(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1のように脱水汚泥を高含水率のままロータリキルンや仮焼炉に投入する場合は、水分の蒸発潜熱によって局所的に温度が低下する懸念があるので、実際には処理できる汚泥の量がかなり少ない。
【0008】
一方、特許文献2、3のように汚泥を乾燥させてから処理する場合は、その乾燥機からの排ガスの処理が問題になる。すなわち、乾燥機排ガスは多量の水蒸気を含むため、バグフィルタのような乾式集塵機によって集塵処理することには問題があるが、仮に湿式集塵機を用いるとすれば設備コストの増大は免れない。
【0009】
また、多量の水蒸気を含む乾燥機排ガスを前記特許文献2のようにロータリーキルンの窯尻に導入すると、仮焼炉から予熱器にかけての熱的なバランスを崩すおそれがあり、その結果として燃料消費の増大やセメントの品質低下など、セメント製造設備への悪い影響が懸念される。
【0010】
この点、特許文献2のように乾燥機排ガスに揮発した油分が含まれている場合は、それが燃焼することによって前記熱的なバランスの問題は緩和されることになるが、油温乾燥機も設備コストが高くつくし、汚泥の処理量に見合うだけの廃油を常時、確保しなくてはならないという難もある。なお、特許文献3には、乾燥機排ガスの増加ガス分を系外にブリードすると記載されているが、このブリードガスの集塵処理については記載されていない。
【0011】
以上のような問題点を考慮して本発明の目的は、セメントの製造設備を利用して汚泥を処理する場合に、セメントの製造プロセスに極力、悪い影響を及ぼすことなく、また、臭気やダイオキシン類による問題を発生させることなく、十分な量の汚泥を処理可能としながら、コストの上昇を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
予熱器、仮焼炉、焼成炉、並びに、前記予熱器からの排気ラインに設けられたセメント原料ミル及び集塵機を備えたセメントの製造設備に隣設される汚泥の処理設備が対象であり、脱水汚泥を乾燥させる乾燥機と、該乾燥機で乾燥させた乾燥汚泥を前記仮焼炉および
前記焼成炉の少なくとも一方に搬送する乾燥汚泥搬送装置と、前記乾燥機で発生した乾燥機排ガスを
、前記乾燥機から前記排気ラインにおいて前記セメント原料ミル
と前記集塵機の間へ搬送する
搬送経路、及び、前記搬送経路に設けられ、前記乾燥機排ガスを燃料の燃焼ガスと接触させることにより加熱して脱臭する脱臭装置を有する乾燥機排ガス搬送装置と、を備えて、
前記集塵機により
前記セメント原料ミルの排気と共に前記乾燥機排ガスの集塵処理を行うようにしたものである。
【0013】
かかる構成の汚泥処理設備では、まず、含水率の高い脱水汚泥を乾燥機で乾燥させてから、セメントの製造設備の仮焼炉や焼成炉で燃焼させることができる。乾燥汚泥は十分な発熱量を有するので、仮焼炉や焼成炉での燃焼に悪い影響を及ぼさないばかりか、その燃焼の維持に寄与することも可能である。乾燥汚泥は粉粒状なので、焼成炉からの排気が流通する仮焼炉においても燃焼時間を確保し易く、ダイオキシンの生成も抑制可能であり、乾燥汚泥に含まれるアンモニアによって、セメント製造により発生する窒素酸化物の低減も可能である。
【0014】
一方、乾燥機において発生した乾燥機排ガスは、セメント原料ミルの排気処理装置に搬送され、該排気処理装置の集塵機によって集塵処理される。乾燥機排ガスには多量の水蒸気が含まれているが、セメント原料ミルの排気処理装置には通常、セメント原料の予熱器等から多量の排気が導入されており、この排気との混合により水蒸気濃度が低くなるので、乾式集塵機によって集塵処理することができる。
【0015】
つまり、多量の脱水汚泥を乾燥させて、セメントの製造プロセスに悪い影響を及ぼすことなく仮焼炉や焼成炉(キルン)で混焼することができるとともに、多量の水蒸気を含む乾燥機排ガスもセメント製造設備を利用して集塵処理することができ、コストの上昇を抑制できる。
【0017】
セメントの製造プロセスへの影響を極小化するという観点からは、前記脱臭装置として、炉内で燃料を燃焼させて前記乾燥機排ガスを加熱する熱風発生炉を設けてもよい。この場合には、熱風発生炉で例えば650〜700℃以上まで加熱した乾燥機排ガスを乾燥機の熱源として利用してもよい。こうすれば、集塵処理する前に乾燥機排ガスの温度を好適な温度まで低下させることができ、集塵機の耐久性を確保する上で有利になる。
【0018】
そのためには、例えば前記高温の乾燥機排ガスを乾燥機に供給して直接、脱水汚泥を乾燥させるようにしてもよいし、間接的に乾燥汚泥の乾燥に利用してもよい。また、例えば乾燥機排ガスの搬送経路に、乾燥機排ガスの一部を
脱臭装置よりも上流側で分流させて乾燥機に循環させる循環路と、その乾燥機排ガスの残部を
前記脱臭装置で加熱した後に、前記循環路を流通する乾燥機排ガスと熱交換させる熱交換器と、を設けてもよい。
【0019】
こうすると、基本的には乾燥機排ガスを乾燥機に循環させて脱水汚泥の乾燥に利用するとともに、その乾燥に伴い増加したガス分を熱風発生炉で加熱脱臭した上で、セメント原料ミルの排気処理装置において集塵処理することができる。言い換えると、環境に放出する増加ガス分だけを加熱脱臭することになるので、熱風発生炉における燃料の消費を抑制できる。しかも、加熱脱臭後の高温の乾燥機排ガスを、乾燥機に循環させる乾燥機排ガスの昇温に役立てつつ、集塵処理する乾燥機排ガスの温度は下げることができる。
【0020】
さらに、乾燥機で乾燥させた乾燥汚泥の一部を
脱臭装置に供給して、燃焼させる汚泥供給装置を備えていてもよいし、セメントの製造設備
が、焼成炉で焼成されたセメント焼成物を冷却するクーラを更に備えており、このクーラの廃熱を利用して、クーラ
の排気を前記
脱臭装置に燃焼用の空気として供給する排気ダクト、または、クーラ
の排気を利用して熱交換器により燃焼用の空気を加熱するよう構成した排気ダクトを備えていてもよい。いずれの場合も
脱臭装置における燃料の消費を抑制することができる。
【0021】
見方を変えれば本発明は汚泥の処理方法に係り、
セメントの製造設備に隣設された乾燥機で汚泥を乾燥させ、当該乾燥機で乾燥させた乾燥汚泥を、前記セメントの製造設備におけるセメント原料の仮焼炉および焼成炉の少なくとも一方に搬送する一方、前記乾燥機で発生した乾燥機排ガス
を、燃料の燃焼ガスと接触させることにより加熱して脱臭し、前記セメントの製造設備における
予熱器からの排気ラインにおいてセメント原料ミル
と集塵機との間に搬送し、
前記セメント原料ミルの排気と共に前記集塵機によって前記乾燥機排ガスの集塵処理を行うものである。
【発明の効果】
【0022】
以上、述べたように本発明に係る汚泥の処理設備によると、汚泥を乾燥させてセメント製造設備の仮焼炉等で混焼させるとともに、乾燥機の排ガスはセメント原料ミルの排気処理装置によって処理することができ、多量の汚泥を処理してもセメントの製造プロセスに悪い影響を及ぼすことがなく、コストの上昇も抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、第1の実施形態に係る汚泥処理設備100と、これが隣設されるセメントプラント200(セメントの製造設備)との全体的な系統図である。
図1の左側に示す汚泥処理設備100は、含水率の高い脱水汚泥を気流乾燥機1によって乾燥させ、含水率の低い乾燥汚泥としてセメントプラント200で混焼させるものである。汚泥処理設備100は、既設のセメントプラント200に大きな改修を加えることなく、その隣に建設することができる。
【0025】
−汚泥処理設備−
汚泥処理設備100は、前記の気流乾燥機1で乾燥させる脱水汚泥を貯留しておくための汚泥タンク2と、気流乾燥機1で乾燥させた乾燥汚泥を、セメントプラント200における後述の仮焼炉35に搬送するための乾燥汚泥搬送装置3と、気流乾燥機1で発生した乾燥機排ガスを、セメントプラント200における後述のセメント原料ミル65の排気処理装置66に搬送するための乾燥機排ガス搬送装置4と、を備えている。
【0026】
前記の汚泥タンク2には、一例として下水汚泥、産廃汚泥等の汚泥の脱水ケーキ(以下、汚泥ケーキという)が陸送等によって運搬されてきて貯留されている。汚泥タンク2には汚泥ケーキを吸い込んで吐出する汚泥ポンプ5が接続されており、汚泥圧送ダクト6によって汚泥ケーキを気流乾燥機1に圧送する。汚泥ポンプ5は動作速度を変更可能であり、気流乾燥機1への脱水汚泥の時間当たりの投入量を調整することができる。
【0027】
汚泥圧送ダクト6により気流乾燥機1に圧送されてくる汚泥ケーキは、混合フィーダ14において汚泥の循環乾粉と混合される。すなわち、本実施形態の気流乾燥機1は、以下に述べるように気流乾燥させた汚泥の粉末(乾粉)の一部を汚泥ケーキと混合し、含水率を調整した上で解砕機10により気流乾燥に適した大きさに解砕する。汚泥ケーキの含水率は80%くらいであり、ハンドリングの容易化のために混合物の含水率が25〜30%になるように循環乾粉量を調節する。
【0028】
前記解砕機10は、一例としてケージの回転により前記汚泥ケーキと乾粉との混合物を解砕して、後述のように循環ダクト27を流れる高温の循環ガス(乾燥機排ガス)に随伴させる構造である。解砕機10には、前記のように解砕した汚泥粉を気流乾燥させるための乾燥ダクト11が上方に延びるように接続されており、この乾燥ダクト11を吹き上がる循環ガスの流れに載って運ばれながら汚泥粉が乾燥される。
【0029】
その乾燥ダクト11の上端は、乾燥した汚泥粉(乾粉)を遠心分離するためのサイクロン12に接続されている。サイクロン12は一例としてリンデン型の高効率サイクロンであり、その下部には分離された汚泥の乾粉が落下する乾粉受入タンク13が接続されている。そして、この乾粉受入タンク13内の下部に、乾粉の一部を搬出して前記のように汚泥ケーキと混合させるための混合フィーダ14が設けられ、この混合フィーダ14に前記汚泥圧送ダクト6から汚泥ケーキが投入される。
【0030】
また、前記乾粉受入タンク13の上下方向の中間部位には、前記混合フィーダ14と同様に乾粉の一部を搬出する搬出フィーダ15が設けられ、これにより搬出された乾粉は、一例としてコンベアなどの乾粉搬送機16によって搬送されて乾燥汚泥ホッパ17に投入される。乾燥汚泥ホッパ17は、前記のように乾燥処理された汚泥の乾粉を一時貯留し、セメントプラント200側の要求に応じて供給するためのバッファとして機能する。
【0031】
乾燥汚泥ホッパ17に貯留されている汚泥の乾粉の含水率は10〜15%くらいであり、気流により浮遊させて搬送することができる。乾燥汚泥ホッパ17の下部には、図示しないがロータリバルブ等の計量供給装置が設けられ、その動作によって計量された乾粉が気流搬送装置18によって乾粉搬送ダクト19を搬送される。この乾粉搬送ダクト19は、汚泥処理設備100からセメントプラント200に向かって延びていて、その下流端は後述する仮焼炉35の乾粉供給口に接続されている。
【0032】
一方、前記サイクロン12の上部には第1排ガスダクト20が接続されていて、前記のように乾粉が分離された乾燥機排ガスを排出するようになっている。この第1排ガスダクト20には乾燥機排ガスを送るための第1排ガスファン21が配設され、第1排ガスダクト20の下端は熱風発生炉22に接続されている。熱風発生炉22は、炉内で石炭等の燃料を燃焼させて乾燥機排ガスを所定の温度以上に加熱し、脱臭処理する脱臭装置として機能する。
【0033】
すなわち、熱風発生炉22は一例として略円筒状のハウジングの一端(図の右端)に燃焼バーナ22aを備えており、燃料供給装置23から供給される微粉炭(天然ガスや重油等でもよい)を燃焼させて、高温の燃焼ガス(熱風)を他端側(図の左端)に向かって噴出させている。この燃焼ガスに包まれた乾燥機排ガスは一例として650〜700℃以上になって、有機物が分解され脱臭される。なお、符号24は、燃焼バーナ22aに燃焼用の空気を送るファンを示す。
【0034】
熱風発生炉22の他端には第2排ガスダクト25が接続されており、前記高温の燃焼ガスおよび乾燥機排ガスを熱風発生炉22から熱交換器26に導いている。一方で前記第1排ガスダクト20には、第1排ガスファン21と熱風発生炉22との間から分岐するように循環ダクト27(分岐路)が接続されており、この循環ダクト27が前記熱交換器26を介して解砕機10に接続されている。
【0035】
このため、第1排ガスダクト20を流通する乾燥機排ガスの一部が、熱風発生炉22の手前で分流して循環ダクト27に流れ、熱交換器26において熱風発生炉22からの熱風、即ち前記高温の燃焼ガスおよび乾燥機排ガスと熱交換する。そして、十分に温度の高い循環ガスとして解砕機10に、即ち気流乾燥機1に循環される。つまり、熱風発生炉22で乾燥機排ガスを加熱脱臭するために加えられた熱量の大半が熱交換器26において循環ガスに与えられ、気流乾燥機1において汚泥の乾燥に利用される。
【0036】
一方、そのように気流乾燥機1に循環される分を除いた乾燥機排ガスの残部、即ち汚泥の乾燥に伴い増加した分の乾燥機排ガスは、前記のように熱風発生炉22において加熱され脱臭され、熱交換器26において循環ガスと熱交換して温度が低下した後に、当該熱交換器26に接続された第3排ガスダクト28に流出する。この第3排ガスダクト28は、セメントプラント200に向かって延びており、第2排ガスファン29によって送られる乾燥機排ガスを以下に述べるセメント原料ミル65の排気処理装置66に搬送する。また、この場合、第2排ガスファン29は必ずしも必要ではなく、セメントプラント200の誘引ファン62のドラフトで送気してもよい。
【0037】
以上、説明した汚泥処理装置100において、乾粉搬送機16、乾燥汚泥ホッパ17、気流搬送装置18および乾粉搬送ダクト19が、乾燥汚泥をセメントプラント200の仮焼炉35に搬送する乾燥汚泥搬送装置3を構成している。また、第1、第2および第3の排ガスダクト20,25,28並びに第1および第2の排ガスファン21,29が、乾燥機排ガスをセメント原料ミル65の排気処理装置66に搬送する乾燥機排ガス搬送装置4を構成している。なお、
図1の例では第3排ガスダクト28から分岐するように、乾燥機排ガスの一部を熱風発生炉22に戻す戻しダクト28aが接続されており、熱風発生炉22の燃料を節減させている。
【0038】
−セメント製造設備−
セメントプラント200は、
図1の例では一般的なNSPキルンを備えたものである。セメント原料は、予熱器であるサスペンションプレヒータ30において予熱された後に、仮焼炉35において900℃くらいまで加熱され(仮焼)、焼成炉であるロータリキルン40において1450℃くらいの高温で焼成される。ロータリキルン40を通過した焼成物はエアクエンチングクーラ50(AQC)において急冷されて、粒状のセメントクリンカとなり、図外の仕上げ工程に送られる。
【0039】
前記サスペンションプレヒータ30は、上下方向に並んで設けられた複数段のサイクロン31を直列に接続したもので、それぞれのサイクロン31でセメント原料は、下段から吹き込まれる高温の排気によって昇温される。この排気の流れは、後述するようにロータリキルン40から吹き出す高温の排気(以下、キルン排気という)であり、このキルン排気が仮焼炉35から最下段のサイクロン31に流通し、一段ずつサイクロン31を上昇して最上段のサイクロン31に至り、排気ライン60に流出する。
【0040】
排気ライン60には、前記のようにサスペンションプレヒータ30の最上段のサイクロン31から流出した排気(以下、SP排気という)を誘引して、煙突61に送り出す誘引ファン62が設けられている。この誘引ファン62は、サスペンションプレヒータ30および仮焼炉35を仲介してロータリキルン40からキルン排気を誘引するために、セメントプラント200の規模に応じた大容量のものとされている。
【0041】
前記の誘引ファン62とサスペンションプレヒータ30との間には、SP排気の流れに沿ってボイラ63、SP排気ファン64、セメント原料ミル65および排気処理装置66が順に介設されている。ボイラ63は、概ね300℃以上のSP排気から廃熱を回収し、図示は省略するが、高温の水蒸気を蒸気タービンに供給して発電させるものである。セメント原料ミル65は一例として公知の竪型ローラミルであり、SP排気の供給下でセメント原料を乾燥させながら複数のローラと回転テーブルとの回転により摺りつぶす。
【0042】
こうして摺りつぶされた粉末状のセメント原料が、図示しないセメント原料搬送装置によってサスペンションプレヒータ30の最上段のサイクロン31に供給される。一方、セメント原料ミル65を通過したSP排気にはセメント原料の微粉が浮遊しており、このSP排気が排気処理装置66のバグフィルタ66a(集塵機)によって集塵処理される。集められたセメントの微粉はセメント原料に混入される。
【0043】
一例として排気処理装置66は、互いに並列に設けられた2つのバグフィルタ66aと、それらの一方に選択的にガスを流通させる切換えバルブ(図示せず)とを備えている。このため、一方のバグフィルタ66aをろ布交換などのメンテナンスのために停止するときでも、他方のバグフィルタ66aを使用することができる。なお、集塵機としてはバグフィルタ66aに限らず、例えば電気集塵機を用いてもよい。
【0044】
本実施形態では、排気ライン60の前記セメント原料ミル65および排気処理装置66の間に、前記の汚泥処理設備100から乾燥機排ガスを搬送する第3排ガスダクト28の下流端が接続されている。この第3排ガスダクト28により搬送されてくる乾燥機排ガスが、SP排気と共に排気処理装置66のバグフィルタ66aで集塵処理される。よって、乾燥機排ガスに含まれる乾燥汚泥の粉塵もセメント原料として利用される。
【0045】
ところで、前記のようにセメント原料搬送装置によってサスペンションプレヒータ30の最上段のサイクロン31に供給されたセメント原料は、一段ずつ順にサイクロン31を通過しながら高温のキルン排気によって十分に予熱されて、仮焼炉35へと供給される。仮焼炉35は、ロータリキルン40の窯尻に上下方向に延びるように設けられており、そのロータリキルン40から高温のキルン排気が流入して、噴流となって上方へと吹き上がっている。
【0046】
また、図示しないが仮焼炉35には、燃料である微粉炭の供給口と、上述した乾粉搬送ダクト19の下流端が接続される乾粉供給口と、これらを燃焼させるための空気の供給口とがそれぞれ設けられている。燃焼用の空気としてはエアクエンチングクーラ50からの高温のクーラ排気が利用され、これが仮焼炉35内の負圧によって吸引されている。前記したように仮焼炉35内にはキルン排気の上昇流が形成されているが、固形状の微粉炭および汚泥の乾粉はいずれも仮焼炉35内で良好に燃焼される。
【0047】
そして、その仮焼炉35内に投入されるセメント原料粉も、前記のようなキルン排気の噴流に乗って吹き上げられる間に十分に加熱されて、仮焼炉35の最上部からサスペンションプレヒータ30の最下段のサイクロン31に搬送される。ここにおいてキルン排気はセメント原料と分離されて一つ上段のサイクロン31へと向かい、一方、セメント原料はサイクロン31の下端から落下してロータリキルン40の入り口へと至る。
【0048】
ロータリキルン40は横長円筒状の回転窯からなり、この回転窯を入り口から出口に向かって僅かに下向きに傾斜させて配置してある。回転窯がその軸心の周りに緩やかに回転することによって、セメント原料が出口側に搬送される。この出口側にはバーナ41が配設されていて、微粉炭や天然ガス、重油等の燃焼による高温の燃焼ガスを入り口側に向かって噴出している。燃焼ガスに包まれたセメント原料は化学反応(セメント焼成反応)を起こし、その一部が半溶融状態になるまで焼成される。
【0049】
このセメント焼成物がエアクエンチングクーラ50において冷風を受けて急冷され、粒状のセメントクリンカとなる。そして、図示および説明を省略するが、セメントクリンカはクリンカサイロに貯蔵された後に、石膏等を加えて成分調整された上でミルにより微粉砕される(仕上げ工程)。一方、焼成物から熱を奪って750℃以上に昇温されたクーラ排気の大半が、前記したように燃焼用の空気として仮焼炉35に供給される。これにより仮焼炉35での燃焼効率の向上が図られている。
【0050】
なお、クーラ排気の一部は、図示はしないが、ボイラによって廃熱を回収された後にバグフィルタ等の集塵機を通過し、煙突から排気される。ボイラは、前記SP排気の廃熱を回収するボイラ63と同じく、高温の水蒸気を蒸気タービンに供給して発電させる。
【0051】
−汚泥処理設備の運転動作−
上述した汚泥処理設備100は、基本的にセメントプラント200の運転条件に拘束されず、脱水汚泥の毎日の処理計画に基づいて運転される。すなわち、予定されている1日の処理量に応じて、脱水汚泥の気流乾燥機1への時間当たりの投入量が決定され、これにより汚泥ポンプ5の動作速度が制御される。汚泥ポンプ5により汚泥圧送ダクト6を圧送される汚泥ケーキは、気流乾燥機1の混合フィーダ14において汚泥の乾粉と混合され、解砕機10で解砕された後に循環ガスにより乾燥ダクト11を吹き上げられる。
【0052】
そして、サイクロン12において遠心分離された汚泥の乾粉が乾粉受入タンク13から搬出されて、乾燥汚泥ホッパ17に投入される。この乾燥汚泥ホッパ17内の汚泥の乾粉は、セメントプラント200側の要求に応じて計量され、乾粉搬送ダクト19を気流搬送されて、セメントの仮焼炉35に吹き込まれる。この仮焼炉35内にはキルン排気の上昇流が形成されているが、固形状の微粉炭および汚泥の乾粉はいずれも4秒程度、仮焼炉35内に留まって良好に燃焼する。このことで、乾粉に含まれる有機物の発熱量を有効利用でき、仮焼炉35への微粉炭の供給量を削減できる。また、ダイオキシンの生成も抑制できる。
【0053】
一方、前記のようにサイクロン12で分離された乾燥機排ガスは、その一部が熱風発生炉22の手前で分流されて気流乾燥機1へ循環する一方、脱水汚泥の水蒸気を含んで体積の増大した乾燥機排ガスの残部は、熱風発生炉22において高温に加熱され脱臭される。通常、650〜700℃以上に加熱すれば完全に脱臭できるので、熱風発生炉22においては放出される熱風の温度を計測し、これが例えば650℃以上になるように燃焼バーナ22aへの微粉炭の供給量を制御している。
【0054】
熱風発生炉22からの熱風、即ち高温の燃焼ガスおよび乾燥機排ガスは、熱交換器26において循環ガスと熱交換し200℃くらいまで温度が低下した状態で、第3排ガスダクト28を流通し、セメント原料ミル65の排気処理装置66に導入される。この乾燥機排ガスは多量の水蒸気を含んでいるが、多量のSP排気と混じり合って水蒸気濃度が低くなることから、排気処理装置66のバグフィルタ66aで問題なく集塵処理できる。
【0055】
つまり、本実施形態の汚泥処理設備100によれば、気流乾燥機1で発生した乾燥機排ガスのうち、環境に放出する増加ガス分だけを熱風発生炉22で加熱して脱臭しているので、熱風発生炉22における燃料の消費を抑制できる。また、加熱脱臭した高温の乾燥機排ガスは、熱交換器26で温度を低下させた後に、セメントプラント200の排気処理装置66を利用して集塵処理することができ、高温の乾燥機排ガスの熱量は、気流乾燥機1に循環する乾燥機排ガス(循環ガス)の昇温に役立てることができる。よって、多量の汚泥を処理してもセメントの製造プロセスに悪い影響を及ぼすことがなく、コストの上昇も抑制できる。
【0056】
−第2の実施形態−
次に、本発明の第2の実施形態に係る汚泥処理設備について
図2を参照して説明する。この第2の実施形態の汚泥処理設備では、乾燥汚泥ホッパ17に一次貯留している汚泥の乾粉の一部を燃料として熱風発生炉22に供給するとともに、この熱風発生炉22に燃焼用空気としてクーラ排気を流入させるようにしているが、それ以外の構成については第1実施形態と同じなので、同じ符号100を付する。また、それ以外の同じ構成の装置等にも同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0057】
より具体的に、この第2の実施形態の汚泥処理設備100においては、汚泥の乾粉を気流搬送する乾粉搬送ダクト19の途中に乾粉の分配装置7を設けて、取り出した乾粉を熱風発生炉22への燃料供給装置23に供給し、微粉炭と共に燃焼バーナ22aで燃焼させるようにしている。汚泥の乾粉を燃焼させることで、熱風発生炉22への微粉炭の供給量を削減できる。なお、燃料供給装置23とは別に、熱風発生炉22内に乾粉を吹き込む乾粉専用の供給装置を設けてもよい。
【0058】
また、前記の燃焼バーナ22aに燃焼用の空気を送るファン24には、セメントプラント200のエアクエンチングクーラ50から高温のクーラ排気を搬送するクーラ排気ダクト8(排気ダクト)が接続されている。前記したようにクーラ排気は300℃以上に昇温されているので、その一部を燃焼用の空気として燃焼バーナ22aに供給すれば、熱風発生炉22への微粉炭の供給量を削減できる。
【0059】
前記のように乾粉搬送ダクト19から乾粉の一部を取り出して、燃料供給装置23に供給する乾粉分配装置7が、乾粉を熱風発生炉22に供給して燃焼させる乾燥汚泥供給装置を構成する。
【0060】
−他の実施形態−
なお、上述した第1および第2の実施形態の説明は例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。例えば、前記各実施形態の汚泥処理設備100では、脱水汚泥を気流乾燥機1によって乾燥させるようにしているが、気流乾燥機以外の乾燥機を用いてもよい。
【0061】
また、前記各実施形態では汚泥の乾粉をセメントプラント200の仮焼炉35で燃焼させるようにしているが、乾粉をロータリキルン40で燃焼させるようにしてもよいし、仮焼炉35およびロータリキルン40の双方で燃焼させるようにしてもよい。また、乾粉を仮焼炉35、ロータリキルン40の何れか一方で燃焼させる場合でも、乾粉の一部は他方で燃焼させてもよいし、乾粉の一部をサスペンションプレヒータ30に投入してもよい。
【0062】
また、前記各実施形態では、汚泥処理設備100から乾燥機排ガスを搬送する第3排ガスダクト28の下流端が、セメントプラント200の排気ライン60においてセメント原料ミル65と排気処理装置66との間に接続されているが、これに限らず、例えばボイラ63とセメント原料ミル65との間に接続してもよいし、サスペンションプレヒータ30からの出口に接続してもよい。
【0063】
さらに、前記各実施形態においては乾燥機排ガスを熱風発生炉22において高温に加熱して脱臭するようにしているが、例えばセメントプラント200の仮焼炉35やロータリキルン40、エアクエンチングクーラ50などの高温ガスを利用して加熱し脱臭するようにしてもよい。或いは乾燥機排ガスをセラミック触媒で脱臭したり化学吸着剤によって脱臭するようにしてもよい。
【0064】
また、前記各実施形態では、熱風発生炉22からの熱風(高温の燃焼ガスおよび乾燥機排ガス)を熱交換器26において、気流乾燥機1に循環する乾燥機排ガスと熱交換させるようにしているが、これに限らず、例えば熱風を循環ガスと混合するなどして直接、脱水汚泥の気流乾燥に利用してもよい。この場合には集塵処理する乾燥機排ガスの温度を下げなくてはならないので、例えばボイラで熱回収するようにしてもよい。
【0065】
また、前記第2の実施形態では、汚泥の乾粉を燃料として熱風発生炉22の燃焼バーナ22aに供給するとともに、燃焼用空気としてクーラ排気を供給するようにしているが、乾粉の供給およびクーラ排気の供給のいずれか一方のみとしてもよい。
【0066】
−セメントプラントの他の形態−
さらにまた、セメントプラント200の構成についても前記の各実施形態に限定されることはなく、本発明にかかる汚泥処理設備は、例えば
図3〜6(変形例1〜4)に示すような種々のセメントプラントにも適用できる。なお、以下に例示するセメントプラントは、それぞれ前記各実施形態のものと異なる点はあるものの、全体的な構成は同じなので、同じ符号200を付する。また、セメントプラント200を構成する装置や部材についても同一の場合は同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0067】
具体的に
図3に示すセメントプラント200(変形例1)には、サスペンションプレヒータ30や仮焼炉35を循環する間にガス中の塩素分やアルカリ分が濃縮されることを防ぐために、バイパスライン67が設けられている。このバイパスライン67は、下端部が仮焼炉35の下部等に接続されてガスの一部を抽出し、冷却器67aで冷却した後にサイクロン67bに送ってダストを分級する。冷却器67aにはファン67cにより冷風が送られていて、抽気ガスを塩素化合物等の融点以下まで急冷することにより、抽気ガス中の塩素分あるいはアルカリ分を固体(ダスト)として分離する。
【0068】
そして、サイクロン67bにおいて抽気ガス中のダストが粗粉と微粉とに分級され、塩素分やアルカリ分が殆ど含まれていない粗粉は、サイクロン67bの下端から落下し、一部を省略して示す戻しライン67dによって仮焼炉35へと戻される。一方、塩素分やアルカリ分の濃度が高い微粉は、サイクロン67bから吸い出される抽気ガスに乗って排気ダクト67eから集塵機67fに流入し、集塵機67fにて捕集される。集塵機67fを通過した抽気ガスは、送風機67gを経て仮焼炉へ戻されるか、別の排ガス処理設備へ送られる。
【0069】
次に、
図4に示すセメントプラント200(変形例2)では、サスペンションプレヒータ30が2系統に分かれていて、各系統毎に一例として5段のサイクロン31を備えている。図の左側の系統には下段からキルン排気が吹き込まれるようになっており、仮焼炉35が設けられていないことを除けば、前記した第1、第2実施形態のサスペンションプレヒータ30と同じ構成である。
【0070】
一方、図の右側の系統には仮焼炉35が設けられているが、ここにはキルン排気ではなく、エアクエンチングクーラ50からの高温のクーラ排気が流入している。クーラ排気は、前記の第1、第2実施形態におけるキルン排気と同様に仮焼炉35の下端に流入して、上方へと吹き上がっている(図には一点鎖線で示す)。このクーラ排気は仮焼炉35内に導入される汚泥の乾粉と混ざり合い、これを燃焼させながらセメント原料を吹き上げて、最下段のサイクロン31に至る。そして、一段ずつサイクロン31を上昇して最上段のサイクロン31から排気ライン60に流出する。
【0071】
また、
図5に示すセメントプラント200(変形例3)においては仮焼炉の構造が第1、第2実施形態と異なっている。すなわち、仮焼炉70は、ロータリキルン40の窯尻に設けられた混合室71と、その下部に連通する旋回仮焼室72とを有し、この旋回仮焼室72には燃焼装置73が配設されていて、石炭、天然ガス、重油等の燃焼による高温の燃焼ガスを噴出している。図示のように旋回仮焼室72には、エアクエンチングクーラ50からの高温のクーラ排気(空気)が旋回流として導入されるとともに、最下段の一つ上のサイクロン31からは予熱されたセメント原料が供給される。
【0072】
そのセメント原料が燃焼装置73からの燃焼ガスを受けて仮焼されながら混合室71へと移動し、ここでは下方からのキルン排気の噴流によって上方に吹き上げられる。すなわち、混合室71ではキルン排気の流れにセメント原料を含んだ燃焼ガスの流れが合流し、両者が混じり合いながら上昇するようになる。この上昇流に乗って吹き上げられる間にセメント原料は十分に仮焼され、混合室71の最上部の出口からダクトを介して最下段のサイクロン31へと搬送される。なお、汚泥処理設備100から搬送されてくる乾粉は、例えばロータリキルン40の入り口から混合室71の出口までの間、或いは旋回仮焼炉72と混合室71との間に導入すればよい。
【0073】
さらに、
図6に示すセメントプラント200(変形例4)においては仮焼炉が設けられておらず、ロータリキルン40の入り口に接続された立ち上がり管75が上方に向かって延びていて、その上端部がサスペンションプレヒータ30の最下段のサイクロン31に接続されている。この立ち上がり管75にセメント原料と汚泥の乾粉とがそれぞれ供給されて、キルン排気の噴流により吹き上げられる。乾粉は、キルン排気に含まれている酸素と反応して、立ち上がり管75及びサスペンションプレヒータ30の中で燃焼する。
【0074】
その他、前記
図3〜6に示すものも含めて実施形態のセメントプラント200において、セメントの焼成炉はロータリキルン40に限定されず、例えば流動層キルンであってもよい。