特許第6018465号(P6018465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6018465-再帰反射シート 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018465
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】再帰反射シート
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/12 20060101AFI20161020BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20161020BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20161020BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20161020BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20161020BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20161020BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   G02B5/12
   C09J133/04
   C09J133/02
   C09J11/08
   C09J7/02 Z
   B32B27/30 A
   B32B27/00 N
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-206000(P2012-206000)
(22)【出願日】2012年9月19日
(65)【公開番号】特開2014-58650(P2014-58650A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】坂口 忍
(72)【発明者】
【氏名】藤井 孝男
(72)【発明者】
【氏名】狩野 肇
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−263742(JP,A)
【文献】 特開2002−129122(JP,A)
【文献】 特開平08−043615(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/111412(WO,A1)
【文献】 特開2009−167281(JP,A)
【文献】 特開2008−274243(JP,A)
【文献】 特開2012−031422(JP,A)
【文献】 特開2003−342539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 27/00− 27/42
G02B 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再帰反射層と、粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を有し、
前記粘着剤組成物は、
アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位と、カルボキシル基を有する単量体に由来の構成単位とを含む(メタ)アクリル系共重合体と、
イソシアネート系架橋剤と、
軟化点が125℃以下であるロジンエステル樹脂及びテルペンフェノール樹脂と、
を含有し、
前記(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体に由来の構成単位を含まず、
ゲル分率が、10質量%以上30質量%以下である再帰反射シート
【請求項2】
前記テルペンフェール樹脂及び前記ロジンエステル樹脂の軟化点がいずれも90℃以上である請求項1に記載の再帰反射シート
【請求項3】
前記ロジンエステル樹脂の水酸基価が20以下である請求項1又は請求項2に記載の再帰反射シート
【請求項4】
前記ロジンエステル樹脂の含有量が、前記テルペンフェノール樹脂の含有量より多い請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の再帰反射シート
【請求項5】
樹脂製の被着体に貼着される請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の再帰反射シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再帰反射シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光を光源に向けて再帰反射させる再帰反射シートはよく知られており、様々な分野で広く利用されている。このような再帰反射シート1としては、例えば図1に示すような、表面保護層10と、微小なガラス球12と、ガラス球12を保持する保持層11と、ガラス球12の焦点位置を調整する焦点層13と、ガラス球12の焦点位置に配置された鏡面反射層14と、粘着剤層15と、を有する、封入レンズ型再帰反射シートが知られている。
【0003】
上記再帰反射シートを、前記粘着剤層を介して、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂等で形成された被着体に貼着した場合、温度等の環境の変化や経時変化等により被着体から発生したガスが、被着体と粘着剤層との間に留まり、再帰反射シートが膨れて凹凸となり外観が悪くなったり、場合によっては再帰反射シートが剥がれてしまったりする虞があった。
【0004】
そこで、このような再帰反射シートの膨れを防止するために、例えば特許文献1に記載の再帰反射シートが提案されている。この再帰反射シートでは、凝集力とポリカーボネート樹脂板に対する濡れ性とに優れた粘着剤層を用いる。これにより、被着体に対する接着力を高め、被着体から発生するガスを抑え込むことで、再帰反射シートの膨れを防止している。
【0005】
また、例えば特許文献2に記載の粘着シートでは、アクリル酸ブチルとエチレン型不飽和カルボン酸とのアクリル系共重合体と、金属キレート化合物とを含む粘着剤を用いる。これにより、優れた接着力を有しつつ粘着剤層を固く強靭にし、被着体から発生するガスを抑え込むことで、再帰反射シートの膨れを防止している。
【0006】
また、特許文献3に記載の粘着剤は、液晶表示装置に用いるものであって、重量平均分子量が50万〜150万であるアクリル酸エステル系樹脂、アルコール性水酸基を有し且つ水酸基価が35以上である粘着付与樹脂及びテルペンフェノール樹脂を含むと共に、ゲル分率が5〜40重量%である。これにより、被着体が変形しても剥離しにくい粘着剤層を形成することができ且つ粘着剤層の厚みを10μm程度まで薄層化させても充分な粘着力が発現する、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−043615号公報
【特許文献2】特開平06−49425号公報
【特許文献3】国際公開第08/111412号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1〜3の粘着剤層では、被着体からガスが多量に発生した場合には、粘着剤層の接着力が不十分であると、再帰反射シートに膨れが発生してしまう虞があった。
【0009】
また、被着体から発生したガスを粘着剤層で抑え込まずに、被着体と粘着剤層との間にガスを拡散させて外部に放出することで膨れを防止することも検討されているが、再帰反射シートの膨れを防止しつつ、再帰反射シートとしての接着性能を満足できる粘着剤層は得られていなかった。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、被着体から比較的多くのガスが発生した場合でも、再帰反射シートの膨れを防止することができ(耐フクレ性に優れ)、且つ良好な接着性を有する粘着剤組成物、及び再帰反射シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位と、カルボキシル基を有する単量体に由来の構成単位とを含む(メタ)アクリル系共重合体と、
イソシアネート系架橋剤と、
軟化点が125℃以下であるロジンエステル樹脂及びテルペンフェノール樹脂と、
を含有し、
ゲル分率が、10質量%以上30質量%以下である粘着剤組成物。
【0012】
<2> 前記テルペンフェール樹脂及び前記ロジンエステル樹脂の軟化点がいずれも90℃以上である前記<1>に記載の粘着剤組成物。
【0013】
<3> 前記(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有率が2質量%以下である前記<1>又は<2>に記載の粘着剤組成物。
【0014】
<4> 前記ロジンエステル樹脂の水酸基価が20以下である前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【0015】
<5> 前記ロジンエステル樹脂の含有量が、前記テルペンフェノール樹脂の含有量より多い前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【0016】
<6> 再帰反射層と、前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を有する再帰反射シート。
【0017】
<7> 樹脂製の被着体に貼着される前記<6>に記載の再帰反射シート。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被着体から比較的多くのガスが発生した場合でも、再帰反射シートの膨れを防止することができ(耐フクレ性に優れ)、且つ良好な接着性を有する粘着剤組成物、及び再帰反射シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】再帰反射シートの一例の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の粘着剤組成物、並びにこれを用いた再帰反射シートについて詳細に説明する。
【0021】
<粘着剤組成物>
本発明の粘着剤組成物は、アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位と、カルボキシル基を有する単量体に由来の構成単位とを含む(メタ)アクリル系共重合体と、イソシアネート系架橋剤と、軟化点が125℃以下であるロジンエステル樹脂及びテルペンフェノール樹脂と、を含有する。そして、本発明の粘着剤組成物のゲル分率は、10質量%以上30質量%以下である。本発明の粘着剤組成物は、必要に応じて、更に促進剤、その他添加剤などの他の成分を含んでいてもよい。
【0022】
本発明の粘着剤組成物を上記構成とすることにより、被着体から比較的多くのガスが発生した場合でも、再帰反射シートの膨れを防止することができ(耐フクレ性に優れ)、且つ良好な接着性を有する。この理由は明らかではないが以下のように考えることができる。
【0023】
粘着剤組成物のゲル分率を10質量%〜30質量%とすることで、この粘着剤組成物から形成された粘着剤層は、従来のものよりも柔らかくなっている。その結果、被着体と粘着剤層との間に溜まったガスが外部に放出されやすい構造となっている。
【0024】
一方で、前記ゲル分率を10質量%〜30質量%としたことに起因して接着力が低下する傾向にあることから、これを補うべく本発明の粘着剤組成物には粘着付与剤を含有させる。しかしながら、軟化点が125℃を超える粘着付与剤を用いた場合には、前記ゲル分率を10質量%〜30質量%とした効果が得られ難くなり、ガスが外部に放出され難くなる。そこで、本発明の粘着剤組成物では、軟化点が125℃以下の粘着付与剤を用いる。これにより、粘着剤組成物の粘弾性を適度(耐フクレ性が得られる程度)に保つことでき、結果、ガスの拡散性能を向上させつつ、接着力を高めることができる。
【0025】
ここで、被着体から発生したガスを拡散させつつ、再帰反射シートとしての接着性能を満足させるためには、(メタ)アクリル系共重合体と粘着付与剤とをなるべく均一に分散させることが望ましい。(メタ)アクリル系共重合体と粘着付与剤の分散性が低い場合には、(メタ)アクリル系共重合体及び/又は粘着付与剤の凝集した部分での接着力が低下する虞がある。
【0026】
そこで、本発明では、粘着付与剤として、(メタ)アクリル系共重合体との相溶性は良好であるものの粘着付与性が若干劣るロジンエステル樹脂と、(メタ)アクリル系共重合体との相溶性は若干劣るものの、粘着付与性に優れるテルペンフェノール樹脂とを併用する。ロジンエステル樹脂とテルペンフェノール樹脂とを併用することにより、耐フクレ性及び接着力に優れ、且つ再帰反射シートの局所的な接着力の低下も抑えられる。
【0027】
なお、本明細書中において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
以下に各成分について詳述する。
【0028】
−(メタ)アクリル系共重合体−
本発明の粘着剤組成物は、アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位と、カルボキシル基を有する単量体に由来の構成単位とを含む(メタ)アクリル系共重合体の少なくとも一種を含有する。
【0029】
(メタ)アクリル系共重合体は、モノマー成分として、アルキル(メタ)アクリレート単量体と、カルボキシル基を有する単量体とを少なくとも共重合させて得られる共重合体である。
前記アルキル(メタ)アクリレート単量体としては、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好適に共重合反応に供される。
【0030】
C=C(R)COOR ・・・一般式(1)
一般式(1)において、Rは、アルキル基を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
【0031】
前記一般式(1)中のRで表されるアルキル基は、直鎖、分岐鎖、環状のいずれであってもよく、直鎖又は分岐鎖のアルキル基であることが好ましい。また、Rで表されるアルキル基は炭素数1〜18であることが好ましく、2〜13であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましい。Rが炭素数2〜8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基の場合には、(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度を適切な範囲に調整し易く、粘着剤組成物の接着力を適切な範囲に制御し易くなる。
【0032】
前記アルキル(メタ)アクリレート単量体の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート等(好ましくはメチルアクリレ−ト);メタクリル酸エステル等(好ましくはメチルメタリレート)等が挙げられる。これらの中でも、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレートが好ましく、n−ブチル(メタ)アクリレートがより好ましく、n−ブチルアクリレートがさらに好ましい。
【0033】
なお、アルキル(メタ)アクリレート単量体は、一種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましい組み合わせとしては、少なくともn−ブチル(メタ)アクリレート(好ましくはn−ブチルアクリレート)を用い、更にエチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレートなどを組み合わせて用いる場合が挙げられる。
【0034】
前記アルキル(メタ)アクリレート単量体に由来の構成単位の含有比率は、(メタ)アクリル系共重合体を構成するモノマー由来の構成単位の総質量に対して、一般に50〜99質量%が好ましく、60〜99質量%がより好ましく、70〜99質量%がさらに好ましい。アルキル(メタ)アクリレート単量体の共重合比率が50質量%以上であると、接着性および耐久性に優れる。
【0035】
また、前記カルボキシル基を有する単量体(以下、カルボキシル基含有単量体ともいう。)は、接着性を付与することができる。
カルボキシル基含有単量体としては、カルボキシル基を有すること以外は特に制限はなく、具体的には例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸などの、炭素数3〜5のα,β−不飽和モノ−又はジ−カルボン酸が挙げられる。中でも、アクリル系共重合体の重量平均分子量を制御し易さの観点から、アクリル酸又はメタクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
【0036】
カルボキシル基含有単量体に由来の構成単位の含有比率は、(メタ)アクリル系共重合体を構成するモノマー由来の構成単位の総質量に対して、1質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜20質量%がより好ましく、1質量%〜15質量%がさらに好ましく、3質量%〜10質量%が特に好ましい。カルボキシル基含有単量体の含有量は、30質量%以下であると、耐フクレ性に優れ、また1質量%以上であると、せん断力に優れる。
【0037】
また、(メタ)アクリル系共重合体には、必要に応じて、上記以外の他のモノマー成分として、共単量体を含有させることができる。
共単量体とは、アルキルアクリレート単量体とカルボキシル基含有単量体とは異なる単量体(モノマー)であって、アルキルアクリレート単量体やカルボキシル基含有単量体と共重合可能な単量体である。
【0038】
前記共単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、メタリルアルコール、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート等の水酸基を有する単量体が挙げられる。
【0039】
しかしながら、前記(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有率が2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることが好ましく、実質含まない(例えば、0.1質量%未満)ことが好ましい。
【0040】
前記(メタ)アクリル系共重合体において、水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有率が2質量%以下であると、イソシアネート系架橋剤と架橋する水酸基が減少することで、粘着剤組成物の粘弾性が高くなりすぎるのが抑えられ、耐フクレ性をより向上させることができる。
【0041】
また、その他の共単量体の具体例としては、飽和脂肪酸ビニルエステル(例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、「バーサチック酸ビニル」(商品名)等)、芳香族ビニル単量体(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等)、シアン化ビニル単量体(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、マレイン酸もしくはフマル酸のジエステル(例えば、ジメチルマレート、ジ−n−ブチルマレート、ジ−2−エチルヘキシルマレート、ジ−n−オクチルマレート、ジメチルフマレート、ジ−n−ブチルフマレート、ジ−2−エチルヘキシルフマレート、ジ−n−オクチルフマレート等)挙げられる。
これらその他の共単量体は、本発明の優れた効果を損なわない範囲において含有させることができ、その含有量は、例えば(メタ)アクリル系共重合体を形成するモノマー成分の全量に対して0〜5質量%が好ましく、より好ましくは0〜3質量%、さらに好ましくは0〜1質量%の範囲である。
【0042】
また、共単量体として、分子内に1個のラジカル重合性不飽和基の他に少なくとも1個の官能基を有する単量体(以下、官能性共単量体という。)を用いることができる。このような官能性共単量体としては、官能基として、例えば、アミド基もしくは置換アミド基、アミノ基もしくは置換アミノ基、低級アルコキシル基、エポキシ基、又は珪素含有基等を有する単量体が挙げられる。
【0043】
前記官能性共単量体の具体例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−i−ブトキシメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等のアミド基もしくは置換アミド基含有単量体;例えば、アミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基もしくは置換アミノ基含有単量体;
【0044】
例えば、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−n−ブトキシエチルアクリレート、2−メトキシエトキシエチルアクリレート、2−エトキシエトキシエチルアクリレート、2−n−ブトキシエトキシエチルアクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−n−ブトキシエチルメタクリレート、2−メトキシエトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエトキシエチルメタクリレート、2−n−ブトキシエトキシエチルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート等の低級アルコキシル基含有単量体;
【0045】
例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアリルエーテル、グリシジルメタリルエーテル等のエポキシ基含有単量体;
【0046】
例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリブロモシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、ビニルトリ−i−プロポキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(2−ヒドロキシメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジエトキシシラノール、ビニルエトキシシラジオール、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、2−アクリルアミドエチルトリエトキシシラン等の珪素含有基を有する単量体;
等の単量体群を挙げることができる。
【0047】
官能性共単量体に由来の構成単位の含有比率は、本発明の優れた効果を損なわない範囲において含有させることができ、その含有量は、例えば(メタ)アクリル系共重合体を形成するモノマー成分の全量に対して0.5質量%以下の範囲などとすることが好ましい。
【0048】
さらに、前記共単量体として、必要に応じて、分子内に2個以上のラジカル重合性不飽和基を有する単量体を共重合することも可能である。
このような共単量体の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
このような「分子内に2個以上のラジカル重合性不飽和基を有する共単量体」は、本発明の優れた効果を損なわない範囲において含有させることができ、その含有量は、例えば(メタ)アクリル系共重合体を形成するモノマー成分の全量に対して0.5質量%以下の範囲などとすることが好ましい。
【0049】
(メタ)アクリル系共重合体は、重量平均分子量(Mw)が40万以上140万以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは50万以上80万以下の範囲である。
(メタ)アクリル系共重合体のMwが40万以上であると、凝集力が適切に保たれ、耐久性試験において気泡の発生が抑えられ、またMwが140万以下であると、粘弾性が適切に保たれ、耐フクレ性に優れる。
【0050】
(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、一般に20以下が好ましく、より好ましくは5〜15の範囲である。Mw/Mnの値が20以下であると、凝集力不足などに伴う不都合が生じ難い。
【0051】
前記(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、下記(1)〜(3)の手順にしたがって測定される値である。
【0052】
(1)(メタ)アクリル系共重合体の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で2分間乾燥させ、フィルム状の(メタ)アクリル系共重合体を得る。
(2)前記(1)で得られたフィルム状の(メタ)アクリル系共重合体をテトラヒドロフランにて固形分0.2質量%になるように溶解する。
(3)下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定する。
【0053】
<条件>
・GPC :HLC−8220 GPC〔東ソー(株)製〕
・カラム :TSK−GEL GMHXL 4本使用
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・流速 :0.6ml/min
・カラム温度:40℃
【0054】
また、(メタ)アクリル系共重合体は、そのガラス転移温度(Tg)が−60℃〜−20℃の範囲であることが好ましく、−60℃〜−30℃の範囲であることがより好ましい。Tgが−20℃以下であると、接着面における濡れ性が向上することから接着性がより向上する。またTgが−60℃以上であると、弾性が向上することから高温での耐久性がより向上する。
【0055】
本明細書において、(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、以下の計算により求められるモル平均ガラス転移温度である。
下記式中のTg、Tg、・・・・・及びTgは、単量体成分1、単量体成分2、・・・・・及び単量体成分nそれぞれを単独で用いたときの重合体のガラス転移温度であり、絶対温度(゜K)に換算し算出される。m、m、・・・・・及びmは、それぞれの単量体成分のモル分率である。
【0056】
[ガラス転移温度(Tg)の算出式]
【数1】
【0057】
なお、ここでいう「単独重合体のガラス転移温度(Tg)」には、L.E.ニールセン著、小野木宣治訳「高分子の力学的性質」第11〜35頁に記載されている単量体のガラス転移温度が適用される。
【0058】
−イソシアネート系架橋剤−
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤を含有する。イソシアネート系架橋剤は、前記(メタ)アクリル系共重合体と反応して架橋構造を形成する。
【0059】
前記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、該芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート;それらポリイソシアネートの2量体もしくは3量体、又はそれらポリイソシアネートとトリメチロールプロパンなどのポリオールとのアダクト体などの各種ポリイソシアネートに由来するポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0060】
これらのイソシアネート系架橋剤の中では、トリレンジイソシアネート系化合物が好適に挙げられる。トリレンジイソシアネート系化合物としては、イソシアネートの2量体もしくは3量体、又はイソシアネートとトリメチロールプロパンポリオールとのアダクト体などの各種イソシアネートに由来するトリレンジイソシアネート化合物を用いることができる。
【0061】
前記イソシアネート系架橋剤として、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、日本ポリウレタン工業(株)製の「コロネートL45E」、「コロネートHX」、「コロネートHL−S」、「コロネート2234」等、住友バイエルウレタン(株)製の「スミジュールN75」、「デスモジュールN3400」等、旭化成工業(株)製の「デュラネートE−405−80T」、「デュラネートTSE−100」等、三井武田ケミカル(株)製の「タケネートD−110N」、「タケネートD−120N」、「タケネートM−631N」等、日本カーバイド工業(株)製の「ニッセツCK−101」、「ニッセツCK−203」等、などを好適に使用することができる。
【0062】
特に、イソシアネート系架橋剤の使用量(固形分)は、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部(固形分)に対して、0.05〜5質量部が好ましく、特には0.5〜2質量部の範囲であることが好ましい。
【0063】
−粘着付与剤−
本発明の粘着剤組成物は、軟化点が125℃以下のロジンエステル樹脂と、軟化点が125℃以下のテルペンフェール樹脂とを含有する。
軟化点が125℃以下の粘着付与剤(ロジンエステル樹脂及びテルペンフェール樹脂)を用いることで、粘着剤組成物の粘弾性を適度(耐フクレ性が得られる程度)に保つことできる。結果、ガスの拡散性能を向上させつつ、接着力を高めることができる。
【0064】
特に本発明では粘着付与剤として、(メタ)アクリル系共重合体との相溶性に優れるロジンエステル樹脂と、粘着付与性に優れるテルペンフェノール樹脂とを併用することで、接着力を効果的に向上させている。
【0065】
<ロジンエステル樹脂>
本発明の粘着剤組成物には、軟化点が125℃以下のロジンエステル樹脂を含有する。
ロジンエステル樹脂は、ロジンの主成分であるアビエチン酸などのロジン酸をエステル化した樹脂である。具体的にロジンエステル樹脂としては、アビエチン酸を、メチルエステル化、エチルエステル化、又はグリセリンエステル化したものが挙げられる。これらロジンエステル樹脂は、それぞれ一種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0066】
ロジンエステル樹脂の軟化点は125℃以下であり、ガスの拡散性能をより向上させる観点から、120℃以下であることが好ましく、115℃以下であることがより好ましい。
【0067】
また、ロジンエステル樹脂の軟化点は90℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。軟化点が90℃以上のロジンエステル樹脂を用いることで、粘着剤組成物の粘弾性を適度に保つことができるため、耐フクレ性をより向上させることができる。また、高温時の接着力も向上させることができる。
【0068】
なお、ロジンエステル樹脂の軟化点は、後述するテルペンフェノール樹脂の軟化点よりも低いことが好ましい。ロジンエステル樹脂はテルペンフェノール樹脂に比べて、経時変化しやすく、ロジンエステル樹脂を含有する粘着剤層は耐フクレ性が経時的に低下しやすい傾向にある。特に軟化点の高いロジンエステル樹脂において経時変化しやすい傾向がある。そこで、ロジンエステル樹脂の軟化点をテルペンフェノール樹脂の軟化点よりも低くすることにより、(メタ)アクリル系共重合体との相溶性に優れるロジンエステル樹脂を用いた上で、経時変化を抑えることができる。
【0069】
具体的には、ロジンエステル樹脂の軟化点は、テルペンフェノール樹脂の軟化点よりも、5℃以上低いことが好ましく、10℃以上低いことがより好ましく、15℃以上低いことがさらに好ましい。
【0070】
前記ロジンエステル樹脂およびテルペンフェノール樹脂の軟化点は、熱機械分析装置(TMA)によって測定することができる。
【0071】
ロジンエステル樹脂の水酸基価は20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましく、16以下であることが更に好ましい。ロジンエステル樹脂の水酸基価を20以下とすることで、前記イソシアネート系架橋剤と架橋する水酸基量が減少し、粘着剤組成物により形成された粘着剤層の粘弾性が高くなりすぎるのが抑えられ、結果、耐フクレ性を向上させることができる。
【0072】
ロジンエステル樹脂の水酸基価は、JIS K0070−1992に定められた方法(電位差滴定法)に準じて測定した値を採用する。
【0073】
ロジンエステル樹脂として、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、スーパーエステルE−720、スーパーエステルE−730−55、スーパーエステルA−18、スーパーエステルA−75、スーパーエステルA−100、スーパーエステルA−115、スーパーエステルA−125、スーパーエステルT−125、エステルガムAAG、エステルガムAAL、エステルガムA、エステルガムAAV、エステルガム105、エステルガムH、エステルガムHP、ペンセルA、ペンセルAZ、ペンセルC、ペンセルD−125(以上全て商品名、荒川化学工業株式会社製)を挙げることができる。
【0074】
ロジンエステル樹脂の使用量(固形分)は、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部(固形分)に対して、5〜30質量部が好ましく、10〜25質量部がより好ましく、12〜25質量部がさらに好ましい。
【0075】
なお、本発明の粘着剤組成物において、前記ロジンエステル樹脂は、後述するテルペンフェノール樹脂よりも多く含有させることが好ましい。前述の通り、ロジンエステル樹脂の軟化点は、テルペンフェノール樹脂の軟化点よりも低いことが好ましいことから、軟化点が高い成分であるテルペンフェノール樹脂の方を少なくすることで、粘着剤組成物の粘弾性が高くなりすぎるのが抑えられる。また、ロジンエステル樹脂の含有量を多くすることで、(メタ)アクリル系共重合体との相溶性がより向上し、耐フクレ性をより向上させることができる。
【0076】
具体的に、本発明の粘着剤組成物において、ロジンエステル樹脂とテルペンフェノール樹脂との含有比率(ロジンエステル樹脂:テルペンフェノール樹脂)は、質量基準で、51:49〜90:10であることが好ましく、53:47〜80:20であることがより好ましく、55:45〜70:30であることがさらに好ましい。
【0077】
−テルペンフェノール樹脂−
本発明の粘着剤組成物には、軟化点が125℃以下であるテルペンフェノール樹脂を含有する。
テルペンフェノール樹脂は、テルペン類とフェノールとをBF3、AlCl3のようなフリーデルクラフト触媒の存在下で、水素の移動により不均一付加反応で合成することができる。
【0078】
前記テルペンフェノール樹脂の原料であるテルペン類の具体例としては、モノテルペンとしてα−ピネン、ジテルペンとしてカンホレン、モノテルペンのアルコールとしてボルネオール、ジテルペンのアルコールとしてヒノキトール、さらにケトン類としてスギオール等が挙げられる。なお、前記テルペン類は、1種単独で用いてもよく、また2種以上を併用してフェノールとの重合物を作製してもよい。
【0079】
前記テルペンフェノール樹脂の原料であるフェノール類の具体例としては、クレゾール、ジオキシナフタレン、アルキルフェノール、ハロゲン化フェノール、アリルフェノール、ポリクレゾール等が挙げられる。なお、前記フェノール類は、1種単独で用いてもよく、また2種以上を併用して前記テルペンフェノール樹脂を合成してもよい。
【0080】
テルペンフェノール樹脂の軟化点は125℃以下であり、ガスの拡散性能をより向上させる観点から、120℃以下であることが好ましく、115℃以下であることがより好ましい。
【0081】
また、テルペンフェノール樹脂の軟化点は90℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。軟化点が90℃以上のテルペンフェノール樹脂を用いることで、粘着剤組成物の粘弾性を適度に保つことができるため、耐フクレ性をより向上させることができる。また、高温時の接着力も向上させることができる。
【0082】
前記テルペンフェノール樹脂として、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、YSポリスターU115、YSポリスターT80、YSポリスターT100、YSポリスターT115、マイティエースG125、YSポリスターN125、YSポリスターK125、YSポリスターUH115(商品名;以上全てヤスハラケミカル社製)が好適に挙げられる。これらテルペンフェノール樹脂は、それぞれ一種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0083】
テルペンフェノール樹脂の使用量(固形分)は、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部(固形分)に対して、5〜30質量部が好ましく、10〜25質量部がより好ましく、12〜25質量部がさらに好ましい。
【0084】
−その他の添加剤−
本発明の粘着剤組成物には、以上述べた(メタ)アクリル系共重合体、イソシアネート系架橋剤、ロジンエステル樹脂、テルペンフェノール樹脂の他に、必要に応じて、粘着剤組成物に通常配合される配合物、例えば、耐候性安定剤、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機充填剤などを、必要特性を満足し得る範囲で適宜配合することができる。この場合の配合割合は、粘弾性のバランスを大きく崩さない範囲内であることが好ましい。
【0085】
−ゲル分率−
本発明の粘着剤組成物では、前記(メタ)アクリル系共重合体と前記イソシアネート系架橋剤との間で架橋構造が形成された後のゲル分率は、10質量%〜30質量%であり、10〜25質量%であることが好ましい。粘着剤組成物中におけるゲル分率が10質量%〜30質量%の範囲内であると、被着体と粘着剤層との間にガスを拡散させ、そしてガスを外部へ排出する機能が効果的に奏される。
【0086】
粘着剤組成物中における前記「ゲル分率」は、下記(1)〜(17)の手順に従い測定される値である。
(1)粘着剤組成物を100μmの厚さのPETフィルムセパレーター(剥離紙)上に塗布し、室温で30分間風乾した後、100℃で5分間本乾燥させ、粘着剤層を形成し、セパレーター付き粘着剤層を得る。
(2)得られたセパレーター付き粘着剤層を23℃、相対湿度65%の条件にて10日間養生する。その後、セパレーター付き粘着剤層を75mm×75mmの大きさに切り出す。切り出されたサンプルの粘着剤層の重さは、概ね0.2g程度となる。
【0087】
(3)250メッシュ(線径0.03mm、目開き72μm、ステンレス製)の金属金網を用意し、金属金網を100mm×100mmの大きさに切り出す。
(4)上記金属金網は酢酸エチルで脱脂した後、乾燥させる。脱脂、乾燥後の金属金網は、デシケーター内に保管する。また、金属金網の端部の解れは、測定誤差の原因となるため、予め取り除く。
(5)金属金網の質量を正確に測定する。この質量をAとする。
【0088】
(6)金属金網の中央に、75mm×75mmの大きさに切り出した(2)のセパレーター付き粘着剤層を貼り付けた後、粘着剤層からPETフィルムセパレーターを剥がし取る。なお、粘着剤層の金属金網への貼付は、後述の(7)〜(9)の工程により金属金網を折り畳んだ後の面内において粘着剤層が配置される位置となるように行う。
(7)金属金網は、フィルム状の粘着剤層を貼り付けた面を内側にして、奥側の辺から手前側に半分に折り畳む。
(8)半分に折った金属金網(手前側に端部が2辺ある)の手前側3分の1を奥側に折りたたみ、さらに奥側3分の1を手前側に折り畳む(縦方向を100mmの6分の1に折り畳み、横方向は折り畳んでいない状態)。
(9)上記金網を左から3分の1の部位で右側に折り畳み、同様にして右から3分の1の部位で左側に折り畳む。これを試料1とする。試料1では、元の金属金網の大きさから、縦方向が6分の1に折り畳まれ、横方向が3分の1に折り畳まれている。
(10)上記の試料1の質量を正確に測定する。この質量をBとする。
【0089】
(11)試料1の折り目が開かないようにホッチキスで留める。これを試料2とする。試料2の質量を測定する。この質量をCとする。
(12)粘着剤組成物の1種類につき、ゲル分率測定用の試料2を2個作製する。
【0090】
(13)試料2を、酢酸エチル80gを入れたガラス瓶に入れ、蓋をする。
(14)試料2を入れたガラス瓶を23℃、相対湿度65%の条件にて3日間放置する。
(15)試料2をガラス瓶から取り出し、酢酸エチルで簡単に洗浄する。
(16)試料2を120℃で24時間乾燥した後、質量を正確に測定する。これをDとする。
【0091】
(17)下式によりゲル分率を計算する。
ゲル分率[質量%] = (D−(A+(C−B)))/(B−A)×100
【0092】
<再帰反射シート>
本発明の再帰反射シートは、再帰反射層と、前記粘着剤組成物により形成された粘着剤層とを有する。前記粘着剤層は、本発明の粘着剤組成物が架橋剤と反応して形成された架橋構造を含んでいる。本発明の再帰反射シートは、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えているので、再帰反射シートの膨れが防止され、被着体である基板と良好に接着する。
【0093】
本発明の再帰反射シートの実施形態の一例を図1に示す。図1は、本発明の再帰反射シートの一例として封入レンズ型再帰反射シートの構成例を示す概略断面図である。
この封入レンズ型再帰反射シート1は、図1に示すように、表面保護層10と、微小なガラス球12と、ガラス球12を保持する保持層11と、ガラス球12の焦点位置を調整する焦点層13と、ガラス球12の焦点位置に配置された鏡面反射層14(金属蒸着層)と、粘着剤層15と、を積層した構成となっている。なお、本実施形態の封入レンズ型再帰反射シートの再帰反射層とは、ガラス球12と焦点形成層13と鏡面反射層14とを有する層のことである。
【0094】
なお、図1では封入レンズ型再帰反射シートについて説明したが、再帰反射シートとしては特に制限されず、オープンレンズ型再帰反射シート、カプセルレンズ型再帰反射シート、キューブコーナー型再帰反射シート等、いずれの形態の再帰反射シートであってもよい。その場合、再帰反射層とは、光を光源に向けて再帰反射させるための単層又は複層のことである。オープンレンズ型再帰反射シート、カプセルレンズ型再帰反射シートの場合は、ガラス球と鏡面反射層とを有する層のことである。また、キューブコーナー型再帰反射シートの場合は、キューブコーナー素子層と空気層(あるいは鏡面反射層(金属蒸着層))とを有する層のことである。
【0095】
そして、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、基材から発生したガスの拡散性に優れることから、一般的にガスが外部に放出され難いとされている金属蒸着層を備えた再帰反射シートにも好適に用いることができる。
【0096】
再帰反射シートの製造方法の一例を説明する。再帰反射シートは、例えば、下記(1)〜(7)の手順により製造することができる。
(1)フィルム状の工程基材に表面保護層形成用樹脂配合液を塗工乾燥して、表面保護層を形成する。
(2)保持層形成用樹脂配合液を表面保護層に塗工乾燥して、保持層を得る。
(3)保持層にガラス球を付着させた後、熱処理をして、ガラス球を保持層中に沈める。
(4)焦点層形成用樹脂配合液を保持層及びガラス球に塗工乾燥して、焦点層を形成する。
(5)焦点層にアルミニウムを真空蒸着し、鏡面反射層を得る。以下、ここまでの工程により得られたものを中間製品という。
(6)別途、粘着剤組成物の溶液を工程基材に塗工し乾燥して粘着剤層を形成し、工程基材および粘着剤層が積層した粘着剤シートを得る。
(7)中間製品の鏡面反射層と粘着剤シートの粘着剤層とが接するように貼り合わせ後、養生して、封入レンズ型の再帰反射シートを得る。
【0097】
なお、市販品として、表面保護層、保持層、ガラス球、焦点層、鏡面反射層の順に積層された封入レンズ型の再帰反射シートの中間製品を用いてもよく、この中間製品に前記粘着剤組成物により形成された粘着剤層を設けてもよい。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0099】
[材料の準備]
<(メタ)アクリル系共重合体の製造>
(製造例1):(メタ)アクリル系共重合体1の製造
攪拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、温度計を備えた反応装置に、アクリル酸ブチル(BA)99部及びアクリル酸(AA)1部からなる単量体混合物のうちの25質量%、酢酸エチル45部、及び重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.01部を加えて加熱し、還流温度で約20分間重合を行った。次いで還流温度条件下で前記単量体混合物の残量75質量%と、酢酸エチル13部及びアゾビスイソブチロニトリル0.13部からなる重合開始剤溶液とを約120分にわたって逐次滴下した。更に80分後、トルエン15部及びアゾビスイソブチロニトリル0.32部を約60分にわたって逐次滴下し、更に90分間重合反応を行った。反応終了後、トルエンにて希釈し、重量平均分子量62万の(メタ)アクリル系共重合体を得た。
【0100】
(製造例2〜5):(メタ)アクリル系共重合体2〜5の製造
製造例1において、アクリル酸ブチル(BA)及びアクリル酸(AA)の配合量比率を下記表1の実施例2〜5に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様にして、(メタ)アクリル系共重合体2〜5の溶液を得た。
【0101】
(製造例6):(メタ)アクリル系共重合体6の製造
製造例1において、アクリル酸ブチル(BA)及びアクリル酸(AA)を用いたところを、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸メチル(MA)及びアクリル酸(AA)を用い、これらの配合比率を下記表1の実施例6に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様にして、(メタ)アクリル系共重合体6の溶液を得た。
【0102】
(製造例7):(メタ)アクリル系共重合体7の製造
製造例1において、アクリル酸ブチル(BA)及びアクリル酸(AA)を用いたところを、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸(AA)、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)を用い、これらの配合比率を下記表1の実施例8に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様にして、(メタ)アクリル系共重合体7の溶液を得た。
【0103】
上記で得られた(メタ)アクリル系共重合体1〜7の単量体組成、並びにTg及びMwの値を下記表1に示す。
【0104】
[粘着剤溶液の調製]
(実施例1)
以下の手順にしたがって、粘着剤溶液(粘着剤組成物)を調製した。
上記(メタ)アクリル系共重合体1の溶液(固形分44.6質量%)75部、トルエン・酢酸エチル1:1の割合の液で溶解した50質量%テルペンフェノール樹脂(YSポリエスターT−115、ヤスハラケミカル社製)10部、及びトルエン・酢酸エチル1:1の割合の液で溶解した50質量%ロジンエステル樹脂(スーパーエステルA−100、水酸基価:16、荒川化学工業株式会社製)15部を添加し十分に攪拌して、固形分46質量%、粘度10400mPa・sの中間溶液を得た。
上記中間溶液にイソシアネート系架橋剤(ニッセツCK−101、日本カーバイド工業(株)社製、固形分45質量%、)を1.11部配合し、十分に攪拌して、粘着剤溶液(粘着剤組成物)を得た。
【0105】
(実施例2〜11、比較例1〜5)
実施例1の粘着剤溶液(粘着剤組成物)の調製方法と同様にして、但し、(メタ)アクリル系共重合体、テルペンフェノール樹脂及びロジンエステル樹脂の種類及び/又は配合量を下記表1に示すように変更して、実施例2〜11、比較例1〜5の粘着剤溶液(粘着剤組成物)を調製した。ここで使用したテルペンフェノール樹脂及びロジンエステル樹脂の詳細を下記に示す。
【0106】
・テルペンフェノール樹脂:YSポリエスターT−100、ヤスハラケミカル社製
・テルペンフェノール樹脂:YSポリエスターT−130、ヤスハラケミカル社製
・ロジンエステル樹脂:ペンセルAZ、水酸基価:60、荒川化学工業株式会社製
・ロジンエステル樹脂:スーパーエステルA−75、水酸基価:15、荒川化学工業株式会社製
【0107】
[ゲル分率の測定]
各実施例で調製した粘着剤溶液の各々について、上述の測定方法に従い、ゲル分率を算出した。
【0108】
[再帰反射シートの製造]
表面保護層、保持層、ガラス球、焦点層、鏡面反射層の順に積層された封入レンズ型の再帰反射シートの中間製品(日本カーバイド工業株式会社製、CLPグレード T4500シリーズ)を準備した。
【0109】
別途、上記調製した粘着剤溶液(粘着剤組成物)を工程基材(厚さ180μmの剥離紙)に塗工し乾燥して粘着剤層を形成し、工程基材(セパレータ)および粘着剤層が積層した粘着剤シートを得た。
【0110】
中間製品の鏡面反射層と粘着剤シートの粘着剤層とが接するように貼り合わせ後、温度23℃、湿度65%RHに調節された環境下に10日間養生して、封入レンズ型の再帰反射シートを得た。
【0111】
[耐フクレ性の評価]
アウトガスを発生する被着体(ABS樹脂製の厚さ3mmの平板、Arrow Plastics manufacture社製;又はポリスチレン(PS)樹脂製の厚さ3mmの平板、Goodfish Ltd manufacture社製)に、上記で作製した再帰反射シートを貼付し、耐フクレ性について評価した。耐フクレ性の評価は、下記(1)〜(16)の手順に従って行った。
【0112】
(1)被着体として、樹脂製の平板(ABS製又はPS製、ともに520mm×111mm)を、アクリルカッターで130mm×111mmの大きさに切断した。以下、これを樹脂板と称する。
【0113】
(2)上記で作製した再帰反射シートを120mm×100mmの大きさにカッターナイフで切断した。
【0114】
(3)上記(2)の上記で作製した再帰反射シートの裏面からセパレーターを剥離し、ハンドローラーを軽く押し付けながら空気を巻き込まないように、再帰反射シートの粘着剤層を介して、(1)の樹脂板の表面に貼付した。その後ハンドローラーを数往復させて、再帰反射シートを樹脂板に密着させた。再帰反射シートが樹脂板からはみ出した場合は、カッターナイフではみ出した部分を切除した。
【0115】
(4)別途、粘着剤LP−30CD(日本カーバイド工業株式会社製)が片面に塗工され、その面の上にセパレーターを備えたPETフィルム(PETフィルムの厚み75μm、リンテック株式会社製)を準備した。このPETフィルムの片面のセパレーターを剥離し、ハンドローラーを軽く押し付けながら空気を巻き込まないように、(3)の再帰反射シートにおける表面保護層の上に貼付した。その後ハンドローラーを数往復させて、PETフィルムを再帰反射シートに密着させた。PETフィルムが樹脂板からはみ出した場合は、カッターナイフではみ出した部分を切除した。このPETフィルム、再帰反射シート、樹脂板の順に積層された積層体を、積層体1と称する。
【0116】
(5)積層体1を、温度23℃、湿度50%RHに調節された環境下に24時間養生した。
【0117】
(6)上記(5)の積層体1の最外面のPETフィルムを剥離して粘着剤LP−30CDの塗工層を露出させ、ここに、オーバーラミPETフィルム(PETフィルムの厚み72μm、住友スリーエム株式会社製)を、ハンドローラーを軽く押し付けながら空気を巻き込まないように貼付した。その後ハンドローラーを数往復させて、オーバーラミPETフィルムを積層体1に密着させた。オーバーラミPETフィルムには白色の保護フィルムが貼付してあるが、粘着剤LP−30CDの塗工面と貼付する面は白色の保護フィルムのない側の面である。
【0118】
(7)上記(6)のオーバーラミPETフィルムに貼付してある白色保護フィルムを手で剥離した。そして、オーバーラミPETフィルム側から樹脂板に達する深さで、外周部約2mm内側をカッターナイフで溝を切った。溝を切る処置は、貼付した反射シートの4辺全てで行った。この溝が切られた積層体を積層体2と称する。
上記溝の形成により、樹脂板端部から再帰反射シートが外的要因等で剥離したとしても、溝より外周部での剥離に留まる。よって、耐フクレ性の評価において、外的要因による剥離の影響が抑えられる。
【0119】
(8)上記(7)の積層体2を、温度23℃、湿度50%RHに調節された環境下に24時間養生した。
【0120】
(9)内部の実温が70℃に調節された乾燥機の中に、積層体2が垂直となるように設置し、24時間加熱乾燥した。この場合、積層体2の加熱乾燥条件に影響のない範囲で、垂直を保持できる適切な治具を用いてもよい。
【0121】
(10)24時間が経過したら、積層体2を乾燥機から取り出し、温度23℃、湿度50%RHに調節された環境下に1時間置いて徐冷した。
【0122】
(11)上記(10)の積層体2をオーバーラミPETフィルム側が上になるように、机上に水平に置いた。その真上には天井に設置された蛍光灯等の光源があるのが望ましい。
(12)机上に置かれた積層体2に、天井の蛍光灯等の光源の形が写り込むような角度に観察者が移動し、机上に置かれた積層体2に対して、概ね上方斜め45度付近からの観察を行った。
【0123】
(13)上記(12)の状態に置かれた積層体2の表面を観察し、4段階の基準で耐フクレ性を評価した。耐フクレ性の評価は、積層体2のオーバーラミPETフィルム側の表面120mm×100mmの範囲で観察し、評価基準は下記のように分類した。耐フクレ性が良好な順に、◎、○、△、×とする。
【0124】
(耐フクレ性の評価基準)
◎:フクレや凹みが全く観察されない。
○:凹みが1ないし2個観察される。
△:凹みが3個以上観察される。
×:観察範囲全体が、ユズ肌状にうねっている。
【0125】
(15)なお、耐フクレ性の評価試験では、粘着シート以外からもたらされる外的ばらつき要因をできるだけ省く観点から、実施例1〜11、比較例1〜5のサンプルを同時期に評価し、且つ上記樹脂板は同一の製造ロットのものを用いた。
(16)また、目視による観察結果を記録として残すために、デジタルカメラ等での撮影も行った。この際、目視によって観察した角度とデジタルカメラ等で撮影する角度をできるだけ揃えた。また、同時期に撮影する試料ごとの撮影角度もできるだけ揃えた。
【0126】
[接着力の測定]
接着力の測定は、下記(1)〜(4)の手順に従い行った。
(1)被着体であるABS樹脂板(厚さ3mmの平板、Arrow Plastics manufacture社製)を100mm×150mmの大きさに切断した。
(2)上記で作製した再帰反射シートを25mm×150mmの大きさにカッターナイフで切断した。
(3)上記(2)の再帰反射シートを、温度23℃、湿度50%RHに調節された環境下において、2kg重ローラーを2往復して上記(1)のABS樹脂板に150mmのうちの75mmの長さまで圧着し、24時間放置した。試験片は2枚作製した。
【0127】
(4)テンシロン万能引張り試験機(オリエンテック製、RTA−100)を用い、温度23℃、湿度50%RHに調節された環境下において、100mm/分の速度で引っ張って、90度引き剥がし接着力を測定した。接着力の評価基準は、下記のように分類した。接着力が良好な順に、◎、○、△、×とする。なお、作製した2枚の試験片について、接着力を測定し、その平均値を求めた。
【0128】
[接着力の評価基準]
◎:接着力が11N/25mm以上。
○:接着力が5.5N/25mm以上11N/25mm未満。
△:接着力が2.8N/25mm以上5.5N/25mm未満。
×:接着力が2.8N/25mm未満。
【0129】
[せん断力の測定]
せん断力の測定は、下記(1)〜(4)の手順に従い行った。
(1)被着体であるABS樹脂板(厚さ3mmの平板、Arrow Plastics manufacture社製)を30mm×50mmの大きさに切断した。
(2)上記で作製した再帰反射シートを25mm×50mmの大きさにカッターナイフで切断した。
(3)上記(2)の再帰反射シートを、温度23℃、湿度50%RHに調節された環境下において、2kg重ローラーを2往復して上記(1)のABS樹脂板に50mmのうちの12.5mmの長さまで圧着し、24時間放置した。試験片は、2枚作製した。
【0130】
(4)テンシロン万能引張り試験機(エー・アンド・デイ製、RTG−1310)を用い、0.05mm/分の速度で引っ張って、180度せん断力を測定した。測定温度条件は、温度23℃、湿度50%RHに調節された環境下、恒温槽設定温度70℃の2通りとした。恒温槽設定温度70℃の測定では、試験片を恒温槽内に設置した後、5分間なじませて測定を開始した。せん断力の評価基準は、下記のように分類した。せん断力が良好な順に、◎、○、△、×とする。なお、作製した2枚の試験片について、せん断力を測定し、その平均値を求めた。
【0131】
[せん断力の評価基準]
(測定温度23℃)
◎:せん断力が18N/25mm以上。
○:せん断力が9.0N/25mm以上18N/25mm未満。
△:せん断力が4.5N/25mm以上9.0N/25mm未満。
×:せん断力が4.5N/25mm未満。
【0132】
(測定温度70℃)
◎:せん断力が6.2N/25mm以上。
○:せん断力が3.1N/25mm以上6.2N/25mm未満。
△:せん断力が1.6N/25mm以上3.1N/25mm未満。
×:せん断力が1.6N/25mm未満。
【0133】
【表1】
【0134】
上記表1に示すように、実施例では、耐フクレ性に優れ、且つ樹脂板に対して良好な接着性を示した。
【符号の説明】
【0135】
1 再帰反射シート
10 表面保護層
11 保持層
12 ガラス球
13 焦点層
14 鏡面反射層
15 粘着剤層
図1