(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018534
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】カラー画像処理装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/405 20060101AFI20161020BHJP
H04N 1/60 20060101ALI20161020BHJP
G06T 5/00 20060101ALI20161020BHJP
H04N 1/46 20060101ALI20161020BHJP
B41J 2/52 20060101ALI20161020BHJP
B41J 2/36 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
H04N1/40 C
H04N1/40 D
G06T5/00
H04N1/46 Z
B41J2/52
B41J2/36
【請求項の数】20
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-79527(P2013-79527)
(22)【出願日】2013年4月5日
(65)【公開番号】特開2014-204312(P2014-204312A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000231589
【氏名又は名称】ニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100131196
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 武信
(72)【発明者】
【氏名】原本 理恵
【審査官】
豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−049595(JP,A)
【文献】
特開平01−249350(JP,A)
【文献】
特開2011−188233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/40
B41J 2/36
B41J 2/52
G06T 5/00
H04N 1/46−62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドの主走査方向に複数の発熱素子を有し前記サーマルヘッドに対して副走査方向に移動する記録媒体に画像を形成する際に、所定領域にある画像の各画素の諧調を複数のドットにより構成したブロックで表現するようにしたディザパターンを用いて前記画像を形成するカラー画像処理装置であって、
前記ディザパターンは、各前記ドットを前記副走査方向に沿って複数並べたドット群を複数段重ねて、各段の前記ドット群の始まりを上又は下の段に対し、前記副走査方向で1つ又は複数ドットずらせて配置して構成し、
前記ディザパターンにおける最上段での始まりのドットから最下段の最終のドットまで、又は最下段の始まりのドットから最上段の最終のドットまでを成長順序とする濃度表現により前記画素の中間調画像を記録することを特徴とするカラー画像処理装置。
【請求項2】
前記ディザパターンは、各段の前記ドット群の始まりを上又は下の段に対して順次ずらせて階段状に配置することを特徴とする請求項1に記載のカラー画像処理装置。
【請求項3】
前記ドットの数を3の倍数としたことを特徴とする請求項1に記載のカラー画像処理装置。
【請求項4】
前記ドットの数を9としたことを特徴とする請求項3に記載のカラー画像処理装置。
【請求項5】
前記成長順序で1乃至3のドット群と、4乃至6のドット群と、7乃至9のドット群との3段に分けて、下の段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも1ドットずらせて配置したこと特徴とする請求項4に記載のカラー画像処理装置。
【請求項6】
前記成長順序で1乃至4のドット群と、5乃至9のドット群との2段に分けて、下の段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも2ドットずらせて配置したこと特徴とする請求項4に記載のカラー画像処理装置。
【請求項7】
前記成長順序で1と2のドット群と、3と4のドット群と、5と6のドット群と、7乃至9のドット群との4段に分けて、各段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも1ドットずらせて配置したこと特徴とする請求項4に記載のカラー画像処理装置。
【請求項8】
前記成長順序で1乃至3のドット群と、4乃至6のドット群と、7乃至9のドット群との3段に分けて、各段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも2ドットずらせて配置したこと特徴とする請求項4に記載のカラー画像処理装置。
【請求項9】
前記成長順序で1乃至4のドット群と、5乃至9のドット群との2段に分けて、下の段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも3ドットずらせて配置したこと特徴とする請求項4に記載のカラー画像処理装置。
【請求項10】
前記成長順序で1乃至4のドット群と、5乃至9のドット群との2段に分けて、下の段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも1ドットずらせて配置したこと特徴とする請求項4に記載のカラー画像処理装置。
【請求項11】
前記成長順序で1乃至5のドット群と、6乃至9のドット群との2段に分けて、下の段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも2ドットずらせて配置したこと特徴とする請求項4に記載のカラー画像処理装置。
【請求項12】
前記ドットの数を11としたことを特徴とする請求項2に記載のカラー画像処理装置。
【請求項13】
前記成長順序で1乃至3のドット群と、4乃至6のドット群と、7乃至9のドット群と、10及び11のドット群との4段に分けて、下の段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも1ドットずらせて配置したこと特徴とする請求項12に記載のカラー画像処理装置。
【請求項14】
前記成長順序で1乃至3のドット群と、4乃至6のドット群と、7乃至9のドット群と、10及び11のドット群との4段に分けて、下の段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも2ドットずらせて配置したこと特徴とする請求項12に記載のカラー画像処理装置。
【請求項15】
前記ドットの数を13としたことを特徴とする請求項2に記載のカラー画像処理装置。
【請求項16】
前記成長順序で1乃至3のドット群と、4乃至6のドット群と、7乃至9のドット群と、10乃至12のドット群と、13のドットとの5段に分けて、下の段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも2ドットずらせて配置したことを特徴とする請求項15に記載のカラー画像処理装置。
【請求項17】
前記成長順序で1乃至3のドット群と、4乃至6のドット群と、7乃至9のドット群と、10乃至13のドット群との4段に分けて、各段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも1ドットずらせて配置したことを特徴とする請求項15に記載のカラー画像処理装置。
【請求項18】
前記成長順序で1乃至4のドット群と、5乃至8のドット群と、9乃至13のドット群との3段に分けて、各段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも1ドットずらせて配置したことを特徴とする請求項15に記載のカラー画像処理装置。
【請求項19】
少なくともシアン、マゼンタ及びイエローによりカラー画像を形成するカラー画像処理装置であって、シアン及びマゼンタの印刷時に前記ディザパターンを用いることを特徴とする請求項1に記載のカラー画像処理装置。
【請求項20】
シアン及びマゼンタの印刷時に用いるそれぞれの前記ディザパターンは互いに線対称で反転した構造を有することを特徴とする請求項19に記載のカラー画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写プリンタ等の印刷装置で用いるカラー画像処理装置に関し、特に中間調画像を表現するためのカラー画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中間の階調を有する画像である中間調画像(多値画像)は、画素のドットの割合を変化させて多諧調記録を行うことで表現しており、ドットデータの数を変えて表現するにはディザ法が良く用いられている。そして、ディザ法には、ドットを形成する網点型が一般的である。
【0003】
ディザ処理によりライン基調の画像を形成するものとして、一つの画素データに対し複数のドットを形成し、そのドットの集合により記録方向に斜め方向のドットを形成して、濃度増加によりドットを増加させることが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
そして、1ドットごとに多値書き込みを行うことで、サーマルヘッドの複数の発熱素子に選択的に通電して樹脂系インクのドット径を変化させて用紙に転写することにより、多階調のカラー画像の記録を行なう熱転写プリンタのカラー画像処理装置が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−214662号公報
【特許文献2】特開平11−286132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図14によって、特許文献2による従来技術をさらに説明すると、ディザパターン110は各ドットを熱転写ヘッドの矢印で示すサーマルヘッドの副走査方向に順次成長させており、1画素を構成する各ブロック111は、シアンの場合、9個(3×3)の各ドットと、上部一側に付加したもう一つのドットとの計10個のドットで構成されている。
【0007】
図において、各ドットに付された数字はドットの成長する順序を示している。そして、各ドットは熱転写ヘッドに対する通電時間を15段階に制御することによりインクの転写量を調節して、15諧調による記録を行うことができるようになっている。したがって、ドットの数が10であるから、1画素において151(10×15+1)諧調の記録が行われる。このような形状のディザパターン110の画素を連続して記録することにより、副走査方向から右下がりに−18.4°のスクリーン角をもって記録が行われることになっている。
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示されているディザパターン110では、副走査方向で隣り合うブロック111間において成長順序が1番目のドットどうしの間隔が大きく、4番目のドットまで成長して初めて隣のブロック111の成長順序が3番目のドットと繋がることになる。しかし、このとき隣のブロック111では3番目のドットまで成長していなければ、4番目のドットまで成長しても繋がらないこともある。
【0009】
したがって、従来技術では、少なくとも4ドット以上(出力諧調が61以上)にならなければ隣のブロック111と繋がらず、61諧調未満の低諧調時の印刷においてはインクが孤立してしまう。よって、低諧調時の印刷においては熱転写ヘッドから剥離する際や温度などの外的要因の影響を受けるとインクの掠れやピッチ斑等の不具合が発生することがあった。
【0010】
このため、本発明は、低諧調時でも隣り合うブロックと繋がる構成のディザパターンとすることで、高品質なカラー画像処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を
解決するため
、本発明
は、サーマルヘッドの主走査方向に複数の発熱素子を有し前記サーマルヘッドに対して副走査方向に移動する記録媒体に画像を形成する際に、所定領域にある画像の各画素の諧調を複数のドットにより構成したブロックで表現するようにしたディザパターン
を用いて前記画像を形成するカラー画像処理装置であって、前記ディザパターンは、各前記ドットを
前記副走査方向に沿って複数並べたドット群を複数段重ねて、各段の前記ドット群の始まりを上又は下の段に対し、前記
副走査方向で1つ又は複数ドットずらせて配置して構成し、前記ディザパターンにおける最上段での始まりのドットから最下段の最終のドットまで、又は最下段の始まりのドットから最上段の最終のドットまでを成長順序とする濃度表現により前記画素の中間調画像を記録する。このとき、前記ディザパターンは、格段の前記ドット群の始まりを上又は下の段に対して順次ずらせて階段状に配置するとよい。
【0012】
そして、前記ドットの数を3の倍数とし、好ましくは9とするのがよい。ドット数を9としたとき、前記成長順序で1乃至3のドット群と、4乃至6のドット群と、7乃至9のドット群との3段に分けて、下の段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも1ドットずらせて配置する。このときずらせるドット数を2ドットとしてもよい。
【0013】
また、前記成長順序で1と2のドット群と、3と4のドット群と、5と6のドット群と、7乃至9のドット群との4段に分けて、各段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも1ドットずらせて配置してもよい。
【0014】
さらに、前記成長順序で1乃至4のドット群と、5乃至9のドット群との2段に分けて、下の段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも3ドットずらせて配置してもよく、このとき、ずらせるドット数を1ドットとしてもよい。
【0015】
また、前記成長順序で1乃至5のドット群と、6乃至9のドット群との2段に分けて、下の段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも2ドットずらせて配置してもよい。
【0016】
一方、前記ドットの数を11としてもよい。ドット数を11としたとき、前記成長順序で1乃至3のドット群と、4乃至6のドット群と、7乃至9のドット群と、10及び11のドット群との4段に分けて、下の段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも1ドットずらせて配置する。このとき、ずらせるドット数を2ドットとしてもよい。
【0017】
さらには、前記ドットの数を13としてもよい。ドット数を13としたとき、前記成長順序で1乃至3のドット群と、4乃至6のドット群と、7乃至9のドット群と、10乃至12のドット群と、13のドットとの5段に分けて、下の段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも2ドットずらせて配置する。
【0018】
ドット数を13としたとき、前記成長順序で1乃至3のドット群と、4乃至6のドット群と、7乃至9のドット群と、10乃至13のドット群との4段に分けて、各段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも1ドットずらせて配置してもよい。
【0019】
また、ドット数を13としたとき、前記成長順序で1乃至4のドット群と、5乃至8のドット群と、9乃至13のドット群との3段に分けて、各段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも1ドットずらせて配置してもよい。
【0020】
少なくともシアン、マゼンタ及びイエローによりカラー画像を形成するカラー画像処理装置であるとき、シアン及びマゼンタの印刷時に前記ディザパターンを用いる。そのとき、シアン及びマゼンタの印刷時に用いるそれぞれの前記ディザパターンは互いに線対称で反転した構造を有するようにするとよい。
【発明の効果】
【0021】
上記のように、本発明は、1画素を構成するブロックを複数のドットによって構成されるディザパターンは、印刷素子の移動方向にドットを複数並べたドット群を複数段重ねて、各段の前記ドット群の始まりを上又は下の段に対し、移動方向で1つ又は複数ドットずらせて配置することにより、隣り合うブロック間との1ドット目との間隔を小さくできる。よって、低諧調での印刷時においても、インクの掠れやピッチ斑などの不具合が発生しにくく安定した印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係るカラー画像処理装置により熱転写を行う熱転写プリンタを備えるカード発行装置の概略構成を側断面で示す図。
【
図2】本発明に係るカラー画像処理装置による画像処理装置の実施例を説明するブロック図。
【
図3】本発明に係るカラー画像処理装置に沿って処理されていく画像を模式的に示す説明図。
【
図4】シアンのディザパターンを模式的に示す説明図。
【
図5】マゼンタのディザパターンを模式的に示す説明図。
【
図6】イエローのディザパターンを模式的に示す説明図。
【
図7】11個のドットでブロックを構成するディザパターンを模式的に示す説明図。
【
図8】13個のドットでブロックを構成するディザパターンを模式的に示す説明図。
【
図9】13個のドットでブロックを構成するディザパターンの別の例を模式的に示す説明図。
【
図10】13個のドットでブロックを構成するディザパターンのさらに別の例を模式的に示す説明図。
【
図11】ドット数をずらせることで隣のブロックの1ドット目と繋がるときの諧調値を1画素のブロックを構成するドット数(4乃至16)に応じて説明する図。
【
図12】9個のドットで構成するディザパターンのドットの配置の各種の変形例を示す説明図。
【
図13】インクリボンを転写フィルムに印刷するときのサーマルヘッド40の主走査方向に隣り合うシアンとマゼンタの間隔について説明する図。
【
図14】従来技術のディザパターンを模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、好適な実施の形態に基づいて本発明に係るカラー画像処理装置について詳述する。本実施の形態では、カラー画像形成装置として、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色を用いてカラー画像を形成する熱転写プリンタを用いて説明する。
【0024】
図1は、熱転写プリンタ5を備えたカード発行装置1の概略構成を側断面で示している。このカード発行装置1は、各種証明用のIDカード、商取引用のクレジットカードなどのカードに情報を記録するもので、ハウジング2には、情報記録部Aと画像形成部Bと媒体収容部Cと収容部Dとが備えられる。
【0025】
情報記録部Aは、磁気記録部24と、非接触式IC記録部25と、接触式IC記録部27とで構成される。
【0026】
媒体収容部Cは、複数枚のカードを立位姿勢で整列して収納しており、その先端には分離開口7が設けられて、ピックアップローラ19によって最前列のカードから繰り出し供給するようになっている。
【0027】
繰り出されたカードは、先ず搬入ローラ22にて反転ユニットFに送られる。反転ユニットFは装置フレーム2に旋回動可能に軸受け支持された回転フレーム80と、このフレームに支持された2つのローラ対20にて構成される。そして、ローラ対20は回転フレーム80に回転自在に軸支持されている。
【0028】
反転ユニットFが旋回する外周には、磁気記録部24と、非接触式IC記録部25及び接触式IC記録部27が配置されている。そして、ローラ対20は、カードの種類に応じて情報記録部24、25、27の何れかに向けて搬入する媒体搬入経路65を形成し、これら記録部にてカードには磁気的若しくは電気的にデータが書き込まれる。
【0029】
画像形成部Bは、記録カードの表裏面に顔写真、文字データなど画像を形成するもので、媒体搬入経路65の延長上にカードを移送する媒体搬送経路P1が設けられている。また、媒体搬送経路P1にはカードを搬送する搬送ローラ29,30が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
【0030】
画像形成部Bはフィルム状媒体搬送装置を備えて、この搬送装置にて搬送される転写フィルム46に対して、先ずサーマルヘッド40にて画像を印刷する一次転写部と、続いてヒートローラ35にて媒体搬送経路P1にあるカードの表面に転写フィルム46に印刷された画像を印刷する二次転写部とを備えている。二次転写部では、転写フィルム46をカードと共にヒートローラ35及びプラテンローラ31とで挟持することで転写する。サーマルヘッド40は主走査方向に複数の発熱素子を有しており、印刷媒体である転写フィルム46がサーマルヘッド40に対して副走査方向に移動することで印刷が行われる。
【0031】
画像形成部Bの下流側には収容スタッカ60に印刷後のカードを移送する媒体搬送経路P2が設けられている。媒体搬送経路P2にはカードを搬送する搬送ローラ37,38が配置されている。
【0032】
搬送ローラ37と搬送ローラ38の間にはデカール機構36が配置され、搬送ローラ37,38間に保持されたカード中央部を押圧することにより、ヒートローラ35による熱転写により生じたカールを矯正する。
【0033】
収容部Dは、昇降機構61によって画像形成部Bから送られたカードを
図1で下方に移動させて収容するように構成されている。
【0034】
上記した画像形成部Bにおいて、一次転写部が本発明に係るカラー画像処理装置によってカラー画像を転写フィルム46に印刷する熱転写プリンタ5を構成している。この熱転写プリンタ5について、更に詳しく説明する。
【0035】
転写フィルム46は、フィルムカセット50の供給スプール47と巻取スプール48とに巻回され、この供給スプール47と巻取りスプール48との間に前記したフィルム移送経路P4が形成される。そして、供給スプール47は操出モータMr2に、巻取りスプール48は巻取モータにそれぞれ連結される。この両モータは、装置フレームに取付けられカップリング手段を介してスプール軸に連結されており、それぞれステッピングモータで構成されており同一方向に同一送り量で回転する。
【0036】
フィルム移送経路P4には、移送ローラ49とピンチローラ34a、34bが配置されており、転写フィルム46は、移送ローラ49とピンチローラ34a、34bとの圧接によりフィルム移送経路P4上を搬送される。したがって、移送ローラ49とピンチローラ34a、34bは、転写フィルム46の搬送手段を構成している。この移送ローラ49は駆動モータに連結されており、一定の速度にて転写フィルム46を走行させる。このとき、センサSeは、転写フィルム46に所定間隔毎に形成されたマーカを検出する。移送ローラ49は、転写フィルム46への画像形成時には、インクリボン41と転写フィルム46とが同一速度で、
図1で示す反時計方向に回転するように構成されている。
【0037】
一方、インクリボン41は、リボンカセット42に収納されている。リボンカセット42には、インクリボン搬送手段を構成する供給スプール43と巻取りスプール44とが回転可能に組み込まれていて、巻取スプール44は、ワインドモータMr1と連結されている。この両スプール43、44間にはフィルム状のインクリボン41が巻装されている。インクリボン41は昇華型リボンで、シアン、マゼンタ及びイエローの各インクパネル面を面順次に帯状に配置して成り、各インクパネル面は、転写フィルム46の印刷幅に対応した所定幅を有している。センサSeは、巻取りスプール44の駆動により搬送されるインクリボン41の位置を検出する。
【0038】
リボンカセット42は、
図1の紙面で表裏方向に装置ハウジング2に着脱可能に装着され、インクリボン41は装置ハウジング2側に装備してある画像形成プラテン(プラテンローラ)45とサーマルヘッド40との間に挿入される。
【0039】
転写フィルム46は、供給スプール47から取り出されて、移送ローラ49の時計方向に回転することで画像転写の頭出し位置に移送される。このとき、インクリボン41も巻取りスプール44が反時計方向に回転することでこの頭出し位置まで移送される。よって、このときの動作では、転写フィルム46とインクリボン41との移送方向は相反している。
【0040】
転写フィルム46とインクリボン41とが頭出し位置で位置合わせされると、画像形成プラテン45が図示しない押し出し機構にてサーマルヘッド40に向けて移動し、転写フィルム46とインクリボン41とを挟みサーマルヘッド40と当接する。
【0041】
サーマルヘッド40には、図示しないヘッドコントロール用ICが接続されて、サーマルヘッド40を熱制御するようになっている。このヘッドコントロール用ICは、後に明らかとなるが、本発明に係るカラー画像処理装置に基づいて生成されるディザパターンに従ってサーマルヘッド40を加熱制御する。
【0042】
このサーマルヘッド40の熱制御と同期して巻取スプール44は回転して、インクリボン41を所定速度で巻き取り方向に移動する。このとき、移送ローラ49が反時計方向に回転して、転写フィルム46をインクリボン41と同じ方向に一枚のカードの印刷幅に対応する分だけ移送させることで、この部分に画像が形成される。
【0043】
そして、一つのインクパネルによる画像転写が終了すると、移送ローラ49は再び時計方向に回転して、転写フィルム46を一枚のカードの印刷幅に対応する分だけ頭出し位置にまで引き戻す。このとき、インクリボン41は、継続して巻取り方向に移送されるため、次のインクパネルパネルについて転写フィルム46との頭出し位置での位置合わせが行われる。
【0044】
このような頭出し制御は、シアン、マゼンタ及びイエローの各インクパネルについて、転写フィルム46との頭出し位置での位置合わせが順次行われ、位置合わせ後にサーマルヘッド40と画像形成プラテン45とによる加熱転写を繰り返すことで、カードの表裏面に印刷する顔写真、文字データなどの画像が転写フィルム46に転写される。このようにして、熱転写プリンタ5によって画像が印刷された転写フィルム46は画像形成部Bの二次転写部に送られて、印刷された画像がカードの表面に転写される。
【0045】
ここで、熱転写プインタ5での本発明に係るカラー画像処理装置について説明する。
【0046】
図2は、熱転写プインタ5において本発明に係るカラー画像処理装置による画像処理装置100の構成をブロック図により示している。画像処理装置100は、外部のホストコンピュータ等の上位装置から印刷指令と共にフルカラーの入力画像データ200(
図3(a))が送られてくると、入力画像データ200を分解してRGB画像データ201に変換する。
図3(a)は、このときの入力画像データ200とRGB画像データ201に基づき表示される画像を模式的に示している。
【0047】
CMY変換部101は、RGB画像データ201が入力するとカラーマッチング処理を行う。これにより、シアン、マゼンタ及びイエローの色ごとに256諧調の印刷画像データ202に変換される。この場合、シアン、マゼンタ及びイエローの各画像データにより表示される画像を模式的に示すと、それぞれ
図3(b)の通りである。そして、ディザ処理部102(ディザ処理手段)は、シアン、マゼンタ及びイエローの各印刷画像データ202のそれぞれに対して、ハーフトーン処理を施してディザ画像データ203を生成する。
図3(c)は、シアンの印刷画像データ202により表示される画像を模式的に示している。
【0048】
このハーフトーン処理は、従来周知のディザ変換処理によって行われる。すなわち、ディザ処理部102は、シアン、マゼンタ及びイエローの各印刷画像データ202とメモリ105に格納しているディザ閾値との比較処理を行いディザ変換することによりディザパターンを決定する。この場合のディザ閾値は、1画素を3×3ドットで仕切ったドット毎に設定されており、各ドットの諧調を印刷画像データ202の256諧調に合わせている。そして、ディザ処理部102は、シアン、マゼンタ及びイエローごとに決定したディザパターンに基づいてディザ画像データ203を生成する。
図3(c)は、シアンの印刷画像データ202をディザ変換して生成したディザ画像データ203による画像を表示している。
【0049】
図4は、ディザ処理部102が生成したシアンのディザパターン11を示しており、3×3ドットを1ブロックとして印刷画像データ202の1画素に対応させている。ディザ処理部102は、ディザ閾値との比較処理の結果に基づいて、各ブロック12において当該ブロックが対応している印刷画像の画素の諧調値に応じた数のドットに印刷データを書き込んでディザパターン11を生成していく。この場合、各ドットに付された数字はドットのサーマルヘッド40の矢印aで示す副走査方向に沿って順次成長させる配列順序(成長順序)を示しており、印刷データが書き込まれるドットは成長順序に沿った配列順となっている。そして、この印刷データが書き込まれたドットについては、サーマルヘッド4により印刷が行われる。
【0050】
また、ディザパターン11で3×3の各ドットは、成長順序に沿って配列した3個のドットを一組にして3段に配置されており、各段の成長順序で最初のドットを上又は下の段の成長順序で最初のドットに対して順次ずらせて階段状に配置している。
【0051】
このように構成したディザパターン11においては、隣り合うブロック12の成長順序が1番目のドットとは3ドット目で繋がるために、上記従来例と比べてより低諧調側において剥離や温度などの外的要因の影響を受けづらくすることができ、低諧調側での転写性が向上する。すなわち、本例では256諧調と上記で説明した従来例の151諧調と比べてより多諧調で転写フィルム46への記録を行うものであるが、このとき出力諧調が約85諧調以上(3ドット以上)の低諧調でも隣り合うブロックどうしが繋がることになるため、低諧調側での転写性が向上する。
【0052】
また、各ドットを3個一組にして3段の階段状に配列することで、スクリーン角は、サーマルヘッド40の副走査方向に対して−26.6°となる。このように、スクリーン角が大きくなることで、サーマルヘッド40の矢印aで示す主走査方向で隣り合うシアンのブロック12との間隔が広がるために、2色目以降のマゼンタやイエローの転写性が向上する。
【0053】
一方、このマゼンタについても、
図5に示すように、ディザパターン21はシアンと同様に9個で一つのブロック22を構成する各ドットを3個一組にして3段の階段状に配列している。よって、シアンと同様の効果が得られる。
【0054】
しかし、マゼンタのディザパターン21の場合、階段形状はシアンとは線対称に反転させていると共に、サーマルヘッド40の副走査方向に順次成長させる順序を下段から上段に移行するよう上下で逆にしている。これにより、シアンとマゼンタとが交差する配置となって、印刷したときモアレ縞を軽減することができる。
【0055】
また、イエローについては、
図6に示すように、ディザパターン31の各ブロック32は、12個(3行×4列)の各ドットと、最下部の最初のドット(成長順序が9番目)の下方に付加したもう一つのドット32との計13個のドット32で構成している。この場合、1乃至12の成長順序の各ドット32は、サーマルヘッド40の副走査方向に沿って3行4列の升目状に配列されている。
【0056】
このように、イエローをシアンやマゼンタと異なり9個のドットとせずに13個のドットとしてスクリーン角14°にすることで、印刷時にシアン、マゼンタ及びイエローを重ねたときモアレ縞が軽減される。
【0057】
図2に戻って、パルス幅変調部103は、シアン、マゼンタ及びイエローごとのディザパターン11、21、31に基づくディザ画像データ203が出力されると、印刷部104におけるサーマルヘッド40への通電時間を制御する。これによりインクリボン41から転写フィルム46へのインクの転写量が調節されて中間調のカラー印刷が行われる。印刷部104は、熱転写方式に限らず電子写真方式やインクジェット方式による印刷エンジンであってもよい。
【0058】
上記したように、シアンとマゼンタの各ディザパターン11、21は、それぞれのブロック12、22を3の倍数の9個のドットによって構成すると共に、各段の始まりのドットを上又は下の段に対して順次ずらせて階段状に配置して構成している。しかしながら、階段状の配置は、ドットの数やドットの配置位置で種々の変形例が考えられる。以下、幾つかの変形例を説明する。
【0059】
図7のディザパターンMは、11個のドットでブロックBを構成しており、1画素を構成する各ドットは約23諧調で記録を行う。
図7においては、矢印bがサーマルヘッド40の副走査方向であり、各ドットはこの方向に順次成長していく。尚、この後に説明する
図8乃至
図10及び
図12においても、サーマルヘッド40の副走査方向はこの矢印bの方向とする。
【0060】
図7のディザパターンMでは、成長順序が1乃至3(以下、単に順位の数字のみで表す)のドット群を最上段に配置して、4乃至6のドット群を次段に配置すると共に最初の4のドットはブロックBの始まりの1のドットの位置から行方向に1ドットずらし、7乃至9のドット群を更に次の段に配置すると共に最初の7のドットは4のドットの位置から行方向に1ドットずらし、そして最下段には7のドットから1ドットずらせて10及び11のドットを配置して構成している。この
図7のディザパターンMによれば、2ドット(約47諧調)目から隣のブロックBの1ドット目と繋がる。
【0061】
この11ドットの構成例で、図示しないが、それぞれの段の成長順序で最初のドットの位置をその上の段の最初のドットの位置から2ドットずらせて配置して構成すれば、3ドット(約70諧調)目から隣のブロックBの1ドット目と繋がる。
【0062】
図8のディザパターンMは、13個の各ドットを1乃至3のドット群、4乃至6のドット群、7乃至9のドット群、10乃至12のドット群及び13のドットの4段に分けて、それぞれの段の成長順序で最初のドットの位置をその上の段の最初のドットの位置から2ドットずらせて配置して構成しており、2ドット目から隣のブロックの1ドット目と繋がる。
【0063】
図9のディザパターンMも
図8と同じく13個のドットでブロックBを構成しているが、この場合は、1乃至3のドット群、4乃至6のドット群、7乃至9のドット群及び10乃至13のドット群に分けて、各段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも1ドットずらせて、且つ10乃至13のドットで最下位のドット群を構成しており、3ドット目から隣のブロックの1ドット目と繋がる。
【0064】
同様に、
図10のディザパターンMも13個のドットを、1乃至4のドット群、5乃至8のドット群及び9乃至13のドット群に分けて、最初のドットの位置を上の段の最初のドットよりも1ドットずらせて構成しており、4ドット目から隣のブロックの1ドット目と繋がる。
【0065】
このように、上の段に対して下の段の最初のドット位置を幾つのドット分ずらせるかに応じて、隣のブロックの1のドットと繋がるドットが決まる。
図11は、ずらせたドット数に応じて隣のブロックの1ドット目と繋がるときの諧調値を、1画素のブロックを構成するドット数(4乃至16)に応じて説明する図である。この場合、ブロックBのドット数に応じて1ドットが記録する諧調値は異なり、例えば、前述したように1ブロックを9個のドットで構成する場合の各ドットは約28諧調で記録を行い、11個のドットで構成する場合の各ドットは約23諧調で記録を行っている。
【0066】
図12は、
図4及び
図5と同様に、1ブロックを9個のドットで構成するディザパターンのドットの配置の変形例を示すものである。
図12(a)のディザパターンMは、1乃至4のドット群及び5乃至9のドット群に分けて、下の段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも2ドットずらせることで、3ドット目で隣のブロックの1ドット目と繋がるよう配置している。
【0067】
図12(b)のディザパターンMは、1と2のドット群、3と4のドット群、5と6のドット群及び7乃至9のドット群に分けて、各段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも1ドットずらせることで、2ドット目から隣のブロックの1ドット目と繋がるよう配置している。
【0068】
図12(c)のディザパターンMは、1乃至3のドット群、4乃至6のドット群及び7乃至9のドット群に分けて、各段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも2ドットずらせて、2ドット目から隣のブロックの1ドット目と繋がるよう配置している。
【0069】
図12(d)のディザパターンMは、1乃至4のドット群及び5乃至9のドット群に分けて、下の段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも3ドットずらせることで、2ドット目から隣のブロックの1ドット目と繋がるよう配置している。
【0070】
図12(e)のディザパターンMは、1乃至4のドット群及び5乃至9のドット群に分けて、下の段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも1ドットずらせることで、2ドット目から隣のブロックの1ドット目と繋がるよう配置している。
【0071】
図12(f)のディザパターンMは、1乃至5のドット群及び6乃至9のドット群に分けて、下の段の最初のドットの位置は上の段の最初のドットよりも2ドットずらせることで、4ドット目から隣のブロックの1ドット目と繋がるよう配置している。
【0072】
以上の通り、ディザパターンにおける1画素は種々のドット数で構成されるが、12ドット以上で構成すると、諧調数は大きく取れる反面、分解能が低下して解像度が悪くなる。また、6ドット以下で構成すると、インクリボン41を転写フィルム46に印刷するとき、サーマルヘッド40の主走査方向に隣り合うシアン又はマゼンタどうしの間隔L(
図13)が狭くなるため、2色目以降の色の転写性能が9ドットの場合と比べて低下する。よって、ディザパターンにおける1画素は、9ドットで構成するのが最適である。
【0073】
上記したように、本発明は、1画素を構成するブロックを複数のドットによって構成されるディザパターンは、ドットの成長方向に前記ドットを複数並べたドット群を複数段重ねて、各段の前記ドット群の始まりを上又は下の段に対して1つ又は複数ドットずらせて配置し、各ドットをサーマルヘッド40の副走査方向に順次成長させるよう構成している。これにより、隣り合うブロック間との1ドット目の間隔を小さくすることで、出力諧調を256諧調で印刷を行うとき85諧調以上(3ドット以上)で隣のブロックと繋がるために、インクリボン41を転写フィルム46に転写する際、低諧調時であってもインクの掠れやピッチ斑などの不具合が発生しにくく安定した印刷を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、記録媒体にカラー画像を形成する際、低諧調側およびシアン、マゼンタ及びイエロー重ね時の印刷性を向上させたカラー画像処理装置に関するもので、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0075】
11 シアンのディザパターン
12 ブロック
13 ドット
21 マゼンタのディザパターン
31 イエローのディザパターン
M ディザパターン