特許第6018312号(P6018312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6018312強度と耐水圧に優れた硬質IPVCパイプ樹脂組成物及び硬質IPVCパイプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018312
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】強度と耐水圧に優れた硬質IPVCパイプ樹脂組成物及び硬質IPVCパイプ
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/04 20060101AFI20161020BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20161020BHJP
   C08K 5/58 20060101ALI20161020BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20161020BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   F16L11/04
   C08L27/06
   C08K5/58
   C08K5/101
   C07C69/54 Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-529710(P2015-529710)
(86)(22)【出願日】2014年7月1日
(65)【公表番号】特表2015-529732(P2015-529732A)
(43)【公表日】2015年10月8日
(86)【国際出願番号】KR2014005832
(87)【国際公開番号】WO2015016491
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2015年1月30日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0090278
(32)【優先日】2013年7月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515028919
【氏名又は名称】ピーピーアイ ピョンファ カンパニー, リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】515028920
【氏名又は名称】ピョンファ パイプ インダストリー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン−テ
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−155901(JP,A)
【文献】 特開平08−003402(JP,A)
【文献】 特開平10−017626(JP,A)
【文献】 特開昭57−139135(JP,A)
【文献】 特開2003−089737(JP,A)
【文献】 特開平11−106438(JP,A)
【文献】 日本規格協会,JISハンドブック27 プラスチックII(材料),2001年 1月31日,第1版,53-55頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
C08F 265/04
F16L 11/04
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
K値が72〜84であるPVC樹脂と、
前記K値が72〜84であるPVC樹脂100重量部に対して、
スズ安定剤(Tin Complex)1重量部〜3重量部と、
衝撃補強剤3重量部〜10重量部と、
メタクリレート系滑剤1重量部〜10重量部と、を含む、強度と耐水圧に優れた硬質IPVCパイプ樹脂組成物。
【請求項2】
前記メタクリレート系滑剤は、ブチルメタクリレート及びメチルメタクリレートを含む、請求項に記載の強度と耐水圧に優れた硬質IPVCパイプ樹脂組成物。
【請求項3】
前記メタクリレート系滑剤は、ブチルメタクリレート及びメチルメタクリレートを1:1〜1:2の重量比で含む、請求項に記載の強度と耐水圧に優れた硬質IPVCパイプ樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜請求項のいずれか1項に記載した樹脂組成物を押出して製造される強度と耐水圧に優れた硬質IPVCパイプ。
【請求項5】
前記パイプの引張強度が50MPa〜60MPaである、請求項に記載の強度と耐水圧に優れた硬質IPVCパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強度と耐水圧に優れた硬質IPVCパイプ樹脂組成物及び硬質IPVCパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、PVCパイプは、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride)樹脂を押出して製造されるパイプである。
【0003】
PVCパイプは、軽く、機械的強度に優れ、耐化学性、耐食性、耐薬品性、断熱性、電気絶縁性などの多くの物性に優れ、寿命が長く、価格が低いため広く使用されている。
【0004】
しかし、PVCパイプを土木、建築材に使用する場合、衝撃、引張の限界により、使用中及び取り扱い中に破損や破裂などの問題が発生していた。これらの問題の原因は、衝撃強度を高めると引張強度が低くなり、引張強度を高めると衝撃強度が低くなるという反比例現象を調節できなかったためである。
【0005】
そのため、最近は、衝撃強度と引張強度を同時に高め、耐水圧性能を向上させるためのPVCパイプ成形用樹脂組成物に対する技術開発の必要性が高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、K値が72〜84であるPVC樹脂に可塑剤を使用せずに押出成形し、機械的物性を実現することができるIPVC(Impact Polyvinyl Chloride)パイプ樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、前記IPVCパイプ樹脂組成物が押出されることによって、引張強度、落錘強度及び耐水圧に優れ、土木、建築、水道、下水用配管として使用する硬質PVCパイプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によると、K値が72〜84であるPVC樹脂を含む強度と耐水圧に優れた硬質IPVCパイプ樹脂組成物が提供される。
【0009】
前記K値が72〜84であるPVC樹脂100重量部に対して、スズ安定剤(Tin Complex)約1重量部〜約3重量部と、衝撃補強剤約3重量部〜約10重量部と、メタクリレート系滑剤約1重量部〜約10重量部とを含む強度と耐水圧に優れた硬質IPVCパイプ樹脂組成物を提供が提供される。
【0010】
前記メタクリレート系滑剤は、ブチルメタクリレート及びメチルメタクリレートを含んでもよい。
【0011】
前記メタクリレート系滑剤は、ブチルメタクリレート及びメチルメタクリレートを約1:1〜約1:2の重量比で含んでもよい。
【0012】
本発明の他の実施形態によると、樹脂組成物を押出して製造される、強度と耐水圧に優れた硬質IPVCパイプが提供される。
【0013】
前記パイプの引張強度は、約50MPa〜約60MPaであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
前記IPVCパイプ樹脂組成物を押出して製造されたPVCパイプは、優れた引張強度、落錘衝撃強度及び耐水圧を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の利点及び特徴、そして、それらを達成する方法は、詳細に後述している各実施例を参照すれば明確になるだろう。しかし、本発明は、以下で開示する各実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現可能である。以下に開示する各実施例は、本発明の開示を完全にし、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであって、本発明は、請求項の範疇によって定義されるものに過ぎない。
【0016】
硬質IPVCパイプ樹脂組成物
本発明の一実施形態は、K値が72〜84であるPVC樹脂を含む強度と耐水圧に優れた硬質IPVCパイプ樹脂組成物を提供する。
【0017】
通常、PVCパイプは、硬質PVC樹脂を押出して製造されるが、K値が66であるPVC樹脂を押出すことによって硬質PVCパイプを製造することがほとんどであった。その一方、K値が72〜84であるPVC樹脂の硬質押出は不可能であるので、多量の可塑剤を混合して押出すことによって、シートやビニールなどの軟質押出製品を製造していた。
【0018】
具体的に、K値が66であるPVC樹脂に比べて、K値が72〜84であるPVC樹脂は機械的強度に優れるので、より高強度のPVCパイプが製造できるにもかかわらず、K値が72〜84であるPVC樹脂は、分子量が大きいため溶融点が相対的に高く、加工時に高温が必要であり、粘度が高いため溶融樹脂流動性が悪いという短所を有し、押出時に押出機に対する高い負荷(torque)により硬質押出が不可能な領域と認識されている。そのため、多量の可塑剤を混合することによってシートやビニールなどの軟質押出製品を製造することがほとんどであった。
【0019】
このとき、可塑剤としては、フタル酸系可塑剤(DOP、DEHP、DINP、DBPなど)やアジピン酸系可塑剤(Adipates、DHEAなど)などを使用した。
【0020】
しかし、多量の可塑剤を混合し、K値が72〜84であるPVC樹脂を押出すことによってパイプを製造する場合、多くの機械的物性が低下するという問題があった。
【0021】
そこで、本発明の硬質IPVCパイプ樹脂組成物は、K値が72〜84であるPVC樹脂とメタクリレート系滑剤を使用することによって、円滑な押出加工によって優れた強度と耐水圧を同時に実現することができる。これにより、K値が72〜84であるPVC樹脂を使用するにもかかわらず、硬質押出製品を製造することができ、可塑剤の使用を排除したので、機械的物性を上昇させることができる。
【0022】
前記PVCパイプ組成物には、ベース樹脂としてK値が72〜84であるPVC樹脂が使用されるが、K値が72〜84であるPVC樹脂は、機械的強度に優れるので、土木、建設資材などに使用可能である。
【0023】
具体的に、K値が84を超えるPVC樹脂は、超高分子樹脂であって、懸濁重合法によって重合されたホモポリマー(homopolymer)を称するが、ホモポリマーを使用した製品はほとんど製造されないため、原料の需給が難しく、加工性が低下するおそれがある。そのため、PVC樹脂のK値が前記範囲を維持すると、費用及び製造工程の面で経済的であり、優れた加工性を実現することができる。
【0024】
具体的に、K値が72〜84であるPVC樹脂100重量部に対して、スズ安定剤(Tin Complex)約1重量部〜約3重量部と、衝撃補強剤約3重量部〜約10重量部と、メタクリレート系滑剤約1重量部〜約10重量部とを含む強度と耐水圧に優れた硬質IPVCパイプ樹脂組成物が提供される。
【0025】
PVCパイプ樹脂組成物は、PVC樹脂100重量部に対して、スズ安定剤(Tin Complex)約1重量部〜約3重量部を含んでもよい。スズ安定剤は、熱安定剤であって、加工過程中と使用期間中にPVC樹脂の物理的及び化学的性質を維持させるものであって、スズ安定剤が約1重量部未満で混合されると作業性が低下し、約3重量部を超えて混合されると、性能向上は微々たるものである一方、生産費用が多くかかり、物性が低下する虞がある。
【0026】
例えば、スズ安定剤は、スズ(TiN)メルカプトアセテート化合物、二硫化物を含んでもよく、加工中に発生する熱分解を最小化することができる。
【0027】
また、スズ安定剤として有機スズ安定剤を使用してもよく、有機スズ安定剤は、ブチルスズ安定剤、オクチルスズ安定剤、メチルスズ安定剤を含んでもよく、耐熱性及び透明性に優れ、PVC樹脂の押出加工時に使用可能である。有機スズ安定剤は、塩化水素(HCl)を不活性状態で捕集することができ、2重結合の発生を抑制したり、酸化及び光線などの外部による変化を抑制することができる。
【0028】
衝撃補強剤は、PVC樹脂100重量部に対して約3重量部〜約10重量部で混合される。
【0029】
衝撃補強剤は、PVC樹脂に混合され、分裂、引張、圧縮、屈曲、衝撃強度を増加させる役割をする。衝撃補強剤としては、アクリル共重合体(Acrylic copolymer)、クロリドポリエチレン(Chloride polyethylene、CPE)などを使用する。
【0030】
例えば、CPEは、PVC樹脂と混合して混合物としてもよく、PVC樹脂との相溶性に優れるので、高い耐衝撃性及び屈曲強度を実現することができる。また、CPEのエチレン基は紫外線に対する劣化防止の役割を果たすことができる。
【0031】
衝撃補強剤は、PVC樹脂100重量部に対して約3重量部未満で混合されると強度増大効果がなく、PVC樹脂100重量部に対して約10重量部を超えて混合されると、混合量の増加に比べて衝撃補強剤の効果増大が微々たるものになり得る。そのため、前記含量範囲の衝撃補強剤を使用することによって強度増大効果を容易に実現することができる。
【0032】
メタクリレート系滑剤は、PVC樹脂に混合され、樹脂の流動性と成形性を増大させる役割をするものである。PVCパイプ樹脂組成物は、PVC樹脂100重量部に対してメタクリレート系滑剤を約1重量部〜約10重量部含んでもよい。
【0033】
メタクリレート系滑剤を使用することによって、メタクリレート系滑剤の圧縮的で且つ柔軟な性質、またK値が72〜84であるPVC樹脂との有機的相溶性により、PVC樹脂の溶融時間を短縮させ、工程時に付与される加熱温度を低下させることができ、PVC樹脂の溶融流動性を増大させ、押出による負荷を低下させることができる。そのため、K値が72〜84であるPVC樹脂を使用するにもかかわらず、硬質のパイプ樹脂組成物を形成することができる。また、メタクリレート系滑剤を使用することによって、可塑剤の使用による機械的物性の低下を最小化することができる。
【0034】
さらに、メチルメタクリレート系滑剤は、K値が72〜84である高分子量のPVC樹脂に混合され、溶融(Fusion)特性を改善させ、溶融樹脂の溶融引張強度(Melt strength)を増大させることによってパイプの押出成形を可能にする。
【0035】
具体的に、PVC樹脂100重量部に対してメタクリレート系滑剤が約1重量部未満で混合された場合、樹脂溶融が速くなり、PVC樹脂との相溶性不足により樹脂の熱的安定性が低下し、押出機シリンダーまたは金型の内部で前記樹脂が炭化されるという問題がある
【0036】
また、PVC樹脂100重量部に対してメタクリレート系滑剤が10重量部を超えて混合された場合、樹脂の溶融が遅くなり、樹脂溶融温度が高くなり、P.V.C.樹脂の粘度が高くなり、成形加工性を低下させるおそれがあり、多くの電力消耗を誘発し、生産性及び作業性を低下させ、生産されたパイプの耐水圧性が低下するという問題がある。
【0037】
そのため、前記範囲内のメタクリレート系滑剤を使用する場合、PVC樹脂との相溶性を高めることができるという点で有利であり、相溶性を有する混練効果を容易に実現することができる。
【0038】
メチルメタクリレート系滑剤は、ブチルメタクリレート及びメチルメタクリレートを含んでもよい。
【0039】
メタクリレート系滑剤は、ブチルメタクリレート及びメチルメタクリレートを約1:1〜約1:2の重量比で含んでもよい。
【0040】
重量比を逸脱してブチルメタクリレート及びメチルメタクリレートを含む場合、相溶性が低下するおそれがある。前記範囲の重量比を維持する場合、相溶性を極大化させ得るという点で有利である。
【0041】
例えば、PVCパイプ樹脂組成物は、ブチルメタクリレート及びメチルメタクリレートを1:2の重量比で含んでもよく、前記重量比を維持する場合、K値が72〜84であるPVC樹脂との相溶性が増大し、組成物の混練効果を向上させることができる。また、前記重量比を維持することによって、押出加工時に一定水準以上の溶融(ゲル化)により円滑な加工性が維持される。一方、前記重量比を逸脱する場合、溶融が遅延され、加工性が低下し得る。
【0042】
具体的に、PVC樹脂に衝撃補強剤として上述したCPEを使用する場合、ブチルメタクリレートとPVC樹脂との相溶性が増加し得る。また、ブチルメタクリレートに比べて多量に使用されるメチルメタクリレートは、溶融温度を調節する加工調剤としての役割をすることができ、衝撃補強剤であるCPEの使用によってPVC樹脂との相溶性が増加するので、組成物の混練時に有利になり得る。
【0043】
そのため、前記重量比を維持するメチルメタクリレート系滑剤を使用することによって、成形性、加工性及び物理的強度に優れた硬質IPVCパイプを生産することができる。
【0044】
硬質IPVCパイプ
本発明の他の実施形態は、前記樹脂組成物を押出して製造される強度と耐水圧に優れた硬質IPVCパイプを提供する。
【0045】
前記樹脂組成物は、上述した通りである。
【0046】
前記樹脂組成物を押出すことによって製造されたパイプの引張強度は、約50MPa〜約60MPaであってもよい。引張強度は、材料の機械的強度を表示する値の一つであって、パイプを引っ張り、その加えられた荷重とパイプの変形した形状を用いて引張強度を求めることができる。
【0047】
具体的に、前記樹脂組成物は、K値が72〜84であるPVC樹脂と、PVC樹脂100重量部に対して、スズ安定剤(Tin Complex)約1重量部〜約3重量部と、衝撃補強剤約3重量部〜約10重量部と、メタクリレート系滑剤約1重量部〜約10重量部とを含む。前記樹脂組成物によって製造されたパイプは、向上した引張強度を実現することができ、落錘衝撃強度及び耐水圧も向上させることができる。
【0048】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成及び作用をより詳細に説明する。ただし、これは、本発明の好ましい例示として提示されたものであって、如何なる意味でも、これによって本発明が制限されると解釈してはならない。
【0049】
ここに記載していない内容は、この技術分野で熟練した者であれば十分に技術的に類推できるものであるので、それについての説明は省略する。
【実施例】
【0050】
実施例1
K値が72であるPVC樹脂を含み、PVC樹脂100重量部に対してスズ安定剤(TIN Complex)2.5重量部、衝撃補強剤としてアクリル共重合体(AIM)3.0重量部、ブチルメタクリレート(BA)及びメチルメタクリレート(MMA)がそれぞれ1:1の重量比で混合された滑剤3.0重量部を含む樹脂組成物を押出し、直径が114mmで、厚さが7.1mmであるパイプを製造した。
【0051】
実施例2
K値が76であるPVC樹脂を含み、PVC樹脂100重量部を使用し、前記滑剤を4.0重量部含むことを除いては、実施例1と同様にパイプを製造した。
【0052】
実施例3
K値が84であるPVC樹脂を含み、PVC樹脂100重量部を使用し、前記滑剤を5.0重量部含むことを除いては、前記実施例1と同様にパイプを製造した。
【0053】
実施例4
ブチルメタクリレート(BA)及びメチルメタクリレート(MMA)がそれぞれ1:2の重量比で混合された滑剤を10重量部含むことを除いては、前記実施例1と同様にパイプを製造した。
【0054】
比較例1
K値が66であるPVC樹脂を含み、PVC樹脂100重量部に対してスズ安定剤(TIN Complex)2.1重量部、衝撃補強剤としてアクリル共重合体(AIM)6.0重量部、加工調剤としてPA(Processing Aid)1.0重量部及びオレフィン系列滑剤1.6重量部を含む樹脂組成物を押出し、直径が114mmで、厚さが7.1mmであるパイプを製造した。
【0055】
比較例2 K値が66であるPVC樹脂を含み、PVC樹脂100重量部に対してCa―Zn(カルシウム−亜鉛系)安定剤4.5重量部、衝撃補強剤としてアクリル共重合体(AIM)6.0重量部、加工調剤としてPA1.0重量部及びオレフィン系列滑剤1.6重量部を含む樹脂組成物を押出し、直径が114mmで、厚さが7.1mmであるパイプを製造した。
【0056】
【表1】
【0057】
<実験例>―パイプの機械的物性の測定
【0058】
1)引張強度:引張圧縮試験機(INSTROH 3369)を用いてKS M ISO 6259―1、6259―2の方法で前記実施例及び比較例のパイプの引張強度を測定した。
【0059】
2)落錘高さ:前記実施例及び比較例のパイプを地面に固定した後、円錐状の錘9Kgを一定高さからパイプに落下させ、パイプが破損する錘高さを落錘高さと判定した。このとき、落錘高さが高いほど、落錘強度に優れる。(ただし、試験は、試験片に対して0℃で60分間状態調節した後で進めなければならない。)
【0060】
3)耐水圧:長期耐水圧試験機(Long Term Hydrostatic Pressure Tester)を用いてKS M ISO 1167の方法で前記実施例及び比較例の耐水圧を測定した。
【0061】
【表2】
【0062】
表2に示すように、K値が72〜84であるPVC樹脂を使用した実施例1〜4の場合、K値が72〜84を逸脱したPVC樹脂を使用した比較例1及び2に比べて引張強度、落錘衝撃強度及び耐水圧に優れることを確認した。
【0063】
また、PVC樹脂100重量部に対し、メタクリレート系滑剤を1重量部未満含む組成物、、及びメタクリレート系滑剤を10重量部を超えて含む組成物でパイプの製造を試みたが、加工性低下及び機械的物性低下などにより、パイプの製造に困難があった。
【0064】
そのため、可塑剤を使用せず、K値が72〜84であるPVC樹脂を押出すことによって硬質P.V.C.パイプを製造するにあたり、メタクリレート滑剤の含量が引張強度、落錘強度及び耐水圧に影響を及ぼすことを確認した。