特許第6018380号(P6018380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6018380スマートグリッドシステムのグリッドコントローラ、それを備えたスマートグリッドシステムおよびその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018380
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】スマートグリッドシステムのグリッドコントローラ、それを備えたスマートグリッドシステムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20161020BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20161020BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   H02J3/46
   H02J3/38 120
   H02J3/32
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-285956(P2011-285956)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-135576(P2013-135576A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳田 則昭
(72)【発明者】
【氏名】山口 義就
(72)【発明者】
【氏名】武部 智全
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕介
(72)【発明者】
【氏名】武田 健治
【審査官】 早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/016273(WO,A1)
【文献】 特開2006−094648(JP,A)
【文献】 特開2008−259357(JP,A)
【文献】 特開2009−268247(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0245987(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/32
H02J3/38
H02J3/46
H02J7/34
H02J7/35
H02J13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の発電設備と複数の蓄電設備とが互いにかつ外部電力系統に電力授受が可能となるように接続され、前記蓄電設備のそれぞれは、電力を蓄える蓄電部と当該蓄電部の充放電制御を行う制御部とを備えるスマートグリッドシステムのグリッドコントローラであって、
前記グリッドコントローラは、前記複数の蓄電設備の制御部と通信可能に接続され、
前記発電設備で発電された発電電力、前記スマートグリッドシステム内の負荷で消費される消費電力および前記蓄電設備に充放電される電力の総和である、当該スマートグリッドシステムから前記外部電力系統への送電電力Pallを取得し、
当該送電電力Pallと当該送電電力Pallを平滑化フィルタを用いて平滑化演算した平滑化演算出力Pall’との差分電力ΔPを演算し、
前記送電電力Pallのうちの前記差分電力ΔPを前記複数の蓄電設備における各蓄電部の充放電状態に応じて割り振って前記送電電力Pallを平滑化する制御を行うよう構成され、
前記グリッドコントローラは、前記送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より小さい場合、前記複数の蓄電設備のうち蓄電部が充電状態にある蓄電設備の単位時間あたりの充電量を小さくするような制御指令値を対応する制御部に伝達する、スマートグリッドシステムのグリッドコントローラ。
【請求項2】
1以上の発電設備と複数の蓄電設備とが互いにかつ外部電力系統に電力授受が可能となるように接続され、前記蓄電設備のそれぞれは、電力を蓄える蓄電部と当該蓄電部の充放電制御を行う制御部とを備えるスマートグリッドシステムのグリッドコントローラであって、
前記グリッドコントローラは、前記複数の蓄電設備の制御部と通信可能に接続され、
前記発電設備で発電された発電電力、前記スマートグリッドシステム内の負荷で消費される消費電力および前記蓄電設備に充放電される電力の総和である、当該スマートグリッドシステムから前記外部電力系統への送電電力Pallを取得し、
当該送電電力Pallと当該送電電力Pallを平滑化フィルタを用いて平滑化演算した平滑化演算出力Pall’との差分電力ΔPを演算し、
前記送電電力Pallのうちの前記差分電力ΔPを前記複数の蓄電設備における各蓄電部の充放電状態に応じて割り振って前記送電電力Pallを平滑化する制御を行うよう構成され、
前記グリッドコントローラは、前記送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より大きい場合、前記複数の蓄電設備のうち蓄電部が放電状態にある蓄電設備の単位時間あたりの放電量を小さくするような制御指令値を対応する制御部に伝達する、スマートグリッドシステムのグリッドコントローラ。
【請求項3】
前記グリッドコントローラは、割り振られる蓄電設備が複数存在する場合、当該蓄電設備の蓄電部の蓄電量を所定の充放電目標値とするために対応する前記制御部が予め定めた充放電指令値の大きさに応じて割り振る量を決定する、請求項1または2に記載のグリッドコントローラ。
【請求項4】
前記グリッドコントローラは前記複数の蓄電設備のうち蓄電部が充電状態にある蓄電設備の単位時間あたりの充電量を0にしても、前記送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より小さい場合、当該蓄電部が充電状態にある蓄電設備に蓄えられた電力を放電するような制御指令値を対応する制御部に伝達する、請求項1に記載のグリッドコントローラ。
【請求項5】
前記グリッドコントローラは、
前記複数の蓄電設備のうち蓄電部が充電状態にある蓄電設備の単位時間あたりの放電量を大きくしても、前記送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より小さい場合、前記複数の蓄電設備のうち蓄電部が放電状態にある蓄電設備に対しても単位時間あたりの放電量を大きくするような制御指令値を対応する制御部に伝達する、請求項4に記載のグリッドコントローラ。
【請求項6】
前記グリッドコントローラは前記複数の蓄電設備のうち蓄電部が放電状態にある蓄電設備の単位時間あたりの放電量を0にしても、前記送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より大きい場合、当該蓄電部が放電状態にある蓄電設備に充電するような制御指令値を対応する制御部に伝達する、請求項2に記載のグリッドコントローラ。
【請求項7】
前記グリッドコントローラは、
前記複数の蓄電設備のうち蓄電部が放電状態にある蓄電設備の単位時間あたりの充電量を大きくしても、前記送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より大きい場合、前記複数の蓄電設備のうち蓄電部が充電状態にある蓄電設備に対しても単位時間あたりの充電量を大きくするような制御指令値を対応する制御部に伝達する、請求項6に記載のグリッドコントローラ。
【請求項8】
前記グリッドコントローラは、前記複数の蓄電設備を用途に応じて複数のグループに区分し、当該複数のグループおよび前記平滑化フィルタの時定数のそれぞれについて所定の重み付けを行い、当該重み付けに基づいて前記複数のグループごとの制御指令値の目標値と前記グリッドコントローラによって演算されるべき制御指令値との差分および平滑化フィルタの時定数の目標値とグリッドコントローラによって演算されるべき時定数の設定値との差分を加重平均した評価関数を設定し、当該評価関数が最小となるような、前記複数のグループごとの制御指令値および前記平滑化フィルタの時定数の設定値を演算する、請求項1からの何れかに記載のグリッドコントローラ。
【請求項9】
前記グリッドコントローラは、前記発電設備で発電された発電電力、前記スマートグリッドシステム内の負荷で消費される消費電力および前記蓄電設備に充放電される電力を取得し、
これらの取得した発電電力、消費電力および充放電される電力に基づいて前記送電電力Pallを演算する、請求項1からの何れかに記載のグリッドコントローラ。
【請求項10】
外部電力系統に電力授受が可能となるように接続された1以上の発電設備と、
前記発電設備および外部電力系統に電力授受が可能となるように接続され、それぞれが電力を蓄える蓄電部と当該蓄電部の充放電制御を行う制御部とを備える複数の蓄電設備と、
請求項1からの何れかに記載のグリッドコントローラと、を備えた、スマートグリッドシステム。
【請求項11】
1以上の発電設備と複数の蓄電設備とが互いにかつ外部電力系統に電力授受が可能となるように接続され、前記蓄電設備のそれぞれは、電力を蓄える蓄電部と当該蓄電部の充放電制御を行う制御部とを備えるスマートグリッドシステムの制御方法であって、
前記発電設備で発電された発電電力、前記スマートグリッドシステム内の負荷で消費される消費電力および前記蓄電設備に充放電される電力の総和である、当該スマートグリッドシステムから前記外部電力系統への送電電力Pallを取得するステップと、
当該送電電力Pallと当該送電電力Pallを平滑化フィルタを用いて平滑化演算した平滑化演算出力Pall’との差分電力ΔPを演算するステップと、
前記送電電力Pallのうちの前記差分電力ΔPを前記複数の蓄電設備における各蓄電部の充放電状態に応じて割り振って前記送電電力Pallを平滑化する制御を行うステップと、を有し、
前記送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より小さい場合、前記複数の蓄電設備のうち蓄電部が充電状態にある蓄電設備の単位時間あたりの充電量を小さくするような制御指令値を対応する制御部に伝達する、スマートグリッドシステムの制御方法。
【請求項12】
1以上の発電設備と複数の蓄電設備とが互いにかつ外部電力系統に電力授受が可能となるように接続され、前記蓄電設備のそれぞれは、電力を蓄える蓄電部と当該蓄電部の充放電制御を行う制御部とを備えるスマートグリッドシステムの制御方法であって、
前記発電設備で発電された発電電力、前記スマートグリッドシステム内の負荷で消費される消費電力および前記蓄電設備に充放電される電力の総和である、当該スマートグリッドシステムから前記外部電力系統への送電電力Pallを取得するステップと、
当該送電電力Pallと当該送電電力Pallを平滑化フィルタを用いて平滑化演算した平滑化演算出力Pall’との差分電力ΔPを演算するステップと、
前記送電電力Pallのうちの前記差分電力ΔPを前記複数の蓄電設備における各蓄電部の充放電状態に応じて割り振って前記送電電力Pallを平滑化する制御を行うステップと、を有し、
前記送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より大きい場合、前記複数の蓄電設備のうち蓄電部が放電状態にある蓄電設備の単位時間あたりの放電量を小さくするような制御指令値を対応する制御部に伝達する、スマートグリッドシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートグリッドシステムのグリッドコントローラ、それを備えたスマートグリッドシステムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への配慮から省エネルギーのインフラや次世代送電網(スマートグリッド)などを一括整備するスマートグリッドシステムの構築が各方面分野で計画されている。スマートグリッドシステムは、自治体や所定の地域規模で一般家屋、公共施設、ビル、工場などが互いに送電網で繋げられたスマートコミュニティを形成する。このようなスマートグリッドシステムにおいては、発電設備として、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを利用した分散型電源設備の導入が想定されている。再生可能エネルギーをエネルギー源とした発電の場合、その瞬時発電量は、気象の変動などに左右されるため、このような再生可能エネルギーをスマートコミュニティ内に大量に導入すると、スマートコミュニティとの間で電力が授受される外部の電力系統(火力発電等による従来の送電系統)への影響が大きくなり、送電系統が不安定化する。さらに、一般家屋、公共施設、ビル、工場などのスマートコミュニティを構成する施設における電力の使用状況は様々であり、需要電力の変動は避けられない。
【0003】
このため、スマートコミュニティ内では需給量の変動に応じて、スマートコミュニティから外部の商用系統への送電電力を平滑化することが望まれる。
【0004】
外部の商用系統への送電電力を平滑化する方法としては、例えば下記特許文献1〜3に示されるような技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−17044号公報
【特許文献2】特開2008−259357号公報
【特許文献3】特開2010−22122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献に記載の技術においては、いずれも発電設備で発電された電力を一時的に蓄電するために、発電設備に付随した大容量の蓄電設備が必要となる。このような大容量の蓄電設備の導入は、設置スペースや導入コストの問題を生じさせる。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決すべくなされたものであり、大容量の蓄電設備を新たに導入することなく外部への送電電力を有効に平滑化することができるスマートグリッドシステムのグリッドコントローラ、それを備えたスマートグリッドシステムおよびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある形態に係るスマートグリッドシステムのグリッドコントローラは、1以上の発電設備と複数の蓄電設備とが互いにかつ外部電力系統に電力授受が可能となるように接続され、前記蓄電設備のそれぞれは、電力を蓄える蓄電部と当該蓄電部の充放電制御を行う制御部とを備えるスマートグリッドシステムのグリッドコントローラであって、前記グリッドコントローラは、前記複数の蓄電設備の制御部と通信可能に接続され、前記発電設備で発電された発電電力、前記スマートグリッドシステム内の負荷で消費される消費電力および前記蓄電設備に充放電される電力の総和である、当該スマートグリッドシステムから前記外部電力系統への送電電力Pallを取得し、当該送電電力Pallと当該送電電力Pallを平滑化フィルタを用いて平滑化演算した平滑化演算出力Pall’との差分電力ΔPを演算し、前記送電電力Pallのうちの前記差分電力ΔPを前記複数の蓄電設備における各蓄電部の充放電状態に応じて割り振って前記送電電力Pallを平滑化する制御を行うよう構成されている。
【0009】
上記構成によれば、外部電力系統への送電電力Pallと平滑化の目標値となる平滑化演算出力Pall’との差分電力ΔPが複数の蓄電設備に割り振られる。すなわち、複数の蓄電設備を1つの仮想蓄電設備としてみなして、当該複数の蓄電設備の蓄電部への充電または放電により差分電力ΔPが送電電力Pallから差し引きまたは足し合わされることにより、送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’となるように(差分電力ΔPが0となるように)平滑化される。この際、複数の蓄電設備の充放電状態(各制御部が対応する蓄電部に充電指令を与えているか放電指令を与えているか)に応じて差分電力ΔPが割り振られる。このように、既存の蓄電設備に差分電力ΔPを割り振ることにより、大容量の蓄電設備を新たに導入することなく外部への送電電力を有効に平滑化することができる。しかも、蓄電設備の充放電状態に応じて差分電力ΔPが割り振られるため、既存の蓄電設備の本来の用途のための充放電制御への影響を抑制することができる。
【0010】
前記グリッドコントローラは、割り振られる蓄電設備が複数存在する場合、当該蓄電設備の蓄電部の蓄電量を所定の充放電目標値とするために対応する前記制御部が予め定めた充放電指令値の大きさに応じて割り振る量を決定してもよい。これにより、本来の用途のために予め定められた充放電指令値の大きさに応じて平滑化のための電力割り振りの負担を変化させることができるため、既存の蓄電設備の本来の用途のための充放電制御への影響をより低減することができる。
【0011】
前記グリッドコントローラは、前記送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より小さい場合、前記複数の蓄電設備のうち蓄電部が充電状態にある蓄電設備の単位時間あたりの充電量を小さくするような制御指令値を対応する制御部に伝達し、前記複数の蓄電設備のうち蓄電部が充電状態にある蓄電設備の単位時間あたりの充電量を0にしても、前記送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より小さい場合、当該蓄電部が充電状態にある蓄電設備に蓄えられた電力を放電するような制御指令値を対応する制御部に伝達するよう構成されてもよい。これによれば、送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より小さい場合(送電電力Pallが不足している場合)、充電状態にある蓄電設備の単位時間あたりの充電量を小さくすることにより、その分の電力が送電電力Pallに補充される。このとき、放電状態にある蓄電設備は、もとの放電指令が維持される。これにより、単位時間あたりの充電量と放電量との各々の絶対量の合計が最小化され、充放電による電力ロスを低減することができる。さらに、単位時間あたりの充電量を小さくするだけでは差分電力ΔPを補えない場合には、当該充電状態にある蓄電設備を放電制御に切り換えることにより、差分電力ΔPを補いつつ、複数の蓄電設備のうち差分電力ΔPを割り振る蓄電設備の数を少なくして、本来の用途のための充放電制御への影響の増大を防止することができる。
【0012】
前記グリッドコントローラは、前記複数の蓄電設備のうち蓄電部が充電状態にある蓄電設備の単位時間あたりの放電量を大きくしても、前記送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より小さい場合、前記複数の蓄電設備のうち蓄電部が放電状態にある蓄電設備に対しても単位時間あたりの放電量を大きくするような制御指令値を対応する制御部に伝達してもよい。これにより、複数の蓄電設備を最大限利用して送電電力Pallを有効に平滑化することができる。
【0013】
前記グリッドコントローラは、前記送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より大きい場合、前記複数の蓄電設備のうち蓄電部が放電状態にある蓄電設備の単位時間あたりの放電量を小さくするような制御指令値を対応する制御部に伝達し、前記複数の蓄電設備のうち蓄電部が放電状態にある蓄電設備の単位時間あたりの放電量を0にしても、前記送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より大きい場合、当該蓄電部が放電状態にある蓄電設備に充電するような制御指令値を対応する制御部に伝達するよう構成されてもよい。これによれば、送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より大きい場合(送電電力Pallが超過している場合)、放電状態にある蓄電設備の単位時間あたりの放電量を小さくすることにより、その分の電力が送電電力Pallから差し引かれる。このとき、充電状態にある蓄電設備は、もとの充電指令が維持される。これにより、単位時間あたりの充電量と放電量との各々の絶対量の合計が最小化され、充放電による電力ロスを低減することができる。さらに、単位時間あたりの放電量を小さくするだけでは差分電力ΔPを差し引けない場合には、当該放電状態にある蓄電設備を充電制御に切り換えることにより、差分電力ΔPを低減させつつ、複数の蓄電設備のうち差分電力ΔPを割り振る蓄電設備の数を少なくして、本来の用途のための充放電制御への影響の増大を防止することができる。
【0014】
前記グリッドコントローラは、前記複数の蓄電設備のうち蓄電部が放電状態にある蓄電設備の単位時間あたりの充電量を大きくしても、前記送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より大きい場合、前記複数の蓄電設備のうち蓄電部が充電状態にある蓄電設備に対しても単位時間あたりの充電量を大きくするような制御指令値を対応する制御部に伝達してもよい。これにより、複数の蓄電設備を最大限利用して送電電力Pallを有効に平滑化することができる。
【0015】
前記グリッドコントローラは、前記複数の蓄電設備を用途に応じて複数のグループに区分し、当該複数のグループおよび前記平滑化フィルタの時定数のそれぞれについて所定の重み付けを行い、当該重み付けに基づいて前記複数のグループごとの制御指令値の目標値と前記グリッドコントローラによって演算されるべき制御指令値との差分および平滑化フィルタの時定数の目標値とグリッドコントローラによって演算されるべき時定数の設定値との差分を加重平均した評価関数を設定し、当該評価関数が最小となるような、前記複数のグループごとの制御指令値および前記平滑化フィルタの時定数の設定値を演算することとしてもよい。これによれば、蓄電設備の用途に応じた重み付けにより、既存の蓄電設備の本来の用途のための充放電制御への影響を最小限にすることができる。さらに、蓄電設備の各グループの用途、利用状況および需給バランスなどに応じて重み付けを変更することにより、その時々に応じて最適な制御を行うことができる。
【0016】
前記グリッドコントローラは、前記発電設備で発電された発電電力、前記スマートグリッドシステム内の負荷で消費される消費電力および前記蓄電設備に充放電される電力を取得し、これらの取得した発電電力、消費電力および充放電される電力に基づいて前記送電電力Pallを演算してもよい。
【0017】
また、本発明の他の形態に係るスマートグリッドシステムは、外部電力系統に電力授受が可能となるように接続された1以上の発電設備と、前記発電設備および外部電力系統に電力授受が可能となるように接続され、それぞれが電力を蓄える蓄電部と当該蓄電部の充放電制御を行う制御部とを備える複数の蓄電設備と、上記構成のグリッドコントローラと、を備えたものである。
【0018】
また、本発明の他の形態に係るスマートグリッドシステムの制御方法は、1以上の発電設備と複数の蓄電設備とが互いにかつ外部電力系統に電力授受可能に接続され、前記蓄電設備のそれぞれは、電力を蓄える蓄電部と当該蓄電部の充放電制御を行う制御部とを備えるスマートグリッドシステムの制御方法であって、前記発電設備で発電された発電電力、前記スマートグリッドシステム内の負荷で消費される消費電力および前記蓄電設備に充放電される電力の総和である、当該スマートグリッドシステムから前記外部電力系統への送電電力Pallを取得し、当該送電電力Pallと当該送電電力Pallを平滑化フィルタを用いて平滑化演算した平滑化演算出力Pall’との差分電力ΔPを演算し、前記送電電力Pallのうちの前記差分電力ΔPを前記複数の蓄電設備における各蓄電部の充放電状態に応じて割り振って前記送電電力Pallを平滑化する制御を行うものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は以上に説明したように構成され、大容量の蓄電設備を新たに導入することなく外部への送電電力を有効に平滑化することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るスマートグリッドシステムの構成例を示す図である。
図2図1に示すスマートグリッドシステムにおいて電力の授受を模式化して示す図である。
図3図1に示すスマートグリッドシステムにおける送電電力を平滑化する平滑化フィルタを含む制御ブロック図である。
図4】本実施形態における送電電力Pallと平滑化演算出力Pall’との関係例を示すグラフである。
図5】差分電力ΔPが正の値であるときの蓄電設備への割り振り制御を例示する模式図である。
図6】差分電力ΔPが正の値であるときの蓄電設備への割り振り制御を例示する模式図である。
図7】差分電力ΔPが正の値であるときの蓄電設備への割り振り制御を例示する模式図である。
図8】差分電力ΔPが負の値であるときの蓄電設備への割り振り制御を例示する模式図である。
図9】差分電力ΔPが負の値であるときの蓄電設備への割り振り制御を例示する模式図である。
図10】差分電力ΔPが負の値であるときの蓄電設備への割り振り制御を例示する模式図である。
図11】本実施形態の変形例における送電電力Pallと平滑化演算出力Pall’との関係例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下ではすべての図を通じて同一または相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0022】
まず、本発明の一実施形態に係るスマートグリッドシステムの概略構成について説明する。図1は本発明の一実施形態に係るスマートグリッドシステムの構成例を示す図である。
【0023】
図1に示されるように、本実施形態のスマートグリッドシステムは、1以上(図1においては4つ)の発電設備21〜24と、複数(図1においては7つ)の蓄電設備31〜37とが送電線3により電力授受が可能となるように接続されている。送電線3は、各発電設備21〜24の系統連系点4から外部電力系統200と電力授受が可能となるように接続されている。送電線3には、各施設11〜15における負荷(電力消費設備)61〜65が接続されており、対応する発電設備および蓄電設備や外部電力系統200からの電力の授受が可能となっている。
【0024】
各蓄電設備31〜37は、電力を蓄える蓄電部41〜47と、当該蓄電部41〜47の充放電制御(SOC制御)を行う制御部51〜57とを備えている。
【0025】
図1において、施設11はビルであり、負荷61としてビルの照明などに電力が消費される。さらに、施設11は、発電設備21として太陽光発電設備を有し、蓄電設備31として非常用電源などに用いられる蓄電池を有している。また、施設12は、工場であり、負荷62として工場の製造機械を駆動するためなどに電力が消費される。さらに、施設12は、発電設備22として太陽光発電設備を有し、蓄電設備32としてピークカットなどに用いられる蓄電池を有している。また、施設13は、公園であり、負荷63として公園の照明などに電力が消費される。さらに、施設13は、発電設備23として風力発電設備を有し、蓄電設備33として蓄電池を有している。
【0026】
また、施設14は、一般家屋であり、負荷64として一般家屋の電化製品の使用などに電力が消費される。さらに、施設14は、発電設備24として太陽光発電設備を有し、蓄電設備34として蓄電池を有している。また、電気自動車も充電設備に接続することにより、蓄電設備35として機能する。すなわち、充電設備に接続された状態で電気自動車が蓄電設備35の蓄電部45として機能し、充電設備が蓄電設備35の制御部55として機能する。施設15は、電車や電気バスのための車両庫(ターミナル)であり、負荷65としてターミナルの照明などに電力が消費される。さらに、施設15は、電車および電気バスのそれぞれに設けられた蓄電池に電力授受可能な状態(充電可能な状態)で電車および電気バスをターミナル内に停車させることにより、それらを蓄電設備36,37として機能させることができる。すなわち、充電設備に接続された状態で電車および電気バス内に設けられた蓄電池が蓄電部46,47として機能し、各充電設備が制御部56,57として機能する。
【0027】
各発電設備21〜24および各蓄電設備の制御部51〜57は、ネットワーク5を介してグリッドコントローラ2と通信可能に接続されている。また、グリッドコントローラ2は各負荷61〜65の電力計とも接続され、グリッドコントローラ2は、各負荷61〜65における消費電力を取得可能となっている。ネットワーク5は、特に限定されないが、例えばインターネット、LAN、スマートメータ(通信機能を有する電力メータ)などが挙げられ、有線および無線の何れの通信方式でもよい。
【0028】
このように、発電設備および/または蓄電設備を有する複数の施設11〜15がグリッドコントローラ2と通信可能に接続されることによりスマートコミュニティ1が構成される。スマートコミュニティ1は、例えば自治体や集落単位で構成することができる。グリッドコントローラ2は、例えば自治体が有する施設に備え付けられてもよいし、スマートコミュニティ1を構成する施設11〜15の何れかに設けられていてもよい。なお、グリッドコントローラ2は、1つのスマートコミュニティ1に1つだけ設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。複数のグリッドコントローラ2が設けられている場合には、それぞれが相互通信可能に構成されていることが好ましい。なお、スマートコミュニティ1を構成する施設の数や種類は、1つのスマートコミュニティ1内に1以上の発電設備と複数の蓄電設備とを有する限り、図1の例に限られない。例えば複数かつ同じ種類の施設であってもよいし、異なる種類の施設であってもよい。
【0029】
蓄電設備の各制御部51〜57は、対応する蓄電部41〜47における充放電状態(SOC:state of charge)の目標値が充放電目標値(最終的な充電率)として所定の時間毎に予め定められ、当該充放電目標値に基づいて対応する蓄電部41〜47を充放電制御する。具体的には、各制御部51〜57は、対応する蓄電部41〜47における充電目標値と現在の蓄電量との差分から充放電指令値(充放電目標値までに必要な単位時間あたりの充放電量)を演算し、これに基づいて対応する蓄電部41〜47の充電量または放電量が充放電目標値となるように充放電制御する。充放電目標値は、蓄電設備の用途に応じてスケジューリングされている。例えば、ビルや一般家屋である施設11,14においては電力需要の少ない夜間に蓄電設備31,34に電力を蓄えることで、電気料金を低減させることができるため、充放電目標値が増大する。また、工場である施設12においては夏場などの電力需要がピークを迎える時期においては蓄電設備32に蓄えられた電力で操業が可能なように充放電目標値が増大する。
【0030】
グリッドコントローラ2は、スマートグリッドシステム(スマートコミュニティ1)から外部電力系統への送電電力Pallを取得する。送電電力Pallは、発電設備21〜24で発電された発電電力、スマートグリッドシステム内の負荷61〜65で消費される消費電力および蓄電設備31〜37に充放電される電力の総和として得られる。さらに、グリッドコントローラ2は、当該送電電力Pallと当該送電電力Pallを平滑化フィルタを用いて平滑化した平滑化演算出力Pall’との差分電力ΔPを演算し、送電電力Pallのうちの差分電力ΔPを複数の蓄電設備31〜37における各蓄電部41〜47の充放電状態に応じて割り振って送電電力Pallを平滑化する制御を行うよう構成されている。
【0031】
図2図1に示すスマートグリッドシステムにおいて電力の授受を模式化して示す図である。図2においてはn個の施設F(i)(i=1,2,…,n)における各発電設備からの発生電力をPg(i)、各負荷における消費電力をPl(i)、蓄電設備における充放電指令値をPb(i)とする。充放電指令値Pb(i)は、放電状態が正の値で充電状態が負の値とする。なお、図2においては理解容易のため、1つの施設に発電設備、負荷および蓄電設備が1つずつあるように表記しているが、発電設備や蓄電設備など(の制御部)が複数存在する場合も下記に示すのと同様の制御を行うことができる。また、施設F(i)に発電設備がない場合はPg(i)=0とし、施設F(i)に蓄電設備がない場合はPb(i)=0とする。
【0032】
スマートコミュニティ1内の総発電電力をΣPg=Pg(1)+…+Pg(n)とし、総負荷消費電力をΣPl=Pl(1)+…+Pl(n)とし、総充放電指令値ΣPb=Pb(1)+…+Pb(n)とすると、系統連系点4における送電電力Pall(瞬間値)は、
Pall=ΣPg−ΣPl+ΣPb…(1)
と表せる。グリッドコントローラ2は、各施設F(i)の発電設備21〜24の発電電力から対応する負荷61〜65における消費電力を差し引いた電力値および蓄電設備31〜37における充放電指令値を取得し、これらの取得した発電電力、消費電力および充放電指令値に基づいて系統連系点4における送電電力Pall(式1)を算出する。なお、系統連系点4に電力計測手段を設置することにより系統連系点4における送電電力Pallを直接的に計測することとしてもよい。
【0033】
グリッドコントローラ2は、得られた送電電力Pallを平滑化フィルタに入力することにより平滑化演算し、出力と入力との差分を算出する。図3図1に示すスマートグリッドシステムにおける送電電力を平滑化する平滑化フィルタを含む制御ブロック図である。図3に示すように、平滑化フィルタ20には、送電電力Pallが入力され、平滑化演算出力Pall’が出力される。例えば、平滑化フィルタ20が一次遅れ系の場合、平滑化フィルタ20の伝達関数G(s)は、時定数TおよびゲインKを用いて、G(s)=K/(1+Ts)と表せる。なお、平滑化フィルタ20は、入力される送電電力Pallが平滑化演算される限り、これに限定されない。
【0034】
グリッドコントローラ2は、送電電力Pallと平滑化フィルタ20から出力される平滑化演算出力Pall’との差分電力ΔPを演算する。すなわち、差分電力ΔP=Pall’−Pallは、送電電力Pallを平滑化するために不足しているまたは過剰である電力を示すものである。図4は送電電力Pallと平滑化演算出力Pall’との関係例を示すグラフである。図4に示すように、送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より小さい場合(ΔP>0)は送電電力Pallを平滑化するためには電力が不足している状態を表し、送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より大きい場合(ΔP<0)は送電電力Pallを平滑化するためには電力が過剰である状態を表している。なお、送電電力Pallと平滑化演算出力Pall’とが一致する場合(ΔP=0)には、以下のような制御を行わないこととしてもよいし、ΔP>0の場合またはΔP<0の場合における制御に含めることとしてもよい。
【0035】
グリッドコントローラ2は、得られた差分電力ΔPを複数の蓄電設備における各蓄電部41〜47の充放電状態に応じて割り振ることにより、送電電力Pallを平滑化する。具体的には、グリッドコントローラ2は、各蓄電部41〜47が充電状態であるか放電状態であるかに応じて優先的に割り振る蓄電設備を選択する。詳しく説明すると、グリッドコントローラ2は、差分電力ΔPが正の値である場合(送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より小さい場合)、複数の蓄電設備のうち蓄電部41〜47が充電状態にある蓄電設備に差分電力ΔPを優先的に割り振り、差分電力ΔPが負の値である場合(送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より大きい場合)、複数の蓄電設備のうち蓄電部41〜47が放電状態にある蓄電設備に差分電力ΔPを優先的に割り振る制御を行う。
【0036】
<割り振り制御1>
以下、具体的に説明する。まず、差分電力ΔPが正の値である場合(送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より小さい場合)の割り振り方法について説明する。図5図7は差分電力ΔPが正の値であるときの蓄電設備への割り振り制御を例示する模式図である。図5図7においては、蓄電設備Biが4つ存在するスマートコミュニティを例示している。図5図7の例においては、蓄電設備B1,B2が、放電状態(Pb(1),Pb(2)>0)であり、蓄電設備B3,B4が、充電状態(Pb(3),Pb(4)<0)である。また、図5図7においては各蓄電設備Biの蓄電量の上限値をEhi、蓄電量の下限値をElo、現在の蓄電量をEnow、充放電目標値をEt、単位時間あたりの充電量の最大値をPb_cmax、単位時間あたりの放電量の最大値をPb_dmaxで表している。なお、図5〜7において、充放電指令値Pbおよび制御指令値Pb’を示す矢印の幅は単位時間あたりの充放電量の大きさを示す(矢印の幅が広いほど単位時間あたりの充放電量が大きいことを示す)ものとする。
【0037】
ここで、放電状態のすべての蓄電設備における放電指令値の総和である総放電指令値をΣPb(j)(>0)とし、充電状態のすべての蓄電設備における充電指令値の総和である総充電指令値をΣPb(k)(<0)とすると、総充放電指令値ΣPbは、
ΣPb=ΣPb(j)+ΣPb(k)…(2)
と表せる。図5図7の例においては、ΣPb(j)=Pb(1)+Pb(2)であり、ΣPb(k)=Pb(3)+Pb(4)である。
【0038】
<割り振り制御1−A>
グリッドコントローラ2は、差分電力ΔPが正の値である(送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より小さい)場合(|ΔP|<|ΣPb(k)|の場合)、図5に示すように、複数の蓄電設備のうち蓄電部が充電状態にある蓄電設備(B3,B4)に、当該蓄電部の単位時間あたりの充電量を小さくするような制御指令値Pb’(k)を対応する制御部51〜57に伝達する。このとき、蓄電部が放電状態にある蓄電設備(B1,B2)には、制御指令値は送られなくてもよいが、通信エラーなどと区別するために、グリッドコントローラ2が対応する制御部51〜57における放電指令値Pb(j)をそのまま制御指令値Pb’(j)として放電状態にある蓄電設備(B1,B2)に伝達することとしてもよい。すなわち、放電状態にある蓄電設備に伝達する制御指令値Pb’(j)は、
Pb’(j)=Pb(j)…(3)
と表せる。
【0039】
制御指令値Pb’(k)を受けた充電状態にある蓄電設備(B3,B4)の制御部51〜57は、それぞれ、受信した制御指令値Pb’(k)を充電指令値として更新して対応する蓄電部41〜47の充放電制御を行う。これにより充電状態にある蓄電設備B3,B4の単位時間あたりの充電量が瞬間的に小さくなるため、スマートコミュニティ1内で余剰電力が生じ、当該余剰電力が送電電力Pallへ加えられる(送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’に近づく)。一般的に、制御部51〜57が行う蓄電部41〜47の充放電制御は、充放電目標値への到達が時間〜日のオーダであるのに対し、グリッドコントローラ2が行う送電電力Pallの平滑化のための蓄電部41〜47への制御指令値は、せいぜい分オーダである(送電電力Pallの変動周期がせいぜい分オーダである)。一方、上記のような割り振り演算は、送電電力Pallの変動周期に対して十分に短い(せいぜい秒オーダ)といえる。このため、送電電力Pallの平滑化が蓄電設備本来の充放電制御に与える影響は十分低く、かつ、送電電力Pallの変動に対する平滑化制御の遅延は無視できる程度に十分高精度であると考えられる。
【0040】
図5の例のように、割り振られる蓄電設備(充電状態にある蓄電設備)が複数存在する場合、グリッドコントローラ2は、当該蓄電設備の蓄電部41〜47の蓄電量を所定の充放電目標値Etとするために対応する制御部51〜57が予め定めた充電指令値Pb(k)の大きさに応じて割り振る量を決定する。この場合、グリッドコントローラ2は、充電指令値Pb(k)の絶対値が大きいほど単位時間あたりの充電量の減少率を大きくする。例えば、充電状態にある蓄電設備(B3,B4)への制御指令値Pb’(k)は、
Pb’(k)=Pb(k)+ΔP・Pb(k)/ΣPb(k)…(4)
と表せる。式(4)においては、差分電力ΔPに各蓄電設備の当初の充電指令値Pb(k)の総放電指令値ΣPb(k)に対する割合(Pb(k)/ΣPb(k))が掛けられる。Pb(k)<0かつΔP>0であるため、Pb’(k)の絶対値におけるPb(k)の絶対値に対する減少量は、Pb(k)の絶対値が大きいほど大きくなる(単位時間あたりの充電量が小さくなる)。これにより、本来の用途のために予め定められた充電指令値Pb(k)の大きさに応じて平滑化のための電力の割り振りの負担を変化させることができるため、既存の蓄電設備の本来の用途のための充放電制御への影響をより低減することができる。
【0041】
<割り振り制御1−B>
充電状態にあるすべての蓄電設備(B3,B4)の単位時間あたりの充電量を0にしても、送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より小さい場合(|ΣPb(k)|<|ΔP|<|ΣPb(k)|+|ΣPb_dmax(k)|の場合)、図6に示すように、当該蓄電部が充電状態にある蓄電設備(B3,B4)に蓄えられた電力を放電するような制御指令値Pb’(k)を対応する制御部51〜57に伝達する。充電状態にある蓄電設備(B3,B4)を瞬間的に放電状態に切り換えることで、スマートコミュニティ1内で余剰電力が生じ、当該余剰電力が送電電力Pallへ加えられる。
【0042】
図6の例のように、割り振られる蓄電設備(もともと充電状態にある蓄電設備)が複数存在する場合、グリッドコントローラ2は、充放電指令値Pb(i)の大きさに応じて割り振る量を決定する。この場合、グリッドコントローラ2は、充電指令値Pb(k)の絶対値が大きいほど単位時間あたりの放電量の増大率を小さくする。例えば、もともと充電状態にある蓄電設備(B3,B4)への制御指令値Pb’(k)は、
Pb’(k)=(|ΔP|−|ΣPb(k)|)・1/Pb(k)/Σ(1/Pb(k))…(5)
と表せる。式(5)においては、差分電力ΔPから総充電指令値ΣPb(k)(<0)分の電力量を差し引いた残りの電力を充電指令値Pb(k)の逆比に応じた単位時間あたりの放電量として分配する。但し、この分配の結果、単位時間あたりの放電量の最大値を超過する蓄電設備が存在すれば、その超過分はもともと充電状態にある蓄電設備のうち未だ放電余裕のある他の蓄電設備の間で再分配を行うこととする。なお、蓄電部がもともと放電状態にある蓄電設備(B1,B2)については、|ΔP|<|ΣPb(k)|の場合と同様である。
【0043】
以上のように、送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より小さい場合(送電電力Pallが不足している場合)、充電状態にある蓄電設備の単位時間あたりの充電量を小さくすることにより、その分の電力が送電電力Pallに補充される。このとき、放電状態にある蓄電設備は、もとの放電指令値が維持される。これにより、単位時間あたりの充電量と放電量との各々の絶対量の合計が最小化され、充放電による電力ロスを低減することができる。さらに、単位時間あたりの充電量を小さくするだけでは差分電力ΔPを補えない場合には、当該充電状態にある蓄電設備を放電制御に切り換えることにより、差分電力ΔPを補いつつ、複数の蓄電設備のうち差分電力ΔPを割り振る蓄電設備の数を少なくして、本来の用途のための充放電制御への影響の増大を防止することができる。
【0044】
<割り振り制御1−C>
また、グリッドコントローラ2は、複数の蓄電設備のうち蓄電部が充電状態にある蓄電設備(B3,B4)の単位時間あたりの放電量を大きく(ここでは最大に)しても、送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より小さい場合(|ΣPb(k)|+|ΣPb_dmax(k)|<|ΔP|<|ΣPb(k)|+|ΣPb_dmax(k)|+|ΣPb_dmax(j)|の場合)、図7に示すように、上記制御に加えて、複数の蓄電設備のうち蓄電部が放電状態にある蓄電設備(B1,B2)に対しても単位時間あたりの放電量を大きくするような制御指令値Pb’(j)を対応する制御部51〜57に伝達する。放電状態にある蓄電設備(B1,B2)の単位時間あたりの放電量が瞬間的に増大するため、スマートコミュニティ1内で余剰電力が生じ、当該余剰電力が送電電力Pallへ加えられる。なお、本実施形態においては、単位時間あたりの放電量の最大値は、蓄電設備が単位時間あたりに放電しうる最大値を意味し、一般には蓄電設備の放電能力として定められている。
【0045】
図7の例のように、割り振られる蓄電設備(もともと放電状態にある蓄電設備)が複数存在する場合、グリッドコントローラ2は、充放電指令値Pb(i)の大きさに応じて割り振る量を決定する。この場合、グリッドコントローラ2は、放電指令値Pb(j)の絶対値が大きいほど単位時間あたりの放電量の増大率を大きくする。例えば、もともと放電状態にある蓄電設備(B1,B2)への制御指令値Pb’(j)は、
Pb’(j)=Pb(j)+(|ΔP|−|ΣPb(k)|−|ΣPb_dmax(k)|)・Pb(j)/ΣPb(j)…(6)
と表せる。式(6)においては、差分電力ΔPから総充電指令値ΣPb(k)およびもともと充電状態にあるすべての蓄電設備の単位時間あたりの放電量を最大にした際の電力の総和ΣPb_dmax(k)を差し引いた残りの電力をもともと放電状態にある蓄電設備に割り当てている。この際、当該残りの電力に各蓄電設備の当初の放電指令値Pb(j)の総放電指令値ΣPb(j)に対する割合(Pb(j)/ΣPb(j))が掛けられる。Pb(j)>0であるため、Pb’(j)の絶対値のPb(j)の絶対値に対する増加量は、Pb(j)の絶対値が大きいほど大きくなる(単位時間あたりの放電量が大きくなる)。これにより、複数の蓄電設備を最大限利用して送電電力Pallを有効に平滑化することができる。
【0046】
なお、このとき、もともと充電状態にある蓄電設備(B3,B4)に対して、グリッドコントローラ2は、単位時間あたりの放電量を最大にするように制御する。したがって、もともと充電状態にある蓄電設備(B3,B4)への制御指令値Pb’(k)は、
Pb’(k)=Pb_dmax(k)…(7)
と表せる。
【0047】
<割り振り制御1−D>
グリッドコントローラ2は、複数の蓄電設備のうち蓄電部が放電状態にある蓄電設備(B1,B2)の単位時間あたりの放電量を大きく(ここでは最大に)しても、送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より小さい場合(|ΣPb(k)|+|ΣPb_dmax(k)|+|ΣPb_dmax(j)|<|ΔP|の場合)、すべての蓄電設備の単位時間あたりの放電量を最大にするような制御指令値Pb’(j)を対応する制御部51〜57に伝達する。これにより、送電電力Pallを平滑化演算出力Pall’に近づけることができる。したがって、もともと放電状態にある蓄電設備(B1,B2)への制御指令値Pb’(j)は、
Pb’(j)=Pb_dmax(j)…(7’)
と表せる。
【0048】
<割り振り制御2>
次に、差分電力ΔPが負の値である場合(送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より大きい場合)の割り振り方法について説明する。図8図10は差分電力ΔPが負の値であるときの蓄電設備への割り振り制御を例示する模式図である。図8図10においてもグリッドコントローラ2が制御指令値を伝達する前の状態は図5図7と同様であるものとする。基本的には、差分電力ΔPが正の値である場合における充電状態にある蓄電設備と放電状態にある蓄電設備とを入れ替えたような制御を行う。
【0049】
<割り振り制御2−A>
グリッドコントローラ2は、差分電力ΔPが負の値である(送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より大きい)場合(|ΔP|<|ΣPb(j)|の場合)、図8に示すように、複数の蓄電設備のうち蓄電部が放電状態にある蓄電設備(B1,B2)に、当該蓄電部の単位時間あたりの放電量を小さくするような制御指令値Pb’(j)を対応する制御部51〜57に伝達する。このとき、蓄電部が充電状態にある蓄電設備(B3,B4)には、制御指令値は送られなくてもよいが、通信エラーなどと区別するために、グリッドコントローラ2が対応する制御部51〜57における充電指令値Pb(k)をそのまま制御指令値Pb’(k)として充電状態にある蓄電設備(B3,B4)に伝達することとしてもよい。すなわち、充電状態にある蓄電設備に伝達する制御指令値Pb’(k)は、
Pb’(k)=Pb(k)…(8)
と表せる。
【0050】
制御指令値Pb’(j)を受けた放電状態にある蓄電設備(B1,B2)の制御部51〜57は、それぞれ、受信した制御指令値Pb’(j)を放電指令値として更新して対応する蓄電部41〜47の充放電制御を行う。これにより放電状態にある蓄電設備B1,B2の単位時間あたりの放電量が瞬間的に小さくなるため、スマートコミュニティ1内で必要な電力が増大し、送電電力Pallが減ぜられる(送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’に近づく)。
【0051】
図8の例のように、割り振られる蓄電設備(放電状態にある蓄電設備)が複数存在する場合、グリッドコントローラ2は、当該蓄電設備の蓄電部41〜47の蓄電量を所定の充放電目標値Etとするために対応する制御部51〜57が予め定めた放電指令値Pb(j)の大きさに応じて割り振る量を決定する。この場合、グリッドコントローラ2は、放電指令値Pb(j)の絶対値が大きいほど単位時間あたりの放電量の減少率を大きくする。例えば、放電状態にある蓄電設備(B1,B2)への制御指令値Pb’(j)は、
Pb’(j)=Pb(j)+ΔP・Pb(j)/ΣPb(j)…(9)
と表せる。式(9)においては、差分電力ΔPに各蓄電設備の当初の放電指令値Pb(j)の総放電指令値ΣPb(j)に対する割合(Pb(j)/ΣPb(j))が掛けられる。Pb(j)>0かつΔP<0であるため、Pb’(j)の絶対値におけるPb(j)の絶対値に対する減少量は、Pb(j)の絶対値が大きいほど大きくなる(単位時間あたりの放電量が小さくなる)。これにより、本来の用途のために予め定められた放電指令値Pb(j)の大きさに応じて平滑化のための電力の割り振りの負担を変化させることができるため、既存の蓄電設備の本来の用途のための充放電制御への影響をより低減することができる。
【0052】
<割り振り制御2−B>
放電状態にあるすべての蓄電設備(B1,B2)の単位時間あたりの放電量を0にしても、送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より大きい場合(|ΣPb(j)|<|ΔP|<|ΣPb(j)|+|ΣPb_cmax(j)|の場合)、図9に示すように、当該蓄電部が放電状態にある蓄電設備(B1,B2)に電力を充電するような制御指令値Pb’(j)を対応する制御部51〜57に伝達する。放電状態にある蓄電設備(B1,B2)を瞬間的に充電状態に切り換えることで、スマートコミュニティ1内で必要な電力が増大し、送電電力Pallが減ぜられる。
【0053】
図9の例のように、割り振られる蓄電設備(もともと放電状態にある蓄電設備)が複数存在する場合、グリッドコントローラ2は、充放電指令値Pb(i)の大きさに応じて割り振る量を決定する。この場合、グリッドコントローラ2は、放電指令値Pb(j)の絶対値が大きいほど単位時間あたりの充電量の増大率を小さくする。例えば、もともと放電状態にある蓄電設備(B1,B2)への制御指令値Pb’(j)は、
Pb’(j)=(−|ΔP|+|ΣPb(j)|)・1/Pb(j)/Σ(1/Pb(j))…(10)
と表せる。式(10)においては、差分電力ΔP(<0)から総放電指令値ΣPb(j)(>0)分の電力量を差し引いた残りの電力を放電指令値Pb(j)の逆比に応じた単位時間あたりの充電量として分配する。但し、この分配の結果、単位時間あたりの充電量の最大値を超過する蓄電設備が存在すれば、その超過分はもともと放電状態にある蓄電設備のうち未だ充電余裕のある他の蓄電設備の間で再分配を行うこととする。なお、蓄電部がもともと充電状態にある蓄電設備(B3,B4)については、|ΔP|<|ΣPb(j)|の場合と同様である。
【0054】
以上のように、送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より大きい場合(送電電力Pallが過剰である場合)、放電状態にある蓄電設備の単位時間あたりの放電量を小さくすることにより、その分の電力が送電電力Pallから差し引かれる。このとき、充電状態にある蓄電設備は、もとの充電指令値が維持される。これにより、単位時間あたりの充電量と放電量との各々の絶対量の合計が最小化され、充放電による電力ロスを低減することができる。さらに、単位時間あたりの放電量を小さくするだけでは差分電力ΔPを差し引けない場合には、当該放電状態にある蓄電設備を充電制御に切り換えることにより、差分電力ΔPを低減させつつ、複数の蓄電設備のうち差分電力ΔPを割り振る蓄電設備の数を少なくして、本来の用途のための充放電制御への影響の増大を防止することができる。
【0055】
<割り振り制御2−C>
また、グリッドコントローラ2は、複数の蓄電設備のうち蓄電部が放電状態にある蓄電設備(B1,B2)の単位時間あたりの充電量を大きく(ここでは最大に)しても、送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より大きい場合(|ΣPb(j)|+|ΣPb_cmax(j)|<|ΔP|<|ΣPb(j)|+|ΣPb_cmax(j)|+|ΣPb_cmax(k)|の場合)、図10に示すように、上記制御に加えて、複数の蓄電設備のうち蓄電部が充電状態にある蓄電設備(B3,B4)に対しても単位時間あたりの充電量を大きくするような制御指令値Pb’(k)を対応する制御部51〜57に伝達する。充電状態にある蓄電設備(B3,B4)の単位時間あたりの充電量が瞬間的に増大するため、スマートコミュニティ1内で必要な電力が増大し、送電電力Pallが減ぜられる。なお、本実施形態においては、単位時間あたりの充電量の最大値は、蓄電設備が単位時間あたりに充電しうる最大値を意味し、一般には蓄電設備の放電能力として定められている。
【0056】
図10の例のように、割り振られる蓄電設備(もともと充電状態にある蓄電設備)が複数存在する場合、グリッドコントローラ2は、充放電指令値Pb(i)の大きさに応じて割り振る量を決定する。この場合、グリッドコントローラ2は、充電指令値Pb(k)の絶対値が大きいほど単位時間あたりの充電量の増大率を大きくする。例えば、もともと充電状態にある蓄電設備(B3,B4)への制御指令値Pb’(k)は、
Pb’(k)=Pb(k)+(−|ΔP|+|ΣPb(j)|+|ΣPb_cmax(j)|)・Pb(k)/ΣPb(k)…(11)
と表せる。式(11)においては、差分電力ΔPから総放電指令値ΣPb(j)およびもともと放電状態にあるすべての蓄電設備の単位時間あたりの充電量を最大にした際の電力の総和ΣPb_cmax(j)を差し引いた残りの電力をもともと充電状態にある蓄電設備に割り当てている。この際、当該残りの電力に各蓄電設備の当初の充電指令値Pb(k)の総充電指令値ΣPb(k)に占める割合(Pb(k)/ΣPb(k))が掛けられる。Pb(k)<0であるため、Pb’(k)の絶対値のPb(k)の絶対値に対する増加量は、Pb(k)の絶対値が大きいほど大きくなる(単位時間あたりの充電量が大きくなる)。これにより、複数の蓄電設備を最大限利用して送電電力Pallを有効に平滑化することができる。
【0057】
なお、このとき、もともと放電状態にある蓄電設備(B1,B2)に対して、グリッドコントローラ2は、単位時間あたりの充電量を最大にするように制御する。したがって、もともと放電状態にある蓄電設備(B1,B2)への制御指令値Pb’(j)は、
Pb’(j)=Pb_cmax(j)…(12)
と表せる。
【0058】
<割り振り制御2−D>
グリッドコントローラ2は、複数の蓄電設備のうち蓄電部が充電状態にある蓄電設備(B3,B4)の単位時間あたりの充電量を大きく(ここでは最大に)しても、送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’より大きい場合(|ΣPb(j)|+|ΣPb_cmax(j)|+|ΣPb_cmax(k)|<|ΔP|の場合)、すべての蓄電設備の単位時間あたりの充電量を最大にするような制御指令値Pb’(k)を対応する制御部51〜57に伝達する。これにより、送電電力Pallを平滑化演算出力Pall’に近づけることができる。したがって、もともと充電状態にある蓄電設備(B3,B4)への制御指令値Pb’(k)は、
Pb’(k)=Pb_cmax(k)…(12’)
と表せる。
【0059】
以上のように、本実施形態の構成によれば、外部への送電電力Pallと平滑化後の平滑化演算出力Pall’との差分電力ΔPが複数の蓄電設備31〜37に割り振られる。すなわち、複数の蓄電設備31〜37を1つの仮想蓄電設備としてみなして、当該複数の蓄電設備31〜37の蓄電部41〜47への充電または放電により差分電力ΔPが送電電力Pallから差し引きまたは足し合わされることにより、送電電力Pallが平滑化演算出力Pall’となるように(差分電力ΔPが0となるように)平滑化される。この際、複数の蓄電設備31〜37の充放電状態(各制御部51〜57が対応する蓄電部41〜47に充電指令を与えているか放電指令を与えているか)に応じて差分電力ΔPが割り振られる。このように、既存の蓄電設備に差分電力ΔPを割り振ることにより、大容量の蓄電設備を新たに導入することなく外部への送電電力Pallを有効に平滑化することができる。しかも、蓄電設備31〜37の充放電状態に応じて差分電力ΔPが割り振られるため、既存の蓄電設備の本来の用途のための充放電制御への影響を抑制することができる。
【0060】
なお、本実施形態においては、上述したように、差分電力を割り振る蓄電設備が複数ある場合に、当該蓄電設備の充放電指令値Pb(i)の大きさに応じて割り振られる電力量が決定されるが、本発明はこれに限られない。例えば、充放電指令値Pb(i)の大きさによらず複数の蓄電設備に対し差分電力ΔPを均等に割り当てることとしてもよいし、充放電指令値の絶対値に応じて優先順位をつけて割り振る(優先順位の高い蓄電設備では賄えない場合に優先順位の低い蓄電設備を利用する)こととしてもよい。
【0061】
<変形例>
以上で説明した割り振り制御においては、スマートコミュニティ1内の蓄電設備31〜37は、その蓄電部41〜47の充放電状態によって差分電力ΔPが割り当てられない場合があるものの、基本的にはすべての蓄電設備31〜37について均等に平滑化制御のための演算が行われる。しかし、蓄電設備31〜37の本来の用途によっては、当該蓄電設備31〜37の蓄電部41〜47の能力の大半を本来の用途に使用しなければならない時期や時間帯が存在する場合がある。このような蓄電設備31〜37が存在する場合には、グリッドコントローラ2は、当該時期や時間帯においては前もって平滑化制御の演算に組み入れないこととしてもよい。
【0062】
また、グリッドコントローラ2は、複数の蓄電設備31〜37を用途に応じて複数のグループに区分し、当該複数のグループおよび平滑化フィルタ20の時定数のそれぞれについて所定の重み付けを行い、当該重み付けに基づいて複数のグループごとの制御指令値の目標値Pb(i)とグリッドコントローラ2によって演算されるべき制御指令値Pb’(i)との差分および平滑化フィルタ20の時定数の目標値Tとグリッドコントローラ2によって演算されるべき時定数の設定値T’との差分を加重平均した評価関数Yを設定し、当該評価関数Yが最小となるような、複数のグループごとの制御指令値Pb’(i)および平滑化フィルタ20の時定数の設定値T’を演算することとしてもよい。
【0063】
図11は本実施形態の変形例における送電電力Pallと平滑化演算出力Pall’との関係例を示すグラフである。例えば、工場などに設置された蓄電設備がピークカットを目的とする場合、当該ピークカットの時間帯または時期(平滑化演算出力Pall’が波線となっている間)には、このようなピークカットを目的とするグループの重み付けを他のグループおよび平滑化フィルタ20に比べて大きくすることにより、当該蓄電設備の本来の用途におけるSOC制御(対応する制御部による充放電指令値Pb)を優先し、送電電力Pallの平滑化度を下げる(Pall’における実線のようにPall’の波線のレベル(差分電力ΔP=0のレベル)までは平滑化を行わない)ことが可能となる。
【0064】
このような制御を行う場合、まず、複数の蓄電設備31〜37を用途に応じてグループ分けする。なお、「用途に応じて」とは、ピークカット、非常用電源、車両駆動用などの用途の異同だけでなく、充放電サイクルが近似していれば用途が似ているとみなしてグループ分けすることをも含むものとする。
【0065】
グループ分けされた蓄電設備の充放電指令値の目標値(平滑化制御を行わないときの充放電指令値)をPb#(#=1,2,…,M:グループ番号)とし、グループ分けされた蓄電設備の制御指令値(平滑化制御を行った上での充放電指令値)をPb#’とする。さらに、グループごとの充放電指令値の目標値の総和をΣPb#(i)とし、グループごとの制御指令値の総和をΣPb#’(i)とする。また、平滑化フィルタ20の時定数の目標値をT(重み付けを行わない場合の理想値)とし、平滑化フィルタ20の時定数の設定値をT’とする。
【0066】
このとき、評価関数Yは、
Y=K(T−T’)+K(ΣPb1(i)−ΣPb1’(i))+K(ΣPb2(i)−ΣPb2’(i))+…+K(ΣPbM(i)−ΣPbM’(i))…(13)
と表せる。ここで、係数K,K,…,Kは、平滑化制御および各グループにおけるSOC制御の重みを示すものである。これらの係数K〜Kは、各グループにおける利用状況に応じて(例えば、季節、時間帯など)に応じて適宜設定される。このように、評価関数Yは、平滑化フィルタ20の時定数の目標値Tと設定値T’との差分および各グループにおける充放電指令値の目標値Pb#と制御指令値Pb#’との差分をすべて加重平均したものである。
【0067】
グリッドコントローラ2は、上記評価関数Yの値を最小とするような最適解の組み合わせ(T’,ΣPb1’,ΣPb2’,…,ΣPbM’)を探索により演算する。これらの最適解の組み合わせを探索する方法は、例えばラグランジュ未定定数法や最急降下法などの一般的な手法が採用可能である。
【0068】
このような探索の結果、時定数T’およびグループごとの制御指令値の総和ΣPb#’(i)が演算される。この後、グリッドコントローラ2は、グループごとに得られた制御指令値の総和ΣPb#’(i)を当該グループに属する各蓄電設備に割り振る(各蓄電設備の蓄電部への制御指令値Pb#’(1),Pb#’(2),…を算出する)制御を行う。割り振りの方法は、前述した割り振り制御1および2を利用する。すなわち、差分電力ΔPの代わりに制御指令値の総和ΣPb#’を用いて同様に演算することにより、各蓄電設備の蓄電部への制御指令値Pb#’(i)が演算され、対応する制御部に伝達される。
【0069】
これによれば、蓄電設備の用途に応じた重み付けにより、既存の蓄電設備の本来の用途のための充放電制御への影響を最小限にすることができる。さらに、蓄電設備の各グループの用途、利用状況および需給バランスなどに応じて重み付けを変更することにより、その時々に応じて最適な制御を行うことができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のスマートグリッドシステムのグリッドコントローラ、それを備えたスマートグリッドシステムおよびその制御方法は、大容量の蓄電設備を新たに導入することなく外部への送電電力を有効に平滑化するために有用である。
【符号の説明】
【0072】
1 スマートコミュニティ
2 グリッドコントローラ
3 送電線
4 系統連系点
5 ネットワーク
11,12,13,14,15,F(i) 施設
20 平滑化フィルタ
21,22,23,24 発電設備
31,32,33,34,35,36,37 蓄電設備
41,42,43,44,45,46,47,Bi 蓄電部
51,52,53,54,55,56,57 制御部
61,62,63,64,65 負荷
200 外部電力系統
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11