(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018422
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】血圧計用加圧ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0235 20060101AFI20161020BHJP
A61B 5/022 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
A61B5/02 639
A61B5/02 634B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-129921(P2012-129921)
(22)【出願日】2012年6月7日
(65)【公開番号】特開2013-252296(P2013-252296A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】596037840
【氏名又は名称】株式会社中澤金属製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】中澤 淳
【審査官】
遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−045240(JP,A)
【文献】
特開平03−131225(JP,A)
【文献】
特開平08−270815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム球の両端部に逆止弁が装着され一方の逆止弁に排気調整弁が連結された加圧ポンプでカフに空気を供給し、コロトコフ音に基づいて血圧を検出する血圧計用加圧ポンプにおいて、筒状を成した逆止弁の吸気側端部を封止すると共に、該吸気側端部の周側面に吸気口を形成し、逆止弁内の空気流通方向に対して吸気口を横向きに形成し、前記逆止弁の排気側端部にメッシュ板を装着したことを特徴とする血圧計用加圧ポンプ。
【請求項2】
前記吸気口は、前記逆止弁の周側面に沿って複数個形成され、これら吸気口の表面を覆うフィルターを装着した請求項1記載の血圧計用加圧ポンプ。
【請求項3】
前記逆止弁は、前記ゴム球の空気流入口に装着される逆止弁、若しくは前記ゴム球の空気流出口に装着される逆止弁とし、又はその両方に装着される逆止弁とする請求項1記載の血圧計用加圧ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕にカフを巻き付け加圧ポンプでカフに空気を供給後、カフの圧力低下時にコロトコフ音を検出する血圧計に使用する血圧計用加圧ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コロトコフ法による血圧計では、血圧を計測する場合、腕に巻き付けたカフに圧縮空気を供給して加圧し、その後、排気調整弁を調整して圧力を下げながらコロトコフ音の発生、消滅を確認して血圧値を測定する。この種の血圧計として、例えば、特許文献1や特許文献2に記載の血圧計がある。
【0003】
いずれの血圧計も、ゴム球の端部に開閉自在な吸気弁を備えた加圧ポンプを利用したもので、この加圧ポンプからカフに供給された圧縮空気を排出せしめる排気調整弁がゴム球の他端部に設けられたものである。そして、排気調整弁を調整してカフ帯から微速排気する際の排気圧の降下速度を一定にするように排気調整弁を改良したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平2−24532号公報
【特許文献2】特開昭57−14320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1や特許文献2のごとく、ゴム球を利用した加圧ポンプで圧縮空気を供給すると、外気の塵埃が加圧ポンプの中に吸引され、この塵埃が排気調整弁に絡み付いて血圧計の精度や耐久性能を低下させていることが分かった。
【0006】
特に、細くて長い繊維状の塵埃は、フィルターの目を通り易いので、塵埃を防止するにはこのフィルターの目を細かくする必要がある。ところが、吸気弁のフィルターを細かくすると、手動で行う加圧ポンプの圧縮空気を供給作業に支障が生じるおそれがあった。しかも、繊維状の塵埃が吸引されると、排気調整弁や排気調整弁側の逆止弁に絡み付き易く、正確な測定の妨げになっていた。しかも、往診の際に持ち歩くアネロイド式の血圧計などは、計測する環境に大きく影響されることから、塵埃の多い場所で計測すると耐久性能が急激に低下して使用できなくなるおそれもあった。
【0007】
これまでの血圧計では、主に排気調整弁等の排気構造に多くの改良があったが、外気を吸引する加圧ポンプの吸気構造について改良されているものは極めて少ない。しかしながら、発明者の研究によると、コロトコフ音が正確に聞えなくなる最も多い原因は、排気調整弁や逆止弁に塵埃が絡み付くことにあった。
【0008】
そこで本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、コロトコフ法による血圧計において、塵埃の侵入を防止し、血圧計の精度を維持し、耐久性能を格段に高めることができる血圧計用加圧ポンプの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の手段は、ゴム球10の両端部に逆止弁20が装着され一方の逆止弁20に排気調整弁30が連結された加圧ポンプPでカフQに空気を供給し、コロトコフ音に基づいて血圧を検出する血圧計用加圧ポンプにおいて、筒状を成した逆止弁20の吸気側端部を封止すると共に、該吸気側端部の周側面に吸気口22を形成し、逆止弁20内の空気流通方向に対して吸気口22を横向きに形成し、
前記弁体21の空気排出口にメッシュ板24を装着したことにある。
【0010】
第2の手段の前記吸気口22は、前記逆止弁20の周側面に沿って複数個形成され、これら吸気口22の表面を覆うフィルター23を装着した請求項1記載の血圧計用加圧ポンプ。
【0012】
第
3の手段において、前記逆止弁20は、前記ゴム球10の空気流入口11に装着される逆止弁20、若しくは前記ゴム球10の空気流出口12に装着される逆止弁20とし、又はその両方に装着される逆止弁20とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1の如く、逆止弁20内の空気流通方向に対して吸気口22を横向きに形成したことにより、特に、細くて長い繊維状の塵埃は、吸気口22から弁体21に至る間に侵入を阻止することができる。この結果、排気調整弁30側への繊維状塵埃の侵入を防止し、血圧計の耐久性能を格段に高めることができる。
しかも、弁体21の空気排出口にメッシュ板24を装着したことにより、僅かな塵埃が侵入した場合でも、このメッシュ板24に塵埃が絡み付けることが可能になる。この結果、排気調整弁30や排気調整弁30側の逆止弁20への付着が遅くなり、更に血圧計の耐久性能を高めることができる。
【0014】
請求項2のごとく、吸気口22は、逆止弁20の周側面に沿って複数個形成され、フィルター23は、逆止弁20の周側面を被覆するように装着されたことにより、ゴム球10の吸引力を妨げることなく、塵埃の侵入を防止することができる。
【0016】
請求項
3のごとく、本発明逆止弁は、ゴム球10に装着されるいずれの逆止弁20を選択することも可能であり、また、ゴム球10の両方に装着することで塵埃の侵入防止効果を高めることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明加圧ポンプの一実施例を示す要部断面図である。
【
図2】本発明の吸気弁の一実施例を示す側面図である。
【
図3】本発明の吸気弁の一実施例を示す断面図である。
【
図4】本発明加圧ポンプの他の実施例を示す要部断面図である。
【
図5】本発明の吸気弁の他の実施例を示す側面図である。
【
図6】本発明の吸気弁の他の実施例を示す断面図である。
【
図7】本発明を使用した血圧計を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によると、排気調整弁への繊維状塵埃の侵入を防止し、血圧計の耐久性能を格段に高めることができるなどといった当初の目的を達成した。
【0019】
以下、図面を参照して本発明の構成を詳細に説明する。本発明加圧ポンプは、コロトコフ音に基づいて血圧を検出する血圧計に使用する加圧ポンプである(
図7参照)。
【0020】
すなわち、ゴム球10の両端部に逆止弁20が装着され一方の逆止弁20に排気調整弁30が連結された加圧ポンプPでカフQに空気を供給した後、排気調整弁30を調整して圧力を下げながらコロトコフ音の発生、消滅を確認して血圧値を測定するタイプの血圧計である。そのため、カフQには、圧力の変化を計測する圧力計Rが備えられている(
図7参照)。
【0021】
この逆止弁20は筒状を成すもので、ゴム球10の空気流入口11と、ゴム球10の空気流出口12との両端部に装着されている。そして、これら逆止弁20の吸気側端部を封止すると共に、該吸気側端部の周側面に吸気口22を形成し、逆止弁20内の空気流通方向に対して吸気口22を横向きに形成するものである。
【実施例1】
【0022】
図1乃至
図3に示す逆止弁20は、ゴム球10の空気流入口11に装着される逆止弁20である。一方、ゴム球10の空気流出口12に装着されている逆止弁20は、従来タイプの逆止弁20、すなわち、逆止弁20の空気供給方向に沿って吸気口22が直線状に設けられたものである。
【0023】
袋本体10の空気流入口11に装着されている逆止弁20の吸気側端部は封止されており、この封止された吸気側端部は、ゴム球10から外部に突出した状態になる(
図1参照)。更に、突出した吸気側端部の周側面に吸気口22を形成している(
図3参照)。そして、逆止弁20の空気供給方向に対して吸気口22を横向きに設けている。吸気口22の向きをこのように横向きにすることで、特に、細くて長い繊維状の塵埃の侵入防止に好適である。
【0024】
図示の吸気口22は、逆止弁20の周側面に沿って複数個形成している(
図3参照)。そして、これら吸気口22の表面を覆うフィルター23を装着している(
図2参照)。このフィルター23により、より細かい塵埃の侵入を防止できる。図示例では、逆止弁20の吸気側端部に係止フランジ26を形成し、この係止フランジ26と係止リブ25との間の凹部にリング状のフィルター23を外嵌している(
図2参照)。
【0025】
更に、逆止弁20の側面にはゴム球10に係止する一対の係止リブ25を周設し(
図2参照)、一方の係止リブ25をゴム球10内部に嵌合させ、他方の係止リブ25をゴム球10端部に当接させている(
図1参照)。
【0026】
また、逆止弁20の排気側端部には、球体21Bを備えた弁体21を形成している(
図3参照)。この弁体21は、カフQに圧縮空気を送る際に、移動自在な球体21Bが空気導入口21Aを閉塞する構造で、ゴム球10の弾性力にてゴム球10内部に空気を導入する際に、この球体21Bは、空気導入口21Aから空気供給口21C側へ移動する(
図3参照)。
【0027】
図示の弁体21は、空気供給口21Cにメッシュ板24を装着しており、このメッシュ板24で球体21Bの落下を阻止している(
図3参照)。また、このメッシュ板24を使用することで、塵埃等をメッシュ板24に付着させることが可能になる。更に、このメッシュ板24の代わりに、空気供給口21Cを加締めることで球体21Bの落下を防止しても良い(図示せず)。
【実施例2】
【0028】
図4乃至
図6に示す加圧ポンプPは、ゴム球10の空気流出口12に装着される逆止弁20である。一方、空気流入口11に装着されている逆止弁20は、従来タイプの逆止弁20、すなわち、逆止弁20の空気供給方向に沿って吸気口22が直線状に設けられたものである。そして、空気流出口12に装着された逆止弁20には排気調整弁30が設けられている(
図4参照)。この排気調整弁30は、逆止弁20の排気側端部に連続形成されるもので、カフQから排出される圧縮空気を調整しながら排出するための弁である(
図6参照)。
【0029】
図示の逆止弁20は、封止された吸気側端部がゴム球10の内部に収納された状態になっている(
図4参照)。更に、この吸気側端部の周側面に吸気口22を形成している(
図6参照)。この逆止弁20は、ゴム球10に吸引された空気を吸気口22から弁体21方向に送るものである。更に、逆止弁20の空気供給方向に対して吸気口22を横向きに設けている。図示の吸気口22は、逆止弁20の周側面に沿って複数個形成している(
図6参照)。そして、これら吸気口22の表面を覆うフィルター23を装着している(
図5参照)。
【0030】
図示の弁体21は、弾性材にて形成された長い略筒状をなし、側面に開閉自在なスリット21Dが形成されている。そして、カフQに圧縮空気を送る際に、このスリット21Dが開口し、カフQから排気調整弁30に空気が送られる際に、スリット21Dが閉じる構造である(
図6参照)。
【0031】
図示の弁体21には、空気供給口21C側にメッシュ板24を装着していないが、メッシュ板24を装着することも可能である。
【0032】
尚、実施例1では、本発明逆止弁をゴム球10の空気流入口11に装着した逆止弁20とし、実施例2では、本発明逆止弁をゴム球10の空気流出口12に装着した逆止弁20としているが、両方の逆止弁20を本発明逆止弁とすることも可能である。また、本発明は図示例に限定されるものではなく、加圧ポンプPの構成や、ゴム球10、逆止弁20、排気調整弁30等の形状は、従来周知の構成を任意に利用できるものである。
【符号の説明】
【0033】
P 加圧ポンプ
Q カフ
R 圧力計
10 ゴム球
11 空気流入口
12 空気流出口
20 吸気弁
21 弁体
21A 空気導入口
21B 球体
21C 空気供給口
21D スリット
22 吸気口
23 フィルター
24 メッシュ板
25 係止リブ
26 係止フランジ
30 排気調整弁