【実施例】
【0091】
(実施例1)
パートA低圧熱処理されたふすま及び胚芽成分の作製(排気プロセスつき)
本実施例においては、挽きふすま及び胚芽成分又は画分は、様々な量の水で給水されて、低圧の運搬混合装置において、排気を伴って、様々な温度で熱処理され、熱処理後及び排気後含水量を判定する。処理されたふすま及び胚芽成分又は画分は、胚乳画分と組み合わされて、全粒小麦粉を得る。含水量及びリパーゼ活性が判定され、比較対照例のものと比較する。
【0092】
挽きふすま及び胚芽成分又は画分は、その初期含水量が約8.29重量%であるが、約16.29重量%と約26.29重量%含水量にそれぞれなるように、Hobart Mixer A−200T(オハイオ州トロイ)を低速で混合しながら水を噴射して、給水する。加水が完了したら、混合を約5分間継続する。
【0093】
Acrison社の定量供給装置に5cm(2”)のリボンスクリューを装着したもの(Acrison Feeder Model 10152−H)を用いて、名目平均送り速度6.71kg/時を維持して、材料をBepex社の Turbulizer(登録商標)(Turbulizer(登録商標)Model TCJS−8)に送った。Turbulizer(登録商標)のパドルの構成は、表1に示すように、最初の12枚のパドルは、前方45°に、次の20枚のパドルは後方45°に、最後の8枚のパドルは、フラット又は水平に設定した、:
【0094】
【表1】
【0095】
Turbulizer(登録商標)のローターの速度は、1420rpmにセットした。上記の設定のTurbulizer(登録商標)内で、ふすま及び胚芽は4分間の滞留時間となリ得る。
【0096】
蒸気を直接Turbulizer(登録商標)内に、3枚の中空バドルを有する中空シャフトを通じて噴射した。蒸気は、0.4MPa(60psi)ジャケット蒸気で、水を加熱することにより生成したが、水流の速度を2.15kg/時とし、水タンクの圧力を0.3MPa(50psi)とし、バック蒸気の圧力を0.1MPa(20psi)とした。Turbulizer(登録商標)は、熱いジャケットオイルで加熱された。オイルの供給は、Mokonポンプを、35rpmで運転して行い、熱いオイルの圧力は0.128MPa(18.5psi)とした。試験中、ジャケットの温度は、179℃〜221℃(355°F〜430°F)とされた。
【0097】
Turbulizerで処理をしたふすま及び胚芽は、シールされた45kg(100lb)のプラスチックバケツに排出され、バケツの上面には、減圧用パイプが接続されていた。これにより、排気された小麦臭さを感じさせるもの、及び凝結した水分をいくらか取り出すことが可能となった。
【0098】
パートB:全粒小麦粉及びふすま&胚芽の特徴づけ
Bepex Turbulizer(登録商標)での低圧熱処理工程の後、熱処理されたふすま及び胚芽成分又は画分は、粉の残りの画分、又は胚乳(32/68の割合で)と再度組み合わされ(破砕粉+還元粉)全粒小麦粉を形成した。
【0099】
全粒小麦粉含水量、及び加熱処理したふすま及び胚芽成分又は画分含水量が、AACC Method 44−15Aの手順にしたがって判定された。抽出可能なリパーゼ活性がそれぞれの粉に対して判定された。表2は全粒小麦粉の以下の特性を示す:(1)ふすま及び胚芽成分又は画分含水量、(2)全粒小麦粉含水量(3)全粒小麦粉のリパーゼ活性、及び(4)処理温度。
【0100】
【表2】
* 全粒小麦粉再構成:未処理のふすま及び胚芽を、胚乳と再構成したもの
* G3SWS:市販の、安定化され、細かく挽かれた全粒小麦粉(Mondelez International社製、オハイオ州Toledo)
【0101】
表2に示すように、Bepexで熱処理されたふすま及び胚芽成分又は画分の水分は、試行1〜4(Bepex熱処理工程の前に、ふすま及び胚芽を、約16%又は26重量%含水量になるまで給水)では、有意に減少し、かつ、未処理のふすま及び胚芽(含水量は8.29重量%)と比較して有意に低くなった(最終的含水量は、約2〜約4重量%)。しかしながら、当該最終的全粒小麦粉含水量は、未処理の全粒小麦粉及び市販の全粒小麦粉含水量に依然として近い値である。高い給水レベルにしたものは、ジャケットの温度に応じて22.87重量%〜24.19重量%の水分が排気されるという結果になった。また、低い方の給水レベルのものは、13.21重量%〜14.11重量%の水分が排気される結果となった。
【0102】
ふすま及び胚芽のBepex処理は、結果として、再度組み合わされて作られた全粒小麦粉のリパーゼ活性を減少させた(471.44U/gが、80.89U/g〜180.41U/gに下がった)。なお、ジャケットの温度が最も高い(221℃)((430°F))時、リパーゼ活性は、80.89U/gに下がった。市販の全粒小麦粉のリパーゼ活性(164.40U/g)と比べると、本実施例のふすま及び胚芽成分又は画分の熱処理工程は、より低いリパーゼ活性とより安定化した全粒小麦粉を結果として生じた。
【0103】
リパーゼ活性の判定は以下の方法による:
リパーゼ活性の判定方法:
抽出可能なリパーゼ活性がそれぞれの粉に対して判定された。リパーゼ活性の判定は以下の方法による:
【0104】
A.器具類
1.1 TD−700蛍光光度計(Turner Design社製)Em 442及びEx 300nmフィルター付き
1.2 化学天秤(±0.0001)
1.3 Pipetman、10μl、50μl、及び5000μl及びそれぞれの先端部
1.4 20ml蓋つきガラス瓶(VWR #66022−060)
1.5 50ml遠心分離管(VWR #20170−170)
1.6 冷却機能付き遠心分離機(Beckman Allegra X15R)
1.7 25及び1000mlメスフラスコ、ストッパー付き
1.8 1500mlビーカー
1.9 撹拌棒
1.10 ボルテックスミキサー
1.11 使い捨てキュベット、4.5ml(VWR #58017−875)
1.12 使い捨てキュベット用のキャップ(VWR #24775−083)
1.13 断熱された氷皿(VWR #35751−046)
1.14 シェーカー/ロッカー(VWR #14003−580)
1.15 タイマー
【0105】
B.試薬
1.脱イオン水
2.4−ヘプタン酸メチルウンベリフェリル(4−MUH)(Sigma #M2514)
3.2−メトキシエタノール(Fluka #64719)
4.Trizma塩酸(Sigma #T−5941)
5.1N水酸化ナトリウム(Fisher #SS266)
6.氷
【0106】
C.溶液
1.アッセイ緩衝材(0.2M Tris HCl、pH 7.4)
・31.52gのtrizma塩酸(B−5)を1500mlのビーカー(A−8)に計りとる。
・約900mlの脱イオン水を加え、撹拌棒を加え、溶解させる。
・pHが7.4になるように、1Nの水酸化ナトリウムで調整する。
・1000mlメスフラスコ(A−7)に移し、脱イオン水で量を調整する。
2.基剤のストック溶液(0.5% 4−MUHを2−メトキシエタノール、W/V)
・0.0720〜0.0725gの、4−ヘプタン酸メチルウンベリフェリル(B−2)を20mlのバイアル(A−4)に計りとる。
・15mlの2−メトキシエタノール(B−3)をバイアルに加える。
・Vortexミキサーで、粉末を溶かすまで撹拌。
・室温で貯蔵し、1週間後に廃棄する。
3.基剤の作業用液(0.03%の4−MUH(W/V)が6%の2−メトキシエタノール(V/V)水溶液)に溶けている
・1.5mlのアリコートを、基剤のストック溶液(C−2)から取り出し、及び25mlメスフラスコ(A−7)にピペットで注入する。
・脱イオン水で必要な量まで希釈する。
・よく混ぜる。
・試験ごとに新たな基剤作業溶液を、基剤のストック(C−2)から作る。
4.氷/水の混合液(氷槽)
氷を断熱パン(A−13)に入れ、パンの容量の約半分まで冷水を加える。
5.4種類の試料溶液
・アッセイ緩衝材(C−1)を氷槽(C−4)であらかじめ冷やす。
・0.1gの試料を計りとり、(できるだけ0.1000gに近づける)50ml遠心分離管(A−5)に入れる。
・20mlの氷温で冷やしたアッセイ緩衝材(C−1)を加える。
・Vortexミキサーで、溶けるまで撹拌。
・管を水平に氷槽に入れ、30分間シェーカー(A−14)でゆっくりと揺らす(#2速度設定、16ストローク/分)。
・試料を遠心分離機(A−6)に4750rpmで、温度5℃で10分間かける。
・上澄みをアッセイに用いる。
【0107】
D.蛍光光度計の較正(TD−700較正のための作業マニュアル、Multi−Optional,Raw Fluorescence Procedureを参照)
・蛍光光度計のスイッチを入れる(ホーム画面が現れるまで待つ)。
・「ホーム」画面で<ENT>を押して、設定&較正に入る。
・較正には#2を選択する。
・3000μlのアッセイ緩衝材(C−1、室温)の入ったキュベットを、試料チャンバに入れる。
・<ENT>を押す。
・#1を押して、試料=100(デフォルトの設定が100である。感度因子の用意ができるのを待つ。表示が100近くなっているはずである)とセットするのを了解する。
・<ENT>を押す。
・#9を押して、No Subtract Blankにセットする(ホーム画面に戻る)。
【0108】
E.試料の試験
・キュベット(A−11)にあらかじめ、適切な試料IDのラベルをつける。
・10μlの基剤の作業用液(C−3)を、先に装置(D−3)をブランクと較正するのに用いたキュベットに加える。
・キャップ(A−12)をして、5回ひっくり返して混ぜる。
・キュベットを、蛍光光度計(A−1)の試料用コンパートメントに入れる。
・蛍光光度計の蓋をしめたら即座にタイマーをスタートする。
・蛍光強度(FI)の読み取り値を、30秒、1分、2分、3分、4分、及び5分後にそれぞれ記録し、キュベットを、蛍光光度計の試料用コンパートメントから取り出す。
・2950μlのアッセイ緩衝材(C−1、室温)を第1の、あらかじめラベルをつけた試料キュベット(E−1)にピペットで入れる。
・第1の抽出粉試料(C−5)の上澄み液を50μlピペットでいれる。
・基剤の作業用液(C−3)を10μl加える。
・残りのすべての試料のために、ステップE−3〜E−6を、即座に繰り返す。
【0109】
F.計算
・それぞれの試料について、FI値vsインキュベーション時間を、反応曲線としてプロットする。
・反応曲線の傾き(ΔFI/分)を、エクセルのスプレッドシートの最小回帰を用いて決定する。
・ΔFI/分を以下のようにして、試料重量0.1000gで正規化する:
・正規化したΔFI/分=傾き×(0.1000g/試料重量g)
・リパーゼ活性を、ΔFI/分/0.1gとして報告する。
【0110】
(実施例2)
Bepexで加水排気付きで加熱処理した全粒小麦粉の焼成機能
本実施例では、BepexTurbulizer(登録商標)で熱処理されたふすま及び胚芽成分又は画分を実施例1のように排気つきで作成したものを用いて低圧熱処理で作った全粒小麦粉の焼成機能を、未処理の全粒小麦粉の焼成機能と比較した。ふすま及び胚芽及び胚乳を天然の全粒小麦粉と同じ比率で作った全粒小麦粉が、実施例1の表2に記載されている。全粒小麦粉の焼成時の機能性を評価するために用いられるクッキー試験焼成法は、AACC 10−53 Cookie Baking Testにしたがった。
【0111】
溶媒保持力(SRC)が、特定の粉の成分の機能(例えばダメージを受けたデンプンの量)を監視するための実際の試験として利用できる。用いられたSRCアッセイ法は、AACCのmethod 56−10を、以下のようにして修正し適合させたものである:
材料:
− 50ml遠心分離管+キャップ
− 5重量%の炭酸ナトリウム溶媒
− 遠心分離機(IEC社Centra GP8,269、ローター回転数2130rpm)
手順:
1.50ml遠心分離管+キャップ(特別な管の場合には、O−リングシールの重量も測る)の重量を計測する。
2.5.00gのふすま−胚芽混合物を計り、それぞれの管に加える(混合物含水量を決定する)。
3.25gの溶媒を(あらかじめ計量した溶媒のアリコート)をそれぞれの管に加える。
4.5分ごと(5、10、15、20分後にそれぞれ)に振りながら、20分間給水させる。
5.遠心分離機に15分間、1000xgでかける。
6.上澄み液を取り出して、角度45度で5分間、更に90度で5分間、水を切る。
7.キャップを再び装着し、ペレットを計量する。
8.計算:
【0112】
【数1】
【0113】
AACC 10−53クッキー試験焼成法
AACC 10−53クッキー試験焼成法は、材料の機能性を評価し、感覚と機械的食感分析とを予言的に相関づけるためにNabisco Biscuit社で設計されたものである(機械的食感分析は、TAXT2食感分析機で、3点曲げ試験又は破壊試験によって実行される)。このテストは、USDA Soft Wheat Quality Lab(オハイオ州Wooster)によって確認されたAACC 10−52のシュガースナップクッキー試験焼成法を改良したものである。AACC 10−53試験は、Soft Wheat Quality Committeeによって試験協力をうけた末に、1992年に、米国穀物化学者学会の公式な方法として採用された。試験で用いられる機材、クッキー生地組成物、混合の手順、焼成の手順、測定の手順等は、以下の通りである:
機材
水分分析器、粉の水分の判定をするために、使い捨ての試料パンが用意されている。
デジタル温度計(Omega社のmodel 872A)熱電対つき。
C−100 Hobart Mixer、3クォートのミキシングボウルと、パドルが装着されている。
National試験焼成オーブン
アルミ製クッキーシート:幅26cm×長さ30cm、2本のゲージバーは、それぞれ幅12mm×長さ30cm×高さ7mm。
クッキーカッター(内径60mm)。
スリーブ付ローリングピン(スリーブの線が、ピンの長手方向に走っている)。
スパチュラ、茶色の吸収用紙、アルミフォイル、プラスチック製ビーカー。
TA−XT2食感分析器
**生地のレオロジーに関する任意追加の試験
**−専用皿の寸法は、10cm、長さ10.5cm、高さ3.2cmである
標準の配合AACC 10−53 4枚の試験クッキーを作るためのシングルバッチ
【0114】
【表3】
【0115】
粉含水量を焼成する日それぞれで計測する。粉と水のレベルを調整して、13%含水量からの逸脱分を補正する。
○粉含水量を記録し、次式のFMに代入して、バッチ当たりの実際の粉の重量を計算する。
●実際の粉の重量(g)=87/(100−FM)
*225g
○バッチ当たりの実際の粉の重量を記録し、次式のAFWに代入して、バッチ当たりに加える水の実際の重量を計算する。
●実際に追加する水(g)=49.5g+225−AFW
*225g
【0116】
一般的混合の手順:
段階−1:乾燥した材料を混ぜ合わせる(無脂肪乾燥ミルク、食塩、重曹、砂糖)
脂肪を加える
Hobart mixerで3分間、低速度で混ぜる。1分間混ぜるごとに、パドルとボウルの側面から混合物をかきおとす。
【0117】
段階−2:重炭酸アンモニウムを水に溶かし、高果糖コーンシロップを加える。
溶液全部を、段階−1の混合物に加える:
1分間、低速で混ぜる。30秒ごとに、ボウルとパドルから混合物をかきおとす。
2分間、中速で混ぜる。30秒ごとに、ボウルとパドルから混合物をかきおとす。
【0118】
段階−3:粉を加え、液体の混合物に3回にわけて入れる。2分間、低速で混ぜる。30秒ごとに、パドルとボウルから混合物をかきおとす。
【0119】
焼成時間の決定:
焼成時間の定義は、配合にしたがって作った生地を204℃(400°F)で焼成している間に失われる重量が、13.85%になるために必要な時間である。
焼成時間を測定する:
配合にしたがって作った生地を204℃(400°F)で10、11、12、13分間、また一部の全粒小麦粉に関しては最大16分間まで焼成し、1分毎にベーキングシートとクッキーの合計重量を計測する。
焼成中失われたパーセント重量vs焼成時間(分)をプロットする。
13.58%の重量ロスを達成するために必要な時間を推定する。
焼成の詳細な仕様:
オーブンを202℃(400°F)に予熱する。
焼く前のクッキーシートの重量を記録する。
クッキーシートをオーブンにいれ、標準的焼成時間焼き、熱い状態のシートの重量を記録する。
【0120】
クッキー試験焼成のための4つの生地ブランクを調製する手順
生地を1片60gの、できるだけ変形させないようにポーションに分けて、クッキーシート上に載せる。クッキーシートのゲージバーに渡すようにローリングピンを載せ、力を他に加えなくてもピンの重さで生地片が圧縮されるようにする。ローリングピンを持ち上げ、クッキーシート端部のゲージバー上に載せる、1回だけ向こう側に回転させる。クッキーを60mm径のカッターで切断し、小さなスパチュラを用いて、生地を慎重に、持ち上げて剥がす。カッターを真っ直ぐ持ち上げ、水平方向に歪みを与えないようにする。
【0121】
生地のブランク及びクッキーシートの重量を記録する。
【0122】
生地ブランク及びクッキーシートを、シートに並べたままの向きでオーブンにいれ、クッキーを204℃(400°F)で所定の焼成時間、焼成する。
【0123】
オーブンから取り出して即座に、クッキーが載ったままクッキーシートを計量する。シートから慎重にクッキーを平らなスパチュラを用いて剥がして、茶色の紙の上に平らに、シート上に並べて焼いた時と同じ方向に広げて置く。
【0124】
幾何学的寸法の測定(少なくとも30分間クッキーを冷やしてから測る):
幅−シートにおいたのと直交する向きの径:4つのクッキーを、1列に、ローリングピンスリーブの線が測定棒の長さ方向に平行になるように置く。測定値をcm単位で記録する。
【0125】
長さ−シートにおいたのと平行な向きの径:クッキーを、ローリングピンスリーブの線が測定棒に直交するように、90°回転させる。測定値をcm単位で記録する。
【0126】
スタック高:4つのクッキーをスタックし、スタックしたものを横倒しにして、平らなガイドの間に置く。高さを記録する。
【0127】
表3に、SRC及び焼成結果を、比較対照例と、Bepex低圧で、排気しつつ熱処理した粉の(再現)例とについて示す。表3には、:(1)水、蔗糖、炭酸ナトリウム、及び乳酸の溶媒に対する、粉の溶媒保持力、(2)クッキーの幅、クッキーの長さ、及びスタック高、及び3)クッキー含水量が含まれる:
【0128】
【表4】
【0129】
表3に示したように、排気付きで低圧下でBepex処理したふすま及び胚芽成分又は画分を含む全粒小麦粉は、未処理の全粒小麦粉と似た焼成の質を示した。炭酸ナトリウムSRC及び水SRCを、未処理の全粒小麦粉のケースと比べると、熱処理された全粒小麦粉はわずかに高い、デンプンへのダメージと、水の吸収を示した。予想していなかったことに、処理済ふすま及び胚芽からの全粒小麦粉で作ったクッキーは、その広がりが(31.73cm〜32.8cmの幅、及び33.27cm〜32.37cmの長さ)比較対照例のもの(31.05cmの幅、及び31.7cmの長さ)よりも大きかった。
【0130】
(実施例3)
BepexTurbulizer(登録商標)で低圧下、排気つきで熱処理されたふすま及び胚芽成分又は画分を用いて作った100%全粒クッキーの感覚評価及び風味分析
本実施例では、その目的が、:1)Bepex Turbulizer(登録商標)で低圧下、排気つきで熱処理されたふすま及び胚芽成分又は画分を用いて実施例1及び2と同様に作った100%全粒クッキーの味を評価すること(パート1)、及び2)Bepex Turbulizer(登録商標)で低圧下、排気つきで熱処理され、実施例1と同じようにしてつくったふすま及び胚芽成分の小麦風味を分析すること(パート2)である。
【0131】
パート1:100%全粒クッキーの感覚的記述的分析
全粒製品は一般に、小麦風味又は青臭い、脂臭い、酸化した草のような風味を思わせるものがあり、また、粒状感のある味がするので、精白した粉から作った製品と比べて、消費者に一般には好まれない。感覚評価は、挽きふすま及び胚芽成分又は画分を低圧下、排気つきで熱処理したことが全粒小麦粉にもたらした、風味及び食感の違いを測定するために用いられる。感覚評価は、製品の持つ肯定的な風味の増加、及び食感の改善を求めるものである。プロセス中の含水量及び温度が試験されて、それらが実施例2で調製した試験用クッキーのような最終製品の、受容可能な特性に及ぼす影響を示すものである。熱処理されたふすま及び胚芽成分又は画分から作った全粒小麦粉で作ったクッキーが、未処理の全粒小麦粉ブレンドで比較対照例として作った基本のクッキー、及び、市販の標準的な安定化された全粒小麦粉で作った試料と比べて試験される。
【0132】
消費者科学試験の目的:
この調査の目的は:
− Bepex排気プロセスで温度及び水分のレベルのさまざま異ならせた全粒小麦粉で作ったクッキーの受容される差をプロファイリングし、また、未処理の全粒小麦粉及び市販の安定化された全粒小麦粉で作った試料と比較する。
【0133】
結果の要約
試料をあらゆる方向(芳香、見た目、手触り、風味、食感、後味/後口)から説明する39の属性の中から、試料のセットは統計的に有意な差を、8つの属性について示した:ナッツ風味、焼き上げた芳香、油の芳香、焦がした色、最初のひと噛みの硬さ、歯ごたえ、乾いた食感、及び唾液が出る様な後味。
試験された試料は、表4に識別した:
【0134】
【表5】
【0135】
試験:
製品は作ってから4週間経ったものであった。
【0136】
方法:
Tragon QDA(商標)法の訓練を受けた記述的パネルリストの1団(パネル)(n=8)が、製品の感覚的特性を評価するために用いられた。パネリストは、その感覚の鋭さと、説明描写する能力に基づいて選択された。パネリストは、一連の司会者付きの討論セッションを通じて、試料の、芳香、見た目、風味、食感、及び後味を、説明描写するための用語集を作った。
【0137】
試料はパネリストによって、作製した用語集を用いて個別に評価された。試料は、目隠しをして提供され、バランスを取った形で提供され、提供する順番から見方が偏るのをできるだけなくした。各パネリストは、すべての製品をすべての属性について、4回ずつ評価した。
【0138】
データは、ウェブにベースを持つ、Compusenseデータ収集システム(Compusense at Hand社、カナダ)によって回収され、Tragon QDA(商標)ソフトウェアを用いて分析された。評価のために用いた構造化されていない、ライン状のスケールを、電子的に、100ポイントのスケールに転換して、分析にかけた。分散分析(ANOVA)をデータに適用し、その各属性について、統計的に有意な差が試料間に存在するかどうかを判定した。存在すると判定された場合、Duncanの最小有意差ポストホック試験が、その特定の属性に用いられて計算が行われ、どの試料間に、そのような差が存在するかが判定された。(p≦0.05)。
【0139】
試料のセットを評価するために用いられる属性と定義
感覚属性、属性の定義、及び、感覚属性評価を行うにあたっての、ジャッジ又はパネリストへの指示を表5に示した:
【0140】
【表6-1】
【0141】
【表6-2】
【0142】
ビスケット試料の感覚的属性の平均値を表6に示す:
【0143】
【表7】
【0144】
結果:
試料間に有意な差が、芳香、見た目、及び食感に関していくつか見出された。芳香という点では、試料は、ナッツ、焼き上げた、及び油の属性に関して、異なる評価を受けた。低水分/高温度試験試料は、ナッツ及び焼き上げ属性で高い評価であり、低温度試料及びG3SWS試料より、有意に高い評価をナッツ属性で得た。また、高水分/低温度、全粒小麦粉再構成、及びG3SWS試料より高い評価を焼き上げ属性で得た。
【0145】
処理された試料のすべてが、油芳香が高かったが、パネルはそれを古いクッキーの古い油の臭いと評した。またそれは、G3SWS試料よりも、有意に高かった。
【0146】
見た目という点では、高温度処理試料は、他のすべての試料よりも有意に焦がした色が濃かった。
【0147】
食感においては、全粒の試料は、より硬質で乾燥していて、及び密度が濃かった。これらの試料は、最初のひと噛みの硬さでは、噛みごたえ、及び乾いた感じで違いがみられた。最初のひと噛みの硬さでは、高水分/低温度、及びG3SWSの試料が、高水分/高温度、低水分/高温度、及び全粒小麦粉再構成の試料より有意に硬かった。低温処理試料、及びG3SWS試料は、全粒小麦粉再構成試料よりも歯ごたえを示した。
【0148】
歯ごたえ、最初のひと噛みの硬さ、及び乾いた感じの、3つの属性は、温度によって有意な影響がみられた。歯ごたえは、温度が上がれば下がり、最初のひと噛みの硬さは、温度が上がれば上がり、乾いた感じは、温度が上がれば上がった。水分レベルは、これらの3つの属性に有意な影響を及ぼしてはいなかった。ナッツ芳香及び焦がした色の見た目は、温度が上がれば上がり、水分レベルはこれらの属性に有意な影響を及ぼしてはいなかった。知覚できる粒子は、水分レベルが上がれば上がり、温度はこの属性に有意な影響を及ぼしてはいなかった。
【0149】
パート2:Bepex Turbulizer(登録商標)で低圧下、排気つきで熱処理されたふすま及び胚芽成分又は画分を用いて作った100%全粒クッキーの風味分析
未処理のふすま及び胚芽の試料(比較対照例)及びBepex Turbulizer(登録商標)で低圧下排気つきで熱処理されたふすま及び胚芽成分の試料(試験#1、#2、#3、及び#4)が、ダイナミックヘッドスペースGC−MSで分析された。化合物は、MSのライブラリーによるマッチングによって識別され、レベルは内部標準を用いて正規化された。
【0150】
ふすま及び胚芽成分又は画分を安定化する最中に揮発性物質を排気したことで、小麦風味と関係する揮発性の化合物の量は減少している。ふすま及び胚芽成分又は画分を高温度(177℃)((350°F))で処理すると、ナッツ風味タイプの化合物を生成する傾向があり、これは、全粒小麦粉焼成製品の全体的な風味をゆがめる恐れがあった。ナッツ風味化合物の生成・増加は、水分レベル(8%及び18%)という安定化条件とは独立であった。
【0151】
Bepex Turbulizer(登録商標)で低圧下排気つきで熱処理されたふすま及び胚芽成分の試料は、安定化されていないふすま及び胚芽の比較対照例の試料と比べて、小麦臭さに関係する化合物のレベルが低かった。小麦臭さに関連する化合物の応答レベルは、試料#1では約50,000〜約125,000、試料#2では約75,000〜約100,000、試料#3では約50,000〜約140,000、試料#4では約100,000〜約345,000、及び比較対照例では約400,000〜約1,300,000であった。この結果が示すのは、揮発性の化合物を低圧下でBepex Turbulizer(登録商標)熱処理する際に排気することが、揮発性の化合物が全粒小麦粉に持ち込まれる可能性を、比較対照例における揮発性の化合物の持ち込みと比べて、予想以上に減らしているということである。
【0152】
小麦臭さに関連する化合物は、すべての安定化されたふすま及び胚芽成分の試料で、比較対照例の安定化されていないふすま及び胚芽成分と比べて、予想以上に低いことが分かった。小麦臭さに関連する化合物のレベルは、それが低ければ草のような、青臭い、また脂臭い、悪臭のするような、又はクラッカーの中のボール紙のような属性になるが、そのレベルは安定化されたふすま及び胚芽成分又は画分においては、低くなっていることがわかった。
【0153】
ふすま及び胚芽成分又は画分を高い処理温度条件(ジャケットの温度が221℃(430°F))で処理すると、ナッツ風味と関連する化合物(例えばピラジン及びジメチルピラジン)を試料#2及び#4で生成することで、焼成製品の全体的な風味のプロファイルをゆがめてしまうようである。唯一の図面に示したように、179℃(355°F)(ジャケットの温度)で処理した試料#1及び#3のふすま及び胚芽成分又は画分は、221℃(430°F)(ジャケットの温度)で処理した試料#2及び#4のふすま及び胚芽成分又は画分と比べて、ナッツ風味に関連する化合物の生成が少ないものの、試料1、2、3、及び4におけるナッツ風味化合物(グラフ左側がピラジン、右側がジメチルピラジン)は、未処理の比較対照例において生成される量よりも、予想外に多くなっている。
【0154】
ふすま及び胚芽の処理温度は、100%全粒小麦粉クッキーのナッツ風味及び焦がした色属性に、有意な影響を及ぼしている。水分レベルは、これらの属性に有意な影響を及ぼしてはいなかった。ふすま及び胚芽を安定化する最中に揮発性物質を排気したことで、小麦風味と関係する揮発性の化合物の量は減少している。
【0155】
(実施例4)
パートA押し出された熱処理済みふすま及び胚芽成分(ふすま&胚芽)の作製
本実施例では、挽きふすま及び胚芽成分又は画分を、様々な加工条件の下で押出し機にかけて、押し出された熱処理済みふすま及び胚芽成分又は画分を得て、全粒小麦粉中栄養素のロスを減らし、全粒小麦粉の機能的ダメージを減らし、押し出された熱処理済ふすま及び胚芽成分又は画分で作られた全粒小麦粉焼成製品の感覚属性を向上することを目的としている。様々に変えた処理条件には、表7に示すような、ふすま及び胚芽成分又は画分の含水量、ふすま及び胚芽成分又は画分の送り速度、及びスクリューの回転速度スクリューの回転速度がある。
【0156】
【表8】
【0157】
Acrison定量供給装置に、5cm(2”)のリボン式スクリューをつけたものを使って、ふすま及び胚芽成分(12%水分)を異なる送り速度(61.87kg/時〜150.57kg/時)で、Baker Perkins社製ツイン式スクリュー調理用押出し機(MPF−50 Mark II L/D 25:1)(Model No.7−1988)にフィードする。
【0158】
バレルへの水の送り速度は、0.71kg/時〜11.48kg/時まで、押出し加工用水ポンプ(Bran Lubbe N−P31)を用いて変化させる。スクリューは、350〜500rpmの運転速度で回転させる。作業ステップが終わると、ふすま及び胚芽成分を金型のオリフィスに通して、チェイン金型ヘッドを使ってふすま及び胚芽押出し成形物を形成する(Haensel Processing 2812)。押出し成形物を切断し、2ゾーン、3m(10フィート)長の乾燥用オーブン(Radiations Systems)を通して冷却する。各試行の間、押出し機のトルクを記録する。せん断速度及び比機械エネルギー(SME)を、表8に示す押出し機の構成及び処理条件に基づいて計算した。
【0159】
【表9】
* SME=(実際のスクリュー速度/定格スクリュー速度)×パーセントトルク(定格モーターの定格電力/送り速度(Kg/時)=キロW
*hr/Kg;
* せん断速度=((pi)
*(バレル直径/スクリュー直径)
*rpm))/((スクリュー直径−ルート直径)/2)
* 押出し機のモーターパワー:40HP
*0.746=30キロワット、バレル直径=5cm(2”);スクリュー直径=4.78cm(1.880”);ルート直径=2.858cm(1.125”)。
【0160】
パートB:全粒小麦粉及びふすま&胚芽の特徴づけ
熱処理を伴う押出し処理の後で、Bauermeister Gap Mill Model GM 40を用いて、それぞれのふすま及び胚芽の押出し成形物を挽いて微粉状にした(85%がUS# 70ふるいを通る)。挽きふすま及び胚芽は、残りの粉の画分(破砕粉+還元粉)と再び組み合わせて、全粒小麦粉を形成した。
【0161】
全粒小麦粉の粒径分布はRoto Tapを用いて判定した。本方法は、正確で、信頼できる結果を確保するために均一な機械的動作を用いる、広い範囲の製品及び材料に適用可能である。シェーカーは、人の手によってふるいにかける時の、回転とタッピング動作を再現している。この方法は、ASTA 10.0 RoTap Shaker法から、以下のような修正と適応をするによって、適合させたものである。
【0162】
全粒小麦粉の粒径分布方法
用いる器具類は:
1.Tyler RoTap電動試験ふるいシェーカー(Fisher Scientific社製)、自動タイマー付き
2.U.S.標準ふるい#20、#35、#40、#50、#60、#80、#100、下部分離パン及びカバー付き
3.天秤はかり、0.1gまで計量できるもの。
4.スクリーンを清掃するブラシ
5.シリコンパウダーフローエイド(Syloid #244,W.R.Grace & Co.)
【0163】
用いられる手順は:
1.清潔な、完全に乾かした、自重を計測してあるふるいを用意する。
2.指定のサイズの試料の重量を、正確に(0.1g単位まで)測り、250ml又は400mlのビーカーに入れる。
3.適切なふるいと下部のパンの重量をそれぞれ個別に計量する。
4.シェーカー上にふるいをスタックする。その際、目の最も粗いものを最上段に、下に行くほど目が細かくなるようにする。下部パンを下に置く。
5.試料をビーカーから最上部のふるいに、定量的に移す。
6.ふるいのカバーを上に載せ、次にシェーカーのプレート、円形フレームを載せる、タップアームを下げる。
7.タイマーを5分間にセットする。
8.ふるい終わったら、ふるいをRoTapから取り外して、慎重に各ふるい及びパンの重量を、別々に計量する。
【0164】
用いられる計算式は:
1.ふるいを1枚だけ用いる場合には、
【0165】
【数2】
【0166】
2.3枚又はそれより多くのふるいを用いる場合
ふるいA(S
a)、粗、上段
ふるいB(S
b)、中、中段
ふるいC(S
c)、細、下段
等
【0167】
【数3】
3.試料に加えたシリコンパウダーのフローエイドの量は、上記の計算をする前に、パン内の材料の重量から引いておくこと。
4.すべてのスクリーン上のパーセンテージ(+パン)を足すと、100%になるか、極めて近い値になるはずである。
【0168】
全粒小麦粉含水量及びふすま及び胚芽成分又は画分含水量は、AACCの、方法44−15Aにしたがって判定する。灰分は、AOACの公式方法923.03(粉、ふすま、胚芽中の灰分を測定する方法)によって測定する。ふすま及び胚芽の、引き出し可能なリパーゼ活性は、実施例1のようにして判定する。
【0169】
表9は、全粒小麦粉の以下の特性を示す:(1)全粒小麦粉の水分、(2)全粒小麦粉の灰分含有量、(3)ふすま及び胚芽成分又は画分含水量、(4)ふすま及び胚芽成分又は画分の灰分含有量、(5)ふすま及び胚芽成分又は画分のリパーゼ活性、及び(6)ふすま及び胚芽成分又は画分の粒径分布。
【0170】
【表10】
【0171】
まとめ及び結論
押出し処理されたふすま及び胚芽成分又は画分の含水量は、水の送り速度が速い時に高くなる(試行#1&#2)。ふすま及び胚芽成分又は画分の総含水量は、試行#1及び#2に対して24〜26%であった。試行#1及び#2のふすま及び胚芽成分の粒径はまた、比較対照例G3SWSのふすま及び胚芽成分の粒径よりも、わずかに細かいものであった。水の送り速度がゆっくりになると(試行#3〜6)、押出し処理前のふすま及び胚芽の含水量は、未処理のふすま及び胚芽の含水量(11.78%)と比べて有意に少なくなった(約3%〜5%)。しかしながら、当該最終全粒小麦粉の含水量は、未処理の全粒小麦粉及び市販の全粒小麦粉の含水量に依然として近い値である。
【0172】
押出し熱処理は、市販の全粒小麦粉のリパーゼ活性(164U/g)と比べて、リパーゼ活性をすべての試行で減らしている(662U/g〜陰性)が、このことは、押出し熱処理が、ふすま及び胚芽成分又は画分、及びそのようなふすま及び胚芽成分又は画分を含む全粒小麦粉を実質的に安定化させているということを示す。
【0173】
(実施例5)
全粒小麦粉の機能性及び栄養素に対する押出しの効果
本実施例では、実施例4の押し出された熱処理済みふすま及び胚芽成分又は画分で作られた全粒小麦粉への、押出しの効果が、粉の機能性という点と、食物繊維、ビタミンE、ビタミンB1、及びビタミンB2の含有量という点から判定される。全粒小麦粉の機能が、実施例2に説明した溶媒保持力試験と、修正Alveograph法とによって、試験された。用いられた、修正Alveograph法は:
【0174】
全粒Alveograph法
目的及び範囲:
この方法は、全粒小麦粉の全体的な二軸的延伸を特徴づけるために用いられるものである。この方法は、全粒小麦粉にのみ適用可能である。
【0175】
概要:
計算された量の全粒小麦粉が、計算された量の、2.5%塩化ナトリウム水溶液と混ぜ合わされる。得られた生地を押出し、小さなパティにカットして、温度が安定するまで静置する。次にパティを押圧して平らにし、空気の圧力をかけて膨らませ、気泡を作る。パティを膨らませるのに必要な圧力をグラフにする。
【0176】
器具類:
A)水槽:0.1℃の範囲内での加熱冷却が可能
B)Chopin Alveograph
C)Chopin RCV4 Calculator
D)Epson LX 810 printer
E)Alveograph Charts
F)点滴ボトル
G)16Lカーボイ容器
【0177】
試薬:
A)2.5%塩化ナトリウム水溶液:400gのNaCl/16000mlのミネラル除去した水
B)軽油(Fisher 0121−4)
【0178】
手順:
A)以下をチェックし記録すること:
1)粉の温度は、18〜25℃に維持する。
2)混合チェンバの温度は、24.0±0.2℃とする。
3)静置チェンバの温度は、25.0±0.2℃とする。
4)水槽の温度は、19〜22℃とする。
5)室温:21±1.4℃(70±2.5°F)とする。
6)水の塩分濃度は、2.4〜2.6% NaClとする。
7)相対湿度は、シール範囲65+15%
【0179】
手順:
B)水の添加:
1)粉試料のパーセント水分を、0.1%の単位まで決定する。
2)Alveographのアラームを以下のように合わせる:
混練:14分
混練+寝かせ:34分
3)粉の%水分と、望ましい%給水とに基づいて、粉と塩化ナトリウムの水溶液を、対応する添付のエクセルスプレッドシートを使って計算する。
注:予備実験において、55%及び60%給水の両方を行い、ベストな試験条件を決定すること。
4)Chopinビューレットを計算した量の2.5% NaCl溶液で満たす。ビューレットに溶液が入りすぎたら、コックを開いて、溶液をいくらか出すようにする。Kimwipeを使って、残りの水がビューレットの先端から出ないようにする。ビューレットは、その中の水を約20秒で排出するようにする。NaCl溶液の量が、Alveographビューレットの容量より多い場合には、当該量をメスシリンダーで正確に測るようにする。
5)計算された量の粉(±0.5g)を計り、混合用ボウルに移す。
6)ミキサー及びカウントダウンタイマーをスタートする。水をビューレットから、粉の入った混合チェンバに入れる。
7)1分経ったら(タイマーは33分を指す)、ミキサーを止め、ボウルの中身をかき落とし、すべての粉が生地に取り込まれるようにする。このステップを完了するのに、かけてよいのは1分間以内。1分が経過したら(タイマーは32分を指す)ミキサーを再スタートする。
8)この段階で、油を塗布したくなるであろう。(次のセクションへ)
【0180】
C)油の塗布:
混練が残り12分間となったら、その12分間にすべての油を塗布する。油滴はすべて、重力で落ちるようにして、アプリケーターの先が表面に触れないようにする。油のボトルは、油が塗布される表面に対して垂直に保つ。油をすべてスチール製のスパチュラを使って広げるが、ローラー、プレスキャップ、プレスプレートには塗らず、これらには、操作者が指又はプラスチック製の薄いスパチュラを使って油を広げる。
以下の分量で油を塗布する:
【0181】
【表11】
【0182】
D)押出し:
1)試料が追加的に12分間混練された後(タイマーは20分を指す)、ミキサーをストップし、ミキサーの向きを逆にして、押出しゲートを完全に開放する。そしてモーターを戻し装着する。ミキシング用ブレードの向きはこの段階で逆向きになっているので、生地は押出しゲートを通じて押し出されることが可能になっている。
2)ミキサーの壁から付着物をかき落とし、生地が壁に付着するのを回避する。以上の作業が終わったら、蓋を閉めて、次の作業に移る。
3)オイルを塗った押出しプレートを、スクリューの下であって、押出しギャップの前に置く。生地がプレート上に流れてくるようにする。
4)生地を押出し、最初の1cm(半インチ)を切り落とす。この一片は、廃棄してもよい。
5)生地を押出しプレート上に押し出す。この際、パティの側面に十分手を入れて、スクリューのヘッドから離れているようにする。生地の先端が跳ね上がった状態を保つ。生地を弄りすぎないようにする。あくまでも目指すのは、生地が自然な速さで出るに任せることであり、生地が塊状にならないように注意する。
6)生地のシートが約4.45cm(1 3/4”)の長さになったら、パティを切断して、シーティングプレート上に移動する。この長さの片を合計で5つ作るまで、押し出してはカットする。各シーティングアセンブリ上に2つのパティを配置する。3番目のアセンブリには、生地のピースは1つだけ載っている。
【0183】
E)切断:
1)鉱物油を薄くカッターに塗布し、生地がカッターに付着するのを避ける。
2)カッターを使って、生地片を切断する。切断は、押し出された順に行う。
3)1つの生地片が切断されると。それを静置用プレートに移す。次に、静置用プレートを静置用チャンバに置く。移動中にパティの形状及び厚さが変わらないように注意する。
4)生地片を、試験開始から丸34分間経過するまで、ねかせておく。
【0184】
生地片を延ばす:
1)Alveographを使用する前に、適切に較正を行っておかねばならない。較正には、機械と共に提供されている較正用ノーズピースを使う。
2)1つの生地片を、プレスプレートの真ん中に置く、プレスキャップを回してプレスアセンブリが回転しつつ降りて行くようにする。スタートから終了まで、丸2回転であるが、この2回転をするのにかかる時間は、20秒間とする(すなわち1回転あたり10秒)。
3)プレスが下まで下がったら、プレスキャップを外す。Alveograph上のダイヤルを1から3(6時の位置)に回す。次に、計算機上のスタートボタンを押す。泡の上に最初の穴が見えたら、RCV4計算機上のストップボタンを押す。これを5つの生地片すべてで繰り返す。
4)それが終わったら、結果を回収するために、avgボタンを押し、次に終了ボタンを押す。これにより結果の平均が求められて、グラフに印刷される。
5)グラフが印刷され終わったら、プリンターがベースライン終える前に、キャンセルボタンを2回押す。LEDの表示がPRETを示すはずである。
6)ここで、個々の結果が回収される必要がある。テストボタンを押し、次に#1ボタン、そしてエンターボタンを押す。これにより個々の試験にアクセスできる。結果、更に第1のパティへと進む。そしてスキャンボタンを押すと、最初のAlveograph試験の各パラメータにアクセスできる。これらの一連のステップを、試験1〜5に対して繰り返し行う。
【0185】
G)グラフの曲線の評価:
1)RCV4は自動的に結果を計算する。「L=100」のWを報告する必要がない。
【0186】
A.ふすま及び胚芽の押出し処理が、全粒小麦粉の機能性に及ぼす効果のSRCによる測定
実施例2で説明したSRC法を使って、全粒小麦粉の機能的特性に変化があったかどうかを測った。
【0187】
表10は、押出し処理における変数を示す:(1)ふすま及び胚芽成分の送り速度、(2)水の送り速度、(3)押出しせん断速度、(4)4種類の溶媒に対する溶媒保持力値:水、蔗糖、炭酸ナトリウム、及び乳酸
【0188】
【表12】
【0189】
表10に示すように、押し出されたふすまは、全粒小麦粉に再構成されると、粉に対して、溶媒を吸着する特性に影響を及ぼしている。デンプンのダメージは、炭酸ナトリウムSRCで測定できるが、比較対照例(79%)に対して、変数のすべての組み合わせで高くなった(165% ±8)。
【0190】
B.Alveographで測った、ふすま及び胚芽の押出し処理が全粒小麦粉の機能に及ぼす影響
上述のAlveograph法により、全粒小麦粉の機能的特性に起こった変化が測定された。表11は、押出し処理における変数を示す:(1)ふすま及び胚芽成分の送り速度、(2)水の送り速度、(3)押出しせん断速度、(4)Alveograph値Pが粘性、Lが伸展性、Wが焼成強度、及びP/Lは、曲線の構成割合である。
【0191】
【表13】
【0192】
表11に示したように、押出し処理されたすべての試料は、非常に小さい泡しか発生させておらず、延伸性に乏しく、くっつきやすい。ふすま及び胚芽成分の送り速度が低く、高い給水の水(試行#2)では、生地の機能性のわずかな改善が、他の押出し試行の結果と対照的に示されている。
【0193】
C.押出し処理が、ふすま及び胚芽成分のビタミンE、B1、及びB2の含有量に及ぼす影響
ふすま及び胚芽成分又は画分のビタミンB1(チアミン)がAOACの942.23、970.65、及び981.15にしたがって判定された。AOAC 942.23、970.65、及び981.15は、ふすま及び胚芽成分又は画分のビタミンB2(リボフラビン)含有量を測定するために用いられた。ふすま及び胚芽成分又は画分のビタミンEの含有量がAACCの86−06にしたがって判定された。表12に、ビタミン保持率判定の結果が示されている:
【0194】
【表14】
【0195】
表12は、ビタミンE及びB2が高い保持率をすべての試行に対して有していることを示している。しかしながら、ビタミンEのロスが、高い水送り速度(試行#1及び#2)でみられている。ビタミンB1は、ふすま及び胚芽成分の送り速度及び水送り速度が遅い場合に、試行3〜試行6(2.33〜16.77%保持率)で有意なロスを示している。しかしながら、試行#1及び#2では、ビタミンB1のロスは見られない。
【0196】
D.押出し処理が、ふすま及び胚芽成分の総食物繊維の含有量に及ぼす影響
ふすま及び胚芽成分又は画分の総食物繊維が、AOACの2009.01にしたがって判定され、結果が表13に示された:
【0197】
【表15】
【0198】
表13に示すように、押出し処理は、ふすま及び胚芽成分又は画分の総食物繊維含有量をわずかに変える。
【0199】
まとめ
押出し処理されたふすま及び胚芽成分は、全粒小麦粉に再構成されると、粉の溶媒を吸着する特性及び、生地の扱いやすさに影響を及ぼしている。粉の溶媒を吸着する特性は、比較対照例と比べて非常に高く、そのことは生地の機械での作業性、及び焼成パフォーマンスに悪い影響を及ぼす可能性があるが、ケーキ及びパンのような、含水量の高い焼成製品の製造には良い影響があると思われる。Alveographの結果も、全粒小麦粉生地がくっつきやすく、伸展性がないことを示している。押出し処理はふすま及び胚芽成分の、総食物繊維含有量を維持している。しかしながら、押出し処理は、ふすま及び胚芽成分又は画分のビタミンの含有量に、影響を及ぼすおそれがある。高いビタミン回収率を得るために、押出し処理の条件は、慎重に選択されるべきである。例えば試行#1及び試行#2は、高いビタミン保持率を提供している。
【0200】
(実施例6)
全粒小麦粉の焼成時の機能性及び、押出し熱処理されたふすま及び胚芽成分で作り、化学的に膨張させたクラッカーの感覚評価
本実施例では、パート1では、実施例4及び5の押出し熱処理されたふすま及び胚芽成分でつくった全粒小麦粉の焼成時の機能性が評価される。本実施例のパート2では、実施例4及び5の押出し熱処理されたふすま及び胚芽成分で作った100%全粒クラッカーの味及び食感が評価される。
【0201】
パート1:焼成時の機能性
本実施例では、実施例4及び5の押出し処理されたふすま及び胚芽成分でつくった全粒小麦粉の焼成時の機能性が、未処理の全粒小麦粉の焼成時の機能性と比較される。押出し処理されたふすま及び胚芽成分又は画分及び、天然のものと同じ割合の、ふすま、胚芽、及び胚乳でできている全粒小麦粉が、実施例4及び5、表7〜13の、例えば試行#2及び#4及び比較対照例に説明されている。化学的に膨張させたクラッカー試験焼成法は、全粒小麦粉の焼成時の機能性を評価するために用いられるが、それはKweonらのクラッカー法(Kweon et al.,Cereal Chemistry,88(1):19〜24(2011))である。焼成に用いる試験用の配合が表14に示されている。
【0202】
【表16】
【0203】
焼成結果
表15は、G3SWS比較対照例の全粒小麦粉、及び試行#2及び試行#4の押出し熱処理されたふすま及び胚芽成分又は画分を含む全粒小麦粉で作った100%全粒クラッカーの焼成結果を示す。
【0204】
【表17】
【0205】
表15に示すように、未処理の比較対照例クラッカーG3SWSは、押出し処理されたふすま及び胚芽成分(試行#2及び試行#4)で作ったクラッカーと比べて、スタック高がより高く、長さも長い。押出し処理されたふすま及び胚芽成分(試行#4)で作ったクラッカーは未処理の比較対照例クラッカーG3SWS、及びクラッカー押出し処理されたふすま及び胚芽(試行#2)よりも色が濃い。
【0206】
パート2:感覚評価
本実施例では、実施例4及び5、試行2の押出し処理されたふすま及び胚芽成分を含む全粒小麦粉で作った全粒クラッカーの、味、風味、及び食感を、未処理の全粒小麦粉、比較対照例G3SWSで作った全粒クラッカーと比較する。
【0207】
感覚評価の方法
製品は、味を評価する専門家のパネルにより、定量的に、目隠しをして、3ケタのコードでラベルをつけられて評価される。データは回収され、Senpaq v4.3(p<0.1)を用いて分析される
【0208】
結果:
比較対照例(G3SWS)と比較して、試行2で押出し処理されたふすま及び胚芽成分を含む全粒小麦粉から作られたクラッカーは、硬質で、サクサクとした食感で、よりしっとりとし、よりオイルが口に広がって、よりよく焼き上げられていて、生感は少なく、小麦臭くもなく、ふすまの存在がなく、木の印象がなく、よりカラメル風味であり、より加熱した油の香りがして、粒子がより少なく、また粒子径がより小さい。
【0209】
押出し処理は、小麦臭さの特徴を(風味、粒状感、乾燥)減らし、製品をより固くするが、フレーク感を改善していない。
【0210】
まとめ
押出し処理されたふすま及び胚芽成分からなる全粒小麦粉で焼いた100%全粒クラッカーは、スタック高が低く、サクサク感も低い。感覚的説明的結果は、押出しが、小麦の特性を小麦の小麦らしさ(風味、粒状感、乾燥)を減少させる一方で、製品をより固くするが、フレーク感を改善していないということを示した。