特許第6018460号(P6018460)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018460
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】防水パネル柵
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20161020BHJP
   E02B 7/22 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   E02B3/06 301
   E02B7/22
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-180857(P2012-180857)
(22)【出願日】2012年8月17日
(65)【公開番号】特開2014-37726(P2014-37726A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鐵住金建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】笠原 啓
(72)【発明者】
【氏名】川端 規之
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3166822(JP,U)
【文献】 特開2008−180061(JP,A)
【文献】 特開2011−256642(JP,A)
【文献】 特開2012−021359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04−3/14
E02B 7/20−7/22
E04H 9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を開けて設置された複数の支柱間に防水パネルを取り付けて、洪水や津波の浸入を防ぐ防水パネル柵であって、
前記複数の支柱は、鉛直に延びる溝を有しており、隣り合う支柱の前記溝同士が相対するように間隔を開けて配置され、
前記溝内には、増水した水が押し寄せる増水方向に向けて突出し鉛直方向に延びる鉛直止水材を有し、
前記防水パネルは、横方向に延びる金属製の角パイプで構成された複数の防水パネルユニットが、前記支柱の相対する双方の溝に嵌め入れられることで上下に連接して構成され、前記鉛直止水材を介して支柱に取り付けられており、
前記上下に連接する防水パネルユニットの間には、横方向へ延びる横止水材を有するとともに、
前記上下に連接する防水パネルユニット円弧状の外側角部が相対することにより前記防水パネルの表面に形成される窪みを、前記鉛直止水材と当接して埋める窪み止水材を有し、
前記窪み止水材は前記鉛直止水材と前記横止水材との間にあること
を特徴とする防水パネル柵。
【請求項2】
前記溝内には、前記増水方向に向けて突出し鉛直方向に延びる第1の鉛直止水材と、前記第1の鉛直止水材に相対して逆向きに突出し鉛直方向に延びる第2の鉛直止水材とを有し、
前記防水パネルは、前記第1及び第2の鉛直止水材の間に嵌め入れられて、前記支柱の溝内に嵌め入れられて取り付けられていること
を特徴とする請求項1記載の防水パネル柵。
【請求項3】
前記上下に連接する防水パネルユニットの間には、前記横止水材と前記窪み止水材とを繋いで奥行き方向へ延びる奥行止水材を有し、
前記鉛直止水材と前記窪み止水材とが繋がり、前記窪み止水材と前記奥行止水材とが繋がり、前記奥行止水材と前記横止水材とが繋がること
を特徴とする請求項1又は2に記載の防水パネル柵。
【請求項4】
前記防水パネルの鉛直方向の移動を制限する押さえ金具が前記支柱の上部に取り付けられることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の防水パネル柵。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台風による河川の洪水や海岸部での津波や高潮等により、沿岸部の建築物や道路等に対して与える被害を防ぐ防水パネル柵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
川沿いの堤防に設置され、河川の洪水を防ぐ防水パネル柵として、特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、平常時はポストホールに収納され、緊急時にポールポストから引き上げ可能な親杭(支柱)と、ポールポストから引き上げた親杭間に張られる横矢板(パネル)を備える可搬式越水防止装置(防水パネル柵)について記載されている。
【0004】
このような防水パネル柵は、支柱間に複数のパネルを嵌め入れて上下に連続させる構造であり、支柱とパネルの嵌合部の止水と、上下に連接されるパネルの設置部の止水が行われている。具体的には、支柱とパネルの接触箇所、パネルと地面の接触箇所およびパネルを構成する4枚の板同士の接触箇所に発生する接触面からの漏水を防ぐ構造として、ゴムパッキン、横矢板固定用部材の溝およびホゾとホゾ穴を用いて各接触面の遮水性が高められている。
【0005】
また、特許文献1に記載されている防水パネル柵では、満水時の浮力に耐えるため、横矢板に浮力の小さい部材を用いたり、横矢板の最上段の板の上部と親杭の上部とを固定する部材が設けられたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−47150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来の防水パネル柵では、上下のパネルの連結部分の止水は、各パネルの上下に設けられたホゾとホゾ穴とを嵌合することで行われているが、こうしたホゾやホゾ穴等の複雑な形状を有するパネルを安価で大量に製造するためには、射出成形や押し出し成形等を用いて作成される。
【0008】
しかし、押し出し成形に用いることのできる材料には限りがあり、具体的には樹脂やアルミニウムが用いられるが、こうした材料は機械的な強度が弱いため、これらの材料で作成されたパネルが水圧を受けると、大きく撓む恐れがある。
【0009】
こうした撓みを防止するためには、支柱間の距離を狭めなければならず、設置のコストや工程数が多くなってしまう。また、支柱間の距離を狭めたとしても、浸水深が深く大きな水圧が加わる場合には撓みを抑えることができない。
【0010】
こうした撓みを効果的に防止するため、防水パネル柵のパネルとして、角形鋼管を連接して作成したパネルを用いることが考えられる。角形鋼管を連接したパネルは、上述した撓みに対する耐性が強く、かつ安価で大量に製造することができるため好ましい。
【0011】
しかし、角形鋼管には上述した特許文献1に記載されている防水パネル柵のようなホゾとホゾ穴が設けられておらず、これらを嵌合させる特許文献1記載の止水構造をそのまま採用することはできない。角形鋼管に溶接等でホゾとホゾ穴を作成することもできるが、この場合加工に要するコストが増加するため、特に津波や浸水対策として長距離に亘り防水パネル柵を設置する場合には、その建造コストが膨大なものとなる。
【0012】
また、パネルに角形鋼管を用いる場合、角形鋼管の外側角部はその断面が直角ではなくR状になっている。そのため、上下に角形鋼管を重ねてパネル状にした後、特許文献1に記載されているものと同様の構成を有する、溝が設けられた支柱に嵌め入れると、支柱に設けられた縦方向の止水材と角形鋼管のR状角部同士の継目との間に隙間が生じてしまい、そこから水が漏れてしまう。
【0013】
さらに、洪水や津波が想定浸水深を超え、防水パネル柵を越流した場合、空洞状の角形鋼管が浮力により浮き上がることの無いようにパネル上部を支柱上部に固定する必要がある。しかし、特許文献1には当該構造について具体的な記載がされておらず、角形鋼管をパネルとして用いる場合には、新たに浮き上がりを防止する構造が必要となる。
【0014】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、支柱間の距離を広くすることができ、浸水深が深くなっても撓みの発生を効果的に防止することのできる角形鋼管を用いて作成されるとともに、漏水を効果的に防止し、洪水や津波の浸入を防止することができる防水パネル柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上述した課題を解決するために、支柱間の距離を広くすることができ、浸水深が深くなっても撓みの発生を効果的に低減することのできる角形鋼管を用いて作成されるとともに、漏水を効果的に防止し、洪水や津波の浸入を防止することができる防水パネル柵を発明した。
【0016】
本発明の請求項1に係る防水パネル柵は、間隔を開けて設置された複数の支柱間に防水パネルを取り付けて、洪水や津波の浸入を防ぐ防水パネル柵であって、前記複数の支柱は、鉛直に延びる溝を有しており、隣り合う支柱の前記溝同士が相対するように間隔を開けて配置され、前記溝内には、増水した水が押し寄せる増水方向に向けて突出し鉛直方向に延びる鉛直止水材を有し、前記防水パネルは、横方向に延びる金属製の角パイプで構成された複数の防水パネルユニットが、前記支柱の相対する双方の溝に嵌め入れられることで上下に連接して構成され、前記鉛直止水材を介して支柱に取り付けられており、前記上下に連接する防水パネルユニットの間には、横方向へ延びる横止水材を有するとともに、前記上下に連接する防水パネルユニット円弧状の外側角部が相対することにより前記防水パネルの表面に形成される窪みを、前記鉛直止水材と当接して埋める窪み止水材を有し、前記窪み止水材は前記鉛直止水材と前記横止水材との間にあることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項2に係る防水パネル柵は、請求項1記載の防水パネル柵であって、前記溝内には、前記増水方向に向けて突出し鉛直方向に延びる第1の鉛直止水材と、前記第1の鉛直止水材に相対して逆向きに突出し鉛直方向に延びる第2の鉛直止水材とを有し、前記防水パネルは、前記第1及び第2の鉛直止水材の間に嵌め入れられて、前記支柱の溝内に嵌め入れられて取り付けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項3に係る防水パネル柵は、請求項1または2記載の防水パネル柵であって、前記上下に連接する防水パネルユニットの間には、前記横止水材と前記窪み止水材とを繋いで奥行き方向へ延びる奥行止水材を有し、前記鉛直止水材と前記窪み止水材とが繋がり、前記窪み止水材と前記奥行止水材とが繋がり、前記奥行止水材と前記横止水材とが繋がることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項4に係る防水パネル柵は、請求項1乃至3の何れか1項記載の防水パネル柵であって、前記防水パネルの鉛直方向の移動を制限する押さえ金具が前記支柱の上部に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
上述した構成からなる本発明によれば、支柱間の距離を広くすることができ、浸水深が深くなっても撓みの発生しにくい角形鋼管を用いて防水パネル柵を作成しつつ、各止水材により漏水を効果的に防止し、洪水や津波の浸入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る防水パネル柵の構成を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態において用いられている防水パネルユニットが嵌め入れられた支柱2の様子を示す斜視図である。
図3図2の状態を上部から見た平面図である。
図4】本発明の実施形態において用いられている防水パネルユニットを示す斜視図である。
図5】本発明の実施形態において用いられている角形鋼管同士の接合の様子を示す側面図である。
図6】本発明の実施形態において用いられている防水パネルユニットの底面に設けられた止水材を示す底面図である。
図7】本発明の実施形態において防水パネルユニット同士の当接部分の止水の様子を示す斜視図である。
図8】本発明の第1の変形例に係る防水パネル柵において用いられる防水パネルユニットを示す、(A)は底面図、(B)は斜視図である。
図9】本発明の第2の変形例に係る防水パネル柵において用いられている押さえ金具を示す側面図である。
図10】本発明の第3の変形例に係る防水パネル柵において用いられている窪み止水材としてのコーキングを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る防水パネル柵について詳細に説明する。なお、海や河川等の沿岸に沿う方向をX方向、X方向に直交し海や河川に向かう方向をY方向、X方向およびY方向に直交する鉛直方向をZ方向として各図に矢印で示すとともに、これらの方向を用いて本実施形態の説明を行う。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る防水パネル柵の構成を示す斜視図である。防水パネル柵1は、主に基礎Gに対して所定間隔で立設された支柱2と、この支柱2間に上下に重ねて嵌合された複数の防水パネルユニット3とにより構成されている。
【0024】
基礎Gは、例えばコンクリート製で構成されている。基礎Gは、海や河川等の沿岸に沿う方向(X方向)に沿って設けられている。基礎Gは、立設すべき支柱2を嵌め込むための図示しない嵌合孔が設けられていてもよい。なお、基礎Gは、コンクリート製以外の、例えば土等により構成されていてもよい。
【0025】
また、基礎Gは、沿岸部に設置された堤防であってもよい。仮にこの堤防自体が新設の場合は、支柱2自体を堤防に直接埋め込むという形式であってもよいが、既設の場合は、支柱2にベースプレートを取り付けてアンカーボルトにより堤防に固定するという形式でもよい。なお、基礎Gを設けて防水パネル柵を設置する場所は、沿岸部だけに限らず津波や洪水の越流を考慮して複数の防水パネル柵を内陸部に向かって段階的に設置する場合も含まれる。
【0026】
図2は、防水パネルユニット3が嵌め入れられた支柱2の様子を示す斜視図、図3図2の状態を上部から見た平面図である。
【0027】
支柱2は、ウェブ211の両端に一対のフランジ212が連設されたH形鋼21、H形鋼21のフランジ212の内側に設けられた鉛直止水材22、および押さえ金具23を有して構成されている。
【0028】
H形鋼21は、ウェブ211とフランジ212により囲まれてなる溝部213が形成されている。支柱2は、H形鋼21のフランジ212を海や河川等の沿岸に沿う方向(X方向)に向けて配置される。なお、支柱2の構成部材としては、製造コストの観点からH形鋼21を用いるのが望ましいが、これに限定されるものではなく、十分な剛性を確保できるもので溝部213を有していれば如何なる断面形状の鋼材で構成されていてもよい。
【0029】
鉛直止水材22は、フランジ212の内側に鉛直方向に延びて設けられた1対の止水材である。鉛直止水材22は、CR(Chloroprene)ゴム等の弾性樹脂から形成される中空のチューブ状のゴムガスケットである。鉛直止水材22は、海岸線や河川の水際に向けて、すなわち、増水した水が押し寄せる方向(Y方向)に向けて突出している。こうして突出した鉛直止水材22が、その弾性変形力によりH形鋼21に嵌め込まれた防水パネルユニット3を押圧することで、防水パネルユニット3と支柱2との間の水密性が確保され、防水パネルユニット3と支柱2との接合部からの漏水が効果的に防止される。
【0030】
押さえ金具23は、図2及び図3に示すように、支柱2間に嵌め込まれた防水パネルユニット3を上から(Z方向から)押さえ込んで固定するために設けられる。この押さえ金具23は、支柱2におけるウェブに当接される当接板231と、この当接板231に対して互いに直交する押さえ板232並びに補剛板233とを備えている。
【0031】
当接板231には、図示しない挿通孔が形成され、これにボルトとナットにより構成される締結ボルト25が挿通される。この締結ボルト25の先端は、更にウェブ211に設けられた図示しない挿通孔を挿通させて、ウェブ211の反対側からナットを螺着することにより、当接版231がH形鋼21に固定される。
【0032】
押さえ板232は、固定時において水平面を構成するように、また補剛板233は固定時において鉛直面を構成するように角度調整がなされる。そして、この押さえ板232の底面を防水パネルユニット3の上面を押さえ付けるようにして固定する。これにより、想定外の洪水や津波高さにより水が越流した場合に浮力により防水パネルユニット3が、津波等の外力を受けて上に上がろうとするのをこの押さえ板232を介して抑えることが可能となる。
【0033】
図4は、防水パネルユニット3を示す斜視図である。防水パネルユニット3は、金属製の断面ロ字状の角形鋼管31が複数に亘り連結されるとともに、その底面に後述する止水材が設けられて構成されている。
【0034】
角形鋼管31は、撓みに対する耐性が強く、かつ安価に製造することができる。そのため、角形鋼管31を長く設けた場合でも、水圧により撓みにくく、支柱2間の距離を長く確保することができ、防水パネル柵1の製造コストを下げるとともに、設置作業の容易化を実現することができる。
【0035】
角形鋼管31はロール成形により形成されているため、平面視は略矩形であり、断面視は略矩形であるが、四隅の角部は曲率を帯びている。角形鋼管31は、中空状であることから、これを中実状に構成する場合と比較して材料コストの低減を図りつつ、金属製で水圧や波圧等による外力に対する高い耐久性を維持することが可能となる。
【0036】
なお、本実施形態においては防水パネルユニット3の構成部材として角形鋼管31を用いているが、本発明においてはこれに限らず、中空形状でかつ十分な剛性を確保できる各パイプ等であれば、その材質、形状、大きさ、種類は如何なるものであってもよい。
【0037】
また、角形鋼管31の内部には、補強部材39が設けられている。補強部材39は、いかなる形状であっても角形鋼管31の少なくとも1つの面に内接している。特に補強部材39は、少なくとも角形鋼管のY方向の側面とは、溶接等で固着していることが望ましい。これにより剛性を強固にすることができ、防水パネルユニット3に水圧や波圧がかかり、支柱2と防水パネルユニット3の固定された部分に対する応力が集中しても防水パネル9が破損することを防ぐことができる。また、補強部材39は、角形鋼管31のZ方向に位置する上面及び下面と当接しており、更に固着されていることが望ましい。補強部材39とこの上面及び下面が当接されていることにより、角形鋼管の断面形状が平行四辺形に変形することを防ぐことができる。ただし、角形鋼管31が十分な剛性を備えており、支柱2と防水パネルユニット3との固定部分に集中する応力に対抗できるのであれば、補強部材39は用いなくてもよい。
【0038】
図5は、角形鋼管31同士の接合の様子を示す側面図である。角形鋼管31同士の接合は、図5に示すように、ボルトとナットにより構成される締結ボルト36およびコーキング35により行われている。締結ボルト36により角形鋼管31同士を堅固に固定することができるとともに、コーキング35を施すことで角形鋼管31同士の接合箇所における水密性を確保することができる。図5に示す角形鋼管31同士の接合は、締結ボルト36に限るものではなく、締結ボルト36の代わりに溶接で角形鋼管31同士を接合してもよい。また、溶接位置をコーキング35の位置とすることで、コーキング35による止水と締結ボルト36による接合の両方の機能を持たせるようにしてもよい。
【0039】
図6は、防水パネルユニット3の底面に設けられた止水材を示す底面図である。防水パネルユニット3の底部、すなわち防水パネルユニット3の最下層にある角形鋼管31の底面には、止水材として、窪み止水材32、奥行止水材33および横止水材34が設けられている。
【0040】
窪み止水材32は、防水パネルユニット3の側面下部であって両端部の近傍の4ヶ所に設けられている。窪み止水材32は、EPDM(ethylene propylene diene monomer)等の弾性を有する素材を用いて形成される発泡ゴムパッキンである。
【0041】
図7は、本発明の実施形態において防水パネルユニット3同士の当接部分の止水の様子を示す斜視図である。窪み止水材32は、図7に示すように、防水パネルユニット3同士が上下に(Z方向に)重ねられた際に、防水パネルユニット3の円弧状の外側角部が相対することにより形成される窪みRを埋めることで、当該窪みRからの漏水を防止している。
【0042】
図6に戻り、奥行き止水材33は、窪み止水材32と連続して設けられていて、防水パネルユニット3の最下層にある角形鋼管31の奥行方向(Y方向)に延びる発泡ゴムパッキンである。この奥行止水材33も、窪み止水材32と同様の素材を用いて形成される。
【0043】
奥行止水材33が無い場合、防水パネルユニット3同士が上下に重ねられた際、または防水パネルユニット3が基礎Gに当接した際に、後述する横止水材34により、防水パネルユニット3の底部であって、幅方向(X方向)の両端部に僅かに隙間が生じてしまい、当該隙間からの漏水が生じてしまう。そのため、奥行止水材33を設けることで、当該隙間を埋めることができ、漏水の発生を効果的に防止することができる。
【0044】
横止水材34は、防水パネルユニット3の底面において防水パネルユニット3の幅方向(X方向)、すなわち窪み止水材32の延びるY方向と直交する方向に延びて設けられている発泡ゴムパッキンである。この横止水材34も、窪み止水材32と同様の素材を用いて形成される。横止水材34は、防水パネルユニット3同士、または防水パネルユニット3が基礎Gに当接した際に、防水パネルユニット3の奥行き方向(Y方向)への漏水を防止するための止水材である。
【0045】
上述したように、本実施形態に係る防水パネル柵1には、支柱2に設けられた鉛直止水材22と、防水パネルユニット3に設けられた窪み止水材32、奥行止水材33および横止水材34の、4種類の止水材が設けられているが、必ずしも別々の部材により構成される必要は無く、各止水材に求められる止水機能が発揮される態様であれば、上記4種類の止水材を一体成形したものであってもよい。
【0046】
上述した構成を有する防水パネル柵1では、漏水の懸念される箇所として、支柱2と防水パネルユニット3との間、防水パネルユニット3同士の間および防水パネルユニット3と基礎Gとの間が挙げられる。
【0047】
しかし、上述した実施形態に係る防水パネル柵1では、上述したように、鉛直止水材22と窪み止水材32とにより、支柱2と防水パネルユニット3の間の止水が行われるとともに、奥行止水材33と横止水材34とにより、防水パネルユニット3同士、または防水パネルユニット3と基礎Gとの間の止水が行われている。こうして防水パネル柵1において漏水が懸念される各箇所の止水が行われることで、防水パネル柵1全体としての漏水防止機能が発揮されている。
【0048】
このように、本実施形態に係る防水パネル柵1によると、支柱間の距離を広くすることができ、浸水深が深くなっても撓みの発生しにくい角形鋼管を用いて防水パネル柵1を作成しつつ、各止水材により漏水を効果的に防止し、洪水や津波の浸入を防止することができる。
【0049】
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、種々の態様をとることが可能である。
【0050】
例えば、上述した実施形態に係る防水パネル柵1において用いられていた止水材について、他の態様に変更しても良い。
【0051】
図8は、本発明の第1の変形例に係る防水パネル柵1において用いられる防水パネルユニット3を締結ボルト36や補強部材39などは省略して示す、(A)は底面図、(B)は斜視図である。本変形例においては、上述した実施形態に係る防水パネル柵1の防水パネルユニット3において設けられていた奥行止水材33と横止水材34とが一体化し、Y方向に幅広な横止水材300となっている。
【0052】
このような横止水材300によっても、上述した実施形態に係る防水パネル柵1の奥行止水材33および横止水材34と同様に、防水パネルユニット3同士、または防水パネルユニット3と基礎Gとの間の止水を行うことができる。
【0053】
また、上述した実施形態に係る防水パネル柵1において用いられていた押さえ金具23は、山形鋼により構成されていたが、これを他の構成としても良い。
【0054】
図9は、本発明の第2の変形例に係る防水パネル柵1において用いられている押さえ金具230を示す側面図である。
【0055】
本変形例において用いられる押さえ金具230は、コ字状に屈曲された金属製の板状部材であって、開口部を下向き(−Z方向)にしつつ、H形鋼21のフランジ間にボルトとナットにより構成される締結ボルト29により固定されているベース部材27と、ベース部材27の下部に突出の程度を調整可能に取り付けられている調節ボルト28と、調節ボルト28の先端に設けられ防水パネルユニット3と当接する板状の当接片38と、を有して構成されている。
【0056】
この押さえ金具230の使用方法について説明する。まず、支柱2に防水パネルユニット3を嵌め入れた後、H形鋼21のフランジ間に締結ボルト29によりベース部材27を固定する。そして、調節ボルト28を回転してその突出の程度を調整し、調節ボルト28の先端に設けられた当接片38が防水パネルユニット3を押圧、固定する。こうして押さえ金具230による防水パネルユニット3の固定が完了する。
【0057】
本変形例において使用される押さえ金具230によっても、津波や洪水が襲来した際に防水パネルユニット3に浮力が生じた際にも当該浮力により防水パネルユニット3が支柱2から脱落することを防止することができる。
【0058】
上述した実施形態に係る防水パネル柵1において用いられていた防水パネルユニット3の窪み止水材32は、EPDM等の発泡ゴムパッキンを用いる。しかし、本発明においてはこれに限らず、防水パネルユニット3の円弧状の外側角部が相対することにより形成される窪みRの部分において止水効果を発揮できるものであれば好適に用いることができる。
【0059】
図10は、本発明の第3の変形例に係る防水パネル柵1において用いられている窪み止水材としてのコーキング330を示す側面図である。
【0060】
図10に示すように、発泡ゴムパッキンに替えて、角形鋼管31間の止水に用いられているコーキング35と同様の素材よりなるコーキング330を角形鋼管31の外側角部に塗布するとともに、型枠等を用いて直角に成形することで、防水パネルユニット3の外側角部を円弧上から直角にすることができる。これにより、防水パネルユニット3同士が当接した場合でも、当接部分における窪みRを無くすことができ、当該窪みRにおいて生じる漏水を効果的に防止することができる。
【0061】
また、上述した実施形態においては、防水パネルユニット3は複数の角形鋼管31を上下に連結することで形成されていたが、本発明においてはこれに限らず、単一の角形鋼管31により防水パネルユニット3を形成してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 防水パネル柵
2 支柱
21 H形鋼
22 鉛直止水材
23 押さえ金具
3 防水パネルユニット
31 角形鋼管
32 窪み止水材
33 奥行止水材
34 横止水材
G 基礎
R 窪み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10