【実施例】
【0010】
本発明の実施例1に係る真空バルブを
図1〜
図5を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例に係る真空バルブの構成を示す断面図、
図2は、本発明の実施例に係る真空バルブの製造方法を示す図、
図3は、本発明の実施例に係る真空バルブの接点の製造直後を断面して示す説明図、
図4は、本発明の実施例に係る真空バルブの接点のエネルギー照射時を断面して示す説明図、
図5は、本発明の実施例に係る真空バルブの接点の電流コンディショニング処理時を断面して示す説明図である。
【0011】
図1に示すように、アルミナ磁器よりなる筒状の真空絶縁容器1の両端開口部には、固定側封着金具2と可動側封着金具3が封着されている。固定側封着金具2には、中央部に固定側通電軸4が貫通固定され、真空絶縁容器1内の端部に固定側接点5が固着されている。固定側接点5に対向し、接離自在の可動側接点6が可動側封着金具3を移動自在に貫通する可動側通電軸7端部に固着されている。可動側通電軸7の中間部には、伸縮自在のベローズ8の一方端が封着され、他方端が可動側封着金具3の中央開口部に封着されている。これにより、真空絶縁容器1内の真空を保って可動側通電軸7を軸方向に移動させることができる。接点5、6の周りには、筒状のアークシールド9が設けられている。
【0012】
ここで、接点5、6は、Cu−Cr合金からなり、この合金の基材層5a、6aと、接離面となる表面全域にエネルギー照射により設けられたCr粒子を微細化した第1の微細層5b、6bと、電流コンディショニング処理によりランダムに設けられたCr粒子を微細化した第2の微細層5c、6cとで構成されている。
【0013】
次に、固定側接点5を用い製造方法を
図2〜
図5を参照して説明する。可動側接点6も同様である。
【0014】
図2に示すように、所定量を混合したCu−Cr合金の焼結体から所定形状の基材層5aを製造する(st1)。基材層5aには、
図3に示すように、Cuマトリックス5a1中に、粒径数10μmのCr粒子5a2が混合されている。そして、先ず、基材層5aの接離面となる表面全域に例えば電子線により1W/mm
2のエネルギーを照射し、深さ20〜30μmを溶融させ(st2)、冷却する(st3)。溶融、冷却により、
図4に示すように、第1の微細層5bが形成され、Cr粒子5a2が微細化され、粒径0.数〜数μmの第1の微細Cr粒子5b1が形成される。
【0015】
次に、第1の微細層5bを有する接点5を、ろう付け作業などにより真空バルブに組込む(st4)。この場合、運搬時などに大気中に曝されることがある。組立後、接点5を所定間隔に開き、数Aの小電流を用い、数10〜数100回の所定回数、放電させる電流コンディショニング処理を行う(st5)。すると、
図5に示すように、第1の微細層5bの表面に、ランダムに第2の微細Cr粒子5c1を有する第2の微細層5cが形成される。なお、放電条件によっては、第2の微細層5cが基材層5aに達することがある。
【0016】
第2の微細Cr粒子5c1は、真空バルブ組立時の入熱により成長してCr粒径が増大しても、電流コンディショニング処理で微細化される。また、第1の微細層5bの表面に酸化物などの不純物が付着していても、除去される。なお、溶融、冷却直後の第1の微細層5bの温度が周囲温度(常温)よりも高ければ、微細Cr粒子5b1の粒径の増大が抑制される。
【0017】
電流コンディショニング処理では、第2の微細層5cが形成される場所を制御できない。しかしながら、第2の微細層5cが形成されていない個所であっても第1の微細層5bが形成されているので、耐電圧特性を向上させることができる。なお、第2の微細Cr粒子5c1の粒径は、第1の微細Cr粒子5b1と比べて同等以下となる。
【0018】
Cu65(wt%)−Cr35(wt%)合金で焼結体を製造し、基材層5aのみで求めた破壊電圧に対し、エネルギー照射を行い第1の微細層5bを設けたものでは、約30%の向上があった。これを真空バルブに組込み、50回の電流コンディショニング処理を行い第2の微細層5cを設けたものでは、更に約25%の向上が見られた。破壊電圧は、30回印加後の安定した値である。
【0019】
上記実施例の真空バルブによれば、接点5、6の製造時に接離面全域にエネルギー照射を行い、Cr粒子5a2を微細化し、真空バルブ組立後においても、電流コンディショニング処理を行い、Cr粒子5a2の微細化を確実なものにしているので、耐電圧特性を大幅に向上させることができる。
【0020】
上記実施例では、耐弧成分にCrを用いて説明したが、W、Nb、Ta、Ti、Moの炭化物のうち、少なくとも1種類以上を用いることができる。このため、耐弧成分をまとめると、第1の微細Cr粒子5b1を含めたエネルギー照射後の炭化物を第1の微細耐弧成分、第2の微細Cr粒子5c1を含めた電流コンディショニング処理後の炭化物を第2の微細耐弧成分と称することができる。また、補助成分として、Bi、Te、Se、Sb、Coのうち、少なくとも1種類以上を5(wt%)以下含有させることができる。更に、導電成分にCuを用いて説明したが、Agを用いることができる。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。