特許第6018366号(P6018366)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧

<>
  • 特許6018366-真空バルブの製造方法 図000002
  • 特許6018366-真空バルブの製造方法 図000003
  • 特許6018366-真空バルブの製造方法 図000004
  • 特許6018366-真空バルブの製造方法 図000005
  • 特許6018366-真空バルブの製造方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018366
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】真空バルブの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/664 20060101AFI20161020BHJP
   H01H 33/662 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   H01H33/664 B
   H01H33/662 F
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-140867(P2011-140867)
(22)【出願日】2011年6月24日
(65)【公開番号】特開2013-8579(P2013-8579A)
(43)【公開日】2013年1月10日
【審査請求日】2014年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(72)【発明者】
【氏名】浅利 直紀
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 遥
(72)【発明者】
【氏名】塩入 哲
(72)【発明者】
【氏名】染井 宏通
(72)【発明者】
【氏名】竹井 義博
(72)【発明者】
【氏名】大竹 史郎
【審査官】 安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−273342(JP,A)
【文献】 特開2010−123347(JP,A)
【文献】 特開平08−064054(JP,A)
【文献】 特開平08−111131(JP,A)
【文献】 特開平04−312723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/662
H01H 33/664
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接離自在の一対の接点を有する真空バルブの製造方法であって、
前記接点を導電成分と耐弧成分とを所定量混合して製造し、
先ず、接触面全域にエネルギー照射を行って前記耐弧成分を微細化した第1の微細層を設け、
これを冷却後、真空バルブに組込み、
そして、前記第1の微細層の表面に電流コンディショニング処理を行い、
前記耐弧成分の粒径を前記第1の微細層のものと比べて同等以下とする第2の微細層をランダムに設けたことを特徴とする真空バルブの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、接離自在の一対の接点を有する真空バルブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Cu−Cr合金を用いるような接点では、耐弧成分のCr粒子を微細化し、耐電圧特性の向上が図られている。この手段として、真空バルブ組立前の接点表面に、電子線によりエネルギー照射を行うことが知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、真空バルブ組立後に、接点間を放電させる電流コンディショニング処理を行うことが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
しかしながら、エネルギー照射を行った接点では、真空バルブ組立時の入熱により耐弧成分の粒径が増大することがある。また、組立時には、短時間であるものの、接点が大気に曝され、酸化などが起こり、耐電圧特性の向上をし難くさせる。
【0004】
一方、電流コンディショニング処理においては、一般的に数10〜数100回の所定回数の放電を行うものの、接点全域への処理が困難であり、耐電圧特性の向上に限界が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−111131号公報
【特許文献2】特開2010−123347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、真空バルブ組立前のエネルギー照射による耐弧成分の微細化を保ちつつ、電流コンディショニング処理による微細化を加え、耐電圧特性を向上させることの可能な真空バルブの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、実施形態の真空バルブの製造方法は、接離自在の一対の接点を有する真空バルブの製造方法であって、前記接点を導電成分と耐弧成分とを所定量混合して製造し、先ず、接触面全域にエネルギー照射を行って前記耐弧成分を微細化した第1の微細層を設け、これを冷却後、真空バルブに組込み、そして、前記第1の微細層の表面に電流コンディショニング処理を行い、前記耐弧成分の粒径を前記第1の微細層のものと比べて同等以下とする第2の微細層をランダムに設けたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係る真空バルブの構成を示す断面図。
図2】本発明の実施例に係る真空バルブの製造方法を示す図。
図3】本発明の実施例に係る真空バルブの接点の製造直後を断面して示す説明図。
図4】本発明の実施例に係る真空バルブの接点のエネルギー照射時を断面して示す説明図。
図5】本発明の実施例に係る真空バルブの接点の電流コンディショニング処理時を断面して示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0010】
本発明の実施例1に係る真空バルブを図1図5を参照して説明する。図1は、本発明の実施例に係る真空バルブの構成を示す断面図、図2は、本発明の実施例に係る真空バルブの製造方法を示す図、図3は、本発明の実施例に係る真空バルブの接点の製造直後を断面して示す説明図、図4は、本発明の実施例に係る真空バルブの接点のエネルギー照射時を断面して示す説明図、図5は、本発明の実施例に係る真空バルブの接点の電流コンディショニング処理時を断面して示す説明図である。
【0011】
図1に示すように、アルミナ磁器よりなる筒状の真空絶縁容器1の両端開口部には、固定側封着金具2と可動側封着金具3が封着されている。固定側封着金具2には、中央部に固定側通電軸4が貫通固定され、真空絶縁容器1内の端部に固定側接点5が固着されている。固定側接点5に対向し、接離自在の可動側接点6が可動側封着金具3を移動自在に貫通する可動側通電軸7端部に固着されている。可動側通電軸7の中間部には、伸縮自在のベローズ8の一方端が封着され、他方端が可動側封着金具3の中央開口部に封着されている。これにより、真空絶縁容器1内の真空を保って可動側通電軸7を軸方向に移動させることができる。接点5、6の周りには、筒状のアークシールド9が設けられている。
【0012】
ここで、接点5、6は、Cu−Cr合金からなり、この合金の基材層5a、6aと、接離面となる表面全域にエネルギー照射により設けられたCr粒子を微細化した第1の微細層5b、6bと、電流コンディショニング処理によりランダムに設けられたCr粒子を微細化した第2の微細層5c、6cとで構成されている。
【0013】
次に、固定側接点5を用い製造方法を図2図5を参照して説明する。可動側接点6も同様である。
【0014】
図2に示すように、所定量を混合したCu−Cr合金の焼結体から所定形状の基材層5aを製造する(st1)。基材層5aには、図3に示すように、Cuマトリックス5a1中に、粒径数10μmのCr粒子5a2が混合されている。そして、先ず、基材層5aの接離面となる表面全域に例えば電子線により1W/mmのエネルギーを照射し、深さ20〜30μmを溶融させ(st2)、冷却する(st3)。溶融、冷却により、図4に示すように、第1の微細層5bが形成され、Cr粒子5a2が微細化され、粒径0.数〜数μmの第1の微細Cr粒子5b1が形成される。
【0015】
次に、第1の微細層5bを有する接点5を、ろう付け作業などにより真空バルブに組込む(st4)。この場合、運搬時などに大気中に曝されることがある。組立後、接点5を所定間隔に開き、数Aの小電流を用い、数10〜数100回の所定回数、放電させる電流コンディショニング処理を行う(st5)。すると、図5に示すように、第1の微細層5bの表面に、ランダムに第2の微細Cr粒子5c1を有する第2の微細層5cが形成される。なお、放電条件によっては、第2の微細層5cが基材層5aに達することがある。
【0016】
第2の微細Cr粒子5c1は、真空バルブ組立時の入熱により成長してCr粒径が増大しても、電流コンディショニング処理で微細化される。また、第1の微細層5bの表面に酸化物などの不純物が付着していても、除去される。なお、溶融、冷却直後の第1の微細層5bの温度が周囲温度(常温)よりも高ければ、微細Cr粒子5b1の粒径の増大が抑制される。
【0017】
電流コンディショニング処理では、第2の微細層5cが形成される場所を制御できない。しかしながら、第2の微細層5cが形成されていない個所であっても第1の微細層5bが形成されているので、耐電圧特性を向上させることができる。なお、第2の微細Cr粒子5c1の粒径は、第1の微細Cr粒子5b1と比べて同等以下となる。
【0018】
Cu65(wt%)−Cr35(wt%)合金で焼結体を製造し、基材層5aのみで求めた破壊電圧に対し、エネルギー照射を行い第1の微細層5bを設けたものでは、約30%の向上があった。これを真空バルブに組込み、50回の電流コンディショニング処理を行い第2の微細層5cを設けたものでは、更に約25%の向上が見られた。破壊電圧は、30回印加後の安定した値である。
【0019】
上記実施例の真空バルブによれば、接点5、6の製造時に接離面全域にエネルギー照射を行い、Cr粒子5a2を微細化し、真空バルブ組立後においても、電流コンディショニング処理を行い、Cr粒子5a2の微細化を確実なものにしているので、耐電圧特性を大幅に向上させることができる。
【0020】
上記実施例では、耐弧成分にCrを用いて説明したが、W、Nb、Ta、Ti、Moの炭化物のうち、少なくとも1種類以上を用いることができる。このため、耐弧成分をまとめると、第1の微細Cr粒子5b1を含めたエネルギー照射後の炭化物を第1の微細耐弧成分、第2の微細Cr粒子5c1を含めた電流コンディショニング処理後の炭化物を第2の微細耐弧成分と称することができる。また、補助成分として、Bi、Te、Se、Sb、Coのうち、少なくとも1種類以上を5(wt%)以下含有させることができる。更に、導電成分にCuを用いて説明したが、Agを用いることができる。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0022】
1 真空絶縁容器
2 固定側封着金具
3 可動側封着金具
4 固定側通電軸
5 固定側接点
5a、6a 基材層
5a1 Cuマトリックス
5a2 Cr粒子
5b、6b 第1の微細層
5b1 第1の微細Cr粒子
5c、6c 第2の微細層
5c1 第2の微細Cr粒子
6 可動側接点
7 可動側通電軸
8 ベローズ
9 アークシールド
図1
図2
図3
図4
図5