(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018420
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】アンジオテンシンII受容体拮抗薬およびサイアザイド系利尿薬を含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/549 20060101AFI20161020BHJP
A61K 31/41 20060101ALI20161020BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20161020BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
A61K31/549
A61K31/41
A61K47/10
A61P9/12
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-128365(P2012-128365)
(22)【出願日】2012年6月5日
(65)【公開番号】特開2013-253026(P2013-253026A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100163647
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 卓也
(72)【発明者】
【氏名】横江 淳一
(72)【発明者】
【氏名】生田 祥太郎
(72)【発明者】
【氏名】片山 直久
【審査官】
鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】
特表2000−506540(JP,A)
【文献】
特表2004−523569(JP,A)
【文献】
特表2006−524635(JP,A)
【文献】
特表2007−523112(JP,A)
【文献】
特表2008−501680(JP,A)
【文献】
特開2007−238637(JP,A)
【文献】
特表2009−517366(JP,A)
【文献】
特表2009−542709(JP,A)
【文献】
特表2011−500505(JP,A)
【文献】
特表2010−508266(JP,A)
【文献】
再公表特許第2009/113420(JP,A1)
【文献】
特開2011−136908(JP,A)
【文献】
特表2010−535754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/549
A61K 31/41
A61K 47/10
A61P 9/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンジオテンシンII受容体拮抗薬、サイアザイド系利尿薬および賦形剤を含む医薬組成物であって、該賦形剤として乳糖を含まず、
該アンジオテンシンII受容体拮抗薬がロサルタンカリウムであり、
該サイアザイド系利尿薬がヒドロクロロチアジドであり、そして
該賦形剤がD−マンニトールである、医薬組成物。
【請求項2】
ロサルタンカリウムおよびヒドロクロロチアジドを含む医薬組成物の安定性を改善するための方法であって、
ロサルタンカリウム、ヒドロクロロチアジドおよび賦形剤を混合する工程を包含し、
該賦形剤が乳糖を含まず、かつ該賦形剤がD−マンニトールである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬およびサイアザイド系利尿薬を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アンジオテンシンII受容体拮抗薬として、ロサルタン、カンデサルタンおよびバルサルタン等が公知である(非特許文献1〜3)。
【0003】
また、このアンジオテンシンII受容体拮抗薬は、サイアザイド系利尿薬、主にヒドロクロロチアジドとの合剤としても公知である(非特許文献4〜6)。
【0004】
しかしながら、原因は不明だが、アンジオテンシンII受容体拮抗薬およびサイアザイド系利尿薬との合剤におけるアンジオテンシンII受容体拮抗薬の安定性は、単剤におけるアンジオテンシンII受容体拮抗薬よりも悪いという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「ニューロタン(登録商標)錠」添付文書
【非特許文献2】「ブロプレス(登録商標)錠」添付文書
【非特許文献3】「ディオバン(登録商標)錠」添付文書
【非特許文献4】「プレミネント(登録商標)配合錠」添付文書
【非特許文献5】「エカード(登録商標)配合錠」添付文書
【非特許文献6】「コディオ(登録商標)配合錠」添付文書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬の安定性が、市販品(合剤)よりも改善した、アンジオテンシンII受容体拮抗薬およびサイアザイド系利尿薬を含む医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、アンジオテンシンII受容体拮抗薬およびサイアザイド系利尿薬を含む医薬組成物を、賦形剤として乳糖を含まない処方にすることによって本発明を完成させた。乳糖は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬単剤では、アンジオテンシンII受容体拮抗薬の安定性に影響はないため、使用することに問題がないとされていた。しかしながら、意外なことに、アンジオテンシンII受容体拮抗薬およびサイアザイド系利尿薬を含む合剤では、賦形剤として乳糖を含まない処方にすることにより、アンジオテンシンII受容体拮抗薬の安定性が改善された。
【0008】
本発明は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬およびサイアザイド系利尿薬を含む医薬組成物であって、賦形剤として乳糖を含まないことを特徴とする医薬組成物である。
【0009】
1つの実施態様では、上記アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、ロサルタン、バルサルタン、オルメサルタン、イルベサルタンおよびカンデサルタンからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0010】
1つの実施態様では、上記サイアザイド系利尿薬は、トリクロルメチアジド、ヒドロクロロチアジドおよびベンチルヒドロクロロチアジドからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0011】
1つの実施態様では、上記賦形剤はD−マンニトールである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アンジオテンシンII受容体拮抗薬の安定性が、市販品(合剤)よりも改善した、アンジオテンシンII受容体拮抗薬およびサイアザイド系利尿薬を含む医薬組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の医薬組成物は、主成分として、アンジオテンシンII受容体拮抗薬およびサイアザイド系利尿薬を含む。
【0014】
本発明の医薬組成物において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬としては、例えば、ロサルタン、バルサルタン、オルメサルタン、イルベサルタンおよびカンデサルタン、ならびにそれらの組み合わせが主に挙げられる。本発明のアンジオテンシンII受容体拮抗薬は、必ずしも限定されるものではない。
【0015】
本発明の医薬組成物において、サイアザイド系利尿薬としては、例えば、トリクロルメチアジド、ヒドロクロロチアジドおよびベンチルヒドロクロロチアジド等、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。本発明のサイアザイド系利尿薬は、必ずしも限定されるものではないが、代表的なサイアザイド系利尿薬としては、例えば、ヒドロクロロチアジドが挙げられる。ヒドロクロロチアジドは、「ニュートライド(登録商標)錠」(東和薬品社製)として市販されており、この医薬組成物には乳糖が含まれている。
【0016】
本発明の医薬組成物は、乳糖以外の賦形剤を含有する。本発明の医薬組成物は、上記アンジオテンシンII受容体拮抗薬、サイアザイド系利尿薬および上記賦形剤、ならびに必要に応じて添加される後述の添加剤を混合したものを、例えば、圧縮形成等の方法により一定の形に成型して得られる組成物である。
【0017】
本発明の医薬組成物の形状は、特に限定されず、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤、顆粒剤および散剤等が挙げられる。製造が簡便であり、製造コストも安価である観点から、本発明の医薬組成物の形状は、錠剤が好ましい。
【0018】
乳糖以外の賦形剤としては、例えば、コーンスターチ、糖類(ブドウ糖、果糖、乳糖、白糖、還元麦芽糖およびトレハロース等)、ならびに糖アルコール(D−マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトールおよびラクチトール等)、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。原材料コストが安価である観点から、乳糖以外の賦形剤としては、D−マンニトールが好ましい。本発明において用いられる賦形剤の量は、当業者によって適宜選択され得る。
【0019】
本発明の医薬組成物は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬およびサイアザイド系利尿薬の主成分、ならびに乳糖以外の賦形剤のほかに、必要に応じて、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤およびコーティング剤等の添加剤を含有してもよい。
【0020】
上記崩壊剤としては、特に限定されず、例えば、クロスポビドン、カルボキシスターチナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、デンプン、部分α化デンプン、コーンスターチ、乳糖、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム結晶セルロース、低置換度ヒドロキシピロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルメロースおよびヒドロキシプロピルスターチ、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0021】
上記結合剤としては、特に限定されず、例えば、結晶セルロース、ポピドン、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
上記滑沢剤としては、特に限定されず、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ステアリン酸、軽質無水ケイ酸、硬化ナタネ油、硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、安息香酸ナトリウム、L-ロイシンおよびL-バリン等、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
上記添加剤の配合方法および配合量は、配合目的に応じて当業者が適宜設定することができる。
【0024】
また、本発明の医薬組成物は、目的の形状に応じて、当業者がその製造方法を選択することができる。例えば、医薬組成物の形状が錠剤である場合は、打錠により製造することができる。打錠は、上記添加剤を混合して行い得る。打錠方法としては、特に限定されず、例えば、打錠用臼、打錠用上杵および下杵を用いて、油圧式ハンドプレス機、単発式打錠機、ロータリー式打錠機等により行う方法が挙げられる。打錠圧としては、特に限定されず、例えば、10〜40kN/cm
2の範囲である。
【0025】
本発明の医薬組成物は、さらにコーティング処理等の処理をされたものであってもよい。
【0026】
コーティング方法としては、特に限定されず、例えば、コーティング剤を水等の溶媒に溶解または分散させてコーティング液を調製し、コーティング液をスプレーする方法が挙げられる。ほかにも、パンコーティング法、流動コーティング法、転動コーティング法等が挙げられる。コーティング剤としては、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコールおよび酸化チタン等が挙げられる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
サイアザイド系利尿薬としてのヒドロクロロチアジド50.0gおよび乳糖以外の賦形剤としてのD−マンニトール240.0gを袋にて混合後、850μmの篩で篩過した。別に、アンジオテンシンII受容体拮抗薬としてのロサルタンカリウム200.0g、結晶セルロース158.0g、部分アルファー化デンプン120.0gおよびヒドロキシプロピルセルロース24.0gを袋にて混合後、850μmの篩で篩過した。両粉末をV型混合機にて混合した後、ステアリン酸マグネシウム8.0gを加え、V型混合機にて混合後、打錠機にて打錠した。得られた素錠500gに対し、ヒプロメロース36.0g、ヒドロキシプロピルセルロース4.5gおよび酸化チタン4.5gを水484.0gに溶解した液を、ハイコーター(登録商標:フロイント産業株式会社製)を用いてスプレーすることでフィルムコーティングを行い、医薬組成物としての錠剤(合剤)を得た。
【0029】
【表1】
【0030】
(比較例1)
D−マンニトールに代えて、乳糖を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、錠剤を製造した。つまり、以下の表2に記載の処方の医薬組成物としての錠剤(合剤)を製造した。
【0031】
【表2】
【0032】
(比較例2)
市販のロサルタンカリウムおよびヒドロクロロチアジドの医薬組成物(合剤)である「プレミネント(登録商標)配合錠」(MSD社製)を用いた。なお、この医薬組成物は乳糖を含むものであった。
【0033】
(参考例1)
アンジオテンシンII受容体拮抗薬としてのロサルタンカリウム200.0g、乳糖水和物240.0g、結晶セルロース158.0g、部分アルファー化デンプン120.0gおよびヒドロキシプロピルセルロース24.0gを袋にて混合後、850μmの篩で篩過した。両粉末をV型混合機にて混合した後、ステアリン酸マグネシウム8.0gを加え、V型混合機にて混合後、打錠機にて打錠した。得られた素錠500gに対し、ヒプロメロース36.0g、ヒドロキシプロピルセルロース4.5gおよび酸化チタン4.5gを水484.0gに溶解した液を、ハイコーター(登録商標:フロイント産業株式会社製)を用いてスプレーすることでフィルムコーティングを行い、医薬組成物としての錠剤(単剤)を得た。
【0034】
(試験例1:安定性評価)
実施例1および比較例1で製造した直後の医薬組成物(合剤)、比較例2の医薬組成物(合剤)並びに参考例1の医薬組成物(単剤)をそれぞれシャーレに入れ、このシャーレを温度60℃、湿度75%の環境下にて1週間保存した。保存後の錠剤について、ヒドロクロロチアジドの分解産物であるヒドロクロロチアジド類縁物質およびロサルタンカリウムの分解産物であるロサルタンカリウム類縁物質をHPLCにて定量した。なお、HPLC分析条件は以下のとおりであった。
【0035】
<HPLC分析条件 ロサルタンカリウム及びヒドロクロロチアジド>
カラム:内径4.0mm,長さ15cmのステンレス管に、粒径5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんしたカラムを使用した。
移動相:
A液:リン酸二水素カリウム3.75g及びリン酸水素二ナトリウム4.5gを正確に量り、水を加えて正確に3000mLとした(pH約7.0〜7.5)。この液2790mLにアセトニトリル210mLを加えて調製した。
B液:アセトニトリル
流速:ヒドロクロロチアジド又はロサルタンカリウムの保持時間がそれぞれ約8分及び21分となるように表3に示す通り流量を調整した。
温度:35℃付近の一定温度。
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:280nm)。
【0036】
【表3】
【0037】
結果を表4(ヒドロクロロチアジド)および表5(ロサルタンカリウム)に示す。
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
【0040】
表4より明らかなように、合剤において、ヒドロクロロチアジドの分解産物であるヒドロクロロチアジド類縁物質の含量は、乳糖が共存しない実施例1では増加しなかったが、乳糖が共存する比較例1および2では増加した。
【0041】
さらに表5より明らかなように、合剤において、ロサルタンカリウムの分解産物であるロサルタンカリウム類縁物質の含量は、乳糖が共存する比較例1と比べて乳糖が共存しない実施例1の方が低減した。なお、参考例1の単剤においては、乳糖が共存しても、ロサルタンカリウムの分解産物であるロサルタンカリウム類縁物質の含量はほとんど増加しなかった。このことからヒドロクロロチアジドの配合によりロサルタンカリウムの安定性が低下し、かつ乳糖の添加により著しく不安定となっている可能性があると考察される。したがって、アンジオテンシンII受容体拮抗薬およびサイアザイド系利尿薬を含む医薬組成物においては、乳糖は用いず、D−マンニトール等が賦形剤として適していることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、アンジオテンシンII受容体拮抗薬が市販の医薬組成物(合剤)よりも安定性が改善された、アンジオテンシンII受容体拮抗薬およびサイアザイド系利尿薬を含む医薬組成物を提供することができる。