(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
炭素繊維前駆体フェルトを不活性雰囲気下で炭素化する炭素繊維フェルトの製造方法であって、片面又は両面に切込みを入れた前駆体フェルトを、切込み方向と直交する方向に張力を付与しながら炭素化することを特徴とする、請求項1に記載の炭素繊維フェルトの製造方法。
炭素繊維前駆体フェルトを不活性雰囲気下で炭素化する炭素繊維フェルトの製造方法であって、前駆体フェルトが表裏面で熱収縮率が異なる構造のフェルトであり、且つその高収縮側のフェルトに切込みを入れたフェルトを炭素化することを特徴とする、請求項1に記載の炭素繊維フェルトの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の炭素繊維フェルトの一例を
図1に示す。
図1中、2は炭素繊維フェルトで、このフェルト2の片面には所定間隔で離れた複数(本図では5本)の畝部4が、フェルト2の片面から外方に帯状に突出して形成されている。6は溝部で、前記互いに隣接する畝部4の間に、フェルト2の内方に向かって形成されている。
【0026】
畝部4の嵩密度は、溝部の底壁8の嵩密度より高い。本発明において、畝部4の嵩密度は、溝部の底壁8の嵩密度の1.01〜2倍であることが好ましい。
【0027】
畝部4の嵩密度が、溝部の底壁8の嵩密度より高く構成することで、セルに組み込まれる時に、圧力で畝が潰され難く、溝が確保できるため、循環する電解液の流通を阻害しない。
【0028】
そのため、本発明の炭素繊維フェルトを用いた電極は、循環させる電解液の通液圧力損失が低く、電解液循環に必要なポンプ稼動のエネルギー消費量を低減できる。
【0029】
本発明の炭素繊維フェルトにおいては、畝及び溝をフェルト2の片面のみに有する炭素繊維フェルトが、フェルト2の両面に有する炭素繊維フェルトよりも好ましい。後述する集電体との接触面積を広く確保でき、導電抵抗による発熱ロスを低減でき、発電効率を高めることができるためである。
【0030】
畝部の嵩密度は、0.08g/cm
3以上が好ましい。0.08g/cm
3未満の場合は、セルに組み込まれた時の圧力により、畝が潰れ、溝が閉塞しやすい傾向がある。
【0031】
溝部の底壁を構成するフェルトの嵩密度は、0.05g/cm
3以上が好ましい。0.05g/cm
3未満の場合は、厚み方向の電気抵抗値が高く、セル抵抗が高くなる傾向がある。
【0032】
嵩密度は、炭素繊維前駆体フェルト作製時のパンチング数、原料繊維となる前駆体繊維、特に耐炎繊維の比重、原料繊維に混合する物質(混綿物質)の種類や量により制御できる。
【0033】
本発明の炭素繊維フェルトの畝部の嵩密度は、溝部の嵩密度より高い。畝部の嵩密度が、溝部の嵩密度と同一又は低い場合は、セルに組み込まれた時の圧力により、畝が潰れ、溝が閉塞する。嵩密度の差は、用いる前駆体繊維又は耐炎繊維の比重の差や、混合する物質(混綿物質)の種類や量を調節することで制御できる。
【0034】
本発明においてフェルト表面における溝の形態は、
図2〜5に示すような、直線状、格子状、ダイヤ状、波状であることが好ましい。
【0035】
また、本発明における溝の断面形状の例を、
図6〜8に示す。
図6は、フェルト2の内部に向かうに従って狭くなる断面V形状の溝を示す。
図7は、断面が矩形の溝を示す。
図8は、断面形状が逆台形の溝を示す。
【0036】
図2〜8において、4は畝であり、6は溝であり、10は電池セル部材である。溝は電解液の流路として働く。また、畝4自体も炭素繊維から構成されている為、電極として機能し、反応可能な有効面積を低下させることがない。
【0037】
フェルト2の表面における溝幅は、0.5〜10mmが好ましく、0.7〜5mmがより好ましい。0.5mm未満の場合は、圧力損失の低減効果が十分でなく、ポンプの消費エネルギーロスが大きい。10mmを超える場合は、切込み(スリット)から溝を形成する方法では作製が困難である。
【0038】
図6〜8に示すように、溝の深さ(t)は、フェルト厚み(T)に対し、10〜90%が好ましく、20〜80%がより好ましい。10%未満の場合は、圧力損失の低減効果が十分でなく、ポンプの消費エネルギーロスが大きい。90%を超える場合は、強力が低減し、炭素化時の張力や、積層時の張力により破断する可能性がある為、好ましくない。溝の深さ(t)は、後述するスリットの深さにより制御できる。
【0039】
溝ピッチ(並行する溝の中心間の距離)は、0.5〜100mmが好ましく、0.8〜50mmがより好ましい。0.5mm未満の場合は、間隔が狭く、スリット加工できない。100mmを超えると圧力損失の低減効果が十分でなく、ポンプの消費エネルギーロスが大きい。溝ピッチは、スリット刃の間隔等で制御できる。
【0040】
溝の断面形状は、スリット刃の形状や工程張力で制御できる。
【0041】
炭素繊維フェルトの厚み(T)は、0.5〜10mmが好ましく、0.8〜7mmがより好ましい。0.5mm未満の場合は、溝付きの炭素繊維フェルトであっても圧力損失低減効果が小さく、ポンプの消費エネルギーロスが大きくなる為、好ましくない。10mmを超えると、システムが大きくなりすぎ、設計の自由度が下がる為、好ましくない。厚みは、混綿物質の仕込み量(目付)やパンチング数により制御できる。
【0042】
畝を形成した本炭素繊維フェルト2の目付は、100〜1000g/m
2が好ましく、200〜800g/m
2がより好ましい。100g/m
2未満の場合は、圧力損失低減効果が小さく、ポンプの消費エネルギーロスが大きくなる、反応に寄与する表面積が小さくなる為、好ましくない。1000g/m
2を超える場合は、システムが大きくなりすぎ、設計の自由度が下がる為、好ましくない。目付は、混綿物質の仕込み量やウェブの積層数により制御できる。
【0043】
厚み方向の電気抵抗値は500mΩ/cm
2以下が好ましく、400mΩ/cm
2がより好ましい。500mΩ/cm
2を超えると電極として使用した場合に、導電抵抗が高く、充放電のロスが大きくなる為、好ましくない。厚み方向の電気抵抗値は、パンチング数や炭素化温度により制御できる。
【0044】
溝の断面積は0.5〜100mm
2が好ましく、1〜30mm
2がより好ましい。0.5mm
2未満の場合は、十分な流路が形成されておらず、圧力損失の低減効果が十分でなく、ポンプの消費エネルギーロスが大きい。100mm
2を超える場合は、本製造方法で作製することが困難である。上記断面積となれば、その形状は特に指定されない。断面積は、溝幅、溝深さ、張力、フェルトの表裏熱収縮差、混綿物質の種類により制御できる。
【0045】
フェルト断面積に対する溝断面積の割合は、1〜75%であり、好ましくは1.5〜60%であり、より好ましくは5〜50%である。1%未満の場合は、十分な流路が形成されておらず、圧力損失の低減効果が十分でなく、ポンプの消費エネルギーロスが大きい。75%を超える場合は、電気抵抗値が大きくなる、必要な強度が確保できない等、不具合が生ずる。上記、割合となれば、その形状は特に指定されない。断面積は、溝幅、溝深さ、張力、ピッチ、フェルトの表裏熱収縮差、混綿物質の種類により制御できる。
【0046】
[炭素繊維織物の製造方法]
本発明の炭素繊維フェルトの製造方法は特に限定されるものではなく、何れの方法で製造しても良いが、以下の方法が好ましい。
【0047】
(製造方法A)
この方法においては、先ず炭素繊維前駆体フェルトの片面又は両面に溝形成用の切込みが形成された炭素繊維前駆体フェルトを用意する。次いで、切込み幅が拡がる方向に張力を付与しながら不活性雰囲気下で炭素化する。これにより本発明の炭素繊維フェルトが得られる。
【0048】
炭素繊維フェルトの製造原料としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系耐炎繊維、又は、ピッチ系繊維、レーヨン繊維、セルロース等の従来公知の何れの炭素繊維前駆体繊維が挙げられる。なお、各種製造原料の中でも、繊維の柔軟性や加工性の面から、PAN系耐炎繊維が好ましい。PAN系耐炎繊維とは、PAN系原料繊維を空気中で200〜400℃で酸化処理することによって得られる繊維である。
【0049】
先ず、炭素繊維前駆体繊維又は耐炎繊維を公知の方法でフェルト化する。フェルト化の方法はカードによって開繊し、多層化し、多層化されたウェブをニードルパンチによりフェルト化する方法があるが、フェルトにする方法であればこの方法に限定されない。
【0050】
また、フェルトの表裏において熱収縮の差を付ける為に、異なった種類、量の原料繊維等からなるウェブを多層積層してフェルト化したり、異なった種類、量の原料繊維等を混合してウェブを作製し、フェルト化しても良い。
【0051】
フェルト化後の切込み形成前のフェルトには、スリット刃などにより切込み(スリット)を入れる。
【0052】
図9は、本発明の炭素繊維フェルトの製造方法に原料として用いるフェルトを示す。このフェルトは均一に形成されている。フェルト22には切込み24が形成されている。
【0053】
得られる切込み24が形成されていないプレーン層26と切込み24を形成しているスリット層とからなる炭素繊維前駆体フェルト22は、切込み幅が拡がる方向に張力S、Rを付与しながら不活性雰囲気下で炭素化される。この場合は、切込み方向に直角方向である。
【0054】
張力は、2〜100N/mが好ましく、3〜50N/mがより好ましい。2N/m未満の場合は、目標とする溝幅が得られない。100N/mを超える場合は、張力により変形(ウネリや折れ目)が発生し、得られる本発明の炭素繊維フェルトは電極として使用できない。
【0055】
(製造方法B)
図10は、本発明の炭素繊維フェルトの他の製造方法を示す説明図である。
【0056】
この方法においては、先ず炭素化する際に熱収縮する低収縮層32を用意する。次いで、低収縮層32よりも炭素化する際の熱収縮率が高い高収縮層34を積層する。積層はパンチング等による。
【0057】
その後、切込み24を形成する。この切込みを形成した部分はスリット層26となり、切込みを形成していない部分はプレーン層28になる。この切込みを形成したフェルトを炭素化すると、低収縮層32と高収縮層34との炭素化時の収縮率の違いに基いて、切込み24が広がり、溝を自然に形成する。
【0058】
また、本発明の2つの炭素繊維フェルトの製造方法(製造方法A及びB)を組み合わせてもよい。
【0059】
この場合、高収縮層と低収縮層とからなる炭素繊維前駆体フェルトにおいて溝を形成する為の張力は、0.05〜100N/mが好ましく、1〜50N/mがより好ましい。張力が0.05N未満の場合においては、張力のみで溝を形成させるには十分でない。100N/mを超える場合には、焼成時に延伸によりウネリが生じ、外観不良となる為、好ましくない。
【0060】
炭素繊維前駆体フェルトにおいて、低収縮層と高収縮層との熱収縮差は、400℃において、2%以上が好ましく、5〜50%がより好ましい。熱収縮差が2%未満の場合は、無張力下で炭素化した場合、溝形成が不十分である。
【0061】
高収縮層の作製方法としては、主原料の耐炎繊維として低比重の耐炎繊維を用いる方法、主原料の耐炎繊維にそれより低比重の耐炎繊維を混綿する方法、又は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエステル(PET)、ポリプロピレン(PP)、アクリル、セルロース等の有機繊維や天然繊維などの高収縮繊維(混綿物質)を主原料の耐炎繊維に混綿する方法などで、高収縮層を形成することができる。
【0062】
なかでも、繊維が柔らかく交絡処理が容易であることから、有機繊維や天然繊維を用いることが好ましく、特に炭素化時の残渣の少ないポリビニルアルコール(PVA)がより好ましい。耐炎繊維の比重は、製造時の処理温度や処理時間により制御できる。収縮量は、低比重の耐炎繊維量や高収縮繊維の含有量により制御できる。
【0063】
低収縮層は、主として比重が1.38を超える耐炎繊維を使用する方法により形成できる。熱収縮率の差が2%以上確保できれば、いかなる方法で作製しても良い。
【0064】
形成される溝のフェルト表面における形態は、直線状、格子状、ダイヤ状、波状があり、スリット刃の形状等で制御できる。
【0065】
耐炎繊維の密度は特に限定されるものではないが、1.33〜1.45g/cm
3であることが好ましい。耐炎繊維の密度が1.33g/cm
3未満の場合は、炭素化時の収縮が大きく、工程が不安定になり易い傾向がある。耐炎繊維の密度が1.45g/cm
3を超える場合は、繊維が脆く、フェルト加工等の交絡処理時に脱落が多く、加工性が低下する傾向にある。
【0066】
原料繊維の繊度は、原料繊維が炭素繊維前駆体繊維の場合、0.1〜5.0dtexであることが好ましく、0.5〜3.5dtexであることがより好ましく、1.0〜3.3dtexが特に好ましい。炭素繊維前駆体の繊度が0.1dtex未満の場合は、開繊性が悪く、均質な混合が難しい。炭素繊維前駆体の繊度が5.0dtexを超える場合は、強度の高いフェルトが得られない。また、繊維間の接点が低減し、炭素化後の電気抵抗値が高くなる。
【0067】
原料繊維の中でも特にPAN系耐炎繊維の場合、その繊度は0.5〜3.5dtexであることが好ましく、1.0〜3.3dtexがより好ましい。
【0068】
本発明の炭素繊維前駆体フェルトに用いる炭素繊維前駆体ステープルとしては、炭素繊維前駆体ステープルの繊維長が30〜75mm、繊度が0.5〜3.5dtex、クリンプ数4〜20ヶ/2.54cm、クリンプ率4〜20%に加工したものが好ましい。
【0069】
フェルト加工等の交絡処理は、ニードルパンチ方法が好ましい。交絡処理回数が50回/cm
2未満の場合は、交絡処理回数が少なく、強度が低くなる。また厚み方向の電気抵抗値が高くなる。交絡処理回数が1000回/cm
2を超える場合は、交絡処理による繊維への損傷が大きく、脱落毛羽などが大量に発生する虞がある為、好ましくない。
【0070】
以上のように炭素繊維前駆体フェルトを作製した後、これを炭素化処理することで、溝を有する炭素繊維フェルトが得られる。
【0071】
炭素化処理は、製造方法A、B共に、炭素繊維前駆体フェルトを不活性雰囲気下、最高温度を1300〜2300℃にして、0.5〜10分間焼成することにより行う。好ましくは、第1炭素化処理と第2炭素化処理との2段階で行う。その場合、第1炭素化処理は、交絡処理後の炭素繊維前駆体フェルトを、不活性雰囲気下300〜1000℃で焼成して分解ガスを処理する。第2炭素化処理は、第1炭素化処理された炭素繊維前駆体フェルトを、不活性雰囲気下、最高温度1300〜2300℃にして0.5〜10分間焼成して行うことが好ましい。この炭素化処理時の最高温度は、1400℃〜2300℃の範囲であることがより好ましい。
【0072】
炭素化処理時の最高温度が1300℃未満の場合は、得られる炭素繊維フェルトの炭素含有率が93質量%以上にならない。かかる炭素繊維フェルトは、電気伝導性が低く、良好な燃料電池性能を提供できないため好ましくない。炭素化処理時の最高温度が2300℃を超える場合は、炭素繊維フェルトが剛直となって、強度が低下し、更には、炭素微粉末が発生する等の不具合が生ずる為、好ましくない。
【0073】
炭素繊維フェルトの炭素含有率は93質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。炭素含有率が93質量%未満の場合は、電気抵抗が高く、抵抗熱が多量に発生して反応ロスとなる為、電池効率が低下する傾向がある。
【0074】
炭素繊維フェルトに用いられる炭素繊維の単繊維直径は5〜20μmであることが好ましく、6〜15μmがより好ましい。炭素繊維の単繊維直径が5μm未満の場合は、単繊維直径が細すぎて、カード工程などの加工性が悪く、また繊維の強力が低いため、炭素繊維フェルトから炭素繊維が脱落しやすくなる虞がある。炭素繊維の単繊維直径が20μmを超える場合は、繊維間の接触点が減少することで電気抵抗値が上昇して、反応効率が低下しやすくなる。また、炭素化後の繊維が剛直であり、脆くなる為、炭素繊維微粉末が多量に発生しやすくなる虞がある。
【0075】
レドックスフロー型電池における電解液として水溶液を用いる場合には、その濡れ性向上の為、炭素繊維フェルトを酸化処理した後、電極として用いても良い。酸化処理には、液相酸化方法と気相酸化方法があり、特に限定される物ではない。
【0076】
液相酸化方法としては、過酸化水素水や次亜塩素酸ソーダでの高温酸化処理や、電解液を用いた電解層中における電解質(硫酸、苛性ソーダ、硫酸アンモニウム、食塩等)での電解酸化処理方法が用いられる。
【0077】
気相酸化では、空気酸化(300〜800℃)、オゾン酸化(25〜400℃)や水蒸気や二酸化炭素による酸化(500〜950℃)方法等が用いられる。
【0078】
このようにして得られた本発明の炭素繊維フェルトは、例えば導電性と通液性などが必要とされる電極や、燃料電池用のガス拡散層や、コンポジットや、摺動材などの強化繊維としても、適用できる。中でも、レドックスフロー二次電池の電極、ナトリウム-硫黄二次電池の電極として好ましく用いることができる。
【0079】
本発明の炭素繊維フェルトからなる電極は、例えば、レドックスフロー二次電池の電極、ナトリウム-硫黄二次電池の電極、その他導電性と通液性、通水性などが必要とされる電極として、好適に使用できる。
【0080】
本発明の炭素繊維フェルトからなる電極を、上記レドックスフロー型電池用電極等の通液性などが必要とされる電極として用いる場合、電解槽内における電解液の流れ方向と溝の形成方向が一致するように配置することで通液圧力損失を軽減することが出来る。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、操作条件の評価、各物性の測定は次の方法によった。
【0082】
[溝深さ(t)]
溝形成面において、形成された溝の最深部を深さとした。
【0083】
[溝幅]
フェルト表面での溝の広さを幅とした。
【0084】
[溝ピッチ]
並行する隣り合った溝について、溝幅方向に沿って溝中心部間の距離を測定し、これを溝ピッチとした。
【0085】
[溝断面積]
溝の長手方向に直交する裁断面で、10cm長さにフェルトのサンプルを切り出し、n=5の溝断面を、その断面形状に応じて三角形、台形、長方形近似し、n=5で個々の溝の断面積を算出した。それら断面積の平均値を求め、これを溝断面積とした。
【0086】
[嵩密度]
畝の部分、溝の部分を、それぞれフェルト厚み方向に沿ってサンプルを切り出して測定したn=20の厚みと目付から算出し、それぞれ嵩密度(畝部)、嵩密度(溝部)とした。
【0087】
[溝断面積比]
溝の長手方向に直交する裁断面で、10cm長さにフェルトのサンプルを切り出し、n=5の溝断面を、その断面形状に応じて三角形、台形、長方形近似し、n=5で算出した個々の溝の断面積について総和を求め、この総和を、上記溝の長手方向に直交する裁断面の面積[10cm長さ×厚み(T)]で除したものを溝断面積比とした。
【0088】
[目付]
サンプルとして20cm角(0.2m角)のフェルトを3枚切り出し、これを105℃、1時間乾燥した後の重量を、サンプル面積(0.2m×0.2m=0.04m
2)で除したものの3枚の平均値を目付とした。
【0089】
[熱収縮率]
縦20cm×横20cmの耐炎繊維フェルトを切り出し、窒素雰囲気下で400℃で30分間熱処理した時の、縦横の寸法変化量を元長さで除したものの平均値を熱収縮率(400℃)とした。
【0090】
[フェルト厚み(T)]
シックネスゲージ(6.9kPa)を用い、溝が形成されていない部分で、且つ幅方向に5点測定した基材厚みの平均値をフェルト厚み(T)とした。
【0091】
[厚み方向の電気抵抗値]
50mm角のサンプルを切り出し、そのサンプルを2枚の50mm角(厚み10mm)の金メッキした電極で、全面接触するように挟み、サンプルの厚み方向に10kPaの荷重をかけたときの、厚み方向の電気抵抗値を測定し、電極面積で除して単位面積あたりの電気抵抗値を求めた。
【0092】
[通液圧力損失]
通液方向に30cm、幅方向(流路幅)に50cm、電極基材の厚みの60%であるスペーサーで形成されたセルスタックを用意した。作製された電極基材を通液方向20cm、幅方向50cmに切って設置し、50リットル/時のイオン交換水を流通させ、セルスタックの出入口の通液圧力損失を測定した。ブランクとして電極基材を設置しない系で同様に測定し、測定値とブランク測定値との差を電極基材の通液圧力損失とした。
【0093】
本評価において、通液圧力損失は、11kPa(80mmHg)以下が好ましく、8.65kPa(65mmHg)以下がより好ましく、5.5kPa(50mmHg)以下が更に好ましい。通液圧力損失が11kPa(80mmHg)を超えると、電解液を循環させる為のポンプ容量が大きくなり、ポンプに使用される電力の為に、電力ロスが大きくなる。
【0094】
[実施例1]
高収縮層として、ポリビニルアルコール(PVA)ステープル20質量%を、炭素繊維前駆体ステープルとしてPAN系耐炎繊維ステープル(繊維長51mm、クリンプ率10%、クリンプ数4ヶ/cm)に混合し、目付90g/m
2のPVA混綿PAN系耐炎繊維ウェッブを作製した。これを4枚積層させ、スリット層用のウェッブ積層体を得た。
【0095】
低収縮層として、目付100g/m
2のPAN系耐炎繊維ウェッブを作製した。これを3枚積層させ、プレーン層用のウェッブ積層体を得た。
【0096】
スリット層用のウェッブ積層体と、プレーン層用のウェッブ積層体とを積層し、400回/cm
2でニードルパンチを行い、表裏の収縮差を有する炭素繊維前駆体フェルトを作製した。
【0097】
この炭素繊維前駆体フェルトの高収縮層側において、幅方向に5mmピッチ、3mm深さとなるようにスリット処理を実施した。その後、700℃で、スリットによる切込面に直交する方向に10N/mの張力を付与しながら、10分間で前炭素化処理した後、1800℃、3分間で炭素化し、高収縮層側の表面に溝が形成された炭素繊維フェルトを得た。その炭素繊維フェルトを、空気雰囲気中で500℃、30分間の酸化処理を行い、電気抵抗値、通液圧力損失を評価した。
【0098】
[実施例2〜4]
PVAを、表1に記載の混綿物質に変更した以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。
【0099】
[実施例5]
混綿物質を使用せずに耐炎繊維フェルト単味で、表裏の収縮差を有さない炭素繊維前駆体フェルトを作製し、焼成時の張力を20N/mとした以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。
【0100】
[実施例6]
焼成時の張力を0N/mとした以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。
【0101】
[実施例7]
高収縮層において、目付90g/m
2のPVA混綿PAN系耐炎繊維ウェッブ6枚積層させた上に、目付50g/m
2のPAN系耐炎繊維ウェッブ3枚積層させた以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。
【0102】
[実施例8]
高収縮層において、収縮の大きい低比重OPFのみを用いること以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。
【0103】
[比較例1]
表裏の収縮差を有さない炭素繊維前駆体単体フェルトとし、溝幅1mm、溝深さ3mm、溝ピッチ6mmとなるように作製したプレス板にて、200℃、50kg/cm
2でヒートプレスを行い、溝付き炭素繊維前駆体フェルトを得た。それ以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。
【0104】
[比較例2]
表裏の収縮差を有さない炭素繊維前駆体単体フェルトとし、炭素化時に張力を付与しない以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。
【0105】
表1、2に示すように、実施例1〜8は、電気抵抗値、通液圧力損失が共に低く、良好な結果を示す炭素繊維フェルトが得られた。
【0106】
比較例1は、プレスにより溝を形成させた結果、畝部分の嵩密度が小さく、セルに組んだ際に畝が潰れ、通液圧力損失が高い結果となった。
【0107】
比較例2は、十分な溝が形成されず、通液圧力損失が高い結果となった。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
[実施例9]
高収縮層のPVAの混率を5%とした以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。
【0111】
[実施例10]
炭素化時の張力を2N/mとした以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。
【0112】
[実施例11]
高収縮層のPVAの混率を50%とした以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。
【0113】
[実施例12]
炭素化時の張力を50N/mとした以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。
【0114】
[実施例13〜16]
表3、4のスリットの深さ、ピッチとした以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。
【0115】
表3、4に示すように、実施例9〜16は、電気抵抗値、通液圧力損失が共に低く、良好な結果を示す炭素繊維フェルトが得られた。
【0116】
[実施例17〜18]
表4のスリット形状、ピッチとした以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】
【0119】
[実施例19]
表5のスリット形状、ピッチとした以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。
【0120】
[実施例20]
高収縮層において、目付80g/m
2のPVA混綿PAN系耐炎繊維ウェッブに、目付60g/m
2のPAN系耐炎繊維ウェッブを積層させた以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。
【0121】
[実施例21]
高収縮層において、目付85g/m
2のPVA混綿PAN系耐炎繊維ウェッブ10枚に、目付70g/m
2のPAN系耐炎繊維ウェッブを10枚積層させた以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。
【0122】
表3に示すように実施例17〜21は、電気抵抗値、通液圧力損失が共に低く、良好な結果を示す炭素繊維フェルトが得られた。
【0123】
[比較例3]
高収縮層において、PVAの混率2%とし、炭素化時の張力を2N/mとした以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。その結果、十分な溝幅を形成できず、通液圧力損失は高い結果となった。
【0124】
[比較例4]
高収縮層の耐炎繊維の比重を1.33とし、炭素化時の張力を110N/mとした以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。溝幅が大きく、接触抵抗が低く、電気抵抗値が高い結果となった。また、炭素化後の変形が大きく、通液圧力損失の評価は不可能であった。
【0125】
[比較例5]
スリットの深さを5.2mm(厚みに対し95%)とした以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。その結果、炭素化時に破断し、評価できなかった。
【0126】
[比較例6]
スリットの深さを0.5mm(厚みに対し9%)とした以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。その結果、溝が十分に確保できず、目標の通液圧力損失を得られなかった。
【0127】
[比較例7]
ピッチ間隔を大きくした以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。その結果、フェルト断面に対する溝断面(溝断面積比)が小さく、目標の通液圧力損失が得られなかった。
【0128】
[比較例8]
高収縮層において、目付90g/m
2のPVA混綿PAN系耐炎繊維ウェッブに、目付45g/m
2のPAN系耐炎繊維ウェッブを積層させた以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。その結果、厚みが小さく、目標の通液圧力損失が得られなかった。
【0129】
[比較例9]
炭素化温度を1200℃とした以外は、実施例1と同様の方法で電極を作製した。その結果、電気抵抗が高い結果となった。
【0130】
【表5】
【0131】
【表6】