特許第6018413号(P6018413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018413
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】吸気ダクト
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20161020BHJP
   F02M 35/12 20060101ALI20161020BHJP
   F02M 35/16 20060101ALI20161020BHJP
   B29C 49/20 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   F02M35/10 301J
   F02M35/10 101N
   F02M35/10 101E
   F02M35/12 M
   F02M35/16 D
   B29C49/20
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-109497(P2012-109497)
(22)【出願日】2012年5月11日
(65)【公開番号】特開2013-238112(P2013-238112A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 昌裕
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−037194(JP,U)
【文献】 実開昭64−004852(JP,U)
【文献】 実開平02−031373(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第00896148(EP,A2)
【文献】 特開2001−099024(JP,A)
【文献】 特開2002−285924(JP,A)
【文献】 特開2005−273528(JP,A)
【文献】 特開2007−285154(JP,A)
【文献】 特開2009−285860(JP,A)
【文献】 特開2010−048234(JP,A)
【文献】 特開2011−132913(JP,A)
【文献】 実開昭60−155717(JP,U)
【文献】 実開平01−141361(JP,U)
【文献】 実開平02−063067(JP,U)
【文献】 特表平07−502318(JP,A)
【文献】 米国特許第5572966(US,A)
【文献】 特開平10−238426(JP,A)
【文献】 特開2000−282985(JP,A)
【文献】 特開2008−031918(JP,A)
【文献】 特開2008−291827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00−49/46
F02M 35/00−35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形により製作されるダクト本体と、該ダクト本体内にレゾネータを区画形成する射出成形部品とからなる吸気ダクトであって、前記射出成形部品のレゾネータ底部を成す部位におけるダクト本体の内壁に対し前記射出成形部品の型開閉方向に対峙する位置に、該ダクト本体の内壁に向け溝形を成すトラフ部を前記レゾネータの底部から下方に向けて突設し、前記トラフ部と前記ダクト本体の内壁とが成す上下方向に開通する筒状部位をポート部としたことを特徴とする吸気ダクト。
【請求項2】
ブロー成形により製作されるダクト本体と、該ダクト本体内にレゾネータを区画形成する射出成形部品とからなる吸気ダクトであって、前記射出成形部品のレゾネータ底部を成す部位に、前記射出成形部品の型開閉方向に開通する管状部を形成し、該管状部の一端側上部を取水口として前記レゾネータ内に開口せしめ且つ他端側下部を排水口としてダクト本体内における前記レゾネータ外に開口せしめ、これら取水口と排水口とを開口していない管状部の中間部位をポート部としたことを特徴とする吸気ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気ダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、トラック等の大型の運搬車両は、普通乗用車と比べて未舗装の悪路を走行する機会が多い為、エンジンの吸気としては、塵埃が多く含まれている地面付近の空気ではなく、地面から十分高い部分の清浄な空気を取り入れることが好ましく、また、地面付近では雨水や積雪の跳ね上げを一緒に取り込んでしまう虞れもあるため、地面から十分高い部分で空気だけを確実に取り入れることが好ましい。
【0003】
この為、大型の運搬車両においては、図7に一例を示すように、エアクリーナ1に直立するよう接続したエアクリーナ入口ダクト2に対し、キャブ3の後面に据え付けられた吸気ダクト4を可撓性のブーツ5を介して接続し、前記吸気ダクト4の上側に開口した空気取入口6から外気を取り入れ得るようにしてある。
【0004】
斯かる吸気ダクト4においては、吸気音を低減することを目的としてレゾネータを内部に形成するようにしたものがあるが、吸気ダクト4のブロー成形時にレゾネータが内部に形作られるように一部を金型で挟み付けて潰してしまうと、流路断面積が小さくなって吸気抵抗の増加を招いてしまうという不都合がある。
【0005】
そこで、図8図10に示す如く、吸気ダクト4の内部にレゾネータを区画形成するための射出成形部品7を別途製作し、該射出成形部品7を吸気ダクト4のブロー成形時にパリソン内に被包せしめ、該パリソンから形作られるダクト本体9と前記射出成形部品7とを型締めして一体化させることでレゾネータ8を区画形成するようにしたものが考えられており、このようにしてレゾネータ8を形成すれば、流路断面積を小さくせずに済んで吸気抵抗の増加を回避することが可能となる。
【0006】
ここで、レゾネータ8によりヘルムホルツの共鳴原理を利用して特定周波数の音を低減させるためには、ある容積の空洞部8aと、この空洞部8aに連通するポート部8bとを適切に設定する必要があり、その吸音の原理は、音波がポート部8bに入ってきた時に、空洞部8aの中の空気がバネの作用を果たし、ポート部8bの空気の質量が錘の役目を果たして「単共振」が起こり、ポート部8bで激しい空気の出入りが行われて空気の分子が摩擦熱を発し、音響エネルギーが熱エネルギーに変換されて吸音が成されるというものである。
【0007】
尚、この種の吸気ダクトに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−132913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来提案されている構造においては、レゾネータ8の底面を成す位置に上向きにポート部8bが設けられており、射出成形部品7の型開閉方向(ここに図示している例では矢印Aで示す方向)に対しポート部8bがアンダーカット形状(成形後に成形品を型開閉方向に取り出せない形状)を成しているため、機械的な方法でアンダーカット処理を施さなければならなくなって型費が高くつくという問題があり、また、レゾネータ8内に吸気の流れ等により入り込んだ水や、結露等により内部で生じた水が、前記レゾネータ8の底部に溜まって排水できなくなるという不具合があった。
【0010】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、型費の高騰やレゾネータ底部における水の滞留を回避し得る吸気ダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ブロー成形により製作されるダクト本体と、該ダクト本体内にレゾネータを区画形成する射出成形部品とからなる吸気ダクトであって、前記射出成形部品のレゾネータ底部を成す部位におけるダクト本体の内壁に対し前記射出成形部品の型開閉方向に対峙する位置に、該ダクト本体の内壁に向け溝形を成すトラフ部を前記レゾネータの底部から下方に向けて突設し、前記トラフ部と前記ダクト本体の内壁とが成す上下方向に開通する筒状部位をポート部としたことを特徴とするものである。
【0012】
而して、このようにすれば、射出成形部品のレゾネータ底部を成す部位に設けられたトラフ部がアンダーカット形状(成形後に成形品を型開閉方向に取り出せない形状)にならなくて済み、射出成形部品の型開閉方向への取り出しを阻害しない形状となるので、射出成形部品を成形後に型開閉方向に取り出すに際し、機械的な方法でアンダーカット処理を施す必要がなくなって型費が安く済む。
【0013】
しかも、このトラフ部とダクト本体の内壁とが成す上下方向に開通する筒状部位をポート部としたことにより、レゾネータ内に吸気の流れ等により入り込んだ水や、結露等により内部で生じた水が、堰き止められることなくポート部内に流れ込んで排水されるので、これらの水がレゾネータの底部に溜まって排水できなくなる心配がなくなる。
【0014】
また、本発明は、ブロー成形により製作されるダクト本体と、該ダクト本体内にレゾネータを区画形成する射出成形部品とからなる吸気ダクトであって、前記射出成形部品のレゾネータ底部を成す部位に、前記射出成形部品の型開閉方向に開通する管状部を形成し、該管状部の一端側上部を取水口として前記レゾネータ内に開口せしめ且つ他端側下部を排水口としてダクト本体内における前記レゾネータ外に開口せしめ、これら取水口と排水口とを開口していない管状部の中間部位をポート部としたことを特徴とするものでもある。
【0015】
而して、このようにすれば、射出成形部品のレゾネータ底部を成す部位に設けられた管状部がアンダーカット形状(成形後に成形品を型開閉方向に取り出せない形状)にならなくて済み、射出成形部品の型開閉方向への取り出しを阻害しない形状となるので、射出成形部品を成形後に型開閉方向に取り出すに際し、機械的な方法でアンダーカット処理を施す必要がなくなって型費が安く済む。
【0016】
しかも、この管状部の中間部位をポート部としたことにより、レゾネータ内に吸気の流れ等により入り込んだ水や、結露等により内部で生じた水が、堰き止められることなく前記管状部の一端側上部の取水口からポート部内に流れ込んで他端側下部の排水口から排水されるので、これらの水がレゾネータの底部に溜まって排水できなくなる心配がなくなる。
【発明の効果】
【0017】
上記した本発明の吸気ダクトによれば、ダクト本体内に射出成形部品により区画形成されるレゾネータのポート部を、前記射出成形部品にアンダーカット形状を形成することなく構成することができ、しかも、レゾネータ内の水を堰き止めることなくポート部を通して下方へ抜き出すこともできるので、型費の高騰やレゾネータ底部における水の滞留を回避することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
図2図1の吸気ダクトの側断面図である。
図3図2のIII−III矢視の断面図である。
図4】本発明の別の形態例を示す斜視図である。
図5図4の吸気ダクトの側断面図である。
図6図5のVI−VI矢視の断面図である。
図7】一般的な吸気ダクトの一例を示す概略図である。
図8】吸気ダクトの内部にレゾネータを区画形成した例を示す斜視図である。
図9図8の吸気ダクトの側断面図である。
図10図9のX−X矢視の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1図3は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図8図10と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0021】
図1図3に示す如く、本形態例における吸気ダクト4は、先の図8図10で説明した従来提案の構造と同様に、ブロー成形により製作されるダクト本体9と、該ダクト本体9のブロー成形時に被包され且つ型締めにより一体化されて前記ダクト本体9内にレゾネータ8を区画形成する射出成形部品7とにより構成されており、ここに一例として示している射出成形部品7は、レゾネータ8の天井部と縦壁部と底部とを成すチャンネル形状を有し、ダクト本体9のブロー成形時にパリソン内に被包されることで三方向の開放面を塞がれてレゾネータ8が区画形成されるようになっている。
【0022】
尚、ダクト本体9のブロー成形時に射出成形部品7を被包させて型締めにより一体化するにあたっては、図示しない成形機ヘッドから筒状のパリソン(溶融樹脂)を下方向きに射出させて射出成形部品7を被包させ、該射出成形部品7を被包したパリソンを両側から金型で挟み込み、該金型で挟み込んだ状態で圧縮空気を内部に吹き込むことで前記パリソンを膨らませて金型の内壁に押し付け、前記パリソンが冷却して固化した後に金型を開き、射出成形部品7を一体的に内蔵したダクト本体9を成形品として得るようにすれば良い。
【0023】
ここで、前記射出成形部品7の場合も、溶融樹脂を射出圧をかけながら金型内に注入して冷却固化させ、図中に矢印Aで示す型開閉方向に金型を開いて取り出すようになっているが、そのレゾネータ8底部を成す部位αにおけるダクト本体9の内壁に対し前記型開閉方向に対峙する位置には、前記ダクト本体9の内壁に向け溝形を成すトラフ部10が前記レゾネータ8の底部から下方に向けて突設されており、前記トラフ部10と前記ダクト本体9の内壁とが成す上下方向に開通する筒状部位がレゾネータ8のポート部8bを成すようになっている。
【0024】
而して、このようにすれば、射出成形部品7のレゾネータ8底部を成す部位αに設けられたトラフ部10がアンダーカット形状(成形後に成形品を型開閉方向に取り出せない形状)にならなくて済み、射出成形部品7の型開閉方向への取り出しを阻害しない形状となるので、射出成形部品7を成形後に型開閉方向に取り出すに際し、機械的な方法でアンダーカット処理を施す必要がなくなって型費が安く済む。
【0025】
しかも、このトラフ部10とダクト本体9の内壁とが成す上下方向に開通する筒状部位をポート部8bとしたことにより、レゾネータ8内に吸気の流れ等により入り込んだ水や、結露等により内部で生じた水が、堰き止められることなくポート部8b内に流れ込んで排水されるので、これらの水がレゾネータ8の底部に溜まって排水できなくなる心配がなくなる。
【0026】
従って、上記形態例によれば、ダクト本体9内に射出成形部品7により区画形成されるレゾネータ8のポート部8bを、前記射出成形部品7にアンダーカット形状を形成することなく構成することができ、しかも、レゾネータ8内の水を堰き止めることなくポート部8bを通して下方へ抜き出すこともできるので、型費の高騰やレゾネータ8底部における水の滞留を回避することができる。
【0027】
また、図4図6は本発明の別の形態例を示すもので、本形態例においては、先の図1図3の形態例におけるトラフ部10に替えて、射出成形部品7のレゾネータ8底部を成す部位αに、前記射出成形部品7の型開閉方向に開通する管状部13を形成し、該管状部13の一端側上部を取水口11として前記レゾネータ8内に開口せしめ且つ他端側下部を排水口12としてダクト本体9内における前記レゾネータ8外に開口せしめ、これら取水口11と排水口12とを開口していない管状部13の中間部位をポート部8bとしたことを特徴としている。
【0028】
而して、このようにすれば、射出成形部品7のレゾネータ8底部を成す部位αに設けられた管状部13がアンダーカット形状(成形後に成形品を型開閉方向に取り出せない形状)にならなくて済み、射出成形部品7の型開閉方向への取り出しを阻害しない形状となるので、射出成形部品7を成形後に型開閉方向に取り出すに際し、機械的な方法でアンダーカット処理を施す必要がなくなって型費が安く済む。
【0029】
しかも、この管状部13の中間部位をポート部8bとしたことにより、レゾネータ8内に吸気の流れ等により入り込んだ水や、結露等により内部で生じた水が、堰き止められることなく前記管状部13の一端側上部の取水口11からポート部8b内に流れ込んで他端側下部の排水口12から排水されるので、これらの水がレゾネータ8の底部に溜まって排水できなくなる心配がなくなる。
【0030】
従って、このようにした場合にも、ダクト本体9内に射出成形部品7により区画形成されるレゾネータ8のポート部8bを、前記射出成形部品7にアンダーカット形状を形成することなく構成することができ、しかも、レゾネータ8内の水を堰き止めることなくポート部8bを通して下方へ抜き出すこともできるので、型費の高騰やレゾネータ8底部における水の滞留を回避することができる。
【0031】
尚、本発明の吸気ダクトは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
4 吸気ダクト
7 射出成形部品
8 レゾネータ
8b ポート部
9 ダクト本体
10 トラフ部
11 取水口
12 排水口
13 管状部
α レゾネータ底部を成す部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10