(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、飛翔する液滴の運動エネルギーは、その質量に比例する。また、液滴の質量は、その半径rの3乗(r
3)に比例する。液滴の半径とは、例えば、液滴の形状を球形近似した場合の半径である。
【0005】
これに対し、飛翔する液滴が空気中で受ける空気抵抗には、液滴サイズにより半径rに比例する成分と、半径rの2乗(r
2)に比例する成分がある。そのため、全体での空気抵抗は、r〜r
2の間の値に比例することとなる。そして、このような運動エネルギーと空気抵抗との関係により、空気中を液滴が飛翔する場合、液滴のサイズが小さくなると、空気抵抗の影響がより顕著となる。
【0006】
そのため、例えばインク滴のサイズを適切に微細化するためには、空気抵抗の影響を十分に抑えることが必要になる。また、例えばギャップ長を大きくしようとする場合も、インク滴が空気抵抗を受ける時間が長くなるため、空気抵抗の影響を十分に抑えることが必要になる。
【0007】
尚、従来から、インクジェットプリンタは、非接触でプリントできる特長を有している。しかし、高解像度化によりインクの液滴サイズが小さくなると、空気抵抗の影響により、速度の減速が急激におこることとなる。そのため、従来の構成のインクジェットプリンタにおいては、大きなギャップ長をあけて印刷をしようとすると、インク滴の着弾位置が不正確になる問題が生じる。そのため、例えば、高解像度印刷を行うために数pl程度の微小液滴のインク滴を用いる場合、安定してプリントできるギャップ長は、2〜4mm以下に限られる。
【0008】
このために、従来、インクジェットプリンタの特長である非接触プリントの特長を十分に発揮できない場合があった。特に、例えば、インクジェットヘッドに比べて同程度からより小さな半径を持つ凹型の内側に直接印刷をしようとする場合、高解像度の画像を適切に印刷することは困難であった。
【0009】
これに対し、本願の発明者は、先ず、飛翔するインク滴の周囲に気流を発生させ、インクの飛翔をアシストすることを考えた。そして、更に鋭意研究を行い、この方法で高解像度の印刷を適切に行うためには、インクジェットヘッドの構成により適した方法で気流を発生させることが好ましいことを見出した。
【0010】
例えば、単一ノズルや、ノズル数の少なくかつピッチの粗いインクジェットヘッドを用いる場合、ノズルの周囲から気流を発生させれば、インクの飛翔を適切にアシストできるとも考えられる。しかし、高解像度での印刷を行うためには、通常、数百を超す数のノズルが列状に並んだノズル列を有するインクジェットヘッドが用いられる。また、これらのノズルは、例えば70DPI程度を超える高解像度に対応する狭いピッチで並ぶ。そして、このような場合、ノズルの周囲で単に気流を発生しても、インクの飛翔を適切にアシストできないおそれがある。
【0011】
例えば、単にノズル列の周囲から気流を発生した場合、発生した気流がきれいな層流にならずに乱流化し、インクの吐出方向が乱れるおそれがある。また、ノズル列内の位置によって気流の影響を受ける度合いにバラツキが生じ、インク滴の着弾位置を高い精度で制御することが困難になるおそれもある。そのため、高解像度での印刷を行う構成においては、より適切な方法により、安定してインクの飛翔をアシストする層流の気流を発生することが望まれる。本発明は、上記の課題を解決できるインクジェットプリンタ、インクジェットヘッド、及び印刷方法を提供することを目的とする。
【0012】
尚、本発明に関連する先行技術を調査したところ、不活性ガスを導入しつつノズルから溶融半田を吐出するバンプ形成装置に関する特許文献1を発見した。また、空気流と静電力を利用したインクジェット記録装置に関する特許文献2を発見した。しかし、これらの特許文献に記載された構成は、本願発明とは全く異なる課題を解決するための構成である。また、構成も、本願発明と異なっている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)インク滴を媒体へ向けて吐出しながら移動するインクジェットヘッドを備えるインクジェットプリンタであって、インクジェットヘッドは、媒体へインク滴をそれぞれ吐出する複数のノズルが列状に並ぶノズル列と、ノズルから吐出されたインク滴に沿って媒体へ向かう気流を吹き出すとともに前記ノズル列が延伸する方向であるノズル列方向へ前記ノズル列に沿って並ぶ、それぞれが実質的に等価な空気コンダクタンスを有する
複数の気流吹出部とを有し、気流吹出部は、気流を吹き出す吹出口と、気流として吹き出す空気を吹出口へそれぞれ導く経路であり、ノズル列が延伸する方向であるノズル列方向へノズル列に沿って並ぶ複数の空気導入路と、前記複数の空気導入路の上流側に、当該複数の空気導入路のそれぞれよりも空気コンダクタンスが大きなエアバッファとを有し、それぞれの前記空気導入路は、前記エアバッファを介して導入される空気を、整流化して前記吹出口へそれぞれ導き、さらに、前記複数の気流吹出部は、前記ノズル列と直交する方向における前記ノズル列の両側に、前記ノズル列を挟んで並び、かつ、前記ノズル列の両側のそれぞれにおいて、前記ノズル列に沿って複数の列に並んでおり、ノズル列と複数の気流吹出部を挟むように、気流吹出部からの気流の向きを媒体の方向に向ける一対の風向設定部材が設けられ、風向設定部材は、長手方向をノズル列方向に向け、
吹出口におけるノズル列から遠い側の縁に沿って設けられたルーバー状部材であり、気流の向きを、ノズル列方向に並んだ気流吹出部の複数に跨って媒体の方向に向けるよう設けられる。
【0014】
複数の空気導入路は、細分化された経路に空気を流すことにより、吹出口へ向かう空気を整流化する。また、複数の空気導入路のそれぞれは、例えば、実質的に等価な空気抵抗特性を有する。実質的に等価な空気抵抗特性とは、例えば、設計上の空気抵抗が等価であることである。
【0015】
例えば、導入路から空気を導入する場合、気流中の空気は、導入路の壁面から抵抗を受ける。その結果、気流中の空気の速度分布は、導入路の断面における中央部ほど速度が速い分布となる。そのため、例えば、断面の大きな導入路を介して空気を導入する場合、経路内の位置による空気の速度のバラツキが大きくなる。
【0016】
また、このような速度分布になることを考慮すると、例えば、断面におけるノズル列方向の長さがノズル列より大きな導入路を介して空気を導入したとすると、ノズル列の端部のノズル近傍と、ノズル列の中央部のノズル近傍との間で、気流の速度の差が大きくなると考えられる。また、その結果、各ノズルから吐出されるインク滴が気流から受ける影響のバラツキが大きくなり、インク滴の着弾位置を高い精度で制御することが困難になるおそれもある。
【0017】
これに対し、構成1のように構成した場合、例えば、ノズル列方向に並ぶ複数の空気導入路を用いることにより、各空気導入路のノズル列方向の長さを小さくできる。これにより、例えば、各空気導入路の出口において、中央部と壁面近傍との間の空気の速度差を小さくできる。
【0018】
そのため、このように構成すれば、例えば、ノズル列内の各位置のノズルから吐出されるインク滴に対し、気流から受ける影響のバラツキを適切に低減できる。これにより、例えば、インク滴の着弾位置を高い精度で制御することが可能となる。また、このように構成した場合、気流内の空気の速度のバラツキが小さくなるため、気流の乱流化を抑えやすくなる。そのため、このように構成すれば、例えば、整流化された層流の気流を適切に吹き出すことができる。
【0019】
また、このような気流を発生させた場合、例えば、各ノズルから吐出されるインク滴は、気流中を飛翔することとなる。そのため、周囲の空気に対するインク滴の相対速度は、気流を発生させない場合と比べて小さくなる。そして、その結果、インク滴が受ける空気抵抗の影響も小さくなる。そのため、このように構成すれば、例えば、複数のノズルが並ぶノズル列を有するインクジェットを用いる構成において、インク滴の飛翔を適切にアシストできる。
【0020】
これにより、例えば、インク滴を微細化した場合にも、媒体へインク滴を適切に到達させることが可能になる。そのため、例えばインク滴を適切に微細化することが可能になる。インクジェットヘッドは、ノズルから、例えばサイズ(容量)が1pl以下(例えば0.1〜1pl)のインク滴を吐出してよい。これにより、例えば、気流を発生させない場合と比べ、高解像度の印刷をより適切に行うことが可能となる。
【0021】
更には、空気抵抗の影響を抑えることにより、ミスト化せずにインクが飛翔する飛翔距離を増大させることもできる。そのため、例えば、ギャップ長を大きくすることも可能になる。また、これにより、例えば、ギャップ長の大きなインクジェットプリンタを適切に提供できる。
【0022】
尚、気流吹出部は、気流として、例えば、ノズルからの距離に応じて複数段階に分かれた気流を発生してもよい。例えば、気流吹出部は、気流として、ノズルから吐出されるインク滴に沿って媒体へ向かう気流である主気流と、主気流を間に挟んでインク滴に沿って媒体へ向かう気流である副気流とを吹き出してもよい。主気流は、例えば、インク滴と直接に接しつつ、媒体へ向かう。副気流は、例えば、インク滴から主気流までの距離よりもインク滴からの距離が大きな位置において、インク滴に沿って媒体へ向かう。このように構成すれば、例えば、インクの飛翔をより適切にアシストできる。
【0023】
(構成2)インクジェットプリンタは、70DPI以上の解像度で印刷を行い、ノズル列は、ノズル列方向へ100個以上のノズルが並ぶ列であり、複数の空気導入路は、ノズル列方向へ5個以上並ぶ。このように構成すれば、例えば、高解像度の印刷を適切に行うことができる。
【0024】
(構成3)インクジェットヘッドは、複数の空気導入路の上流側に、複数の空気導入路のそれぞれよりも空気コンダクタンスが大きなエアバッファを更に有し、それぞれの空気導入路は、エアバッファを介して導入される空気を、吹出口へそれぞれ導く。
【0025】
複数の空気導入路を用いる構成において、このようなエアバッファを用いず、例えば、ブロワー等から直接空気導入路へ空気を導入した場合、ブロワー等からの距離の違いにより、各空気導入路へ導入される空気の圧力にバラツキが生じるおそれがある。また、各空気導入路に導入される空気の圧力にバラツキが生じると、吹出口から吹き出される気流の速度にもバラツキが生じることとなる。
【0026】
これに対し、このように構成すれば、例えば、各空気導入路へ導入される空気の圧力を適切に均一化できる。また、これにより、吹出口から吹き出される気流の速度のバラツキを適切に抑えることができる。
【0027】
(構成4)それぞれの空気導入路は、インク滴の吐出方向へ延伸し、かつ、インク滴の吐出方向と直交する断面が四角形状の導入路であり、複数の空気導入路は、ノズル列と直交する方向におけるノズル列の両側に、ノズル列を挟んで並び、ノズル列の両側のそれぞれにおいて、複数の空気導入路は、間に仕切り壁を挟んで隣接した状態で並ぶ。このように構成すれば、例えば、ノズル列方向に並ぶ複数の空気導入路を適切に形成できる。
【0028】
尚、空気導入路の断面が四角形状であるとは、例えば、各空気導入路が仕切り壁を挟んで並ぶように、実質的に四角形状であればよい。例えば、四角形の頂点に対応する空気導入路の内壁の角部等は、加工上の便宜等に応じて、丸みを帯びた形状等であってもよい。
【0029】
(構成5)それぞれの空気導入路における少なくともノズル列に近い側の端部は、インク滴の吐出方向と垂直な平面内でノズル列方向と直交する方向へ延伸し、かつ、ノズル列側の端部が斜めに切断されたパイプであり、気流吹出部の吹出口は、斜めに切断されることで形成されるパイプの開口部であり、複数の空気導入路は、パイプの開口部を媒体の側に向けて並ぶ。このように構成すれば、例えば、ノズル列方向に並ぶ複数の空気導入路を適切に形成できる。
【0030】
(構成6)それぞれの空気導入路は、一端側の近傍部分である先端部が曲げられたパイプであり、気流吹出部の吹出口は、パイプにおける先端部の開口部であり、複数の空気導入路は、先端部の開口部をインク滴の吐出方向へ向けて並ぶ。このように構成すれば、例えば、ノズル列方向に並ぶ複数の空気導入路を適切に形成できる。
【0031】
尚、パイプの先端部は、例えば直角に曲げられる。パイプが直角に曲げられるとは、例えば、開口部をインク滴の吐出方向の方向を向くように、実質的に直角に曲げられることである。パイプの曲がる角度は、必ずしも厳密に直角ではなく、例えば75〜105度程度であってもよい。
【0032】
(構成7)インクジェットヘッドは、ノズル列が形成される板状のノズルプレートと、ノズルプレートにおいてノズル列が形成される位置においてノズルプレートからインク滴の吐出方向へ突出する突起部とを有し、ノズル列の各ノズルは、ノズルプレート及び突起部を貫通する穴であり、複数の空気導入路は、それぞれの先端部を突起部に沿わせてインク滴の吐出方向へ向けることにより、開口部を吐出方向へ向けて並ぶ。
【0033】
先端部が曲げられたパイプを用いる場合、例えば、ノズルにおけるインク滴の出口に対し、気流の出口であるパイプの先端部の開口部がインク滴の吐出方向の前方にあると、気流の発生により、ノズルの出口近傍に負圧が発生するおそれがある。また、その結果、適切にインク滴を吐出できないおそれもある。
【0034】
これに対し、このように構成した場合、ノズルにおけるインク滴の出口は、突起部に形成される開口部となる。また、その結果、インク滴の出口は、吐出方向においてより前方となり、パイプの先端部の開口部との間の距離が小さくなる。そのため、このように構成すれば、例えば、気流の発生によりノズルの出口近傍に負圧が発生することを適切に抑えることができる。また、これにより、インク滴をより適切に吐出することが可能になる。
【0035】
尚、突起部に形成されるノズルの開口部と、パイプの先端部の開口部とは、実質的に同一面内に設置されることが好ましい。これらが実質的に同一面内に設置されるとは、例えば、負圧の発生を抑えるという目的に応じた精度で、同一面内に設置されることである。
【0036】
(構成8)気流吹出部は、気流の吹き出しによってノズルの近傍に生じる負圧を解消する空気をノズルの近傍へ送る負圧解消用空気導入路を更に有する。このように構成すれば、例えば、気流の発生によりノズルの出口近傍に負圧が発生することを適切に抑えることができる。また、これにより、インク滴をより適切に吐出できる。
【0037】
(構成9)複数の空気導入路は、ノズル列と直交する方向におけるノズル列の両側に、ノズル列を挟んで並び、かつ、ノズル列の両側のそれぞれにおいて、複数の空気導入路は、ノズル列に沿って複数の列に並ぶ。
【0038】
このように構成すれば、例えば、より遠くへ安定して到達する気流を適切に発生できる。また、これにより、例えば、インク滴の飛翔をより適切にアシストできる。
【0039】
(構成10)
インク滴を媒体へ向けて吐出するインクジェットヘッドであって、媒体へインク滴をそれぞれ吐出する複数のノズルが列状に並ぶノズル列と、ノズルから吐出されたインク滴に沿って媒体へ向かう気流を吹き出す気流吹出部とを備え、気流吹出部は、気流を吹き出す吹出口と、気流として吹き出す空気を吹出口へそれぞれ導く経路であり、ノズル列が延伸する方向であるノズル列方向へノズル列に沿って並ぶ複数の空気導入路とを有する。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【0040】
(構成11)インク滴を媒体へ向けて吐出することにより、インクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、ノズル列として並ぶ複数のノズルのそれぞれから媒体へインク滴を吐出し、ノズル列が延伸する方向であるノズル列方向へノズル列に沿って並ぶ複数の空気導入路を介して導入した空気を用い、ノズルから吐出されたインク滴に沿って媒体へ向かう気流を吹き出す。このようにすれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、例えば、インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインク滴が受ける空気抵抗の影響を、適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、高解像度の印刷や、ギャップ長を大きくしての印刷等を適切に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタ10の構成の一例を示す。インクジェットプリンタ10は、インクジェット方式で媒体50に対して印刷を行う印刷装置であり、インクジェットヘッド12、インクボトル14、インク中間タンク16、ブロワー18、気流供給配管20、及び気流分岐配管22を備える。
【0044】
また、本例において、インクジェットプリンタ10は、マルチパス方式で印刷を行う印刷装置であり、インク滴を吐出しながら移動するスキャン動作をインクジェットヘッド12に行わせる。そのため、図示は省略したが、インクジェットプリンタ10は、例えば、インクジェットヘッド12を移動させるヘッド駆動機構や、媒体50を搬送する搬送機構等を更に備える。
【0045】
インクジェットヘッド12は、インク滴を吐出する印刷ヘッドであり、ノズル列106及び気流吹出部120を有する。ノズル列106は、媒体50へインク滴をそれぞれ吐出する複数のノズル104が列状に並ぶ列である。ノズル列106は、例えば、ノズル列方向へ100個以上のノズル104が並ぶ列であってよい。また、本例において、インクジェットプリンタ10は、70DPI以上の解像度で印刷を行う印刷装置であり、ノズル列106には、この解像度に対応するピッチで、複数のノズル104が並ぶ。
【0046】
気流吹出部120は、ノズル104から吐出されたインク滴に沿って媒体50へ向かう気流を吹き出す。この気流により、本例において、インクジェットヘッド12は、インク滴の飛翔をアシストする。尚、インクジェットヘッド12における気流を吹き出す構成や、その効果等については、後に更に詳しく説明する。
【0047】
インクボトル14は、インクジェットプリンタ10で使用されるインクを貯留するボトルである。また、インク中間タンク16は、インクボトル14とインクジェットヘッド12とを繋ぐインク経路の途中においてインクを貯留するタンクである。インク中間タンク16は、インクボトル14から供給されるインクを貯留し、印刷動作の進行に応じて、インクジェットヘッド12へ、インクを供給する。また、本例において、インク中間タンク16は、ノズル104から吐出される前のインクを貯留するインク貯留部として機能する。尚、本発明の変形例においては、インクジェットヘッド12の内部におけるインク供給側の領域又はインクボトル14等が、インク貯留部として機能してもよい。
【0048】
ブロワー18は、気流を発生させる気流発生装置であり、発生した気流を、気流供給配管20を介して、インクジェットヘッド12へ供給する。気流供給配管20は、ブロワー18とインクジェットヘッド12とを繋ぐ配管であり、ブロワー18が発生する気流を、インクジェットヘッド12へ供給する。気流分岐配管22は、気流供給配管20を分岐した配管であり、インク中間タンク16に連結されることにより、ブロワー18とインク中間タンク16とを繋ぐ。
【0049】
この構成により、気流分岐配管22は、インクジェットヘッド12における気流吹出部120による気流の吹き出しの圧力を、インク貯留部であるインク中間タンク16へ伝える。これにより、気流分岐配管22は、インク貯留部の雰囲気の圧力を調整する圧力調整部として機能する。
【0050】
ここで、気流を発生させる効果を適切に発揮させるためには、気流の速度を高めることが必要な場合がある。そして、このような場合、ノズル104の近辺において気流の圧力が正圧となり、ノズル104からインクジェットヘッド12の内部への気流の逆流が生じやすくなる。
【0051】
これに対し、本例によれば、例えば、気流の吹き出しの圧力に応じて、インクジェットヘッド12の内部の側の圧力を適切に調整できる。そのため、インクジェットヘッド12の内部と外部との間で生じる圧力を、一定の圧力に適切に維持できる。また、これにより、例えば、ノズル104からインクジェットヘッド12の内部への空気の混入を防止できる。また、例えば、ノズル104からインクジェットヘッド12外部へのインクの漏れ等も、適切に防止できる。
【0052】
更には、本例においては、例えば、ブロワー18の圧力が変動しても、ノズル104を介して接続されるインクジェットヘッド12の内部と外部との間で、圧力の変動はキャンセルされる。そのため、本例によれば、例えば、インクジェットヘッド12の内部と外部との間で生じる圧力を、一定の圧力に適切に維持できる。
【0053】
図2は、インクジェットヘッド12の詳細な構成の第1の例を示す。
図2(a)は、ノズル列106と垂直な断面によるインクジェットヘッド12の断面図である。
図2(b)は、インクジェットヘッド12のA−A側断面図であり、(a)図に一点鎖線A−Aで示した平面によるインクジェットヘッド12の断面を示す。
図2(c)は、インクジェットヘッド12の底面図(下面図)であり、媒体50と対向する面であるノズル面側から見たインクジェットヘッド12を示す。
【0054】
本例において、インクジェットヘッド12は、ノズルプレート102、気流吹出部120、及びエアバッファ114を有する。ノズルプレート102は、ノズル列106が形成される板状部材であり、インクジェットヘッド12のノズル面に設けられる。尚、図示及び説明は省略したが、インクジェットヘッド12は、例えば、インク中間タンク16(
図1参照)から供給されるインクをノズル104から吐出するための構成等を更に備える。
【0055】
また、本例において、気流吹出部120は、主気流吹出口108、副気流吹出口110、及び複数の空気導入路112を有する。主気流吹出口108及び副気流吹出口110は、インク滴の飛翔をアシストする気流の吹出口である。
【0056】
主気流吹出口108は、ノズル面においてノズル列106と隣接する位置に形成される吹出口であり、ノズル104から吐出されるインク滴に沿って媒体50へ向かう気流である主気流を吹き出す。これにより、主気流吹出口108は、インク滴の飛翔を直接アシストする気流を吹き出す。また、本例において、主気流吹出口108は、ノズル列106に沿って延伸するスリット状の吹出口である。この構成により、主気流吹出口108は、例えば、長手方向をノズル列106と平行にしてノズル列106の全体をカバーするスリット状の気流を吹き出す。
【0057】
副気流吹出口110は、ノズル面において主気流吹出口108を挟んでノズル列106と隣接する位置に形成される吹出口であり、主気流を間に挟んでインク滴に沿って媒体50へ向かう気流である副気流を吹き出す。この副気流は、例えば、インク滴から主気流までの距離よりもインク滴からの距離が大きな位置においてインク滴に沿って媒体50へ向かう気流であり、主気流に沿って流れることにより、主気流の流れを制御する。副気流吹出口110は、例えば、主気流に沿った副気流を吹き出すことにより、主気流を層流に保ちつつ、主気流をより遠くへ誘導する。これにより、副気流吹出口110は、主気流を介して間接的にインク滴の飛翔をアシストする気流を吹き出す。
【0058】
本例において、副気流吹出口110は、空気導入路112の底面に形成された多数の小孔により構成される吹出口である。空気導入路112の底面とは、空気導入路112の先端部分におけるノズルプレート102と平行な面である。これらの小孔は、例えば、ノズルプレート102と平行な面内において主気流吹出口108を囲むように設けられる。この構成により、副気流吹出口110は、主気流を挟みつつ主気流に沿って媒体50へ向かう副気流を発生する。本例によれば、例えば、主気流及び副気流を適切に発生させることができる。
【0059】
尚、副気流は、例えば、主気流に沿って流れることにより、主気流が広がることや、主気流の減速を抑える。副気流吹出口110は、このような副気流を吹き出すことにより、例えば、主気流を支え、整流化された層流に保つ。そのため、本例によれば、例えば、安定した主気流を適切に発生させることができる。これにより、インクの飛翔を適切にアシストできる。また、例えば、安定した主気流を発生しやすい構成とすることにより、主気流の速度をより高めることも可能になる。そのため、このように構成すれば、インク滴が受ける空気抵抗の影響をより適切に抑えることができる。
【0060】
また、副気流を発生させることは、例えば、インクジェットヘッド12の移動速度の速い場合や、より遠くへインク滴を液滴を到達させようとする場合に特に有効となる。そのため、インクジェットヘッド12の移動速度が小さい場合や、ギャップ長が短い場合等には、副気流を発生させず、主気流のみを発生させてもよい。
【0061】
複数の空気導入路112は、主気流及び副気流として吹き出す空気を主気流吹出口108及び副気流吹出口110へそれぞれ導く経路(空気通路)であり、細分化された経路に空気を流すことにより、主気流吹出口108へ向かう空気を整流化する。本例において、それぞれの空気導入路112は、エアバッファ114と主気流吹出口108及び副気流吹出口110との間に設けられており、エアバッファ114から供給される空気を、主気流吹出口108及び副気流吹出口110へ送る。
【0062】
また、それぞれの空気導入路112は、仕切り壁202により分割することで細分化された導入路である。それぞれの空気導入路112は、インクジェットヘッド12から媒体50へ向かうインク滴の吐出方向へ延伸し、間に仕切り壁202を挟んで隣接した状態で並ぶ。また、インク滴の吐出方向と直交する空気導入路112の断面は、四角形状である。このような構成により、複数の空気導入路112は、ノズル列106の両側において、ノズル列方向へノズル列106に沿って並ぶ。
【0063】
尚、複数の空気導入路112のそれぞれは、同じ形の経路に細分化されることにより、等価な空気抵抗特性を有している。また、ノズル列106の両側の空気導入路112から導入される空気は、
図2(a)に示すように、ノズル列106を略中心として合流し、ノズル104から吐出されるインク滴の飛翔方向と同じ方向である図の下方向へ、主気流吹出口108から、主気流として吹き出される。また、導入される空気の一部は、副気流吹出口110から、副気流として吹き出される。
【0064】
エアバッファ114は、複数の空気導入路112のそれぞれよりも大きな空気コンダクタンスを有しており、複数の空気導入路112の上流側において空気導入路112と気流供給配管20との間に設けられる。これにより、エアバッファ114は、空気導入路112へ送られる空気の圧力を安定化する。
【0065】
このような構成により、本例においては、等価な空気抵抗特性を有する複数の空気導入路112へ、十分大きい空気コンダクタンスを持つエアバッファ114から、有圧の空気が供給される。また、それぞれの空気導入路112は、エアバッファ114を介して導入される空気を、主気流吹出口108及び副気流吹出口110へそれぞれ導く。
【0066】
これにより、例えば、各空気導入路112へ導入される空気の圧力を適切に均一化できる。また、導入される空気の圧力を均一化することにより、例えば、主気流吹出口108及び副気流吹出口110から吹き出される気流の速度のバラツキを適切に抑えることができる。また、例えば、仕切り壁202で仕切られた複数の空気導入路112を用いることにより、空気導入路112により整流化された主気流を適切に発生させることができる。これにより、例えば、ノズル列方向に流量変化の少ない一定のスリット状の気流を適切に発生できる。また、このような気流を発生させることにより、例えば、インク滴が受ける空気抵抗の影響を適切に抑えることができる。
【0067】
そのため、本例によれば、例えば、微小なインク滴を用いる場合や、ギャップ長が大きい場合にも、空気抵抗による速度減衰を抑え、着弾位置を正確に保つことができる。これにより、インク滴を適切に媒体に到達させ、高解像度の印刷を適切に行うことが可能となる。また、例えば、凹凸の大きな媒体へ高解像度の画像を安定して印刷すること等も可能となる。更には、仕切り壁202を設けることにより、例えば、気流吹出部120の機械的な強度を高めることもできる。
【0068】
また、本例においては、更に、主気流の外側に副気流を発生させることにより、主気流をより安定化させることができる。これにより、微小なインク滴をより遠方へ到達させることが可能となる。また、本例によれば、例えば、空気抵抗の影響を抑えることにより、ミスト化を適切に防ぐこともできる。これにより、例えば、インク滴の吐出時において、主滴よりも小さな液滴であるサテライトが発生した場合にも、適切にミスト化を抑えることができる。
【0069】
また、サテライトのミスト化を抑えることにより、例えば、サテライトの発生しやすいインクを用いる場合であっても、小さな液滴による高解像度の印刷や、ギャップ長を大きくしての印刷等が可能となる。サテライトの発生しやすいインクとは、例えば、サイズの大きな顔料を含むインクや、サイズが方向により大きく異なる鱗片状顔料を含むインクである。このようなインクとしては、例えば、メタリックインクやパールインクがある。
【0070】
尚、インクジェットヘッド12は、例えば、媒体50への着弾時のインク滴の速度が、その周囲における主気流の速度よりも大きくなる初速度で、ノズル104からインク滴を吐出する。このように構成すれば、例えば、着弾時点においても、媒体50へ向かう方向へのインク滴の相対速度を正に維持できる。これにより、例えば、媒体50の表面において気流の乱れが生じた場合等にも、その影響を抑え、媒体50へ適切にインク滴を着弾させることができる。また、例えば着弾時点での気流の乱れの影響が小さい場合等には、媒体50への着弾時のインク滴の速度は、その周囲における主気流の速度以下であってもよい。
【0071】
また、インク滴のサイズ(容量)は、例えば1pl以下(例えば0.1〜1pl)であってよい。また、例えば、インク滴のサイズ(容量)が3pl程度(例えば2.5〜3.5pl)である場合、ギャップ長は、例えば10mm以上(例えば10〜100mm)とすることが考えられる。ギャップ長は、例えば100mm以上であってもよい。
【0072】
また、図において、ノズル104や空気導入路112の数は、図面作成の便宜上で選んだものである。そのため、ノズル104や空気導入路112の数は、必要な印刷の精度等に応じて、適宜変更可能である。
【0073】
例えば、ノズル列方向において、ノズル列106におけるノズル104の数は、100以上であってよい。また、この場合、ノズル列106の両側のそれぞれにおいて、空気導入路112は、ノズル列方向へ5個以上並ぶことが好ましい。また、ノズル列方向において、空気導入路112が並ぶ数は、例えば、100個のノズル104あたり5個以上であることが好ましい。すなわち、ノズル列方向において、空気導入路112とノズル104との比(空気導入路112の数/ノズル104の数)は、0.05以上であることが好ましい。
【0074】
また、以上においては、説明を容易にするため、ノズル列106において一列にのみノズル104を配置した場合を図示及び説明した。しかし、ノズル列106は、例えば高速化や高解像度化等の目的のために、2列又は3列以上の複数列のノズル104を有してもよい。
【0075】
また、インクジェットヘッド12の構成としては、1色分の構成について、整流化機構である空気導入路112等を設けた構成を示した。同様の構成は、4色や6色、8色等の複数の色のヘッドが一体的に形成されたインクジェットヘッドにも適用できる。
【0076】
また、気流吹出部120の構成については、インクジェットヘッド12の本体部分と一体化された構造とする場合について説明した。しかし、これらの構成は、インクジェットヘッド12の本体部分から分離できる構造とすることがより好ましい。このように構成すれば、例えば、インクの汚れ等の清掃を行いやすくできる。
【0077】
図3は、複数の空気導入路112を用いる効果の一例を示す。
図3(a)は、細分化されていない経路である非細分化導入路152を用いた場合について説明する図である。
図3(b)は、細分化された経路である複数の空気導入路112を用いた場合について説明する図である。
【0078】
非細分化導入路152は、
図2を用いて説明した複数の空気導入路112の構成に対し、隣接する空気導入路112間の仕切り壁202を取り除いた構成の導入路である。そのため、ノズル列方向における非細分化導入路152の長さは、ノズル列106よりも長い。
【0079】
ここで、導入路を介して空気を導入する場合、導入路内を流れる空気は、導入路の壁面から抵抗を受ける。その結果、気流中の空気の速度(流速)の分布は、導入路の出口の中央部ほど速い分布となる。
【0080】
そのため、例えば非細分化導入路152のように、ノズル列方向に長い導入路を介して空気を導入すると、
図3(a)の下側に示したように、ノズル列106の端部のノズル104近傍と、ノズル列106の中央部のノズル104近傍との間で、流速の差が大きくなる。この場合、例えば、各ノズル104から吐出されるインク滴が気流から受ける影響のバラツキが大きくなり、インク滴の着弾位置を高い精度で制御することが困難になると考えられる。
【0081】
これに対し、本例においては、ノズル列方向に並ぶ複数の空気導入路112を用いることにより、例えば、各空気導入路112のノズル列方向の長さを小さくできる。これにより、例えば
図3(b)の下側に示したように、各空気導入路112の出口において、中央部と壁面である仕切り壁202近傍との間の流速の差を小さくできる。また、その結果、複数の空気導入路112の全体から導入される空気による流速の分布を、非細分化導入路152を用いる場合と比べて均一化できる。
【0082】
そのため、本例によれば、例えば、ノズル列106内の各位置のノズル104から吐出されるインク滴に対し、気流から受ける影響のバラツキを適切に低減できる。これにより、例えば、インク滴の着弾位置を高い精度で制御することが可能となる。また、気流内での流速のバラツキを抑えることにより、例えば、気流の乱流化を生じにくくできる。そのため、本例によれば、例えば、整流化された層流の気流を適切に発生できる。
【0083】
図4は、インクジェットヘッド12の構成の第2の例を示す。
図4(a)は、インクジェットヘッド12の断面図である。
図4(b)は、インクジェットヘッド12の底面図である。尚、以下に説明する点を除き、
図4において、
図2と同じ符号を付した構成は、
図2における構成と同一又は同様である。
【0084】
本例において、気流吹出部120は、空気導入路として、主気流用の空気を導入する複数の空気導入路112aと、副気流用の空気を導入する空気導入路112bとを有する。空気導入路112bは、例えば空気導入路112aと同じエアバッファ114に接続されてもよく、空気導入路112aとは別のエアバッファ114に接続されてもよい。
【0085】
本例において、複数の空気導入路112a、112bのそれぞれは、例えば極細のステンレスパイプ等のパイプであり、インク滴の吐出方向と垂直な平面内において、ノズル列方向と直交する方向を向いて、ノズル列106の両側に並んで設けられる。また、それぞれのパイプにおいて、ノズル列106側の端部は、斜めに切断されている。これにより、主気流を導入する空気導入路112aにおけるノズル列106側の端部の開口部は、主気流吹出口108となる。また、副気流を導入する空気導入路112bにおけるノズル列106側の端部の開口部は、副気流吹出口110となる。そして、空気導入路112a、112bは、主気流吹出口108又は副気流吹出口110となる開口部を媒体50(
図1参照)の側に向けて並ぶ。
【0086】
尚、本例において、主気流用の空気導入路112aは、例えば、ノズルプレート102の下面に沿って設けられる。また、副気流用の空気導入路112bは、ノズルプレート102との間に空気導入路112aを挟み、空気導入路112aに沿って設けられる。
【0087】
また、空気導入路112a、112bとして用いられるパイプとしては、例えば、加工性や強度が許す範囲で薄い肉厚のパイプを用いることが好ましい。このようなパイプとしては、例えば外径が0.5〜4mm、肉厚が0.03〜0.4mmのステンレスパイプを好適に用いることができる。また、このようなステンレスパイプとしては、例えば大場機工株式会社製のステンレスパイプを好適に用いることができる。また、例えばステンレス以外の素材のパイプを用いてもよい。
【0088】
また、本例において、インクジェットヘッド12は、ノズルプレート102においてノズル列106が形成される位置に、ノズルプレート102からインク滴の吐出方向へ突出する突起116を更に有する。突起116を設けることにより、本例において、ノズル列106の各ノズル104は、ノズルプレート102及び突起116を貫通する穴となる。また、気流吹出部120は、風向設定部材118を更に有する。
【0089】
突起116は、空気導入路112aと対向する面が傾斜したテーパー状の突起である。突起116において、ノズル列106と直交する方向の幅は、ノズルプレート102から離れるに従って漸減する。このような突起116を設けることにより、ノズル104の近傍において、主気流の向きを、媒体50の方向へ向けることができる。
【0090】
尚、本例において、突起116は、ノズルプレート102と別体の部品として形成され、ノズルプレート102の表面に取り付けられる。突起116は、ノズルプレート102と連続的に繋がった一体の部品として形成されてもよい。
【0091】
風向設定部材118は、主気流吹出口108及び副気流吹出口110から吹き出す気流の向きを媒体50の方向へ向ける部材である。本例において、風向設定部材118は、複数の羽板を組んだルーバー状部材である。風向設定部材118を構成する羽板は、長手方向をノズル列方向に向け、主気流吹出口108及び副気流吹出口110におけるノズル列106から遠い側の縁に沿って設けられる。これにより、風向設定部材118は、テーパー状の突起116と共に、主気流及び副気流の向きを設定する。
【0092】
本例においても、細分化された経路である空気導入路112a、112bを用いることにより、主気流及び副気流として、正圧の整流化された気流を適切に発生できる。また、これにより、インク滴が受ける空気抵抗の影響を抑え、インク滴の飛翔を適切にアシストできる。
【0093】
また、主気流用の空気導入路112aと、副気流用の空気導入路112bとを別にすることにより、例えば、副気流と主気流の供給圧力を変え、主気流の速度と副気流の速度を異ならせることも可能である。そのため、本例によれば、主気流及び副気流の速度をより柔軟に設定できる。
【0094】
尚、副気流の速度は、例えば、主気流の速度とほぼ同じか、主気流の速度より若干小さな速度とすることが好ましい。副気流の速度は、例えば、主気流の速度の0.3〜1.2倍、より好ましくは、0.8〜1.2倍である。このように構成すれば、例えば、副気流により主気流をより適切に支えることができる。
【0095】
また、空気導入路112a、112bとして用いるパイプとしては、断面が円形のパイプに限らず、例えば断面が長方形、正方形、又は楕円形等のパイプを用いてもよい。また、例えば長方形又は楕円形等の、一方向に長い形状の断面を有するパイプを用いる場合、断面の長手方向をノズル列方向に向けることが好ましい。このように構成すれば、例えば、より少ない数のパイプで空気導入路112a、112bを形成できる。
【0096】
図5は、インクジェットヘッド12の構成の第3の例を示す。
図5(a)は、インクジェットヘッド12の断面図である。
図5(b)は、インクジェットヘッド12の底面図である。尚、以下に説明する点を除き、
図5において、
図4と同じ符号を付した構成は、
図4における構成と同一又は同様である。
【0097】
本例において、気流吹出部120は、それぞれ複数列の空気導入路112a、空気導入路112bを有する。本例によれば、例えば、空気導入路112a、112bの数を増やすことにより、整流の効果を高め、主気流及び副気流の流速の分布をより均一化できる。これにより、例えば、より遠くへ安定して到達する気流を適切に発生できる。また、例えば、インク滴の飛翔をより適切にアシストできる。
【0098】
また、本例においては、それぞれ複数列の空気導入路112a、112bを用いることにより、例えば、ノズル列106からの距離に応じて、気流の速度を異ならせることも可能である。この場合、例えば、各列の空気導入路112bに対応する副気流吹出口110から吹き出される副気流について、ノズル列106から離れるに従って速度が小さくなるようにすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、主気流をより適切に支える副気流を発生できる。また、これにより、主気流をより安定化させることができる。
【0099】
尚、本例において、気流吹出部120は、ノズル列106の片側あたり、主気流用の空気導入路112a、及び副気流用の空気導入路112bをそれぞれ3列有する。空気導入路112a、112bの列数は、必要に応じて、適宜変更可能である。
【0100】
また、本例においては、副気流用の空気導入路112bとして、主気流用の空気導入路112aよりも太いパイプを用いている。本例によれば、例えば、インク滴の飛翔を直接アシストする主気流用の空気導入路112aを細くすることにより、より均一な気流により、インク滴の飛翔をアシストできる。また、ノズル列106から離れた位置から吹き出す副気流用の空気導入路112bを太くすることにより、より少ない数のパイプで空気導入路112bを形成できる。空気導入路112bとして用いるパイプは、例えば空気導入路112aと同じ径、又はより細いパイプであってもよい。
【0101】
図6は、インクジェットヘッド12の構成の第4の例を示す。
図6(a)は、インクジェットヘッド12の断面図である。
図6(b)は、インクジェットヘッド12の底面図である。尚、以下に説明する点を除き、
図6において、
図5と同じ符号を付した構成は、
図5における構成と同一又は同様である。
【0102】
本例において、それぞれの空気導入路112a、112bは、一端側の近傍部分である先端部が直角に曲げられたパイプである。この場合、このパイプにおける先端部の開口部が、主気流吹出口108及び副気流吹出口110となる。また、複数の空気導入路112a、112bは、先端部の開口部をインク滴の吐出方向へ向けて並ぶ。
【0103】
本例においても、細分化された経路である空気導入路112a、112bを用いることにより、整流化された主気流及び副気流を適切に発生できる。また、これにより、インク滴が受ける空気抵抗の影響を抑え、インク滴の飛翔を適切にアシストできる。
【0104】
また、本例においては、更に、主気流吹出口108及び副気流吹出口110となるパイプの開口部が、インク滴の吐出方向を向いて開口する構成となる。そのため、本例によれば、インク滴の吐出方向と気流の方向をより一致させやすくなる。
【0105】
尚、本例の構成において、正圧の主気流及び副気流を発生する状況を考えた場合、ノズル104の近辺に空気の供給がないとすれば、ノズル104の近辺が負圧となり、渦流等の乱流が生じ、インク滴の吐出が乱れるようにも思われる。しかし、本例においては、空気導入路112a、112bがパイプで形成されているため、隣接するパイプの間に隙間が存在している。この場合、例えばノズル104の近辺が負圧となったとしても、パイプの隙間より空気が流入し、負圧が解消される。そのため、本例によれば、負圧による乱流化等を適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、ノズル列方向に並ぶ複数の空気導入路112a、112bを適切に形成できる。
【0106】
図7は、インクジェットヘッド12の構成の第5の例を示す。
図7(a)は、インクジェットヘッド12の断面図である。
図7(b)は、インクジェットヘッド12の底面図である。尚、以下に説明する点を除き、
図7において、
図6と同じ符号を付した構成は、
図6における構成と同一又は同様である。
【0107】
本例において、気流吹出部120は、
図5を用いて説明した構成と同様に、それぞれ複数列の空気導入路112a、空気導入路112bを有する。そのため、本例においても、例えば、空気導入路112a、112bの数を増やすことにより、整流の効果を高め、主気流及び副気流の流速の分布をより均一化できる。これにより、例えば、より遠くへ安定して到達する気流を適切に発生できる。また、例えば、インク滴の飛翔をより適切にアシストできる。
【0108】
尚、本例において、気流吹出部120は、ノズル列106の片側あたり、主気流用の空気導入路112aを2列、副気流用の空気導入路112bを3列有する。空気導入路112a、112bの列数は、必要に応じて、適宜変更可能である。
【0109】
また、インクジェットヘッド12は、ノズル列106の位置に、突起116を更に有する。以下に説明する点を除き、本例の突起116は、
図4に示した突起116と同一又は同様である。本例において、突起116は、空気導入路112aと対向する面がノズルプレート102の表面と垂直な突起である。また、主気流用の空気導入路112aは、それぞれの先端部を突起116に沿わせてインク滴の吐出方向へ向ける。
【0110】
これにより、空気導入路112aは、開口部を吐出方向へ向けて並ぶ。尚、本例においては、2列の空気導入路112aのうち、ノズル列106に近い側の列における空気導入路112aが、先端部を直接突起116に沿わせて並ぶ。また、ノズル列106から遠い側の列における空気導入路112aは、ノズル列106に近い側の列の空気導入路112aを間に挟んで、先端部を直接突起116に沿わせて並ぶ。
【0111】
以上の構成により、本例において、突起116に形成されるノズル104の開口部は、空気導入路112aの先端の開口部である主気流吹出口108と、同一面内に設置される。この場合、ノズル104の開口部の位置と主気流吹出口108の位置が、インク滴の吐出方向において揃うため、主気流を吹き出しによるノズル104の周辺の負圧は発生しにくくなる。そのため、本例によれば、例えば、主気流の吹き出しによってノズル104の周辺に負圧が発生することを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、吐出されるインク滴に擾乱を与えにくい構成を実現し、インク滴をより適切に吐出することが可能になる。
【0112】
図8は、インクジェットヘッド12の構成の第6の例を示す。
図8(a)は、インクジェットヘッド12の断面図である。
図8(b)は、インクジェットヘッド12の底面図である。尚、以下に説明する点を除き、
図8において、
図7と同じ符号を付した構成は、
図7における構成と同一又は同様である。
【0113】
本例において、気流吹出部120は、複数の負圧解消用空気導入路124を更に有する。複数の負圧解消用空気導入路124は、気流の吹き出しによってノズル104の近傍に生じる負圧を解消する空気をノズル104の近傍へ送る導入路であり、ノズル列106の両側において、空気の出口となる開口部122をノズル列106に向けて、ノズル列106に沿って並ぶ。負圧解消用空気導入路124におけるノズル104から遠い方の端部は、例えば空気中に開放されていてよい。
【0114】
このように構成した場合、主気流の吹き出しによりノズル104の近辺に負圧が発生したとしても、負圧解消用空気導入路124から導入される空気により、負圧を適切に解消できる。そのため、本例によれば、例えば、より安定に整流化された主気流を適切に発生させることができる。また、これにより、インク滴をより適切に吐出することが可能になる。
【0115】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。