特許第6018321号(P6018321)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018321
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】固定型電気炉及び溶鋼の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C21C 5/52 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   C21C5/52
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-549236(P2015-549236)
(86)(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公表番号】特表2016-509624(P2016-509624A)
(43)【公表日】2016年3月31日
(86)【国際出願番号】KR2012011707
(87)【国際公開番号】WO2014098302
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2015年6月17日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0151535
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ,ペク
(72)【発明者】
【氏名】シン,ゴン
(72)【発明者】
【氏名】オ,ジ−ウン
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2004−0056268(KR,A)
【文献】 特開平09−014865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 5/52
F27B 3/08, 3/18
C21B 13/00,13/02,13/12
F27D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解炉の側面に配置されて溶解炉の排ガスで鉄源であるスクラップを予熱する予熱炉と、
前記予熱炉で予熱された鉄源を溶解炉に供給する供給手段と、
予熱された鉄源を溶解させる電極を含む溶解炉と、
前記溶解炉で溶解された溶鋼を排出させる固定型排出手段と、
前記予熱炉に連結され、酸化鉄源を予備還元して溶解炉に提供する還元炉と、を含み、
前記予熱炉は前記溶解炉に一体に連結され
前記溶解炉の壁面には、予備還元された還元鉄を直接還元するカーボンインジェクタが配置され、
前記還元炉は、前記予熱炉を通過した排ガスが供給されるように排ガス供給管に連結され、前記排ガスの未燃焼のCOを燃焼させるバーナーを含むことを特徴とする固定型電気炉。
【請求項2】
前記予熱炉は垂直型予熱炉であり、
前記溶解炉の予熱炉側の上部には、予熱炉に移動する排ガスの加熱のための酸素バーナーが備えられ、
前記予熱炉は、排出される鉄源を600〜800℃に予熱することを特徴とする請求項に記載の固定型電気炉。
【請求項3】
前記予熱炉は、電気炉出鋼量の80〜150%の内部体積を有する予熱炉であることを特徴とする請求項に記載の固定型電気炉。
【請求項4】
前記予熱炉の上側に鉄源供給口が形成され、
前記予熱炉から溶解炉に予熱された鉄源を供給するように前記予熱炉の下部にプッシャーが配置されたことを特徴とする請求項に記載の固定型電気炉。
【請求項5】
前記鉄源供給口は、鉄源の供給を調節する第1のゲートと、前記第1のゲートの上方に配置された第2のゲートと、を含み、前記第1のゲートと前記第2のゲートの間に鉄源を仮保管できるように空間部が形成され、前記第1のゲートの下部の側面に排ガス排出口が形成されたことを特徴とする請求項に記載の固定型電気炉。
【請求項6】
前記固定型排出手段は、サイフォン(siphon)出鋼口であることを特徴とする請求項に記載の固定型電気炉。
【請求項7】
前記サイフォン出鋼口は、
前記溶解炉の底面から当該溶解炉の底面より高い位置の折り曲げ部に伸びて形成された溶鋼導入部と、
前記溶鋼導入部と溶鋼排出部が連結された折り曲げ部と、
前記折り曲げ部から下方に伸び、排出口の高さが溶解炉の底面より低い溶鋼排出部と、を含み、
前記折り曲げ部にはガス供給部が連結されることを特徴とする請求項に記載の固定型電気炉。
【請求項8】
前記溶鋼導入部、折り曲げ部及び溶鋼排出部のうち少なくとも一つには、通過する溶鋼の凝固を防止するためのバーナー又は誘導加熱コイルが設置されることを特徴とする請求項に記載の固定型電気炉。
【請求項9】
ダストやスケールである低級酸化鉄とスクラップを混入して溶鋼を製造する固定型電気炉を用いる溶鋼の製造方法であって、
前記スクラップが予熱炉のスクラップ投入口を通して積み込まれ、予熱されたスクラップを溶解炉に投入するスクラップ投入段階と、
還元雰囲気を形成して低級酸化鉄を直接及び/又は間接還元反応させ、還元された還元鉄を溶解炉に排出する酸化鉄還元段階と、
前記予熱炉と還元炉から投入されたスクラップと還元鉄とを電極を用いて電力を供給して製鋼時間の間に連続溶解する段階と、
生成された溶鋼を出鋼する段階と、を含み、
前記スクラップ投入段階では、積み込まれたスクラップを第1のゲートと第2のゲートの間に仮貯蔵した後、スクラップを電気炉で発生する排ガス顕熱とCOの2次燃焼熱で予熱した後に電気炉に投入し、
前記酸化鉄還元段階では、ダストやスケールにカーボンを混合して製造した炭材内蔵ブリケットを酸化鉄供給口に積み込むことを特徴とする溶鋼の製造方法。
【請求項10】
前記酸化鉄還元段階において、前記還元雰囲気は、前記予熱炉から出た排ガス顕熱とバーナーの燃焼熱で形成されることを特徴とする請求項に記載の溶鋼の製造方法。
【請求項11】
前記還元鉄が電気炉内に投入されたとき、電気炉の壁体に連結されたカーボンインジェクタによってカーボンが噴射されて還元鉄と反応する直接還元段階を更に含むことを特徴とする請求項に記載の溶鋼の製造方法。
【請求項12】
前記スクラップ投入段階では、予熱炉の内部に備えられたバーナーによってスクラップを600〜800℃に予熱することを特徴とする請求項に記載の溶鋼の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定型電気炉及び溶鋼の製造方法に係り、より詳細には、低級酸化鉄を用いる予備還元炉と連結され、垂直型予熱炉と一体に形成されることにより、溶解炉を傾動することなく溶鋼の出鋼が可能であり、持続的なアーキング及び出鋼が可能な固定型電気炉及び溶鋼の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気炉は、スクラップやDRIのような鉄源を、電気エネルギーを用いて溶融させた後、所望の成分及び温度で精錬する製鋼工程に用いられるものであり、転炉と比べて高炉、原料処理設備、及び焼結設備が不要であるため、初期投資コストが低く、炭素鋼はもちろん、多品種少量生産が可能なステンレス鋼や特殊鋼にも適用可能である。また、製鋼過程で温室ガスである二酸化炭素の排出量が高炉より1/4のレベルと非常に低く、且つスクラップのような屑の発生量の増加を解消することもでき、環境にやさしい設備という点で、未来の鉄鋼技術として考えられている。
【0003】
石油のコストの上昇に伴う電力のコストの上昇は、電気炉製鋼にも影響を与え、酸素や天然ガスのような化学エネルギーを用いて電力を代替しているが、これには限界があるため、スクラップを予熱して電力を節減する技術が開発された。
【0004】
スクラップ予熱技術は、スクラップのエンタルピーを高くすることにより、電気炉に投入される電力原単位を低くする技術であり、特許文献1のような技術が開発された。特許文献1の予熱炉一体型電気炉の場合は、予熱炉2と溶解炉1とを一体に形成し、溶解炉1で発生する廃熱源を用いてスクラップ3を予熱する技術である(図1)。しかしながら、出鋼口14を通して電極6で生成された溶鋼8を排出しなければならないため、予熱炉2が一体に形成された電気炉全体を傾動させなければならない。このように予熱炉2と溶解炉1を一度に傾動させなければならないため、傾動による構造的問題、及び予熱炉2のサイズ制限の問題があった。
【0005】
他の方式として、特許文献2のように垂直型予熱炉2と溶解炉1とを分離型に設置する方式が提案された。このような電気炉の場合は、溶解炉1へのスクラップの投入時には予熱炉2を移動手段34で移動させて溶解炉1に連結させ、溶解炉1の傾動時に予熱炉2を離脱させる構成である。この場合、垂直型予熱炉2の容量問題は発生しないが、しかしながら、予熱炉2を移動させることから、溶解炉1で発生する排ガスが外部に漏れたり、又は外部の空気が溶解炉/予熱炉の内部に流入するという問題が発生する。また、スクラップの連続投入は可能であるが、出鋼時に電力供給装置を撤去して溶解炉1を傾動させなければならないため、これによる非通電時間が発生し、連続溶解操業及びフラット浴(flat bath)操業が不可能である。
【0006】
一方、鉄鉱石を還元して電気炉製鋼の原料として用いる方法としては、MIDREXやHYL等の一般的な方法がある。しかしながら、これらの方法は、目標還元率を達成するのに長時間を要するため、電気炉と連係して生産性を高くするために、タップツータップタイム(Tap to Tap Time)を短くする必要がある高生産性の電気炉には適用することができないという問題がある。
【0007】
また、従来の電気炉は、排ガス処理過程でハロゲン元素成分を含有した物質がスクラップに混入し、燃焼過程で環境汚染物質であるダイオキシンが発生するため、これを除去するためには900℃以上に排ガスを加熱する燃焼塔設備が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開1998−310813号公報
【特許文献2】韓国公開特許第2006‐7012733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであって、電力供給を中断することなく溶解し、固定状態での出鋼が可能で連続操業が可能な固定型電気炉及び溶鋼の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、低級酸化鉄を予備還元し、スクラップの代替鉄源として用いて燃料費を節減させることを目的とする。
【0011】
また、本発明は、スクラップを予熱することにより発生するダイオキシンを、燃焼塔なしで除去することができる電気炉及び溶鋼の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために、以下のような固定型電気炉及び溶鋼の製造方法を提供する。
【0013】
本発明は、溶解炉の側面に配置されて溶解炉の排ガスで鉄源を予熱する予熱炉と、前記予熱炉で予熱された鉄源を溶解炉に供給する供給手段と、予熱された鉄源を溶解させる電極を備える溶解炉と、前記溶解炉で溶解された溶鋼を排出する固定型排出手段と、を含み、前記予熱炉は前記溶解炉に一体に連結された固定型電気炉を提供する。
【0014】
前記固定型電気炉は、前記予熱炉に連結され、酸化鉄源を予備還元して溶解炉に提供する還元炉を更に含み、前記溶解炉の壁面には、予備還元された還元鉄を直接還元するカーボンインジェクタを配置することができる。
【0015】
本発明において、前記還元炉は、前記予熱炉を通過した排ガスを供給するように排ガス供給管が連結され、前記排ガスの未燃焼のCOを燃焼させるバーナーを含むことができる。
【0016】
本発明の前記予熱炉は垂直型予熱炉であり、前記溶解炉の予熱炉側の上部には、予熱炉に移動する排ガスの加熱のための酸素バーナーが備えられ、前記予熱炉は、排出される鉄源を600〜800℃に予熱することができる。
【0017】
前記予熱炉は、電気炉出鋼量の80〜150%の内部体積を有する大型の予熱炉であることが好ましい。
【0018】
本発明において、前記予熱炉の上側に鉄源供給口が形成され、前記予熱炉から溶解炉に予熱された鉄源を供給するように前記予熱炉の下部にはプッシャーが配置されることができる。
【0019】
本発明の前記鉄源供給口は、鉄源の供給を調節する第1のゲートと、前記第1のゲートの上側に配置された第2のゲートと、を含み、前記第1のゲートと前記第2のゲートとの間に鉄源を仮保管できるように空間部が形成され、前記第1のゲートの下部の側面に排ガス排出口が形成されることができる。
【0020】
また、前記固定型排出手段はサイフォン(siphon)出鋼口であればよく、前記サイフォン出鋼口は、前記溶解炉の底面から当該溶解炉の底面より高い位置の折り曲げ部に伸びて形成された溶鋼導入部と、前記溶鋼導入部と溶鋼排出部が連結された折り曲げ部と、前記折り曲げ部から下方に伸び、排出口の高さが溶解炉の底面より低い溶鋼排出部と、を含み、前記折り曲げ部にはガス供給部を連結さすることができる。
【0021】
また、前記溶鋼導入部、折り曲げ部及び溶鋼排出部のうち少なくとも一つには、通過する溶鋼の凝固を防止するためのバーナー又は誘導加熱コイルを設置することができる。
【0022】
本発明は、低級酸化鉄とスクラップを混入して溶鋼を製造する方法であって、前記スクラップが予熱炉のスクラップ投入口を通して積み込まれ、予熱されたスクラップを溶解炉に投入するスクラップ投入段階と、還元雰囲気を形成して低級酸化鉄を直接及び/又は間接的に還元反応させ、還元された還元鉄を溶解炉に排出する酸化鉄還元段階と、前記予熱炉と還元炉から連続投入されたスクラップと還元鉄を、電極を用いて電力を供給して製鋼時間の間に連続溶解する段階と、生成された溶鋼を連続出鋼する段階と、を含む固定型電気炉を用いる溶鋼の製造方法を提供する。
【0023】
本発明は、前記スクラップ投入段階では、積み込まれたスクラップを第1のゲートと第2のゲートの間に仮貯蔵した後、スクラップを、電気炉で発生する排ガス顕熱とCOの2次燃焼熱で予熱した後に電気炉に投入し、前記酸化鉄還元段階では、ダストやスケールにカーボンを混合して製造した炭材内蔵ブリケットを酸化鉄積込口に積み込む溶鋼の製造方法を提供する。
【0024】
また、前記酸化鉄還元段階において、前記還元雰囲気は、前記予熱炉から出た排ガス顕熱とバーナーの燃焼熱とで形成されることができる。
【0025】
また、前記溶鋼の製造方法は、前記還元鉄が電気炉内に投入されたとき、電気炉の壁体に連結されたカーボンインジェクタによってカーボンが噴射されて還元鉄と反応する直接還元段階を更に含み、前記スクラップ投入段階では、予熱炉の内部に備えられたバーナーによってスクラップを600〜800℃に予熱することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、前記構成により、低級酸化鉄のような安価の鉄源をスクラップと共に用いることにより、原価を節減することができ、還元時に排ガスを用いることにより、燃焼炉なしでもダイオキシンを除去することができる。
【0027】
また、本発明は、電力を中断することなく連続的に供給することにより、連続的な溶鋼の生産が可能であり、傾動することなくフラット浴状態でサイフォン出鋼口からの出鋼が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】従来の電気炉の概略図である。
図2】従来の他の電気炉の概略図である。
図3】本発明の固定型電気炉の概略図である。
図4】本発明の固定型電気炉の切開斜視図である。
図5】本発明の固定型電気炉にスクラップが供給される様子を順次示すフローチャートである。
図6】本発明の固定型電気炉にスクラップが供給される様子を順次示すフローチャートである。
図7】本発明の固定型電気炉にスクラップが供給される様子を順次示すフローチャートである。
図8】本発明のサイフォン出鋼口の概略図である。
図9】従来の電気炉のアーキング時間、電力量を示すグラフである。
図10】本発明の電気炉のアーキング時間、電力量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
【0030】
図3は本発明の固定型電気炉100の概略図であり、図4は本発明の固定型電気炉の切開斜視図である。
【0031】
図3及び図4に示すように、本発明の固定型電気炉100は、電極111〜113を用いてスクラップ及び還元された酸化鉄を溶解させて溶鋼を製造する溶解炉110と、前記溶解炉110の一側面に接続され、前記溶解炉110で生成された排ガスを用いて、内部に貯蔵したスクラップを予熱する予熱炉140と、前記予熱炉140を通過した排ガスを用いてダストやスケールのような低級酸化鉄を還元し、還元された酸化鉄(還元鉄)を溶解炉110に提供する還元炉160と、を含む。
【0032】
溶解炉110は、一側には予熱炉140が連結され、他側には溶鋼を固定状態で出鋼させる固定型排出手段、例えば、サイフォン出鋼口180が接続される。溶解炉110は、上側部には還元鉄が流入する還元鉄流入部117が形成され、前記還元鉄流入部117付近には前記還元鉄にカーボンを噴射するカーボンインジェクタ115が配置される。カーボンインジェクタ115は、還元鉄にカーボンを噴射し、還元鉄はカーボンと反応して直接還元される。
【0033】
溶解炉110は、中央の三つの電極111、112、113のアークによって内部の鉄源(スクラップ、還元された酸化鉄)を溶融させる。溶解炉110と予熱炉140は傾斜面119を有して連結され、前記傾斜面119に沿って予熱炉140のスクラップが溶解炉110に流入する。前記溶解炉110の内部には、溶解炉110と予熱炉140が連結されるスクラップ投入口118に向かってバーナー145が配置される。
【0034】
バーナー145は、溶解炉110の内部に予熱炉140の入口に向かって設置されるため、当該バーナー145の出口にスクラップがなく、火炎の形成が容易であるという長所がある。また、バーナー145は、酸素のみを供給し、この場合、酸素は、バーナー周辺の高温状態(1000〜2300℃)の排ガスの未燃焼のCOと反応する。特に、燃料(CxHy)が入らないことから、水素と酸素との反応による水蒸気が発生しないため、集塵時の水分によるフィルター詰まり現象を予防することができる。
【0035】
次に、予熱炉140について説明する。予熱炉140は前記溶解炉110にスクラップを供給できるように、下面に所定の角度で形成された傾斜面119を有し、上部には鉄源供給部144を有する。本発明において、予熱炉140は、垂直方向に予熱空間141を有する垂直型予熱炉140である。本発明の予熱炉140は、傾動しないため、電気炉出鋼量の80〜150%のスクラップを保有することができる大型予熱炉140である。
【0036】
予熱炉140の内部空間141にはスクラップが充填され、前記内部空間にスクラップを充填し且つ排ガスが流出しないように前記鉄源供給部144と前記内部空間141の間には第1のゲート142及び第2のゲート143が配置される。また、前記第1のゲート142の下部には、下面の傾斜面119に沿って流入した排ガスを還元炉に排出されることができるように排ガス出口150が配置される。排ガス出口150が鉄源を供給する第1のゲート142の直下部に配置されているため、排ガスは、予熱炉140の内部空間141にある全てのスクラップを予熱した後に還元炉160に送られることができる。
【0037】
本発明の予熱炉140は、前記スクラップ投入口118から流入する排ガスの顕熱とバーナー145によって加熱されるCOの2次燃焼熱で内部空間141に満たされたスクラップを予熱する。バーナー145は、図3の実施例では溶解炉110の内部にスクラップ投入口118に向かって配置されているが、溶解炉110ではなく予熱炉140の内部に配置されてもよい。但し、予熱炉140からスクラップが流入する流入口118を加熱する場合は、全体的に予熱温度を上昇させることができるという点で有利である。
【0038】
予熱炉140の下部の傾斜面119には、予熱炉140の下部のスクラップを溶解炉110に押し込む供給手段、例えば、プッシャー155が配置される。プッシャー155は、シリンダー等の駆動手段に連結され、前記傾斜面119に沿って左右に移動しながら下部のスクラップを溶解炉110に押し込む。
【0039】
本発明において、予熱炉140は、内蔵したスクラップを600〜800℃に加熱した後に溶解炉110に送る。スクラップの加熱温度が600℃未満の場合は、スクラップの温度が十分でないことから燃料節減効果が不十分なため、少なくとも600℃以上の温度にスクラップを加熱することが好ましい。
【0040】
なお、第1及び第2のゲート142、143の動作については、図5〜7を参照して後述する。
【0041】
還元炉160は、上側部には酸化鉄が供給される酸化鉄供給口163と排ガス排気口164とが配置され、最下部には還元鉄が排出される還元鉄排出口167が配置され、側面の下部には前記予熱炉140の排ガス出口150から排出された排ガスが還元炉160に流入する排ガス流入口161が配置される。一方、還元炉160の内部の側面にはバーナー165が配置される。
【0042】
還元炉160は、予熱炉140を通過したが、多くの熱を有している排ガスと、前記排ガスに含まれた未燃焼のCOをバーナー165で加熱される。このとき、還元炉160を900℃以上の温度に加熱することにより、ダイオキシンのような有害物質を除去することができる。また、還元炉160では、800〜1300℃の温度に加熱することが好ましい。また、酸化鉄供給口163から、ダストやスケールのような低級酸化鉄にカーボンを混合して製造した炭材内蔵ブリケットを供給し、前記排ガス顕熱とバーナーの燃焼熱で還元雰囲気を形成して前記炭材内蔵ブリケットを直接/間接還元させる。
【0043】
一方、図5〜7には、本発明の予熱炉140に鉄源、即ち、スクラップを供給する様子が順次示されている。
【0044】
予熱炉140にスクラップSを供給するために、スクラップSを盛ったバケツ156が鉄源供給部144に移動し、その後、バケツ156のスクラップSが、開放された第2のゲート143を通して第1のゲート142と第2のゲート143の間の仮空間部146に供給される。次に、第2のゲート143が閉まり、第1のゲート142が開き、仮空間部146に貯蔵されていたスクラップSが内部空間141に供給されることができる。
【0045】
本発明において、第1のゲート142は、予熱炉の上部から投入されるスクラップSを仮保管する台の役割をし、予熱炉140の下部から上がる高温の排ガスが排ガス出口150に抜け出ることなく上に排出されて設備を損傷させることを防止し、第2のゲート143は、仮空間部146に保管されたスクラップ、及び第1のゲート142が開いて舞上がった粉塵と廃熱とが外部に抜け出さないようにする。
【0046】
本発明では、第1及び第2のゲート142、143を備えることにより、予熱炉140の排ガスを外部に流出することなく排ガス出口150から抜け出させることができる。
【0047】
図8に、本発明のサイフォン出鋼口180を示す。図8に示すように、本発明のサイフォン出鋼口180は、溶解炉110の側面に形成され、導出入口部181が溶解炉の底面に向かって配置され、導出出口部183が前記導出入口部181より高い位置に位置する導出管182を含む導出部と、前記導出部に連結されるように溶解炉110の側面に設置されて前記導出管182に連結された出鋼入口部184、及び前記出鋼入口部184及び導出入口部181より低い位置に配置される出鋼出口部186を含む出鋼管185と、を含む。
【0048】
前記出鋼管185と導出管182とは曲折して連結され、前記出鋼管185と導出管182とが連結された連結部の上部面に不活性ガスを注入して出鋼を停止させるガス供給部188が連結される。また、前記連結部の上部面には砂が投入される砂供給部189が連結され、砂供給部189は前記ガス供給部188に隣接して配置される。砂供給部189は、垂直に形成された出鋼管185の上面に配置される。
【0049】
また、前記出鋼出口部186には、出鋼前まで溶融金属を貯蔵できるようにオープナー187が設置される。
【0050】
一方、出鋼管185又は導出管182のうち少なくとも一つには、通過する溶鋼121の凝固を防止できるように誘導加熱コイル190が装着される。図8には導出管182のみに誘導加熱コイル190が設置されることが示されているが、出鋼管185のみに設置されてもよく、出鋼管185と導出管182の全てに設置されてもよい。
【0051】
本発明のサイフォン出鋼口180において、前記出鋼入口部184から前記出鋼出口部186までの距離Haは1000〜2500mmであることが好ましく、前記導出管182及び出鋼管185の直径は100〜300mmであることが好ましい。導出管及び出鋼管182、185の直径が100mm未満の場合は、溶鋼が早く冷却されるため、出鋼口内で凝固する可能性があり、300mmを超える場合は、設備の規模が大きくなりすぎるため現実性がなくなる。
【0052】
本発明のサイフォン出鋼口180から溶鋼を排出するときは、溶解炉110の内部の溶鋼121の上面が導出入口部181より高い位置に位置するようにし、溶鋼121の上面から導出入口部181までの高さHcが出鋼管185及び導出管182の直径の1.5倍以上の状態で溶鋼を出鋼することが好ましい。前記導出入口部181から溶鋼121の上面までの高さは、導出入口部181の上部から測定される。前記溶鋼121の上面から導出入口部181までの高さHcが出鋼管185及び導出管182の直径の1.5倍未満の場合は、ボルテックス(vortex)が発生し、スラグ120が溶鋼出鋼部に一緒に排出される可能性がある。
【0053】
本発明によるサイフォン出鋼口180は、溶解炉110内にスクラップが投入されると、サイフォン出鋼口180のオープナー187を閉めた状態で砂投入口189を通して砂を少なくとも200mm以上満たした後、ガス供給部188と砂投入口189を閉める。その後、溶解炉110内で溶融及び精錬作業が行われる。出鋼時には、オープナー187を開け、出鋼管185に満たされた砂を外部に排出することにより、出鋼管185に溶鋼を流出させる。
【0054】
一方、出鋼終了時には、前記ガス供給管からガスを供給した状態で前記オープナー187を閉め、前記砂供給部189を通して出鋼口に砂を満たした後、砂が満たされた出鋼管185を加圧する。再使用時には、オープナー187を開け、出鋼管185に満たされた砂を外部に排出することにより、出鋼管185に溶鋼を流出させる。
【0055】
以下に、図3〜8の構成による本発明の固定型電気炉の動作について説明する。本発明の電気炉100では、図5〜7の手順に従ってスクラップSを予熱炉140に投入する。即ち、第2のゲート143を開け、バケツ156でスクラップSを仮空間部146に投入して保管してから、第2のゲート143を閉め、第1のゲート142を開け、予熱炉140の内部空間141にスクラップSを供給する。
【0056】
予熱炉140の内部空間141に積もったスクラップSは、前記スクラップ投入口118を通して溶解炉110に供給される(スクラップ投入段階)。このとき、プッシャー155を用いて予熱炉140の下端のスクラップを溶解炉110に押し込む。
【0057】
一方で、それと同時か又は他の時間に、前記還元炉160で予備還元された還元鉄を還元鉄供給部117から溶解炉110に供給する。還元炉160は、前記還元鉄を溶解炉110に供給する前に、前記予熱炉140を通過した排ガスの顕熱及びバーナー165の燃焼熱で還元雰囲気を形成した状態でダストやスケールにカーボンを混合して製造した炭材内蔵ブリケットを積み込み、直接又は間接還元させる(酸化鉄還元段階)。
【0058】
本発明において、溶解炉110は、前記予熱炉140及び還元炉160から供給された鉄源、スクラップ及び還元鉄を電極111〜113を用いて溶解させる。本発明において、還元炉160から還元鉄を溶解炉110に供給するとき、溶解炉110の内部のカーボンインジェクタ115でカーボンを噴射して直接還元させることができる(直接還元段階)。
【0059】
本発明において、溶解炉110は、電極111〜113で連続的にアーキングして溶鋼を生成し、電極111〜113で生成された溶鋼121は、溶解炉110の一側に位置するサイフォン出鋼口180から排出される。即ち、本発明において、サイフォン出鋼口180は、アークが形成されている途中で溶鋼を排出する。
【0060】
図9及び10には、従来及び本発明による電気炉の動作が示されている。
【0061】
図10に示されているように、本発明の固定型電気炉100は、タップツータップタイム(Tap to Tap Time)が25〜35分であり、この時間内に予熱炉140に電気炉出鋼量に該当する量のスクラップSが積み込まれ、予熱されたスクラップSが溶解炉110に投入される場合にエネルギーバランスを合わせることができる。
【0062】
具体的な時間について説明する。バケツ156で予熱炉140の上部の鉄源供給部144にスクラップを運搬する。この際、1回の運搬量は1回当たりの出鋼量の8〜12%、周期は2.5〜3.5分とする。1回当たりの運搬量及び周期は、出鋼量に合わせて調節される。予熱炉140に積み込まれたスクラップは、予熱炉の下部の側面に付いている溶解炉110で発生する排ガス顕熱と排ガス成分中のCOを2次燃焼させるためのバーナー145の燃焼熱で予熱される。予熱炉140は、その下部に向かって更に予熱され、電気炉に投入される直前には600〜800℃にまで至る。溶解炉110に投入される量は1回当たりの出鋼量の2〜3%、投入周期は0.5〜1.5分とすることができる。
【0063】
このように周期的にタップツータップタイムの間にスクラップを投入し、精錬過程のために最後のタップツータップタイムの一定の時間にはスクラップを投入しない。
【0064】
本発明は、図9及び図10から確認できるように、傾動が不要であることから、傾動時間を必要とせず、固定型出鋼構造、即ち、サイフォン出鋼口180を含んでいることから、アーキングの途中でも出鋼が可能である。したがって、従来に比べ、タップツータップタイムが大幅に減少し、時間当たりの処理量が増大して生産性を向上させることができる。
【0065】
本発明は、一般の予熱炉が付いている電気炉とは異なり、予熱炉の傾動が不要であることから、予熱炉140を、出鋼量の80〜150%の範囲で大型化することができ、一体型に製作されていることから、外部の空気が流入したり内部の空気が流出したりする恐れがない。
【0066】
また、固定型であることから、スクラップの投入が容易であり、スクラップの予熱も正確に行うことができ、固定型構造のサイフォン出鋼口による連続操業が可能であることから、出鋼時間及び操業準備時間を必要とせず、タップツータップタイムの減少が可能であるため、生産量を増大させることができる。
【0067】
また、本発明は、スクラップと共に酸化鉄を鉄源として用いていることから、鉄源の原価を低くすることができ、従来は有毒物質を除去するために備えられていた燃焼炉の代わりに、排ガスで予熱して還元炉160内のバーナー165で有毒物質を除去することができる。また、還元炉160内でバーナー165の燃焼熱と排ガスの顕熱とで還元雰囲気を形成することから、エネルギー効率を上昇させることができる。
【0068】
以上、添付の図面を参照して本発明の具体的な実施例について説明したが、本発明はこれに限定されず、請求の範囲に記載の範囲内で多様に変形実施されることができる。
【符号の説明】
【0069】
100 電気炉
110 溶解炉
111〜113 電極
115 カーボンインジェクタ
117 還元鉄供給部
118 スクラップ投入口
140 予熱炉
142 第1のゲート
143 第2のゲート
150 排ガス出口
160 還元炉
161 排ガス流入口
163 酸化鉄供給口
164 排ガス排気口
165 バーナー
180 サイフォン出鋼口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10