特許第6018547号(P6018547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018547
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】舗装機械
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/48 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   E01C19/48 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-143638(P2013-143638)
(22)【出願日】2013年7月9日
(65)【公開番号】特開2015-17376(P2015-17376A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2015年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002185
【氏名又は名称】大成ロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129849
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】平野 晃
(72)【発明者】
【氏名】曽木利忠
【審査官】 石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−107613(JP,U)
【文献】 特開昭59−072304(JP,A)
【文献】 特開昭63−110301(JP,A)
【文献】 米国特許第5967695(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/48
E01C 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設舗装体上を走行するための車両本体と、
前記既設舗装体の表層部を加熱する加熱装置と、
加熱された前記既設舗装体の表層部を掻きほぐす掻きほぐし装置と、
掻きほぐされた前記既設舗装体上に新規舗装材料を供給する供給装置と、
供給された前記新規舗装材料を敷き均す敷き均し装置と、を備えており、
前記車両本体は、前輪及び後輪を備えており、
前記掻きほぐし装置は、前記後輪よりも後側に設置されており、
前記供給装置は、前記掻きほぐし装置により掻きほぐされた直後の前記既設舗装体上に前記新規舗装材料を供給することを特徴とする舗装機械。
【請求項2】
前記供給装置は、
前記車両本体の前部に設置され、前記新規舗装材料を収容するホッパと、
前記ホッパに収容された前記新規舗装材料を前記車両本体の後部側へ搬送し、前記既設舗装体上に向かって供給する搬送装置と、
前記搬送装置から供給された前記新規舗装材料を幅方向に敷き拡げるとともに、前記敷き均し装置の前側に設置されたスクリュ装置と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の舗装機械。
【請求項3】
前記スクリュ装置は、駆動手段によって回転する回転軸と、前記回転軸周りに螺旋状に延設され、前記新規舗装材料を幅方向に敷き拡げるブレードと、を有し、
前記回転軸に対する前記ブレードの巻回方向は、前記ブレードによって前記新規舗装材料が幅方向両側に移動するように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の舗装機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設舗装体の補修を行う舗装機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、既設舗装体の補修を行う技術が開示されている。図4(a)は、特許文献1の既設舗装体の補修方法を示す側面図である。
【0003】
図4(a)に示すように、特許文献1には、施工方向に対してロードヒータ車200、ダンプトラック210、アスファルトフィニッシャ220、マカダムローラ230及びタイヤローラ240の順番で車列を組んで既設舗装体Rの補修を行う技術が記載されている。ロードヒータ車200は、既設舗装体Rの表層部を加熱する加熱装置200aと、加熱された既設舗装体Rの表層部を掻きほぐす掻きほぐし装置200bと、を有している。
【0004】
特許文献1に記載の技術では、ロードヒータ車200によって掻きほぐした表層部を後続のダンプトラック210やアスファルトフィニッシャ220が走行するため、ダンプトラック210などのタイヤが通った部分に不慮の圧密や温度低下が発生してしまい、掻きほぐされた舗装材料と新規舗装材料との接着強度が低下する問題がある。
【0005】
また、特許文献1に記載の技術では、掻きほぐされた舗装材料の上にアスファルトフィニッシャ220によって新規舗装材料を敷き均す前に、ダンプトラック210とアスファルトフィニッシャ220との間で新規舗装材料の受け渡しを行っているため、加熱・掻きほぐしから新規舗装材料の敷き均しまでの間にタイムロスが生じてしまう。この結果、表層部が外気で冷却される時間が長くなるため、表層部の温度低下が大きくなってしまい、掻きほぐされた舗装材料と新規舗装材料との接着強度が低下する問題がある。
【0006】
さらに、特許文献1に記載の技術では、ダンプトラック210とアスファルトフィニッシャ220との間で新規舗装材料の受け渡しを行っているため、材料供給時にロードヒータ車200とアスファルトフィニッシャ220との間にダンプトラック210が出入りする。そのため、補修工事中の車線に加えダンプトラック210の通行用に一車線、合計二車線の工事規制を行う必要があるので、工事渋滞の助長に繋がる問題がある。
【0007】
このような問題の対処方法として、図4(b)に示すように、特許文献2には、施工方向に対してダンプトラック300、ロードヒータ車310、アスファルトフィニッシャ320、マカダムローラ330及びタイヤローラ340の順番で車列を組んで既設舗装体Rの補修を行う技術が記載されている。ロードヒータ車310は、既設舗装体Rの表層部を加熱する加熱装置310aと、加熱された既設舗装体Rの表層部を掻きほぐす掻きほぐし装置310bと、ロードヒータ車310の後続のアスファルトフィニッシャ320へ新規舗装材料を搬送する搬送装置310cと、を有している。
【0008】
特許文献2に記載の技術では、ダンプトラック300がロードヒータ車310の前側を走行し、ロードヒータ車310で掻きほぐした表層部をアスファルトフィニッシャ320のみが走行するため、特許文献1に記載の技術に比べ、不慮の圧密や温度低下が発生し難くなり、掻きほぐされた舗装材料と新規舗装材料との接着強度が高まる。
【0009】
また、特許文献2に記載の技術では、ダンプトラック300とアスファルトフィニッシャ320との間で新規舗装材料の受け渡しを行う必要がないため、加熱・掻きほぐしから表層部への新規舗装材料の敷き均しまでの時間を短縮できる。そのため、特許文献1に記載の技術に比べ、表層部が外気で冷却される時間を短縮して温度低下を抑え、掻きほぐされた舗装材料と新規舗装材料との接着強度が高まる。
【0010】
さらに、特許文献2に記載の技術では、ダンプトラック300が先頭を走行してロードヒータ車310へ新規舗装材料の受け渡しを行うため、補修工事中の車線のみに工事規制を行えばよく、工事渋滞を軽減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−179289号公報
【特許文献2】特開2011−226190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献2に記載の技術でも、ロードヒータ車310によって掻きほぐした表層部を後続のアスファルトフィニッシャ320が走行するため、アスファルトフィニッシャ320のタイヤが通った部分に不慮の圧密や温度低下が発生する可能性があり、改善の余地が残されている。
【0013】
また、特許文献2に記載の技術でも、ロードヒータ車310によって表層部を加熱・掻きほぐした後、掻きほぐされた舗装材料の上に、アスファルトフィニッシャ320によって新規舗装材料を敷き均しているため、加熱・掻きほぐしから材料敷き均しまでの間にタイムロスが生じてしまう。この結果、表層部が外気で冷却される時間が長くなるため、表層部の温度低下が発生する可能性があり、改善の余地が残されている。このような問題の対処方法として、タイムロスによる表層部の温度低下を考慮し、路面の加熱温度を高くする方法が考えられるが、このようにすると表層部の焼け焦げが発生して品質低下を招来してしまう。そこで、加熱・掻きほぐしから材料敷き均しまでの時間を更に短縮したいという要望があった。
【0014】
さらに、特許文献1に記載の技術では、ロードヒータ車310とアスファルトフィニッシャ320との車間距離を一定に保ちつつ運転する必要があるため、熟練した技能を要し、施工性が悪いという問題がある。
【0015】
本発明は、このような観点から創案されたものであり、既設舗装体と新規舗装材料との接着性をさらに高めつつ、施工性を向上させることが可能な舗装機械を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような課題を解決するために、本発明の舗装機械は、既設舗装体上を走行するための車両本体と、前記既設舗装体の表層部を加熱する加熱装置と、加熱された前記既設舗装体の表層部を掻きほぐす掻きほぐし装置と、掻きほぐされた前記既設舗装体上に新規舗装材料を供給する供給装置と、供給された前記新規舗装材料を敷き均す敷き均し装置と、を備えており、前記車両本体は、前輪及び後輪を備えており、前記掻きほぐし装置は、前記後輪よりも後側に設置されており、前記供給装置は、前記掻きほぐし装置により掻きほぐされた直後の前記既設舗装体上に前記新規舗装材料を供給することを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、一つの車両に、加熱装置と掻きほぐし装置と供給装置と敷き均し装置とを搭載したため、アスファルトフィニッシャを施工編成に組み込む必要がなくなるとともに、ダンプトラックなどの運搬車を舗装機械の前側に配置できる。したがって、アスファルトフィニッシャやダンプトラックが掻きほぐした既設舗装体上を走行しないので、不慮の圧密や温度低下を防ぎ、掻きほぐされた既設舗装体と新規舗装材料との接着性をさらに高めることができる。
また、本発明によれば、一つの車両に、加熱装置と掻きほぐし装置と供給装置とを搭載したため、従来技術に比べ、加熱装置・掻きほぐし装置と供給装置とを近付けることが可能となり、加熱・掻きほぐしから材料敷き均しまでの時間を短縮できる。そのため、表層部が外気で冷却される時間を短縮して温度低下を抑え、掻きほぐされた既設舗装体と新規舗装材料との接着性をさらに高めることができる。したがって、タイムロスによる表層部の温度低下を考慮して、路面の加熱温度を高くする必要がないので、表層部の焼け焦げを抑制して品質向上を実現できる。
さらに、本発明によれば、アスファルトフィニッシャを施工編成に組み込む必要がないため、舗装機械とアスファルトフィニッシャとの車間距離を一定に保ちつつ運転する行為を排除でき、施工性を向上させることができる。
【0018】
また、前記供給装置は、前記車両本体の前部に設置され、前記新規舗装材料を収容するホッパと、前記ホッパに収容された前記新規舗装材料を前記車両本体の後部側へ搬送し、前記既設舗装体上に向かって供給する搬送装置と、前記搬送装置から供給された前記新規舗装材料を幅方向に敷き拡げるとともに、前記敷き均し装置の前側に設置されたスクリュ装置と、を有している構成とするのが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、舗装機械の前側に配置されたダンプトラックから新規舗装材料をホッパへ供給した後、搬送装置によって、スクリュ装置へ新規舗装材料を確実に供給できる。また、スクリュ装置によって、敷き均し装置の全幅に亘って新規舗装材料が行き渡るように敷き拡げることができるので、既設舗装体上に新規舗装材料を均一に供給できる。
【0020】
また、前記スクリュ装置は、駆動手段によって回転する回転軸と、前記回転軸周りに螺旋状に延設され、前記新規舗装材料を幅方向に敷き拡げるブレードと、を有し、前記回転軸に対する前記ブレードの巻回方向は、前記ブレードによって前記新規舗装材料が幅方向両側に移動するように設定されている構成とするのが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、新規舗装材料を幅方向両側に移動できるため、既設舗装体上に新規舗装材料を均一に供給できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の舗装機械によれば、既設舗装体と新規舗装材料との接着性をさらに高めつつ、施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る舗装機械を示す側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る舗装機械を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る既設舗装体の補修方法を示す側面図である。
図4】(a)は、特許文献1の既設舗装体の補修方法を示す側面図であり、(b)は、特許文献2の既設舗装体の補修方法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明における前後左右上下は、図中の矢印にしたがう。
【0025】
図1に示すように、舗装機械100は、車両本体10と、加熱装置20と、掻きほぐし装置30と、供給装置40と、敷き均し装置50と、を備えている。
【0026】
<車両本体>
車両本体10は、既設舗装体Rを走行するための左右一対の前輪及び後輪、不図示のエンジン、ハンドル、運転席などを備えている。
【0027】
<加熱装置>
加熱装置20は、図1及び図2に示すように、加熱部21と、複数のガスボンベ22とで構成されている。加熱装置20は、既設舗装体Rの表層部を加熱する装置であり、車両本体10の前側に設置されている。
【0028】
加熱部21は、既設舗装体Rに対して略平行に設置され、ガスを燃料とするガス赤外線ヒータを備えている。図2に示すように加熱部21は、平面視矩形を呈する。加熱部21の幅方向の長さL1は、少なくとも掻きほぐし装置30の幅方向の長さL2以上に設定されている。加熱部21は、ガス赤外線ヒータから輻射式に放射される遠赤外線によって、既設舗装体Rの表層部を加熱する。
【0029】
加熱部21は、ガス圧の調整及び、ガス赤外線ヒータと既設舗装体Rとの距離の調整(昇降手段35による上下高さの調整)を行うことで遠赤外線の温度を調節可能であり、施工速度などに応じて適宜温度調節を行うことができる。加熱部21は、図1に示すように、油圧シリンダ、滑車、ワイヤ等で構成された昇降手段23を介して、車両本体10に連結されている。なお、油圧シリンダのみで直接昇降させる構成であってもよい。加熱部21は、車両本体10に対して上昇又は下降するように構成されている。このような構成により、例えば、車両運搬時は、加熱部21を上昇させておくことで、トレーラ等(運搬用車両)への乗り込み(積込み)を容易とする。又、例えば、施工中に車両が一時的に停止するときは、加熱部21を上昇させておくことで、既設舗装体Rの表層部の焼け焦げを抑制する。さらに、例えば、加熱しないときは、加熱部21を上昇させておくことで、加熱部21の損傷を防ぐことができる。
【0030】
ガスボンベ22は、加熱部21に供給される高圧の液化ガスを貯留するための容器である。ガスボンベ22は、図1及び図2に示すように、車両本体10の右側のベーパライザ24に複数本収納されている。ベーパライザ24は、気化熱によって凍ったガスボンベ22を温水で温める装置である。本実施形態のベーパライザ24は、ガスボンベ22を収納固定する器具と、ガスボンベ22の下部側が浸かる程度の水槽と、当該水を下側から加熱する燃料式バーナとから構成される。ガスボンベ22は、不図示のガス供給管(ストレーナフィルタ・ガス圧力調整弁・ガス供給弁を含む)を介して、各ガス赤外線ヒータに接続されている。
【0031】
なお、中央側の加熱部21に対して側方の加熱部21を移動させるなどして既設舗装体Rの加熱領域を調節するようにしてもよい。また、加熱装置20は、本実施形態ではガス遠赤外線ヒータとしたが、他の構成であってもよい。例えば、灯油タンクと灯油バーナーとを備え、灯油バーナーから噴射される熱風を循環させて加熱する灯油バーナー熱風循環方式を採用してもよい。
【0032】
<掻きほぐし装置>
掻きほぐし装置30は、図1及び図2に示すように、加熱された既設舗装体Rの表層部を所定の深さで掻きほぐす装置であり、加熱装置20の後側に設置されている。掻きほぐし装置30は、図1に示すように、後輪とスクリュ装置43との間に形成したスペースに設置されている。掻きほぐし装置30は、油圧シリンダ等の昇降手段35を介して、車両本体10に連結されている。掻きほぐし装置30は、車両本体10に対して上昇又は下降するように構成されている。このような構成により、例えば、車両運搬時は、掻きほぐし装置30を上昇させておくことで、トレーラ等(運搬用車両)への乗り込み(積込み)を容易とする。例えば、掻きほぐさないときは、掻きほぐし装置30を上昇させておくことで、掻きほぐし装置30の損傷を防ぐことができる。
【0033】
掻きほぐし装置30は、基端側が回転軸となるアーム部材32と、アーム部材32の先端に取り付けられビットなどから成る挿入部材33と、アーム部材32及び挿入部材33を既設舗装体Rに向かって付勢する弾性部材34とで構成された掻きほぐし部材31を幅方向に複数本備えている。掻きほぐし装置30は、幅方向に伸縮自在に構成されている。このような構成により、加熱装置20によって軟化した既設舗装体Rに挿入部材33を挿入しつつ、車両本体10を走行することで、既設舗装体Rを掻きほぐすことができる。なお、掻きほぐす深さは、加熱温度、施工速度、掻きほぐし装置30の自重、弾性部材34の付勢力などを適宜調整して、0〜20mmの間に設定される。この深さに設定することで、掻きほぐされた既設舗装体Rと新規アスファルト混合物との接着性を高めることができる。
【0034】
<供給装置>
供給装置40は、図1に示すように、ホッパ41と、搬送装置42と、スクリュ装置43とで構成されている。供給装置40は、掻きほぐされた既設舗装体Rの表層部に新規アスファルト混合物(新規舗装材料)を供給する装置である。
【0035】
ホッパ41は、ダンプトラックD(図3参照)から受け取った新規アスファルト混合物を一時的に貯留する上下面が開口した略箱状の部材である。ホッパ41は、車両本体10の前部に設置されている。
【0036】
搬送装置42は、ホッパ41に貯留された新規アスファルト混合物を車両後方へ搬送してスクリュ装置43の直上に供給する装置である。搬送装置42は、第1バーフィーダコンベア42aと、第2バーフィーダコンベア42bとで構成されている。第1バーフィーダコンベア42aと第2バーフィーダコンベア42bは、車両本体10の車幅方向中央部に配置され、連動制御されている。第1バーフィーダコンベア42aの搬送速度は、第2バーフィーダコンベア42bの搬送速度よりも遅く設定されている。このような構成により、第1バーフィーダコンベア42aと第2バーフィーダコンベア42bの材料供給中継地点(乗り継ぎ部)での材料滞留を防止できる。すなわち、材料搬送量の調整は、第1バーフィーダコンベア42aのコンベア回転数の制御によって行われる。なお、第1バーフィーダコンベア42aと第2バーフィーダコンベア42bとを個別に運転させてもよい。また、搬送装置42をスクリュコンベアで構成してもよい。
【0037】
第1バーフィーダコンベア42aは、前端側が下方に位置するように傾斜して設置されている。第1バーフィーダコンベア42aの前端側は、ホッパ41の直下に位置している。このような構成により、ホッパ41に貯留された新規アスファルト混合物は、第1バーフィーダコンベア42aによって後側に搬送されるようになっている。
【0038】
第2バーフィーダコンベア42bは、施工方向に沿って直線状(水平)に設置されている。第2バーフィーダコンベア42bの前端側は、第1バーフィーダコンベア42aの後端側の下方に位置している。第2バーフィーダコンベア42bの前端側は、第1バーフィーダコンベア42aの後端側と上下方向にラップするように設置されている。このような構成により、第1バーフィーダコンベア42aで搬送された新規アスファルト混合物は、第2バーフィーダコンベア42bに落下し、第2バーフィーダコンベア42bによってさらに後側に搬送されるようになっている。第2バーフィーダコンベア42bの後端部の材料落ち口の直下付近には、センサ44が設置されている。このセンサ44の検出値に基づき、第2バーフィーダコンベア42bで搬送された新規アスファルト混合物量を制限することで、材料の過供給を防止する。なお、第2バーフィーダコンベア42bは傾斜して設置されてもよい。
【0039】
スクリュ装置43は、搬送されてきた新規アスファルト混合物を敷き均し装置50の全幅に亘って行き渡るように敷き拡げる装置である。スクリュ装置43は、掻きほぐし装置30の後側であって、かつ、第2バーフィーダコンベア42bの後端の直下に設置されている。このような構成により、第2バーフィーダコンベア42bで搬送された新規アスファルト混合物は、スクリュ装置43に落下し、スクリュ装置43によって幅方向に敷き拡げられるようになっている。スクリュ装置43は、図2に示すように、幅方向に延在する回転軸43aと、回転軸43aと一体的に接続されたブレード43bと、回転軸43aを回転させる不図示の駆動手段と、車両本体10に対して回転軸43aを昇降させる不図示の昇降手段とで構成されている。スクリュ装置43で敷き拡げられる新規アスファルト混合物の搬送量は、センサ45の検出値に基づいて制限されるので、常時一定量の材料供給が成される。センサ45は、敷き均し装置50の左右両端部のエンドプレート52に取付けられている。なお、スクリュ装置43を第2バーフィーダコンベア42bの後端よりも後側に設置して、スクリュ装置43の手前に新規アスファルト混合物を供給する構成にしてもよい。
【0040】
回転軸43aは、水平かつ施工方向に対して直交するように設置されている。ブレード43bは、回転軸43aの回転軸周りに螺旋状に延設されている。回転軸43aに対するブレード43bの巻回方向は、回転軸43aの幅方向の中心を境にして左右で逆向きにされ、ブレード43bで敷き拡げられた新規アスファルト混合物が幅方向両側に向けて移動するように設定されている。また、前記した昇降手段により、既設舗装体Rに対するブレード43bの高さ位置を調節することができる。
【0041】
<敷き均し装置>
敷き均し装置50は、図1に示すように、幅方向に敷き拡げられた新規アスファルト混合物を所定の層厚で敷き均す装置である。敷き均し装置50は、スクリュ装置43の後側に設置されている。敷き均し装置50は、一対のレベリングアーム51を介して、車両本体10に連結されている。レベリングアーム51は、先端部のプルポイント51aで車両本体10に連結され、後端部のピボットポイント51bで敷き均し装置50に連結されている。レベリングアーム51は、プルポイント51aを中心として、敷き均し装置50とともに回転するフローティング機構となっている。レベリングアーム51は、車両本体10の後部両側面から後方へ延出している。敷き均し装置50は、幅方向に伸縮自在に構成されている。敷き均し装置50は、不図示のタンピング装置とバイブレータ装置とを備えている。敷き均し装置50は、路面までの距離を測定するセンサを備えており、センサの検知結果に基づき新規アスファルト混合物を所定の厚さで舗装することができる。舗装厚は、例えば20〜30mmの間に適宜設定される。また、レベリングアーム51は、手動で敷き均し厚さを調整するときに使用する不図示のシックネスコントロール装置も備えている。
【0042】
本発明の実施形態に係る舗装機械100は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、図3を主に参照して、実施形態に係る舗装機械100を使用して、既設舗装体Rの表層部を補修する方法について説明する。図3は、本実施形態に係る既設舗装体の補修方法を示す側面図である。
【0043】
本実施形態では、施工方向前側から、ダンプトラックD、舗装機械100、マダカムローラM、タイヤローラTの順に車列を組んで、既設舗装体Rの表層部を補修する場合について説明する。なお、舗装機械100を使用した施工編成はこれに限定されるものではない。
【0044】
まず、補修を行う既設舗装体Rの上に、ダンプトラックD、舗装機械100、マダカムローラM(締固め機械)、タイヤローラT(締固め機械)を、この順序で配置する。続いて、ダンプトラックD及び舗装機械100を同時に走行させる。
【0045】
そして、舗装機械100を走行させながら、加熱装置20によって既設舗装体Rの表層部を加熱し、加熱された表層部を掻きほぐし装置30によって掻きほぐす。掻きほぐし深さは適宜設定すればよいが、例えば10mmに設定する。
【0046】
掻きほぐし装置30の挿入部材33が、弾性部材34の付勢力により、加熱されて軟化した表層部内に挿入される(図1参照)。そして、挿入部材33が表層部内に挿入されつつ、舗装機械100を走行することにより、表層部が挿入部材33で掻きほぐされる。
【0047】
舗装機械100の移動に合わせてダンプトラックDを走行させながら、ダンプトラックDからホッパ41へ新規アスファルト混合物を供給する。ホッパ41へ供給された新規アスファルト混合物は、第1バーフィーダコンベア42aによって後側に搬送される。第1バーフィーダコンベア42aから第2バーフィーダコンベア42bに落下した新規アスファルト混合物は、第2バーフィーダコンベア42bによってスクリュ装置43に搬送される。
【0048】
第2バーフィーダコンベア42bからスクリュ装置43に落下した新規アスファルト混合物は、スクリュ装置43のブレード43bによって、掻きほぐされた表層部の幅方向両側に敷き拡げられる。敷き拡げられた新規アスファルト混合物は、敷き均し装置50によって敷き均される。新規アスファルト混合物の層厚は適宜設定すればよいが、例えば20mmに設定する。
【0049】
敷き均された新規アスファルト混合物や表層部は、マダカムローラM及びタイヤローラTによって、転圧されて締め固められる。
【0050】
以上説明した本実施形態の舗装機械100によれば、一つの車両に、加熱装置20と掻きほぐし装置30と供給装置40と敷き均し装置50とを搭載したため、アスファルトフィニッシャを施工編成に組み込む必要がなくなるとともに、ダンプトラックDなどの運搬車を舗装機械100の前側に配置できる。したがって、アスファルトフィニッシャやダンプトラックDが掻きほぐした既設舗装体R上を走行しないので、不慮の圧密や温度低下を防ぎ、掻きほぐされた既設舗装体Rと新規アスファルト混合物との接着性をさらに高めることができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、一つの車両に、加熱装置20と掻きほぐし装置30と供給装置40とを搭載したため、従来技術に比べ、加熱装置20・掻きほぐし装置30と供給装置40とを近付けることが可能となり、加熱・掻きほぐしから材料敷き均しまでの時間を短縮できる。そのため、表層部が外気で冷却される時間を短縮して温度低下を抑え、掻きほぐされた既設舗装体Rと新規アスファルト混合物との接着性をさらに高めることができる。したがって、タイムロスによる表層部の温度低下を考慮して、路面の加熱温度を高くする必要がないので、表層部の焼け焦げを抑制して品質向上を実現できる。
【0052】
さらに、本実施形態によれば、アスファルトフィニッシャを施工編成に組み込む必要がないため、舗装機械100とアスファルトフィニッシャとの車間距離を一定に保ちつつ運転する行為を排除でき、施工性を向上させることができる。
【0053】
本実施形態によれば、舗装機械100の前側に配置されたダンプトラックDから新規アスファルト混合物をホッパ41へ供給した後、搬送装置42によって、スクリュ装置43へ新規アスファルト混合物を確実に供給できる。また、スクリュ装置43によって、敷き均し装置50の全幅に亘って新規アスファルト混合物が行き渡るように敷き拡げることができるので、既設舗装体R上に新規アスファルト混合物を均一に供給できる。
【0054】
本実施形態によれば、回転軸43aに対するブレード43bの巻回方向は、ブレード43bによって新規アスファルト混合物が幅方向両側に移動するように設定されているので、既設舗装体R上に新規アスファルト混合物を均一に供給できる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0056】
掻きほぐし装置30は、本実施形態では弾性部材34の付勢力を利用して既設舗装体Rの表層部を掻きほぐす構成としたが、これに限定されることなく、他の構成のものを用いてもよい。
【0057】
搬送装置42は、本実施形態では2つのバーフィーダコンベアで構成したが、1つ又は3つ以上のバーフィーダコンベアで構成してもよい。
【0058】
本実施形態では、スクリュ装置43を一つの回転軸43aとブレード43bで構成したが、回転軸43a及びブレード43bを複数組み合わせて設置してもよい。
【符号の説明】
【0059】
100 舗装機械
10 車両本体
20 加熱装置
30 掻きほぐし装置
40 供給装置
41 ホッパ
42 搬送装置
43 スクリュ装置
43a 回転軸
43b ブレード
50 敷き均し装置
R 既設舗装体
図1
図2
図3
図4