(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板処理装置1の正面図である。
図2は、基板処理装置1の平面図である。
図2では、基板処理装置1の向きを
図1から変更している。基板処理装置1は、半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)を1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1では、基板9に対して処理液が吐出されて所定の処理が行われる。本実施の形態では、処理液である洗浄液の液滴を基板9上に吐出することにより、基板9上からパーティクル等を除去する洗浄処理が行われる。基板処理装置1では、例えば、直径約20μmの液滴が、基板9に向けてスプレー状に吐出される。
【0020】
図1および
図2に示すように、基板処理装置1は、基板保持部21と、カップ部22と、基板回転機構23と、処理液供給部3と、供給部移動機構35と、保護液供給部36と、ヘッド待機部4と、吐出検査部5と、チャンバ6と、後述する制御ユニットとを備える。チャンバ6は、基板保持部21、カップ部22、基板回転機構23、処理液供給部3、供給部移動機構35、保護液供給部36、ヘッド待機部4および吐出検査部5等の構成を内部空間60に収容する。チャンバ6は、外部から内部空間60への光の入射を遮る遮光チャンバである。
図1および
図2では、チャンバ6を破線にて示し、チャンバ6の内部を図示している。
【0021】
基板保持部21は、チャンバ6内において基板9の一方の主面91(以下、「上面91」という。)を上側に向けた状態で基板9を保持する。基板9の上面91には、回路パターン等の微細パターンが形成されている。カップ部22は、基板9および基板保持部21の周囲を囲む略円筒状の部材である。基板回転機構23は、基板保持部21の下方に配置される。基板回転機構23は、基板9の中心を通るとともに基板9の上面91に垂直な回転軸を中心として、基板9を基板保持部21と共に水平面内にて回転する。
【0022】
処理液供給部3は、処理液を下方に向けて吐出する吐出ヘッド31と、吐出ヘッド31に処理液を供給する処理液配管32とを備える。吐出ヘッド31は、カップ部22の内側において基板保持部21の上方に配置される。換言すれば、吐出ヘッド31の下面は、カップ部22の上部開口220と、基板9の上面91との間に位置する。吐出ヘッド31は、後述する複数の吐出口から相互に分離した微小な液滴を連続的に吐出する装置である。吐出ヘッド31により、基板9の上面91に向けて処理液の微小液滴が吐出される。処理液としては、純水(好ましくは、脱イオン水(DIW:deionized water))、炭酸水、アンモニア水と過酸化水素水との混合液等の液体が利用される。吐出ヘッド31からの処理液の設計上の吐出方向は、上下方向(すなわち、重力方向)におよそ平行である。
【0023】
図3は、吐出ヘッド31の下面311を示す底面図である。吐出ヘッド31の下面311には、複数の吐出口314が設けられる。以下、吐出ヘッド31の下面311を「吐出面311」という。複数の吐出口314は、それぞれが
図3中の左右方向に略直線状に延びる4つの吐出口列を備える。各吐出口列では、複数の吐出口314が所定の配列ピッチにて配列される。各吐出口314の直径は、およそ5μm〜10μmである。
図3では、各吐出口314を実際よりも大きく、吐出口314の個数を実際よりも少なく描いている。
【0024】
図4は、吐出ヘッド31の縦断面図である。吐出ヘッド31は、ヘッド本体部312と、圧電素子315とを備える。ヘッド本体部312の内部には、処理液を保持する空間である処理液保持部316が設けられる。処理液保持部316の一方の端部は、吐出ヘッド31に処理液を供給する処理液供給部に接続される。処理液保持部316の他方の端部は、吐出ヘッド31からの処理液を回収する処理液回収部に接続される。ヘッド本体部312の外面の一部である下面は、上述の吐出面311である。複数の吐出口314はそれぞれ処理液保持部316に接続される。圧電素子315は、ヘッド本体部312の上面に取り付けられる。圧電素子315により、ヘッド本体部312を介してヘッド本体部312内の処理液に振動が付与されることにより、複数の吐出口314のそれぞれから処理液の微小液滴が吐出される。
【0025】
図1および
図2に示すように、供給部移動機構35は、アーム351と、回転軸352と、ヘッド回転機構353と、ヘッド昇降機構354とを備える。アーム351は、回転軸352から水平方向に延びる。アーム351の先端部には、吐出ヘッド31が取り付けられる。ヘッド回転機構353は、吐出ヘッド31をアーム351と共に回転軸352を中心として水平方向に回転する。ヘッド昇降機構354は、吐出ヘッド31をアーム351と共に上下方向に移動する。ヘッド回転機構353は、例えば、電動モータを備える。ヘッド昇降機構354は、例えば、ボールねじ機構および電動モータを備える。
【0026】
保護液供給部36は、吐出ヘッド31に直接的または間接的に固定され、保護液を斜め下方に向けて吐出する。
図1および
図2に示す例では、保護液供給部36はアーム351に取り付けられ、吐出ヘッド31に間接的に固定される。保護液としては、上述の処理液と同様に、純水(好ましくは、脱イオン水)、炭酸水、アンモニア水と過酸化水素水との混合液等の液体が利用される。保護液は処理液と同じ種類の液体でもよく、異なる種類の液体でもよい。
【0027】
基板処理装置1では、保護液供給部36から基板9の上面91に向けて液柱状に吐出された保護液が、吐出ヘッド31の下方において基板9上に広がることにより、吐出ヘッド31の真下に所定の厚さの保護液の膜(以下、「保護液膜」という。)が形成される。保護液供給部36は、ヘッド回転機構353およびヘッド昇降機構354により、吐出ヘッド31と共に移動する。
【0028】
図5は、制御ユニット7の機能を示すブロック図である。
図5では、制御ユニット7以外の構成も併せて描いている。制御ユニット7は、処理制御部71と、検査制御部72と、判定部75と、メンテナンス制御部76とを備える。判定部75は、上述の吐出検査部5の一部でもある。判定部75は、その判定結果に基づいて、メンテナンス制御部76、および、モニタ等の報知部78を制御する。
【0029】
図1および
図2に示す基板処理装置1において基板9の処理が行われる際には、まず、チャンバ6の開閉可能な遮光扉(図示省略)が開放され、基板9がチャンバ6内に搬入されて基板保持部21により保持される。基板9の搬入時には、吐出ヘッド31は、
図2に二点鎖線にて示すように、カップ部22の外側に配置されたヘッド待機部4上にて待機している。基板9が基板保持部21により保持されると、上記遮光扉が閉鎖される。そして、処理制御部71により基板回転機構23が駆動され、基板9の回転が開始される。
【0030】
続いて、処理制御部71により供給部移動機構35のヘッド回転機構353およびヘッド昇降機構354が駆動され、吐出ヘッド31および保護液供給部36が、ヘッド待機部4上から上昇して回転し、カップ部22の上方へと移動した後に下降する。これにより、吐出ヘッド31および保護液供給部36が、カップ部22の上部開口220を介してカップ部22の内側かつ基板保持部21の上方へと移動する。次に、保護液供給部36から基板9上への保護液の供給が開始され、基板9の上面91の一部を覆う保護液膜が形成される。また、吐出ヘッド31の複数の吐出口314(
図3参照)から、保護液膜が形成された基板9の上面91に向けて処理液の吐出(すなわち、微小液滴の噴射)が開始される。保護液膜は、複数の吐出口314からの処理液の基板9上における設計上の複数の着液点(すなわち、微小液滴の着弾点)を覆う。
【0031】
吐出ヘッド31から保護液膜に向けて噴射された多数の微小液滴は、基板9の上面91上の保護液膜に衝突し、保護液膜を介して基板9の上面91に間接的に衝突する。そして、基板9の上面91に付着しているパーティクル等の異物が、処理液の微小液滴の衝突による衝撃により基板9上から除去される。換言すれば、処理液の微小液滴により保護液膜を介して基板9に間接的に付与される運動エネルギーにより、基板9の上面91の洗浄処理が行われる。
【0032】
このように、処理液の微小液滴が保護液膜を介して基板9に衝突することにより、微小液滴が直接的に基板に衝突する場合に比べて、基板9の上面91に形成されたパターン等にダメージを与えることを防止または抑制しつつ、基板9の洗浄処理を行うことができる。また、基板9上の洗浄処理が行われる部位が保護液により覆われているため、基板9上から除去されたパーティクル等が、基板9の上面91に再付着することを防止または抑制することができる。
【0033】
基板処理装置1では、保護液および処理液の吐出と並行して、ヘッド回転機構353による吐出ヘッド31および保護液供給部36の回動が行われる。吐出ヘッド31および保護液供給部36は、回転中の基板9の中央部の上方と基板9の外縁部の上方との間にて、水平に往復移動を繰り返す。これにより、基板9の上面91全体に対して洗浄処理が行われる。基板9の上面91に供給された保護液および処理液は、基板9の回転により、基板9のエッジから外側へと飛散する。基板9から飛散した保護液および処理液は、カップ部22により受けられて廃棄または回収される。
【0034】
吐出ヘッド31からの処理液による所定の処理(すなわち、基板9の洗浄処理)が終了すると、保護液および処理液の吐出が停止される。吐出ヘッド31および保護液供給部36は、ヘッド昇降機構354によりカップ部22の上部開口220よりも上側まで上昇する。そして、ヘッド回転機構353により、基板保持部21および基板9の上方からヘッド待機部4の上方へと移動する。
【0035】
図6は、ヘッド待機部4および吐出検査部5を拡大して示す平面図である。
図7は、ヘッド待機部4の上部近傍を拡大して示す斜視図である。ヘッド待機部4は、待機ポッド41と、メンテナンス部42とを備える。待機ポッド41は、カップ部22の外側に配置される略直方体状の容器であり、内部に液体を貯溜することができる。具体的には、待機ポッド41の内部空間40に配置される貯溜槽44内に液体が貯溜される。待機ポッド41の内部空間40の上部は蓋部43により覆われる。蓋部43には、吐出ヘッド31および保護液供給部36にそれぞれ対応する第1開口431および第2開口432が設けられる。
図6では、待機ポッド41上に位置する吐出ヘッド31および保護液供給部36を二点鎖線にて示す。貯溜槽44は、第1開口431の下方に位置する。メンテナンス部42は、待機ポッド41内の貯溜槽44の側面に取り付けられ、吐出ヘッド31のメンテナンスに利用される。メンテナンス部42は、貯溜槽44内に貯溜された液体に振動を付与する振動付与部である。メンテナンス部42として、例えば、超音波振動子が利用される。
【0036】
図7では、吐出ヘッド31の吐出面311が、待機ポッド41の蓋部43から上方に離間している。
図7に示す位置に吐出ヘッド31が位置している状態で、後述する吐出ヘッド31の吐出動作の検査が行われる。吐出ヘッド31の検査は、例えば、新たな基板9のロットに対する処理が開始される前に行われる。以下の説明では、
図7に示す吐出ヘッド31の位置を「検査位置」という。
【0037】
図6に示すように、吐出検査部5は、光出射部51と、撮像部52と、光出射部清掃部53と、撮像部清掃部54とを備える。
図7に示すように、光出射部51および撮像部52は、検査位置に位置する吐出ヘッド31の真下を避けて、吐出ヘッド31の斜め下方に配置される。
図7では、光出射部清掃部53および撮像部清掃部54の図示を省略している。
【0038】
図6および
図7に示すように、光出射部51は、光出射部本体511と、光出射部カバー512とを備える。光出射部カバー512は、光出射部本体511の周囲を囲み、光出射部本体511を内部に収容する。換言すれば、光出射部本体511は光出射部カバー512により被覆される。光出射部カバー512は、透光性を有する材料(例えば、透明なポリ塩化ビニル)により形成される。光出射部本体511は、光源と、当該光源からの光を略水平方向に延びる線状光に変換する光学系とを備える。光源としては、例えば、レーザダイオードやLED(light emitting diode)素子が利用される。
【0039】
光出射部本体511は、予め定められた仮想面である光存在面に沿って、検査位置に位置する吐出ヘッド31の下方に向けて光を出射する。光出射部本体511からの光は、光出射部カバー512を介して出射される。
図7では、光出射部本体511の光軸J1を一点鎖線にて描き、光出射部本体511から出射される面状の光の輪郭を、符号510を付す二点鎖線にて示す。光出射部51からの面状光510は、吐出ヘッド31の吐出面311と待機ポッド41の蓋部43との間の間隙を通過する。換言すれば、上述の光存在面は、検査位置に位置する吐出ヘッド31の下端と待機ポッド41の上端との間の間隙を通過する。
【0040】
基板処理装置1では、検査位置に位置する吐出ヘッド31の複数の吐出口314(
図3参照)から、待機ポッド41の第1開口431に向けて、基板9上に吐出する場合と同様に処理液が吐出される。そして、複数の吐出口314から吐出された処理液である複数の飛翔体が、上述の光存在面を通過する(すなわち、面状光510を通過する)際に、光出射部51から当該複数の飛翔体に光が照射される。面状光510は、吐出ヘッド31からの処理液の設計上の吐出方向(すなわち、複数の飛翔体の予め定められた所定の吐出方向)におよそ垂直である。厳密には、面状光510(すなわち、光存在面)は、複数の飛翔体の所定の吐出方向に垂直な平面に対して、僅かな角度(例えば、5°〜10°)だけ傾斜していることが好ましい。これにより、複数の飛翔体上に、より明瞭な輝点(後述)を発生させることができる。
【0041】
図6および
図7に示すように、撮像部52は、撮像部本体521と、撮像部カバー522とを備える。撮像部カバー522は、撮像部本体521の周囲を囲み、撮像部本体521を内部に収容する。換言すれば、撮像部本体521は撮像部カバー522により被覆される。撮像部カバー522は、透光性を有する材料(例えば、透明なポリ塩化ビニル)により形成される。撮像部本体521は、上記光存在面よりも下方にて、撮像軸J2を吐出ヘッド31の下方に位置する面状光510に向けて配置される。撮像部本体521における撮像方向(すなわち、撮像軸J2が向く方向)は、複数の飛翔体の所定の吐出方向に垂直な平面に対して傾斜している。撮像部本体521としては、例えば、CCD(charge-coupled device)カメラが利用される。撮像部52は、面状光510を通過する処理液(すなわち、複数の飛翔体)を撮像部カバー522を介して撮像することにより、当該複数の飛翔体上に現れる複数の輝点を含む検査画像を取得する。吐出検査部5では、撮像部52による撮像結果から、1フレームの静止画が検査画像として抽出される。
【0042】
図8は、
図6と同様に、ヘッド待機部4および吐出検査部5を拡大して示す平面図である。符号J4を付す一点鎖線は、撮像部52の撮像軸J2(
図7参照)を、吐出ヘッド31からの処理液の設計上の吐出方向に垂直な投影面(すなわち、水平面)上に当該吐出方向に投影した投影撮像軸である。符号J3を付す一点鎖線は、光出射部51の光軸J1を、当該投影面上に吐出方向に投影した投影光軸である。投影撮像軸J4と投影光軸J3とは交点K1を有する。投影撮像軸J4の交点K1と撮像部52との間の部位と、投影光軸J3の交点K1と光出射部51との間の部位との成す角度αは、90°よりも大きい。
【0043】
図6に示す光出射部清掃部53は、光出射部カバー512の外面のうち、検査位置に位置する吐出ヘッド31を向く前面513(すなわち、光出射部51の光出射方向前側の面)の側方に配置される。光出射部清掃部53から光出射部カバー512の前面513に向けてガス(例えば、窒素ガス)が噴射される。光出射部カバー512の前面513には、吐出ヘッド31から基板9に向けて吐出された処理液、保護液供給部36から基板9に向けて吐出された保護液、または、基板処理装置1にて利用される他の液体の飛沫やミスト等が付着することがある。光出射部清掃部53から噴射されるガスにより、光出射部カバー512の前面513に付着した飛沫やミスト等が除去され、光出射部カバー512の前面513が清掃される。
【0044】
撮像部清掃部54は、撮像部カバー522の外面のうち、検査位置に位置する吐出ヘッド31を向く前面523(すなわち、撮像部カバー522の撮像方向前側の面)の側方に配置される。撮像部清掃部54から撮像部カバー522の前面523に向けてガス(例えば、窒素ガス)が噴射される。撮像部カバー522の前面523には、光出射部カバー512と同様に、上記処理液や保護液、または、基板9の処理に利用される他の液体の飛沫やミスト等が付着することがある。撮像部清掃部54から噴射されるガスにより、撮像部カバー522の前面523に付着した飛沫やミスト等が除去され、撮像部カバー522の前面523が清掃される。
【0045】
基板処理装置1において吐出ヘッド31の吐出動作の検査が行われる際には、まず、検査制御部72(
図5参照)により、処理液供給部3が制御されることにより、
図7に示す待機ポッド41の上方の検査位置に位置する吐出ヘッド31から、待機ポッド41の第1開口431に向けて処理液が吐出される。また、検査制御部72により、光出射部51および撮像部52が制御されることにより、上述のように、面状光510を通過する処理液である複数の飛翔体上に現れる複数の輝点を含む検査画像が取得される。検査画像は、判定部75に送られる。
【0046】
判定部75では、撮像部52からの検査画像に基づいて、吐出ヘッド31における複数の吐出口314(
図3参照)のそれぞれの吐出動作の良否が判定される。判定部75による判定は、例えば、吐出ヘッド31から正常に吐出された処理液上の複数の輝点を含む基準画像を予め準備しておき、当該基準画像と検査画像とを比較することにより行われる。基準画像上の輝点に対応する輝点が検査画像上に存在しない場合、あるいは、対応する輝点の位置が大きくずれている場合、判定部75では、検査画像上の当該輝点に対応する吐出口314からの処理液の吐出に異常が生じていると判定される。吐出動作の異常(すなわち、吐出不良)は、例えば、吐出口314から処理液が吐出されない不吐出や、吐出口314からの液滴が所定の吐出方向からずれて吐出される斜め吐出である。なお、判定部75による吐出ヘッド31の吐出動作の良否判定は、基準画像と検査画像との比較以外の様々な方法により行われてもよい。
【0047】
判定部75により吐出ヘッド31の吐出動作の不良が検出された場合、メンテナンス制御部76により、供給部移動機構35のヘッド昇降機構354が制御されることにより、吐出ヘッド31が検査位置から下降する。そして、吐出ヘッド31の下端部が、蓋部43の第1開口431を介して待機ポッド41に挿入され、
図9に示すように、待機ポッド41内に収容される。第1開口431は、吐出ヘッド31の下端部が挿入される挿入口である。
図9では、図の理解を容易にするために、待機ポッド41の外壁等を断面にて示す。
【0048】
吐出ヘッド31の下端部は、待機ポッド41内において、貯溜槽44内に貯溜された液体419(以下、「浸漬液419」という。)に浸漬される。例えば、吐出ヘッド31の吐出面311から約5mm上側の部位までが浸漬液419に浸漬される。以下の説明では、
図9に示す吐出ヘッド31の位置を「待機位置」という。待機位置における吐出ヘッド31の上下方向の位置、すなわち、吐出ヘッド31の吐出面311が浸漬液419に浸漬された状態における吐出ヘッド31の上下方向の位置は、基板9に向けて処理液を吐出する際の吐出ヘッド31の上下方向の位置と等しい。
【0049】
吐出ヘッド31が検査位置から待機位置へと下降する際には、保護液供給部36も吐出ヘッド31と共に下降する。保護液供給部36は、
図6に示す蓋部43の第2開口432を介して待機ポッド41に挿入されて待機ポッド41内に収容される。待機ポッド41内では、吐出ヘッド31の下端部が収容される空間と、保護液供給部36が収容される空間とは隔壁411により隔離される。保護液供給部36が収容される空間には、液体は貯溜されない。
【0050】
吐出ヘッド31が待機位置に位置すると、メンテナンス制御部76(
図5参照)によりメンテナンス部42が制御されることにより、
図9に示す浸漬液419に振動が付与される。これにより、浸漬液419に浸漬された吐出ヘッド31の吐出面311等の洗浄が行われ、吐出口314の詰まり等が解消される。換言すれば、メンテナンス部42により、吐出ヘッド31のメンテナンスが行われる。基板処理装置1では、吐出ヘッド31の待機位置は、吐出ヘッド31のメンテナンスが行われるメンテナンス位置でもある。
【0051】
判定部75により吐出ヘッド31の吐出動作が正常であると判定された場合も、吐出ヘッド31は、検査位置から待機位置へと下降する。そして、吐出ヘッド31の下端部が浸漬液419に浸漬された状態で、処理液供給部3は待機する。
【0052】
以上に説明したように、基板処理装置1では、吐出ヘッド31が、カップ部22の外側に配置される待機ポッド41の上方の検査位置に配置され、吐出ヘッド31から吐出される処理液に光出射部51から面状光510が照射される。そして、撮像部52により、処理液上に現れる輝点を含む検査画像が取得され、判定部75により、当該検査画像に基づいて吐出ヘッド31の吐出動作の良否が判定される。
【0053】
これにより、基板9上にて吐出ヘッド31から処理液を吐出して吐出動作の検査を行う場合に比べて、基板9からの反射光、および、基板9に衝突した処理液の飛沫やミスト等による影響を排除して、吐出ヘッド31の吐出動作の良否を精度良く判定することができる。特に、半導体基板のように反射率が高い基板の上方にて吐出動作の検査が行われる場合、基板から強い反射光が生じることが考えられるが、上述の基板処理装置1では、このような強い反射光が撮像部52に入射する可能性を排除することができる。また、吐出ヘッド31を利用しない他の処理(例えば、基板回転機構23により基板9を回転させて基板9上の液体を除去する乾燥処理)と並行して、吐出ヘッド31の吐出動作の検査を行うことができる。その結果、基板処理装置1の生産性を向上することができる。
【0054】
上述のように、基板処理装置1では、吐出ヘッド31の吐出動作の良否を精度良く判定することができる。このため、基板処理装置1の構造は、検査画像に複数の輝点が含まれ、吐出動作の良否判定が比較的難しい吐出ヘッド、すなわち、処理液をそれぞれ吐出する複数の吐出口を有する吐出ヘッドの吐出動作の良否判定に特に適している。
【0055】
基板処理装置1では、上述の光存在面が、検査位置に位置する吐出ヘッド31の下端と待機ポッド41の上端との間の間隙を通過する。したがって、面状光510により処理液上に現れる輝点は、待機ポッド41よりも上方に位置する。このため、当該輝点が待機ポッド41の内部空間40に位置する場合等に比べて、撮像部52による検査画像の取得を容易とすることができる。また、吐出ヘッド31から待機ポッド41内に吐出される処理液の飛沫やミスト等の影響を低減しつつ検査画像を取得することができるため、吐出ヘッド31の吐出動作の良否を、より精度良く判定することができる。さらに、待機ポッド41の内部空間40の上部が蓋部43により覆われることにより、待機ポッド41内に吐出される処理液の飛沫やミスト等の影響をより一層低減することができる。その結果、吐出ヘッド31の吐出動作の良否を、さらに精度良く判定することができる。
【0056】
吐出検査部5では、光出射部本体511が光出射部カバー512内に収容され、撮像部本体521が撮像部カバー522内に収容される。これにより、基板処理装置1にて使用される様々な処理液が、光出射部本体511および撮像部本体521に付着して悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【0057】
また、光出射部清掃部53により、光出射部カバー512の前面513が清掃されることにより、光出射部51に付着した飛沫やミスト等による光照射への悪影響を防止することができる。さらに、撮像部清掃部54により、撮像部カバー522の前面523が清掃されることにより、撮像部52に付着した飛沫やミスト等による撮像への悪影響を防止することができる。その結果、吐出ヘッド31の吐出動作の良否を、より一層精度良く判定することができる。
【0058】
基板処理装置1では、吐出ヘッド31、光出射部51および撮像部52を内部空間60に収容するチャンバ6が、外部から内部空間60への光の入射を遮る遮光チャンバである。これにより、光出射部51からの面状光510以外の光が、カップ部22等にて反射して検査画像に含まれることを防止することができる。その結果、検査画像中の輝点を容易に判別することができ、吐出ヘッド31の吐出動作の良否を、さらに精度良く判定することができる。
【0059】
吐出検査部5では、投影光軸J3と投影撮像軸J4との間の角度αが90°よりも大きい。このため、面状光510が照射された処理液からの前方散乱光を、撮像部52の撮像部本体521により十分に取り込むことができる。これにより、検査画像上における輝点が明るくなり、輝点を容易に抽出することが可能となる。その結果、吐出ヘッド31の吐出動作の良否を、より精度良く判定することができる。
【0060】
上述のように、基板処理装置1では、吐出ヘッド31の吐出動作の不良が検出された場合、吐出ヘッド31の下端部が待機ポッド41に収容された状態でメンテナンス部42によるメンテナンスが行われる。これにより、吐出不良の検出時に、吐出ヘッド31のメンテナンスを迅速に行うことができる。また、メンテナンスの際に発生する可能性がある飛沫やミスト等が、待機ポッド41の外部へと飛散することを抑制することができる。さらに、基板処理装置1では、待機ポッド41内において吐出ヘッド31の下端部が浸漬液419に浸漬され、メンテナンス部42により浸漬液419に振動が付与されることにより、吐出ヘッド31の洗浄を効率良く行うことができる。
【0061】
基板処理装置1では、様々な変更が可能である。
【0062】
例えば、光出射部51では、必ずしも面状に光が出射される必要はなく、光存在面に沿って光出射部51から前方に直線状に延びる光が出射され、当該光がポリゴンミラー等の光走査手段により光存在面に沿って走査されてもよい。これにより、複数の吐出口314から吐出された処理液である複数の飛翔体が光存在面を通過する際に、当該複数の飛翔体に光が照射される。また、光存在面は、吐出ヘッド31からの処理液の設計上の吐出方向に垂直であってもよく、撮像部52における撮像方向は、当該設計上の吐出方向に垂直な平面に平行であってもよい。光出射部51および撮像部52は、検査位置に位置する吐出ヘッド31の斜め下方以外の位置、例えば、吐出ヘッド31の斜め上方に配置されてもよい。
【0063】
吐出検査部5では、光出射部清掃部53からのガスの噴射以外の様々な方法により、光出射部カバー512の前面513の清掃が行われてもよい。例えば、光出射部清掃部が、板状のゴム等の払拭部と、当該払拭部を移動する移動機構とを備え、払拭部により光出射部カバー512の前面513が払拭されることにより、前面513の清掃が行われてもよい。撮像部カバー522の前面523の清掃も、撮像部清掃部54からのガスの噴射以外の様々な方法により行われてよい。例えば、上述のように、払拭部による払拭により、撮像部カバー522の前面523の清掃が行われてもよい。
【0064】
吐出検査部5では、光出射部カバー512および撮像部カバー522は必ずしも設けられる必要はない。光出射部カバー512が設けられない場合、光出射部清掃部53により、光出射部51の光出射方向前側の面である光出射部本体511の前面が清掃される。また、撮像部カバー522が設けられない場合、撮像部清掃部54により、撮像部52の撮像方向前側の面である撮像部本体521の前面が清掃される。
【0065】
基板処理装置1では、吐出ヘッド31の圧電素子315が、吐出ヘッド31のメンテナンスを行うメンテナンス部として利用されてもよい。例えば、吐出ヘッド31の下端部が浸漬液419に浸漬された状態で圧電素子315が駆動されることにより、浸漬液419に振動が付与されて吐出ヘッド31の下端部の洗浄が行われる。また、基板処理装置1では、吐出ヘッド31の吐出不良が検出された場合、判定部75から吐出検査部5の報知部78を通じて、吐出不良の発生が作業者等に通知されてもよい。さらに、作業者等により、吐出ヘッド31が新たな吐出ヘッドに交換されてもよい。
【0066】
吐出ヘッド31から吐出される処理液は、必ずしも、液滴状には限定されず、液柱状に連続する処理液が吐出ヘッド31から吐出されてもよい。基板処理装置1の構造は、吐出口が1つのみ設けられた吐出ヘッドを備える基板処理装置に適用されてもよい。
【0067】
基板処理装置1は、基板9の洗浄以外の様々な処理に利用されてよい。また、基板処理装置1では、半導体基板以外に、液晶表示装置、プラズマディスプレイ、FED(field emission display)等の表示装置に使用されるガラス基板の処理に利用されてもよい。あるいは、基板処理装置1は、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板および太陽電池用基板等の処理に利用されてもよい。
【0068】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。