特許第6018439号(P6018439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018439
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】浮力原動機
(51)【国際特許分類】
   F03B 17/02 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   F03B17/02
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-148956(P2012-148956)
(22)【出願日】2012年7月2日
(65)【公開番号】特開2014-9667(P2014-9667A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】312008718
【氏名又は名称】桜井 克義
(74)【代理人】
【識別番号】100083437
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 實
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(72)【発明者】
【氏名】桜 井 克 義
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−37035(JP,A)
【文献】 特開昭56−162276(JP,A)
【文献】 国際公開第96/36811(WO,A1)
【文献】 米国特許第3412482(US,A)
【文献】 国際公開第96/37701(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 17/02−17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮力発生源となる液体よりも充分に軽い比重に設定した扇状同一断面形浮翼の複数個が、水平主軸心回りに等開き角度にて均衡配置となるよう一体化し、各浮翼間夫々に該水平主軸心から遠心方向に開口する筒状摺動穴を開口した回転翼を有し、該回転翼各筒状摺動穴夫々には、該遠心方向長が各筒状摺動穴の深さ寸法よりも短く、該遠心方向に直交する断面形が各筒状摺動穴よりも僅かに小さな断面形となる外郭形状の錘駒を遠心方向に進退自在とするよう装入すると共に、当該回転翼の水平主軸心近傍を縦境界とし、前がわ概略半径範囲を浮揚域、後がわ概略半径範囲を減圧域とするよう、同回転翼の前がわ概略半径範囲を露出状とし、後がわ概略半径範囲を略密閉状とするよう包囲可能な形状とした減圧部を有するハウジングに対し、当該回転翼の水平主軸心を、同回転翼の後がわ概略半径範囲が減圧部に配置する姿勢に軸着した上、各錘駒には、当該減圧域に相当するハウジング減圧部にて遠心誘導可能であり、且つ当該浮揚域にて求心誘導可能な出没制御機構を組み込み、当該回転翼全体が対象液体液面下に没するよう設置可能なものとしたことを特徴とする浮力原動機。
【請求項2】
浮力発生源となる液体よりも充分に軽い比重に設定した扇状同一断面形浮翼の複数個が、水平主軸心回りに等開き角度にて均衡配置となるよう一体化し、各浮翼間夫々に該水平主軸心から遠心方向に開口する筒状摺動穴を開口した回転翼を有し、該回転翼各筒状摺動穴夫々には、該遠心方向長が各筒状摺動穴の深さ寸法よりも短く、該遠心方向に直交する断面形が各筒状摺動穴よりも僅かに小さな断面形となる外郭形状の錘駒を遠心方向に進退自在とするよう装入すると共に、当該回転翼の水平主軸心近傍を縦境界とし、前がわ概略半径範囲を浮揚域、後がわ概略半径範囲を減圧域とするよう、同回転翼の前がわ概略半径範囲を露出状とし、後がわ概略半径範囲を略密閉状とするよう包囲可能な形状とした減圧部を有するハウジングに対し、当該回転翼の水平主軸心を、同回転翼の後がわ概略半径範囲が減圧部に配置する姿勢に軸着した上、各錘駒には、当該減圧域に相当するハウジング減圧部にて遠心誘導可能であり、且つ当該浮揚域にて求心誘導可能な出没制御機構を組み込み、当該回転翼全体が対象液体液面下に没するよう設置し、当該浮揚域にて液体中に露出する前がわ概略半径範囲の各浮翼が、当該減圧域に相当するハウジング減圧部にて液体から隠蔽状となる後がわ概略半径範囲の各浮翼よりも大きな浮力を受け、その浮揚力を水平主軸心回りの回転力に変換可能なものとしたことを特徴とする浮力原動機。
【請求項3】
浮力発生源となる液体よりも充分に軽い比重に設定した扇状同一断面形浮翼の複数個が、水平主軸心回りに等開き角度にて均衡配置となるよう一体化し、各浮翼間夫々に該水平主軸心から遠心方向に開口する筒状摺動穴を開口した回転翼を有し、該回転翼各筒状摺動穴夫々には、浮力発生源となる液体よりも軽い比重か、同液体と等しい比重か、またはそれよりも重い比重かの何れか1つであって、該遠心方向長が各筒状摺動穴の深さ寸法よりも短く、該遠心方向に直交する断面形が各筒状摺動穴よりも僅かに小さな断面形となる外郭形状の錘駒を遠心方向に進退自在とするよう装入すると共に、当該回転翼の水平主軸心近傍を縦境界とし、前がわ概略半径範囲を浮揚域、後がわ概略半径範囲を減圧域とするよう、同回転翼の前がわ概略半径範囲を露出状とし、後がわ概略半径範囲を略密閉状とするよう包囲可能な内周面形状とした減圧部としての包囲壁を有するハウジングに対し、当該回転翼の水平主軸心を、同回転翼の後がわ概略半径範囲が包囲壁に対峙する姿勢に軸着した上、各錘駒には、当該減圧域に相当するハウジング包囲壁にて、各錘駒遠心端が、各筒状摺動穴に隣接する浮翼遠心端面に一致する位置まで遠心誘導可能であり、且つ、当該浮揚域にて各筒状摺動穴の最深位置まで求心誘導可能な出没制御機構を組み込み、当該回転翼全体が対象液体液面下に没するよう設置可能なものとしたことを特徴とする浮力原動機。
【請求項4】
回転翼は、各浮翼が、内部に気密室を確保した中空密閉容器状のものとし、各気密室に浮揚用ガスを充填・密封してなるものとした、請求項1ないし3何れか一項記載の浮力原動機。
【請求項5】
回転翼は、各浮翼が、浮揚域における対象液体液中の浮揚・回転抵抗、および、減圧域としての減圧部への突入に伴う対象液体の排出抵抗を軽減可能とするよう、扇状同一断面形遠心端外周壁の回転方向角を流線状輪郭断面形とするよう切除し、除抗曲面部を設けてなるものとした、請求項1ないし4何れか一項記載の浮力原動機。
【請求項6】
回転翼は、各浮翼が、浮揚域において、筒状摺動穴の最深位置に配した錘駒の遠心端面より遠心がわとなる中途適所に、水平主軸心周回り方向に貫通するよう、除抗排液路を設けてなるものとした、請求項1ないし5何れか一項記載の浮力原動機。
【請求項7】
回転翼は、各筒状摺動穴の底部同士が、水平主軸心回りに等開き角度にて均衡する形状となり、内部に適宜気体、液体またはそれらの混合体などの流体を充填した密閉状星型流体回路にて互いに気密状接続し、浮揚域にて筒状摺動穴最深位置まで没した錘駒が排出する流体が、減圧域にある筒状摺動穴の錘駒を遠心方向に押圧し、または、減圧域にて筒状摺動穴の遠心位置に移動した錘駒の基端が吸引する流体が、浮揚域にある筒状摺動穴の錘駒を求心方向に吸引するようにしてなるものとした、請求項1ないし6何れか一項記載の浮力原動機。
【請求項8】
各錘駒が、遠心方向に一致する筒状流通孔を貫通してなるものとした、請求項1ないし6何れか一項記載の浮力原動機。
【請求項9】
各錘駒が、回転翼各筒状摺動穴の内周壁との間に、複数の転動体を設け、摺動中の接触抵抗を軽減してなるものとした、請求項1ないし8何れか一項記載の浮力原動機。
【請求項10】
出没制御機構が、ハウジングの水平主軸心の少なくとも一方端がわ軸着部周囲に案内カムを一体的に設け、該案内カムに対峙する各錘駒の対峙端には、該案内カムに沿って案内・誘導可能な従動部を一体化し、該案内カムが、各錘駒の出没動作を強制的に案内可能なものとするか、または、各錘駒に遠心方向かまたは求心方向かの何れか一方に付勢可能な弾性付勢部を設け、該案内カムが、各錘駒に遠心方向かまたは求心方向かの何れか他方に強制的に案内可能なものとするか、の何れか1つとしてなるものとした、請求項1ないし9何れか一項記載の浮力原動機。
【請求項11】
ハウジングは、減圧部または減圧部としての包囲壁に、減圧域にある各浮翼および各錘駒の各遠心端面との接触抵抗を軽減可能、且つ、各浮翼および各錘駒の各遠心端面との間隙に進入する対象液体液量を削減可能な複数個の転動体を設けてなるものとした、請求項1ないし10何れか一項記載の浮力原動機。
【請求項12】
回転翼が、その水平主軸心付近か、各浮翼に近接する付近かの少なくとも何れか一方に、回転翼の回転抵抗、および、各錘駒の進退抵抗に抗して、駆動可能な出力を有する補助駆動源を付属してなるものとした、請求項1ないし11何れか一項記載の浮力原動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体中に没した物質に働く浮力を、所望の目的に利用可能な運動エネルギーに変換可能とする技術に関連するものであり、特に、液中にて浮翼に生ずる浮力を効率的に機械的回転力に変換可能とする浮力原動機を製造、提供する分野は勿論のこと、その輸送、保管、組み立ておよび設置に必要となる設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
近年、火力発電や原子力発電に代わり、自然環境に優しく、安全なクリーンエネルギー技術の開発が進み、風力発電や太陽光発電などが広く実用化されるようになってきているが、風力や太陽光の利用は、その発電量を天候に左右され易く、電力需要に応じた過不足ない発電の管理が不可能なため、安定供給が極めて困難であるという致命的欠点を有するものであり、こうした欠点を解消可能な技術として、ダムなどに貯留した水の位置エネルギーを利用する水力発電、夜間電力を利用してポンプアップした水を電力需要の高い時間帯に落下させて発電する揚水発電、および、潮汐による海水の移動力をエネルギー変換する潮力発電などが開発されている。
【0003】
しかしながら、こうした大量の沢水や河川水、または海水などを利用する各種発電技術は、水力発電にあっては山間部などへのダム建設、揚水発電にあっては揚水管路や流下用配管、ポンプ、発電機などの設置など、多大な設備費用を要するものであり、また、潮力発電にあっては、潮位の変動時間にのみ発電するものとなり、必ずしも電力需要のピークに合わせて発電量を制御したり、常時一定の電力を発電したりすることができないという短所があった。
【0004】
(従来の技術)
こうした状況を憂慮し、例えば、下記の特許文献1(1)ないし1(4)に提案されているものに代表されるように、回転エネルギー取り出し用とするよう水面下に没した上下ドラム間に無端ベルトを長円状に張設し、該無端ベルトの外面全周に沿って複数の浮力体を取付け、該ベルトの下方端にて各浮力体に空気を送入して浮力を発生させ、上方端で順次各浮力体内の空気を排出させるように制御可能としてなるものとし、水中にて各浮力体に作用する浮力を回転エネルギーに変換可能としてなるものなどや、同特許文献1(5)のように、水平軸心回りの円周上に、同水平軸心に平行移動自在な複数のスライド管を配置した回転体により、水槽および空洞室に区画したケーシングにおいて、該水槽および空洞室の各内壁を、水平軸心に対して傾斜した平行壁面とし、水平軸心よりも下位の水槽内にあるスライド管に発生した浮力によって回転体を水平軸心回りに回転させると共に、その回転に伴いスライド管が傾斜内壁面に沿って空洞室方向に自動的に誘導可能なものとし、各スライド管が同じ動きを繰り返し、順次回転を続行して動力を発生するようにしたもの、および、同特許文献1(6)に見られるような、回転軸回り遠心がわに同心環状の中空部を設けた水車の該回転軸から中空部までの半径範囲に渡り仕切壁を設け、該仕切壁を境に、一方を貯水槽とし、他方を空にして、該水車中空部内の液体量を調整することにより、水車本体の浮力と重力とのバランスをとり、回転力を発生するようにしてなるものなどが散見される。
【0005】
しかし、前者特許文献1(1)ないし1(4)に示されているような、水中に浸した浮力体に空気を注入して揚力を発生させるようにしてなるものは、水圧に抗して圧縮空気を供給可能な圧縮機やポンプなどが必須であり、圧縮空気供給のための駆動源を動かすために電力や燃料など、外部エネルギーが必要であるという致命的な欠点を有し、特許文献1(5)のように、水平回転軸心回りに回転自在とした回転体の一側に水槽を確保するものは、そのケーシングが大型化してしまい、経済的負担が大きくなる虞があり、また、および1(6)に示されているもののように、水車が、水平回転軸回りに同心上配置となる環状中空部を有し、該環状水車の平滑な外周壁に浮力を受けるようにしてなるものは、浮力を効率的に回転モーメントに変換することが困難であるという欠点があった。
【特許文献1】(1)特開2000−130311号公報 (2)特開2001−200778号公報 (3)特開2011−1946号公報 (4)実用新案登録第3129232号公報 (5)特開平11−324897号公報 (6)特開2004−346941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(問題意識)
上述したとおり、従前までに提案のある浮力を利用したエネルギー発生用の各種装置などは、何れも水中に圧縮空気を送り込むための装置を必須とするものであったり、水槽を内蔵して大型化してしまったり、または、浮力を回転エネルギーに変換する効率が低いなどの欠点が残るものであり、種々の事情に伴い、化石エネルギーや原子力エネルギーに頼らない、自然に優しい再生可能な新エネルギーの提供を希望する人々が増加するなか、圧縮空気の供給を不要とし、装置を小型・軽量化することが可能であり、水中にて生じた浮力を一段と効率的に回転エネルギーに変換可能とすることができる浮力利用の新たな原動機の逸早い開発・実現化の必要性を痛感するに至ったものである。
【0007】
(発明の目的)
そこで、この発明は、装置全体を小型・軽量化し、エネルギー変換効率を大幅に向上し、一段と経済的に設置、利用可能とすることができる浮力利用の新たなエネルギー変換技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の浮力原動機を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の浮力原動機は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、浮力発生源となる液体よりも充分に軽い比重に設定した扇状同一断面形浮翼の複数個が、水平主軸心回りに等開き角度にて均衡配置となるよう一体化し、各浮翼間夫々に該水平主軸心から遠心方向に開口する筒状摺動穴を開口した回転翼を有し、該回転翼各筒状摺動穴夫々には、該遠心方向長が各筒状摺動穴の深さ寸法よりも短く、該遠心方向に直交する断面形が各筒状摺動穴よりも僅かに小さな断面形となる外郭形状の錘駒を遠心方向に進退自在とするよう装入すると共に、当該回転翼の水平主軸心近傍を縦境界とし、前がわ概略半径範囲を浮揚域、後がわ概略半径範囲を減圧域とするよう、同回転翼の前がわ概略半径範囲を露出状とし、後がわ概略半径範囲を略密閉状とするよう包囲可能な形状とした減圧部を有するハウジングに対し、当該回転翼の水平主軸心を、同回転翼の後がわ概略半径範囲が減圧部に配置する姿勢に軸着した上、各錘駒には、当該減圧域に相当するハウジング減圧部にて遠心誘導可能であり、且つ当該浮揚域にて求心誘導可能な出没制御機構を組み込み、当該回転翼全体が対象液体液面下に没するよう設置可能なものとした構成を要旨とする浮力原動機である。
【0009】
この基本的な構成からなる浮力原動機は、その表現を変えて示すならば、浮力発生源となる液体よりも充分に軽い比重に設定した扇状同一断面形浮翼の複数個が、水平主軸心回りに等開き角度にて均衡配置となるよう一体化し、各浮翼間夫々に該水平主軸心から遠心方向に開口する筒状摺動穴を開口した回転翼を有し、該回転翼各筒状摺動穴夫々には、該遠心方向長が各筒状摺動穴の深さ寸法よりも短く、該遠心方向に直交する断面形が各筒状摺動穴よりも僅かに小さな断面形となる外郭形状の錘駒を遠心方向に進退自在とするよう装入すると共に、当該回転翼の水平主軸心近傍を縦境界とし、前がわ概略半径範囲を浮揚域、後がわ概略半径範囲を減圧域とするよう、同回転翼の前がわ概略半径範囲を露出状とし、後がわ概略半径範囲を略密閉状とするよう包囲可能な形状とした減圧部を有するハウジングに対し、当該回転翼の水平主軸心を、同回転翼の後がわ概略半径範囲が減圧部に配置する姿勢に軸着した上、各錘駒には、当該減圧域に相当するハウジング減圧部にて遠心誘導可能であり、且つ当該浮揚域にて求心誘導可能な出没制御機構を組み込み、当該回転翼全体が対象液体液面下に没するよう設置し、当該浮揚域にて液体中に露出する前がわ概略半径範囲の各浮翼が、当該減圧域に相当するハウジング減圧部にて液体から隠蔽状となる後がわ概略半径範囲の各浮翼よりも大きな浮力を受け、その浮揚力を水平主軸心回りの回転力に変換可能なものとした構成からなる浮力原動機となる。
【0010】
より具体的には、浮力発生源となる液体よりも充分に軽い比重に設定した扇状同一断面形浮翼の複数個が、水平主軸心回りに等開き角度にて均衡配置となるよう一体化し、各浮翼間夫々に該水平主軸心から遠心方向に開口する筒状摺動穴を開口した回転翼を有し、該回転翼各筒状摺動穴夫々には、浮力発生源となる液体よりも軽い比重か、同液体と等しい比重か、またはそれよりも重い比重かの何れか1つであって、該遠心方向長が各筒状摺動穴の深さ寸法よりも短く、該遠心方向に直交する断面形が各筒状摺動穴よりも僅かに小さな断面形となる外郭形状の錘駒を遠心方向に進退自在とするよう装入すると共に、当該回転翼の水平主軸心近傍を縦境界とし、前がわ概略半径範囲を浮揚域、後がわ概略半径範囲を減圧域とするよう、同回転翼の前がわ概略半径範囲を露出状とし、後がわ概略半径範囲を略密閉状とするよう包囲可能な内周面形状とした減圧部としての包囲壁を有するハウジングに対し、当該回転翼の水平主軸心を、同回転翼の後がわ概略半径範囲が包囲壁に対峙する姿勢に軸着した上、各錘駒には、当該減圧域に相当するハウジング包囲壁にて、各錘駒遠心端が、各筒状摺動穴に隣接する浮翼遠心端面に一致する位置まで遠心誘導可能であり、且つ、当該浮揚域にて各筒状摺動穴の最深位置まで求心誘導可能な出没制御機構を組み込み、当該回転翼全体が対象液体液面下に没するよう設置可能なものとした構成からなる浮力原動機となる。
【発明の効果】
【0011】
以上のとおり、この発明の浮力原動機によれば、従前までのものとは違い、上記したとおりの固有の特徴ある構成から、回転翼が対象液体液面下に没するよう設置すると、水平主軸心近傍を縦境界とし、浮揚域に位置する回転翼の前がわ概略半径範囲の各浮翼が、減圧域に位置する同回転翼の後がわ概略半径範囲の各浮翼よりも、強い浮力を発生し、一定方向の回転エネルギーに変換可能なものとすることができ、さらに、出没制御機構によって各浮翼間の各筒状摺動穴に挿入した各錘駒が、浮揚域にて筒状摺動穴の最深位置まで移動し、且つ、減圧域にて筒状摺動穴の遠心がわに移動するよう自動的に制御可能なものとしてあるから、浮揚域に位置する各筒状摺動穴に対象液体が浸入して、同浮揚域に位置する各浮翼遠心端がわの浮力を増加し、減圧域に位置する各浮翼遠心端がわの重力を増加し、より強い回転トルクと、より早い回転速度とを達成でき、しかも、当該浮力原動機の全体を小型・軽量化して、貯水槽や湖、河川、海岸など、適量の水量を確保した所であれば規模や場所を選ばず、容易に設置できるものになるという秀れた特徴が得られるものである。
【0012】
加えて、回転翼を軸着、支持可能とするハウジングに、同回転翼の後がわ概略半径範囲を対峙状に包囲可能とする包囲壁を設けたものは、該回転翼の水平主軸心軸着部分と包囲壁とを一体に製造可能となるから、包囲壁面までの距離を正確に設定するのが容易になり、各浮翼の遠心端面、および、各錘駒遠心端面と包囲壁との間隙寸法を最小限度に留めることが可能となり、減圧域に位置する回転翼の各浮翼および各錘駒に生ずる浮力を最小のものとすることが可能になり、さらに、減圧部または減圧部としての包囲壁に複数個の転動体を設けてなるものは、各浮翼および各錘駒の各遠心端面と、包囲壁とを低摩擦抵抗条件下にて転動自在に接触可能とし、各浮翼および各錘駒の各遠心端面と、包囲壁との間隙に浸入する対象液体液量をより一段と削減可能とするものとなり、浮揚域に位置する各浮翼に生ずる浮力の損失を削減し、より効率的に回転エネルギーに変換できるものとすることができる。
【0013】
回転翼の各浮翼が、夫々の内部に設けた気密室中に浮揚用ガスを充填・密封してなるものは、各浮翼の浮力を大幅に増大することができ、さらに、扇状同一断面形遠心端外周壁の回転方向角を流線状輪郭断面形とするよう切除し、除抗曲面部を設けてなるものは、回転方向の対象液体液抵抗を大幅削減し、浮揚域における対象液体液中の浮揚・回転抵抗、および、減圧域としての減圧部への突入に伴う対象液体の排出抵抗を格段に軽減し、また、各浮翼の浮揚域において、筒状摺動穴の最深位置に配した錘駒の遠心端面より遠心がわとなる中途適所に除抗排液路を設けたものは、浮揚域における各浮翼の回転抵抗を大幅に削減可能なものとなるから、回転翼の回転効率を格段に高めたものとすることができる。
【0014】
回転翼に流体を充填した星型流体回路を設けたものは、各錘駒の遠心方向への進退移動を互いに連動可能なものとし、各錘駒基端と筒状摺動穴底部との間に発生する抵抗を大幅削減し、より円滑な回転動作を得ることができるものとすることができる上、各錘駒の出没制御機構に従う進退移動を格段に正確化且つ安定化させ、より円滑なものとすることができ、また、各錘駒に、遠心方向に一致する筒状流通孔を貫通してなるものは、星型流体回路を各錘駒の外がわに連通状に開口するものとなり、さらに、各錘駒と各筒状摺動穴内周壁との間に、複数の転動体を設けてなるものは、各錘駒と筒状摺動穴内周壁との摩擦を大幅に軽減するものとなり、各錘駒が一段と円滑且つ低抵抗にて進退駆動可能なものとすることができる。
【0015】
ハウジングの水平主軸心の少なくとも一方端がわ軸着部周囲に一体的に設けた案内カム、および、該案内カムに対峙する各錘駒の対峙端に一体化した従動部からなる出没制御機構は、各錘駒を案内カムに沿って正確に進退誘導可能とするものとなり、しかも回転翼と共に水平主軸心回りに回転移動する各錘駒が、それら従動部を介して回転翼の回転エネルギーの一部を利用し、案内カムに沿って遠心方向に進退移動するものとなるから、構造が簡素な上、各錘駒進退駆動用の外部入力が不要となり、さらに、各錘駒に遠心方向かまたは求心方向かの何れか一方に付勢可能な弾性付勢部を設け、該案内カムが、各錘駒に遠心方向かまたは求心方向かの何れか他方に強制的に案内可能としたものの場合にも、同様に各錘駒の進退駆動を実現化できるものになる。
【0016】
補助駆動源を付属してなるものは、浮揚域に位置する各浮翼に働く浮力を補助し、より大きな回転エネルギーを発生可能なものとすることができる外、不測の事態によって生じた抵抗にて回転翼の回転が停止してしまった場合に、回転翼を補助的に回転起動可能な回転力を付勢可能なものとし、当該浮力原動機を格段に安定的に運転可能とし、信頼性を格段に高めたものとすることができるという大きな効果を奏することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
回転翼は、その中心となる水平主軸心近傍に、浮揚域および減圧域の縦境界を設定し、該浮揚域に配した前がわ概略半径範囲に加わる浮力と、減圧域に配した後がわ概略半径範囲に生ずる浮力との間にて互いに崩れた均衡により、当該水平主軸心回りの回転力を発生可能とする機能を担い、より具体的には、浮力発生源となる液体よりも充分に軽い比重に設定した扇状同一断面形浮翼の複数個が、水平主軸心回りに等開き角度にて均衡配置となるよう一体化し、各浮翼間夫々に該水平主軸心から遠心方向に開口し、錘駒を遠心方向に進退自在に装入可能な筒状摺動穴を開口してなるものとしなければならず、後述する実施例に示すように、高密度ポリエチレンなどの合成樹脂製や、ガラス繊維強化樹脂製、炭素繊維強化樹脂製など、水などの液体に比較して充分に軽い比重の素材製のものとするのが望ましく、該回転翼の水平主軸心に平行な長さ寸法を、同回転翼の外径よりも長く設定してなるものとすることができ、加えて、各筒状摺動穴の底部同士が、水平主軸心回りに等開き角度にて均衡する形状となり、内部に適宜気体、液体またはそれらの混合体などの流体を充填した密閉状星型流体回路にて互いに気密状接続し、浮揚域にて筒状摺動穴最深位置まで没した錘駒が排出する流体が、減圧域にある筒状摺動穴の錘駒を遠心方向に押圧し、または、減圧域にて筒状摺動穴の遠心位置に移動した錘駒の基端が吸引する流体が、浮揚域にある筒状摺動穴の錘駒を求心方向に吸引するようにしてなるものとすることが可能であり、水平主軸心付近か、各浮翼に近接する付近かの少なくとも何れか一方に、回転翼の回転抵抗、および、各錘駒の進退抵抗に抗して、駆動可能な出力を有する補助駆動源を付属し、各浮翼に働く浮力を補助してより大きな回転エネルギーを発生可能としたものとすることができる。
【0018】
回転翼の各浮翼は、縦境界を境に浮揚域にて、減圧域に配した場合よりも大きな浮力を発生可能とし、回転翼の水平主軸心回り一定方向の回転力を発生可能とする機能を分担し、浮力発生源となる液体よりも充分に軽い比重に設定した扇状同一断面形のものとし、その複数個が、水平主軸心回りに等開き角度にて均衡配置となるよう一体的に組み合わせてなるものとしなければならず、後述する実施例に示すように、内部に気密室を確保した中空密閉容器状のものとし、各気密室に浮揚用ガスを充填・密封してなるものとすることが可能であり、各浮翼が、浮揚域における対象液体液中の浮揚・回転抵抗、および、減圧域としての減圧部への突入に伴う対象液体の排出抵抗を軽減可能とするよう、扇状同一断面形遠心端外周壁の回転方向角を流線状輪郭断面形とするよう切除し、除抗曲面部を設けてなるものとすることができ、さらにまた、各浮翼が、浮揚域において、筒状摺動穴の最深位置に配した錘駒の遠心端面より遠心がわとなる中途適所に、水平主軸心周回り方向に貫通するよう、除抗排液路を設けてなるものとすることができる。
【0019】
気密室は、浮翼の適所に浮揚用ガスを漏出することなく充填・密閉可能とする機能を担い、できるだけ各浮翼内の遠心がわ寄りに配したものとすべきであり、浮揚用ガスの追加充填や抜き取り、交換などを可能とする注入バルブを設けたものとするのが望ましく、また、各浮翼気密室同士を互いに接続し、各気密室同士の気圧が、常時一定に保たれるようにしたものとすることができ、浮揚用ガスは、回転翼の各浮翼を軽量化し、浮揚力を増大して回転翼の回転速度や回転トルクを高める機能を分担し、各浮翼気密室内に充填・密閉してなるものとしなければならず、対象液体および各浮翼の素材よりも充分に比重が軽い気体とすべきであり、後述する実施例に示すように、例えばヘリウムガス、水素ガス、炭酸ガスなどとするのが望ましいが、空気や酸素、窒素など、対象液体よりも軽い気体や、対象液体よりも軽い流体(液体を含む)なども利用可能である。
【0020】
筒状摺動穴は、回転翼の各浮翼間夫々に錘駒を遠心方向に進退自在とするよう装入可能な空間および案内を確保する機能を担い、回転翼の水平主軸心周回りに等開き角度にて均衡配置となる各浮翼間夫々に遠心方向に開口した筒状穴としなければならず、その遠心方向の深さ寸法が、錘駒の遠心方向長よりも深く、遠心方向に直交する断面形が錘駒よりも僅かに大きく(錘駒の進退摺動を可能とする程度の隙間を確保した形状および大きさに設定)設定したものとすべきであり、さらに、各内周壁と錘駒との間に、複数の転動体を設け、摺動中の接触抵抗を軽減してなるものとすることができる。
【0021】
錘駒は、筒状摺動穴が浮揚域にあるときに、求心方向に移動して回転翼の遠心がわに作業する重力を軽減し、筒状摺動穴が減圧域にあるときに、遠心方向に移動して回転翼の遠心がわに加わる重力を増加し、浮揚域にある回転翼各浮翼に働く浮力による回転モーメントが、減圧域にある各浮翼の浮力による回転モーメントよりも大きくなるよう自動的に制御可能とする機能を担い、回転翼水平主軸心に対し、遠心方向となる各錘駒の長さが各筒状摺動穴の深さ寸法よりも短く、該遠心方向に直交する断面形が各筒状摺動穴よりも僅かに小さな断面形となる外郭形状のものとし、各筒状摺動穴に対して遠心方向に進退自在とするよう装入可能なものとし、筒状摺動穴が減圧域にあるときに遠心誘導可能であり、且つ、筒状摺動穴が浮揚域にあるときに求心誘導可能な出没制御機構を組み合せ可能なものとしなければならず、後述する実施例に示すように、進退移動の抵抗を軽減するよう、遠心方向に一致する筒状流通孔を貫通し、また、回転翼各筒状摺動穴の内周壁との間に、複数の転動体を設けたものとすることが可能である。
【0022】
星型流体回路は、回転翼の周回りに均衡配置した各錘駒の互いの、遠心方向の進退移動量をより正確に制御可能とする機能を担い、各筒状摺動穴の底部同士が、水平主軸心回りに等開き角度にて均衡する形状となり、内部に適宜気体、液体またはそれらの混合体などの流体を充填して気密状接続し、浮揚域にて筒状摺動穴最深位置まで没した錘駒が排出する流体が、減圧域にある筒状摺動穴の錘駒を遠心方向に押圧し、または、減圧域にて筒状摺動穴の遠心位置に移動した錘駒の基端が吸引する流体が、浮揚域にある筒状摺動穴の錘駒を求心方向に吸引するようにしてなるものとしなければならず、該流体は、空気やヘリウムガス、二酸化炭素、その他の気体や、水、淡水、塩水、アルコール、油などの低粘度の液体などとすることが可能である。
【0023】
ハウジングは、回転翼全体が対象液体液面下に没するよう水平軸着、設置可能なものとすると共に、水平主軸心周回りに回転自在に支持した回転翼の該水平主軸心近傍を縦境界とし、前がわ概略半径範囲を浮揚域、後がわ概略半径範囲を減圧域とする圧力環境を実現化する機能を担い、回転翼全体が対象液体液面下に没するよう設置した場合に、該回転翼の前がわ概略半径範囲を対象液体中に露出状とし、後がわ概略半径範囲を略密閉状とするよう包囲可能な減圧部を有するものとしなければならず、当該減圧域に相当するハウジング減圧部に配した各錘駒を遠心誘導可能であり、且つ当該浮揚域に配した各錘駒を求心誘導可能な出没制御機構を組み込んだものとすることが可能であり、後述する実施例に示すように、減圧部または減圧部としての包囲壁に、減圧域にある各浮翼および各錘駒の各遠心端面との接触抵抗を軽減可能、且つ、各浮翼および各錘駒の各遠心端面との間隙に進入する対象液体液量を削減可能な複数個の転動体を設けてなるものとすることができる。
【0024】
出没制御機構は、回転翼の水平主軸心近傍を縦境界とし、筒状摺動穴が浮揚域にあるときに錘駒を求心方向に、筒状摺動穴が減圧域にあるときに錘駒を遠心方向に夫々、自動的に案内可能とする機能を担い、外部入力などを要さず、浮力によって生ずる回転翼の回転エネルギーを利用して各錘駒を進退移動可能なものとすべきであるが、外部電力や外部の駆動源などを利用して各錘駒を進退誘導・移動可能なものとすることが可能であり、電磁石やプーリー・ベルト機構、歯車機構などを利用したものとすることができる外、後述する実施例に示すように、ハウジングの水平主軸心の少なくとも一方端がわ軸着部周囲に案内カムを一体的に設け、該案内カムに対峙する各錘駒の対峙端には、該案内カムに沿って案内・誘導可能な従動部を一体化し、該案内カムが、各錘駒の出没動作を強制的に案内可能なものとするか、または、各錘駒に遠心方向かまたは求心方向かの何れか一方に付勢可能な、バネ、ゴムおよび/または永久磁石などを利用した弾性付勢部を設け、該案内カムが、各錘駒に遠心方向かまたは求心方向かの何れか他方に強制的に案内可能なものとするか、の何れか1つとしてなるものとすることが可能である。
【0025】
出没制御機構の案内カムは、錘駒の適所に設けた従動部を誘導可能であって、各錘駒を筒状摺動穴が浮揚域にあるときに求心方向に、筒状摺動穴が減圧域にあるときに遠心方向に夫々案内可能とする機能を分担し、ハウジング(回転翼)の水平主軸心回りに、無端レール、無端溝、水平短太柱体外周壁、水平短太筒体の内・外周壁などとすることが可能であり、例えば、後述する実施例に示すように、無端溝状のものに、錘駒の適所に突設した従動部を摺動自在に嵌合してなるものとすることができ、錘駒適所の従動部は、案内カムに沿って円滑に移動し、錘駒を遠心方向に誘導・移動可能とする機能を担い、無端レール、無端溝、水平短太柱体外周壁、水平短太筒体の内・外周壁などの各種案内カムに沿って摺動または転動可能な、突起、球状突起、アーム、筒状突起、転動支持ボール、転動支持ローラーなどとすることができ、さらに、案内カムの周壁に沿って追従可能に押圧するよう付勢可能なバネ、ゴムおよび/または永久磁石などを利用した弾性付勢部を付加したものとすることが可能である。
【0026】
各部の転動体は、各部品同士間の摺動摩擦を軽減し、より円滑且つ低摩擦に摺動可能とする機能を分担し、ホワイトメタルなどを利用した軸受けや、ステンレス製やアルミニウム合金製、チタン合金製、マグネシウム合金製などの各種金属製ボールベアリングなどとすることができる外、ポリフェニレンサルファイド、超高分子量ポリエチレン、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、炭素繊維強化樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、PVDF(登録商標),PET,POM,PBTなど様々な合成樹脂製などのボールベアリングや軸受けとすることができ、また、回転部分を持たない低摩擦接触部品に置き換えることも可能である。
【0027】
補助駆動源は、回転翼の水平主軸心近傍を縦境界とし、浮揚域にある各浮翼に生ずる浮力のみでは、各部の摩擦やその他の理由によって、正常な回転運動が得られない場合や、より強い回転エネルギーを発生させた場合などに、外部から回転翼に補助的な回転エネルギーを供給可能とする機能を分担し、外部からのエネルギー供給を受けて起動するものとするか、または、回転翼が浮力から回転力に変化したエネルギーを蓄電や位置エネルギーとして備蓄して置き、必要に応じてその備蓄エネルギーを利用して起動するものかの何れか一方のものとすべきであり、例えば、回転翼の水平主軸心に直接か、電動機構を介するかして接続し、回転翼が停止したときに外部電力にて起動する電動モーターや、回転翼の一部を回転子とした電動モーターや振動モーターなどとすることが可能である。
【0028】
対象液体は、回転翼各浮翼に浮力を発生する機能を分担し、回転翼全体を没する充分量のものとしなければならず、各浮翼よりも比重が重い液体を選択しなければならず、水、淡水、塩水、アルコール、油、その他の液体、または、それらの混合液などとすることが可能である。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図面は、この発明の浮力原動機の技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
図1】ハウジングを縦断面化した浮力原動機を示す側面図である。
図2】浮翼を縦断面化した浮力原動機を示す側面図である。
図3】浮力原動機を示す斜視図である。
図4】錘駒を示す斜視図である。
図5】浮翼の遠心端がわの形状を示す斜視図である。
【実施例1】
【0030】
図1ないし図5に示す事例は、複数個の浮翼2,2,……が、水平主軸心C回りに均衡配置し、各浮翼2,2,……間夫々に筒状摺動穴3,3,……を開口した回転翼10を有し、各筒状摺動穴3,3,……夫々には、錘駒4,4,……を装入すると共に、当該回転翼10の水平主軸心C近傍を縦境界Bとし、前がわ概略半径範囲を浮揚域F、後がわ概略半径範囲を減圧域DCとするようにしたハウジング5に対し、当該回転翼10の水平主軸心Cを、同回転翼10の後がわ概略半径範囲が減圧域DCに配置する姿勢に軸着した上、各錘駒4,4,……には、遠心方向に適宜進退誘導可能な出没制御機構6を組み込み、当該回転翼10全体が対象液体W液面下に没するよう設置可能なものとした、この発明の浮力原動機における代表的な一実施例を示すものである。
【0031】
それら各図からも明確に把握できるとおり、この発明の浮力原動機1は、浮力発生源となる液体Wとしての淡水または海水よりも充分に軽い比重(比重1.0g/cm3未満)に設定した扇状同一断面形浮翼2,2,……の6個が、水平主軸心C回りに60°の等開き角度αにて均衡配置となるよう一体化し、各浮翼2,2,……間夫々に、水平主軸心C回りに60°の等開き角度αにて均衡配置にて、該水平主軸心Cから遠心方向に向け開口する6個の筒状摺動穴3,3,……を開口した高密度ポリエチレン製の回転翼10を有し、各浮翼2,2,……は、夫々の遠心端21,21,……がわの内部に気密室20,20,……を確保し、中空密閉容器状のものとした上、各気密室20,20,……に浮揚用ガスGであるヘリウムガスGを充填・密封してなるものとしてあり、図3に示すように、回転翼10は、その直径よりも充分に長い水平主軸心Cに平行な長さ寸法に設定されたものとしている。
【0032】
図1ないし図3に示すように、回転翼10各筒状摺動穴3,3,……夫々には、浮力発生源となる液体Wよりも僅かに重い比重(1.1g/cm3以上)であって、該遠心方向長Lが各筒状摺動穴3、3,……の深さ寸法Dよりも短く、該遠心方向に直交する断面形が各筒状摺動穴3、3,……よりも僅かに小さな断面形となる外郭形状の6個の錘駒4,4,……を夫々遠心方向に進退自在とするよう装入すると共に、当該回転翼10の水平主軸心C近傍を縦境界Bとし、前がわ概略半径範囲を浮揚域F、後がわ概略半径範囲を減圧域DCとするよう、同回転翼10の前がわ概略半径範囲Fを露出状とし、後がわ概略半径範囲DCを略密閉状とするよう包囲可能な内周面形とした減圧部50としての包囲壁50を有するハウジング5に対し、当該回転翼10の水平主軸心C両端を、同回転翼10の後がわ概略半径範囲DCが包囲壁50に対峙する姿勢に軸着した上、各錘駒4,4,……には、当該減圧域DCに相当するハウジング5包囲壁50にて、各錘駒4,4,……の遠心端40,40,……が、各筒状摺動穴3、3,……に隣接する浮翼2,2,……遠心端面21,21,……に一致する位置まで遠心誘導可能であり、且つ、当該浮揚域Fにて各筒状摺動穴3、3,……の最深位置まで求心誘導可能な出没制御機構6を組み込み、当該回転翼10全体が対象液体W液面下に没するよう設置可能なものとしてある。
【0033】
図1ないし図3に破線で示すように、出没制御機構6は、ハウジング5の水平主軸心Cの少なくとも一方端がわ軸着部周囲に、無端溝状の案内カム60を一体的に設け、該案内カム60に対峙する各錘駒4,4,……の対峙端41,41,……には、該案内カム60に沿って案内・誘導可能な従動部61,61,……を一体化し、該案内カム60が、各錘駒4,4,……の出没動作を強制的に案内可能なものとし、また、図1および図2に示すように、回転翼10は、各浮翼2,2,……が、浮揚域Fにおける対象液体W液中の浮揚・回転抵抗、および、減圧域DCとしてのハウジング5包囲壁(減圧部)50への突入に伴う対象液体Wの排出抵抗を軽減可能とするよう、扇状同一断面形遠心端21,21,……外周壁の回転方向角を流線状輪郭断面形とするよう切除し、除抗曲面部22,22,……を設けたものとしている。
【0034】
加えて、浮揚域Fにて各錘駒4,4,……が、各筒状摺動穴3,3,……の最深位置まで没した状態にて、浮揚域Fにある回転翼10前がわ概略半径範囲F(各浮翼2,2,……、各筒状摺動穴3,3,……、および錘駒4,4,……)の総合的比重は、対象液体Wの比重よりも充分に軽く、また、減圧域DCにて各錘駒4,4,……が、各筒状摺動穴3,3,……の最も遠心がわ位置まで進出した状態にて、減圧域DCにある回転翼10後がわ概略半径範囲DC(各浮翼2,2,……、各筒状摺動穴3,3,……、および錘駒4,4,……)の総合的比重は、対象液体Wの比重と等しいか、それよりも重くなるよう、重量設定してなるものとしてある。
【0035】
図1ないし図3に示すように、ハウジング5は、その包囲壁(減圧部)50に、減圧域DCにある各浮翼2,2,……および各錘駒4,4,……の各遠心端面21,21,……,40,40,……との接触抵抗を軽減可能、且つ、各浮翼2,2,……および各錘駒4,4,……の各遠心端面21,21,……,40,40,……との間隙に進入する対象液体W液量を削減可能な複数個の転動体7,7,……を設けたものとしてある。
【0036】
図2および図5に示すように、回転翼10は、各浮翼2,2,……が、浮揚域Fにおいて、筒状摺動穴3,3,……の最深位置に配した錘駒4,4,……の遠心端面40,40,……より遠心がわとなる中途適所に、水平主軸心C周回り方向に貫通するよう、除抗排液路23,23,……を設け、さらに、図1および図2に示すように、各筒状摺動穴3,3,……の底部30,30,……同士が、水平主軸心C回りに60°の等開き角度αにて均衡する形状となり、内部に淡水などの流体Hを充填した密閉状星型流体回路31にて互いに気密状接続し、浮揚域Fにて筒状摺動穴3,3,……最深位置まで没した錘駒4,4,……が排出する流体Hが、減圧域DCにある筒状摺動穴3,3,……の錘駒4,4,……を遠心方向に押圧し、または、減圧域DCにて筒状摺動穴3,3,……の遠心位置に移動した錘駒4,4,……の基端42,42,……が吸引する流体Hが、浮揚域Fにある筒状摺動穴3,3,……の錘駒4,4,……を求心方向に吸引するようにしてなるものとしてある。
【0037】
また、図2および図4に示すように、各錘駒4,4,……が、遠心方向に一致する筒状流通孔43,43,……を貫通して進退移動中の抵抗を軽減可能なものとし、当該星型流体回路31が、各錘駒4,4,……の流通孔43,43,……を通じて外部に開放してなるものとすることが可能であり、さらに、同図4に示すように、各錘駒4,4,……が、回転翼10各筒状摺動穴3,3,……の内周壁32,32,……との間に、複数の転動体7,7,……を設け、摺動中の接触抵抗を軽減可能なものとすることができる。
【0038】
当該回転翼10は、その水平主軸心C付近か、各浮翼2,2,……に近接する付近かの少なくとも何れか一方に、回転翼2,2,……の回転抵抗、および、各錘駒4,4,……の進退抵抗に抗して、駆動可能な出力を有する補助駆動源(図示せず)を設け、該補助駆動源が、外部電力によって駆動可能なモーターを有し、回転翼10の回転停止を感知するセンサー、および、該センサーの感知信号に応じて外部電力をモーターに供給する自動制御部を有するものとすることが可能である。
【0039】
(実施例1の作用・効果)
以上のとおりの構成からなるこの発明の浮力原動機1は、図1および図2に示すように、ハウジング5諸共、淡水または海水対象液体W液面下に没するよう設置すると、縦境界Bを境とし、浮揚域Fに配置する各浮翼2,2,……に浮力を生じて、回転翼10が、水平主軸心C回りの一定方向(図1および2中の時計回り方向)に回転を開始し、この回転開始に伴い、縦境界Bを境とし、浮揚域Fに配置する各錘駒4,4,……の従動部61,61,……が、出没制御機構6案内カム60に沿って移動し、各筒状摺動穴3,3,……底部30,30,……に各錘駒4,4,……基端42,42,……が到達するまで求心方向に後退・誘導されるものとなり、また、減圧域DCとなるハウジング5包囲壁(減圧部)50に対峙する筒状摺動穴3,3,……内錘駒4,4,……の従動部61,61,……が、出没制御機構6案内カム60に沿って移動し、各筒状摺動穴3,3,……開口端33,33,……に各錘駒4,4,……遠心端面40,40,……が到達するまで遠心方向に前進・誘導されるものとなって、浮揚域Fがわの回転翼10前がわ概略半径範囲Fが、減圧域DCがわの同回転翼10後がわ概略半径範囲DCよりも常時、力学的に軽量化するものとなり、浮揚域Fがわの回転翼10各浮翼2,2,……に強い浮力を生じ、水平主軸心C回りの(図1および2中の時計回り方向)回転エネルギーを出力可能なものとなる。
【0040】
図1および図2に示すように、回転翼10は、6個の浮翼2,2,……およびそれらの間に配した6個の筒状摺動穴3,3,……が夫々、水平主軸心C回りに互いに60°の等開き角度αにて均衡配置としてあるから、水平主軸心C回りに回転する途中にて、浮揚域Fに配置する各浮翼2,2,……に発生する浮力を常時一定に保ち、一定の回転エネルギーを安定して取り出すことができるものとなり、しかも各浮翼2,2,……気密室20,20,……に充填したヘリウムガス(浮揚用ガス)Gが、浮力を一段と高め、水平主軸心C回りの回転エネルギーおよび回転トルクを高めるものとなる。
【0041】
図1および図2に示すように、各浮翼2,2,……の除抗曲面部22,22,……は、浮揚域Fにおける対象液体W液中の浮揚・回転抵抗、および、減圧域DCとしてのハウジング5包囲壁(減圧部)50への突入に伴う対象液体Wの排出抵抗を軽減し、回転翼10の回転速度および回転トルクを向上し、より効率的に回転エネルギーを発生するものとなり、さらに、除抗排液路23,23,……が、浮揚域Fにおける各浮翼2,2,……の回転方向前面にある対象液体Wを、図2および図5中の二点鎖線矢印に示すように、背面がわに逃がして各浮翼2,2,……の浮揚域Fにおける対象液体W液中の浮揚・回転抵抗を大幅に低減可能なものとなる。
【0042】
ハウジング5の包囲壁(減圧部)50に沿って配した転動体7,7,……は、回転翼10各浮翼2,2,……および各錘駒4,4,……の各遠心端面21,21,……,40,40,……との接触抵抗を大幅に軽減すると共に、各浮翼2,2,……および各錘駒4,4,……の各遠心端面21,21,……,40,40,……と包囲壁(減圧部)50との間隙に進入する対象液体W液量を大幅削減し、減圧域DCとしてのハウジング5包囲壁(減圧部)50に対峙する回転翼10各浮翼2,2,……および各錘駒4,4,……に作用する浮力を格段に減少させ、より効率的な回転動作を得ることができる。
【0043】
図1および図2に示すように、星型流体回路31は、流体Hの圧力伝達機能を利用し、各錘駒4,4,……の遠心方向の進退駆動をより正確、且つ、6個の錘駒4,4,……が互いに連動し、出没制御機構6の誘導を補助するものとなり、一段と正確な動作を得ることが可能となり、図4に示すように、各錘駒4,4,……に筒状流通孔43,43,……を貫通してなるものは、星型流体回路31を開放し、各錘駒4,4,……の遠心方向の進退移動の対象液体Wによる抵抗を大幅に低減化し、さらに、各錘駒4,4,……が、各筒状摺動穴3,3,……内周壁32,32,……との間に、複数の転動体7,7,……を設けてなるものは、同錘駒4,4,……の進退移動に伴い発生する抵抗を大幅に低減するものとなり、回転翼10の回転動作を格段に効率化することができる。
【0044】
補助駆動源(図示せず)は、回転翼10の何れかの箇所に、不測の抵抗が加わり、正常な回転が得られなくなったときに、回転の停止を自動的に感知し、補助的に回転駆動力を付与して回転翼10が、再び正常な回転を開始するまで回転エネルギーを供給するものとなり、当該浮力原動機1の動作信頼性を格段に高めることができるものとなる。
【0045】
(結 び)
叙述の如く、この発明の浮力原動機は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からの浮力利用のエネルギー変換技術に比較して大幅に効率を高め、軽量且つ低廉化して遥かに経済的なものとすることができる上、設置作業を容易なものとし、信頼性および耐久性に秀れ、保守・点検作業の負担を大幅に改善し得るものとなることから、従前までは、外部からの空気注入が不可欠であったり、水槽を有する故に大型化してしまったり、効率的な運転が出来ないなどの種々の理由から、本格的な実用化を断念せざるを得なかったエネルギー業界および原動機業界はもとより、自然環境に優しい再生可能エネルギーの本格的利用の普及化を希望する一般家庭においても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【符号の説明】
【0046】
1 浮力原動機
10 同 回転翼
2 浮翼
20 同 気密室
G 同 浮揚用ガス
21 同 遠心端面
22 同 除抗曲面部
23 同 除抗排液路
3 筒状摺動穴
30 同 底部
31 同 星型流体回路
H 同 流体
32 同 内周壁
33 同 開口端
C 水平主軸心
α 等開き角度
D 筒状摺動穴3の深さ寸法
4 錘駒
40 同 遠心端面
41 同 対峙端
42 同 基端
43 同 流通孔
L 同 錘駒の遠心方向長
B 縦境界
F 浮揚域
DC 減圧域
5 ハウジング
50 同 包囲壁(減圧部)
6 出没制御機構
60 同 案内カム
61 同 従動部
7 転動体
W 対象液体(浮力発生源:流体)
図1
図2
図3
図4
図5