(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワイヤーが巻き付けられたリールと、前記リールを当該リールの軸方向の一方から把持する第1の把持手段と、他方の側から把持する第2の把持手段とを備え、前記第1及び第2の把持手段のうちの一方の把持手段により把持されたリールを他方の把持手段に受け渡すリール受け渡し機構であって、
前記第1及び第2の把持手段は、
前記リール側に位置する前アームと、前記リール側とは反対側に位置し前記前アームの延長方向と交差する方向に延長する後アームと、前記前アームと前記後アームとを連結する連結部とを備えた複数の係合部材と、
前記複数の係合部材の前記前アームの先端部を、複数の係合部材間の中心から前記中心とは反対方向に付勢する付勢手段と、
前記前アームの前記リール側に設けられた係合凸部と、
前記連結部に設けられて前記係合部材を回転自在に支持する支持軸と、
前記後アームに回転トルクを与える回転手段とを備え、
前記リールは、
当該リールの中心軸に設けられる円筒状の軸部材と、
前記軸部材に回転可能に取付けられたリール本体と、
前記軸部材の前記第1及び第2の把持手段側にそれぞれ形成されて当該軸部材の内周側で前記係合凸部と係合する係合凹部とを備え、
前記回転手段は、
シリンダ装置と、
前記シリンダ装置のロッドの先端に取付けられて、前記係合部材の後アームの前記係合部材間の中心側にそれぞれ当接する当接部材としてのピン部材、ローラ、もしくは、カムフォロアとを備え、
前記係合凸部と前記係合凹部との係合の解除、もしくは、前記係合凸部と前記係合凹部との係合及び係合の解除を行うことを特徴とするリール受け渡し機構。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
実施の形態1.
図1〜
図3は本実施の形態1を示す図で、
図1はリール受け渡し機構を示す図、
図2は把持手段の詳細を示す図、
図3はリール受け渡し機構の要部斜視図である。
リール受け渡し機構1は、ワイヤー2が巻き付けられたリール10と第1及び第2の把持手段20R,20Lとを備える。
以下、
図1の一点鎖線で示すリール10の軸線方向を左右方向、紙面に垂直な方向を前後方向、同図の上下方向を上下方向とし、リール10の外側で、かつ、リール10の右側に設置される把持手段20Rを第1の把持手段、左側に設置される把持手段20Lを第2の把持手段という。第1及び第2の把持手段20R,20Lは、同一構成で、リール10の軸線の延長方向に互いに対向するように配置される。
【0015】
リール10は、リール本体11と、軸部材12と、カバー部材13と、ワイヤーガイド14と、ブレーキ機構15とを備える。
リール本体11は、ワイヤー2が巻き付けられる外側円筒部111と外側円筒部111の両側に設けられた一対のフランジ部112とを備えたワイヤー収納部11aと、軸部材12に回転可能に取付けられる内側円筒部11bと、ワイヤー収納部11aと内側円筒部11bと連結する複数のスポーク11cとを備える。
軸部材12はリール10の中心軸に設けられる円筒状の部材で、第1の把持手段20R側の上,下と第2の把持手段20L側の上,下とには係合凹部としての上面視四角形の貫通孔12hがそれぞれ形成されている。また、軸部材12の両端側には、端部側では径が大きく中央部に向かうにしたがって径が小さくなる案内用の斜面部12kが形成されている。
なお、係合凹部としては、必ずしも貫通孔である必要はなく、穴部であってもよい。
また、貫通孔12hもしくは前記穴部の形状は四角形に限るものではなく、係合部材22P,22Qの後述する係合凹部形状に合わせて適宜決定すればよい。
カバー部材13は、軸部材12の一方の端部に取付けられる中空円板状のカバーフランジ13aと、カバーフランジ13aの径方向外側に取付けられてワイヤー収納部11aの径方向外側を覆う円弧状のリールカバー13bとを備える。
【0016】
ワイヤーガイド14は、ワイヤー収納部11aから引き出されたワイヤー2をリール10の外部に案内するための案内孔14hが設けられた板状の部材で、リールカバー13bの内周側に取付けられる。本例では、ワイヤー2が通過する案内孔14hの周囲に3個のベアリング14jを正三角形状に配置することで、ワイヤー2の位置決めを精度良く行うようにしている。
ブレーキ機構15は、軸部材12の一方の端部側に設けられたブレーキディスク15aと押し付け手段15bとを備える。
ブレーキディスク15aは、リール本体11の内側円筒部11bの軸方向端部側に対向するように軸部材12に取り付けられて、押し付け手段15bにより内側円筒部11bに押し付けられることで、ワイヤー2のテンションを付与する。
押し付け手段15bとしては、例えば、ボールプランジャ151とリニアアクチュエータ152とにより構成することができる。具体的には、ブレーキディスク15aにボールプランジャ151のボールを収納する穴部を設けるとともに、カバー部材13にリニアアクチュエータ152を取付け、このリニアアクチュエータ152のロッドの先端にボールプランジャ151を上下動可能に取り付ける。ブレーキをかけない状態では、ボールプランジャ151は伸長した状態にあり、ボールはブレーキディスク15aの穴部に収納されている。リール本体11にブレーキをかけるときには、ボールプランジャ151を、リニアアクチュエータ152を用いて同図の下側に移動させる。これにより、ボールプランジャ151のボールが穴部から出るので、ボールに連結されたバネがボールをブレーキディスク15a側に付勢し、リール本体11にブレーキディスク15aが押し付けられる。したがって、リール10から引き出されるワイヤー2にテンションを加えることができる。なお、ボールプランジャ151を左右方向に移動させる機構を追加して、ワイヤー2に加えるテンションの大きさを段階的に調整してもよい。
【0017】
第1及び第2の把持手段20R,20Lは、それぞれ、案内部材21と、一対の係合部材22P,22Qと、バネ部材23と、回転手段24と、取付板25と、移動手段26とを備える。
案内部材21は、内部に係合部材22P,22Qと回転手段24とを収納する先端側が肉厚な中空円筒状の部材で、リール10側の上下には後述する係合凸部22bを案内部材21の外側に突出させるための孔21hが設けられ、リール10とは反対側の端部には取付フランジ21pが設けられている。案内部材21は、取付フランジ21pを介して、取付板25に固定されている。
係合部材22Pは、
図4、5に示すように、紙面に垂直な方向である前後方向からみた時の形状がくの字状の回転片22aと、回転片22aのリール10側である先端側から上側に突出するように設けられた係合凸部22bと、ピン状の支持軸22cとを備える。
回転片22aは、リール10側に位置する前アーム221とリール側10とは反対側に位置し前記前アームの延長方向と交差する方向に延長する後アーム222と、前アーム221と後アーム222の下側に形成された案内溝223と、前アーム221の下側に形成されてバネ部材23の一端を収納して固定するバネ取付穴224とを備え、前アーム221と後アーム222との連結部である当該回転片22aの屈曲部において、支持軸22cに回転自在に取付けられる。
係合凸部22bはブロック状の部材で、リール10側には突出高さがリール10側で小さくなる斜面部22kが形成されている。
支持軸22cは、案内部材21の内壁側にて、案内部材21に固定される。
係合部材22Qは係合部材22Pと同一構成で、係合部材22Pと、案内部材21の軸線を通り
図1の紙面に垂直な面に対して対称に取付けられる。すなわち、係合部材22Qは、バネ取付穴224が上側に開口し、係合凸部22bが下側に突出するように案内部材21の内側に設けられる。
また、一対の係合部材22P,22Qはバネ部材23により連結されている。このバネ部材23は自然長から圧縮された状態で係合部材22P,22Qに取付けられる。これにより、係合部材22P,22Qの先端部は係合部材22P,22Qの中心から前記中心とは反対方向に付勢される。具体的には、係合部材22P,22Qは、常に、前アーム221同士が支持軸22cの周りに互いに逆方向に回転して離れる方向に付勢されている状態となる。
【0018】
回転手段24は、シリンダ装置であるエアシリンダ24aと、エアシリンダ24aのシリンダロッド242の先端に取付けられた支持ブロック24bと、この支持ブロック24bのリール10側に設けられた当接部材としての一対のカムフォロア24cとを備える。
エアシリンダ24aのシリンダ本体241は、案内部材21が取付けられる取付板25の裏面側(リール10とは反対側)に固定される円筒状のシリンダ収納部材24dの内部に収納・固定される。
カムフォロア24cは、それぞれの外輪部が係合部材22Pの回転片22aに形成された案内溝223と係合部材22Qの回転片22aに形成された案内溝223とにそれぞれ当接して、回転片22aの回転角度を規制する。
具体的には、シリンダロッド242が伸長して、カムフォロア24cが回転片22aの屈曲部の案内溝223に位置しているときには、前アーム221の延長方向が案内部材21の軸線方向と一致する。すなわち、係合部材22Pの回転片22aの前アーム221と係合部材22Qの回転片22aの前アーム221とがともに水平な状態にある。この状態では、係合部材22Pの回転片22aの前アーム221と係合部材22Qの回転片22aの前アーム221とがリール10側において最も離れた状態になる。
以下、この状態を「開状態」という。
一方、シリンダロッド242が縮小して、カムフォロア24cが案内溝223の後アーム222側に位置しているときには、回転片22aの前アーム221が案内部材21の中心方向へ傾いた状態となる。カムフォロア24cが案内溝223の後端部に位置したときには、前アーム221の傾きが最大で、係合部材22Pの回転片22aと係合部材22Qの回転片22aとがリール10側においてほぼ当接する。
以下、この状態を「閉状態」という。
【0019】
移動手段26は、固定台26aと、取付板25を固定して固定台26a上を移動する移動台26bと、固定台26aと移動台26bをリール10の軸線方向に沿って移動させる移動機構とを備える。
本例では、移動機構としては、例えば、固定台26a上に設置されてリール10の軸線方向である左右方向に延長するガイドレール261と、移動台26bに設けられてガイドレール261に沿ってスライドするガイド部材262と、ガイド部材262をスライドさせる周知のスライド機構263を用いた。スライド機構263としては、ボールネジを用いたものや、ラックピニオン機構などの周知のスライド機構を用いることができる。ボールネジを用いた場合には、ボールネジの雄ネジ263aの一端を固定台26aのリール10側に取付けた固定板263bに固定し、他端を固定台26aのリール10側とは反対側に設置したモータ263cに取付けるとともに、図示しない雌ネジをガイド部材262に固定する構成とすればよい。
【0020】
次に、リール受け渡し機構1の把持動作と把持解除動作について説明する。
なお、
図1に示すように、リール10は、リール10の軸方向左側に設置された第2の把持手段20Lにより把持され、リール10の軸方向右側に設置された第1の把持手段20Rは、リール10から離れた位置に待機しているものとする。
この状態においては、
図2に示すように、第1の把持手段20Rの係合部材22P,22Qは「開状態」にある。すなわち、シリンダロッド242は伸長した状態にあり、カムフォロア24cは案内溝223の前アーム221側に位置している。なお、バネ部材23は、係合部材22P,22Qの前アーム221同士を更に開く方向に付勢しているが、前アーム221は、案内部材21の内壁に当接しているので、係合部材22Pの回転片22aと係合部材22Qの回転片22aとがともに水平な状態よりも開くことはない。
以下、リール10を、当該リール10の軸方向右側に設置された第1の把持手段20Rで把持する動作について、
図4を参照して説明する。なお、前述したように、係合部材22Qは、係合部材22Pと同一構成であり、同図の一点鎖線で示す案内部材21の軸線に対して係合部材22Pと線対称に配置されているので、係合部材22Qは係合部材22Pと回転方向が逆であることを除けば、係合部材22Pと同様の動きをする。
なお、リール10の把持動作においては、シリンダロッド242は伸長した状態のままであり、カムフォロア24cは案内溝223の前アーム221側から移動しない。
【0021】
移動機構26cのモータ263cを回転させて移動台26bをリール10側に移動させると、
図4(a)に示すように、第1の把持手段20Rの案内部材21はリール10側に接近し、案内部材21の外周側に突出している係合部材22P,22Qの係合凸部22bに設けられた斜面部22kがリール10の軸部材12の右側の端部に当接する。
案内部材21をリール10側に更に接近させると、
図4(b)に示すように、係合部材22Pの係合凸部22bは、斜面部22kが当接している軸部材12の端に形成された案内用の斜面部12kから斜め下方向の力を受けるので、係合部材22Pの回転片22aは、支持軸22cの周りに、同図の一点鎖線で示す案内部材21の軸線方向に回転する。同様に、係合部材22Qの回転片22aも案内部材21の軸線方向に回転する。
このとき、案内部材21は、図示しない移動台26bの移動によりリール10側に押し出されるので、
図4(c)に示すように、係合部材22P,22Qの回転片22aは、係合凸部22bの斜面部22kを案内用の斜面部12kに当接させた状態で、案内部材21の軸線方向に回転しながら軸部材12の内部に押し込まれる。
【0022】
案内部材21をリール10側に更に接近させると、
図4(d)に示すように、係合凸部22bの先端は軸部材12の内壁に当接する。そして、係合部材22P,22Qは、係合凸部22bの先端が軸部材12の内壁に当接した状態で、軸部材12の内部に更に押し込まれる。この状態は、係合部材22P,22Qの前アーム221の傾きが最大で、係合部材22Pの回転片22aと係合部材22Qの回転片22aとがリール10側においてほぼ当接する「閉状態」に相当する。
なお、係合部材22P,22Qの回転片22aが案内部材21の軸線方向に回転を始めると、係合部材22Pと係合部材22Qとを連結するバネ部材23は圧縮されるので、係合部材22P,22Qは、バネ部材23から前アーム221同士が開く方向の力(反発力)を受けながら、軸部材12の内部に押し込まれる。
その後、
図4(e)に示すように、係合凸部22bが軸部材12の内壁の右側に設けられた貫通孔12hまで達すると、バネ部材23からの反発力により回転片22aは案内部材21の軸線方向とは逆方向に回転するので、係合凸部22bは貫通孔12hの内部へ進入する。
図4(f)に示すように、案内部材21を軸部材12の内部に更に押し込むと、係合部材22Pの係合凸部22bは軸部材12の上側の貫通孔12hに係合し、係合部材22Qの係合凸部22bは軸部材12の下側の貫通孔12hに係合する。
これにより、リール10の軸部材12を、右側の把持手段である第1の把持手段20Rにより把持することができる。
このように、本実施の形態1のリール受け渡し機構1では、案内部材21が軸部材12の内部に挿入されているだけでなく、係合部材22P,22Qの係合凸部22bが軸部材12の上下の貫通孔12hにそれぞれ係合するので、リール10を強固に把持することができる。したがって、リール10を移動させたり固定したりする際のリール抜けやリールの回転を確実に防止することができる。
【0023】
係合部材22P,22Qと軸部材12との係合を解除するには、
図5(a)に示すように、エアシリンダ24aのシリンダロッド242を縮小させて、支持ブロック24bを後退(リール10とは反対側に移動)させる。これにより、支持ブロック24bのリール10側に設けられたカムフォロア24cは、係合部材22P,22Qの回転片22aの後ろアーム222それぞれに形成された案内溝223に当接しながらリール10とは反対側に移動する。これにより、係合部材22P,22Qの回転片22aは、当該回転片22aを案内部材21の軸方向とは反対側に回転させるトルクを受けるので、
図5(b)に示すように、係合部材22Pの係合凸部22bと軸部材12の上側の貫通孔12hとの係合が解除される。
係合の解除後には、シリンダロッド242を縮小させたまま、図示しない移動機構のモータ263cを逆回転させて移動台26bをリール10側とは反対側に移動させる。第1及び第2の把持手段20Lの係合部材22P,22Qは、
図5(c)に示すように、把持動作とは逆の動きをしながら、軸部材12から引き抜いて軸部材12の外部へと移動させる。なお、案内溝223の少なくともリール10とは反対側に、カムフォロア24cが案内溝223から逸脱しないための図示しない規制部を設けて、シリンダロッド242を更に縮小させて係合部材22P,22Qを引き抜くようにしてもよい。
また、引き抜き後には、エアシリンダ24aの図示しないシリンダロッド242を再び伸長させて、支持ブロック24bを前進させ、カムフォロア24cを元の位置である回転片22aの前アーム221側まで戻しておくことが好ましい。
【0024】
次に、リール受け渡し機構1を用いたリール10の持ち替え動作について、
図6の模式図を参照して説明する。
図6(a)に示すように、リール10が、リール10の軸方向左側に設置された第2の把持手段20Lにより把持され、リール10の軸方向右側に設置された第1の把持手段20Rは、リール10から離れた位置に待機している状態を初期状態とする。
図6(b)に示すように、第1の把持手段20Rがリール10の右側に接近すると、
図6(c)に示すように、第2の把持手段20Lは、係合部材22P,22Qの係合凸部22bとリール10の軸部材12に設けられた貫通孔12hとの係合を解除するとともに、
図6(d)に示すように、第2の把持手段20Lの引抜きを開始する。このとき、第1の把持手段20Rの係合凸部22bが軸部材12の内壁に到達するまでは、第2の把持手段20Lの係合凸部22bは軸部材12の内壁に当接している状態を維持している。
そして、
図6(e)に示すように、第1の把持手段20Rの係合部材22P,22Qの係合凸部22bが軸部材12の上下の貫通孔12hに係合した段階で、第2の把持手段20Lを軸部材12から引き抜く。これにより、
図6(f)に示すように、第2の把持手段20Lから第1の把持手段20Rへのリール10の持ち替えが完了する。
第1の把持手段20Rから第2の把持手段20Lへのリール10の持ち替えも、
図6(f)〜(j)に示すように、
図6(a)〜(e)の動作と同様で、これにより、
図6(a)に示すように、第1の把持手段20Rで把持していたリール10を第2の把持手段20Lにより持ち替えることができる。
【0025】
なお、第2の把持手段20Lの係合部材22P,22Qと軸部材12との係合を解除するタイミングとしては、
図4(f)に示すように、第1の把持手段20Rの係合部材22P,22Qの係合凸部22bを軸部材12の上下の貫通孔12hに係合させてから行ってもよいが、
図4(d)に示した、係合部材22P,22Qの係合凸部22bが軸部材12の内壁に到達した段階でも、リール10は十分把持できているので、前記のように、第1の把持手段20Rの案内部材21がリール10側に接近した時に、第2の把持手段20Lの係合凸部22bと貫通孔12hとの係合を解除し、第1の把持手段20Rの係合凸部22bが軸部材12の内壁に到達した段階で第2の把持手段20Lを軸部材から引き抜くようにした方が、持ち替え時間を短縮できるので好ましい。
【0026】
なお、前記実施の形態1では、リール本体11とカバー部材13とを備えたリール10を用いたが、カバー部材13のないリールなど、他の構成のリールを用いてもよい。
但し、いずれの場合にも、本実施の形態1の軸部材12に相当する部材には、係合部材22P,22Qの係合凸部22bに係合する係合凹部を設ける必要がある。
また、前記例では、係合部材22P,22Qが一対(2個)の場合について説明したが、係合部材の数は3個以上あってもよい。この場合も、各係合部材を案内部材21の軸線に対して対称に配置するとともに、各係合部材の先端部を複数の係合部材の中心から中心とは反対方向に付勢する構成とすることが好ましい。
また、前記例では、係合凹部としての貫通孔12hを軸部材の上下にそれぞれ設けたが、左右に設けてもよい。要は、一つの係合部材22P,22Qに対応する係合凹部が、軸部材12の中心に対して対称に設けられていればよい。
また、前記例では、回転片22aの後アーム222を回転させるための当接部材としてカムフォロア24cを用いたが、当接部材はこれに限るものではなく、ピン部材やローラなど、後アーム222の内側に当接して後アーム222を回転させる部材であればよい。
また、回転片22aを回転させる手段として、後アーム222にアクチュエータを取付けて後アーム222に上下方向の力を加えて回転させたり、回転片22aを支持軸22cに固定し、支持軸をモータ等により回転させるなど、他の回転手段を用いてもよい。
【0027】
また、前記例では、係合部材22P,22Qの前アーム221同士をバネ部材23により連結したが、バネ部材23を省略してもよい。但し、この場合には、回転片22aを回転させて係合凸部22bを軸部材12の貫通孔12kに係合させる際に、
図4(d)の状態から、シリンダロッド242を伸長させてカムフォロア24cを前進させることで、前アーム221を回転させるようにすればよい。但し、この方法では、シリンダロッド242の伸縮範囲が大きくなるので、本例のようにバネ部材23を用いる方がシリンダロッド242の伸縮範囲を小さくできるので、好ましい。
【0028】
実施の形態2.
図7は、本発明によるリール受け渡し機構1を備えたケーブルビードの製造システム3を示す図である。
ケーブルビードの製造システム3は、リール10と、リール旋回手段30と、コア移動手段40と、コア移動手段40による円環状のコア(以下、コアという)4の回転及び移動とリール旋回手段30によるリール10の旋回動作とを制御する図示しない制御手段とを備え、ワイヤー2が巻き付けられたリール10をコア4の内外に旋回させてリール10から引き出されたワイヤー2をコア4の外周に螺旋状に巻き付ける。
リール10は、前記実施の形態1のリール10と同一構成である。
また、本例では、リール旋回手段30に設けられた後述する把持手段36として、前記実施の形態1の第1及び第2の把持手段20R,20Lと同一構成のものを用いた。
【0029】
リール旋回手段30は基台31と、第1及び第2の腕部32R,32Lとを備え、リール10を把持して旋回させる。
コア移動手段40は駆動ロール41と、押さえロール42と、補助ロール43と、駆動装置44と、コアスライド手段45と、設置台46とを備える。駆動ロール41と押さえロール42と補助ロール43と駆動装置44とによりコア回転手段を構成する。なお、符号47は設置台46の脚部である。
本例では、駆動ロール41と補助ロール43とを水平面内に配置し、この駆動ロール41と補助ロール43とによりコア4を立てた状態、すなわち、コア4の輪の作る面であるコア面が鉛直面内にあるように、コア4を下側から支持する。押さえロール42はコア4を上側から押さえるように、コア4の上側に設置される。
【0030】
図8は、リール旋回手段30の構成を示す斜視図である。以下、リール旋回手段30のコア移動手段40側を前側とし、リール旋回手段30側から見たときのコア4の輪の右側を右側、左側を左側とする。
リール旋回手段30の第1の腕部32Rは、固定部である基台31の右側に取り付けられ、基台31の左側には第2の腕部32Lが取付けられる。すなわち、コア4の右側には第1の腕部32Rが左側には第2の腕部32Lが配置される。なお、第1の腕部32Rと第2の腕部32Lとを別々の基台に取付けてもよい。
第1及び第2の腕部22R,32Lは、それぞれ、基台31に対して回転可能に連結された第1の可動部材33と、第1の可動部材33に対して回転可能に連結された第2の可動部材34と、第2の可動部材34に対して回転可能に連結された第3の可動部材35と、第3の可動部材35における第2の可動部材34とは反対側に設けられてリール10を把持する把持手段36とを備える。
【0031】
第1の可動部材33の一端は、水平回転機構37aと垂直回転機構37a’とを介して基台31に取付けられている。水平回転機構37aは第1の可動部材33を基台31に対して水平面内(垂直回転機構37a’を作動させた状態では、基台31と第1の可動部材33との作る面内)で回転させ、垂直回転機構37a’は第1の可動部材33を基台31に対して鉛直面内で回転させるものである。これら水平及び垂直回転機構37a,37a’としては、ステッピングモータやACサーボモータなどを用いることができる。このとき、モータ本体を基台31に取付け、モータの出力軸を第1の可動部材33に取付けるなどしてモータを回転制御すれば、基台31と第1の可動部材33との成す角度を任意の角度に変更することができる。
第2の可動部材34は第1の可動部材33に水平回転機構37a及び垂直回転機構37a’と同様の水平回転機構37b及び垂直回転機構37b’とを介して取付けられている。また、第3の可動部材35は第2の可動部材34に水平回転機構37a及び垂直回転機構37a’と同様の水平回転機構37c及び垂直回転機構37c’とを介して取付けられている。
また、第3の可動部材35には把持手段36を第3の可動部材35に対して鉛直面内で回転させるための把持手段回転機構37dを備える。
【0032】
したがって、水平回転機構37aと垂直回転機構37a’とにより基台31の延長方向と第1の可動部材33の延長方向との成す角度(水平角と仰角と)を変更し、水平回転機構37bと垂直回転機構37b’とにより第1の可動部材33の延長方向と第2の可動部材34との延長方向との成す角度を変更し、水平回転機構37cと垂直回転機構37c’とにより第2の可動部材34の延長方向と第3の可動部材35との成す角度を変更することにより、
図9に示すように、第1の腕部32Rの第3の可動部材35の把持手段36により把持されるリール10、もしくは、第2の腕部32Lの第3の可動部材35の把持手段36により把持されるリール10を任意の平面内で旋回運動させることができる。
また、把持手段回転機構37dにより、リール10を把持する角度を変更することができる。すなわち、リール10を鉛直面に対して傾けて把持することができる。
把持手段36は、前述したように、前記実施の形態1の第1及び第2の把持手段20R,20Lと同じ構成で、
図1〜
図3に示すように、それぞれ、案内部材21と、一対の係合部材22P,22Qと、バネ部材23と、回転手段24と、取付板25と、移動手段26とを備える。把持手段36の構成の詳細と動作は、前記実施の形態1の第1及び第2の把持手段20R,20Lと同一であるので、説明を省略する。
【0033】
コア回転手段を構成する駆動ロール41、押さえロール42、補助ロール43、及び、駆動装置44は、
図7に示すように、コアスライド手段45を構成するガイドレール451に沿ってスライドするガイド部材452上に設置される。詳細には、ガイド部材452のリール旋回手段30側に補助ロール43が設置され、リール旋回手段30とは反対側に駆動ロール41と駆動装置44とが設置される。
駆動装置44は、例えば、変速機付きのモータから構成される。このモータの出力軸と駆動ロール41の回転軸とを、例えば、伝動ベルト44bにより連結して駆動ロール41を回転させることで、コア4を周方向に回転させることができる。
押さえロール42は、駆動装置44のリール旋回手段30側に立設された押さえロール設置台452kに設置される。押さえロール設置台452kは垂直片452pと、この垂直片452pのコア4側の側面に設けられた昇降手段452qと、昇降手段452qに取付けられてコア4側に突出する水平片452rとを備えており、この水平片452rのコア4側の端部に押さえロール42が取り付けられる。
駆動ロール41と補助ロール43との間隔はコア4の直径よりも狭く設置されている。
本例では、駆動ロール41、押さえロール42、及び、補助ロール43としてV型ロールを用いるとともに、押さえロール42を前記のように上下動可能とすることで、
図7の細い一点鎖線で示す、径の異なるコア4Lを搭載することができるようにしている。
コアスライド手段45は、設置台46上に設置され水平面内においてコア4の軸線方向と垂直な方向に延長するガイドレール451と、ガイドレール451に沿ってスライドするガイド部材452と、ガイド部材452をスライドさせるスライド機構453とを備える。スライド機構としては、ボールネジを用いたものや、ラックピニオン機構などの周知のスライド機構を用いることができる。ボールネジを用いた場合には、ボールネジの雄ネジ453aの一端を設置台46のリール旋回手段30側に取付けた固定板453bに固定し、他端を設置台46のリール旋回手段30側とは反対側に設置したモータ453cに取付けるとともに、図示しない雌ネジをガイド部材452に固定する構成とすればよい。
【0034】
次に、ケーブルビードの製造方法について説明する。
ケーブルビードは例えばS巻のワイヤー層とZ巻のワイヤー層を交互に積層して形成される。以下、S巻の場合の巻き付け動作について説明する。
まず、コア4を駆動ロール41と補助ロール43との上に搭載した後、押さえロール42を下降させて、コア4の上部に当接させることでコア4を3つのロール41〜43により鉛直面内に平行になるように保持する。
次に、リール旋回手段30のコア4の左側に位置する第2の腕部32Lの把持手段36を、リール10の軸部材12の内部に挿入する。これにより、把持手段36の係合部材22P,22Qの回転片22aはリール10の軸線方向に回転しながら軸部材12の内部に押し込まれる。係合部材22P,22Qは、係合凸部22bの先端が軸部材12の内壁に当接した状態で軸部材12の内部に進入し、係合凸部22bが貫通孔12hの位置に達した段階で、係合凸部22bと貫通孔12hとが係合する。なお、以上の動作の詳細は、左右が逆なだけで、
図4(a)〜(f)に示した第1の把持手段20Rの把持動作と同じである。
これにより、リール10は、
図10(a)に示すように、コア4の左側において、リール旋回手段30の第2の腕部32Lで把持される。詳細には、リール10は、第2の腕部32Lにより、コア4の左側で、かつ、コア4の輪を含むコア4の軸方向に延長する円筒の内側(以下、コアの内側という)の所定の位置に、コア4が延在する側と反対側であるリール10の左側から把持される。前記リール10の旋回動作の出発点となる所定の位置ではリール10がコア4の最も内側に位置するので、この位置を以下、リールの最内側という。なお、リール10は軸線方向がコア4の軸線方向と同じ左右方向となるように第2の腕部32Lに把持される。
【0035】
次に、第2の腕部32Lの各回転機構37a〜37cを用いて第1の可動部材33、第2の可動部材34、及び、第3の可動部材35の延長方向を変更して第2の腕部32Lを縮めるようにすることで、
図10(b)に示すように、リール10をコア4の左側にて旋回させてコア4の内側から外側に移動させる。
ワイヤー2はコア4の巻き付け部に固定されているのでリール10からワイヤー2が引き出される。このとき、コアスライド手段45のスライド機構453を稼働させてガイド部材452を前方に移動させることでコア4をリール旋回手段30とは反対側、すなわち、リール10から遠ざかる方向に移動させるようにすれば、リール10のコア4に対する相対的な移動速度が速くなるので、ワイヤー2の引き出し速度が速くなる。
本例では、リール10に引き出されるワイヤー2の幅方向の位置を規制するワイヤーガイド14を設けてワイヤー2の引き出し位置を安定させるようにするとともに、リール10に設けられたブレーキ機構15により最適なテンションが加えられた状態でワイヤー2をリール10から引き出すようにしている。
【0036】
リール10が旋回してコア4の左外側に到達した段階で、リール10を把持する側を変更する。
具体的には、右側に位置する第1の腕部32Rの把持手段36を、リール10の軸部材12の内部に挿入し、係合凸部22bと貫通孔12hとを係合させるとともに、左側に位置する第2の腕部32Lの把持手段36の係合部材22P,22Qの係合凸部22bと貫通孔12hとの係合を解除して第2の腕部32Lの把持手段36をリール10の軸部材12から引き抜く。なお、係合解除の動作の詳細は、左右が逆なだけで、
図5(a)〜(c)に示した第1の把持手段20Rの係合解除動作と同じである。
これにより、
図10(c)に示すように、リール10を左から右に持ち替えることができる。この持ち替え位置ではリール10がコア4の外側の最も離れた位置に位置するので、この位置を以下、リールの最外側という。
次に、第1の腕部32Rの各回転機構37a〜37cを用いて第1の可動部材33、第2の可動部材34、及び、第3の可動部材35の延長方向を変更して第1の腕部32Rを延ばすようにする。これにより、
図10(d)に示すように、リール10をコア4の右側にて旋回させてコア4の外側から内側に移動させるとともに、駆動装置44を稼働させて駆動ロール41を回転させることでコア4を周方向に回転させる。これにより、ワイヤー2はコア4の左側から右側に移動するので、ワイヤー2をコア4の外周に巻き付けることができる。
このとき、コアスライド手段45のスライド機構453を稼働させてガイド部材452をリール旋回手段30側、すなわち、リール10に近づく方向(前回とは逆に、リールの最内側位置から最外側位置方向)に移動させるようにすれば、リール10のコア4に対する相対速度が速くなるので、ワイヤー2の巻き付け速度が速くなる。
【0037】
次に、リール10が旋回してコア4の右側の最内位置に到達した段階で、リール10を把持する側を変更する。リール10を把持する側を変更する動作については、前述した通りである。把持する側が右側から左側に変更された段階でリール10は初期位置に戻るとともに、コア4の外周にはワイヤー2が一巻きされる。
このような操作を繰り返してコア4にリールを巻き付けていくことで、
図11に示すように、ワイヤー2をコア4の外周に螺旋状に巻き付けることができる。
なお、Z巻の巻き付けの場合は、始めに第1の腕部32Rでリール10を把持し、ワイヤー2をコア4の右側に引き出すようにすればよい。
このように、ワイヤー2が巻き付けられたリール10をコア4における一方の側と他方の側において交互に把持しながらコア4の内外を一方向に旋回動作させ、コア4をリール10の旋回動作に連動して周方向に回転させることにより、ワイヤー2をコア4の外周に螺旋状に巻き付けるようにすれば、リール10の旋回運動の軌跡が自由であるので、一つの装置で様々なサイズのケーブルビードを製造することができる。
また、本例のケーブルビードの製造システムでは、リール受け渡し機構1を採用しているので、リール10を第1の腕部32Rと第2の腕部32Lとの間で容易にかつ高速に受け渡すことができるとともに、把持手段36により、リール10を強固に把持することができるので、リール10の移動時におけるリール抜けやリールの回転を確実に防止することができる。
【0038】
なお、リール10の旋回運動は円運動に限るものではなく、左右が円弧状の旋回運動であってもよい。本例では、把持手段36を第3の可動部材35に回転可能に取付けてあるので、リール10の受け渡し時において、リール10の軸線方向がコア4の軸線方向と平行になるようにリール10を把持できる。したがって、リール10の旋回運動の形態によらず、リール10の受け渡しを容易にかつ確実に行うことができる。
また、前記実施の形態2は、水平回転機構37a〜37cを用いてリール10を水平面内で回転させた場合について説明したが、水平回転機構37a〜37cに加えて垂直回転機構37a’〜37c’及び把持手段回転機構37dを用いれば、リール10を水平面に対して傾いた面内で回転させることができる。これにより、コア4を径の異なるコアに変更した場合でも、コアに容易にワイヤー2を巻き付けることができる。
【0039】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。