(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シートバックに内蔵され、インフレータガスが導入されることにより、乗員と車両側部の間の隙間へ車両後方から車両前方に向かって展開膨張するサイドエアバッグを有する車両用サイドエアバッグ装置であって、
上記サイドエアバッグは、互いに向かい合う車内側パネルと車外側パネルの外周縁同士を外周シームラインで接合することで形成され、
上記サイドエアバッグの内部には、腰拘束用チャンバ、肩拘束用チャンバ及び胸拘束用チャンバの3つのチャンバが形成され、
上記サイドエアバッグ内部の車両後方部分には、インフレータガスを噴出するインフレータが設けられ、
上記サイドエアバッグの主要部は、上記肩拘束用チャンバ及び上記腰拘束用チャンバの少なくともいずれかで構成され、
上記サイドエアバッグは、上記主要部の車両後方部分が上記シートバックの内部で膨張するように、該シートバックに取り付けられ、
上記3つのチャンバは、第1バッフルと第2バッフルで区分けされ、
上記第1バッフルは、車幅方向に幅を有する帯状に形成され、上記サイドエアバッグ内部に車両前後方向に延在され、長さ方向後端が該サイドエアバッグの後縁に接合され、
上記第2バッフルは、車幅方向に幅を有する帯状に形成され、上記サイドエアバッグ内部に車両上下方向に延在され、該第2バッフルの中間位置に設定されたバッフルオーバーラップ箇所に、上記第1バッフルの長さ方向前端が上記車内側パネル及び上記車外側パネルと一緒に接続され、該第2バッフルの両端が該サイドエアバッグの外周縁に接合されることを特徴とする車両用サイドエアバッグ装置。
前記バッフルオーバーラップ箇所では、前記インフレータに面する側における前記第2バッフルと前記第1バッフルのなす角度が鋭角に設定されることを特徴とする請求項1に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
前記第1バッフルの長さ方向前端は、前記第2バッフルとの間に間隙が形成され、該間隙が内部ベントホールを構成することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
前記第1バッフルは、1枚のパネル材で形成され、両側縁がそれぞれ前記車内側パネル及び前記車外側パネルに接合されると共に、長さ方向後端が前記外周シームラインに同時接合されることを特徴とする請求項1から3いずれかの項に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
前記第2バッフルは、1枚のパネル材で形成され、両側縁がそれぞれ前記車内側パネル及び前記車外側パネルに接合されると共に、少なくとも前記バッフルオーバーラップ箇所から前記サイドエアバッグの上方へ向けて延在される長さ方向上端が前記外周シームラインに同時接合されることを特徴とする請求項1から4いずれかの項に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
前記第2バッフルは、1枚のパネル材で形成され、両側縁がそれぞれ前記車内側パネル及び前記車外側パネルに接合されると共に、少なくとも前記バッフルオーバーラップ箇所から前記サイドエアバッグの下方へ向けて延在される長さ方向下端が前記外周シームラインに同時接合されることを特徴とする請求項1から4いずれかの項に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
前記インフレータはシリンダー状で、該インフレータの長手方向両端の一方の端部近傍には円周方向に、ガス噴出孔が複数配置されており、他方の端部には点火信号供給用のコネクタが設けられ、
該コネクタが前記サイドエアバッグの外部に露出され、上記ガス噴出孔が該サイドエアバッグの内部に配置されるように、当該サイドエアバッグの車両後方部分には、該サイドエアバッグ内部と外部をつなぐ開口部が設けられ、
該開口部に挿通して上記インフレータが取り付けられていることを特徴とする請求項1から10いずれかの項に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
車内側パネル体と車外側パネル体を含んで形成され、インフレータガスが内部に導入されることにより、乗員と車両側部の間で車両後方から車両前方へ向かって展開膨張するサイドエアバッグを有する車両用サイドエアバッグ装置であって、
上記サイドエアバッグ内部に車両前後方向へ、該サイドエアバッグの前端から後端に向けて、かつ当該後端から距離を空けて形成される前方側上下仕切り部と、
上記サイドエアバッグ内部に車両前後方向へ、該サイドエアバッグの後端から前端に向けて、かつ当該前端から距離を空けて形成され、部分的に上記前方側上下仕切り部と上下に向かい合うオーバーラップ部分を含む後方側上下仕切り部と、
上記サイドエアバッグ内部の上方部分に、これら前方側及び後方側上下仕切り部で仕切って形成される上部バッグ領域と、
上記サイドエアバッグ内部の下方部分に、これら前方側及び後方側上下仕切り部で仕切って形成される下部バッグ領域と、
上記サイドエアバッグの車両前後方向後方に配置され、上記上部バッグ領域にインフレータガスを導入するインフレータとを備え、
上記オーバーラップ部分と上記前方側上下仕切り部との間に、上記上部バッグ領域から上記下部バッグ領域へインフレータガスを流入させ、該下部バッグ領域に導入されたインフレータガスで可撓変形される該オーバーラップ部分及び該前方側上下仕切り部の少なくともいずれか一方で封鎖されるガス通路が形成されることを特徴とする車両用サイドエアバッグ装置。
前記前方側上下仕切り部は、車両前後方向の後端から連続して車両上下方向上方へ向かって延出形成され、前記サイドエアバッグの上端に達する上方延出部を含み、前記上部バッグ領域は、上記上方延出部で仕切られて、上前部バッグ領域と上後部バッグ領域に分割され、上記上方延出部には、上記上後部バッグ領域から上記上前部バッグ領域へインフレータガスを導入するガス導入路が形成されることを特徴とする請求項12または13に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
前記前方側上下仕切り部は第1帯状部材で形成され、該第1帯状部材の幅方向両側縁は、前記車内側パネル体及び前記車外側パネル体にそれぞれ一体に接合され、該第1帯状部材の前端は、これら車内側パネル体及び車外側パネル体と一体に接合されることを特徴とする請求項12〜14いずれかの項に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
前記後方側上下仕切り部は第2帯状部材で形成され、該第2帯状部材の幅方向両側縁は、前記車内側パネル体及び前記車外側パネル体にそれぞれ一体に接合され、該第2帯状部材の後端は、これら車内側パネル体及び車外側パネル体と一体に接合されることを特徴とする請求項12〜15いずれかの項に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
前記第1帯状部材の両側縁は、前記車内側パネル体及び前記車外側パネル体それぞれに含まれる前記下方パネル部の上方部分間を該第1帯状部材が跨ぐ形態で、該下方パネル部に接合され、前記第2帯状部材の両側縁は、上記下方パネル部の上方部分間に該第2帯状部材が挟まれる形態で、これら下方パネル部及び第1帯状部材と一体に前記上方パネル部に接合されることを特徴とする請求項16に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
前記第1帯状部材は、下向きの折り返しで形成された山折り箇所を有し、前記第2帯状部材の両側縁は、上記第1帯状部材の山折り箇所に該第2帯状部材が挟まれる形態で、該第1帯状部材と一体に車内側パネル体及び車外側パネル体に接合されることを特徴とする請求項16〜18いずれかの項に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明にかかる車両用サイドエアバッグ装置の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置の概略構成を示す、第1及び第2バッフルを実線で描いた側面図、
図2は、
図1中、AA−AA線矢視断面図、
図3は、
図1中、AB−AB線矢視断面図、
図4は、
図1中、AC−AC線矢視断面図、
図5は、
図1に示した車両用サイドエアバッグ装置のサイドエアバッグが膨張した状態における
図2または
図3に対応する断面図、
図6は、
図1に示した車両用サイドエアバッグ装置のサイドエアバッグが展開膨張した様子を示す、第1及び第2バッフルを実線で描いた概略側面図、
図7は、
図6中、AD方向矢視図である。本実施形態において、サイドエアバッグの上下方向は、車両の上下方向に対応し、サイドエアバッグの前後方向は、車両前方及び車両後方に対応し、サイドエアバッグの幅方向は、車幅方向に対応する。
【0026】
図6に示すように、車両用サイドエアバッグ装置101は、座席102のシートバック102aに内蔵され、インフレータガスAGが内部に導入されることによって、乗員APと車両側部の間の隙間へ車両後方から車両前方に向かって展開膨張するサイドエアバッグ103を備える。
【0027】
図1に示すように、車両用サイドエアバッグ装置101は主に、サイドエアバッグ103と、後述する開口部114を介してサイドエアバッグ103の外方から内方に挿入され、ガス噴出孔104aがサイドエアバッグ103内部に位置されるインフレータ104とを備えて構成される。インフレータ104は、シートバック102aに固定して設けられる。サイドエアバッグ103は
図2〜
図5に示すように、車内側パネル105と車外側パネル106を含んで構成される。これらパネル105,106は、車両用エアバッグの技術分野で従来周知のように、収納状態から展開膨張可能な柔軟な素材で形成される。
【0028】
車外側パネル106は、サイドエアバッグ103が展開したときに、ドア内面やサイドウインドウ内面などの車両側部に面する。車内側パネル105は、サイドエアバッグ103が展開したとき、乗員APに面する。
【0029】
これらパネル105,106は、互いに向かい合わされ、それらの外周縁同士を、縫製による外周シームラインAs1で互いに一体的に接合した形態とすることにより、インフレータガスAGで膨張する袋としてのサイドエアバッグ103を形成する。車内側パネル105及び車外側パネル106をつなぎ合わせた大きさの単一のパネル体を折り返し、外周シームラインAs1で接合して袋状にする形態も含まれる。
【0030】
サイドエアバッグ103は、折り畳むなどして収納状態とされ、シートバック102a内部に格納される。サイドエアバッグ103は、
図6に示すように展開膨張すると、車両前後方向後方の後縁103aがシートバック102a内に位置し、車両上下方向の上縁103b及び下縁103cがそれぞれ上下方向へ突出しつつ、前縁103dがシートクッション102bに沿って車両前方へ突出する。
【0031】
サイドエアバッグ103内部には、
図1及び
図6に示すように、腰拘束用チャンバAW、肩拘束用チャンバAV及び胸拘束用チャンバAYの3つのチャンバが形成される。これらチャンバAV,AW,AYは、後述する第1バッフル107及び第2バッフル108によって区分けされて、サイドエアバッグ103内部に備えられる。
【0032】
腰拘束用チャンバAWは、シートクッション102b上方に位置して、乗員APの腰部(図中、AHで示す)に面するサイドエアバッグ103の下部に形成される。肩拘束用チャンバAVは、シートバック102aの上部前方に位置して、乗員APの肩部(図中、ASで示す)に面するサイドエアバッグ103の上部に形成される。胸拘束用チャンバAYは、シートバック102a前方であって、腰拘束用チャンバAW及び肩拘束用チャンバAVの間に位置し、乗員APの胸部(図中、AKで示す)に面するサイドエアバッグ103の車両前方部分に形成される。
【0033】
サイドエアバッグ103の膨張・展開は、まず肩拘束用チャンバAVが膨張し、続いて、腰拘束用チャンバAWが展開する。主な拘束は、これら肩部ASと腰部AHが優先される。従って、サイドエアバッグ103の主要部は、少なくとも肩拘束用チャンバAVと腰拘束用チャンバAWのいずれかで構成される。もちろん、両方で構成しても良い。
【0034】
胸拘束用チャンバAYの車両後方側に位置するサイドエアバッグ103の主要部における車両後方部分AUは、サイドエアバッグ103が展開膨張するとき、シートバック102a内部で展開膨張する(
図6参照)。すなわち、サイドエアバッグ103は、シートバック102aに対し、主要部の当該車両後方部分AUがシートバック102a内部で展開膨張するように、取り付け位置が設定される。
【0035】
本実施形態では、肩拘束用チャンバAVが主要部を構成している。もちろん、腰拘束用チャンバAWが主要部を構成するようにしてもよく、あるいは両チャンバAV,AWが主要部を構成するようにしてもよい。このサイドエアバッグ103の主要部の車両後方部分AUには、サイドエアバッグ103内部にガス噴出孔104aが位置するようにして、インフレータガスAGを車両後方部分AU内に噴出するインフレータ104が設けられる。
【0036】
第1バッフル107は、
図2等に示すように、車幅方向に幅を有する帯状に形成される。本実施形態では、第1バッフル107は、1枚のパネル材で形成される。第1バッフル107は、パネル105,106と同様に、折り畳んだ状態から伸展するように、柔軟な素材で形成される。
【0037】
第1バッフル107は、主要部を含む肩拘束用チャンバAVと腰拘束用チャンバAWを区分けする配置で、サイドエアバッグ103の下方に位置されて、サイドエアバッグ103内部に車両前後方向に延在される。第1バッフル107は、幅方向両側縁107aがそれぞれ、縫製による接合ラインAs2によって、車内側パネル105及び車外側パネル106に接合される。第1バッフル107は
図5に示すように、パネル105,106間を車幅方向に広げて、車幅方向の厚みを確保した3次元形状にサイドエアバッグ103を膨張させる。
【0038】
第1バッフル107の長さ方向については、長さ方向後端107bがサイドエアバッグ103の後縁103aに接合される。具体的には、第1バッフル107の長さ方向後端107bは、縫製により、外周シームラインAs1に同時に接合される。第1バッフル107の取り付け位置は、その下方が腰拘束用チャンバAWとなるように設定される。
【0039】
第2バッフル108は、
図1及び
図3に示すように、車幅方向に幅を有する帯状に形成される。本実施形態では、第2バッフル108は、1枚のパネル材で形成される。第2バッフル108も、パネル105,106や第1バッフル107と同様に、折り畳んだ状態から伸展するように、柔軟な素材で形成される。第2バッフル108は、サイドエアバッグ103内部に、おおよそ車両上下方向に延在される。
【0040】
詳細には、第2バッフル108は、中央部分が車両上下方向に沿い、下方部分及び上方部分が車両前方へ向けて屈曲され、全体として弓幹状に形成される。第2バッフル108も、幅方向両側縁108aがそれぞれ、縫製による接合ラインAs3によって、車内側パネル105及び車外側パネル106に接合される。第2バッフル108も、第1バッフル107と同様に、パネル105,106間を車幅方向に広げて(
図5参照)、車幅方向の厚みを確保した3次元形状にサイドエアバッグ103を膨張させる。
【0041】
このようにすることで、主要部の車両後方部分AUがすばやく展開し、シートバック102a内から、主要部の車両前方部分が速やかに押し出され、良好な展開性能を得ることができる。
【0042】
第2バッフル108の両端については、後述するバッフルオーバーラップ箇所109からサイドエアバッグ103の上方に延在する上方部分の上端108bがサイドエアバッグ103の上縁103bに接合され、下方部分の下端108cがサイドエアバッグ103の前端103dに接合される。具体的には、第2バッフル108の両端108b,108cは、縫製により、外周シームラインAs1に同時に接合される。
【0043】
第2バッフル108の取り付け位置は、シートバック102a内部で膨張する主要部の車両後方部分AUが後方に位置し、反対側の前方が胸拘束用チャンバAYとなり、下方部分の下方が腰拘束用チャンバAWとなり、上方部分の上方が肩拘束用チャンバAVとなるように設定される。第2バッフル108の中間位置に、詳細には、中央部分から下方部分に移行する屈曲部108dに、バッフルオーバーラップ箇所109が設定される。
【0044】
バッフルオーバーラップ箇所109では
図1及び
図4に示すように、第2バッフル108と第1バッフル107の長さ方向前端107cが重ね合わされる。第2バッフル108は、第1バッフル107の前端107cを上方から包み込むように重ねられる。バッフルオーバーラップ箇所109では、これら第1バッフル107の前端107cと第2バッフル108との間に間隙が設定され、この間隙は、腰拘束用チャンバAWを胸拘束用チャンバAYに連通させる内部ベントホール110を構成する。
【0045】
バッフルオーバーラップ箇所109での接合については
図4に示すように、第2バッフル108と共に、第1バッフル107の前端107cが、車外側パネル106及び車内側パネル105と一緒に接続される。詳細には、車外側パネル106に対し、互いに重なり合う第2バッフル108の屈曲部108d付近の一方の側縁108a及び第1バッフル107の前端107c付近の一方の側縁107aが一括して接合ラインAs2,As3で接合されると共に、車内側パネル105に対し、互いに重なり合う第2バッフル108の屈曲部108d付近の他方の側縁108a及び第1バッフル107の前端107c付近の他方の側縁107aが一括して接合ラインAs2,As3で接合される。
【0046】
これにより、バッフルオーバーラップ箇所109では、これらバッフル107,108で仕切って、上方に胸拘束用チャンバAYが、下方に腰拘束用チャンバAWが形成される。
【0047】
バッフルオーバーラップ箇所109での縫製手順は、外周シームラインAs1で接合する前に、車内側パネル105及び車外側パネル106のいずれか一方に第1及び第2バッフル107,108を一括して片側の接合ラインAs2,As3で接合し、その後、他方に対して、これらバッフル107,108を一括して反対側の接合ラインAs2,As3で接合する。あるいは、予め第1及び第2バッフル107,108を接合しておき、その後、第1バッフル107を各パネル105,106に接合ラインAs2で接合し、次いで、第2バッフル108を各パネル105,106に接合ラインAs3で接合し、最後に、これらバッフル107,108の端部107b,108b,108cを含めて、パネル105,106同士を外周シームラインAs1で接合してもよい。
【0048】
バッフルオーバーラップ箇所109では、インフレータ104に面する側における第2バッフル108と第1バッフル107のなす角度θが鋭角に設定される。すなわち、サイドエアバッグ103の後縁103aから車両前方に向かって配置される第1バッフル107と、第2バッフル108の屈曲部108dが次第に接近して間隔が狭まるように設定される。
【0049】
このようにすると、第1バッフル107と第2バッフル108を直角に接合する場合に比べて、バッフルオーバーラップ箇所109におけるバッフル107,108同士の接合強度を高めることができる。第1バッフル107と第2バッフル108の接合部付近は、肩拘束用チャンバAVから腰拘束用チャンバAWへインフレータガスAGが高速で流れるので、強度が必要である。2つのバッフル107,108のなす角度θを鋭角にすると、流れ込むインフレータガスAGによるダメージを小さくできる。また、インフレータ104に面する側における第2バッフル108と第1バッフル107のなす角度を鈍角に設定すると、主要部から肩拘束用チャンバAVにわたる容量が大きくなり過ぎ、各チャンバAV,AW,AYの容量を適切に設定できなくなってしまう。
【0050】
インフレータ104はシリンダー形状で、第1バッフル107の後端107b上部付近に形成された開口部114を貫通して配設される。インフレータ104の長手方向両端の一方の端部である上端部近傍には、円周方向に、ガス噴出孔104aが複数配置される。インフレータ104の他方の端部である下端部には、点火信号供給用のコネクタ104bが設けられる。コネクタ104bがサイドエアバッグ103の外部に露出され、ガス噴出孔104aがサイドエアバッグ103の内部に配置されるように、サイドエアバッグ103の主要部の車両後方部分AUには、サイドエアバッグ103内部と外部をつなぐ開口部114が設けられる。開口部114は、二枚重ねとなる第1バッフル107と、車内側パネル105または車外側パネル106のいずれか一方(図示例では、車内側パネル105)とを貫通して形成される。インフレータ104は、開口部114に挿通されて、取り付けられる。
【0051】
インフレータ104は、開口部114を通って中央付近までその一部がサイドエアバッグ103内部に挿し入れられて取り付けられる。サイドエアバッグ103内部へ挿入されたインフレータ104の上端部側に、ガス噴出孔104aが設けられている。インフレータ104にはスタッドボルト(図示せず)が設けられていて、このスタッドボルトを利用してインフレータ104はシートバック102aに固定される。開口部114付近は、外側の車内側パネル105と内側の第1バッフル107とにより二重構造となっていて、剛性が比較的高く設定される。これは、インフレータガスAGの圧力やインフレータ104からの熱に対応するためである。
【0052】
開口部114は、車内側パネル105を貫いて形成される。開口部114には、インフレータ104がその中央付近まで挿し入れられる。インフレータ104は、外周シームラインAs1に長手方向を沿わせるようにした姿勢で取り付けられる。
【0053】
インフレータ104は、ガス噴出孔104aからインフレータガスAGを噴出する。ガス噴出孔104aから噴出されるインフレータガスAGは、まず肩拘束用チャンバAVに充満する。引き続き、インフレータガスAGは、内部ベントホール110を通じて、腰拘束用チャンバAWに流れ込む。インフレータガスAGは、肩拘束用チャンバAVに僅かに遅れて、腰拘束用チャンバAWに充満する。
【0054】
第2バッフル108には、肩拘束用チャンバAVと胸拘束用チャンバAYとを連通する、もう一つの内部ベントホール111が形成される。肩拘束用チャンバAVに充満するインフレータガスAGは、内部ベントホール111を介して、胸拘束用チャンバAYに流入し、充満する。腰拘束用チャンバAW内部に充満したインフレータガスAGは、第1バッフル107と第2バッフル108の間隙で構成される内部ベントホール110を閉じるので、当該腰拘束用チャンバAWからインフレータガスAGが逆流することはない。この内部ベントホール110における逆流防止のメカニズムは、後述する
図17及び
図18を用いて説明される作用と同じである。
【0055】
次に、本実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置101の作用について説明する。製造に際しては
図1〜
図5に示すように、車幅方向に幅を有する第1バッフル107及び第2バッフル108を用い、バッフルオーバーラップ箇所109で、第1バッフル107を上下方向に、逆U字形状もしくは逆V字形状にし、その上側から、同様な形態とした第2バッフル108の屈曲部108d周辺を重ね合わせ、これらバッフル107,108の一側縁107a,108aを車外側パネル106及び車内側パネル105のいずれか一方に接合ラインAs2,As3で接合する。併せて、接合ラインAs2で、第1バッフル107をその長さ方向全長にわたって接合する。次に、接合ラインAs3で、第2バッフル108をその全長にわたって接合する。
【0056】
これにより、第1及び第2バッフル107,108は、車外側パネル106または車内側パネル105のいずれか一方に取り付けられる。
【0057】
次に、第1及び第2バッフル107,108の他側縁107a,108aを車外側パネル106及び車内側パネル105のいずれか他方に接合ラインAs2,As3で接合する。併せて、接合ラインAs2で、第1バッフル107をその長さ方向全長にわたって接合する。次に、接合ラインAs3で、第2バッフル108をその全長にわたって接合する。これにより、第1及び第2バッフル107,108は、車外側パネル106及び車内側パネル105に挟まれた状態で双方に取り付けられる。
【0058】
この際、第1バッフル107の前端107cが、第2バッフル108及び両パネル105,106に接合される。その後、第1バッフル107の後端107b及び第2バッフル108の両端108b,108cを含めて、パネル105,106同士を外周シームラインAs1で接合する。これにより、サイドエアバッグ103が作成される。
【0059】
他の製法としては、まず、第2バッフル108の両側縁108aがそれぞれ、全長にわたって車外側パネル106及び車内側パネル105双方に接合ラインAs3で接合される。次いで、第1バッフル107の前端107cが、第2バッフル108の屈曲部108d周辺に挟み入れられて、第1バッフル107及び第2バッフル108が相互に重ね合わされ、これにより、バッフルオーバーラップ箇所109が設定される。
【0060】
バッフルオーバーラップ箇所109が設定された状態で、第1バッフル107の両側縁107aが車外側パネル106と車内側パネル205の双方に全長にわたって接合ラインAs2で接合される。この接合により、第1バッフル107の前端107cが、第2バッフル108及び両パネル105,106に接合される。
【0061】
この際、第1バッフル107及び第2バッフル108は、車外側パネル106及び車内側パネル105の間で、これらパネル105,106の接離に応じて、U字形状もしくはV字形状に屈曲し得る状態で取り付けられている。これにより、第1及び第2バッフル107,108は、車外側パネル106及び車内側パネル105に挟まれた状態で双方に取り付けられる。
【0062】
その後、第1バッフル107の後端107b及び第2バッフル108の両端108b,108cを含めて、パネル105,106同士を外周シームラインAs1で接合する。これにより、サイドエアバッグ103が作成される。
【0063】
インフレータ104が作動してインフレータガスAGが噴出されると、インフレータガスAGは、肩拘束用チャンバAV及び腰拘束用チャンバAWに流れ、これらチャンバAV,AWを膨張させて、サイドエアバッグ103の展開膨張が開始する。サイドエアバッグ103の主要部の車両後方部分AUがシートバック102a内で膨張していくと同時に、肩拘束用チャンバAV全体に瞬時にインフレータガスAGが充満する。腰拘束用チャンバAWにも、内部ベントホール110を通じて、インフレータガスAGが瞬時に充満する。これにより、乗員APの肩部AS及びその周辺部と、腰部AH及びその周辺部が早期にかつ迅速に保護される。
【0064】
これら肩拘束用チャンバAV及び腰拘束用チャンバAWに充満したインフレータガスAGは引き続き、内部ベントホール111を介して、胸拘束用チャンバAYに流入し、僅かな遅延を伴って当該胸拘束用チャンバAYの膨張が完了する。これにより、乗員APの胸部AK及びその周辺部が保護される。
図6及び
図7に示すように、3つのチャンバAV,AW,AYはいずれも、幅を有するバッフル107,108により車幅方向に厚みをもって膨張し、3次元形状のサイドエアバッグ103として乗員APを保護することができる。
【0065】
本実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置101では、サイドエアバッグ103内部に第1バッフル107及び第2バッフル108を組み込んでいる。サイドエアバッグ103内部で、第1バッフル107は、車両前後方向に延在され、長さ方向後端107bがサイドエアバッグ103の後縁103aに接合される。第2バッフル108は、車両上下方向に延在され、第2バッフル108の中間位置に設定されたバッフルオーバーラップ箇所109で、第1バッフル107の長さ方向前端107cと共に車内側パネル105及び車外側パネル106と一緒に接続される。第2バッフル108の両端108b,108cがサイドエアバッグ103の外周縁に接合される。第1バッフル107と第2バッフル108との合理的な配置によって、サイドエアバッグ103は、車幅方向の厚みを確保した3次元形状となり、乗員APの肩部AS、腰部AH及び胸部AKに対応したチャンバAV,AW,AYを一挙に形成することができる。また、2つのバッフル107,108を追加するだけであって、少ない部品点数で生産性の高いサイドエアバッグ103を構成することができる。
【0066】
なお、各バッフル107,108の形状は、サイドエアバッグ103の外周縁と接合される部位に向かって、徐々に幅狭となる先細り形状に形成してもよい。このように構成すると、サイドエアバッグ103の外周縁での接合性能を高めることができ、インフレータガスAGのリークや、予測不能なバーストなどを防止することができる。
【0067】
バッフルオーバーラップ箇所109では、サイドエアバッグ103の後縁103aから車両前方に向かって配置される第1バッフル107と、第2バッフル108の屈曲部108dが次第に接近して間隔が狭まるように、インフレータ104に面する側における第2バッフル108と第1バッフル107のなす角度θが鋭角に設定される。これにより、バッフルオーバーラップ箇所109におけるバッフル107,108同士及びパネル105,106同士の接合強度を高めることができる。また、逆止弁効果も高めることができる。
【0068】
図8には、上記第1実施形態の第1変形例が示されている。
図8は、
図2及び
図3に対応する断面図である。上記実施形態では、第1及び第2バッフル107,108はいずれも、1枚のパネル材で形成されているが、少なくとも2枚以上の複数枚のパネル片112で形成するようにしてもよい。
【0069】
すなわち、バッフル107,108は、ほぼ同じ長さかつほぼ同じ幅の複数枚のパネル片112を幅方向に並べて、これらを互いに接合して形成される。図示例では、2枚のパネル片112でバッフル107,108を形成する場合が示されている。これらパネル片112は、一側縁112a同士が長さ方向に互いに接合される。これにより、中央部に接合部を有する、上記実施形態と同様のバッフル107,108が形成される。
【0070】
第1バッフル107については、車内側パネル105と車外側パネル106の間で、これらパネル片112の一側縁112a同士が長さ方向に互いに接合されることになり、第1バッフル107の各パネル片112の他側縁107aがそれぞれ車内側パネル105及び車外側パネル106に接合され、第1バッフル107の長さ方向後端107bが外周シームラインAs1に同時接合される。
【0071】
第2バッフル108については、車内側パネル105と車外側パネル106の間で、これらパネル片112の一側縁112a同士が長さ方向に互いに接合されることになり、第2バッフル108の各パネル片112の他側縁108aがそれぞれ車内側パネル105及び車外側パネル106に接合され、第2バッフル108の、少なくともバッフルオーバーラップ箇所109からサイドエアバッグ103の上方へ向けて延在される長さ方向上端108bが外周シームラインAs1に同時接合される。
【0072】
このような第1変形例であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。第1変形例では、各パネル片112を車外側及び車内側パネル105,106に予め接合しておき、外周シームラインAs1で接合する前にパネル片112同士を接合してバッフル107,108を形成することができるので、パネル片112を接合した車内側及び車外側パネル105,106を別々に取り扱うことができ、1枚のパネル材でバッフル107,108を形成する上記実施形態よりも、サイドエアバッグ103の組立作業性を向上することができる。
【0073】
図9には、上記第1実施形態の第2変形例が示されている。
図9は、
図1に対応する側面図である。第2変形例では、インフレータ104全体がサイドエアバッグ103の内部に収容されている。従って、インフレータ104は外部には露出されない。車両前後方向に延在される第1バッフル107の長さ方向後端107bには、インフレータ104の貫通孔115が設けられる。貫通孔115に挿通されたインフレータ104は、上部が肩拘束用チャンバAV内に、下部が腰拘束用チャンバAW内に位置される。貫通孔115の周囲には、腰拘束用チャンバAW内に設けられる可撓性スリーブ113が接合される。インフレータ104の外周には、金属製のディフューザ120が設けられる。ディフューザ120は、中空筒状で、インフレータ104の外周をほぼ全て覆っている。ディフューザ120の上端及び下端双方からインフレータガスAGが噴出される。可撓性スリーブ113の下端に開口部113aが設けられる。可撓性スリーブ113は、第1バッフル107の貫通孔115を貫通して腰拘束用チャンバAW内に位置するインフレータ104の下部を包囲して設けられる。
【0074】
可撓性スリーブ113の開口部113aの周囲は、周辺に作用するインフレータガスAGの圧力で変形し、チャンバAV,AW内のガス圧力がインフレータ104からのガス噴出力に打ち勝った段階で、ディフューザ120の筒の中に入り込んで開口部113aが封鎖される。これにより、第1バッフル107で仕切った肩拘束用チャンバAV及び腰拘束用チャンバAWのいずれか一方へ流入したインフレータガスAGが他方へ向かって流出することを阻止する逆止弁として機能させることができる。従って、各チャンバAV,AWの内圧を適切かつ容易にコントロールすることができ、乗員保護性能を向上することができる。
【0075】
図10には、上記第1実施形態の第3変形例が示されている。
図10は、
図1に対応する側面図である。
図10中の、AA−AA線矢視断面、AB−AB線矢視断面、AC−AC矢視断面はそれぞれ、
図2〜
図4と同様である。図示例では、第1及び第2バッフル107,108は、1枚のパネル材で形成されている。
【0076】
第3変形例では、主要部が腰拘束用チャンバAWで構成される場合である。従って、第1バッフル107は、上記実施形態と異なり、腰拘束用チャンバAWと肩拘束用チャンバAVを区分けする配置で、サイドエアバッグ103の上方に位置されて、サイドエアバッグ103内部に車両前後方向に延在される。第3変形例では、第2バッフル108も、
図1に示した実施形態とほぼ上下逆に配置される。
【0077】
すなわち、第2バッフル108については、バッフルオーバーラップ箇所109からサイドエアバッグ103の下方へ向けて延在する下方部分の下端108cがサイドエアバッグ103の下縁103cに接合され、上方部分の上端108bがサイドエアバッグ103の上縁103bに接合される。サイドエアバッグ103の作成や展開膨張作用は、内部ベントホール110,111によるインフレータガスAGの導入が腰拘束用チャンバAWから肩拘束用チャンバAV及び胸拘束用チャンバAYに向けて行われることを除き、上記実施形態とほぼ同様であって、この第3変形例にあっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することは勿論である。
【0078】
第3変形例についても、上記第1及び第2変形例を適用することができる。すなわち、バッフル107,108は複数のパネル片112を接合して形成してもよく、例えば第2バッフル108については、車内側パネル105と車外側パネル106の間で、これらパネル片112の一側縁112a同士が長さ方向に互いに接合されることになり、第2バッフル108の各パネル片112の他側縁108aがそれぞれ車内側パネル105及び車外側パネル106に接合され、第2バッフル108の、少なくともバッフルオーバーラップ箇所109からサイドエアバッグ103の下方へ向けて延在される下端108cが外周シームラインAs1に同時接合される。第1バッフル107も同様である。これにより、第1変形例と同様の作用効果を得ることできる。
【0079】
次に、本発明に係る車両用サイドエアバッグ装置の第2実施形態〜第4実施形態について、添付図面を参照して説明する。これら実施形態は、第1実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置の改良に関する。
【0080】
これら実施形態は特に、サイドエアバッグの内部を複数のチャンバに仕切る仕切りに、インフレータガスの逆流を阻止する機能を持たせることにより、少ない部品点数で、複数チャンバの形成と各チャンバの内部圧力調整を一挙に確保することが可能な車両用サイドエアバッグ装置に関する。
【0081】
従来の車両用サイドエアバッグ装置は、座席に内蔵され、インフレータからインフレータガスが導入されることにより、乗員と車両側部の間で車両後方から車両前方へ向かって展開膨張するサイドエアバッグを有している。サイドエアバッグでは、膨張形態を調整したり、内部を複数のチャンバに分割する目的で、テザーや分離壁を備える場合がある。この種の車両用サイドエアバッグ装置については例えば、特許文献3(特開2000−108835号公報)が知られている。
【0082】
特許文献3の「エアバッグ装置」は、エアバッグが所定の形状に膨張展開するように規制するテザーベルトとエアバッグの縫着部が、高圧のガスにより破損させないと共に、エアバッグ装置の小型・軽量化を図ることを課題とし、衝突時の衝撃によりインフレータより噴出される高圧ガスによりエアバッグを膨張展開して、衝突時の衝撃より乗員を保護するエアバッグ内に、エアバッグが所定の形状に膨張展開するよう規制する少なくとも1個のテザーベルトを設け、エアバッグの基布とテザーベルトとの固定部を、テザーベルトの長手方向に並設した第1縫着部と第2縫着部よりなる2列の縫着部により縫着して、テザーベルトの端部側に位置する第1縫着部より中央部側に寄った位置にある第2縫着部を、エアバッグの膨張時にテザーベルトに付加される引張力に対して破断もしくはほつれ易く構成している。
【0083】
また、一般に、エアバッグ内部の内圧を調整するために、インフレータガスの逆流防止手段を備えることが知られている。特許文献4(特開2001−63502号公報)の「エアバッグ用逆止弁及びエアバッグ」は、自動車乗員拘束システムのエアバッグ用逆止弁として第1室と第2室の間に接続ホースを設け、接続ホース中に中布を配置する。中布により接続ホースが第1室と第2室との間の流体通路と、第2室と接続する圧力室とに分割される。第2室の内圧が第1室の内圧に比較して低いときは中布が流体通路を開放し、第2室の内圧の方が高いときは中布が圧力室に働く内圧によって流体通路を閉鎖するようになっている。
【0084】
特許文献5(特表2009−537360号公報)の「自動車用エアバッグ」は、流路を有し、それにより2つの圧力室を互いに接続し、その中を流媒体、具体的にはガスが、一方の圧力室から流路を通って他方の圧力室まで順方向に流れる、自動車用エアバッグに関し、例えば、側方の衝撃荷重に対するエアバッグの適合性を高めるために、流路が逆流防止手段を備え、逆流防止手段が、流媒体の順方向への流れを可能にする一方で、順方向とは反対の遮断方向への流媒体の流れを大部分防止するようになっている。
【0085】
特許文献3のようにこれまで、パネルを主体として構成されるサイドエアバッグの内部を、複数のチャンバ(領域)に分割することが試みられている。複数のチャンバを備えることができれば、それらチャンバの内部圧力を適宜に調整可能として、例えば、乗員の腰部や肩部、胸部などを、各チャンバで適切に受け止めて、乗員保護性能を高めることができる。
【0086】
しかしながら、複数のチャンバを形成するとき、追加部品としてテザーや分離壁を採用すると、これら分離壁等とパネルとの接合部が錯綜し、サイドエアバッグ自体の製作が煩雑になることや、接合部に高い強度を確保するのが難しいことから、複数のチャンバを備えるサイドエアバッグを実現することはきわめて困難であった。
【0087】
他方、複数のチャンバの内部圧力を調整する場合、インフレータガスの逆流を阻止する弁構造などを備えることが知られている(特許文献4及び5参照)が、分離壁等に加えて、別途さらに弁構造を設けることは、サイドエアバッグ装置の構成部品がさらに増加してしまう。構成部品が増えると、上述したサイドエアバッグ自体の製作がますます煩雑化し、従ってまた、接合部の強度確保もさらに困難になるという課題があった。
【0088】
そこで、本発明に係る車両用サイドエアバッグ装置の改良(第2〜第4実施形態)は、サイドエアバッグの内部を複数のチャンバに仕切る仕切りに、インフレータガスの逆流を阻止する機能を持たせることにより、少ない部品点数で、複数チャンバの形成と各チャンバの内部圧力調整を一挙に確保することが可能な構成を提供する。
【0089】
以下に、本発明にかかる車両用サイドエアバッグ装置の第2実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図11は、上記第1実施形態と共通する、本明細書を通じて説明される車両用サイドエアバッグ装置の概略を示す側面図、
図12は、第2実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置の側面図、
図13は、
図11に示した車両用サイドエアバッグ装置を構成する部品の組み付け状態を説明する説明図、
図14は、
図12中、A1−A1線矢視断面図、
図15は、
図12中、A2−A2線矢視断面図、
図16は、
図12中、A3−A3線矢視断面図、
図17は、
図12に示した車両用サイドエアバッグ装置に備えられるガス通路にインフレータガスが流通する様子を示す、A1−A1断面付近の要部拡大斜視図、
図18は、
図17に示したガス通路が封鎖された様子を示す要部拡大断面図である。
【0090】
図11に示すように、車両用サイドエアバッグ装置1は、座席2のシートバック2aに内蔵され、インフレータから噴出されるインフレータガスが内部に導入されることによって、乗員と車両側部の間で車両後方から車両前方へ向かって展開膨張するサイドエアバッグ3を備える。
【0091】
図12に示すように、車両用サイドエアバッグ装置1は主に、サイドエアバッグ3と、サイドエアバッグ3内部に設けられるインフレータ4とを備えて構成される。インフレータ4は、シートバック2aに固定して設けられ、車両前後方向後方に配置される。
【0092】
第2実施形態に採用されるサイドエアバッグ3は
図12〜
図18に示すように、車内側パネル体5と車外側パネル体6を含んで構成される。これらパネル体5,6は、車両用エアバッグの技術分野で従来周知のように、収納状態から展開膨張可能な、柔軟で可撓変形自在な各種の素材で形成される。車外側パネル体6は、サイドエアバッグ3が展開したときに、ドア内面やサイドウインドウ内面などの車両側部に面する。車内側パネル体5は、サイドエアバッグ3が展開したときに、乗員側に面する。
【0093】
これら車内側パネル体5及び車外側パネル体6は例えば、一続きで一体に形成される。この場合、車内側パネル体5及び車外側パネル体6は、それらの境界(つなぎ目)に折り線Fが設定される。車内側パネル体5及び車外側パネル体6は、折り線Fに関して、線対称な形態で形成され、折り線Fで折り畳むことにより、ぴったりと重ね合わされる。サイドエアバッグ3をシートバック2aに内蔵するとき、折り線F位置(境界位置)が車両後方側となり、折り線Fと反対側が車両前方側となるように、サイドエアバッグ3の取り付けが設定される。
【0094】
車内側パネル体5及び車外側パネル体6は、別々に形成して、境界位置で一体的に接合するようにしてもよい。
【0095】
第2実施形態では、車内側パネル体5及び車外側パネル体6はそれぞれ、上方パネル部5a,6aと下方パネル部5b,6bを含む。上方パネル部5a,6aは車両上下方向の上方に位置され、下方パネル部5b,6bは車両上下方向の下方に位置され、これらパネル部5a,5b,6a,6bを上下につなぎ合わせることによって、車内側パネル体5及び車外側パネル体6がそれぞれ形成される。上方パネル部5a,6aは、乗員の肩部や胸部の位置に合わせられ、下方パネル部5b,6bは、乗員の腰部の位置に合わせられる。
【0096】
上方パネル部5a,6aと下方パネル部5b,6bとの接合については、
図12及び
図14に示すように、下方パネル部5b,6bを内側にし、上方パネル部5a,6aを外側にして、上方パネル部5a,6aの下方部分と下方パネル部5b,6bの上方部分とを互いに重ね合わせ、上方パネル部5a,6aの下端部を基準としてその若干上方の接合ラインUで、車両前方側の前端から車両後方側の後端に向かって直線状に接合する。
【0097】
サイドエアバッグ3は、上方及び下方パネル部5a,5b,6a,6bから形成される車内側及び車外側パネル体5,6を、それらパネル体5,6の外周縁に沿う外周接合ラインGで接合して封鎖することにより、膨張可能な袋状に形成される。
【0098】
サイドエアバッグ3内部には
図12及び
図14に示すように、後述する第1帯状部材8によって前方側上下仕切り部が形成される。前方側上下仕切り部は、接合ラインUに沿って車両前後方向へ、サイドエアバッグ3の後端から距離を空けて、サイドエアバッグ3の前端から後端に向けて形成される。
【0099】
前方側上下仕切り部はパネル体5,6と同様に、柔軟で可撓変形自在な第1帯状部材8で形成される。図示例では、第1帯状部材8は、二枚の帯片8aを重ね合わせ、それらの一側縁をシームラインs1で互いに接合することによって形成される。第1帯状部材8を構成する帯片8aは、シームラインs1で接合された一側縁に対し、他側縁同士は、広げることができるように形成される。
【0100】
第1帯状部材8は、長さ方向が車両前後方向に向けられ、幅方向がパネル体5,6同士の重ね合わせ方向に向けられる。第1帯状部材8の幅方向両側縁はそれぞれ、車内側パネル体5(5a,5b)及び車外側パネル体6(6a,6b)に一体に接合される。第1帯状部材8の前端は、外周接合ラインGで車内側パネル体5及び車外側パネル体6と一体に接合される。第1帯状部材8の後端8bは、サイドエアバッグ3の後端から距離を空けた状態で途切れている。
【0101】
サイドエアバッグ3内部には、後述する第2帯状部材9によって後方側上下仕切り部が形成される。後方側上下仕切り部は、接合ラインUに沿って車両前後方向へ、サイドエアバッグ3の前端から距離を空けて、サイドエアバッグ3の後端から前端に向けて形成される。
【0102】
後方側上下仕切り部は
図12及び
図14に示すように、前方側上下仕切り部の下側に位置される部分を含んで形成される。後方側上下仕切り部は、前方側上下仕切り部の下に潜り込み、部分的に当該前方側上下仕切り部と上下に向かい合うオーバーラップ部分10を含むように形成される。
【0103】
後方側上下仕切り部は、前方側上下仕切り部と同様に、柔軟で可撓変形自在な帯片9aで形成される。図示例では、第2帯状部材9も、第1帯状部材8と同様に、二枚の帯片9aを重ね合わせ、それらの一側縁をシームラインs2で互いに接合することによって形成される。第2帯状部材9の帯片9aも、シームラインs2で接合された一側縁に対し、他側縁同士は、広げることができるように形成される。
【0104】
第2帯状部材9は、長さ方向が車両前後方向に向けられ、幅方向がパネル体5,6同士の重ね合わせ方向に向けられる。第2帯状部材9の幅方向両側縁はそれぞれ、車内側パネル体5(5a,5b)及び車外側パネル体6(6a,6b)に一体に接合される。第2帯状部材9の後端は、外周接合ラインGで車内側パネル体5及び車外側パネル体6と一体に接合される。第2帯状部材9の前端9bは、サイドエアバッグ3の前端から距離を空けた状態で途切れている。
【0105】
サイドエアバッグ3内部には、後方側上下仕切り部のオーバーラップ部分10によって車両前後方向前端から後端まで連続する前方側及び後方側上下仕切り部により、接合ラインUに沿って仕切って、上方部分に上部バッグ領域Tが形成され、下方部分に下部バッグ領域Xが形成される。上部バッグ領域Tは上方パネル部5a,6aで形成され、下部バッグ領域Xは下方パネル部5b,6bで形成される。
【0106】
サイドエアバッグ3が展開膨張すると、上部バッグ領域Tは乗員の肩部及び胸部を受け止め、下部バッグ領域Xは腰部を受け止める。
【0107】
図14には、サイドエアバッグ3を構成する車内側及び車外側パネル体5,6の上方パネル部5a,6a、下方パネル部5b,6b、並びに前方側及び後方側上下仕切り部の第1帯状部材8、第2帯状部材9の、オーバーラップ部分10における接合構造の一例が示されている。当該接合構造を、サイドエアバッグ3の製作手順に従って説明する。先ず、帯片9a同士を接合(s2参照)した第2帯状部材9を作成する(図中(I)参照)。
【0108】
次の工程に移る前に、車内側パネル体5及び車外側パネル体6の各下方パネル部5b,6bの外側に、第1帯状部材8の各帯片8aをそれぞれ重ね合わせ、各帯片8aと各下方パネル部5b,6b同士を接合しておいてもよい(図示せず)。このとき、一方の帯片8aの車内側パネル体5への接合と、他方の帯片8aの車外側パネル体6への接合は、別々に行い、パネル体5,6同士の接合は行わない。この段階では、第1帯状部材8は作成されていない。
【0109】
次に、車内側パネル体5及び車外側パネル体6の下方パネル部5b,6b同士の間に第2帯状部材9を挟み込み、第2帯状部材9を接合ラインU位置に位置合わせする。このとき、第2帯状部材9は、上向きに広げられるように、帯片9a同士のシームラインs2が下にされ、かつ当該シームラインs2が接合ラインUよりも下方に位置される。
【0110】
第1帯状部材8の各帯片8aの外側に各パネル体5,6の上方パネル部5a,6aをそれぞれ重ね合わせ、車内側パネル体5の上方パネル部5aから第2帯状片9の一方の帯片9aに亘り一括して接合し、また、車外側パネル体6の上方パネル部6aから第2帯状片9の他方の帯片9aに亘り一括して接合する(図中(II)参照)。
【0111】
当該接合により、車内側パネル体5と車外側パネル体6にそれぞれ一本ずつ、二本の接合ラインUが形成される。このようにすると、第2帯状部材9のシームラインs2を境界として、車内側では、第2帯状部材9の一方の帯片9a、車内側パネル体5の下方パネル部5b、第1帯状部材8の一方の帯片8a、並びに車内側パネル体5の上方パネル部5aが順次重なった状態で一体化され、車外側では、第2帯状部材9の他方の帯片9a、車外側パネル体6の下方パネル部6b、第1帯状片8の他方の帯片8a、並びに車外側パネル体6の上方パネル部6aが順次重なった状態で一体化される。
【0112】
最後に、第1帯状部材8の帯片8aの上端部で、第1帯状部材8の帯片8a同士を接合(第1帯状部材8を形成するシームラインs1参照)する(図中(III)参照)。
【0113】
これにより、第1帯状部材8が作成されると同時に、下方パネル部5b,6bに上方から被さる第1帯状部材8に挟み込まれた状態となる第2帯状部材9によって、後方側上下仕切り部に、前方側上下仕切り部と上下に向かい合うオーバーラップ部分10が形成される。このとき、第1帯状部材8は、下向きに広げられるように、帯片8a同士のシームラインs1が上になるようにして、当該シームラインs1が接合ラインUよりも上方に位置される。また、特に図示しないが、帯片8aに重ねるように並べて、補強布を設けるようにしても良い。
【0114】
この最終形態では、要するに、前方側上下仕切り部を形成する第1帯状部材8は、当該第1帯状部材8の両側縁が車内側パネル体5及び車外側パネル体6それぞれの各下方パネル部5b,6bの上方部分間を跨ぐ形態で、下方パネル部5b,6bに接合される。第2帯状部材9は、下方パネル部5b,6bの上方部分間に挟まれる形態で、当該第2帯状部材9の両側縁が、下方パネル部5b,6b及び第1帯状部材8と一体に上方パネル部5a,6aに接合されて、オーバーラップ部分10が形成される。
【0115】
サイドエアバッグ3は、上述したように車内側パネル体5及び車外側パネル体6に、前方側上下仕切り部及び後方側上下仕切り部材を形成した状態で、当該パネル体5,6同士が外周接合ラインGで接合されることにより作成される。
【0116】
上述したインフレータ4は、上部バッグ領域TにインフレータガスHを導入するように設けられる。具体的には、インフレータ4は、サイドエアバッグ3内部の上部バッグ領域Tに配置される。
【0117】
可撓変形自在な第2帯状部材9により、少なくとも後方側上下仕切り部のオーバーラップ部分10は可撓変形自在に形成され、このオーバーラップ部分10と前方側上下仕切り部との間には、
図14及び
図17に示すように、これらの上下の向かい合わせによって、中空筒状のガス通路11が形成される。
【0118】
このガス通路11は、後方側上下仕切り部の上方で途切れている前方側上下仕切り部の後端によって、上部バッグ領域Tに連通する入口11aが形成され、前方側上下仕切り部の下方で途切れている後方側上下仕切り部の前端によって、下部バッグ領域Xに連通する出口11bが形成される。
【0119】
上部バッグ領域Tに導入されたインフレータガスHは、上部バッグ領域Tを広げて膨張させる。上部バッグ領域Tを広げるインフレータガスHは、ガス通路11の入口11aを開き、ガス通路11を広げてその内部に流入する。オーバーラップ部分10及び前方側上下仕切り部が可撓変形自在なので、ガス通路11は、流通するインフレータガスHにより広げられ、ガス通路11の出口11bが開かれる。インフレータガスHは出口11bから下部バッグ領域Xへ導入される。
【0120】
下部バッグ領域Xが展開膨張し、下部バッグ領域Xに面するオーバーラップ部分10にインフレータガスHが作用すると、具体的にはガス圧力が作用すると、オーバーラップ部分10の第2帯状部材9が
図18に示すように、前方側上下仕切り部の第1帯状部材8に向かって押し上げられて可撓変形される。
【0121】
ガス通路11の寸法に関し、第2帯状部材9で形成されるガス通路11の下半分は、シームラインs2を含む二本の接合ラインU間で規定され、下方パネル部5b,6bの上部の第1帯状部材8で形成されるガス通路11の上半分は同様に、シームラインs1と二本の接合ラインU間で規定される。ガス通路11の上半分の寸法と下半分の寸法はほぼ等しく設定され、インフレータガスHで可撓変形されて押し上げられる第2帯状部材9は、第1帯状部材8に密接される。この結果、ガス通路11は封鎖される。
【0122】
次に、第2実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置1の作用について説明する。インフレータ4から噴出されるインフレータガスHは、主として、車両上下方向下方へ向かって噴出されるように設定される。インフレータガスHは、最初に上部バッグ領域Tに導入され、上部バッグ領域Tが展開膨張を開始する。同時に、インフレータガスHは、上記のように主に下方へ向かって流れるので、かなりの量がガス通路11に流入して下部バッグ領域Xに導入される。下部バッグ領域Xは、上部バッグ領域Tの展開膨張と共に、展開膨張していく。
【0123】
インフレータガスHは、下部バッグ領域Xに充満していき、当該下部バッグ領域Xの圧力が高まっていく。下部バッグ領域Xの圧力が設定圧力、具体的には、オーバーラップ部分10を上向きに可撓変形させて前方側上下仕切り部に密接させる圧力に達すると、ガス通路11が封鎖され、下部バッグ領域XへのインフレータガスHの導入が遮断されるとともに、上部バッグ領域Tへの逆流が阻止される。
【0124】
前方側上下仕切り部の第1帯状部材8には、下部バッグ領域XへのインフレータガスHの導入が遮断された後、上部バッグ領域Tに導入されたインフレータガスHがさらに作用し、第1帯状部材8がオーバーラップ部分10の第2帯状部材9へ向かって押し下げられるように可撓変形されて、これによりガス通路11の封鎖が強められる。
【0125】
インフレータガスHは、その後も上部バッグ領域Tに充満していき、当該上部バッグ領域Tの展開膨張が継続される。すなわち、乗員の腰部を受け止める比較的小容量の下部バッグ領域Xが設定圧力で膨張を完了し、ガス通路11が封鎖される。その後僅かなタイミングだけ遅らせて、乗員の肩部及び胸部を受け止める比較的大容量の上部バッグ領域Tが設定圧力で膨張を完了する。
【0126】
第2実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置1では、サイドエアバッグ3内部を上下に仕切って上部及び下部バッグ領域T,Xを形成する前方側及び後方側上下仕切り部に、オーバーラップ部分10を設定し、このオーバーラップ部分10を利用して、封鎖可能なガス通路11を形成していて、ガス通路11を介して下部バッグ領域Xに導入されたインフレータガスHで当該ガス通路11を封鎖することができ、サイドエアバッグ3内部に複数のバッグ領域T,Xを形成する機能と、インフレータガスHの流れを制御してこれらバッグ領域T,Xの内部圧力を調整する機能を一挙に確保することができる。
【0127】
殊に、サイドエアバッグ3の内部を複数のバッグ領域T,Xに仕切る仕切り(第1帯状部材8及び第2帯状部材9)に、インフレータガスの逆流を阻止する機能を持たせて、少ない部品点数で、複数のバッグ領域T,Xの形成と各バッグ領域T,Xの内部圧力調整を一挙に確保することができる。
【0128】
この場合、必要部品としては、前方側及び後方側上下仕切り部(第1及び第2帯状部材8,9)の二部品でよく、構造が簡単であって、組立作業性に優れ、高い生産性を確保することができる。
【0129】
前方側上下仕切り部を形成する第1帯状部材8は、幅方向両側縁を車内側及び車外側パネル体5,6に一体に接合し、前端を外周接合ラインGでこれらパネル体5,6に一体に接合するだけでよく、単純で簡単な組立作業でサイドエアバッグ3に組み込むことができ、また組立作業が複雑でないので、高い接合強度で接合することができ、性能が安定したサイドエアバッグ3を高い品質で製造することができる。
【0130】
後方側上下仕切り部を形成する第2帯状部材9は、幅方向両側縁を車内側及び車外側パネル体5,6に一体に接合し、後端を外周接合ラインGでこれらパネル体5,6に一体に接合するだけでよく、第1帯状部材8と同様に、単純で簡単な組立作業でサイドエアバッグ3に組み込むことができ、また組立作業が複雑でないので、高い接合強度で接合することができ、性能が安定したサイドエアバッグ3を高い品質で製造することができる。
【0131】
車内側パネル体5及び車外側パネル体6が上方パネル部5a,6aと下方パネル部5b,6bを含み、これら上方及び下方パネル部5a,5b,6a,6bを、互いに重ね合わせて接合するようにしたので、前方側及び後方側上下仕切り部を形成する際、具体的には第1及び第2帯状部材8,9を各パネル体5,6に接合してサイドエアバッグ3を製作する際、オーバーラップ部分10周りの部品の組み込みを容易化することができ、製造性を向上することができる。
【0132】
また、これらパネル部5a,5b,6a,6b同士の接合ラインUを利用して前方側及び後方側上下仕切り部の形成、すなわち第1及び第2帯状部材8,9の接合を行うことができ、接合ラインUと異なる位置でこれら帯状部材8,9を接合する場合に比べて、合理性の高い組立手順で製造することができる。
【0133】
第1帯状部材8の両側縁は、車内側パネル体5及び車外側パネル体6それぞれに含まれる下方パネル部5b,6bの上方部分間を当該第1帯状部材8が跨ぐ形態で、下方パネル部5b,6bに接合される。第2帯状部材9の両側縁は、下方パネル部5b,6bの上方部分間に当該第2帯状部材9が挟まれる形態で、これら下方パネル部5b,6b及び第1帯状部材8と一体に上方パネル部5a,6aに接合するように形成される。これにより、前方側及び後方側上下仕切り部によってガス通路11を備えた上で、上部バッグ領域Tと下部バッグ領域Xを仕切る構造を堅牢に構成することができ、性能が安定したサイドエアバッグ3を高い品質で製造することができる。
【0134】
また、下部バッグ領域Xには、重なり合いのないオーバーラップ部分10だけが面するので、インフレータガスHによりオーバーラップ部分10を的確に可撓変形させることができ、ガス通路11を確実に封鎖して、優れた圧力調整作用を得ることができる。第2実施形態にあっても、第1実施形態で得られる作用効果を奏することはもちろんである。
【0135】
図19から
図21には、第2実施形態の変形例が示されている。
図19は、第2実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置の変形例を示す側面図、
図20は、
図19に示した車両用サイドエアバッグ装置を構成する部品の組み付け状態を説明する説明図、
図21は、
図19中、A4−A4線矢視断面図である。第2実施形態では、第1帯状部材8の帯片8aを別体で設けたが、図示するように、下方パネル部5b,6bを上方へ延長して、下方パネル部5b,6bに一体的に帯片8aを設けるようにしても良い。この場合、帯片8aに相当する部分は、下方パネル部5b,6bから部分的に上方へ突出している。このような変形例であっても、上記第2実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0136】
図22から
図26には、第3実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置1が示されている。
図22は、第3実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置1の側面図、
図23は、
図22中、A8−A8線矢視断面図、
図24は、
図22中、A5−A5線矢視断面図、
図25は、
図22中、A6−A6線矢視断面図、
図26は、
図22中、A7−A7線矢視断面図である。
【0137】
前方側上下仕切り部は、第2実施形態では車両前後方向の途中で途切れていた後端から連続して、車両上下方向上方へ向かって延出形成され、サイドエアバッグ3の上端に達する上方延出部13を含んで形成される。
【0138】
上方延出部13は、第1帯状部材8の延長部分である。上方延出部13の上端は、外周接合ラインGで、車内側及び車外側パネル体5,6と一体に接合される。この上方延出部13は、サイドエアバッグ3内部を車両前後方向に仕切って、
図11に仮想線で示すように、上部バッグ領域Tを、上前部バッグ領域Yと上後部バッグ領域Zに分割する。上後部バッグ領域Zは乗員の肩部位置に合わせられ、上前部バッグ領域Yは乗員の胸部位置に合わせられる。
【0139】
上方延出部13には、車両前後方向後方に配置されるインフレータ4から上後部バッグ領域Zに噴出されるインフレータガスHを、上前部バッグ領域Yに導入するガス導入路12が形成される。ガス導入路12は、第1帯状部材8に貫通形成される孔や切り込みなどで構成される。
【0140】
図22中のA5−A5線矢視断面は、
図14に示した接合構造とほぼ同じである。第2実施形態では、下方パネル部5b,6b同士は、前方側上下仕切り部を形成する第1帯状部材8の帯片8aの前方部分において、シームラインs1(
図14参照)により、同時縫製される。このシームラインs1により、補強することができる。
【0141】
図22及び
図23に示すように、上方延出部13が形成される場合、
図14中の接合ラインUから上方へ向かって分岐して上下シームラインVが設定される。シームラインs1で帯片8aの一側縁を接合して形成された第1帯状部材8は、他側縁が上下シームラインVで車内側及び車外側パネル5,6に一体に接合され、これによって上部バッグ領域Tが前後に分けられる。
【0142】
第3実施形態であっても、第2実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。第3実施形態では、前方側上下仕切り部に上方延出部13を含めることにより、封鎖可能なガス通路11による逆流阻止機能もしくは圧力調整機能を備えつつ、3つのバッグ領域X,Y,Zを形成することができ、乗員の腰部、肩部、胸部を適切に受け止めて、乗員保護性能を向上することができる。
【0143】
図27〜
図29には、上記第2及び第3実施形態におけるオーバーラップ部分10の接合構造の変形例が示されている。
図27は、第2帯状部材9を、二枚の帯片9aをシームラインs2で接合して形成することに代えて、一枚の帯片を、シームライン位置で上向きの折り返しf3を形成した場合である。
図28は、
図27に示した第2帯状部材9を上下逆さまにして、折り返しf3を下向きにした場合である。このように第2帯状部材9を一枚の帯片で構成し、折り返しで組み込むことにより、帯片9aを接合する場合に比較して、工数を減らすことができ、製造性を向上することができる。
【0144】
図29は、
図14に示した第2帯状部材9を上下逆さまに配置した場合である。
図14の第2帯状部材9を単に上下逆さまにしただけであると、シームラインs2がガス通路11内に現れて、当該ガス通路11の封鎖が妨げられてしまう。
図29に示す構造では、第2帯状部材9は、
図14に示されている二枚の帯片9aを、シームラインs2を包み込むように折り返した上で、この折り返しf1がガス通路11に面するように配置される。このようにすれば、第2帯状部材9を上下反対向きに配置しても、適切にガス通路11を封鎖することができる。
【0145】
図30〜
図34には、第4実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置1が示されている。
図30は、第4実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置1の側面図、
図31は、
図30に示した車両用サイドエアバッグ装置を構成する下方パネル部の斜視図、
図32は、
図30中、A9−A9線矢視断面図、
図33は、
図30中、A10−A10線矢視断面図である。
【0146】
第4実施形態は、第3実施形態と同様に、前方側上下仕切り部に上方延出部13を含めて、サイドエアバッグ3内部に、上後部バッグ領域Z、上前部バッグ領域Y及び下部バッグ領域Xが形成される。上方延出部13には、第3実施形態と同様に、車両前後方向後方に配置されるインフレータ4から上後部バッグ領域Zに噴出されるインフレータガスHを、上前部バッグ領域Yに導入するガス導入路12が形成される。
【0147】
第4実施形態は、上述した第1帯状部材8及び下方パネル部5b,6bの変形例に関する。上記実施形態では、第1帯状部材8を、二枚の帯片8aをシームラインs1で接合して形成したが、これに代えて、第4実施形態では、シームライン位置で折り返して形成した場合である。また、下方パネル部14も、上端で接合する形態に代えて、
図28に示した下向きの折り返しf3と同様に、下向き(車内側から車外側へ
上向きにカーブする上向き
凸)の折り返しで山折り部f2を形成した単一体の形態で設けられる。この場合の接合構造が
図32に示されている。先ず、帯片9a同士を接合した第2帯状部材9を作成する(図中(I)参照)。
【0148】
次に、山折り部f2を有する下方パネル部14の上に、当該山折り部f2を跨ぐ形態で、折り返した第1帯状部材8を重ね合わせる。また、下方パネル部14の山折り部f2で第2帯状部材9を挟み込む。このとき、第2帯状部材9を接合ラインU位置に位置合わせする。第2帯状部材9は、上向きに広げられるように、帯片9a同士のシームラインs2が下にされ、かつ当該シームラインs2が接合ラインUよりも下方に位置される。
【0149】
第1帯状部材8の外側に各パネル体5,6の上方パネル部5a,6aをそれぞれ重ね合わせ、車内側パネル体5の上方パネル部5aから第2帯状片9の一方の帯片9aに亘り一括して接合し、また、車外側パネル体6の上方パネル部6aから第2帯状片9の他方の帯片9aに亘り一括して接合する(図中(V)参照)。
【0150】
当該接合により、上記実施形態と同様に、車内側パネル体5と車外側パネル体6にそれぞれ、接合ラインUが形成される。このようにすると、第2帯状部材9のシームラインs2を境界として、車内側では、第2帯状部材9の一方の帯片9a、下方パネル部14の車内側部分、第1帯状部材8、並びに車内側パネル体5の上方パネル部5aが順次重なった状態で一体化され、車外側では、第2帯状部材9の他方の帯片9a、下方パネル部14の車外側部分、第1帯状部材8、並びに車外側パネル体6の上方パネル部6aが順次重なった状態で一体化される。下方パネル部14の山折り部f2は
図31に示すように、車両後方側が開口(図中、pで示す)するように構成される。
【0151】
これにより、下方パネル部14を跨ぐ第1帯状部材8に挟み込まれた状態となる第2帯状部材9によって、後方側上下仕切り部に、前方側上下仕切り部と上下に向かい合うオーバーラップ部分10が形成される。
【0152】
この最終形態では、要するに、下方パネル部14には上方部分に、
下向きの折り返しで山折り部f2が形成され、第1帯状部材8は、山折り部f2を跨ぐ形態で下方パネル部14に重ね合わされ、第2帯状部材9の両端縁は、下方パネル部14の山折り部f2で第2帯状部材9が挟まれる形態で、これら下方パネル部14及び第1帯状部材8と一体に上方パネル部5a,6aに接合されて、オーバーラップ部分10が形成される。
【0153】
図30及び
図33に示すように、上方延出部13では、
図30中の接合ラインUから上方へ向かって分岐して上下シームラインVが設定される。折り返しで形成された第1帯状部材8は、接合ラインUで上方パネル部5a,6aに接合される両側縁がそのまま、上下シームラインVで車内側及び車外側パネル5,6に一体に接合される。
【0154】
このような第4実施形態であっても、上記第2及び第3実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。第4実施形態では、下方パネル部14が山折り部f2で折り返される単一体であるので、車内側及び車外側に別々に設けられる場合に比べて、組立作業性を向上することができる。また、第1帯状部材8を折り返しで組み込むことにより、帯片8aを接合する場合に比較して、工数を減らすことができ、製造性を向上することができる。
【0155】
図34には、上記
図27〜
図29の場合に加えて、下方パネル部14及び第1帯状部材8を折り返し構造とした場合におけるオーバーラップ部分10の接合構造の変形例が示されている。
図34は、上記
図29の場合と対比して、下方パネル部14及び第1帯状部材8が折り返した形態とされている。
【0156】
図35及び
図36には、オーバーラップ部分10の接合構造の変形例が示されている。これら変形例では、車内側パネル体5及び車外側パネル体6は、上方及び下方パネル部5a,5b,6a,6bを含まず、それぞれが車両上下方向に単一体で形成される。
【0157】
図35では、上向きの折り返しf3を有する第2帯状部材9を上方から挟むようにして、下向きの折り返しで形成された山折り箇所f4を有する第1帯状部材8を重ねて配置し、これら第1及び第2帯状部材8,9を車内側及び車外側パネル体5,6で両側から挟んで構成される。
【0158】
図36では、下向きの折り返しf3を有する第2帯状部材9を上方から挟むようにして、下向きの折り返しで形成された山折り箇所f4を有する第1帯状部材8を重ねて配置し、これら第1及び第2帯状部材8,9を車内側及び車外側パネル体5,6で両側から挟んで構成される。
【0159】
いずれの場合であっても、折り返し箇所f3,f4を避けて接合ラインUにより接合が行われ、第2帯状部材9の折り返しf3を境界として、車内側では、第2帯状部材9、第1帯状部材8、並びに車内側パネル体5が順次重なった状態で一体化され、車外側では、第2帯状部材9、第1帯状部材8、並びに車外側パネル体6が順次重なった状態で一体化される。
【0160】
要するに、これら変形例では、第1帯状部材8は、下向きの折り返しで形成された山折り箇所f4を有し、第2帯状部材9の両側縁は、第1帯状部材8の山折り箇所f4に第2帯状部材9が挟まれる形態で、第1帯状部材8と一体に車内側パネル体5及び車外側パネル体6に接合されて、オーバーラップ部分10が形成される。
【0161】
このような変形例であっても、上記各実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。これら変形例では、車内側及び車外側パネル体5,6を、車両上下方向に単一体で形成し、これらパネル体5,6に挟んで第1及び第2帯状部材8,9を組み込むだけであるので、接合箇所も少なく、さらに生産性を向上することができる。
【0162】
図37には、第1帯状部材8を用いることなく、前方側上下仕切り部から上方延出部を形成する変形例が示されている。
図37は、
図22中のA8−A8線矢視断面図に対応する。
【0163】
車内側及び車外側パネル体5,6に関し、これらパネル体5,6を、サイドエアバッグ3の後端より第1帯状部材のシームラインs1付近を前端側の目安とする車両後方側パネル部15と、サイドエアバッグ3の前端より、接合ラインUから連続して一連な上下シームラインV付近を後端側の目安とする車両前方側パネル部16に分けて形成する。
【0164】
車内側及び車外側パネル体5,6それぞれの車両後方側パネル部15をそれらの前端15a(第1帯状部材8のシームラインs1相当)位置で接合する(s4参照)。次に、接合を行った車両後方側パネル部15の外側から、車両前方側パネル部16を重ね合わせる。このとき、車両後方側パネル部15の間に、接合ラインUに沿って、第2帯状部材9を挟み込む。次に、車両前方側パネル部16を、重なり合って隣接する各車両後方パネル部15に接合する(s5参照)。
【0165】
このとき、接合s5に関しては、上述したサイドエアバッグ3の車両前後方向前端から後端に亘る接合ラインU及び当該接合ラインUから上向きに分岐する上下シームラインVで接合を行う。そして接合ラインU位置では、車内側及び車外側それぞれで、車両後方側パネル部15を介して、第2帯状部材9を車両前方側パネル部16に一括して接合する。このように構成しても、上記各実施形態と同様の作用効果を奏する車両用サイドエアバッグ装置1を得ることができる。
【0166】
本実施形態の全てに関し、接合は、縫製や接着、溶着など、従来周知の各種方法を採用することができる。
【0167】
以上に述べた車両用サイドエアバッグ装置は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施形態例も、各種の方法で実施または遂行できる。特に、本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさおよび構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。