(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光電変換素子アレイを構成する複数の光電変換素子を有し、入射放射線を蛍光に変換するシンチレータプレートに対向設置されて放射線イメージセンサを構成する光電変換素子アレイユニットにおいて、
前記シンチレータプレートは、基板に中央部から周縁部に向かって高さが高くなるように形成されたシンチレータ層が設けられており、
前記光電変換素子の周囲に、入射した蛍光の反射光を遮る遮光壁が形成されているとともに、前記遮光壁は、前記シンチレータ層の形状に沿って光電変換素子アレイユニットの中央部から周縁部に向かって高さが高くなるようになされている、光電変換素子アレイユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の間接変換方式のフラットパネルディテクタを製造するに際しては、ガラス基板上に形成された光電変換素子アレイ上に、直接シンチレータ層を形成する物質[例えば、タリウムTlをドープしたCsI(Tl)等]を蒸着する構成を採っていた。
ここで、ガラス基板上に形成された光電変換素子アレイは、平坦ではなく、凹凸を有しているため、蒸着されるヨウ化セシウムの厚さも完全に均一にすることは困難であった。
【0007】
これを解決するため、近年においては、シンチレータをガラス基板上に形成したシンチレータプレートと、光電変換素子をガラス基板上にアレイ状に形成した光電変換素子アレイと、を対向させて貼り合わせフラットパネルディテクタを構成する技術が提案されている。
【0008】
しかしながら、X線がシンチレータにより蛍光(可視光)に変換されて光電変換素子アレイに入射するに際して、光電変換素子アレイ側に入射した蛍光が光電変換素子アレイ内の金属層(電極層等)に反射されて反射光(1次反射光)が光電変換素子に入射し、あるいは、その反射光が再びシンチレータプレートにより反射されて2次反射光となって光電変換素子に入射する虞があり、解像度の低下を招くという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、シンチレータプレートと、光電変換素子アレイと、を組み合わせて放射線イメージセンサを構成した場合であっても、変換された蛍光(可視光)の反射に起因する解像度の低下を抑制することが可能な放射線イメージセンサ及びこの放射線イメージセンサに用いる光電変換素子アレイユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、放射線イメージセンサは、基板に
中央部から周縁部に向かって高さが高くなるように形成されたシンチレータ層が設けられたシンチレータプレートと、光電変換素子アレイを構成する複数の光電変換素子が形成された光電変換素子層と、前記光電変換素子の周囲に形成され、前記シンチレータ層を出射されて前記光電変換素子層に入射した蛍光の反射光を遮る遮光壁と、が設けられた光電変換素子アレイユニットと、を備え、前記遮光壁は、
前記シンチレータ層の形状に沿って当接するように光電変換素子アレイユニットの中央部から周縁部に向かって高さが高くなるようになされている。
【0011】
この場合において、前記遮光壁は、前記光電変換素子の受光面よりも高く形成されているようにしてもよい。
また、前記遮光壁は、前記シンチレータプレートに当接する高さを有しているようにしてもよい。
また、前記光電変換素子アレイユニットは、前記光電変換素子を保護する保護層を有し、前記遮光壁は、前記保護層上に形成されているようにしてもよい。
また、前記遮光壁は、前記保護層と一体に形成されているようにしてもよい。
また、前記遮光壁は、前記光電変換素子の受光面の周縁に沿って、前記光電変換素子の受光面を囲むように形成されているようにしてもよい。
【0012】
また、前記遮光壁は、フォトリソグラフィにより形成されているようにしてもよい。
【0013】
また、光電変換素子アレイを構成する複数の光電変換素子を有し、入射放射線を蛍光に変換するシンチレータプレートに対向設置されて放射線イメージセンサを構成する光電変換素子アレイユニットにおいて、
前記シンチレータプレートは、基板に中央部から周縁部に向かって高さが高くなるように形成されたシンチレータ層が設けられており、前記光電変換素子の周囲に、入射した蛍光の反射光を遮る遮光壁が形成されているとともに、前記遮光壁は、
前記シンチレータ層の形状に沿って当接するように光電変換素子アレイユニットの中央部から周縁部に向かって高さが高くなるようになされている。
【発明の効果】
【0014】
本願に係る放射線イメージセンサあるいは光電変換素子アレイユニットによれば、シンチレータ層を出射されて光電変換素子層に入射した蛍光の反射
光が再び光電変換素子に入射するのを抑制でき、解像度の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に図面を参照して、実施形態について説明する。
以下の説明においては、光電変換素子としてフォトダイオードを例としたが光電変換機能をもつ適切な素子であれば他のものでもよい。
【0017】
[1]第1実施形態
図1は、第1実施形態の放射線イメージセンサの断面図である。
また、
図2は、
図1の放射線イメージセンサの分解断面図である。
放射線イメージセンサ10は、大別すると、入射したX線を蛍光(可視光)に変換するシンチレータプレート11と、シンチレータプレート11により変換された可視光を受光して画像データに変換する光電変換素子アレイユニット12と、シール部材13と、を備えている。
【0018】
シンチレータプレート11は、ガラス基板21と、ガラス基板21上に形成され、X線を透過するとともに、X線により発生した可視光である蛍光を反射し、光電変換素子アレイユニット12側に導く反射膜層22と、反射膜層22の経時劣化を防止するための保護膜層23と、入射したX線を可視光に変換するシンチレータ層24と、シンチレータ層24の吸湿に伴う劣化を防止するための防水フィルム層25と、を備えている。
この場合において、防水フィルム層25は、他の手段により防水性が確保できるのであれば、省略することが可能である。
【0019】
ここで、シンチレータプレート11の製造方法について説明する。
シンチレータプレート11を製造するに際しては、ガラス基板21上に、AlNd等の金属膜をスパッタリングにより薄膜状に形成し、反射膜層22とする。この反射膜層22は、薄膜として形成することが可能であるため、入射する放射線(X線)の減衰を最小限に抑制することができる。また、反射膜層22により、入射した放射線によりシンチレータ層24において発生した蛍光(可視光)は、効率よくフォトダイオード35側に導かれ、変換効率を向上させることができ、ひいては、コントラストの高い鮮明な画像を得ることが可能となる。
【0020】
次にシリコン窒化膜あるいはシリコン酸化膜を反射膜層22に積層して保護膜層23とする。この保護膜層23によれば、反射膜層22の性能を長期にわたって、維持することができ、長期にわたって、変換効率の高い画像を得ることができる。
そして、シンチレータ層24を蒸着により保護膜層23上に形成している。
上述したように、シンチレータ層24は、平坦なガラス基板21上に形成された反射膜層22及び保護膜層23に積層されることとなるので、従来のように、ガラス基板上に形成された光電変換素子アレイ上に直接的にシンチレータ層を形成する製造方法を採用した場合のように高さが不均一な光電素子アレイ上にシンチレータ層が形成されることがないので、密度の不均一、また特に光電変換素子側のシンチレータ結晶端の潰れ等も抑制される。
このため、シンチレータ層24内で蛍光が減衰されてしまうことがないので、変換効率を向上して、輝度の向上、解像度の向上に寄与することが可能となる。
【0021】
次に光電変換素子アレイユニット12の構成について説明する。
光電変換素子アレイユニット12は、ガラス基板31と、ガラス基板31上に形成され、信号読み出し用の複数のTFT32がアレイ状に配置されるとともに、金属配線(メタル)33が設けられたTFT層34と、TFT層34に積層され、複数のフォトダイオード35がアレイ状に配置されている光電変換層36と、光電変換層36を覆う樹脂製の保護膜層37と一体に形成され、各フォトダイオード35の周囲をそれぞれ囲むように形成された複数の遮光壁(遮光グリッド)38と、保護膜層37上に配置された電極部39と、を備えている。
以上の説明では、TFT層34と光電変換層36とを完全に分けて別層としていたが、ある共通層にTFT層34及び光電変換層36の各々の一部が形成されるようにすることも可能である。
【0022】
ここで、遮光壁38について説明する。
図3は、光電変換素子アレイユニットの一部の平面図である。
図3中、符号DRはデータ読出ラインを示している。
図4は、
図3におけるフォトダイオード近傍の部分拡大図である。
図5は、
図4のA−A矢視断面図である。
図3及び
図4に示すように、遮光壁38は、フォトダイオード35の周囲を囲むように形成されている。
また、遮光壁38は、光電変換素子アレイユニット12の最上部(最上層)に形成され、各遮光壁38の保護膜層37からの高さhは、
図5に示すように、他の部分で最も高い電極部39の高さよりも高くなるようにされ、放射線イメージセンサ10として組み立てたときに、
図1に示すように、シンチレータプレート11を構成する防水フィルム層25(あるいは防水フィルム層25が設けられていない場合には、シンチレータ層24)に当接するように設けられている。なお、遮光壁38の高さhは、必ずしもシンチレータプレート11に当接させる必要はなく、他の手段によって、シンチレータプレート11と、光電変換素子アレイユニット12との間の距離が保てるのであれば、光電変換素子であるフォトダイオード35の受光面よりも高く形成されていればよい。
【0023】
この結果、光電変換素子アレイユニット12にシンチレータプレート11を載置した場合には、
図1に示すように、各遮光壁38の上端面がシンチレータプレート11に当接し、シンチレータプレート11を支持し、シンチレータ層24と、光電変換層36、ひいては、フォトダイオード35の受光面とを一定の距離に保つこととなる。なお、
図1及び
図2において、理解の容易のため、各部の描画スケールは、実際のものとは異なっている。例えば、遮光壁38の実際の高さhは、例えば、4μm以下となっている。
【0024】
このとき、遮光壁38の高さhは、シンチレータプレート11と光電変換素子アレイユニット12の間に、シール部材13により封止されて形成される封止空間SPの高さに相当することとなる。
以上の説明は、遮光壁38の遮光効率を最大限とし、封止空間SPを確保するためのスペーサとしての機能を遮光壁38に担わせた場合のものである。
【0025】
この結果、
図1に示すように、シンチレータ層24に入射したX線XR1は、蛍光(可視光)VR1に変換される。そして、金属配線(メタル)33に至った可視光VR1は、金属配線33により反射され、さらに反射膜層22により反射されて、フォトダイオード35に入射しようとした反射光RF1は、遮光壁38により遮断されて隣接する本来蛍光が入るべきでないフォトダイオード35の受光面に至るのを阻害される。
【0026】
すなわち、隣接する本来蛍光が入るべきでないフォトダイオード35の受光面に至ることにより解像度を低下させることとなる反射光RF1を抑制して、解像度を向上させることができる。
同様に、シンチレータ層24に入射したX線XR2は、蛍光(可視光)VR2に変換される。そして、フォトダイオード35の受光面に至った可視光VR2の一部は、フォトダイオード35の受光面で反射され、さらに反射膜層22により反射されて、当該フォトダイオード35あるいは隣接するフォトダイオード35に入射しようとした反射光RF2は、遮光壁38により遮断されて隣接するフォトダイオード35の受光面に至るのを阻害される。
したがって、隣接する本来蛍光が入るべきでないフォトダイオード35の受光面に至ることにより解像度を低下させることとなる反射光RF2を抑制して、解像度を向上させることができる。
【0027】
ここで、遮光壁38の形成方法について説明する。
遮光壁38は、フォトレジストを保護膜層36上に所定厚さで塗布し、フォトマスクを用いて露光を行うフォトリソグラフィにより形成される。このとき、フォトレジスト材料としては、いわゆる、感光性機能分子を含む高分子樹脂が用いられ、その種類としては、露光されると現像液に対して溶解性が低下するネガレジストあるいは露光されると現像液に対して溶解性が向上するポジレジストのいずれかが用いられる。
なお、本実施形態において用いるフォトレジストとしては、放射線(例えば、X線)、蛍光による劣化が所定程度以下であれば、いずれのフォトレジストを用いることも可能である。
【0028】
以上の説明においては、遮光壁38の遮光効率を最大限とし、封止空間SPを確保するためのスペーサとしての機能を遮光壁38に担わせた場合について説明したが、遮光壁38のスペーサとしての機能をなくし、遮光効率の低下を許容するのであれば、遮光壁38の高さhをより低くすることが可能である。この場合において、フォトダイオード35の受光面からの反射光RF2をより多く許容し、より光量の高い金属配線33からの反射光RF1を抑制する目的であれば、遮光壁38の上端面までの高さhがフォトダイオード35の受光面より高くなるように構成すればよい。
また、以上の説明においては、遮光壁38でフォトダイオード35の周囲を完全に囲うように構成していたが、遮光効率は低下するものの、その一部が途切れているような状態であってもよい。
【0029】
以上の説明においては、封止空間SPについては、詳細に述べなかったが、実際の放射線イメージセンサ10においては、封止空間SP内には、窒素ガス等の不活性ガスが封入される。
このように窒素ガス等の不活性ガスが封入されるのは、シンチレータ層24が当該空間内に存在する水(H
2O)と結合して、吸湿あるいは潮解して劣化するのを防止するためである。
また、封止空間SP内の圧力は大気圧未満とされるので、大気圧に抗して形状を維持することができるように、遮光壁38をシンチレータプレート11に当接するように構成することが好ましい。
【0030】
また、シール部材13は、例えば、エポキシアクリル系樹脂等のUV(紫外線)硬化性樹脂で形成されている。
シンチレータプレート11と、光電変換素子アレイと、を対向させて当接させる場合に、双方のガラス基板21、31の四つの縁辺間にシール部材13としての、UV硬化性樹脂(特殊エポキシアクリル系樹脂等)を塗布し、両ガラス基板21、31を圧着後UV照射により硬化させ、かつ加熱(100℃以上)して接着性を高める。なお、具体的なUV硬化性樹脂の材質としては、適宜選択が可能である。
【0031】
次に放射線イメージセンサ10の組み立てについて説明する。
この場合において、シンチレータプレート11及び光電変換素子アレイユニット12は、既に組み立てが済んでいるものとする。
まず、シンチレータプレート11と、光電変換素子アレイユニット12と、を所定位置関係で対向させた状態で所定のステージ上に載置する。
【0032】
次にシンチレータプレート11と、光電変換素子アレイユニット12と、がずれないように固定した状態で、シンチレータプレート11を構成するガラス基板21と、光電変換素子アレイユニット12を構成するガラス基板31の四つの縁辺間にUV硬化・熱硬化樹脂を注入する。
このUV硬化・熱硬化樹脂には、両ガラス基板21、31の間に形成される封止空間SPに満たされている空気を抜きつつ、窒素ガス等の不活性ガスを注入するための小開口がそれぞれ少なくとも一つずつ開けられている。
【0033】
そして、不活性ガスの注入口には当該ガス注入用の機器を接続する。
さらに、ステージ上に載置されたシンチレータプレート11と、光電変換素子アレイユニット12と、を空気を通さないシートで完全に覆って、シートとステージで形成された空間内の空気を排気する。
【0034】
これにより、封止空間SPに満たされている空気を抜くための小開口から、空気が排出され、封止空間SPの空気は、不活性ガスで置換される。このとき、置換後の不活性ガスの圧力を大気圧未満とすることで、シンチレータプレート11の防水フィルム層25は、光電変換素子アレイユニット12の遮光壁38に、大気圧と、不活性ガスの圧力差に相当する圧力で押しつけられることとなる。
この状態で、UV硬化・熱硬化樹脂に開けられている空気取出し用の小開口及び不活性ガス注入用の小開口を同じUV硬化・熱硬化樹脂により、塞いで、封止し硬化・加熱させて封止を完了する。
【0035】
以上の説明のように、本第1実施形態の放射線イメージセンサ10においては、各フォトダイオード35の周囲をそれぞれ囲むように複数の遮光壁(遮光グリッド)38が形成されているので、金属配線33あるいはフォトダイオード35により反射された可視光VR1、VR2の反射光RF1、RF2は、可視光VR1、VR2の入射位置とは異なる位置に位置するフォトダイオード35に入射するのが抑制され、解像度の低下を抑制して、放射線イメージセンサ10の撮像範囲全域にわたって良好な撮像画像を得ることが可能となる。
【0036】
さらに、遮光壁38の上端面をシンチレータプレート11に当接させることにより、シンチレータプレート11の防水フィルム層25ひいてはシンチレータ層24が大気圧と、不活性ガスの圧力との差に相当する圧力で押しつけられるので、シンチレータプレート11と光電変換素子アレイユニット12と、を一様な力で圧着組み立て(Vacuum Assembly)することができ、光電変換素子アレイを構成するフォトダイオード35と、シンチレータプレート11、ひいては、シンチレータ層24との距離は、いずれの場所においても、一様かつ設計上の最短の離間距離を保つことができる。
したがって、放射線イメージセンサ10の撮像範囲全域にわたって良好な撮像画像を得ることが可能となる。
【0037】
また、シンチレータ層24は、封止空間SP内に封止されるので、吸湿あるいは潮解から防ぐことが可能となる。すなわち、特に防水フィルム層25を形成しないとしても、さらには真空封止のまま不活性ガスの注入を行わなくても、吸湿あるいは潮解を防ぐことができ、長期にわたって性能を維持することが可能となる。
【0038】
さらに、それぞれが独立して製造されるシンチレータプレート11と光電変換素子アレイユニット12を組み合わせるという構成を採っているため、シンチレータプレート11あるいは光電変換素子アレイユニット12を個別に品質評価し、その良品のみをもって組み立てて最終テストを行うことが可能になるため、従来のように光電変換素子アレイ上に直接シンチレータを蒸着するタイプに比べて、スクラップコストを低減することができるとともに、製造時の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0039】
[2]第2実施形態
以上の第1実施形態においては、シンチレータ層がほぼ平面に形成されるものとして説明したが、シンチレータ層を真空蒸着により形成する場合、蒸着基板を天吊りにして回転させる方式がとられることが多いが、中央部の厚さが周縁部の厚さよりも厚くなる傾向が見られる。そこで、本第2実施形態は、中央部と周縁部とで厚さが異なるシンチレータ層を考慮して遮光壁の高さを設定した場合の実施形態である。
【0040】
図6は、第2実施形態の放射線イメージセンサの断面図である。
また、
図7は、
図6の放射線イメージセンサの分解断面図である。
図6及び
図7において、
図1あるいは
図2と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
放射線イメージセンサ10Aは、大別すると、入射したX線を蛍光(可視光)に変換するシンチレータプレート11Aと、シンチレータプレート11Aにより変換された可視光を受光して画像データに変換する光電変換素子アレイユニット12Aと、シール部材13と、を備えている。
【0041】
シンチレータプレート11Aは、ガラス基板21と、ガラス基板21上に形成され、X線を透過するとともに、X線により発生した可視光である蛍光を反射し、光電変換素子アレイユニット12A側に導く反射膜層22と、反射膜層22の経時劣化を防止するための保護膜層23と、中央部の厚さが周縁部の厚さよりも厚いとともに、入射したX線を可視光に変換するシンチレータ層24Aと、シンチレータ層24Aの吸湿に伴う劣化を防止するための防水フィルム層25Aと、を備えている。
この場合においても、第1実施形態と同様に、防水フィルム層25Aは、他の手段により防水性が確保できるのであれば、省略することが可能である。
【0042】
次に光電変換素子アレイユニット12Aの構成について説明する。
光電変換素子アレイユニット12Aは、ガラス基板31と、ガラス基板31上に形成され、信号読み出し用の複数のTFT32がアレイ状に配置されるとともに、金属配線(メタル)33が設けられたTFT層34と、TFT層34に積層され、複数のフォトダイオード35がアレイ状に配置されている光電変換層36と、光電変換層36を覆う図示しない樹脂製の保護膜層37と一体に形成され、各フォトダイオード35の周囲をそれぞれ囲むように形成された複数の遮光壁(遮光グリッド)38−1〜38−3と、保護膜層37上に配置された電極部39Aと、を備えている。
【0043】
次に、遮光壁38−1〜38−3について説明する。
遮光壁38−1〜38−3は、それぞれ対応するフォトダイオード35の周囲を囲むように形成されている。
また、遮光壁38−1〜38−3は、光電変換素子アレイユニット12Aの最上部(最上層)に形成されている。
【0044】
各遮光壁38−1〜38−3の保護膜層37からの高さh1〜h3は、
図7に示すように、シンチレータ層24Aの厚さに応じて、シンチレータ層24Aの中央部に位置する遮光壁38−1の高さh1が最も低く、シンチレータ層24Aの周縁部に位置する遮光壁38−3の高さh3が最も高くなっている。すなわち、高さh1<h2<h3となっており、放射線イメージセンサ10Aとして組み立てたときに、
図6に示すように、シンチレータプレート11Aを構成する防水フィルム層25A(あるいは防水フィルム層25Aが設けられていない場合には、シンチレータ層24A)にそれぞれ当接するように設けられている。
【0045】
この結果、光電変換素子アレイユニット12Aにシンチレータプレート11Aを載置した場合には、
図6に示すように、各遮光壁38−1〜38−3の上端面がシンチレータプレート11Aに当接し、シンチレータプレート11Aを支持し、シンチレータ層24Aに余計な負荷を掛けることなく、光電変換層36、ひいては、フォトダイオード35の受光面とを所定の距離に保つこととなる。なお、
図6及び
図7において、理解の容易のため、各部の描画スケールは、実際のものとは異なっている。例えば、遮光壁38−1の実際の高さh1は、例えば、4μm以下となっており、遮光壁38−2の高さh2、遮光壁38−3の高さh3は、それに準じた高さとなっている。
【0046】
すなわち、
4μm>h1<h2=h1+α<h3=h1+β
(ここで、0<α<β)
となっている。
【0047】
以上の説明のように、本第2実施形態の放射線イメージセンサ10Aにおいては、各フォトダイオード35の周囲をそれぞれ囲むように、かつ、シンチレータ層24の中央部と周縁部との厚さの違いを考慮して、高さの異なる複数の遮光壁(遮光グリッド)38−1〜38−3が形成されているので、シンチレータ層24に余計な負荷をかけることなく、金属配線33あるいはフォトダイオード35により反射された可視光の反射光が、可視光の入射位置とは異なる位置に位置するフォトダイオード35に入射するのが、防水フィルム層25A(あるいは防水フィルム層25Aが設けられていない場合には、シンチレータ層24A)と遮光壁との間に隙間がある場合に比べ、より確実に抑制され、解像度の低下を抑制して、放射線イメージセンサ10Aの撮像範囲全域にわたって良好な撮像画像を得ることが可能となる。
【0048】
さらに、遮光壁38−1〜38−3の上端面をシンチレータプレート11Aに当接させることにより、シンチレータプレート11Aの防水フィルム層25Aひいてはシンチレータ層24Aが大気圧と、不活性ガスの圧力との差に相当する圧力で押しつけられるので、シンチレータプレート11Aと光電変換素子アレイユニット12Aと、を一様な力で圧着組み立て(Vacuum Assembly)することができ、光電変換素子アレイを構成するフォトダイオード35と、シンチレータプレート11A、ひいては、シンチレータ層24Aとの距離は、いずれの場所においても、シンチレータ層24Aの形状に応じた設計上のより最短の離間距離を保つことができる。
したがって、放射線イメージセンサ10Aの撮像範囲全域にわたって良好な撮像画像を得ることが可能となる。
【0049】
図8は、第2実施形態の変形例の放射線イメージセンサの分解断面図である。
以上の説明においては、同一のフォトダイオード35に対応する遮光壁38−1〜38−3は、それぞれ高さが一定となっており、遮光壁38−1〜38−3は、ステップ状に高さが変化していた。
【0050】
これらに対し、本変形例においては、中央部に配置されたフォトダイオード35に対応する遮光壁38−1(高さ=h11)を除き、中央部側に配置された遮光壁よりも周縁部側に配置された遮光壁の方が、放射線イメージセンサ10Bのシンチレータ層24Aの形状に応じて高さが徐々に高くなるようにされている。
【0051】
より具体的には、放射線イメージセンサ10Bの最も中央部に配置されたフォトダイオード35に対して、より周縁部側に配置されたフォトダイオード35の中央部側の遮光壁38−2の高さh12は、シンチレータ層24Aの形状に応じて中央部に配置されたフォトダイオード35の高さh11よりも高く、同一のフォトダイオード35の周縁部側の遮光壁38−3の高さh13よりも低くなっている。
【0052】
同様に、さらに周縁部側に配置されたフォトダイオード35の中央部側の遮光壁38−2の高さh14は、シンチレータ層24Aの形状に応じて、隣設されたより中央部側に配置されたフォトダイオード35の高さh13よりも高く、同一のフォトダイオード35の周縁部側の遮光壁38−5の高さh15よりも低くなっている。なお、この場合において、遮光壁38−2及び遮光壁38−3は、同一のフォトダイオードを囲む遮光壁であり、遮光壁38−4及び遮光壁38−5は、同一のフォトダイオードを囲む遮光壁である。
【0053】
以上の説明のように、本第2実施形態の変形例の放射線イメージセンサ10Bにおいては、各フォトダイオード35の周囲をそれぞれ囲むように、かつ、シンチレータ層24の中央部と周縁部との厚さの違いを考慮して、同一のフォトダイオードを囲む遮光壁(遮光グリッド)において、中央部側と周縁部側とで高さが異なるように形成されているので、シンチレータ層24に余計な負荷をかけることなく、金属配線33あるいはフォトダイオード35により反射された可視光の反射光が、可視光の入射位置とは異なる位置に位置するフォトダイオード35に入射するのが、防水フィルム層25A(あるいは防水フィルム層25Aが設けられていない場合には、シンチレータ層24A)と遮光壁との間に隙間がある場合に比べ、より確実に抑制され、解像度の低下を抑制して、放射線イメージセンサ10Aの撮像範囲全域にわたって良好な撮像画像を得ることが可能となる。
【0054】
[3]実施形態の効果
以上の説明のように、各実施形態によれば、本来入射すべきではないフォトダイオードに誤って入射してしまう反射光を抑制できるので、放射線イメージセンサの撮像範囲全域にわたって良好な撮像画像を得ることが可能となる。
【0055】
[4]実施形態の変形例
以上の説明においては、遮光壁を各フォトダイオード35に隣接するように囲んで形成していたが、各フォトダイオードの周縁に対して所定の間隔を開けて遮光壁を設けるように構成することも可能である。
また、以上の説明においては、シンチレータ層24上に防水フィルム層25を設けていたが、これに代えて防湿コート層あるいは防湿フィルム層を設けるようにしてもよい。