(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018535
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】電動パーキングブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 7/12 20060101AFI20161020BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20161020BHJP
B60T 17/18 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
B60T7/12 A
B60T13/74 H
B60T17/18
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-83812(P2013-83812)
(22)【出願日】2013年4月12日
(65)【公開番号】特開2014-205409(P2014-205409A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年3月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】澤田 辰生
【審査官】
谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−219615(JP,A)
【文献】
特開昭60−8142(JP,A)
【文献】
特開2010−167917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12
B60T 13/74
B60T 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータによりパーキングブレーキ機構を駆動させて車両に制動力を付与する電動パーキングブレーキ装置と、
前記アクチュエータの動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、一定時間において前記アクチュエータの動作累積時間が連続動作可能時間に達した場合、前記アクチュエータの動作を禁止する、ことを特徴とする電動パーキングブレーキシステム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記アクチュエータの停止累積時間が所定時間に達した場合、前記動作累積時間及び前記停止累積時間をクリアし、
前記動作累積時間が前記連続動作可能時間に達した場合、前記動作累積時間及び前記停止累積時間をクリアすると共に、前記アクチュエータの動作を前記所定時間禁止する、請求項1記載の電動パーキングブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パーキングブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動パーキングブレーキシステムとしては、例えば下記特許文献1に記載されたように、車両を制動する制動機構と、この制動機構を駆動するアクチュエータと、所定の発進条件が成立したときにアクチュエータを作動させて制動機構の制動状態を解除する制御ユニットと、を備えたものが知られている。この特許文献1に記載された電動パーキングブレーキシステムでは、インナカメラにより乗員が前方を向いていないと判断されたとき、制御ユニットは、所定の発進条件が成立しても、制動機構の制動状態を解除しないように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−143542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような従来の電動パーキングブレーキシステムにおいては、例えばドライバのいたずら等により連続操作がなされた場合、アクチュエータ又は制御部が発熱して高温化し、故障や耐久性劣化等の悪影響が生じる虞がある。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、発熱よる悪影響を抑制することができる電動パーキングブレーキシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る電動パーキングブレーキシステムは、アクチュエータによりパーキングブレーキ機構を駆動させて車両に制動力を付与する電動パーキングブレーキ装置と、アクチュエータの動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、一定時間においてアクチュエータの動作累積時間が連続動作可能時間に達した場合、アクチュエータの動作を禁止する、ことを特徴とする。
【0007】
この電動パーキングブレーキシステムでは、一定時間内でアクチュエータの動作累積時間が連続動作可能時間に達した場合にアクチュエータの動作が禁止される。よって、連続操作がなされた場合において、アクチュエータ又は制御部が発熱してしまうのを抑制でき、その結果、当該発熱による故障や耐久性劣化等の悪影響を抑制することが可能となる。
【0008】
また、上記作用効果を好適に奏する場合として、具体的には、制御部は、アクチュエータの停止累積時間が所定時間に達した場合、動作累積時間及び停止累積時間をクリアし、動作累積時間が連続動作可能時間に達した場合、動作累積時間及び停止累積時間をクリアすると共に、アクチュエータの動作を所定時間禁止する場合がある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発熱よる悪影響を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る電動パーキングブレーキシステムの構成を示す概略図である。
【
図2】
図1の電動パーキングブレーキシステムにおいてアクチュエータの制御を説明するための図である。
【
図3】
図1の電動パーキングブレーキシステムにおいてアクチュエータの制御を説明するための他の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る電動パーキングブレーキシステムの構成を示す概略図である。
図1に示すように、本実施形態の電動パーキングブレーキシステム1は、車両Vに搭載されるものであって、電動パーキングブレーキ装置(Electronic Parking Brake)10と、PKB操作レバー40と、ECU(Electronic Control Unit)50と、を備えている。
【0013】
なお、車両Vとしては、例えばトラック、バス又は重機等の大型車両や中型車両が挙げられる。また、適用される車両Vは限定されるものではなく、普通乗用車、小型車両又は軽車両等であってもよい。
【0014】
電動パーキングブレーキ装置10は、車両Vを制動させるための電動式駐車ブレーキ装置であって、アクチュエータ11、ケーブル12及びPKB(Parking Brake:パーキングブレーキ機構)13を有している。この電動パーキングブレーキ装置10では、アクチュエータ11が作動されて、所定の引き荷重にてケーブル12が引かれることにより、PKB13が駆動されて車両Vの車輪Hに所望の制動力が付与される。
【0015】
アクチュエータ11は、ケーブル12の引き作動を行うものであり、モータ等を含んで構成されている。このアクチュエータ11は、ECU50に電気的に接続されており、当該ECU50によってケーブル12の引き荷重が制御される。ケーブル12は、アクチュエータ11とPKB13とに接続されたブレーキワイヤである。図示する一例では、ケーブル12は、例えば車両Vにおいて、アクチュエータ11から運転席Dと助手席Pとの間を前方へ向けて延びた後、運転席Dの前側及び右側を通るようにして曲がるように後方へ向けて延び、PKB13に接続されている。
【0016】
PKB13は、センターブレーキ式のドラムブレーキ等が採用され、トランスミッション2の後方に設置されている。このPKB13は、例えばケーブル12の牽引に応じてドラムにシューを押し付け、これにより、プロペラシャフト3を拘束する。なお、PKB13は、その構成や方式について限定されるものではなく、車輪Hに設置されている常用ブレーキ機構を兼用してもよいし、当該常用ブレーキ機構とは別のパーキングブレーキ機構を車輪Hに内蔵したものであってもよい。また、PKB13は、その動作に圧縮空気を用いた空気ブレーキ機構を有していてもよい。
【0017】
PKB操作レバー40は、電動パーキングブレーキ装置10の作動を操作するためのものであり、ECU50に電気的に接続されている。このPKB操作レバー40は、例えばドライバによりそのON/OFFが切り替えられることにより、電動パーキングブレーキ装置10が作動するように又は当該作動を解除するように、ECU50を介してアクチュエータ11を動作させる。
【0018】
ECU50は、電動パーキングブレーキ装置10におけるアクチュエータ11の動作を制御する制御部であり、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read OnlyMemory)、RAM(Random Access Memory)を含むコンピュータにより構成されている。このECU50は、一定時間においてアクチュエータ11の動作累積時間が連続動作可能時間に達した場合、アクチュエータ11の動作を禁止する(詳しくは、後述)。
【0019】
以上のように構成された電動パーキングブレーキシステム1では、例えばPKB操作レバー40がドライバによって操作されてONとされた場合、ECU50によりアクチュエータ11が動作され、所定の引き荷重にてケーブル12が牽引されてPKB13が駆動され、車輪Hに制動力を付与される。その後、PKB操作レバー40がOFFとされた場合、ECU50によりアクチュエータ11が動作され、ケーブル12の牽引が解除されてPKB13の駆動が停止され、当該制動力が解除される。
【0020】
ここで、ECU50にあっては、以下に示すように、一定時間においてアクチュエータ11の動作累積時間が連続動作可能時間に達した場合、アクチュエータ11の動作が動作禁止解除時間だけ禁止される。
【0021】
図2及び
図3は、
図1の電動パーキングブレーキシステム1においてアクチュエータ11の制御を説明するための図である。
図2に示すように、例えばドライバのいたずら等によってPKB操作レバー40が連続操作され、一定時間dTにおいてアクチュエータ11の動作時間dA,dB,dC,dDの累積値である動作累積時間が連続動作可能時間α以上となった場合(下式(1)参照)、アクチュエータ11が強制停止される。
dA+dB+dC+dD≧α …(1)
【0022】
換言すると、一定時間dTにおいてアクチュエータ11の停止時間da,db,dcの累積値である停止累積時間が動作禁止解除時間βよりも小さい場合(下式(2)参照)、アクチュエータ11が強制停止される。
da+db+dc<β …(2)
【0023】
具体的には、アクチュエータ11の停止累積時間(以下、単に「停止累積時間」という)が動作禁止解除時間βに達した場合、アクチュエータ11の動作累積時間(以下、単に「動作累積時間」という)及び停止累積時間が0にクリアされる。一方、動作累積時間が連続動作可能時間αに達した場合、動作累積時間及び停止累積時間が0にクリアされると共に、アクチュエータ11の動作が禁止される。
【0024】
すなわち、
図3に例示するように、PKB操作レバー40が連続操作されたとしても、停止累積時間が動作禁止解除時間βに達した場合(時刻t
0参照)、動作累積時間及び停止累積時間が0にクリアされ、作動制限が未だかかからない。一方、その後に引き続きPKB操作レバー40が連続操作され、動作累積時間が連続動作可能時間αに達した場合(時刻t
1参照)には、動作累積時間及び停止累積時間がクリアされると共に、アクチュエータ11の動作が動作禁止解除時間βだけ禁止されることとなる。
【0025】
なお、連続動作可能時間αは、例えばアクチュエータ11又はECU50(その内部の駆動IC)が保証温度を越えるときのアクチュエータ11の連続動作時間であって、一例として22.4secとされている。また、動作禁止解除時間βは、例えばアクチュエータ11又はECU50の冷却に要される所定時間であって、一例として20secとされている。
【0026】
以上、本実施形態では、一定時間内でアクチュエータ11の動作累積時間が連続動作可能時間αに達した場合、アクチュエータ11の動作が禁止される。つまり、一定時間内において、電動パーキングブレーキ装置10を作動するための作動時間及び解除するための解除時間の比率が基準時間を超えたとき、アクチュエータ11に作動制限がかけられる。よって、PKB操作レバー40がドライバのいたずらによって連続操作された場合でも、アクチュエータ11又はECU50が発熱して高温化するのを抑制でき、その結果、当該発熱による故障や耐久性劣化等の悪影響を抑制することが可能となる。
【0027】
なお、アクチュエータ11を作動回数に基づき作動制限する場合も考えられるが、この場合、発熱に対する余裕を設けすぎることになり、作動制限が容易にかかってしまう虞がある。この点、本実施形態は、当該虞が少なく、有効なものである。
【0028】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。例えば、連続動作可能時間α及び動作禁止解除時間βとしては、上記に限定されるものではなく、その仕様や周囲条件等に応じて種々の値を採用してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1…電動パーキングブレーキシステム、10…電動パーキングブレーキ装置、11…アクチュエータ、13…PKB(パーキングブレーキ機構)、50…ECU(制御部)、V…車両。