特許第6018569号(P6018569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6018569LED照明用の拡散シート及びこれを用いたLED照明器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018569
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】LED照明用の拡散シート及びこれを用いたLED照明器具
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20161020BHJP
   G02B 3/06 20060101ALI20161020BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20161020BHJP
   F21S 9/02 20060101ALI20161020BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20161020BHJP
【FI】
   G02B5/02 C
   G02B3/06
   G02B3/00 A
   F21S9/02 410
   F21S2/00 230
   F21S9/02 211
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-512330(P2013-512330)
(86)(22)【出願日】2012年4月20日
(86)【国際出願番号】JP2012060726
(87)【国際公開番号】WO2012147653
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2015年2月6日
(31)【優先権主張番号】特願2011-96909(P2011-96909)
(32)【優先日】2011年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166649
【氏名又は名称】五洋紙工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076820
【弁理士】
【氏名又は名称】伊丹 健次
(72)【発明者】
【氏名】山口 美則
(72)【発明者】
【氏名】山崎 順伸
(72)【発明者】
【氏名】奥田 一行
【審査官】 廣田 健介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−267598(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/137459(WO,A1)
【文献】 特開2010−287402(JP,A)
【文献】 特開2007−103325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/00−1/08;3/00−3/14
G02B 5/00−5/136
F21S 2/00
F21V 3/00;5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面及び裏面にシリンドリカルレンズ状の単位レンズ列が複数並列されたレンチキュラー状の凹凸構造が設けられた拡散シートであって、
表面側の単位レンズ列の稜線方向と裏面側の単位レンズ列の稜線方向とが60°〜90°の交差角度で交差し
単位レンズ列の高さに対するピッチの割合が6以下で、ピッチが700μm以下であることを特徴とするLED照明器具用の拡散シート
【請求項2】
拡散剤を、全光線透過率が85%以上で、ヘイズが85%以上になるように含有してなることを特徴とする請求項1に記載の拡散シート。
【請求項3】
拡散剤が架橋ポリアクリレートからなることを特徴とする請求項に記載の拡散シート。
【請求項4】
直線状に配列したLEDと請求項1乃至3のいずれかに記載の拡散シートからなり
前記直線状に配列したLEDの上に前記拡散シートがその外側になる面の単位レンズ列の稜線方向LEDの配列方向とが平行になるように設置されていることを特徴とするLED照明器具
【請求項5】
室内照明器具であることを特徴とする請求項に記載のLED照明器具
【請求項6】
直線状に配列された複数のLEDと請求項1乃至のいずれかに記載の拡散シートからなり、前記直線状に配列したLEDの上に前記拡散シートがその外側になる面の単位レンズ列の稜線方向とLEDの配列方向とが直するように湾曲して設置されていることを特徴とするLED照明器具。
【請求項7】
卓上照明器具であることを特徴とする請求項6に記載のLED照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(以下、LEDと称する)を用いた照明器具においてLEDを覆うように配置される拡散シートに係り、詳しくは、透光率が高く、LEDの輝点を解消することができ、且つ出射される光の印象を蛍光灯のものに近づけることができる拡散シート及びこれを用いたLED照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDは消費電力が低く、発光効率が高いため、近年、省エネ型の電球としての使用が広がりつつある。一方、LEDは基本的に点光源である上に光の指向性が高いため、照明として用いた場合には輝点と呼ばれる特に明るい点が生じてしまい、照明が直接視野に入った際には目を刺激するような不快感がある。このような欠点を解消するため、LEDを照明として使用する場合は拡散剤が配合された乳白色のカバー等で直射光を遮蔽するなど、光を散乱光にして使用していたが、この方法では透光率が低く、暗くなってしまう。
【0003】
この欠点を解消する手段としては、LEDを光学的異方性が高いフィルムで覆った照明器具が提案されている(特許文献1参照)。この照明器具によれば、フィルムの透光率は高く、且つ一応は輝点も拡散されて目を刺激するような不快感も幾分は低減される。しかしながら、光は一方向に拡散されるだけで、線状のランプイメージが残り、拡散された光が直接出射する位置とそれ以外の位置の明度差が大きいため、この電灯を直視する際には、なおも違和感が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3163988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる実情に鑑み、上記の従来技術の問題点を解消し、透光率が高く、目を刺激する輝点を十分に解消することができ、且つ出射光の印象を蛍光灯に近づけることができるLED照明用の拡散シート及びその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記の(1)〜()を特徴とするものである。
(1)本発明は、表面及び裏面にシリンドリカルレンズ状の単位レンズ列が複数並列されたレンチキュラー状の凹凸構造が設けられた拡散シートであって、
表面側の単位レンズ列の稜線方向と裏面側の単位レンズ列の稜線方向とが60°〜90°の交差角度で交差し
単位レンズ列の高さに対するピッチの割合が6以下で、ピッチが700μm以下であることを特徴とするLED照明器具用の拡散シートを内容とする。
【0008】
)本発明は、拡散剤を、全光線透過率が85%以上で、ヘイズが85%以上になるように含有してなる上記の拡散シートを内容とする。
【0009】
)本発明は、拡散剤が架橋ポリアクリレートからなる上記の拡散シートを内容とする。
【0010】
)本発明は、直線状に配列したLEDと上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の拡散シートからなり
前記直線状に配列したLEDの上に前記拡散シートがその外側になる面の単位レンズ列の稜線方向LEDの配列方向とが平行になるように設置されていLED照明器具を内容とする。
【0011】
)本発明は、室内照明器具である上記のLED照明器具を内容とする。
【0012】
)本発明は、直線状に配列された複数のLEDと上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の拡散シートからなり、前記直線状に配列したLEDの上に前記拡散シートがその外側になる面の単位レンズ列の稜線方向とLEDの配列方向とが直するように湾曲して設置されているLED照明器具を内容とする。
【0013】
)本発明は、卓上照明器具である上記記載のLED照明器具を内容とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の拡散シートによれば、シリンドリカルレンズ状の単位レンズ列が複数並列されたレンチキュラー状の凹凸構造が表裏両面に設けられると共に、表面側と裏面側で単位レンズ列の稜線方向が30°〜90°の交差角度で交差するように構成されているので、透光率が高く、LEDから発せられる光が2方向に拡散されて目を刺激しない程度に輝点が弱められ、またモアレも発生せず、出射される光のムラが小さくなる。
【0015】
単位レンズ列の高さに対するピッチの割合を6以下とし、単位レンズ列のピッチを700μm以下とし、表裏の単位レンズ列の交差角度を60°〜90°とすることにより、LEDの形状が殆ど見えなくなり、LED照明の表面の見え方が蛍光灯に近くなる。
【0016】
拡散剤を、全光線透過率が85%以上で、ヘイズが85%以上になるように含有することにより、照度を余り低下させることなく、輝点による目の刺激を一層緩和するとともに、モアレやランプイメージを一層解消することができる。拡散剤としては、架橋ポリアクリレートが好適である。
【0017】
本発明の拡散シートを直線状に配列したLEDの上に設置する場合において、外側になる面の単位レンズ列の稜線方向がLEDの配列方向に対して略直交するように設置することにより、本発明の拡散シートをLEDの配列方向と略平行な軸に沿って湾曲させた場合でも、LEDから照射される光が横方向(LEDの配列方向に対して略直交する方向、以下同じ)に出射されにくくなるので、当該拡散シートを使用した照明の直下照度が高くなり、卓上用の照明として優れている。
【0018】
本発明の拡散シートを直線状に配列したLEDの上に設置する場合において、LEDの配列方向と略平行な軸に沿って湾曲させると共に、外側になる面の単位レンズ列の稜線方向がLEDの配列方向に対して略平行となるよう設置することにより、LEDから照射される光が横方向に出射されやすくなるので、当該拡散シートを使用した照明の直下照度と周辺の照度の差が小さくなり、室内全体を照らす照明として優れている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1はLED照明用の拡散シートを示す概念説明図である。
図2図2は本発明のLED照明用の拡散シートにおける単位レンズ列の断面形状を示す概念説明図である。
図3図3(a)はLED照明器具を示す概略説明図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
図4図4(a)(b)は、それぞれ図3とは別のLED照明器具を示す概略説明図である。
図5図5(a)は実施例A1のLED照明器具を示す概略説明図であり、(b)は(a)のB−B断面図、(c)は(a)のC−C断面図である。
図6図6は実施例A1のランプイメージを示す写真である。
図7図7は実施例A5のランプイメージを示す写真である。
図8図8は比較例A2のランプイメージを示す写真である。
図9図9は比較例A3のランプイメージを示す写真である。
図10図10は比較例A4のランプイメージを示す写真である。
図11図11は比較例B1のランプイメージを示す写真である。
図12図12は対照例のランプイメージを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明における拡散シート1は、例えば図1に示すように、表面及び裏面にシリンドリカルレンズ状の単位レンズ列2が複数並列されたレンチキュラー状の凹凸構造が設けられており、表面側の単位レンズ列の稜線方向と裏面側の単位レンズ列の稜線方向とが30°〜90°の交差角度で交差するように構成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明においてシリンドリカルレンズ状とは、断面形状が円弧と直線からなる柱状である所謂シリンドリカルな形状だけでなく、断面形状が楕円弧、放物線等の一方向に曲がった形状と直線からなる柱状も含む。また、レンチキュラー状とは、前記シリンドリカルレンズ状の単位レンズ列が互いに平行に隙間なく並列された形状をいう。
また、本発明において略直交、略平行とは社会通念上の直交、平行をいい、数学上の直交、平行とは違って、5°程度の誤差は許容されることを意味する。
【0022】
本発明の拡散シートは、拡散シートの表面及び裏面にシリンドリカルレンズ状の単位レンズ列が複数並列されたレンチキュラー状の凹凸構造が設けられている。表裏両面に凹凸構造を設ける方法は特に限定されず、例えばシート状に押し出された樹脂を2つの金属製冷却ロールで挟圧する方法において、両方の金属製冷却ロールの表面に凹凸構造の雌型を刻設しておく方法、シート状に押し出された樹脂を金属製冷却ロールとゴムロールで挟圧する方法において、金属製冷却ロールの表面に凹凸構造の雌型を刻設するとともに、ゴムロール側に凹凸構造の雌型が転写された型フィルムを配置する方法、片面だけに凹凸構造が刻設された2枚の光学シートを接着用樹脂で張り合わせる方法、片面だけに凹凸構造が刻設された2枚の光学シートを重ねて留め具等で留めておく方法等が例示できる。
【0023】
本発明において拡散シートの素材として用いる樹脂は、透明な樹脂であれば特に限定されず、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリアリレート、ポリイミド等が挙げられる。
【0024】
本発明では素材として用いる樹脂に拡散剤等を配合してヘイズを高めてもよい。具体的には拡散シートの全ての部分を拡散剤入りの樹脂で作成してもよいし、2枚の光学シートを張り合わせるための接着剤として拡散剤入りの樹脂を用いてもよい。又は、拡散剤入りの樹脂で片面だけに凹凸構造が設けられた光学シートを作成してこれを通常の樹脂で接着してもよい。
配合する拡散剤としては、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等の無機粒子や、架橋ポリアクリレート、架橋MS樹脂(MMAとスチレンの共重合体)、シリコン樹脂等の有機粒子が例示できる。
適当な配合量等は、透明樹脂の種類や拡散剤の種類によって異なるため一概には規定できないが、例えば、ASTM D1003に基づき測定する全光線透過率が85%以上、ヘイズが85%以上になる程度が好ましく、通常、拡散シートの透明な樹脂100重量部に対して約0.1〜5.0重量部、好ましくは0.5〜3.0重量部である。この程度の配合量であれば、本発明の拡散シートにより拡散される光を更に拡散し、輝点による眼の刺激を一層緩和し、モアレやランプイメージを好適に解消するとともに、照度の低下も気にならない程度に収まる。
【0025】
本発明においては、上記の凹凸構造を構成する単位レンズ列の稜線方向が、表面及び裏面で30°〜90°、好ましくは60°〜90°の交差角度で交差していることを特徴とする。このようにすれば、拡散剤を含む拡散板等を用いた場合と比べて透光率が高く、表面にアクリルビーズ等を付着させた拡散シート等を用いた場合と比べて目を刺激するような輝点を効果的に弱めることができ、また、光学異方性が高いフィルムを用いた場合と比べて光のムラを小さくすることができる。
表面及び裏面の単位レンズ列の稜線方向の交差角度が角度が30°未満であれば、LEDの輝点を十分に拡散することができず、モアレも発生するので、当該拡散シートを通してLEDを見た場合、目に刺激を感じることがある。
【0026】
本発明において、単位レンズ列の高さHに対するピッチPの割合P/Hを6以下、好ましくは5以下とし、ピッチPを700μm以下、好ましくは500μm以下、さらに好ましくは450μm以下とし、表面と裏面の単位レンズ列の稜線方向の交差角度を60°〜90°にすることにより、LEDから出射された光は一層好適に拡散されて輝点は殆ど無くなり、LEDのランプイメージを解消することができる。なお、図2に示したように、本発明においてピッチPとは単位レンズ列2の並列間隔をいい、高さHとは単位レンズ列2中の最も高い位置と最も低い位置の高度差をいう。単位レンズ列の高さHに対するピッチPの割合P/Hの下限は、通常1.5程度が好ましく、ピッチPの下限は10μm程度が好ましい。
【0027】
上記のような本発明の拡散シートはLEDの上を覆うように被せて使用する。特に、図3に示したように、基板3aの上にLED4を直線状に配列してその表面側に拡散シート1を配置し、LED4の配列方向と略平行な軸に沿って拡散シート1を湾曲させることにより、本発明の拡散シート1で基板3aごとLED4を覆うようにすれば、外観が蛍光灯のようになり、デザイン的にも違和感が無くなる。
【0028】
直線状に配列されたLEDを本発明の拡散シート1で覆う場合、拡散シート1の設置角度と湾曲率を変化させることにより、出射される光の指向性を調節できる。
即ち、LED4からは指向性が非常に強い光が出射されるが、本発明の拡散シート1が湾曲されていない状態ではLED4からの光を完全には拡散せず、当該拡散シート1からは比較的指向性が強い光が出射される。一方、本発明の拡散シート1を湾曲させた場合、出射面(LED4の上に設置した場合に、外側になる面)の単位レンズ列の稜線方向と平行な軸に沿って湾曲させれば、出射される光は拡散シート1を湾曲させた方向に拡散するので、広範囲を照明するのに適した光が照射される。これに対し、出射面の単位レンズ列の稜線方向と垂直な軸に沿って湾曲させた場合には、湾曲させなかった場合と比較して、出射される光の指向性はさほど変化せず、指向性が強いままである。
【0029】
上記のような、本発明の拡散シートの性質を利用して、直線状に配列されたLEDと本発明の拡散シートを用いて卓上用照明器具及び室内照明器具を形成させることができる。
卓上用照明器具は、一般に着座した使用者の目の高さの辺りに光源が配置され、使用者が当該光源を至近距離から直視する機会も多いことから、横方向に出射される光が少ないほうが好ましく、即ち、指向性が強いほうが好ましい。従って、卓上用として使用する場合は本発明の拡散シートを湾曲させずに用いるか、又は出射面における単位レンズ列の稜線方向と90°の軸に沿って湾曲させればよい。
特に、LEDを直線状に配列して蛍光灯と同様に用いる場合には、デザイン上又は構造上の目的で、LEDの配列の周りに本発明の拡散シートを巻いたり、あるいはLEDが配列された基板の幅方向端縁付近に拡散シートの端縁を固定して湾曲した状態での使用が要求されることが多いが、このような場合でも、図5に示すように、拡散シートを出射面の単位レンズ列の稜線方向がLEDの配列方向に対して略直交するように設置するとともに、LEDの配列方向と平行な軸に沿って湾曲させれば、指向性が強い光を照射できる卓上用LED照明を得ることができ、デザイン上又は構造上の要求に対応することができる。
【0030】
一方、室内照明器具は部屋の天井付近に設置され部屋全体を照明するものであり、照明の直下だけでなくその周辺も含めて満遍なく照明することが望ましく、即ち、拡散性が強いほうが好ましい。従って室内照明器具用として使用する場合は、本発明の拡散シートを出射面の単位レンズ列の稜線方向と平行な軸に沿って湾曲させればよい。
特に、LEDを直線状に配列して蛍光灯と同様に用いる場合には、本発明の拡散シートを出射面の単位レンズ列の稜線方向とLEDの配列方向が略平行になるように設置して、LEDの配列方向と略平行な軸に沿って湾曲させれば、照明の直下とその周辺で照度の差が小さい室内照明器具を得ることができる。
なお、図3図5において、LEDは1本の直線状に配列されているが、本発明では図4(a)(b)に示すように、2本、3本等複数本の直線状に配列しても良い。
無論、デザイン上、蛍光灯の形状を模す必要がない場合は、直線に限らず、マトリックス状にLEDを配列してもよい。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0032】
(使用する樹脂について)
下記の実施例において、透明樹脂としては帝人化成株式会社製のポリカーボネートの透明樹脂「パンライトL−1225Y(商品名)」(ASTM D1003に基づく樹脂の光線透過率:90%、ヘイズ:3%、以下、単に透明樹脂と称する)、拡散性樹脂としては帝人化成株式会社製の拡散材が配合されたポリカーボネートの透明樹脂「パンライトML−2203(商品名)」(ASTM D1003に基づく樹脂の光線透過率:89%、ヘイズ:88%、以下、単に拡散性樹脂と称する)、高拡散性樹脂としては帝人化成株式会社製の拡散材が配合されたポリカーボネートの透明樹脂「パンライトML−1105(商品名)」(ASTM D1003に基づく樹脂の光線透過率:54%、ヘイズ:87%、以下、単に高拡散性樹脂と称する)を単独で用いた。
【0033】
(拡散シートの製造)
実施例1
透明樹脂を溶融押出の樹脂温度295℃でダイスよりシート状に押し出し、押出されたシート状溶融樹脂を、金属製の冷却ロールとゴムロールの間に狭圧する方法において、冷却ロールに表面側の凹凸構造の雌型を刻設するとともに、ゴムロール側に裏面側の凹凸構造が刻設された離型性シート(賦型シート)を配置して拡散シートを製造した。
なお、凹凸構造は表面側及び裏面側の双方とも、ピッチが430μm、高さが111μmである。表面側の単位レンズ列の稜線方向と裏面側の単位レンズ列の稜線方向の交差角度は90°である。
【0034】
実施例2
単位レンズ列のピッチ及び高さをそれぞれ50μm、18μmにした他は実施例1と同様にして拡散シートを得た。
【0035】
実施例3
単位レンズ列のピッチ及び高さをそれぞれ25μm、11μmにした他は実施例1と同様にして拡散シートを得た。
【0036】
実施例4
裏面側の単位レンズ列のピッチ及び高さをそれぞれ25μm、11μmにした他は実施例1と同様にして拡散シートを得た。
【0037】
実施例5
使用樹脂を拡散性樹脂に変更すると共に、単位レンズ列のピッチ及び高さをそれぞれ337μm、84μmにした他は実施例1と同様にして拡散シートを得た。
【0038】
実施例6
透明樹脂を溶融押出の樹脂温度295℃でダイスよりシート状に押し出し、押出されたシート状溶融樹脂を、金属製の冷却ロールとゴムロールの間に狭圧する方法において、冷却ロールに表面側の凹凸構造の雌型を刻設してレンズシートを製造した。なお、凹凸構造のピッチは193μm、高さは57μmである。
一方、拡散性樹脂を溶融押出の樹脂温度295℃でダイスよりシート状に押し出し、押出されたシート状溶融樹脂を、金属製の冷却ロールとゴムロールの間に狭圧する方法でフラットシートを製造した。
上記のように製造したフラットシートの両面にそれぞれ上記のレンズシートを凹凸構造が外側になるように貼り付けて実施例6の拡散シートを得た。なお、表面側の単位レンズ列の稜線方向と裏面側の単位レンズ列の稜線方向の交差角度は90°である。
【0039】
実施例7
レンズシートを拡散性樹脂製とし、フラットシートを透明樹脂製とし、単位レンズ列のピッチを252μm、高さを67μmとした他は実施例6と同様にして拡散シートを得た。
【0040】
実施例8
透明樹脂を溶融押出の樹脂温度295℃でダイスよりシート状に押し出し、押出されたシート状溶融樹脂を、金属製の冷却ロールとゴムロールの間に狭圧する方法において、冷却ロールに表面側の凹凸構造の雌型を刻設して表面側用のレンズシートを製造した。なお、単位レンズ列のピッチは430μm、高さは111μmである。
一方、単位レンズ列のピッチを25μm、高さを11μmにした他は、上記表面側用のレンズシートと同様にして裏面側用のレンズシートを製造した。
上記のように製造したレンズシートを凹凸構造が外側になるように、且つそれぞれの単位レンズ列の稜線方向の交差角度は90°になるように重ね合わせて拡散シートを得た。
【0041】
実施例9
単位レンズ列のピッチ及び高さをそれぞれ163μm、26μmにした他は実施例1と同様にして拡散シートを得た。
【0042】
実施例10
単位レンズ列のピッチ及び高さをそれぞれ796μm、200μmにした他は実施例1と同様にして拡散シートを得た。
【0043】
実施例11
表面側の単位レンズ列の稜線方向と裏面側の単位レンズ列の稜線方向の交差角度を75°にした他は実施例1と同様にして拡散シートを得た。
【0044】
実施例12
表面側の単位レンズ列の稜線方向と裏面側の単位レンズ列の稜線方向の交差角度を60°にした他は実施例1と同様にして拡散シートを得た。
【0045】
実施例13
表面側の単位レンズ列の稜線方向と裏面側の単位レンズ列の稜線方向の交差角度を45°にした他は実施例1と同様にして拡散シートを得た。
【0046】
実施例14
表面側の単位レンズ列の稜線方向と裏面側の単位レンズ列の稜線方向の交差角度を30°にした他は実施例1と同様にして拡散シートを得た。
【0047】
比較例1
表面側の単位レンズ列の稜線方向と裏面側の単位レンズ列の稜線方向の交差角度を15°にした他は実施例1と同様にして拡散シートを得た。
【0048】
比較例2
表面側の単位レンズ列の稜線方向と裏面側の単位レンズ列の稜線方向を平行にした他は実施例1と同様にして拡散シートを得た。
【0049】
比較例3
PETフィルムの表面にアクリルビーズを付着させた市販の拡散シート(恵和株式会社製、商品名:オパルスBS−913、総厚:270μm 、HAZE:89%)を拡散シートとした。
【0050】
比較例4
高拡散性樹脂を溶融押出の樹脂温度295℃でダイスよりシート状に押し出し、押出されたシート状溶融樹脂を、金属製の冷却ロールとゴムロールの間に狭圧する方法でフラットシートを製造し、拡散シートとした。
【0051】
実施例A1
図5に示したような、LED4が直線状に配列された基板3aと、基板3aの端縁からから斜め上に延伸された反射板3bと、反射板3bの端縁に設けられた拡散シート取り付け部3cを有する照明器具を用意し、実施例1の拡散シートを、外側の単位レンズ列の稜線方向がLEDの配列方向と直交するように、且つLED4の配列方向と略平行な軸に沿って拡散シート1が湾曲するように取り付けて照明器具とした。但し、図5に示した拡散シート1の単位レンズ列は模式的なものであり、実際の単位レンズ列は図示したものよりもずっと小さく、肉眼では判別困難である。
LEDの配列方向に対する単位レンズ列の稜線方向の角度、単位レンズ列のピッチ及び高さについては他の実施例、比較例のものと共に表1に示す。
この照明器具について、直下照度、眼に対する刺激(輝点)の有無、モアレの有無、LEDランプイメージの有無について測定、判定した。測定・判定結果については他の実施例、比較例のものと共に表1に示す。
【0052】
実施例A2〜A14、比較例A1〜A4
実施例2〜14、比較例1〜比較例4の拡散シートを用いた他は実施例A1と同様にして照明器具とした。
【0053】
実施例B1
外側の単位レンズ列の稜線方向をLEDの配列方向に対して平行にした他は実施例A1と同様にして照明器具とした。
【0054】
比較例B1
比較例2の拡散シートを用いた他は実施例B1と同様にして照明器具とした。
【0055】
対照例
拡散シートを用いなかった他は実施例A1と同様にして照明器具とした。
【0056】
【表1】
【0057】
直下照度の測定:
測定装置として、縦38cm横57cm高さ75cmで底面がなく上面の中央部に測定用の窓が開けられ内側が黒く塗られた箱と、前記測定用の窓に取り付けられた照度計(オールインワンデジタルマルチメータ MT−8210:(株)マザーツール社製)からなる測定箱を用いた。
机上に実施例、比較例、対照例の照明器具を上向けに載置した状態で点灯し、30分以上放置して光量を安定させてから、照度計が照明器具の真上にくるように上記の測定箱を照明器具の上に被せ、照度を測定した。
【0058】
眼に対する刺激(輝点)の有無:
照明器具を横向きに設置し、3m離れた位置から肉眼で観察させ、眼に対する刺激がLEDを直視した場合と蛍光灯を直視した場合のどちらに近いかをパネラー5人により目視判定させた。評価はLEDに近いと答えたパネラーの人数により下記の基準で判定した。
○:0人
△:1〜2人
×:3〜5人
【0059】
モアレの有無:
照明器具を横向きに設置し、3m離れた位置から肉眼で観察させ、モアレを観察できるか否かをパネラー5人により目視判定させた。評価はモアレを観察できたパネラーの人数により下記の基準で判定した。
○:0人
△:1〜2人
×:3〜5人
【0060】
LEDランプイメージの有無:
照明器具を横向きに設置し、3m離れた位置から肉眼で観察させ、LEDの位置を判別できるか否かをパネラー5人により目視判定させた。評価はLEDの位置を判別できたパネラーの人数により下記の基準で判定した。
○:0人
△:1〜2人
×:3〜5人
【0061】
なお、図6図12に実施例A1(図6)、実施例A5(図7)、比較例A2(図8)、比較例A3(図9)、比較例A4(図10)、比較例B1(図11)、対称例(図12)の各照明器具のランプイメージの写真を示す。この写真から、本発明の実施例A1及びA5の照明器具では、単に眼に対する刺激が小さくなるだけでなく、LEDのランプイメージを好適に消すことが出来ることが判る。なお、比較例A3の照明器具もランプイメージが消えているが、分厚く、拡散性の高いフラットシートを使用しているため、光線透過率が低く、本発明の効果を奏していない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
叙上のとおり、本発明に係るLED照明用の拡散シート及びこれを用いた照明器具は、表面側と裏面側のそれぞれの単位レンズ列の稜線方向が30°〜90°の交差角度で交差しているので、透光率が高く、LEDの輝点を解消することができ、且つ出射される光の印象を蛍光灯のものに近づけることができ頗る有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 拡散シート
2 単位レンズ列
3 LED照明
3a 基板
3b 反射板
3c 拡散シート取り付け部
4 LED
P ピッチ
H 高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12