(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018577
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】車両用グレージングパネルを切り取る装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B26D 1/547 20060101AFI20161020BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
B26D1/547 E
B26D3/00 601E
B26D1/547 D
【請求項の数】14
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-539336(P2013-539336)
(86)(22)【出願日】2011年11月8日
(65)【公表番号】特表2014-501626(P2014-501626A)
(43)【公表日】2014年1月23日
(86)【国際出願番号】GB2011052164
(87)【国際公開番号】WO2012069804
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2014年10月3日
(31)【優先権主張番号】1019753.1
(32)【優先日】2010年11月22日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508325119
【氏名又は名称】ベルロン ハンガリー ケーエフティー − ツーク ブランチ
(74)【代理人】
【識別番号】100064469
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100099612
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100073450
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー デーヴィス
(72)【発明者】
【氏名】ウイリアム フィンク
【審査官】
福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−023824(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0132882(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0117573(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/547
B26D 3/00
B62D 67/00
B26F 3/12
B25B 25/00
B25B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のグレージングパネルを切り取る際にカッティングワイヤを用いる巻取器ユニットであって、前記巻取器ユニットは、
カッティングワイヤを巻くためのものであって間隔をあけて配置された第1と第2の巻取器スプールと
単一の吸着器のみから成り、前記ユニットを取り付ける吸着マウントと
とを有するし、
前記ユニットは、前記スプールから間隔をあけて配置された少なくとも1つのワイヤーガイドエレメントを含み、且つ
前記ワイヤーガイドエレメントは、前記巻取器スプール及び/又は前記吸着マウントに対して位置又は向き(オリエンテーション)を調整することができるように前記ユニットに対して取り付けられていることを特徴とする
巻取器ユニット。
【請求項2】
請求項1による巻取器ユニットであって、前記第1と第2の巻取器スプールは、前記吸着マウントの直径方向の線の両側にそれぞれ配置されるように間隔をあけている巻取器ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2による巻取器ユニットであって、前記巻取器スプールは、吸着器の本体上の位置で前記吸着マウントに搭載されている巻取器ユニット。
【請求項4】
請求項3による巻取器ユニットであって、前記巻取器スプールは、単一の吸着器に固定されている共通のデッキに取り付けられている巻取器ユニット。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかによる巻取器ユニットであって、前記ユニットは、前記スプールから間隔をあけて配置された少なくとも1つの回転自在なワイヤーガイドエレメントを含んでいる巻取器ユニット。
【請求項6】
請求項5による巻取器ユニットであって、前記ガイドエレメントは、プーリーホイールである巻取器ユニット。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかによる巻取器ユニットであって、第1と第2ワイヤーガイドエレメントが設けられ、それぞれのガイドエレメントは、巻取器スプールの各々に外方に位置している巻取器ユニット。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれかによる巻取器ユニットであって、前記ワイヤーガイドエレメントは、前記巻取器スプール及び/又は前記吸着マウントに対して枢動し又は傾くように枢支し又は傾き自在に取り付けられている巻取器ユニット。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかによる巻取器ユニットであって、前記ユニットは、前記巻取器スプールから間隔をあけたハンドル(10,11)を備えている巻取器ユニット。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかによる巻取器ユニットであって、前記ユニットは、作業者の別個の手によって各々把持されるように、1対のほぼ平行なハンドル(10,11)を備えている巻取器ユニット。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかによる巻取器ユニットであって、前記ユニットは、巻取器スプール間を延びる線に対して横方向に延びていている細長いハンドル(9)を備えている巻取器ユニット。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかによる巻取器ユニットであって、ポンプ起動型の吸着器を含む巻取器ユニット。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかによる巻取器ユニットであって、前記巻取器スプールの軸線は、前記吸着マウントの吸着膜突出径によって限界されるスペース内に位置されている巻取器ユニット。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかによる巻取器ユニットを使用して、車両のグレージングパネルを取り外す方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用グレージングパネルをカットアウトする(切り取る)装置及び方法に関するものである。
【0002】
本発明は、特に、ウインドスクリーン(フロントガラス)の如きグレージングパネルを車両フロントガラスのフレームの取付位置から解放するのを達成するためにカッティングワイヤを使用する技術に関するものである。本発明の技術とカットアウト工具は、また、他の接合グレージングパネルに使用するのにも適用することができる。
【背景技術】
【0003】
車両のフロントガラス又はサイドガラスを切り取るために単一の工具に取り付けられたワイヤー巻取器スプールを用いる従来技術が知られている。例えば、米国特許第7618023号明細書及びWO2006030212号公報に典型的な装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7618023号明細書
【特許文献2】WO2006030212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、改良された技術及び装置が今回考案された。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の面によれば、本発明は、車両のグレージングパネルを切り取る際にカッティングワイヤを用いる巻取器ユニットであって、前記巻取器ユニットは、
カッティングワイヤを巻くためのものであって間隔をあけて配置された第1と第2の巻取器スプールと、
単一の吸着器のみから成り、前記ユニットを取り付ける吸着マウントとを有する
し、
前記ユニットは、前記スプールから間隔をあけて配置された少なくとも1つのワイヤーガイドエレメント(好ましくは、プーリーホイールの如き回転可能なガイドエレメント)を含み、且つ
前記ワイヤーガイドエレメントは、前記巻取器スプール及び/又は前記吸着マウントに対して位置又は向き(オリエンテーション)を調整することができるように前記ユニットに対して取り付けられていることを特徴とする
巻取
器ユニットを提供するものである。
【0007】
第1と第2の巻取器
スプールは、前記吸着マウントの直径方向
の線の両側にそれぞれ配置されるように間隔をあけているのが好ましい。
【0008】
有益には、巻取器スプールの軸線は、吸着マウントのスカート/薄膜の突出径によって限界されるスペース内に位置される。
【0009】
好ましい実施例では、巻取器スプールは、吸着器の本体上の位置で吸着マウントに搭載される。
【0010】
1つの実施例では、巻取器スプールは、単一の吸着器に固定されている共通のデッキに取り付けられているのが好ましい。
【0011】
上記した技術的特徴は、単独であるいは組み合わせて、コンパクトで使用に効率的な装置を形成する。
【0012】
望ましくは、第1と第2のワイヤーガイドエレメントが設けられ、それぞれのガイドエレメントは、巻取器スプールの各々に外方に位置している。
【0013】
このような装置では、ワイヤーガイドエレメントは、巻取器スプールに対して枢動し又は傾くように枢支し又は傾き自在に取り付けられている。
【0014】
ユニットは、巻取器スプールから間隔をあけて配置されたハンドルを備えているのが好ましい。このようにすると、ユニットは、巻取スプール間以外の位置にあるハンドルで持ち上げることができるので、巻取器スプールは、相互に接近して配置されるのを確保する。
【0015】
1つの実施例では、ユニットは、作業者の別個の手によって把持されるように、1対のほぼ平行なハンドルを各々備えている。
【0016】
このハンドル又はそれぞれのハンドルは、巻取器スプール間を延びる線を横切って延びていてもよい。
【0017】
1つの実施例では、ユニットは、ポンプ起動型の吸着器を含むのが好ましい。
【0018】
他の面によれば、本発明は、本明細書で規定されるような巻取器ユニットを使用して、車両の (フロントガラス又はサイドガラスの如き) グレージングパネルを取り外す方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
添付図面を参照して特定の実施例を例示的にして本発明を以下に述べる。
【
図1】
図1は、本発明による装置の概略斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の装置に類似している装置の概略分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照すると、切取装置は、単一の吸着マウント2を有するワイヤー巻取器ユニット1を含んでいる。この単一の吸着マウントには、1対の間隔をあけた巻取器スプール3、4と、1対の間隔をあけて配置されて回転自在にマウントされた案内プーリーホイール5、6とが搭載されている。単一の吸着マウント2は、ワイヤー巻取器ユニット1が(典型的には、車両の内側で)車両のフロントガラスに解放自在で固定的に取り付けられるのを可能にする。巻取器スプール3、4は、吸着マウントの直径方向の線の
両側にそれぞれ位置するように間隔をあけて配置される。
【0021】
吸着マウント2は、硬質プラスチックカップ成形体7とその下方にある可撓性ゴム吸着膜8とを含んでいる。可撓性ゴム吸着膜8は、吸着マウント2の吸着能力を増強するために硬質プラスチックカップ成形体7の周囲を越えて延びている。吸着器起動/解放レバーのサイドハンドル9は、一貫性のある吸着を行ったり解放したりするのを可能にする。それに代えて、例えば、後に述べるようなポンプ起動型吸着マウントを用いることができる。
【0022】
吸着マウント2は、間隔をあけた一体のサイドハンドル
10、11を有して形成されている。これらのサイドハンドル
10、11は、巻取器スプール3、4の間に間隔をあける方向に合わせて横方向にほぼ相互に平行に延びている。
【0023】
巻取器スプール3、4は、吸着マウント2にボルト止めされた巻取器スプール搭載デッキ14に搭載されて設けられている。デッキ14は、ワイヤー受け取りリール4aがデッキ14の下方に吊り下げられるように1対の巻取器スプール3、4を並んで保持している。巻取器スプール3、4は、デッキ14上に設けられたベアリングで支持される軸線方向の巻取軸に接続されている。巻取器スプール3、4は、手巻器を経て手動か、又は電動巻取り器あるいはウインチの如き機械的アクチュエーターによって軸線上を回転自在に駆動される。駆動ボス19は、雄駆動工具を受け入れる雌ソケット(正方形穴)備えている。巻取器スプールの外方には、低摩擦プラスチック材料のワイヤー案内プーリーホイール5、6が位置決めされている。これらのプーリーホイールは、それぞれの回転軸線の周りを回転可能に取り付けられている。カッティングワイヤが後に述べるようにプーリーを横切って接線的に引かれるにつれて案内プーリーが回転する。巻取器スプール3、4は、それぞれのラチェット機構13によって(それぞれ反対の方向で)一方向のみ回転するように保持されている。各機構は、それぞれ、先に締付けられたワイヤーが緩められる又は巻きほぐされる(逆巻される)のを無効にするラチェットを含み、このラチェットは、ラチェット解放取
手を引き出すことにより無効にすることができる。
【0024】
案内プーリーホイール5、6は、硬質プラスチックカップ成形体7にボルト止めされるプーリーホイール搭載アーム12によって硬質プラッスチックカップ成形体7に取り付けられている。1つの実施例では、案内プーリーホイール5、6は、プーリーホイール搭載アーム12(従って案内プーリーホイール5、6)が吸着マウント2及び巻取器スプール搭載デッキ14に対してピボット15のまわりを傾くことができるようにするために、プーリーホイール搭載アーム12によって取り付けられている。このため、案内プーリーホイール5、6の位置は、自己整列したり、(図の矢印A方向にワイヤー巻取器ユニット1を傾けたり)、フロントガラスのカーブの結果自己調節をしたりするのを可能にする。
【0025】
図2に示される実施例では、プーリーホイール搭載アーム12を硬質プラスチックカップ成形体7に固定するために1対の取付けボルト16が用いられている。このような実施例では、プーリーホイール搭載アーム12は、枢動も傾きもしないので、案内プーリーホイール5、6は、巻取スプール搭載デッキ14に対して固定したままである(回転可能とは別である)。
【0026】
使用時には、この装置は、一般に、特許文献2(WO2006030212)の
図9乃至
11に記載された巻取器ユニットとほぼ同様の方法で使用することができる。最初に、グレージングパネルと車両の支持フレームの間に挟まれているボンディングビード(典型的にポリウレタン・ボンディングビード)に隣接してその周りに存在するように、 可撓性カッティングワイヤがフロントガラスのグレージングパネルの外側に巻き付けられる。カッティングワイヤの反対側の端部は、ボンディングビードを介して形成された孔付きチャンネルを通して供給され、次いで、自由端は、巻取器ユニットの個別の巻取器スプールのまわりに巻き取られる。
【0027】
このようにして、グレージングパネルは、ワイヤーと巻取器ユニット1(追加のガイドは必要ではない)のみを使用して、取り外すことができる。この技術では、巻取器ユニットは、ステアリングホイール(自動車のハンドル)の上方に位置してグレージングパネルのステアリングホイール側に先ず固定される。巻取器ユニット1が上記の位置あると、カッティングワイヤは、グレージングパネルと車両の支持フレームの間に挟まれているボンディングビードに隣接してその周りに位置するように、フロントガラスの外側に巻き付けられる。カッティングワイヤの相対する端部は、巻取器ユニットの位置より下方のフロントガラスの隅でボンディングビードによって作られた孔付きチャンネルを通って送給される。
【0028】
ワイヤーの長さ部分は、車両の内部に引き込まれ、プーリー案内ホイール6を通過して巻取ユニットの巻取器スプール3のリール3aに固定される。ワイヤーの自由端の長さ部分は、グレージングパネルの上左側の隅に達するのに十分な長さで引き込まれる。その後、巻取器スプール3が操作されて、カットラインがスクリーンの上右側の隅を通過するまで、ワイヤー長さ部分は、フロントガラスの側に沿ってボンディングビードを上方へ切り崩す。この際、ユニットは、スクリーンから取り除かれ、上左側の隅でグレージングパネル上に位置変えされる。
【0029】
巻取器ユニット1を位置変えする前に、巻取器スプールのラチェットが解放ノブ13によって解放されて、ワイヤーが位置変えされるべきグレージングパネルを横切って移動されつつ、ワイヤーが巻取器スプール3からほどかれる。その後、ラチェットが再結合され、スプール3は、ワイヤーを巻き込むようにもう一度作動する。
【0030】
次に、ユニットは、グレージングパネルの隅の周りをほぼ直角に移動し、グレージングパネルに固定される。これが達成されるのを可能にするために、スプール3のラチェットが再び解放され、その後再結合される。その後、ワイヤーの自由長さ部分の端部は、プーリー5に巻き付けられ、巻取器に接続され、スプールは、カットを終えるために、順次か(同時に)操作される。ワイヤーの長さ部分は、カットを終えるために交差する。
【0031】
先行技術に対する重要な改良点は、単一の吸着マウント2のみを用いることと、1対の巻取器スプール3、4がこの単一の吸着マウントに搭載されて取り付けられることである。巻取器スプールの軸線は、吸着マウントのスカートの突出直径(巻取器スプール軸線の位置を越えて横に延びる吸着膜8の直径)によって形成される空間内に位置される。これは、ワイヤー巻取器ユニット1によってフロントガラス上に占められるスペースが縮小され、また吸着マウント2のみの単一の起動が必要なだけであって、時間と労力とを節約することができることを意味する。
【0032】
吸着マウント2の可撓性ゴム吸着膜8上に1対の巻取器スプール3、4を直接搭載することによって、充分な吸着力を発生するのに十分な大きさの直径の吸着マウント2を使用することができる。前記の先行技術の装置を使用する場合、1対の間隔をあけた吸着盤のうちの一方が完全に付勢されない場合、他方の吸着盤は、ワイヤーが緊張状態にない時、巻取器ユニットを位置固定状態に保持するのに充分な吸着を有するが、ワイヤーが巻線過程の間に緊張されると、失敗するという危険がある。