【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例において、%及び部は、特にことわりのない限り、すべて質量基準である。また塗工量は絶乾塗工量である。
【0032】
不織布基材Aの作製
繊度0.06dtex(平均繊維径2.4μm)、繊維長3mmの配向結晶化ポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維40質量部と繊度0.1dtex(平均繊維径3.0μm)、繊維長3mmの配向結晶化PET系短繊維20質量部と繊度0.2dtex(平均繊維径4.3μm)、繊維長3mmの単一成分型バインダー用PET系短繊維(軟化点120℃、融点230℃)40質量部とを一緒に混合し、パルパーにより水中で離解させ、アジテーターによる攪拌のもと、濃度1質量%の均一な抄造用スラリーを調製した。傾斜型抄紙機を用い、この抄造用スラリーを湿式方式で抄き上げ、130℃のシリンダードライヤーによって、バインダー用PET系短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付12g/m
2の不織布とした。さらに、この不織布を誘電発熱ジャケットロール(金属製熱ロール)及び弾性ロールからなる1ニップ式熱カレンダーを使用して、熱ロール温度205℃、線圧100kN/m、処理速度40m/分の条件で熱カレンダー処理し、厚み17μmの不織布基材を作製した。
【0033】
不織布基材Bの作製
繊度0.06dtex(平均繊維径2.4μm)、繊維長3mmの配向結晶化ポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維を60質量部とし、繊度0.1dtex(平均繊維径3.0μm)、繊維長3mmの配向結晶化PET系短繊維を用いなかった以外は、不織布基材Aと同様にして、厚み16μmの不織布基材Bを作製した。
【0034】
不織布基材Cの作製
繊度0.2dtex(平均繊維径4.3μm)、繊維長3mmの単一成分型バインダー用PET系短繊維(軟化点120℃、融点230℃)の代わりに繊度0.8dtex(平均繊維径10.4μm)、繊維長5mmの芯鞘型バインダー用PP/PE系短繊維(芯部融点165℃、鞘部融点135℃)を用い、熱カレンダー処理の代わりに線圧200kN/mにてカレンダー処理した以外は、不織布基材Aと同様にして、厚み20μmの不織布基材Cを作製した。
【0035】
塗液Aの作製
無機顔料として、平均粒子径2.3μm、脱水温度500℃のベーマイト100部を、その1質量%水溶液の25℃における粘度が200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.3%水溶液120部に分散し、よく攪拌してベーマイト分散液を作製した。次いで、その1質量%水溶液の25℃における粘度が7000mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.5%水溶液200部を混合、攪拌し、更に、接着剤として、45%カルボキシ変性スチレン/ブタジエン共重合体のラテックス高分子10部を混合、攪拌して、塗液を作製した。
【0036】
塗液Bの作製
無機顔料として平均粒子径2.3μm、脱水温度500℃のベーマイト50部と平均粒子径0.4μm、脱水温度500℃のベーマイト50部を混合して用いた以外は塗液Aと同様にして塗液Bを作製した。
【0037】
塗液Cの作製
無機顔料として平均粒子径0.4μm、脱水温度500℃のベーマイト100部を用いた以外は塗液Aと同様にして塗液Cを作製した。
【0038】
塗液Dの作製
無機顔料として平均粒子径2.5μm、脱水温度200℃の水酸化アルミニウム100部を用いた以外は塗液Aと同様にして塗液Dを作製した。
【0039】
セパレータAの作製
不織布基材Aのシリンダードライヤー側に接した面上に、塗液Aを絶乾塗工量が8g/m
2となるように塗工、乾燥した後、更に同じ塗工面に再度塗液Aを絶乾塗工量が8g/m
2となるように塗工、乾燥してセパレータAを作製した。
【0040】
セパレータBの作製
不織布基材Aのシリンダードライヤー側に接した面上に、塗液Bを絶乾塗工量が16g/m
2となるように塗工、乾燥してセパレータBを作製した。
【0041】
セパレータCの作製
不織布基材Aのシリンダードライヤー側に接した面上に、塗液Aを絶乾塗工量が8g/m
2となるように塗工、乾燥した後、更に同じ塗工面に塗液Cを絶乾塗工量が8g/m
2となるように塗工、乾燥してセパレータCを作製した。
【0042】
セパレータDの作製
不織布基材Aの代わりに不織布基材Bを用いた以外はセパレータAと同様にしてセパレータDを作製した。
【0043】
セパレータEの作製
不織布基材Aのシリンダードライヤー側に接した面上に、塗液Aを絶乾塗工量が16g/m
2となるように塗工、乾燥してセパレータEを作製した。
【0044】
セパレータFの作製
不織布基材Aのシリンダードライヤー側に接した面上に、塗液Cを絶乾塗工量が8g/m
2となるように塗工、乾燥した後、更に同じ塗工面に塗液Cを絶乾塗工量が8g/m
2となるように塗工、乾燥してセパレータFを作製した。
【0045】
セパレータGの作製
不織布基材Aのシリンダードライヤー側に接した面上に、塗液Dを絶乾塗工量が8g/m
2となるように塗工、乾燥した後、更に同じ塗工面に塗液Dを絶乾塗工量が8g/m
2となるように塗工、乾燥してセパレータGを作製した。
【0046】
セパレータHの作製
不織布基材Cのシリンダードライヤー側に接した面上に、塗液Aを絶乾塗工量が8g/m
2となるように塗工、乾燥した後、更に同じ塗工面に塗液Aを絶乾塗工量が8g/m
2となるように塗工、乾燥してセパレータHを作製した。
【0047】
<評価>
【0048】
[最大ポア径]
各不織布基材及び各セパレータについて、PMI社製パームポロメーターCFP−1500Aを用いて最大ポア径を測定した。結果は表1に示した。
【0049】
[耐熱性]
作製した各セパレータから50mm×50mmのシートサンプルを切り出し、シートサンプルのCD(クロスディレクション、横方向)辺をクリップで固定して耐熱ガラス板に挟んで、150℃及び180℃の恒温槽中に1時間保持した後に取り出してサンプルの幅を測定し、加熱前後での収縮率を算出した。評価は以下に従った。
◎:収縮率が2%未満でほとんど収縮は見られない。
○:収縮率が2〜5%で実用上問題ないレベルである。
△:収縮率が5〜8%で局所過熱による収縮がやや懸念される。
×:収縮率が8%以上で局所過熱時収縮が懸念される。
【0050】
[初回充放電時のクーロン効率]
各セパレータを用い、正極活物質がマンガン酸リチウム、負極活物質が人造黒鉛、電解液がリチウムヘキサフルオロフォスフェートのエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの1/1/1(容量比)混合溶媒溶液(1mol/L)である設計容量が100mAhのラミネート型リチウムイオン二次電池を作製した。
【0051】
その後、作製した各電池について、100mA定電流充電→4.4V定電圧充電→充電電流10mAになったら100mAで2.8Vまで定電流放電を行い、充電容量及び放電容量を測定し、(クーロン効率)=(放電容量)/(充電容量)を算出した。クーロン効率が小さいものは微小短絡が発生していると考えられる。
【0052】
[電池のハイレート特性]
作製した各電池について、100mA定電流充電→4.2V定電圧充電→充電電流10mAになったら100mAで2.8Vまで定電流放電→100mA定電流充電→4.2V定電圧充電→充電電流10mAになったら
300mAで2.8Vまで定電流放電を行い、[(300mAにおける放電容量)/(100mAにおける放電容量)]×100(%)として放電容量比を求めハイレート特性とした。
【0053】
【表1】
【0054】
表1から明らかなように、不織布基材の構成繊維の融点が200℃以上であり、且つ該無機顔料の脱水温度が250℃以上であり、また、不織布基材の最大ポア径nに対する該セパレータの最大ポア径sの比s/nが1/5〜1/20である本発明のセパレータは、耐熱性に特に優れ、初回充放電時のクーロン効率及びハイレート特性に優れる。
【0055】
これに対し、不織布基材の最大ポア径nに対する該セパレータの最大ポア径sの比s/nが1/5超であるセパレータEでは、クーロン効率が低くなり、該比が1/20未満であるセパレータFでは、ハイレート特性が低くなった。また、無機顔料の脱水温度が250℃未満であるセパレータGでは、耐熱性が低くなり、不織布基材の構成繊維の融点が200℃未満であるセパレータHでも、耐熱性が低くなった。