(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
形状因子が小さいことは、エッジ強度の分布がいくらか幅広いことを意味する。こういった性能は、最小エッジ強度が信頼性の理由から重要であるような用途では問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施の形態において、脆性材料の薄いシートを分割する方法が開示され、この方法は、第1面とこれに対向する第2面とを備えかつこの第1面と第2面との間の厚さが約1mm以下である、脆性材料シートに、第1面および第2面に交差する全厚クラックを形成するステップ、全厚クラックをレーザビームで照射するステップ、全厚クラックを既定経路に沿って伝播させさらに脆性材料シートを少なくとも2つの脆性材料分割シートに分割するよう、レーザビームを既定経路に沿って第1面上に通過させるステップ、を含み、さらに、全厚クラックは、脆性材料シートを強制流体冷却することなく伝播されることを特徴とする。このレーザビームは、好適には約9μmから11μmの間の波長を含み、例えば、名目上の波長が10.6μmであるCO
2レーザでもよい。いくつかの実施形態において、脆性材料シートと接触する周囲雰囲気の熱伝導率は約0.024W/m/Kより大きい。例えば、この周囲雰囲気は高濃度の高熱伝導率気体を含んでもよい。
【0006】
ビームが第1面と交差する位置のビームフットプリントの、既定経路に平行な方向の長さは、好適には、脆性材料の第1面上をビームが通過する速度に(ρc
pd
2)/4κを乗じたものよりも大きく、ここでρは板ガラスの密度、c
pは板ガラスの比熱、κは板ガラスの熱伝導率、そしてdは板ガラスの厚さである。
【0007】
いくつかの実施形態においては、レーザビームを通過させるステップ中、既定経路に垂直な張力を外部から加えてもよい。例えば、薄いガラスシートなどの脆性材料をいくつかのスプール上に巻き付け、さらにスプール間の距離を、スプール間の脆性材料の長さを増加させることなく増加させて(あるいはスプール間の脆性材料の長さの増加をスプール間の距離の増加よりも短いものとして)張力を加えてもよい。ただし、2つのスプールを使用する必要はなく、単なる実例である。
【0008】
いくつかの実施形態において、レーザビームを通過させるステップは、ビームフットプリントを既定経路に沿って1回のみ通過させるものを含む。他の実施形態において、レーザビームを脆性材料の表面上に通過させるステップは、既定経路上を複数回繰り返し通過させるものを含む。この場合、脆性材料シートを分割シートに分割する全厚クラックは、複数回の通過が実行された後にのみ既定経路に沿って伝播される。概して長方形(例えば、丸みを帯びた角を有する長方形)の形状など、閉じた形を分割するには複数回の通過を使用すると効果的である。
【0009】
一旦脆性材料シートが分割シートに分割されると、分割シートの少なくとも1つをさらに加工し、少なくとも2つの分割シートのうち少なくとも一方の上に、誘電体または半導体材料を堆積させてもよい。例えば、分割シートの1つが、既知の堆積技術(例えば、蒸着、スパッタリングなど)によりその上に堆積された1以上の薄膜トランジスタを含んでもよい。
【0010】
別の実施形態において、ガラスシートを分割する方法が説明され、この方法は、約1mm以下の厚さを有するガラスシートの表面に最初のひびを形成するステップ、この最初のひびを、9μmから11μmの間の波長を有するレーザビームで照射するステップ、レーザビームをガラスシートの表面上に、開始点から終了点まで既定経路に沿って複数周期通過させ、強制流体冷却を用いることなく既定経路を加熱するステップであって、このとき全厚クラックが複数周期の後にのみ既定経路に沿って伝播し、さらにガラスシートが少なくとも2つの分割シートに分割されるステップ、を含む。いくつかの事例では、レーザビームは周期と周期との間で停止される。好適には、レーザビームはガラスシートの表面でデフォーカスされる。この既定経路は曲線を含んでもよく、そしていくつかの実施形態では、既定経路は閉じた経路である。一旦ガラスシートが分割シートに分割されると、少なくとも2つの分割シートのうち少なくとも一方の上に、誘電体または半導体材料を堆積させてもよい。
【0011】
多少なりとも限定する意味を含まずに添付の図面を参照して与えられる以下の説明のための記述の中で、本発明はより容易に理解されるであろうし、他の目的、特徴、詳細および利点がより明確に明らかになるであろう。全てのこの追加されるシステム、方法、特徴、および利点は、本記述の中に含まれ、本発明の範囲内であり、かつ添付の請求項によって保護されると意図されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の詳細な説明においては、限定ではなく説明のため、具体的詳細を開示する実施形態例を明記して本発明の完全な理解を提供する。しかしながら、本開示の利益を得ている通常の当業者には、本発明をここで開示される具体的詳細とは異なる他の実施形態で実施し得ることは明らかであろう。さらに、周知の装置、方法、および材料に関する説明は、本発明の説明を不明瞭にしないよう省略することがある。最後に、適用できる限り、同じ参照番号は同様の要素を示す。
【0014】
本書において全厚切断とは、脆性材料を割って分割された個体とするように、材料の厚さを通して延びかつ材料のある範囲に亘って延在するクラックを、脆性材料のシート(例えば、薄いガラスシート)内に形成することを称する。
【0015】
本書において強制流体冷却とは、ノズルを通過した空気や水などの制限された流体の流れを基板上に向け基板を冷却することで、脆性材料を冷却することを称する。例えば、加熱されたガラスを急冷するために、加圧水または加圧空気の噴射をレーザビームの裏側の板ガラスの規定領域へと向けてもよい。強制流体冷却は、環境による冷却、すなわち周囲雰囲気と接触することによる一般的な基板の冷却とは区別される。
【0016】
本書において開示される方法は、ガラス、ガラスセラミック、セラミック、または他の類似の材料(例えば、半導体ウエハー)などの、種々の薄い脆性材料に適用し得るが、1つの重要な使用目的は、ディスプレイ用途に利用されるガラス基板の切断である。この分類には、限定するものではないが、テレビディスプレイ、コンピュータディスプレイ、携帯電話のディスプレイなどが含まれる。そのため、説明される方法を他の材料に適用し得るという理解の下、以下の説明は薄いガラスシートに関連付けて述べる。
【0017】
ガラスシートのレーザ切断における従来のプロセスでは、シートを実質的に横断して延在しているがシートの厚さを貫通していない最初のひびをガラス内に生成するように、ガラスシートの既定の切断経路に沿って最初に罫書き線が形成される。この罫書き線は、堅いスクライバやホイールなどの機械的器具を使用して作ってもよい。次いで、ガラスに曲げモーメントを加えて罫書き線沿いに引張応力を誘導し、シートの厚さを通って伝播するクラック(「ベントクラック(vent crack)」または「ベント(vent)」)を生成する。別の手法では、罫書き線をレーザビームで生成してもよい。この場合も、曲げモーメントを加えてシートを分割する。さらに別の手法では、レーザビームを最初のひび(シートエッジ上の刻み目など)上に通過させてひびの位置にクラックを誘導し、その後レーザビームをガラスシート表面上に切断経路に沿って通過させ、このクラックを、ガラス本体を通してかつシートのある範囲に亘って伝播させる。通過しているレーザビームの直後には、典型的には水であるが、冷却流体の細い噴射が続き、加熱されたガラスを急冷して応力を増加させ、クラックをガラス本体に貫通させてシートをいくつかの個別のガラスパネルに分割する。
【0018】
レーザを用いて切断されたガラス基板のエッジ強度は、時に「形状因子」と称されるワイブル係数mの対応するばらつきに伴い、幅広く変化し得る。破壊解析によれば、従来の方法に従って分割された低強度のガラス基板サンプルの切断されたエッジには、ツイストハックル(twist hackle)が大きく存在していることがわかる。ツイストハックルは、クラックが材料を通って伝播している間にねじり応力(ねじれ)が材料に加えられた時に生じる。ガラスをレーザ分割する際に、レーザによるガラスの加熱が不均等になると、切断されたエッジの表面上にツイストハックルが生成されることがある。ツイストハックルは、ガラス基板の厚さを通して温度のバランスを取ることにより排除することが可能であり、こうすると、切断されたシートの強度中央値の他、最小エッジ強度や形状因子を著しく増加させることができる。
【0019】
ディスプレイ用途での使用に適しているシリカベースのガラス基板は、約9μmから約11μmまでの波長範囲の光を強く吸収し、またこのような光のガラス基板内の浸透深さは、約数波長以下(例えば、20〜30μm以下)に通常限定される。しかしながら、様々なガラスが様々な波長のものを強く吸収し得ることから、強い吸収のために必要な波長範囲はこの範囲外にも変化し得ることに留意されたい。CO
2レーザは波長10.6μmで発光し、十分に9〜11μmの範囲内である。すなわち、CO
2レーザが放射するビームはシリカベースのガラスに強く吸収されるため、このビームを表面加熱器と見なすことができる。CO
2レーザなど強く吸収されるレーザビームで照射された大半のガラス基板の内部加熱は、表面からの熱伝導によってのみ得ることができる。1次元熱伝導モデルにおいて、シートの厚さを通して温度を平衡させるのに必要な時間τ
depthは以下の方程式を用いて推定することができる。
【0020】
τ
depth≒(ρc
p/4κ)d
2 1)
ここで、ρはガラスの密度、c
pはガラスの比熱、κはガラスの熱伝導率、そしてdはガラスの厚さである。
【0021】
上記の方程式1)から明らかであるが、τ
depthはガラス厚の2乗に比例して増加する。一例として、厚さ0.63mmのガラス基板に対し、τ
depthは約0.2秒である。同じガラスで厚さが0.2mmの場合には、τ
depthは約10倍減って0.02秒に減少する。すなわち、ガラスシートがより薄くなると、短時間で、かつ急冷流体の適用に頼ることなく、シート内で高応力を得ることができる。所与の表面積に対するシート本体のガラスの容積が低いため、薄いシートからの熱損失は厚いシートよりも高くなる。
【0022】
現在のところ、液晶ディスプレイ(LCD)TV基板用、携帯電話ディスプレイ基板用、および他の携帯型機器用の、典型的なガラス厚は約1mm未満であり、典型的には約0.7mmである。しかしながら、産業動向は0.5mm以下の薄いガラス基板に向かっている。ガラス基板の厚さdが減少すると、ガラスの厚さに亘って温度のバランスを取る(平衡させる)ために必要な時間は著しく削減される。
【0023】
強く吸収されるレーザビームからのエネルギーの大部分は、ほとんどのケイ酸塩ガラスにおいてその表面で吸収されるため、ビームの出力が高すぎる場合、あるいは表面上でのビームの滞留時間が長すぎる場合、表面層はそのガラス材料の歪点または軟化点まで容易に加熱され得る。ガラス内に高応力が生成されることによってガラスが分割されるため、ガラス基板が軟化点を超えて加熱されると、ガラス内の応力が解放されることによりその後の切断速度が遅くなることがある。過熱を防ぐため、材料の厚さを通して熱伝導のバランスを取るようにレーザビームを形作ることができる。例えば、ビームを細長い形状に形作ってもよく、このとき、シリンドリカルレンズ(光軸が交差した、凸と凹のシリンドリカルレンズ、または凸と凸のシリンドリカルレンズの組合せ)を使用してもよいし、あるいは、基板の延長された範囲を、円形ビームの形状変更を要さずに効果的に照射する、光学式スキャナまたは回転ミラーを用いた走査技術を使用してもよい。
【0024】
図1は、強制流体冷却を使用していない、レーザ14により生成された細長いレーザビーム12を用いたガラスシート10のレーザ切断を概略的に示したものである。このガラスシートは第1面9と第2面13を含む。このビームは、ガラスシート10の第1面9上に、切断方向18に沿って配向された主軸とこの主軸に垂直な短軸とを有する「フットプリント」16を照射する。このときフットプリントの境界は、ビーム強度がピーク強度の1/e
2の値に減少した位置で画成される。フットプリント16の主軸および短軸の長さは、夫々bおよびaで表す。ガラスシート上のビームフットプリントの長さbは、ビームの通過速度v(「フットプリント」すなわちビームがぶつかる部分の速度)にτ
depthを乗じたものよりも大きい。レーザの切断経路は点線20で示し、またビームは左に移動するように図示されている。
【0025】
図2A〜2Cは、レーザ切断経路に沿ったガラスの小さいストリップの応力プロファイルを示したものであり、その幅は、細長い(例えば、楕円形)ビームの短軸の長さaの約2倍である。レーザがガラス上を通過しているそれぞれ異なった時点での、ガラスの厚さを通しての応力プロファイルが図示されている。
図2Aは、レーザビーム12が照射表面を加熱し始めて表面上を通過する瞬間の、ガラス内に存在している応力場を表現したものである。この図は、照射されたガラス表面の近くに圧縮応力が出現し(内側を指す矢印で示されている)、そしてこの表面のさらに下方に引張応力が出現する(外側を指す矢印で示されている―矢印をつなぐ直線の長さは応力の相対的大きさを示す)ことを示している。このことは、ガラスが局所的に温まるとガラスは膨張するが、この位置を包囲しているより冷たいガラスに制約されることを考慮すると容易に理解できる。すなわち、圧縮応力は加熱された部分の範囲内に出現する。レーザがガラス表面の切断線に沿って横切る時間はb/vで規定され、ここで、前と同様、vはガラス基板に対するレーザビームの通過速度である。
【0026】
図2Bに示した次の瞬間、照射表面からの熱がガラスの厚さを通して伝導され、ガラスの外表面(照射表面およびその対向する表面の両方)では圧縮の応力プロファイルとなり、そしてガラスシートの中心部分では引張の応力プロファイルとなる。
【0027】
最後に、
図2Cは、レーザビームがこのガラスストリップから移動して離れた直後の、ガラスの同じ領域を表現したものである。ガラス表面での熱損失により、ガラスの外表面では引張の応力プロファイルとなり、そしてガラスの中心領域内では圧縮の応力プロファイルとなる。この加熱領域と残りのガラス基板との間に十分な温度差が与えられると、
図2Cの応力プロファイルによりクラックが伝播してシートが分割される。
【0028】
図1Aに戻るが、レーザビームが既定経路20に沿って通過すると、全厚クラック17がシート10を横断して伝播し、シート10は分割シート10aおよび10bに分割される。
図1Bで描かれているように、シート10は例えば金属酸化物層(例えば、酸化インジウムスズ―ITO)などの薄膜層11を随意的に含んでもよく、このとき脆性材料のシートを分割シートに分割する全厚クラックが、さらに薄膜層をも分割する。この膜層11は複数の層を含んでもよい。1以上の薄膜層が、例えば、薄膜トランジスタのような薄膜デバイスを含んでもよい。あるいは、薄膜層は、バリア層またはパッシベーション層でもよい。
【0029】
上記の説明から、厚いガラスシート(すなわち約1mm超)を切断する際には、ガラス内に十分な応力を生成してガラスを割るために、ガラスの迅速な冷却(急冷)を必要とすることが明らかになる。しかしながら、ガラスの厚さdが十分に薄いとき、すなわち約1mm以下であるときには、レーザビームがシート上を通過する際にレーザが描く経路に沿って強制冷却することなく、全厚の分割(シートの全厚さを通して割ること)が達成可能である。
【0030】
円柱状ドラムへと巻回された薄いガラス基板を、本書において開示される方法に従って切断することもできる。
図4に示した図において、ガラスは第1ドラムすなわちスプール22から第2スプール24へと巻き付けられる。分割プロセス中、切断線(既定経路)20に垂直な若干の張力(矢印26)が、外部から薄いガラスシートに加えられる。すなわち、この張力はガラスを加熱および/または冷却することにより生じる張力とは区別される。例えばこの張力は、スプール22、24を離れさせることにより加えてもよい。この加えられた張力は、熱的に出現する応力(すなわち、レーザによる加熱の結果として生じるもの)とは区別される。最初のひびを形成するために非接触レーザ罫書きを使用してレーザ切断を所望の長さで実行し、続いて強制冷却なしのCO
2レーザ切断で、全厚クラックをガラスシートに亘って伝播させることができる。加えられる張力は、二重の目的に役立つ。第1に、加えられる張力はレーザ切断速度の増加を助ける。加えられる張力を、全厚クラックの伝播が所望の切断方向に維持されるよう使用することもでき、これはクラックの伝播が、加えられた引張応力と常に垂直であるためである。
【0031】
上記の例では、ガラスの温度を歪点より低く保ちながら効率的にレーザ加熱するために、静的な光学系で生成した細長いレーザビームを使用した。ガラス基板の温度を歪点より低く保ちながら加熱を達成するために、光学式スキャナや回転する光学ミラーを使用することもさらに可能である。これは、切断経路に沿った長さに亘ってビームが迅速走査するものである。光学式スキャナに基づく加熱技術では、さらに以下で説明するような任意の所望の形状/曲線に沿った切断が可能になる。
【0032】
上記では、強制冷却せずにガラス基板のエッジからレーザ切断するものについて説明してきた。この技術を、エッジ以外の位置から開始してガラス基板を切断するものに使用することも可能である。強制流体冷却を使用しないレーザ切断により生成される応力は、水が非常に効率的な冷却媒体であることから、強制冷却を用いて得ることができる応力よりも小さいと考えられる。エッジ外からの切断では、切断の最初に恐らく水噴射が必要になるであろう。一旦クラックが伝播されると水噴射を停止させ、これ以降の切断はCO
2レーザが生成した応力のみで達成される。
【0033】
ガラス基板を切断経路に沿ってより高い温度まで予熱することで、さらに別の切断速度改善が達成可能となる。ガラス基板を予熱すると、全厚クラックを伝播させる間に切断用レーザが供給する必要のある加熱量が減少する。例えばガラスシートは、炎またはレーザ(切断用レーザまたは別のレーザ)を使用して、既定の切断経路に沿って局所的に予熱することができる。
【0034】
これまでの説明は、実質的に真っ直ぐな切断線に沿ったガラスシートの分割に関するものであったが、本発明の実施形態は、湾曲したおよび/または閉じた経路に沿った薄いガラスシートの分割にも同様に適用できることにさらに留意されたい。
【0035】
図5A〜5Cは、ガルバノメータベースのスキャナを使用した、レーザによるガラス基板の形状切断を示したものである。本実施形態によれば、形作られた部分の周囲を辿る既定経路20に沿って、デフォーカスされたレーザビームを迅速に走査させる(矢印で示す)。
図5A〜5Cは、限定するものではないが、荒く切断された親ガラス基板10から、概して長方形(例えば、丸みを帯びた角を有するもの)の部分を切断する3つの手法を表現したものである。他の形状や湾曲した経路も可能である。
図5Aでは、ガラス基板10のエッジ上の最初の傷が機械的に生成される、あるいはいくつかの実施形態では、集束したCO
2レーザビームなどの集束レーザビームで削られる。ビームを典型的には、最初にガラス基板から少し離れた開始位置28に位置付け、その後エッジの傷上を、そして既定のビーム経路20に沿って迅速に走査させる。4つの角を回ると(終了位置30で)レーザを停止させ(消し)、そしてスキャナを再び開始位置28に位置付けてビームを再びオンにし、この周期を同じ経路に沿って繰り返す。走査が繰返し行われている間、そして複数の走査の後、全厚クラックが最初にひびの入った基板エッジで生成される。前進するクラックの前方部分はレーザビームの経路に沿って急速に伝播し、その後既に全厚クラックが形成された部分にぶつかるとクラックの前方部分は停止する。こうして成形された切断部が得られ、親シート10が2つの分割シート10aおよび10bに分割される。
【0036】
図5Bは走査方法の別の実施形態であり、ここでは
図5Aで示したような角位置からではなく、長方形部分の側部から走査が開始される。この開始位置以外は、
図5Aに関連して説明したものと同じようにこのプロセスは行われる。
【0037】
図5Cは、ガラス基板を加熱する閉ループ走査を含む、さらに別の実施形態である。ここでの開始および終了位置は走査経路上の同一場所である。閉ループ走査方法における利点は走査が連続的なことである。すなわち、レーザは走査が進行中である限り作動したままであり、また最初の機械的な傷は走査ビーム経路内に位置している。この傷はエッジ外に位置しているため、最初の全厚クラックを生成する際にはより多くの張力を必要とする。この傷の場所で最初の全厚クラックを生成するために必要な張力は、その傷の場所を強制冷却することにより誘導可能であり、このときその後の走査プロセスおよび既定経路周りのクラック伝播は、強制冷却を必要とすることなく行われる。
【0038】
本書において開示された実施形態による、レーザを用いた全厚切断技術の可能性のある用途の1つは、ダウンドロープロセスにより成形されたガラスのエッジビードの除去である。ダウンドロープロセスでは、溶融ガラスを成形本体に供給し、そして成形本体から溶融ガラスが降下することによりガラスリボンが成形される。溶融ガラスの降下は重力によるものでもよいし、あるいは別に加えられる牽引力と重力との組合せによるものでもよい。ダウンドロープロセスとしては、中空の成形本体の下部に形成されたスロットから溶融ガラスが降下する、周知のスロットドロープロセスや、成形本体の両側面上を溶融ガラスが流れ、融合し、そして成形本体の下部から降下する、フュージョン成形プロセスが挙げられる。
【0039】
図6に描かれている、ガラスシートを成形するための典型的なフュージョンドロープロセスでは、上部にトラフ36を有する、導管すなわち成形本体34へと溶融ガラス32が流れ入る。トラフは開いた状態であるため、溶融ガラスはトラフの壁から溢れ出て、成形本体の両外側面上を分離流の形で流れ得る。成形本体は外側成形面38、40を含み、分離流はこれらの上を流れる。成形面38、40は成形本体の下部すなわち底部42で交わり、連続した薄いガラスリボン44を成形するために再結合(融合)する。力の中でも特に表面張力により、リボンは底部のすぐ下で粘性状態にあるときに内側へ引っ張られ、これによりリボンの幅は減少すなわち弱化されて、さらにエッジ46は球根状形状に肉厚化される(ガラスリボンの断面図を示す
図7を参照)。リボンが降下すると、リボンは粘弾性状態に、そして最終的には弾性状態に転移する。肉厚化されたエッジすなわちビードは、リボンから切断された完成したガラスシートに厚さの変動を生じさせ得るため、シートから除去される。牽引ローラ48を用いてリボンを底部から牽引する延伸プロセス中にビードをリボンから除去すると、プロセス効率を達成することができる。
図6に示したように、既に弾性状態まで冷却されたリボン44の球根状エッジ部分より内側寄りの位置に、レーザ14が発光するレーザビーム12を向け、前述の実施形態に従ってエッジ部分をリボンの残部から分割するようにする。ただし、リボンの温度は室温よりも大幅に高い(摂氏数百度)。リボンからの熱損失を十分なものとするため、周囲雰囲気50の熱伝導率を増加させて周囲雰囲気の熱伝導を向上させることができる。例えば、雰囲気中のヘリウムの割合を増加させてもよい。ヘリウムの熱伝導率は0.142W/m/Kであり、これは空気の熱伝導率の約0.024W/m/Kよりも著しく高い。すなわち、いくつかの実施形態では、ガラスと接触する周囲雰囲気を約0.024W/m/Kよりも大きいものとし、好適には約0.1W/m/Kよりも大きいものとする。リボンの表面から熱を取り除きかつガラスの切断に必要な張力を生成するために、実際には、雰囲気に含まれる例えばヘリウム、または1以上の他の高熱伝導率の気体を、単独でまたは組み合わせて、最大100%まで増加させてもよい。
【実施例1】
【0040】
一例においては、12ワット(W)のCO
2レーザを使用し、190μm厚のケイ酸塩ガラス基板を強制冷却なしで分割した。切断用レーザを使用し、ビームを焦点距離2インチ(5.08cm)の平凸球面レンズで変更させて、最初にガラスエッジで小さなひびを開始させた。一旦最初のひびが生成されると、平凸および平凹シリンドリカルレンズをビーム経路内に挿入して細長いビームを形成し、そして得られる細長いビームフットプリントと基板との間の相対運動を最終的な切断速度45mm/sまで増加させた。この切断速度で、分割後に基板に残っている残留応力は極僅かであった。
【実施例2】
【0041】
CO
2レーザを使用し、コーニング社の0.63mm厚EAGLE XG(商標)ガラスシートを強制冷却なしで分割した。6.5ワットで動作しているCO
2レーザと焦点距離2インチ(5.08cm)の平凸球面レンズとを使用し、最初のひびをシートのエッジに生成した。一旦最初のひびが形成されると、平凸および平凹シリンドリカルレンズを使用し、同じレーザを用いて細長いビームを形成した。このビームを、フットプリント長(主軸)9mmおよびフットプリント幅(短軸)0.6mmまで引き伸ばした。最終的な切断速度9mm/sを達成し、細長いビームフットプリントの1回の通過で基板を割ることに成功した。
【実施例3】
【0042】
従来の機械的に切断されたガラス(罫書きおよび曲げ技術)と本発明の実施形態を用いて切断したガラスのエッジ強度を比較するため、3つのバッチの5mm×70mmガラスストリップを厚さ0.63mmの親シートから調製した。親シートの熱膨張係数(CTE)は約32×10
-7/℃であった。サンプルのうち1つのバッチは従来の機械的な罫書きおよび曲げにより調製し、1つのバッチは強制冷却を用いて調製し(切断用レーザビームの細長いフットプリントに続いて水噴射を使用)、そして最後のバッチは強制冷却せずにレーザ切断で調製した。強制冷却なしでサンプルを作るために、最初のひびを、6.5ワットで動作しているCO
2レーザと焦点距離2インチ(5.08cm)の平凸球面レンズとを使用して親ガラスに生成した。一旦最初のひびが形成されると、平凸および平凹シリンドリカルレンズを使用してビームを引き伸ばした。次いでこの細長いビームを、最初のひび上に、さらに親ガラスシートの表面上に既定の切断経路に沿って通過させた。これを強制冷却なしのサンプルに対して繰り返した。3つのサンプルの組夫々のエッジ強度を、各サンプルに4点曲げ試験を施すことにより試験した。その結果を加えられた応力(MPa)に対する損傷確率の分布(ワイブル)としてプロットし、
図3に示した。
【0043】
図3は、冷却水噴射を用いて切断したサンプル(バッチ2―三角で示す、中央)と、冷却水噴射なしで切断したサンプル(バッチ1―丸で示す、右寄り)の両方が、機械的に切断されたサンプル(バッチ3―四角で示す、左寄り)より強度の点で優れていることを示している。ただし、強制冷却を使用せずにレーザ切断したサンプルが呈する平均強度が約380MPaであったのに対し、強制冷却を使用してレーザ切断したサンプルが呈する平均強度は240MPaであった。
【実施例4】
【0044】
CO
2レーザを使用して、1インチ(2.54cm)×0.5インチ(1.27cm)かつ0.7mm厚のソーダ石灰ガラス基板を、強制冷却なしでレーザ切断し分割した。このソーダ石灰ガラスの熱膨張係数(CTE)は約80×10
-7/℃であった。
【0045】
6.5ワットで駆動しているCO
2レーザと焦点距離2インチ(5.08cm)の平凸および凹レンズとを用いて最初のひびを生成した。最初のひびが形成された後、平凹シリンドリカルレンズを使用してレーザビームを引き伸ばし、そしてこのビームを最初のひび上に、さらにガラス基板の表面上に既定の切断経路に沿って通過させ、全厚クラックをこの切断経路に沿って伝播させた。最終的な切断速度25mm/sを達成し、サンプルの分割は成功した。
【実施例5】
【0046】
この例では、
図5Aの実施形態で示した走査方法を形状切断プロセスで使用する。75μmのコーニング社のコード0211ガラスを親基板として使用した。親ガラス基板は約120×150mmであった。断面直径が約2mmのレーザビームをCO
2レーザから放射した。レーザ出力は約80ワットであり、かつ走査速度は約1500mm/sであった。
【0047】
切断される形状の寸法は約100×120mmであり、角の半径は5mmであった。レーザビームの走査が開始された後1秒未満でクラックの伝播が認められた。クラックの伝播が認められると、走査プロセスを終了させた。
【0048】
全厚クラックが既定経路に沿って伝播されると、シート10は分割され、分割シート10aおよび10bとなる。例えば、1つの分割片を上述したような形状とし、
図8に示したようなものとしてもよい。誘電体または半導体材料などの1以上の材料層52を、従来の堆積プロセス(例えば、蒸着、共蒸着、スパッタリングなど)に従って、1つの分割シート(概して長方形の分割片など)上にその後堆積させてもよい。材料層は、例えばITOなどの薄膜や薄膜トランジスタを含み得、そして分割片は、ディスプレイ装置などの電子装置内で使用することができる。
【0049】
あるいは、ガラスシートを2つの分割シートに分割する前に薄膜(または薄膜デバイス)をガラスシート上に堆積させてもよく、この場合の分割では、分割シートを含む薄膜(または薄膜デバイス)を、残りの親シートから分割する。
【0050】
ガラスシートの分割についてこれまで説明してきたが、本発明の実施形態は他の脆性材料の分割にも適用することができ、この脆性材料には、例えばセラミック、ガラスセラミック、あるいは半導体材料さえも含まれる。
【0051】
上述した本発明の実施形態、特に任意の「好適な」実施形態は、単に実施可能な例であって、本発明の原理を明確に理解するための単なる説明であることを強調したい。本発明の精神および種々の原理から実質的に逸脱することなく、上述の本発明の実施形態に対し多くの変形および改変を作製することができる。全てのこのような改変および変形は、本書において本開示および本発明の範囲内に含まれ、かつ以下の請求項によって保護されると意図されている。