(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
重量やサイズに関して大きな制限を受けずに輸送できる点で、鉄コイルや鉱石などの大型で重量のある物品の長距離輸送には船舶が利用されている。特に船底の貨物倉は高強度に設計されているため、鉄コイルや鉱石などの重量物はこの船底に設けられた貨物倉に収容され輸送されることが一般的である。
【0003】
船底の貨物倉に収容する物品が鉄コイルの場合、円筒形状の鉄コイルが輸送中に移動しないようにしっかり固縛され積み上げられる。具体的には、
図6に示すように鉄コイルの側面側が貨物倉の床側となる姿勢で、言い換えれば円形の上面と底面とが床面に対して垂直となる姿勢で貨物倉内に配置され、各鉄コイルは崩れないように隣接する鉄コイル同士が鉄帯などにより結束される。
図6は、貨物倉内における鉄コイルの配置状態の一例を示す斜視図である。
【0004】
ところで、鉄コイルは、例えば、自動車のボディなど重要な部材に利用されることが多く、品質を保証するために航海中に損傷等が生じていないか作業員によってチェックする必要がある。船底の貨物倉内でこのようなチェックを行う場合、作業員は鉄コイルの上、あるいは隣接する鉄コイル同士の間に形成された隙間に足を入れて、歩くこととなる。しかしながら、円筒型の鉄コイルの湾曲した側面、あるいは隣接する鉄コイル間に形成された隙間部分では十分に足場を確保することができず作業員が落下または転倒する危険性がある。
【0005】
そこで、貨物倉内に収容された鉄コイル上を作業員が移動する場合、作業員は、鉄コイル間に形成された隙間部分にはめ込むことができる形状でかつ、隣接する鉄コイル間において水平面が得られるような形状に成形された発泡スチロールを足場として利用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したような形状に成形した発泡スチロールを足場として利用する場合、発泡スチロールは大きくなりある程度の重量を有するものとなるため持ち運びが困難となるという問題がある。さらには、発泡スチロールは折りたたんだりすることができないため、収納場所が大きくなるという問題もある。特に、船内など収容空間が限られている場合、積荷以外の物品がその空間において大きな場所を占めてしまうことは問題である。
【0007】
そこで本発明は、持ち運びが容易な仮設構造物を提供することを目的とする。さらには、持ち運びが容易でかつ大きな収納空間を必要としない仮設構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る仮設構造物は、上記した課題を解決するために、横置きされた円筒型物品間の間隙部分に設置され、作業員の足場を形成する仮設構造物であって、前記円筒型物品の軸方向に沿ってみたときの外枠形状が、逆三角形となっており、隣接した前記円筒型物品間で架け渡され、前記作業員の荷重を直接受ける平板である床面と、前記床面の前記円筒型物品と当接する各側部に連結され、該床面とともに前記外枠形状を形づくるとともに、この外枠形状内に三角形状の格子を形成する2つの中空の三角柱と、を備え、2つの前記三角形状の格子は、前記外枠形状において、前記床面の中央部分を通る垂線に対して左右対称となるように隣接して配置されている。
【0009】
上記した構成によると、床面が隣接した円筒型物品間で架け渡されているため、該床面により作業員は足場を確保することができる。また、当該仮設構造物の前記した外枠形状内に三角形状の格子を形成する2つの中空の三角柱を備え、これら三角形状の格子が、床面の中央部分を通る垂線に対して左右対称となるように隣接して配置された構造、すなわちトラス構造となっているため、当該仮設構造物は構造的に十分な強度を有した足場を提供することができる。また、仮設構造物は構造的に十分な強度を確保することができるため、例えばプラスチック段ボールなどの薄い平板を利用して形成することができる。
【0010】
それゆえ、本発明に係る仮設構造物は軽量化を図ることができる。したがって、本発明に係る仮設構造物は、持ち運びが容易となるという効果を奏する。
【0011】
本発明に係る仮設構造物は、上記した構成において、前記三角柱は、前記床面とヒンジ連結され、前記円筒型物品の軸方向に沿ってみたとき、この床面の側部から下方に向かって傾斜するように配置された、この円筒型物品の周面と接する平板である側部斜面と、前記側部斜面とヒンジ連結され、前記床面の前記中央部分に対して垂直となるように配置された平板である鉛直面と、前記鉛直面と一方の側部でヒンジ連結するとともに、他方の側部で前記側部斜面に当接し、かつ前記床面と重畳するように配置された平板である上弦面と、を備え、前記床面および2つの前記三角柱は、全体として平面に展開できるように構成されてもよい。
【0012】
上記した構成によると、三角柱は、前記側部斜面が床面とヒンジ連結されており、このため側部斜面は床面から吊り下げられた状態で支持されている。また、前記鉛直面は前記側部斜面とヒンジ連結されている。このため、この側部斜面を介して鉛直面も床面から吊り下げられた状態で支持されることとなる。同様に前記上弦面は鉛直面とヒンジ連結されているため、側部斜面および鉛直面を介して支持されることとなる。このため、三角柱により形成された三角格子の形状が変形することを防ぐことができる。
【0013】
また、床面は側部斜面が連結されている各側部で円筒型物品と当接し、支持される構成である。このため、該床面のこの側部間における中央部分が下方に撓む場合がある。しかしながら、本発明に係る仮設構造体は、この中央部分に対して垂直となるように鉛直面が配置されている。このため、左右対称に配置された2つの三角柱それぞれの鉛直面によって床面の中央部分を下から支持することができ、これにより中央部分の撓みを防ぐことができる。このため、前記三角柱により形成された三角格子の形状が変形することを防ぐことができる。
【0014】
さらにまた、上弦面を備えているため、鉛直面が側部斜面の方に倒れこむことを防ぐことができる。このため、鉛直面が側部斜面の方に倒れこみ三角柱により形成された三角格子の形状が変形することを防ぐことができる。また、上弦面は床面と重畳するように配置されるため、床面の剛性を高めることができる。
【0015】
以上のように、本発明に係る仮設構造物は、前記側部斜面、前記鉛直面、および前記上弦面から構成された三角柱の側面形状、すなわち三角格子の形状の変形を防ぐことができる。さらに、床面の剛性を高めることができる。このため、本発明の仮設構造物は、構造的に高い強度を確保することができるため、薄い平板を利用して形成することができる。それゆえ、本発明に係る仮設構造物は軽量化を図ることができる。
【0016】
さらにまた、本発明に係る仮設構造物は、床面と2つの三角柱とがそれぞれヒンジ連結されており、全体として平面に展開できるため、仮設構造物は1枚の平板から組み立てることができる。それゆえ、仮設構造物の保管時には解体して一枚の平板とし、この一枚の平板を各ヒンジ連結されている部分で適宜、折りたたんだ状態で収納することができる。
【0017】
このため、本発明に係る仮設構造物は、持ち運びが容易でかつ大きな収納空間を必要としないという効果を奏する。
【0018】
本発明に係る仮設構造物は、上記した構成において、前記三角柱は、前記側部斜面と、前記鉛直面との間に設けられ、該鉛直面を支持する板部材である支持部をさらに備えるように構成されていてもよい。
【0019】
上記した構成によると支持部を備えているため、床部の前記中央部分に生じる撓みにより前記鉛直面が下方に押し付けられ座屈することを防ぐことができる。
【0020】
本発明に係る仮設構造物は、上記した構成において、前記鉛直面に前記支持部の先端部を挿入するための挿入口が形成されており、前記支持部は、前記側部斜面において一部分が連結した状態で切り出され、該連結部分で折り曲げられて形成された支持片を備え、前記支持片の先端部を前記挿入口に挿入することで前記側部斜面と前記鉛直面との間で固定されるように構成されていてもよい。
【0021】
上記した構成によると支持部は側部斜面の一部から切り出した支持片から形成されており、組み立て時において側部斜面から支持片部分を折り曲げ鉛直面の挿入口にその先端部を挿入するだけで支持部を設けることができる。このため、容易に支持部を設けることができる。また、支持片は側部斜面から切り出した一部であるため、解体時に側部斜面に嵌め込み平板とすることができる。このため、本発明に係る仮設構造靴は、別途、支持部材を側部斜面に取り付けた構成と比較して嵩張ることなく収納することができる。
【0022】
本発明に係る仮設構造物は、上記した構成において、前記床面に、複数の開口部が形成された構成であってもよい。
【0023】
上記した構成によると、床面に複数の開口部が形成されている。このため、開口している部分と床面との間に段差が形成され滑り止めとして機能させることができる。
【0024】
本発明に係る仮設構造物は、上記した構成において、前記床面と2つの前記三角柱は、プラスチック製ダンボールから形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0025】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、仮設構造物は、持ち運びが容易となるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本実施の形態に係る仮設構造物1は、横置きされた鉄コイル(円筒型物品)間の間隙部分に設置され、作業員の足場を形成する組み立て式の構造物である。
【0028】
まず、
図1〜
図3を参照して、本実施の形態に係る仮設構造物1の構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る仮設構造物1の構成の一例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す仮設構造物1の構成の一例を示す側面図である。
図2では、
図1におけるA方向に沿ってみた仮設構造物1の側面形状を表している。この側面形状は横置きされた鉄コイル間の間隙に仮設構造物1が設置されたときに、この仮設構造物1を鉄コイルの軸方向に沿って見たときの形状であって、
図2に示すようにその外枠形状は逆三角形となる。
図3は、
図1に示す仮設構造物1の使用状態の一例を示す図である。
【0029】
(仮設構造物の構成)
図1、
図2に示すように、仮設構造物1は、床面10、右側斜面(側部斜面)11、左側斜面(側部斜面)12、右側鉛直面(鉛直面)13、左側鉛直面(鉛直面)14、右側上弦面(上弦面)15、左側上弦面(上弦面)16、右側支持部(支持部、支持片)17、および左側支持部(支持部、支持片)18を備えてなる構成である。
【0030】
床面10は、
図3に示すように、使用時において作業員が移動するために足を載置する長方形状の平板により形成される面である。通常、床面10は、横置きされた鉄コイルの軸方向に沿った方向が長手となり、この長手方向と垂直となる方向であって、隣接した鉄コイルの間で横架する方向が短手となる。本実施形態では、床面10における長手方向を奥行方向Cと称し、短手方向を幅方向Bと称するものとする。
【0031】
床面10は、
図2の紙面上の幅方向Bにおける右端部でこの床面10から下方に延伸した右側斜面11とヒンジ連結されている。また、床面10は、この反対側の左端部でこの床面10から下方に延伸した左側斜面12とヒンジ連結されている。
【0032】
また、
図1に示すように床面10には、その奥行方向Cに向かって複数の開口部20が形成されている。この開口部20により床面10から該床面10の下面に配置される左側上弦面16および右側上弦面15の一部が露出することなる。このため、床面10部分と左側上弦面16および右側上弦面15の露出している部分との間において段差が形成され滑り止めとして機能することができる。
【0033】
なお、本実施形態では開口部20は、
図1に示すように、床面10の幅方向Bを長手とする略長方形状をしており、その側面は湾曲している。しかしながら、開口部20の形状はこれに限定されるものではなく楕円形状であってもよいし、長方形であってもよい。また、本実施形態では、床面10において5つの開口部20が形成されているがこれに限定されるものではなく、5つ以上であってもよいし、5つよりも少なくてもよい。すなわち、作業員が歩行する位置に段差を形成することができるのであれば、開口部20は任意の個数で任意の形状とすることができる。
【0034】
なお、床面10に滑り止めテープなどの滑り止め部材が施されている場合は上述した開口部20を床面10に必ずしも形成する必要はない。ただし、滑り止め部材を施す構成の場合、上述した開口部20を床面10に設ける構成と比較して、別途、滑り止め部材を用意する必要があり、コストがかかる。このため、上述したように開口部20を床面10に設ける構成の方が仮設構造物1の製造に必要なコストを低減させることができる点で有利である。
【0035】
右側斜面11は、
図3に示すように、使用時において円筒型鉄コイルの側面に沿って配置される平板から形成される面である。右側斜面11は、床面10の右端部と、幅方向Bにおける床面10の中央部分から鉛直方向下向きに立設した右側鉛直面13の下端側の端部とを結ぶように紙面において左下がりに傾斜している。
【0036】
一方、左側斜面12は、
図3に示すように、右側斜面11と同様に、使用時において円筒型コイルの側面に沿って配置される面である。左側斜面12は、床面10の左端部と、幅方向Bにおける床面10の中央部分から鉛直方向下向きに立設した左側鉛直面14の下端部とを結ぶように、紙面において右下がりに傾斜している。
【0037】
右側鉛直面13(鉛直面)は、右側斜面11の側部とヒンジ連結され、幅方向Bにおける床面10の中央部分に対して垂直となるように配置された平板により形成される面である。この右側鉛直面13は、幅方向Bにおける床面10の中央部分を支持することができる。
【0038】
一方、左側鉛直面14は、左側斜面12の側部とヒンジ連結され、右側鉛直面13と隣接して配置される平板により形成される面である。この左側鉛直面14も、右側鉛直面13と同様に、幅方向Bにおける床面10の中央部分を支持することができる。すなわち、右側鉛直面13と左側鉛直面14とによって鉛直材9(
図1参照)を形成しており、この鉛直材9により、床面10の幅方向Bにおける中央部分を支持し、この中央部分で生じる撓みを防止することができる。
【0039】
右側上弦面15は、右側鉛直面13と一方の側部でヒンジ連結されるとともに、他方の側部で右側斜面11に当接し、かつ床面10と重畳するように配置された平板により形成される面である。右側上弦面15は、床面10と重畳することにより床面10の強度を向上させることができる。また、他方の側部で右側斜面11に当接することで、連結されている右側鉛直面13が、右側斜面11側に倒れこむことを防ぐことができる。さらにまた、右側鉛直面13と隣接する後述の左側鉛直面14が、右側斜面11側に倒れこむことも防ぐことができる。
【0040】
左側上弦面16は、左側鉛直面14と一方の側部でヒンジ連結されるとともに、他方の側部で左側斜面12に当接し、かつ床面10と重畳するように配置された平板により形成される面である。左側上弦面16も右側上弦面15と同様に、床面10と重畳することにより床面10の強度を向上させる。さらに、他方の側部で左側斜面12に当接することで、連結されている左側鉛直面14が左側斜面12側に倒れこむなど移動することを防ぐことができる。さらにまた、左側鉛直面14と隣接する右側鉛直面13が、左側斜面12に倒れこむことも防ぐことができる。
【0041】
上記した複数の面が互いにヒンジ連結して形成される仮設構造物1は、
図2に示すように、横置きされた円筒型物品の軸方向に沿ってみたときの側面の外枠形状は逆三角形となっている。そして、この外枠形状内に三角形状の格子として2つの中空の三角柱が配置された構造となっている。この2つの三角柱によって形成される三角形状の格子は、外枠形状において床面10の中央部分を通る垂線に対して左右対称となるように隣接して配置されている。
【0042】
すなわち、仮設構造物1は、右側上弦面15を上弦材、右側斜面11を斜材、右側鉛直面13を鉛直材9とする三角形状の格子を形成する中空の三角柱(第1三角柱)と、左側上弦面16を上弦材、左側斜面12を斜材、左側鉛直面14を鉛直材9とする三角形状の格子を形成する中空の三角柱(第2三角柱)とを組み合わせた、いわゆるトラス構造となっている。
【0043】
また、
図4を参照すると、仮設構造物1の構造は、使用時においては、床面10と右側斜面11との連結部分である右節点30と、床面10と左側斜面12との連結部分である左節点31とに、主として鉛直方向下向きの荷重がかかり、床面10上を歩行する作業員を支えるようになっている。なお、
図4は、隣接する鉄コイル間に載置された仮設構造物1の構造を模式的に示した図である。
図4では、仮設構造部1に主として加わる力の向きを矢印により示している。
【0044】
このように仮設構造物1はトラス構造となっているため構造的に高い強度を有し、右節点30と左節点31との間で作業者を支えることができる。また、仮設構造部1は、このように構造的に高い強度を有しているため、例えば、薄いプラスチック段ボールなどの素材で組み立てることができる。このため、軽量かつその分解時において大きな収納スペースを必要としない。
【0045】
また、
図4に示すように、仮設構造物1は、使用時において、右側斜面11は右節点30を支点として、つりさげられた状態で固定され、さらに右側鉛直面13もこの右側斜面11を介して所定位置につりさげられた状態で固定されている。同様に左側斜面12は左節点31を支点として、つりさげられた状態で固定され、さらに左側鉛直面14もこの左側斜面12を介して所定位置につりさげられた状態で固定される。
【0046】
このため、右側鉛直面13および左側鉛直面14からなる鉛直材9が鉛直方向下向きに落ちこむことを防ぐことができる。また、このように使用時において鉛直材9が鉛直方向下向きに落ちこむことを防ぐことができる構成であるため、この鉛直材9により、床面10の幅方向Bにおける中央部分を支持し、この中央部分で生じる撓みを防止することができる。
【0047】
なお、本実施の形態に係る仮設構造物1では、
図2に示す側面形状において床面10の寸法が約350mm、右側斜面11および左側斜面12の寸法が約400mmとなるように構成されているが、各寸法はこれに限定されるものではない。例えば、側面形状において床面10の寸法が約300mm、右側斜面11および左側斜面12の寸法が約300mmであってもよい。これらの側面形状における寸法は、船底の貨物倉などに収容されている鉄コイルの寸法に応じて適宜設定されることが好ましい。
【0048】
また、仮設構造物1の奥行寸法、すなわち床面10の奥行方向Cの寸法は約1mである。しかしながらこの寸法もこれに限定されるものではない。床面10の奥行方向Cの寸法が長くなればなるほど必要とする仮設構造物1の個数を低減させることができる一方で、各仮設構造部1のサイズが大きくなってしまうという問題がある。そこで、作業員が移動する距離と、仮設構造部1を展開して保管したり移動させたりするのに適切なサイズとを考慮し、適宜設定することが好適である。
【0049】
また、本実施の形態に係る仮設構造物1は、幅方向Bにおける床面10の中央部分の撓みによる力が作用して、鉛直材9が座屈してしまうことを防ぐために、右側支持部17および左側支持部18をさらに備える。右側支持部17は、右側斜面11と鉛直材9との間に設けられ、鉛直材9の右方向への屈曲を防ぐ。一方、左側支持部18は、左側斜面12と鉛直材9との間に設けられ鉛直材9の左方向への屈曲を防ぐ。
【0050】
特に本実施の形態に係る仮設構造物1では、
図5に示すように右側斜面11の一部を切り出し形成した右側支持部17を床面10と右側斜面11とのヒンジ連結部分で折り曲げ、鉛直材9に向かって延伸させるように配置する。これにより、鉛直材9の右方向への屈曲を防ぐことができる。一方、左側支持部18は、右側支持部17と同様に、左側斜面12の一部を切り出し形成した左側支持部18を床面10と左側斜面12とのヒンジ連結部分で折り曲げ、鉛直材9に向かって延伸させるように配置する。これにより、鉛直材9の左方向への屈曲を防ぐことができる。なお、
図5は、
図1に示す仮設構造物1の展開図である。
【0051】
本実施の形態に係る仮設構造物1では、床面10の奥行方向Cにおける端部近傍に作業員が立った場合、
図4に示すようにこの鉛直材9の座屈が顕著に表れる。なお、
図4では、床面10の撓みと鉛直材9の座屈の例を破線で示している。このため、
図1および
図5に示すように、床面10の奥行方向Cにおける両端部近傍それぞれにおいて、右側支持部17および左側支持部18の組がそれぞれ設けられている。
【0052】
より具体的には、
図5に示すように右支持部17および左支持部18それぞれは、略長方形の形状をした支持片から形成される。そして、右支持部17および左支持部18それぞれは、
図5における床面10と右側斜面11とのヒンジ連結部分、床面10と左側斜面12とのヒンジ連結部分それぞれと接する辺を残し、右側斜面11および左側斜面12から切り出されている。
【0053】
このため、右支持部17および左支持部18は、
図5において、床面10とのヒンジ連結部を軸にして右側斜面11から床面10側へ、ならびに左側斜面12から床面10側へとそれぞれ折り曲げることができる。また、右支持部17および左支持部18を形成する支持片の先端部には、凸部17a、18aがそれぞれ形成されている。
【0054】
さらに
図5に示すように右側鉛直面13には、幅方向Bにおいて右側支持部17および左側支持部18それぞれの位置と対応する位置に右側差込口21および左側差込口22が形成されている。そして、
図5に示す仮設構造物1の展開状態からこの仮設構造物1を組み立てる際に、右支持部17の凸部17aおよび左支持部18の凸部18aをこの右側差込口21および左側差込口22に挿入するように構成されている。
【0055】
なお、仮設構造物1の鉛直材9が座屈することがない場合は、上述した右支持部17および左支持部18を必ずしも備える必要はない。
【0056】
(組み立て方法)
ここで、本実施の形態に係る仮設構造物1の組み立て方法について上述した
図5を参照して説明する。
【0057】
具体的には、本実施の形態に係る仮設構造部1は、以下のようにして組み立てることができる。ここでは説明の便宜上、2つの三角柱のうち第1三角柱の組み立て方法を例に挙げて説明する。
【0058】
まず、
図5に示す展開状態において、床面10と右側斜面11とのヒンジ連結部分で、右側斜面11を床面10に向かって折る。さらに右側斜面11と右側鉛直面13とのヒンジ連結部分で、右側鉛直面13を右側斜面11に向かって折る。このとき、右側鉛直面13と右側上弦面15とのヒンジ連結部分が幅方向Bにおける床面10の中央部分に当接し、かつ該床面10と垂直に交わるように配置する。さらに、右側上弦面15と右側鉛直面13とのヒンジ連結部分で右側上弦面15を右側鉛直面13に向かって折り、右側上弦面15が床面10と重畳するように配置される。このとき右側上弦面15の端部は右側斜面17と当接する。
【0059】
左側に配置される第2三角柱についても第1三角柱と同様にして組み立てることができる。このようにして第1、第2三角柱それぞれを組み立てると右側鉛直面13に形成した右側差込口21および左側鉛直面14に形成した左側差込口22を重ね合わせ、右支持部17の凸部17aおよび左支持部18の凸部18aをこの右側差込口21および左側差込口22にはめ込む。
【0060】
凸部17aおよび凸部18aは、互いが交差するような位置関係で右側差込口21および左側差込口22に挿入できるように右側支持部17および左側支持部18に形成されている。また、凸部17aの幅寸法と凸部18aの幅寸法とを足し合わせた寸法が右側差込口21および左側差込口22の寸法と略同じとなっている。
【0061】
このため、凸部17aと凸部18aとを一緒に右側差込口17および左側差込口18に嵌め込むことで、右側支持部17および左側支持部18を鉛直材9に固定させることができる。これにより、第1三角柱内において右支持部17を固定し、第2三角柱内において左支持部18を固定させ、鉛直材9の幅方向Bへの変形を防ぐことができる。
【0062】
以上のように本実施の形態に係る仮設構造物1は、複数の平板を折りたたんで形成することができるため容易に組み立てることができる。
【0063】
なお、本実施の形態に係る仮設構造物1は、上述したように、例えば、ポリプロピレンまたはポリカーボネートなどのプラスチックを素材として作られた段ボール(プラスチック段ボール)から形成することができる。プラスチック段ボールは、ボール紙製の段ボールと比べて強度と耐久性、耐水性に勝っており繰り返しの利用に耐えることができる。また、可撓性を有するため、隣接する鉄コイル間において形成された隙間の形状に合うように変形することができる。このため、仮設構造物1はこの隙間にきっちり嵌まり込むことができる。しかしながら、本実施の形態に係る仮設構造物1を形成する部材は、このプラスチック段ボールに限定されるものではなく、上述した仮設構造物1の形状を構成することができる平板部材であれば任意である。
【0064】
また、仮設構造部1は上述したように各面同士はヒンジ連結されており、折り曲げて組み立てることができる構成である。このヒンジ連結部分は、プラスチック段ボールにおける折り曲げ位置に切り込みが入れることで実現できる。また、切り込みのエッジ部分には丸みを施しており、折り曲げ箇所に触れて作業員がけがなどすることを防ぐように工夫されている。
【0065】
なお、ヒンジ連結部分は上述した切り込みにより実現される構成に限定されるものではない。例えば、異なる平板同士を複数の蝶番によって連結した構成としてもよい。
【0066】
以上のように、本実施の形態に係る仮設構造物1は、2つの三角柱から構成されたトラス構造をしているため、プラスチック段ボールなどの薄いシート状の素材から組み立てても十分な強度を保つことができる。このように、プラスチック段ボールなどの薄板の素材から組み立てることができるため、軽量化を図ることができ携帯性を向上させることができる。また、仮設構造物1を解体すると1枚のシート状になるため、その保管時には大きな収納空間を必要としない。
【0067】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。