特許第6018525号(P6018525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018525
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】波長変換素子および波長変換装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/37 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   G02F1/37
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-42868(P2013-42868)
(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公開番号】特開2013-218307(P2013-218307A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2014年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-55426(P2012-55426)
(32)【優先日】2012年3月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】山口 省一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直剛
(72)【発明者】
【氏名】横井 美典
【審査官】 佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−108593(JP,A)
【文献】 特開2004−219845(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/025363(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00−1/125,1/21−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体レーザ発振体およびファイバグレーティングからなる外部共振器の前記ファイバグレーティングから発振された基本波の波長を変換して波長変換光を発振する周期分極反転構造を有する波長変換素子であって、前記周期分極反転構造が、交互に形成された分極反転部と非反転部とによって構成されており、前記周期分極反転構造が、戻り光を抑制するデューティ比変動部分を含み、かつ、前記周期分極反転構造の周期が前記波長変換素子内で一定であることを特徴とする、波長変換素子。
【請求項2】
前記基本波の波長と前記戻り光の波長との差が5nm以上、50nm以下であることを特徴とする、請求項1記載の素子。
【請求項3】
前記デューティ比変動部分が、デューティ比が単調増加する単調増加部と、デューティ比が単調減少する単調減少部とを備えており、前記単調増加部と前記単調減少部とが交互に設けられていることを特徴とする、請求項1または2記載の素子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の波長変換素子、
固体レーザ発振体、および
この固体レーザ発振体と外部共振器を構成し、前記基本波を発振するファイバグレーティングを備えていることを特徴とする、波長変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換素子および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
青色レーザはGaN系の半導体材料により商品化され、ディスプレイ用光源として既に実用化されている。現在は、GaN系半導体レーザで発振波長の長波長化が進められ、緑色帯近くまでレーザ発振が確認されつつある。しかしながら、商品化されている青色レーザを含め、GaN系半導体レーザは消費電力が大きいという課題を有する。
一方、波長変換素子を用いたレーザは、組立の部品点数が多くなるが、消費電力が小さく、また、導波路から出力されるビーム品質も良好なため、GaN系半導体レーザと同一な光出力であっても、光の利用効率が高いという利点を有する。また、波長が安定していることから、計測用途には低雑音の測定ができるという特長を有する。
【0003】
波長変換素子に使用する非線形効果を有する結晶としては、ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウム単結晶がある。これらの結晶は二次の非線形光学定数が高く、これら結晶に周期的な分極反転構造を形成することで、疑似位相整合(Quasi-Phase-Matched :QPM)方式の第二高調波発生(Second-Harmonic-Generation:SHG)デバイスを実現することができる。また、この周期分極反転構造内に導波路を形成することで、高効率なSHGデバイスが実現でき、ディスプレイ用途のみならず光通信用、医学用、光化学用、各種光計測用等に適した波長に比較的自由に設計することができ、幅広い応用が可能である。
【0004】
擬似位相整合による波長変換では、非線形グレーティングにより位相整合条件を擬似的に成立させ、波長変換素子の長さの2乗に比例して高い変換効率を実現できる。しかし、グレーティングの作用長に反比例して、位相整合条件を満足させる波長許容度の幅が減少する。例えば、波長変換素子の長さ10mmのLiNbO3を用いた擬似位相整合型のSHG素子において、波長850nmの光を波長425nmの第2高調波に変換する場合を例にとると、分極反転の周期は約3.2μmとなる。このとき、擬似位相整合条件を成立させるための基本波の波長許容度は、半値全幅で0.1nm以下となる。この値は、安定な波長変換を行う場合には非常に厳しい値であり、周辺温度などの環境変化により、出力が不安定になるという問題があった。
【0005】
この問題を解決するため、特許文献1(特開2000−321610)では、分極反転の周期をチャープ状に変化させることで、位相整合波長の許容度を拡大している。具体的には、分極反転の周期を距離に比例して増大させる線形チャープ構造により、位相整合波長の許容幅の増大が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−321610
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、固体レーザ発振体に対してファイバグレーティングを光学的に結合して外部共振器とした光源を基本波の光源として用い、高効率で高調波を発振させることを試みていた。この場合には、ファイバグレーティングを用いることで基本波の波長幅を精密に制御して基本波の波長ズレを極力低減した。これと共に、周期分極反転構造の周期の精度を向上させることで、高い波長変換効率を達成することを試みた。基本波の波長ズレが抑制されていることによって、周期の製造精度を向上させて位相整合波長幅を小さくしても、ピークアウトによる高調波発生効率の低下や不安定を抑制できるはずであった。
【0008】
しかし、実際に試作してみると、やはり高調波の発振出力に経時的に変動が生ずることがあった。本発明者がこの原因を検討した結果、出力変動の原因は、前記した位相整合波長の微細なズレではなく、基本波波長と少し離れた波長の戻り光の発振であった。
【0009】
本発明の課題は、高効率で波長変換光を発振させたときに、戻り光の帰還に起因する出力変動を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、固体レーザ発振体およびファイバグレーティングからなる外部共振器から発振された基本波の波長を変換して波長変換光を発振する周期分極反転構造を有する波長変換素子であって、周期分極反転構造が、交互に形成された分極反転部と非反転部とによって構成されており、周期分極反転構造が、周期分極反転構造からの戻り光を抑制するデューティ比変動部分を含み、かつ、前記周期分極反転構造の周期が前記波長変換素子内で同一であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る波長変換装置は、前記波長変換素子、固体レーザ発振体、およびこの固体レーザ発振体と外部共振器を構成し、基本波を発振するファイバグレーティングを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明者は、例えば、図2に示すように波長976nmの基本波Tを波長変換素子に入射させたとき、波長約992nmの戻り光Nが発振して光源側に帰還し、発振出力の変動を引き起こしていることを見いだした。この戻り光の波長は、位相整合波長からは外れており、位相整合波長のピークアウトをもたらすようなものではなく、未知のものであった。本発明者は、この未知な戻り光の発生要因を調べるため、周期構造を持たない素子を使用して波長特性を計測してみた。その結果、ファイバグレーティングで固定化した波長976nmのみ観測され、992nmの発振は確認されなかった。また、波長976nmには位相整合しないが、分極反転周期の異なる別の波長変換素子を使用して同様な計測をしたところ、992nmとは別の波長で戻り光が確認された。これらのことから、この戻り光の発生要因は、波長変換素子の分極反転の周期構造によるものと考えた。
【0013】
本発明者は、この戻り光による出力変動を低減するために種々検討した結果、周期分極反転構造にデューティ比変動部分を設けることによって、例えば図7に示すように戻り光が顕著に低減され、出力変動が抑制させることを見いだし、本発明に到達した。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】高調波発生装置を示す模式図である。
図2】一実施形態における基本波Tおよび戻り光Nを示すチャートである。
図3】周期分極反転構造においてデューティ比が50%で一定の例を示す模式図である。
図4】周期分極反転構造においてデューティ比が変動する例を示す模式図である。
図5】周期分極反転構造においてデューティ比が変動する例を示す模式図である。
図6】周期分極反転構造においてデューティ比が単純増加する例を示す模式図である。
図7】戻り光Nが抑制された例を示すチャートである。
図8】実施例2で得られたチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る高調波発生装置を模式的に示すブロック図である。光源1は、固体レーザ発振源2とファイバグレーティング3とを備えている。固体レーザ光源2からレーザ光Aを発振させる。レーザ光Aは、ファイバ4に入射し、導光し、ファイバグレーティング3に入射する。ここでレーザ光は波長選択を受け、コヒーレント性の極めて高い基本波が出射する。基本波Bは光学系5によって集光され、波長変換素子9の波長変換部10の一方の端面10aに入射する。
【0016】
本例では、波長変換素子9は強誘電体基板からなっており、基板内に周期分極反転構造8が形成されている。本例では、波長変換素子9の変換部10の一方の端面10aから他方の端面10bまで周期分極反転構造8が形成されている。端面10aに入射した基本波Bは、変換部10内を伝搬しながら波長変換光を発生させる。そして、基本波Cおよび波長変換光Dは、出射面10bから外部へと出射される。
【0017】
ここで、図3に示すように、周期分極反転構造8は、分極反転部分8aと非反転部分8bとが交互に多数形成されている。ここで、光の伝搬方向に見たときに、分極反転部8aの幅と非反転部8bの幅との合計が反転周期Pであり、分極反転部8aの幅をIとすると、I/Pをデューティ比と呼ぶ。デューティ比I/Pは、50%であり、一定であった。
【0018】
ここで、本発明者は、発振効率を高くするために、周期Pを一定値に可能な限り近づけることを試みていた。しかし、製造精度が向上すると、図2に示すように、基本波Tと少し離れた位置に戻り光Nが発生し、これによって高調波Dの発振強度が変動することが判明した。
【0019】
そこで、例えば図4に示すように、周期Pは一定としつつ、デューティ比I/Pを滑らかに変化させ、デューティ比変動部分としてみた。この結果、例えば図7に示すように、不要な戻り光Nが抑制され、高調波の出力変動が抑制されることを見いだした。
【0020】
ここで、デューティ比変動部分は、戻り光Nを抑制する効果を有していたが、基本波の波長ズレが少ないので、位相整合波長のピークアウトによる出力低下を抑制するものではない。
【0021】
固体レーザ発振体としては、高い信頼性を有するGaAs系やInP系材料によるレーザが好適である。例えば、緑色レーザの場合は、波長1064nm付近で発振するGaAs系のレーザを用いることになる。GaAs系やInP系のレーザは信頼性が高いため、一次元状に配列したレーザアレイ等の光源も実現可能である。
【0022】
本発明では、一定波長の基本波を発生させる方法は、波長を固定できれば限定されず、固体レーザ発振体にブラッググレーティングが集積されたDBRレーザなどであってもよい。ただし、本発明は、ファイバグレーティングを使用した場合に特に有用である。
【0023】
ファイバグレーティングとは、光ファイバのコア部に周期的な屈折率変化を形成したものである。本発明で使用しているファイバグレーティングは、固体レーザ発振体の励振波長を安定化するために、その波長光のみを選択的に反射する反射フィルタとして機能するものである。
【0024】
ファイバグレーティングはグレーティングの設計により、反射率を強めたり、反射させる波長帯域を広げたりするなど調整することができる。反射率を強めれば、外部からの反射による影響を小さくすることができ、固体レーザ発振体の波長を安定化させることができる。しかしながら、反射率を高くすればするほど、取り出しの出力が低下するため、結果として、大きな波長変換光が得られなくなる。従い、大きな波長変換光を得られるようにするには、グレーティングの反射率をあまり高くすることはできない。
【0025】
本発明では、周期分極反転構造にデューティ比変動部分が設けられている。これについて図3図6を参照しつつ説明する。
【0026】
まず、デューティ比とは、素子中における光の伝搬方向に見たときの、反転周期Pに対する分極反転部8aの幅Iの割合(I/P)のことである。反転周期Pとは、分極反転部8aの幅Iと非反転部8bの幅との合計値である。デューティ比変動部分とは、反転周期Pに対する反転部の幅の割合I/Pが所定範囲内で変化する部分のことを意味している。
【0027】
好適な実施形態においては、デューティ比変動部分が、周期が単調増加する単調増加部分と、周期が連続的に減少する単調減少部分とを有しており、両者が交互に配列される。この構造は、前述した戻り光の抑制に特に効果的であり、かつ波長変換光の発振強度も大きくできる。
【0028】
例えば、図4の素子においては、I/Pには、単調増加部分LUと単調減少部分LDとが交互に設けられている。本例では、単調増加部分Uでは、I/Pが長さ方向の位置xに対して一次関数的に増加しており、単調減少部分LDでは、I/Pが長さ方向の位置xに対して一次関数的に減少している。この結果、I/Pは、最大値Maxと最小値Minとの間で上下動する。
【0029】
また、図5の例においては、I/Pには、単調増加部分LUと単調減少部分LDとが交互に設けられている。本例では、単調増加部分LUでは、I/Pが長さ方向の位置xに対して正弦関数的に増加しており、単調減少部分LDでは、I/Pが長さ方向の位置xに対して正弦関数的に減少している。この結果、I/Pは、最大値Maxと最小値Minとの間で上下動する。
【0030】
また、図6の例では、I/Pが、最小値Minから最大値Maxに向かって単調増加している。I/Pは入射側から出射側へと向かって単調減少していてもよい。
【0031】
I/Pが単調増加する場合、単調減少する場合、それぞれ、素子の長さ方向の位置xに対して、一次関数的に増加、減少したり、正弦関数的に増加、減少していてよい。しかし、この関数は限定はされず、例えば、I/Pが、位置xに対して、二次関数的、三次関数的に増加、減少してよく、また円弧状に増加、減少してもよい。さらには、I/Pが、xに対して、離散的に増加、減少していてもよいが、波長変換光の発振効率を向上させるという観点からは、I/Pが単調に増加、減少していることが好ましい。
【0032】
I/Pの最大値をMaxとしたとき、戻り光を抑制するという観点からは、Maxは0.52以上が好ましく、0.55以上が更に好ましい。また、Maxは、波長変換光の発振強度を大きくするという観点からは、0.7以下が好ましく、0.6以下が更に好ましい。同様に、I/Pの最小値をMinとしたとき、戻り光を抑制するという観点からは、Minは0.48以下が好ましく、0.45以下が更に好ましい。また、Minは、波長変換光の発振強度を大きくするという観点からは、0.3以上が好ましく、0.4以上が更に好ましい。
【0033】
周期Pは、目的とする位相整合波長および材質の屈折率によって決定されるものであるので限定されなが、波長810nmで位相整合させる場合には周期の平均値POは2.7〜2.8umであることが好ましく、波長1064nmで位相整合させる周期の平均値POは6.5〜6.7umであることが好ましく、波長1550nmで位相整合させる場合には周期の平均値POは17.4〜17.8umであることが好ましい。位相整合波長と周期の平均値POの関係は略線形増加の関係を有している。
【0034】
周期分極反転構造は、素子の全長にわたって形成されていてよく、あるいは素子の一部にのみ形成されていてよい。また、デューティ比変動部分は、周期分極反転構造の全長を占めていてよいが、一部を占めるだけであってもよい。デューティ比変動部分が周期分極反転構造の一部を占めている場合、残りはデューティ比一定であることが好ましい。
基本波Tの波長と戻り光Nの波長との差は、通常は5nm以上、さらには10nm以上である。また、この差は、通常は50nm以下であり、好ましくは30nm以下であり、さらには25nm以下である。導波路の構造に依存するが、基本波Tの波長に対して、戻り光Nの波長は長波長側となることが多いが、製造上の要因などから、短波長側に発生することもある。
【0035】
波長変換素子は、好ましくは第二高調波、第三高調波、第四高調波などの高調波発振素子であり、これらには本発明が原理的に適用可能であるが、これに限定されるものではなく、差周波発生、和周波発生用の波長変換素子にも適用可能である。
【0036】
好適な実施形態においては、周期分極反転構造8が、素子9内のチャンネル型光導波路10内に設けられている。特に好適な実施形態においては、光導波路がリッジ型の光導波路であり、非線形光学結晶を加工、例えば機械加工やレーザ加工することによって物理的に加工し、成形することによって得られる。
【0037】
波長変換素子を構成する材質は、光の変調が可能であれば特に限定されないが、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体、ニオブ酸カリウムリチウム、KTP、GaAs及び水晶などを例示することができる。
【0038】
強誘電体単結晶中には、光導波路の耐光損傷性を更に向上させるために、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、スカンジウム(Sc)及びインジウム(In)からなる群より選ばれる1種以上の金属元素を含有させることができ、マグネシウムが特に好ましい。強誘電体単結晶中には、ドープ成分として、希土類元素を含有させることができる。この希土類元素は、レーザ発振用の添加元素として作用する。この希土類元素としては、特にNd、Er、Tm、Ho、Dy、Prが好ましい。
【0039】
好適な実施形態においては、波長変換素子を別体の支持基板に対して接合する。支持基体の具体的材質は特に限定されず,ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、石英ガラスなどのガラスや水晶、Siなどを例示することができる。図示しない接着層の材質は、無機接着剤であってよく、有機接着剤であってよく、無機接着剤と有機接着剤との組み合わせであってよい。
【実施例】
【0040】
(比較例)
図1および図3を参照しつつ説明した発振装置を作製した。
具体的には、厚さ0.5mmのMgO5%ドープニオブ酸リチウム5度オフカットY基板9上に櫛状周期電極をフォトリソグラフィ法によって形成した。基板裏面に全面にわたって電極膜を形成したのち、パルス電圧を印加して周期分極反転構造8を形成した。
【0041】
基板に周期分極反転構造を形成した後、厚さ0.4μmのSiO2アンダークラッドをスパッタ法によって成膜した。厚さ0.5mmのノンドープニオブ酸リチウム基板に接着剤を塗布した後、前記のMgOドープニオブ酸リチウム基板と貼り合せ、MgOドープニオブ酸リチウム基板の表面を厚さ3.5μmとなるまで研削、研磨した。そして、レーザアブレーション加工法により、リッジ型導波路10を形成した。レーザアブレーションにより溝加工したリッジ導波路の両端の掘り込み量は2.3umで、リッジ上部の幅5.2umとした。
【0042】
ただし、長さ8mmの素子内で、周期Pを一定周期PO=5.08μmとした。光導波路の形成後、ダイサーで長さ約12mm、幅0.7mmサイズで切断し、さらにこの素子を定盤および治具にセットし、両端面を研磨し、研磨面を形成した。次いで、端面上に反射防止膜を形成した。
【0043】
また、固体レーザ発振器2およびファイバグレーティング3は、以下のものとした。固体レーザ共振器2には波長980nm付近で発振するGaAs系の半導体レーザを使用した。ファイバグレーティング3には、反射波長が976nm、反射率が3%のものを使用した。
【0044】
図1に示す各部品および波長変換素子を光軸調整し、樹脂によって固定した後に装置内に実装した。
【0045】
ファイバグレーティング3により光源1から波長976nmの基本波が安定的に発振するように制御し、波長変換素子に出力約80mWの光を入射させた結果、位相整合し、波長488nmの第二高調波が発振した。この出力は、最大11mW程度であったが、経時的に大きく変動し、安定しなかった。
【0046】
(実施例1)
比較例と同様に発振装置を作製した。
比較例と同じく、分極反転周期Pは5.08μmとした。しかし、I/Pは、最大値0.6と最小値0.4との間で、図4に示すように三角波状に2mmの間隔で増加、減少させた。
【0047】
比較例と同様、素子に出力約80mWの光を入射させた結果、位相整合し、波長488nmの第二高調波が発振した。この出力は、平均して9mW程度であった。比較例に比べて僅かに最大出力は低下したが、出力は安定した。また、この波長変換素子の設計では、素子からの反射が抑制されており、励起光以外の波長の発振が観測されなかった。
【0048】
(実施例2)
実施例1と同じく、分極反転周期Pは5.08μmとした。I/Pは、最大値0.53と最小値0.47との間で、図4に示すように三角波状に2mmの間隔で増加、減少させた。
【0049】
実施例1と同様に、素子に出力約80mWの光を入射させた結果、位相整合し、波長488nmの第二高調波が発振し、出力は平均して10.3mW程度であった。比較例に比べて僅かに最大出力は低下したのみであり、出力も安定した。但し、この波長変換素子の設計においては、図8に示すように、素子からの反射が僅かに生じている結果が見られた。しかし、反射光量が微小であるため、ほとんどの用途には使用可能である。
【0050】
(実施例3)
実施例1と同じく、分極反転周期Pは5.08μmとした。I/Pは、最大値0.7と最小値0.3との間で、図4に示すように三角波状に2mmの間隔で増加、減少させた。
【0051】
実施例1と同様に、素子に出力約80mWの光を入射させた結果、位相整合し、波長488nmの第二高調波が発振し、出力は平均して5.5mWとなり、比較例に対して半減してしまったが、出力は安定したものが得られた。素子からの反射は全く見られなかった。
【0052】
デューティ比を深く変調させると、効率が低下するため、SHGの効率の観点からはI/Pは最大値0.6と最小値0.4の間とするのが好ましい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8