。用語「結晶性」とは、ポリプロピレン(PP)が、幾分高い溶融温度を有することを示す。したがって、ポリプロピレン(PP)は、特段の指定が無い限り、本発明を通して結晶性であるとみなされる。そのため、ポリプロピレン(PP)は、溶融温度が好ましくは120℃を超え、より好ましくは125℃を超え、さらにより好ましくは130℃を超え、例えば130℃を超えて168℃までの範囲内、いっそうより好ましくは160℃を超え、例えば160℃を超えて168℃まで、さらにいっそうより好ましくは163℃を超え、例えば163℃を超えて168℃までである。
【0080】
加えて、又はあるいは、ポリプロピレン(PP)は、幾分高い結晶化温度を有することが好ましい。よって、ポリプロピレン(PP)は、結晶化温度が少なくとも110℃、より好ましくは少なくとも112℃である。したがって、ポリプロピレン(PP)は、結晶化温度が110℃から128℃の範囲内、より好ましくは112℃から128℃の範囲内、いっそうより好ましくは112℃から125℃の範囲内である。
【0081】
ポリプロピレン(PP)のさらなる特性は、プロピレンのポリマー鎖への誤挿入が少ないことであり、これはポリプロピレン(PP)が、上記に定義される触媒の存在下、即ちチーグラー・ナッタ触媒(ZN−C)の存在下で製造されていることを示す。したがって、ポリプロピレン(PP)は、好ましくは
13C−NMRスペクトル法により求められる2,1エリスロレギオ欠陥の量が少ないことが好ましく、即ち0.4mol%以下、より好ましくは0.2mol%以下、例えば0.1mol%以下である。特に好ましい実施形態では、2,1エリスロレギオ欠陥が検出不能である。
【0082】
レギオ欠陥の量が少ないことから、ポリプロピレン(PP)は、厚いラメラの含有量が多いことをさらなる特徴とする。幾分高いmmmmペンタッド濃度と少ないレギオ欠陥という特定の組み合わせは、ポリプロピレン(PP)の結晶化挙動にも影響を及ぼす。本発明のポリプロピレン(PP)は、結晶化可能な長い配列を特徴としており、したがって厚いラメラが幾分多いことを特徴とする。このような厚いラメラを同定するには、段階的等温分離法(SIST)が最適である。したがって、あるいは又は加えて、ポリプロピレン(PP)を、170℃を超えて180℃までの温度範囲内で溶融する結晶性画分によって定義することができる。したがって、ポリプロピレン(PP)は、170℃を超えて180℃までで溶融する結晶性画分が、少なくとも14.0重量%、より好ましくは14.0重量%から30.0重量%以下までの範囲内、さらにより好ましくは15.0重量%から25.0重量%の範囲内であり、当該部分は段階的等温分離法(SIST)により求められる。
【0083】
また、ポリプロピレン(PP)は、160℃を超えて170℃までで溶融する結晶性画分が36.0重量%を超えることが好ましく、より好ましくは36.0重量%を超えて45.0重量%以下の範囲内であり、さらにより好ましくは38.0重量%を越えて43.0重量%までの範囲内であり、当該部分は段階的等温分離法(SIST)により求められる。
【0084】
本発明の好ましい実施形態の1つにおいて、ポリプロピレン(PP)は、MFR
2(230℃)が7.0g/10分以下、より好ましくは5.0g/10分から7.0g/10分の範囲内、いっそうより好ましくは1.0g/10分から5.0g/10分の範囲内、さらにより好ましくは1.5g/10分から4.0g/10分の範囲内である。
【0085】
あるいは又は加えて、ポリプロピレン(PP)は、クロスオーバー周波数ω
c(重量平均分子量に対応するパラメータ)により定義されるが、当該クロスオーバー周波数ω
cとは、動的機械的レオロジー試験により求められる貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”とが同一となるときの周波数であり、クロスオーバー係数G
cと定義される。よって、ポリプロピレン(PP)は、ISO6271−10に準じて動的レオロジーにより求められる200℃におけるクロスオーバー周波数ω
cが、10.0rad/s以上であることが好ましく、好ましくは12.0rad/s以上、さらにより好ましくは14.0rad/s以上、いっそうより好ましくは12.0rad/sから24.0rad/sの範囲内、さらにいっそうより好ましくは13.0rad/sから22.0rad/sの範囲内、例えば14.0rad/sから20.0rad/sの範囲内である。
【0086】
また、ポリプロピレン(PP)は、分子量分布がなだらかであることを特徴とすることが好ましい。したがって、ポリプロピレン(PP)は、10
5/G
c(G
cはISO6271−10に準じて動的レオロジーにより求められる200℃におけるクロスオーバー係数である。)と定義される多分散指数(PI)が、少なくとも2.5、より好ましくは2.5以上5.5未満の範囲内、さらにより好ましくは3.0から5.0の範囲内、例えば3.4から4.5である。
【0087】
あるいは又は加えて、ポリプロピレン(PP)は、ISO6271−10に準じて200℃において求められるずり流動化指数SHI(0/100)が、少なくとも20、より好ましくは少なくとも22、いっそうより好ましくは20以上50未満の範囲内、さらにより好ましくは22から45の範囲内、例えば25から40の範囲内又は28から45の範囲内である。
【0088】
上記のとおり、本発明の本質的な側面の1つは、プレ重合反応器(PR)にエチレンが供給されることである。好ましくは、未反応エチレンはプレ重合反応器(PR)から第1反応器(R1)、例えばループ反応器(LR)に送られる。したがって、ポリプロピレン(Pre−PP)及び第1ポリプロピレン部分(PP−A)は、エチレン、並びに、ひいてはある程度の最終ポリプロピレン(PP)を含有する。もちろん、追加のコモノマーを、プレ重合反応器(PR)に続く反応器のいずれかに供給することもできる。したがって、ポリプロピレン(PP)は、プロピレン、エチレン及び任意にα−オレフィン、例えばC
4〜C
10α−オレフィン、特にC
4〜C
8α−オレフィン、例えば1−ブテン及び/又は1−ヘキセンを有する。好ましくは、ポリプロピレン(PP)はプロピレン、エチレン、及び任意に1−ブテン及び/又は1−ヘキセンを有する。より具体的には、ポリプロピレン(PP)は、プロピレン及びエチレンに由来する単位のみを有する(エチレン−プロピレンコポリマー(E−PP))。
【0089】
ポリプロピレン(PP)におけるコモノマー含有量、好ましくはエチレン含有量は比較的低いことが好ましく、即ち10重量%未満又はより好ましくは5.0重量%以下である。好ましい実施形態の1つでは、コモノマー含有量、好ましくはエチレン含有量は、ポリプロピレン(PP)の全重量に対して、好ましくは0.05重量%を超え5.00重量%まで、より好ましくは0.10重量%から2.0重量%の間、さらにより好ましくは0.15重量%から1.50重量%の間、いっそうより好ましくは0.20重量%から1.00重量%までの間、さらにいっそうより好ましくは0.20重量%から0.80重量%の間、例えば0.20重量%から0.60重量%の間である。好ましくはエチレン−プロピレンコポリマー(E−PP)であるポリプロピレン(PP)における、エチレン含有量は、好ましくは、プレ重合反応器におけるエチレンの供給に由来する。したがって、具体的な実施形態の1つでは、ポリプロピレン(PP)は本段落に記載のエチレン含有量を有し、100重量%までの残りの部分がプロピレンからなるエチレン−プロピレンコポリマー(E−PP)である。
【0090】
プレ重合反応器(PR)におけるエチレン供給に加えて、追加のエチレン及び/又はC
4〜C
10α−オレフィンが添加される場合、これは上記の工程(c)、(e)、及び(g)の少なくとも1つの工程、より好ましくは3つの工程全てにおいて実現される。しかしながら、好ましい実施形態では、プレ重合工程(a)においてのみ、即ちプレ重合反応器(PR)においてのみエチレンが供給され、後続のいずれの反応器においても新しいコモノマーは反応器に供給されない。
【0091】
「重合プロセス」の項で述べたように、本ポリプロピレン(PP)は少なくとも2つの反応器、好ましくは3つの反応器で製造される。したがって、本ポリプロピレン(PP)は、3つの部分(ポリプロピレン(Pre−PP)を除く)を有し、好ましくは3つの部分(ポリプロピレン(Pre−PP)を除く)からなる。よって、ポリプロピレン(PP)は、好ましくは
(a) 好ましくは第1反応器(R1)で製造された、第1のポリプロピレン部分(PP−A)を、15重量%から40重量%、好ましくは20重量%から35重量%、
(b) 好ましくは第2反応器(R2)で製造された、第2のポリプロピレン部分(PP−B)を、25重量%から50重量%、好ましくは30重量%から45重量%、
(c) 好ましくは第3反応器(R3)で製造された、第3のポリプロピレン部分(PP−C)を、15重量%から40重量%、好ましくは25重量%から35重量%、
有し、
これらの量は、ポリプロピレンの全重量に基づき、好ましくは、第1のポリプロピレン部分(PP−A)、第2のポリプロピレン部分(PP−B)及び第3のポリプロピレン部分(PP−C)を合わせた全重量に基づく。
【0092】
好ましくは、第1ポリプロピレン部分(PP−A)はエチレン−プロピレンコポリマー部分である(E−PP−A)。それに対して、第2ポリプロピレン部分(PP−B)及び第3ポリプロピレン部分(PP−C)は、エチレン−プロピレンコポリマー部分[(E−PP−B)及び(E−PP−C)]などのプロピレンコポリマー部分、又はプロピレンホモポリマー部分[(H−PP−B)及び(H−PP−C)]である。したがって、好ましい実施形態の1つでは、第1ポリプロピレン部分(PP−A)はエチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)である一方で、第2ポリプロピレン部分(PP−B)及び第3ポリプロピレン部分(PP−C)はそれぞれ第1プロピレンホモポリマー部分(H−PP−B)及び第2プロピレンホモポリマー部分(H−PP−C)である。したがって、好ましい実施形態の1つでは、エチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)などの第1ポリプロピレン部分(PP−A)は、第1プロピレンホモポリマー部分(H−PP−B)などの第2ポリプロピレン部分(PP−B)、及び第2プロピレンホモポリマー部分(H−PP−C)などの第3ポリプロピレン部分(PP−C)と、エチレン含有量において、好ましくは全コモノマー含有量において異なる。
【0093】
したがって、エチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)などの第1ポリプロピレン部分(PP−A)のエチレン含有量は、第1プロピレンホモポリマー部分(H−PP−B)などの第2ポリプロピレン部分(PP−B)、及び第2プロピレンホモポリマー部分(H−PP−C)などの第3ポリプロピレン部分(PP−C)のエチレン含有量、好ましくはその全コモノマー含有量よりも高い。よって、エチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)の第1ポリプロピレン部分(PP−A)のエチレン含有量は、ポリプロピレン(PP)のエチレン含有量、好ましくはその全コモノマー含有量よりも多い。さらにより好ましくは、エチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)の、第1ポリプロピレン部分(PP−A)のエチレン含有量は、ポリプロピレン(PP)のエチレン含有量、好ましくは全コモノマー含有量よりも、少なくとも0.50重量%、より好ましくは0.60重量%から1.50重量%、いっそうより好ましくは0.70重量%から1.30重量%、多い。
【0094】
好ましくは、第1ポリプロピレン部分(E−PP−A)のエチレン含有量は、少なくとも0.50重量%、より好ましくは0.50重量%から5.00重量%の範囲内、より好ましくは0.80重量%から3.50重量%の範囲内、さらにより好ましくは1.00重量%から2.50重量%の範囲内である。
【0095】
本発明において用いられるポリプロピレンホモポリマーという表現は、実質的にプロピレン単位からなる、即ち99.50重量%を超える、より好ましくは99.90重量%を超えるプロピレン単位からなるポリプロピレンに関する。具体的な実施形態の1つでは、ポリプロピレンホモポリマーという表現は、ポリマーがコモノマーを全く含まないことを示す。
【0096】
コモノマー含有量の違いに加えて、ポリプロピレン(PP)の各部分も異なる分子量を有してもよい。この場合、各部分はメルトフローレートMFR
2が異なり得るが、必ずしも異ならなくてもよい。ポリプロピレン(PP)の各部分のメルトフローレートMFR
2が実質的に異ならない場合、ポリプロピレン(PP)はモノモーダルと称される。それに対し、各部分においてメルトフローレートに実質的な違いがある場合は、ポリプロピレン(PP)は、異なるメルトフローレートを有する部分の数に応じて、例えばバイモーダル((PP−A)及び(PP−B))又はトリモーダル((PP−A)、(PP−B)、及び(PP−C))など、マルチモーダルと称される。したがって、実施形態の1つでは、ポリプロピレン(PP)はモノモーダルであり、各ポリプロピレン部分((PP−A)、(PP−B)、及び(PP−C))は類似するメルトフローレートMFR
2を有し、即ち、互いに+/−1.3g/10分を超えて異ならず、より好ましくは+/−1.0g/10分を超えて異ならない。そのため、具体的な実施形態の1つでは、ポリプロピレン(PP)はモノモーダルであり、エチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)、第1プロピレンホモポリマー部分(H−PP−B)などの第2ポリプロピレン部分(PP−B)、及び第2プロピレンホモポリマー部分(H−PPC)などの第3ポリプロピレン部分(PP−C)は類似するメルトフローレートMFR
2を有し、即ち、互いに、+/−1.3g/10分を超えて異ならず、より好ましくは+/−1.0g/10分を超えて異ならない。
【0097】
別の実施形態では、ポリプロピレン(PP)はマルチモーダルポリプロピレン(PP)であり、存在する各ポリプロピレン部分、好ましくはポリプロピレン部分(PP−A)、(PP−B)、及び(PP−C)のそれぞれは、異なるメルトフローレートMFR
2を有し、即ち、互いに+/−1.3g/10分を超えて異なり、より好ましくは+/−1.5g/10分を超えて異なり、さらにより好ましくは1.3g/10分を超えて+/−7.0g/10分以下で異なり、いっそうより好ましくは1.5g/10分を超えて+/−6.5g/10分以下で異なる。この実施形態によれば、第1ポリプロピレン部分(PP−A)が、重合反応器において製造される全てのポリプロピレン部分、好ましくは3つのポリプロピレン部分(PP−A)、(PP−B)、及び(PP−C)全ての中で最も低いメルトフローレートMFR
2を有し、及び/又は第2ポリプロピレン部分(PP−B)が、重合反応器において製造される全てのポリプロピレン部分、好ましくは3つのポリプロピレン部分(PP−A)、(PP−B)、及び(PP−C)全てのうち、最も高いメルトフローレートMFR
2を有する。この段落によれば、特に好ましい段落の1つにおいて、ポリプロピレン部分(PP−A)はエチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)である一方で、第2ポリプロピレン部分(PP−B)及び第3ポリプロピレン部分(PP−C)はそれぞれ第1プロピレンホモポリマー部分(H−PP−B)及び第2プロピレンホモポリマー部分(H−PPC)である。
【0098】
具体的な実施形態の1つにおいて、
重合反応器において製造される全ての部分、好ましくは3つのポリプロピレン部分(PP−A)、(PP−B)、及び(PP−C)の全てのうち、
(a) 第1ポリプロピレン部分(PP−A)が最も低いメルトフローレートMFR
2を有し、
(b) 第2ポリプロピレン部分(PP−B)が最も高いメルトフローレートMFR
2を有し、及び
(c) 第3ポリプロピレン部分(PP−C)は第1ポリプロピレン部分(PP−A)のメルトフローレートMFR
2と第2ポリプロピレン部分(PP−B)のメルトフローレートMFR
2との間のメルトフローレートMFR
2を有する。好ましくは、ポリプロピレン部分(PP−A)はエチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)である一方で、第2ポリプロピレン部分(PP−B)及び第3ポリプロピレン部分(PP−C)はそれぞれ第1プロピレンホモポリマー部分(H−PP−B)及び第2プロピレンホモポリマー部分(H−PPC)である。
【0099】
より具体的な実施形態の1つでは、
(a) 第1ポリプロピレン部分(PP−A)は最も低いメルトフローレートMFR
2を有し、
(b) 第2ポリプロピレン部分(PP−B)は最も高いメルトフローレートMFR
2を有し、及び
(c) 第3ポリプロピレン部分(PP−C)は、重合反応器において製造される全ての部分、好ましくは3つのポリプロピレン部分(PP−A)、(PP−B)、及び(PP−C)の全てのうち、第1ポリプロピレン部分(PP−A)のメルトフローレートMFR
2と第2ポリプロピレン部分(PP−B)のメルトフローレートMFR
2との間のメルトフローレートMFR
2を有し、
任意にさらに
(d) 第1ポリプロピレン部分(PP−A)は、少なくとも0.50重量%、より好ましくは0.50重量%から5.00重量%の範囲内、より好ましくは0.80重量%から3.50重量%の範囲内、さらにより好ましくは1.00重量%から2.50重量%の範囲内のエチレン含有量を有するエチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)であり、
(e) 第2ポリプロピレン部分(PP−B)は第1プロピレンホモポリマー部分(H−PP−B)であり、及び/又は、第3ポリプロピレン部分(PP−C)は第2プロピレンホモポリマー部分(H−PPC)である。
【0100】
したがって、マルチモーダルプロピレンポリマー(PP)の第1ポリプロピレン部分(PP−A)、好ましくはエチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレート(MFR
2)が2.0g/10分以下、好ましくは0.05g/10分から2.0g/10分の範囲内、より好ましくは0.1g/10分から1.5g/10分の範囲内であり、及び/又は、第2ポリプロピレン部分(PP−B)、好ましくは第1プロピレンホモポリマー部分(H−PP−B)は、ISO1133に準じて測定するメルトフローレート(MFR
2)が少なくとも3.0g/10分、好ましくは3.0g/10分から10.0g/10分の範囲内、より好ましくは4.0g/10分から8.0g/10分の範囲内であることが好ましい。さらに、第3ポリプロピレン部分(PP−C)、好ましくは第2プロピレンホモポリマー部分(H−PP−C)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレート(MFR
2)が1.5g/10分から6.0g/10分の範囲内、好ましくは2.0g/10分から5.0g/10分の範囲内、より好ましくは2.5g/10分から4.0g/10分の範囲内であることが好ましい。
【0101】
好ましくは、第1ポリプロピレン部分(PP−A)、好ましくはエチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)は、第1反応器(R1)、好ましくはループ反応器にて製造される一方で、第2ポリプロピレン部分(PP−B)、好ましくは第1プロピレンホモポリマー部分(H−PP−B)は、第2反応器(R2)、好ましくは第1気相反応器(GPR−1)にて製造される。さらに好ましくは、第3ポリプロピレン部分(PP−C)、好ましくは第2プロピレンホモポリマー部分(H−PP−C)は、第3反応器(R2)、好ましくは第2気相反応器(GPR−2)にて製造される。
【0102】
したがって、好ましい実施形態の1つでは、ポリプロピレン(PP)はエチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)、第1プロピレンホモポリマー部分、及び第2プロピレンホモポリマー部分(H−PP−C)を有する。
【0103】
具体的な実施形態の1つでは、本発明は、モノモーダルであり、エチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)、第1プロピレンホモポリマー部分、第2プロピレンホモポリマー部分(H−PP−C)、及びポリプロピレン(Pre−PP)を有し、好ましくはエチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)、第1プロピレンホモポリマー部分、第2プロピレンホモポリマー部分(H−PP−C)、及びポリプロピレン(Pre−PP)からなるポリプロピレン(PP)を対象とし、当該ポリプロピレン(PP)は
(a) ISO1133に準じて測定される全体のメルトフローレート(MFR
2)が0.5g/10分から7.0g/10分の範囲内、好ましくは1.0g/10分から5.0g/10分の範囲内、より好ましくは1.5g/10分から4.0g/10分の範囲内であり、及び
(b) 溶融温度T
mが163℃を超え、好ましくは163℃を超え168℃までの範囲内であり、及び/又は結晶化温度T
cが110℃を超え、好ましくは110℃を超え128℃までの範囲内、より好ましくは112℃を超え125℃までの範囲内である。
【0104】
別の具体的な実施形態では、本発明は、トリモーダルであり、(ポリプロピレン(Pre−PP)を除いて)、エチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)、第1プロピレンホモポリマー部分及び第2プロピレンホモポリマー部分(H−PP−C)を有し、好ましくは(ポリプロピレン(Pre−PP)を除いて)、エチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)、第1プロピレンホモポリマー部分及び第2プロピレンホモポリマー部分(H−PP−C)からなるポリプロピレン(PP)を対象としており、当該ポリプロピレン(PP)は
(a) ISO1133に準じて測定される全体のメルトフローレート(MFR
2)が0.5g/10分から7.0g/10分の範囲内、好ましくは1.0g/10分から5.0g/10分の範囲内、より好ましくは1.5g/10分から4.0g/10分の範囲内であり、及び
(b) 溶融温度T
mが163℃を超え、好ましくは163℃を超え168℃までの範囲内であり、及び/又は結晶化温度T
cが110℃を超え、好ましくは110℃を超え128℃までの範囲内、より好ましくは112℃を超え125℃までの範囲内であり、
(i) 前記エチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)は、
(i.i) ISO1133に準じて測定されるメルトフローレート(MFR
2)が2.0g/10分以下、好ましくは0.05g/10分から2.0g/10分の範囲内、より好ましくは0.1g/10分から1.5g/10分の範囲内であり、
(i.ii) エチレン含有量が少なくとも0.50重量%、より好ましくは0.50重量%から5.00重量%の範囲内、より好ましくは0.80重量%から3.50重量%の範囲内、さらにより好ましくは1.00重量%から2.50重量%の範囲内であり、
(ii) 前記第1プロピレンホモポリマー部分(H−PP−B)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレート(MFR
2)が少なくとも3.0g/10分、好ましくは3.0g/10分から10.0g/10分の範囲内、より好ましくは4.0g/10分から8.0g/10分の範囲内であり、
(iii) 前記第2プロピレンホモポリマー部分(H−PP−C)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレート(MFR
2)が1.5g/10分から6.0g/10分の範囲内、好ましくは2.0g/10分から5.0g/10分の範囲内、より好ましくは2.5g/10分から4.0g/10分の範囲内である。
【0105】
好ましくは、ユニモーダルポリプロピレン(PP)及びトリモーダルポリプロピレン(PP)はさらに
(a) 灰分含有量が45ppm未満、好ましくは40ppm未満、より好ましくは10ppm以上45ppm未満の範囲内、さらにより好ましくは15ppm以上40ppm未満の範囲内、いっそうより好ましくは20ppmから38ppmであり、
及び/又は
(b) ISO6271−10(200℃)に準じて測定されるずり流動化指数(0/100)が、少なくとも20、より好ましくは少なくとも22、いっそうより好ましくは20以上50未満の範囲内、さらにより好ましくは22から45の範囲内、例えば25から40の範囲内又は28から45の範囲内であり、
及び/又は
(c) 多分散指数(PI)が、少なくとも2.5、より好ましくは2.5以上5.5未満の範囲内、さらにより好ましくは3.0から5.0までの範囲内、例えば3.4から4.5である。
【0106】
よって、具体的な側面の1つにおいて、本発明はさらにポリプロピレン(PP)を対象としており、当該ポリプロピレンは以下を有するエチレン−プロピレンコポリマー(E−PP)である:
(a) ISO1133に準じて測定されるメルトフローレート(MFR
2)が0.5g/10分から7.0g/10分の範囲内、好ましくは1.0g/10分から5.0g/10分の範囲内、より好ましくは1.5g/10分から4.0g/10分の範囲内であり、
(b) 溶融温度T
mが160℃を超え、好ましくは160℃を超え168℃までの範囲内、より好ましくは163℃を超え、さらにより好ましくは163℃を超え168℃までの範囲内であり、及び
(c) エチレン含有量が、ポリプロピレン(PP)の全重量に対して、0.05重量%を超え5.00重量%まで、より好ましくは0.10重量%から2.00重量%の間、さらにより好ましくは0.15重量%から1.50重量%の間、いっそうより好ましくは0.20重量%から1.00重量%までの間、さらにいっそうより好ましくは0.20重量%から0.80重量%の間、例えば0.20重量%から0.60重量%の間である。
【0107】
任意に、前段落の前記エチレン−プロピレンコポリマー(E−PP)は、さらに以下のように特徴付けられる:
(d) 結晶化温度T
cが110℃を超え、好ましくは110℃を超え128℃までの範囲内、より好ましくは112℃を超え125℃までの範囲内であり、
及び/又は
(e)
13C−NMRスペクトル法により求められる2,1エリスロレギオ欠陥が、0.4モル%以下、好ましくは0.2モル%以下、より好ましくは0.1モル%以下、いっそうより好ましくは2,1エリスロレギオ欠陥が検知不能であり、
及び/又は
(f) 170℃を超えて180℃までで溶融する結晶性画分が少なくとも14.0重量%、より好ましくは14.0重量%から30.0重量%以下の範囲内、さらにより好ましくは15.0重量%から25.0重量%の範囲内であり、及び任意に160℃を超えて170℃までで溶融する結晶性画分が36.0重量%を超え、より好ましくは36.0重量%を超え45.0重量%以下の範囲内、さらにより好ましくは38.0重量%を超え43.0重量%までの範囲内であり、当該画分は段階的等温分離法(SIST)によって求められ、
及び/又は
(g) 灰分含有量が45ppm未満、好ましくは40ppm未満、より好ましくは10ppm以上45ppm未満の範囲内、さらにより好ましくは15ppm以上40ppm未満の範囲内、いっそうより好ましくは20ppmから38ppmまでの範囲内であり、
及び/又は
(h) ISO6271−10(200℃)に準じて測定されるずり流動化指数(0/100)が少なくとも20、より好ましくは少なくとも22、いっそうより好ましくは20以上50未満の範囲内、さらにより好ましくは22から45までの範囲内、例えば25から40までの範囲内又は28から45までの範囲内であり、
及び/又は
(i) 多分散指数(PI)が少なくとも2.5、より好ましくは2.5以上5.5未満の範囲内、さらにより好ましくは3.0から5.0までの範囲内、例えば3.4から4.5までである。
【0108】
実施形態の1つでは、前記エチレン−プロピレンコポリマー(E−PP)はユニモーダルであり、エチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)、第1プロピレンホモポリマー部分(H−PP−B)及び第2プロピレンホモポリマー部分(H−PP−C)を有し、当該エチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)は少なくとも0.50重量%、より好ましくは0.50重量%から5.00重量%の範囲内、より好ましくは0.80重量%から3.50重量%の範囲内、さらにより好ましくは1.00重量%から2.50重量%の範囲内のエチレン含有量を有し、さらに各ポリプロピレン部分((E−PP−A)、(H−PP−B)、及び(H−PP−C))は類似するメルトフローレートMFR
2を有する、即ち、互いに+/−1.3g/10分を超えて異ならず、より好ましくは+/−1.0g/10分を超えて異ならない。
【0109】
別の好ましい実施形態では、当該エチレン−プロピレンコポリマー(E−PP)はマルチモーダル、例えばトリモーダルであり、
(i) 以下を有するエチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A):
(i.i) ISO1133に準じて測定される2.0g/10分以下、好ましくは0.05g/10分から2.0g/10分の範囲内、より好ましくは0.1g/10分から1.5g/10分の範囲内のメルトフローレート(MFR
2)、
(i.ii) 少なくとも0.50重量%、より好ましくは0.50重量%から5.00重量%の範囲内、より好ましくは0.80重量%から3.50重量%の範囲内、さらにより好ましくは1.00重量%から2.50重量%の範囲内のエチレン含有量、
(ii) ISO1133に準じて測定されるメルトフローレート(MFR
2)が少なくとも3.0g/10分、好ましくは3.0g/10分から10.0g/10分の範囲内、より好ましくは4.0g/10分から8.0g/10分の範囲内の第1プロピレンホモポリマー部分(H−PP−B)、及び
(iii) ISO1133に準じて測定されるメルトフローレート(MFR
2)が1.5g/10分から6.0g/10分の範囲内、好ましくは2.0g/10分から5.0g/10分の範囲内、より好ましくは2.5g/10分から4.0g/10分の範囲内である第2プロピレンホモポリマー部分(H−PP−C)、
を有する。
【0110】
エチレン−プロピレンコポリマー(E−PP)は、ユニモーダル又はマルチモーダル、例えばトリモーダルであるかに関わらず、独立に
(a) 好ましくは第1反応器(R1)にて製造されたエチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)を、15重量%から40重量%、好ましくは20重量%から35重量%、
(b) 好ましくは第2反応器(R2)にて製造され、好ましくは第1プロピレンホモポリマー部分(H−PP−B)である第2ポリプロピレン部分(PP−B)を、25重量%から50重量%、好ましくは30重量%から45重量%、及び
(c) 好ましくは第3反応器(R3)にて製造され、好ましくは第2プロピレンホモポリマー部分(H−PP−C)である第3ポリプロピレン部分(PP−C)を、15重量%から40重量%、好ましくは25重量%から35重量%、
有し、
その量はエチレン−プロピレンコポリマー(E−PP)の全重量に基づいており、好ましくは、その量は、エチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)と、好ましくは第1プロピレンホモポリマー部分(H−PP−B)である第2ポリプロピレン部分(PP−B)と、好ましくは第2プロピレンホモポリマー部分(H−PP−C)である第3ポリプロピレン部分(PP−C)とを合わせた全重量に基づいている。
【0111】
エチレン−プロピレンコポリマー部分(E−PP−A)のさらなる好ましい実施形態は、上に定義したポリプロピレン(PP)の好ましい実施形態である。
【0112】
二軸延伸フィルム/キャパシタフィルム
このように定義されるポリプロピレン(PP)、特にエチレン−プロピレンコポリマー(E−PP)は、成膜プロセスに供することができ、キャパシタフィルムを得ることができる。好ましくは、ポリプロピレン(PP)、特にエチレン−プロピレンコポリマー(E−PP)は、キャパシタフィルム中の唯一のポリマーである。したがって、キャパシタフィルムは、添加剤を含み得るが、好ましくは他のポリマーを含まない。よって、100.0重量%に至る残りの部分は、公知の添加剤、例えば酸化防止剤により満たされる。しかしながら、当該残りの部分は、キャパシタフィルム中5.0重量%以下、好ましくは2.0重量%以下、例えば1.0重量%以下であるものとする。したがって、キャパシタフィルムは、好ましくは95重量%を超え、より好ましくは98重量%を超え、例えば99.0重量%を超える量の本明細書に定義されるポリプロピレン(PP)、特にエチレン−プロピレンコポリマー(E−PP)を有する。
【0113】
キャパシタフィルムの厚さは、最大15.0μmまで可能であるが、通常、キャパシタフィルムは、厚さが12.0μm以下、好ましくは10.0μm以下、より好ましくは8.0μm以下、さらにより好ましくは2.5μmから10μmの範囲内、例えば3.0μmから8.0μmの範囲内である。
【0114】
また、キャパシタフィルムは、二軸延伸フィルムであることが好ましい。即ち、上記に定義されるポリプロピレン(PP)、特にエチレン−プロピレンコポリマー(E−PP)又はポリプロピレン(PP)、特にエチレン−プロピレンコポリマー(E−PP)を有する混合物(ブレンド)が、延伸処理されて、二軸延伸ポリマーとなっていることが好ましい。上記のように、キャパシタフィルムは、好ましくはポリプロピレン(PP)、特にエチレン−プロピレンコポリマー(E−PP)を唯一のポリマーとして含んでいることから、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)は、当該ポリプロピレン(PP)、特に当該エチレン−プロピレンコポリマー(E−PP)からなることが好ましい。
【0115】
好ましくは、キャパシタフィルム、即ち二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)は、機械方向の延伸比が少なくとも3.0、また横方向の延伸比が少なくとも3.0であることが好ましい。市販の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、少なくとも上記に定義する程度まで破損すること無く延伸可能でなければならないため、このような比が好ましい。試料の長さは、縦方向の延伸時に長くなり、縦方向の延伸比は、試料の元の長さに対する現時点の長さの比として算出される。続いて、試料を横方向に延伸するが、この際に試料の幅が広がる。したがって、延伸比は、試料の元の幅に対する現時点の幅から算出される。好ましくは、キャパシタフィルム、即ち二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)の機械方向の延伸比は、3.5から8.0の範囲内、より好ましくは4.5から6.5の範囲内である。キャパシタフィルム、即ち二軸ポリプロピレン(BOPP)の横方向の延伸比は、好ましくは4.0から15.0の範囲内、より好ましくは6.0から10.0の範囲内である。延伸の際の温度は、一般に100℃から180℃である。
【0116】
上記に定義されるように、キャパシタフィルム、即ち二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)は、好ましくはポリプロピレン(PP)、特にエチレン−プロピレンコポリマー(E−PP)から製造されることから、ポリプロピレン(PP)、特にエチレン−プロピレンコポリマー(E−PP)についての特性は、異なる定めの無い限り、等しくキャパシタフィルムにも適用される。
【0117】
好ましくは、ポリプロピレン(PP)、特にエチレン−プロピレンコポリマー(E−PP)は、二軸配向している。
【0118】
ポリプロピレン(PP)の製造後、ポリプロピレン(PP)は、成膜プロセスに供される。キャパシタフィルムの製造に好適であれば、いかなる成膜プロセスも用いることができる。
【0119】
好ましい実施形態によれば、ポリプロピレン(PP)は、成膜プロセスの前に洗浄工程による処理を受けない。
【0120】
キャパシタフィルム、即ち二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)は、従来公知の延伸法により製造することができる。したがって、本発明に係るキャパシタフィルム、即ち二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)の製造方法は、本明細書に定義するポリプロピレン(PP)を使用することと、それを好ましくは公知のテンター法によりフィルム状に形成することとを有する。
【0121】
テンター法とは、特に、本明細書に定義するポリプロピレン(PP)、特にエチレン−プロピレンコポリマー(E−PP)をTダイなどのスリットダイから溶融押出し、冷却ドラム上で冷却して非延伸シートを得る方法である。当該シートを、例えば加熱した金属ロールでプレ加熱し、次いで周速度が異なるように設定された複数のロール間で長さ方向に延伸し、そして両端をグリッパーで把持し、オーブン中でテンターを用いて該シートを横方向に延伸すると、二軸延伸フィルムが得られる。縦方向の延伸では、延伸シートの温度は、本明細書に定義されるポリプロピレンの融点の範囲内(機械方向:−20℃から−10℃、横方向:−5℃から+10℃)の温度となるよう調整されることが好ましい。横方向の延伸における膜厚の均一性は、フィルムの所定領域を長さ方向の延伸後にマスクし、横方向の延伸後に、当該マスキングの間隔を測定して、実際の延伸係数を測定することにより評価可能である。
【0122】
続けて、キャパシタフィルム、即ち二軸延伸フィルム(BOPP)を空気、窒素、二酸化炭素ガスまたはこれらの混合物中でのコロナ放電により処理して表面を金属化することにより、蒸着される金属との接着力を高めることができ、そして巻き取り機で巻き取る。
【0123】
以下、実施例を用いて本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0124】
A.測定法
以下の用語の定義及び決定法は、別段の定めが無い限り、下記の実施例だけでなく、クレームを含め上記の本発明の一般的記載にも適用される。
【0125】
NMRスペクトル法による微細構造の定量化
定量的核磁気共鳴(NMR)スペクトル法を用いて、ポリマーの立体規則性(タクチシティ)、レギオ規則性及びコモノマー含有量を定量した。
【0126】
Bruker Advance III 400NMRスペクトロメーターを用い、
1H及び
13Cについてそれぞれ400.15及び100.62MHzで操作して、溶液状態にて定量的
13C{
1H}NMRスペクトルを記録した。いずれのスペクトルも、
13Cに最適化した10mm延長温度プローブヘッドを用い、125℃にてすべての圧力に窒素ガスを用いて記録した。
【0127】
ポリプロピレンホモポリマーについては、約200mgの試料を1,2−テトラクロロエタン−d
2(TCE−d
2)中に溶解した。確実に均一溶液とするため、ヒートブロックにおける最初の試料調製の後、NMRチューブをさらにロータリーオーブンで少なくとも1時間加熱した。マグネットへの挿入にあたり、チューブを10Hzで回転させた。この手順は、主に、高解像度が求められるタクチシティ分布の定量に使用した(Busico,V.,Cipullo,R.,Prog.Polym.Sci.26(2001)443;Busico,V.;Cipullo,R.,Monaco,G.,Vacatello,M.,Segre,A.L.,Macromoleucles30(1997)6251)。標準の単一パルスによる励起とし、NOEを用い、バイレベルWALTZ16デカップリング法を用いた(Zhou,Z.,Kuemmerle,R.,Qiu,X.,Redwine,D.,Cong,R.,Taha,A.,Baugh,D.Winniford,B.,J.Mag.Reson.187(2007)225;Busico,V.,Carbonniere,P.,Cipullo,R.,Pellecchia,R.,Severn,J.,Talarico,G.,Macromol.Rapid Commun.2007,28,11289)。走査回数は、スペクトルあたり計8192(8k)回であった。
【0128】
エチレン−プロピレンコポリマーについては、約200mgの試料を、クロム(III)アセチルアセトナート(Cr(acac)
3)と共に3mlの1,2−テトラクロロエタン−d
2(TCE−d
2)中に溶解して、緩和剤の最終濃度が65mMの溶媒溶液とした(Singh,G.,Kothari,A.,Gupta,V.,Polymer Testing28 5(2009),475)。確実に均一溶液とするため、ヒートブロックにおける最初の試料調製の後、NMRチューブをさらにロータリーオーブンで少なくとも1時間加熱した。マグネットへの挿入にあたり、チューブを10Hzで回転させた。この手順は、主に、高解像度と定量性が求められるエチレン含有量の厳密な定量化に使用した。標準の単一パルスによる励起とし、NOEを用いず、先端角を最適化し、待ち時間を1秒とし、バイレベルWALTZ16デカップリング法を用いた(Zhou,Z.,Kuemmerle,R.,Qiu,X.,Redwine,D.,Cong,R.,Taha,A.,Baugh,D.Winniford,B.,J.Mag.Reson.187(2007)225;Busico,V.,Carbonniere,P.,Cipullo,R.,Pellecchia,R.,Severn,J.,Talarico,G.,Macromol.Rapid Commun.2007,28,11289)。走査回数は、スペクトルあたり計6144(6k)回であった。
【0129】
定量
13C{
1H}NMRスペクトルを処理及び積分して、専用のコンピュータプログラムを用いて積分値からその量的な特性を求めた。
【0130】
エチレン−プロピレンコポリマーについては、溶媒の化学シフトを用いて、すべての化学シフトを30.00ppmのエチレンブロック(EEE)の中央のメチレン基に基づいて間接的に基準化した。この手法により、この構造単位が存在しない場合であっても比較可能な基準化が可能となる。
【0131】
プロピレンホモポリマーについては、すべての化学シフトを21.85ppmのメチルイソタクチックペンタッド(mmmm)に基づいて、内部的に基準化した。
【0132】
レギオ欠陥(Resconi,L.,Cavallo,L.,Fait,A.,Piemontesi,F.,Chem.Rev.2000,100,1253;;Wang,W−J.,Zhu,S.,Macromolecules33(2000),1157;Cheng,H.N.,Macromolecules17(1984),1950)又はコモノマーに対応する特徴的なシグナルが観察された。
【0133】
2,1エリスロレギオ欠陥の存在を、17.7及び17.2ppmの2つのメチルサイトの存在により推定し、他の特徴的なサイトにより確定した。
【0134】
他のレギオ欠陥に対応する特徴的なシグナルは観察されなかった(Resconi,L.,Cavallo,L.,Fait,A.,Piemontesi,F.,Chem.Rev.2000,100,1253)。
【0135】
2,1エリスロレギロ欠陥の量を、17.7及び17.2ppmの2つの特徴的なメチルサイトの平均積分値を用いて定量化した。
P
21e=(I
e6+I
e8)/2
【0136】
1,2−1次挿入(primary inserted)されたプロペンの量を、メチル領域に基づいて定量化し、この領域に含まれる1次挿入に無関係のサイト及びこの領域外の1次挿入サイトついて補正を行った。
P
12=I
CH3+P
12e
【0137】
全プロペン量を、1次挿入されたプロペン及び他に存在するすべてのレギオ欠陥の合計として定量した。
P
total=P
12+P
21e
【0138】
2,1エリスロレギオ欠陥のモルパーセントを、全プロペンに対して定量した。
[21e]モル%=100 x (P
21e/P
total)
【0139】
コポリマーについては、エチレンの取り込みに対応する特徴的なシグナルが観察された(Cheng,H.N.,Macromolecules17(1984),1950)。
【0140】
レギオ欠陥も観察されたことから(Resconi,L.,Cavallo,L.,Fait,A.,Piemontesi,F.,Chem.Rev.2000,100,1253;Wang,W−J.,Zhu,S.,Macromolecules33(2000),1157;Cheng,H.N.,Macromolecules17(1984),1950)、こうした欠陥のコモノマー含有量に対する影響を補正する必要があった。
【0141】
ポリマー中のエチレンのモル分率を、Wangらの方法(Wang,W−J.,Zhu,S.,Macromolecules33(2000),1157)を用い、規定の条件により得られた
13C{
1H}スペクトルの全領域にわたる複数のシグナルを積分することにより定量した。この方法は、その正確さ、信頼性、及び必要に応じてレギオ欠陥の存在を示す能力を理由に選ばれた。積分領域を若干調整することにより、より広範なコモノマー含有量に適用できるよう適用性を高めた。
【0142】
ポリマー内に取り込まれたコモノマーのモルパーセントを、以下の式に従ってモル分率から算出した。
E[mol%]=100 x fE
【0143】
ポリマー内に取り込まれたコモノマーの重量パーセントを、以下の式に従ってモル分率から算出した。
E[wt%]=100 x (fE x 28.05)/((fE x 28.05)+((1−fE) x 42.08))
【0144】
トリアドレベルでのコモノマーの配列分布を、Kakugoらの方法(Kakugo,M.,Naito,Y.,Mizunuma,K.,Miyatake,T.Macromolecules15(1982)1150)を用い、規定の条件により得られた
13C{
1H}スペクトルの全領域にわたる複数のシグナルを積分することにより求めた。この方法は、その信頼性を理由に選ばれた。積分領域を若干調整することにより、より広範なコモノマー含有量に適用できるよう適用性を高めた。
【0145】
ポリマー中の所定のコモノマートリアド配列のモルパーセントを、Kakugoらの方法(Kakugo,M.,Naito,Y.,Mizunuma,K.,Miyatake,T.Macromolecules15(1982)1150)により求めたモル分率から、以下の式に従い算出した。
XXX[mol%]=100 x fXXX
【0146】
トリアドレベルでのコモノマー配列分布から求めた、ポリマー中に取り込まれたコモノマーのモル分率は、以下の公知の必須関係式(Randall,J.Macromol.Sci.,Rev.Macromol.Chem.Phys.1989,C29,201)を用いて、トリアド分布から算出した。
fXEX=fEEE+fPEE+fPEP
fXPX=fPPP+fEPP+fEPE
式中、PEE及びEPPは、それぞれ反転配列PEE/EEP及びEPP/PPEの合計を表す。
【0147】
コモノマー分布のランダム性を、取り込まれた全エチレンに対する単離エチレン配列の相対量として定量した。ランダム性を、以下の関係式を用いて、トリアド配列の分布から算出した。
R(E)[%]=100 x (fPEP/fXEX)
【0148】
第2ポリプロピレン部分(PP−B)のコモノマー含有量の
算出:
【数1】
式中、
w(PP1)は第1ポリプロピレン部分(PP−A)、即ち第1反応器(R1)の生成物の重量分率、
w(PP2)は第2ポリプロピレン部分(PP−B)、即ち第2反応器(R2)にて製造されるポリマーの重量分率、
C(PP1)は第1ポリプロピレン部分(PP−A)、即ち第1反応器(R1)の生成物のコモノマー含有量[重量%]、
C(R2)は第2反応器(R2)において得られる生成物、即ち第1ポリプロピレン部分(PP−A)及び第2ポリプロピレン部分(PP−B)の混合物のコモノマー含有量[重量%]、
C(PP2)は第2ポリプロピレン(PP−B)の算出されたコモノマー含有量[重量%]である。
【0149】
第3ポリプロピレン部分(PP−C)のコモノマー含有量の
算出:
【数2】
式中、
w(R2)は第2反応器(R2)、即ち第1ポリプロピレン部分(PP−A)及び第2ポリプロピレン部分(PP−B)の混合物の重量分率、
w(PP3)は第3ポリプロピレン部分(PP3)、即ち第3反応器(R3)にて製造されるポリマーの重量分率、
C(R2)は第2反応器(R2)、即ち第1ポリプロピレン部分(PP−A)と第2ポリプロピレン部分(PP−B)との混合物のコモノマー含有量[重量%]、
C(R3)は第3反応器(R3)にて得られる生成物、即ち第1ポリプロピレン部分(PP−A)、第2ポリプロピレン部分(PP−B)、及び第3ポリプロピレン部分(PP−C)の混合物のコモノマー含有量[重量%]、
C(PP3)は第3ポリプロピレン部分(PP−C)の算出されるコモノマー含有量[重量%]である。
【0150】
レオロジー:動的レオロジー測定を、Rheometrics RDA−II QCを用い、圧縮成形試料について、200℃の窒素雰囲気下、直径25mmのプレート及びプレート形状を用いて行った。振動せん断試験を、歪みの線形粘弾性領域内において、0.01から500rad/sの周波数にて行った(ISO6271−10)。
【0151】
貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)、複素弾性率(G
*)及び複素粘性(η
*)を、周波数(ω)の関数として得た。
【0152】
ゼロせん断粘度(η
0)を、複素粘度の逆数として定義される複素流動度を用いて算出した。実数及び虚数部分は、以下のように定義される。
f’(ω)=η’(ω)/[η’(ω)
2+η”(ω)
2]及び
f”(ω)=η”(ω)/[η’(ω)
2+η”(ω)
2]
これらは、以下の等式から得られる。
η’=G”/ω 及び η”=G’/ω
f’(ω)=G”(ω) x ω/[G’(ω)
2+G”(ω)
2]
f”(ω)=G’(ω) x ω/[G’(ω)
2+G”(ω)
2]
【0153】
多分散指数、PI
PI=10
5/Gcは、G’(ω
c)=G”(ω
c)=G
cが成り立つG’(ω)及びG”(ω)のクロスオーバーポイントから算出する。
【0154】
ずり流動化指数(SHI)は、MWDと相関するがMWとは独立であり、Heino
1,2)(以下)に従い算出した。SHI(0/100)は、ゼロせん断粘度と100kPaのせん断応力時の粘度(η
*100)との比として定義される。
1)Rheological characterization of polyethylene fractions. Heino,E.L.;Lehtinen,A;Tanner,J.;Seppaelae,J.Neste Oy,Porvoo,Finland. Theor.Appl.Rheol.,Proc.Int.Congr.Rheol.,11
th(1992),1 360−362
2)The influence of molecular structure on some rheological properties of polyethylene. Heino,Eeva−Leena.Borealis Polymers Oy,Porvoo,Finland.Annual Transactions of the Nordic Rheology Society,1995
【0155】
クロスオーバー周波数ωc
クロスオーバー周波数ω
cは、G’(ω
c)=G”(ω
c)=G
cが成り立つG’(ω)及びG”(ω)のクロスオーバーポイントから求める。
【0156】
メルトフローレート(MFR2)
メルトフローレートを、230℃、荷重2.16kg(MFR
2)で測定した。メルトフローレートは、温度230℃、荷重2.16kg下において、ISO1133に準じた試験装置から10分間で押し出されるポリマーの量をグラムで示したものである。
【0157】
第2ポリプロピレン部分(PP−B)のメルトフローレートMFR
2(230℃)の
算出:
【数3】
式中、
w(PP1)は第1ポリプロピレン部分(PP−A)、即ち第1反応器(R1)の生成物の重量分率、
w(PP2)は第2ポリプロピレン部分(PP−B)、即ち第2反応器(R2)にて製造されたポリマーの重量分率、
MFR(PP1)は第1ポリプロピレン部分(PP−A)、即ち第1反応器(R1)の生成物のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]、
MFR(R2)は第2反応器(R2)にて得られる生成物、即ち第1ポリプロピレン部分(PP−A)と第2ポリプロピレン部分(PP−B)との混合物のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]であり、
MFR(PP2)は第2ポリプロピレン部分(PP−B)の算出されるメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]である。
【0158】
第3ポリプロピレン部分(PP−C)のメルトフローレートMFR
2(230℃)の
算出:
【数4】
式中、
w(R2)は第2反応器(R2)、即ち第1ポリプロピレン部分(PP−A)と第2ポリプロピレン部分(PP−B)との混合物の重量分率、
w(PP3)は第3ポリプロピレン部分(PP−C)、即ち第3反応器(R3)にて製造されるポリマーの重量分率、
MFR(R2)は第2反応器(R2)の生成物、即ち第1ポリプロピレン部分(PP−A)と第2ポリプロピレン部分(PP−B)との混合物のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]、
MFR(R3)は第3反応器(R3)にて得られる生成物、即ち第1ポリプロピレン部分(PP−A)、第2ポリプロピレン部分(PP−B)、及び第3ポリプロピレン部分(PP−C)の混合物のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]、
MFR(PP3)は第3ポリプロピレン部分(PP−C)の計算されたメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]である。
【0159】
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(MWD)は、以下の方法でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって求められる:
重量平均分子量Mw及び分子量分布(MWD=Mw/Mn、式中、Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である)は、ISO16014−1:2003及びISO16014−4:2003に準じて測定された。屈折率検出器及びオンライン粘度計を備えるWaters社のAlliance GPCV2000装置を、TosoHaas製、3xTSK−ゲルカラム(GMHXL−HT)と共に、1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB、200mg/Lの2,6−ジtertブチル−4−メチル−フェノールで安定化。)を溶媒として、145℃及び1mL/分の一定流速で用いた。分析毎に216.5μLの試料液が注入された。カラムセットは、0.5kg/molから11500kg/molの範囲内の19種のMWDの狭いポリスチレン(PS)標準試料及び特徴のはっきりした1組の広いポリプロピレン標準試料を用い、相対キャリブレーションにより校正した。試料は全て、5〜10mgのポリマーを10mL(160℃)の安定化TCB(移動相と同一)に溶解し、GPC装置に供する前に3時間連続して振盪しつづけて調製した。
【0160】
灰分含有量は、ISO3451−1(1997)に準じて測定する。
【0161】
ICP(誘導結合プラズマ)分析
誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)とは、微量金属の検出に用いられる分析技術である。これは、誘導結合プラズマ(アルゴン)を用いて、各元素に固有の波長の電磁放射線を放出する励起原子及びイオンを生成する発光分光分析の一種である。この発光の強度により、試料中の元素の濃度が示される。
【0162】
用いた装置:Perkin−Elmer製Optima2000DV
【0163】
ペレット中のチタン、アルミニウム及びマグネシウムをICPで求めた。酸標準試料を基準として用いた。
【0164】
試料の調製
試料(試料重量[g])をまずDIN EN ISO3451−1に従って灰化し、その灰を1NのH
2SO
4(試料濃度[mg/l]に溶解した。
【0165】
標準試料:
標準チタン溶液(メルク):1000ppm Ti=ストック溶液A
標準アルミニウム溶液(メルク):1000ppm Al=ストック溶液B
標準マグネシウム溶液(メルク):1000ppm Mg=ストック溶液C
【0166】
標準試料 10ppm Ti、Al、Mg
メスフラスコにて、各ストック溶液1mlを蒸留水で100mlに希釈する。
【0167】
酸標準試料 10ppm Ti、10ppm Al及び10ppm Mg
各1mlのストック溶液A、B及びCを100mlのメスフラスコに入れる。2gのKHSO
4及び25mlの1N H
2SO
4を加え、蒸留水で100mlに希釈する=標準高濃度試料。
【0168】
酸標準試料 1ppm Ti、1ppm Al及び1ppm Mg
各10mlの10ppm Ti、Al、Mg標準試料を100mlのメスフラスコに入れる。2gのKHSO
4及び25mlの1N H
2SO
4を加え、蒸留水で100mlに希釈する=標準低濃度試料。
【0169】
Al、Ti及びMg測定用空試料
25mlのH
2SO
4及び2gのKHSO
4を100mlのメスフラスコに加え、蒸留水で100mlに希釈する=標準Al、Ti、Mg空試料。
【0170】
標準低濃度試料及び標準高濃度試料について得られた結果について、キャリブレーションの概要を調査する。標準試料の「RSD値」(相対標準偏差値)は、常に≦10%であるべきものとする。得られる結果は、使用した標準試料の実際の値に近いものでなければならない。キャリブレーションの概要をチェックする。相関係数が、≧0.997でなければならない。
【0171】
各試料につき3回分析する。得られる結果をチェックし、RSDが≦10%であることを確認する。
【0172】
3回の測定の平均値を用いる。
【0173】
以下のように元素濃度(ppm)を算出する:
【数5】
【0174】
低温キシレン可溶分(XCS、重量%): 低温キシレン可溶分(XCS)の含有量は、ISO16152(第1版、2005年7月1日)に準じて25℃にて求める。
【0175】
溶融温度Tm、結晶化温度Tcは、Mettler TA820示差走査熱量計(DSC)を用い、5から10mgの試料について測定する。結晶化曲線及び溶融曲線を、どちらも30℃から225℃の間を10℃/分で冷却及び加熱走査して得た。溶融及び結晶化温度を、吸熱及び発熱ピークとして検出した。
【0176】
溶融及び結晶化のエンタルピー(Hm及びHc)も、ISO11357−3に準じてDSC法により測定した。
【0177】
段階的等温分離法(SIST)
SIST分析のための等温結晶化を、Mettler TA820 DSCを用い、3±0.5mgの試料について200℃から105℃の間での降温により行った。
(i) 試料を225℃にて5分間溶融した。
(ii) 次いで、80℃/分で145℃まで冷却した。
(iii) 145℃で2時間保持した。
(iv) 次いで、80℃/分で135℃まで冷却した。
(v) 135℃で2時間保持した。
(vi) 次いで、80℃/分で125℃まで冷却した。
(vii) 125℃で2時間保持した。
(viii) 次いで、80℃/分で115℃まで冷却した。
(ix) 115℃で2時間保持した。
(x) 次いで、80℃/分で105℃まで冷却した。
(xi) 105℃で2時間保持した。
【0178】
最終ステップの後、試料を80℃/分で−10℃まで冷却し、冷却した試料を10℃/分の昇温速度で200℃まで加熱して溶融曲線を得た。測定は、すべて窒素雰囲気にて行った。溶融エンタルピーを、温度の関数として記録し、以下の温度間隔において溶融する画分の溶融エンタルピーを測定することで評価した。
【0179】
50から60℃;60から70℃;70から80℃;80から90℃;90から100℃;100から110℃;110から120℃;120から130℃;130から140℃;140から150℃;150から160℃;160から170℃;170から180℃;180から190℃;190から200℃。
【0180】
B.実施例
実施例IE1、IE2、IE3、CE1、及びCE2の重合法に用いる触媒を、以下のように製造した:まず、0.1molのMgCl
2x3EtOHを、不活性条件下、大気圧の反応器中で250mlのデカンに懸濁させた。溶液を−15℃まで冷却し、同温度に保ちながら300mlの冷TiCl
4を加えた。次いで、スラリーの温度をゆっくりと20℃まで上昇させた。この温度にて、0.02molのフタル酸ジオクチル(DOP)をスラリーに加えた。フタル酸エステルの添加後、温度を90分かけて135℃まで上昇させ、スラリーを60分間放置した。次いで、さらに300mlのTiCl
4を加え、120分間温度を135℃に保った。この後、触媒を液体からろ別して、80℃のヘプタン300mlで6回洗浄した。次いで、固体触媒成分をろ過し、乾燥させた。触媒及びその調製法は、例えば特許公報EP491566、EP591224及びEP586390にその概要が記載されている。助触媒としてトリエチルアルミニウム(TEAL)、またドナーとしてのジシクロペンチルジメトキシシラン(Dドナー)を用いた。ドナーに対するアルミニウムの比を表1に示す。
【0181】
【表1】
【0182】
【表2】
【0183】
上記実施例及び比較例からわかるように、本発明にしたがって、モノモーダル及びマルチモーダルのポリプロピレンポリマーを高い生産性で製造することができる。マルチモーダルのポリプロピレンポリマーについて、実施例IE1及びIE2を比較例CE1と比較する。IE1、IE2及びCE1は全て、表2から明らかであるように、同等の特性を有するトリモーダルポリプロピレンポリマーに関する。しかしながら、IE1及びIE2では、使用される触媒当たりの生産性は著しく上昇し、即ちCE1と比較して、IE1における生産性は57%高く、IE2における生産性は43%高い。したがって、不純物、例えば灰分含有量などの不純物の量は、IE1及びIE2において著しく低い。
【0184】
モノモーダルのポリプロピレンポリマーに関しては、IE3をCE2と比較しなければならない。マルチモーダルのポリプロピレンポリマーの場合と同様に、用いられる触媒当たりの生産性は著しく、即ち37%向上した。しかしながら、得られるモノモーダルのポリプロピレンポリマーの特性は同等である。一方で、不純物の量は、CE2に比べてIE3では著しく低い。
【0185】
プレ重合中にエチレンを供給することによって、向上した生産性を有する広範囲のポリプロピレンポリマーを得ることができ、よって、洗浄工程を行わなくても不純物含有量を低くすることができる。