(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0022】
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0023】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0024】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」等の序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではない。
【0025】
トランジスタは半導体素子の一種であり、電流や電圧の増幅や、導通または非導通を制御するスイッチング動作などを実現することができる。本明細書におけるトランジスタは、IGFET(Insulated Gate Field Effect Transistor)や薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を含む。
【0026】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置の例として、トランジスタの構成例と、その作製方法例について、図面を参照して説明する。
【0027】
[構成例]
図1(A)に、本構成例で示すトランジスタ100の上面概略図(平面概略図ともいう)を示す。また、
図1(B)、(C)にはそれぞれ、
図1(A)中の切断線A−B、C−Dにおける断面概略図を示す。なお、
図1(A)では明瞭化のため一部の構成要素を明示していない。
【0028】
トランジスタ100は基板101上に設けられ、絶縁層106と、絶縁層106上に島状の半導体層102と、半導体層102上に一対の電極103と、半導体層102上にゲート電極105と、半導体層102とゲート電極105との間に絶縁層104と、を有する。また、一対の電極103、半導体層102、絶縁層104及びゲート電極105を覆う絶縁層107と、絶縁層107上に絶縁層108と、を有する。
【0029】
絶縁層106は、島状の突出部110を有する。半導体層102は、当該突出部110の上面に接して設けられている。また、突出部110の上面は、上方から見て(すなわち、平面視において)半導体層102よりも内側に位置するように設けられている。言い換えると、上方から見た半導体層102の輪郭よりも、絶縁層106の突出部110の上面の輪郭が内側に位置するように設けられている。
【0030】
半導体層102は、チャネルが形成される領域において、シリコン系半導体などの半導体を含んでいてもよい。特に、半導体層102は、シリコンよりもバンドギャップの大きな半導体を含むことが好ましい。好適には、半導体層102は酸化物半導体を含んで構成される。
【0031】
例えば、上記酸化物半導体として、少なくともインジウム(In)もしくは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。より好ましくはIn−M−Zn系酸化物(MはAl、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHf等の金属)で表記される酸化物を含む。
【0032】
以下では、特に断りのない場合、半導体層102が酸化物半導体を含む場合について説明する。
【0033】
一対の電極103は、一方がソース電極として機能し、他方がドレイン電極として機能する。
【0034】
ここで、半導体層102に流れる電流の向きと平行な方向をチャネル長方向、チャネル長方向に直交する方向をチャネル幅方向と呼ぶこととする。したがって、
図1(B)はトランジスタ100におけるチャネル長方向の断面概略図に相当し、
図1(C)はチャネル幅方向における断面概略図に相当する。また、トランジスタ100を上方から見たときの、半導体層102と重なる領域における一対の電極103間の距離をチャネル長Lとする。同様に、トランジスタ100を上方から見たときの、一対の電極103に挟まれた領域における、チャネル長方向と直交する方向の半導体層102の幅をチャネル幅Wとする。なお、位置によってチャネル長Lやチャネル幅Wにばらつきがある場合には、その最小値を用いることとする。
【0035】
一対の電極103は、チャネル長方向において、半導体層102の上面の一部、側面、及び下端部に接して設けられている。このように、一対の電極103を半導体層102の端部に沿って設けることで、これらの接触面積が増大し、これらの間の接触抵抗を低減することができる。その結果、トランジスタ100がオン状態におけるソース−ドレイン間電流(以下、オン電流ともいう)を増大させることができる。
【0036】
絶縁層104は、ゲート絶縁層として機能する。絶縁層104は、チャネル幅方向において、半導体層102の上面、側面及び下端部を覆って設けられている。
【0037】
ゲート電極105は、絶縁層104と同様、チャネル幅方向において、半導体層102の上面、側面及び下端部を覆って設けられている。
【0038】
ここで、
図1(C)の一部を拡大した断面概略図を
図2に示す。
【0039】
図2に示すように、チャネル幅方向の断面において、ゲート電極105が半導体層102の上面及び側面だけでなく、斜め下方の面(下端部)も取り囲むように設けることが好ましい。このような構成とすることで、ゲート電極105によって半導体層102の上面側及び側面側だけでなく、斜め下方からも電界を掛けることができる。その結果、半導体層102の側面近傍および下端部近傍に形成されるチャネルを積極的に用いることができるため、トランジスタ100の電界効果移動度を向上させることができる。
【0040】
具体的には、
図2中の矢印で示すように、ゲート電極105の下面が、半導体層102の下面よりも下側(絶縁層106側)に位置するように設けることが好ましい。または、ゲート電極105及び絶縁層104が、絶縁層106の突出部110の側面を覆うように設けることが好ましい。
【0041】
また、チャネル幅方向においてゲート電極105が半導体層102の側面を覆う構成であるため、半導体層102の厚さが厚いほど、実効的なチャネル幅が増大し、オン電流を増大させることができる。半導体層102の厚さは、その上方に設けられる膜の被覆性や、生産性を考慮して設定すればよい。例えば、チャネル幅Wに対して0.1倍以上10倍以下、好ましくは0.5倍以上5倍以下、より好ましくは1倍以上2倍以下とすることが好ましい。
【0042】
ここで、
図2に示すように、半導体層102の側面がテーパー形状を有していると、半導体層102の上方に設けられる膜の被覆性を向上させることができる。さらに半導体層102の上面や、上端部、下端部などの角部が丸みを帯びた形状であると、より上方の膜の被覆性が向上するため好ましい。このような形状に半導体層102を加工することで、半導体層102の厚さをより厚くすることができる。
【0043】
絶縁層106は、酸化物を含む絶縁材料を用いることが好ましい。特に加熱により一部の酸素が脱離する絶縁材料を用いることが好ましい。絶縁層106にこのような材料を用いることにより、作製工程中に係る熱によって脱離した酸素が半導体層102に供給され、半導体層102中の酸素欠損を低減することができる。
【0044】
トランジスタのチャネル形成領域を含む酸化物半導体に酸素欠損が多く存在すると、チャネル形成領域中にキャリアである電子を生じさせてしまい、トランジスタのしきい値電圧のばらつき、リーク電流の増大、及びストレス印加によるしきい値電圧の変動など、電気特性の不良を引き起こす要因となる。
【0045】
したがって、半導体層102中の酸素欠損を低減することにより、トランジスタ100に良好な電気特性を付与し、さらには電気特性の変動を低減することができ、信頼性の高いトランジスタ100を実現できる。
【0046】
絶縁層107または絶縁層108は、酸素を透過しにくい材料を用いることが好ましい。このような絶縁層107または絶縁層108により半導体層102を覆うことで、半導体層102から外部に酸素が放出されることを抑制できる。さらに、絶縁層106から脱離した酸素を絶縁層107または絶縁層108よりも下側に閉じ込めることができ、半導体層102に供給しうる酸素の量を増大させることができる。
【0047】
また、絶縁層107または絶縁層108には、水や水素を透過しにくい材料を用いることが好ましい。このような材料を用いることで、外部から酸化物半導体にとっての不純物である水や水素が混入することを抑制することができ、トランジスタの電気特性の変動が抑えられ、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
【0048】
ここで、絶縁層107に絶縁層106と同様の、加熱により酸素が脱離する材料を用い、絶縁層108に酸素を透過しにくい材料を用いることで、絶縁層107からも半導体層102に酸素を供給することが可能となる。
【0049】
以上のように、絶縁層106の突出部110上に半導体層102を設け、チャネル幅方向において半導体層102の上面、側面及び下端部を覆うようにゲート電極105を設けることで、トランジスタ100のオン電流をはじめとした電気特性を良好なものとすることができる。さらに、半導体層102の厚さを厚く形成することで、微細に加工した場合であっても高いオン電流を実現できる。
【0050】
[各構成要素について]
以下では、トランジスタ100の各構成要素について説明する。
【0051】
〔半導体層〕
トランジスタのチャネルが形成される半導体層に適用可能な半導体として、例えばシリコンやゲルマニウムなどの半導体材料、化合物半導体材料、有機半導体材料、または酸化物半導体材料を用いてもよい。
【0052】
また、トランジスタに用いる半導体の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、または一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタの特性の劣化が抑制されるため好ましい。
【0053】
例えば、上記半導体としてシリコンを用いる場合、アモルファスシリコン、微結晶シリコン、多結晶シリコン、または単結晶シリコンなどを用いることができる。
【0054】
特に、半導体層に含まれる半導体として、酸化物半導体を用いることが好ましい。シリコンよりもバンドギャップが広く、且つキャリア密度の小さい半導体材料を用いると、トランジスタのオフ状態における電流を低減できるため好ましい。
【0055】
特に、半導体層として、複数の結晶部を有し、当該結晶部はc軸が半導体層の被形成面、または半導体層の上面に対し垂直に配向し、且つ隣接する結晶部間には粒界を有さない酸化物半導体膜を用いることが好ましい。
【0056】
半導体層としてこのような材料を用いることで、電気特性の変動が抑制され、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
【0057】
なお、半導体層に適用可能な酸化物半導体の好ましい形態とその形成方法については、後の実施の形態で詳細に説明する。
【0058】
〔基板〕
基板101の材質などに大きな制限はないが、少なくとも工程中の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有する材料を用いる。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイヤ基板、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)基板などを、基板101として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板または多結晶半導体基板、SOI基板などを適用することもできる。
【0059】
また、各種半導体基板やSOI基板上に半導体素子が設けられたものを、基板101として用いてもよい。その場合、基板101上に層間絶縁層を介してトランジスタ100を形成する。このとき、当該層間絶縁層に埋め込まれた接続電極により、トランジスタ100のゲート電極105、一対の電極103の少なくとも一つが、上記半導体素子と電気的に接続する構成とすればよい。半導体素子上に層間絶縁層を介してトランジスタ100を積層して設けることにより、これらを同一平面上に形成した場合に比べて占有面積を縮小することができる。
【0060】
〔ゲート電極〕
ゲート電極105は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた金属、または上述した金属を成分とする合金か、上述した金属を組み合わせた合金等を用いて形成することができる。また、上述の金属または合金の窒化物を用いてもよい。また、上記金属としてマンガンまたはジルコニウムを用いてもよい。また、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコンに代表される半導体、ニッケルシリサイド等のシリサイドを用いてもよい。また、ゲート電極105は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜または窒化タングステン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造等がある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた一または複数の金属を組み合わせた合金膜、もしくはこれらの窒化膜を用いてもよい。
【0061】
〔ゲート絶縁層〕
絶縁層104は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa−Zn系金属酸化物、窒化シリコンなどを用いればよく、積層または単層で設ける。
【0062】
また、絶縁層104として、ハフニウムシリケート(HfSiO
x)、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi
xO
yN
z)、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl
xO
yN
z)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh−k材料を用いてもよい。
【0063】
〔一対の電極〕
一対の電極103は、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンからなる単体金属、またはこれを主成分とする合金を単層構造または積層構造として用いる。または、上述の金属または合金の窒化物を用いてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、チタン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅−マグネシウム−アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜または窒化チタン膜と、そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0064】
〔絶縁層〕
加熱により酸素を脱離する絶縁材料として、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用いることが好ましい。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、加熱により一部の酸素が脱離する。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、昇温脱離ガス分光法(TDS:Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×10
18atoms/cm
3以上、好ましくは3.0×10
20atoms/cm
3以上である酸化物絶縁膜である。なお、上記TDS分析時における基板温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上500℃以下の範囲が好ましい。
【0065】
このような材料として、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを含む材料を用いることが好ましい。なお、本明細書中において、酸化窒化シリコンとは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を指す。
【0066】
このような絶縁膜を絶縁層106や絶縁層107に用いることで、作製工程中の加熱処理などにより半導体層102に酸素を供給し、半導体層102中の酸素欠損を低減することができる。
【0067】
酸素を透過しにくい材料としては、例えば窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウムなどの絶縁材料を用いることができる。また上述の材料は、酸素に加え、水素、水が透過しにくい材料でもある。このような材料を絶縁層107または絶縁層108に用いることで、半導体層102からの酸素の外部への拡散と、外部から半導体層102等への水素、水等の侵入を同時に抑制することができる。
【0068】
なお、絶縁層107として、酸素や水素、水等を透過しにくい材料を用いた場合、絶縁層108を設けない構成としてもよい。また、絶縁層108は、その上層に配線などの構造物を設ける場合において、平坦化層として機能させることができる。
【0069】
また、絶縁層106と基板101との間に、酸素や水素、水等を透過しにくい材料を含む絶縁層を設ける構成としてもよい。このような絶縁層を設けることで、基板101に含まれる不純物が半導体層102等に拡散することを抑制できる。さらに絶縁層106から脱離した酸素が基板101側に拡散することを抑制し、半導体層102に供給しうる酸素の量を増大させることができる。
【0070】
以上が、各構成要素についての説明である。
【0071】
[作製方法例]
以下では、上記構成例で示したトランジスタ100の作製方法の一例について、図面を参照して説明する。
図3及び
図4は、以下に例示する作製方法にかかる一部の工程における断面概略図である。
図3及び
図4では破線を境にして、左側にチャネル長方向の断面概略図を、右側にチャネル幅方向の断面概略図をそれぞれ示している。
【0072】
〔絶縁層の形成〕
まず、基板101上に絶縁層106を形成する(
図3(A))。
【0073】
絶縁層106は、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、蒸着法等で形成することができる。
【0074】
絶縁層106に酸素を過剰に(化学量論的組成を満たす酸素よりも多く)含有させるためには、例えば、酸素雰囲気下にて絶縁層106の成膜を行えばよい。または、成膜後の絶縁層106に酸素を導入して酸素を過剰に含有する領域を形成してもよく、双方の手段を組み合わせてもよい。
【0075】
例えば、成膜後の絶縁層106に酸素(少なくとも酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオンのいずれかを含む)を導入して酸素を過剰に含有する領域を形成する。酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、プラズマ処理などを用いることができる。
【0076】
酸素導入処理には、酸素を含むガスを用いることができる。酸素を含むガスとしては、酸素、一酸化二窒素、二酸化窒素、二酸化炭素、一酸化炭素などを用いることができる。また、酸素導入処理において、酸素を含むガスに希ガスを含ませてもよい。
【0077】
〔半導体膜の成膜〕
続いて、絶縁層106上に半導体膜112を成膜する(
図3(B))。
【0078】
半導体膜112の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、またはPLD(Pulsed Laser Deposition)法等を用いることができる。または、ゾルゲル法やスプレー法、ミスト法など、液状の材料を用いた薄膜形成技術を用いることもできる。半導体膜112の成膜は、スパッタリング法を用いることが好ましい。スパッタリング法としては、RFスパッタリング法、DCスパッタリング法、ACスパッタリング法等を用いることができる。特に、成膜時に発生するゴミを低減でき、且つ膜厚分布も均一とすることから、DCスパッタリング法を用いることが好ましい。
【0079】
半導体膜112の成膜後、加熱処理を行ってもよい。加熱処理は、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下の温度で、不活性ガス雰囲気、酸化性ガスを10ppm以上含む雰囲気、または減圧状態で行えばよい。また、加熱処理の雰囲気は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上含む雰囲気で行ってもよい。加熱処理により、絶縁層106から半導体膜112に酸素が供給され、半導体膜112に含まれる酸化物半導体中の酸素欠損を低減できる。なお、加熱処理は、半導体膜112を成膜した直後に行ってもよいし、半導体膜112を加工して島状の半導体層102を形成した後に行ってもよい。
【0080】
〔エッチングマスクの形成〕
続いて、半導体膜112上にエッチングのためのマスク(エッチングマスク)を形成する。ここでは、当該マスクとしてハードマスクを用いる場合について説明する。ハードマスクを用いることで、半導体膜112を微細に加工する際の形状のばらつきを低減することができるため好ましい。特に、半導体膜112が厚いときには、ハードマスクを用いることは有効である。なお、ハードマスクを用いる必要のない場合には、有機材料を含むレジストを半導体膜112上に直接形成し、これをエッチングマスクとして用いてもよい。
【0081】
まず、後にハードマスク121となる無機膜または金属膜を半導体膜112上に成膜する。ここで、無機膜または金属膜の材料は、後の半導体膜112のエッチング時に、半導体膜112に対してエッチング速度の選択比を大きくとれる材料を用いることが好ましい。
【0082】
無機膜の材料としては、例えば酸化シリコン、酸化アルミニウムなどの酸化物や、窒化シリコンなどの窒化物などを用いることができる。また、金属膜の材料としては、チタン、モリブデン、タンタル、タングステンから選ばれた金属、または当該金属を成分とする合金、または上述した金属を組み合わせた合金などを用いることができる。また、上述の金属の窒化物を用いてもよい。
【0083】
無機膜を用いる場合、例えばスパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法などを用いて無機膜を形成することができる。また、金属膜を用いる場合、例えばスパッタリング法、蒸着法、CVD法などを用いて金属膜を形成することができる。
【0084】
続いて、無機膜または金属膜上にフォトリソグラフィ法等によりレジストマスクを形成する。続いて、無機膜または金属膜の不要な部分をエッチングにより除去する。その後、レジストマスクを除去することにより、半導体膜112上にハードマスク121を形成することができる(
図3(C))。
【0085】
例えば、ハードマスク121となる膜にタングステン膜を用い、ドライエッチングにより当該タングステン膜をエッチングする。このとき、エッチングに用いるガスとしては、例えばCF
4などのフッ化炭素系ガス、Cl
2などの塩素系ガス、またはこれらと酸素の混合ガスなどを用いることができる。
【0086】
なお、この時点でレジストマスクは除去しなくてもよい。この段階でレジストマスクを除去しておくことで、半導体膜112のエッチング時にレジストマスクに含まれる炭素などの不純物が加工後の半導体層102の表面に付着してしまうことを抑制することができる。
【0087】
レジストマスクの形成に用いる光は、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、またはこれらを混合させた光を用いることができる。そのほか、紫外線やKrFレーザ光、またはArFレーザ光等を用いることもできる。また、液浸露光技術により露光を行ってもよい。また、露光に用いる光として、極端紫外光(EUV:Extreme Ultra−violet)やX線を用いてもよい。また、露光に用いる光に換えて、電子ビームを用いることもできる。極端紫外光、X線または電子ビームを用いると、極めて微細な加工が可能となるため好ましい。なお、電子ビームなどのビームを走査することにより露光を行う場合には、フォトマスクは不要である。
【0088】
また、レジストマスクとなるレジスト膜を形成する前に、被加工膜(ここでは無機膜または金属膜)とレジスト膜との密着性を改善する機能を有する有機樹脂膜を形成してもよい。また当該有機樹脂膜は、例えばスピンコート法などにより、その下層の段差を被覆するように形成することができ、当該有機樹脂膜の上層に設けられるレジストマスクの厚さのばらつきを低減できる。また特に微細な加工を行う場合には、当該有機樹脂膜として、露光に用いる光に対する反射防止膜として機能する材料を用いることが好ましい。このような機能を有する有機樹脂膜としては、例えばBARC(Bottom Anti−Reflection Coating)膜などがある。当該有機樹脂膜は、レジストマスクの除去と同時に除去するか、レジストマスクを除去した後に除去すればよい。
【0089】
〔半導体層の形成〕
続いて、ハードマスク121をマスクとして半導体膜112をエッチングし、島状の半導体層102を形成する(
図3(D))。
【0090】
半導体膜112のエッチングには、ドライエッチング法を用いることが好ましい。このとき、
図3(D)に示すように、ハードマスク121の一部がエッチングされることで、半導体層102の端部をテーパー形状に加工することができる。
【0091】
また、半導体膜112のエッチングの際、絶縁層106がほとんどエッチングされない条件でエッチングを行うことが好ましい。特に半導体膜112が厚い場合には、絶縁層106がエッチングされる深さを制御することが困難であるため、後述する絶縁層106の突出部110の形成と、半導体層102の加工とは、エッチングの条件を異ならせることが好ましい。
【0092】
例えば、半導体膜112として酸化物半導体膜を用い、半導体膜112のエッチングとしてドライエッチングを用いる場合、エッチングに用いるガスとしては、例えばCH
4などの炭化水素系ガスを用いることができる。また、このようなガスに希釈ガスとして希ガスを含ませてもよい。
【0093】
〔突出部の形成〕
続いて、ハードマスク121を除去すると共に、絶縁層106の上面の一部をエッチングして突出部110を形成する(
図3(E))。
【0094】
ハードマスク121のエッチング中に、ハードマスク121及び半導体層102をマスクとして絶縁層106の上面の一部をエッチングする。したがって、半導体層102と重なる領域における絶縁層106の上面の高さよりも、それ以外の領域における上面の高さの方が低くなることにより、半導体層102の下部に突出部110が形成される。さらに半導体層102の下部において、エッチングにより突出部110の側面を半導体層102の側面よりも内側に後退させる。こうすることで突出部110の上面が上方から見て半導体層102よりも内側に位置するように、絶縁層106を加工することができる。
【0095】
ここでのエッチング条件として、半導体層102もわずかにエッチングされる条件を用いることが好ましい。このような条件を用いることで、
図3(E)に示すように、半導体層102の上面や、上端部、下端部などの角部を、丸みを帯びた形状に加工することができる。
【0096】
例えばハードマスク121としてタングステン膜を用い、絶縁層106として酸化窒化シリコン膜を用いて、ドライエッチングによりこれらをエッチングする。ここで、エッチングに用いるガスとしては、例えばCF
4などのフッ化炭素系ガス、Cl
2などの塩素系ガス、またはこれらと酸素の混合ガスなどを用いることができる。
【0097】
〔一対の電極の形成〕
続いて、絶縁層106、半導体層102上に、導電膜を成膜する。その後フォトリソグラフィ法等を用いて導電膜上にレジストマスクを形成し、導電膜の不要な部分をエッチングにより除去する。その後レジストマスクを除去することにより、一対の電極103を形成することができる(
図4(A))。
【0098】
導電膜は、例えばスパッタリング法、蒸着法、CVD法などにより成膜することができる。
【0099】
ここで、導電膜を成膜する際、半導体層102の側面、及び絶縁層106の突出部110の側面を、確実に導電膜が被覆するような条件で、導電膜を成膜することが好ましい。
【0100】
また
図4(A)に示すように、導電膜のエッチングの際に、一対の電極103に覆われていない領域では、絶縁層106の上面の一部も同時にエッチングされることがある。その場合、チャネル幅方向の断面における突出部110の高さはさらに高くなる。したがって、上述のハードマスク121のエッチング時と、一対の電極103の形成時の2度にわたって絶縁層106の上面をエッチングすることで、突出部110の高さをより高くすることができ、後に形成されるゲート電極105が、チャネル幅方向における半導体層102の下面よりも下側に位置するように設けることが容易となる。
【0101】
例えば、導電膜としてタングステン膜を用い、ドライエッチングにより一対の電極103を形成する。ここで、エッチングに用いるガスとしては、例えばCF
4などのフッ化炭素系ガス、Cl
2などの塩素系ガス、またはこれらと酸素の混合ガスなどを用いることができる。
【0102】
〔ゲート絶縁層、ゲート電極の形成〕
続いて、半導体層102、一対の電極103、絶縁層106上に絶縁層104を形成する。
【0103】
絶縁層104は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法などを用いて形成することができる。特に、当該絶縁膜をCVD法、好ましくはプラズマCVD法によって成膜すると、被覆性を向上させることができるため好ましい。
【0104】
続いて、絶縁層104上に導電膜を成膜する。その後フォトリソグラフィ法等を用いて導電膜上にレジストマスクを形成し、導電膜の不要な部分をエッチングにより除去する。その後レジストマスクを除去することにより、ゲート電極105を形成することができる(
図4(B))。
【0105】
導電膜は、例えばスパッタリング法、蒸着法、CVD法などにより成膜することができる。
【0106】
例えば、導電膜としてタングステン膜を用い、ドライエッチングによりゲート電極105を形成する。ここで、エッチングに用いるガスとしては、例えばCF
4などのフッ化炭素系ガス、Cl
2などの塩素系ガス、またはこれらと酸素の混合ガスなどを用いることができる。また、導電膜として窒化タンタル膜を用いる場合には、BCl
3やCl
2などの塩素系ガスなどのガスを用いることができる。
【0107】
ここで、チャネル幅方向の断面において、半導体層102の下端部近傍のくぼみを埋めるように、被覆性の高い条件でゲート電極105となる導電膜を成膜することが好ましい。
【0108】
〔絶縁層の形成〕
続いて、絶縁層104及びゲート電極105上に絶縁層107を形成する。その後、絶縁層107上に絶縁層108を形成する。
【0109】
絶縁層107及び絶縁層108は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法などを用いて形成することができる。特に、絶縁層107をCVD法、好ましくはプラズマCVD法によって成膜すると、被覆性を良好なものとすることができるため好ましい。
【0110】
以上の工程により、トランジスタ100を作製することができる。
【0111】
〔加熱処理〕
絶縁層108の形成後、加熱処理を行ってもよい。加熱処理により、絶縁層106(及び絶縁層107)から半導体層102に対して酸素を供給し、半導体層102中の酸素欠損を低減することができる。またこのとき、酸素を透過しにくい絶縁層107(または絶縁層108)により、絶縁層106(及び絶縁層107)や半導体層102からの酸素の外部への放出が抑制される。したがって、半導体層102中の酸素欠損の形成が抑制されると共に、絶縁層106(及び絶縁層107)から放出され、半導体層102に供給しうる酸素の量を増大させることができ、半導体層102中の酸素欠損を効果的に低減することができる。
【0112】
以上がトランジスタ100の作製工程例についての説明である。
【0113】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態または実施例と適宜組み合わせて実施することができる。
【0114】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記で例示したトランジスタとは構成の一部が異なるトランジスタの構成例について説明する。なお、上記と重複する部分については説明を省略し、相違点についてのみ詳細に説明する。また、位置や形状が異なる構成要素であっても、その機能が同一である場合には、同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0115】
本発明の一態様の半導体装置は、酸化物半導体層と、該酸化物半導体層と重なる絶縁層との間に、酸化物半導体層を構成する金属元素のうち、少なくとも一の金属元素を構成元素として含む酸化物層を有することが好ましい。これにより、酸化物半導体層と、該酸化物半導体層と重なる絶縁層との界面にトラップ準位が形成されることを抑制することができる。
【0116】
すなわち、本発明の一態様は、酸化物半導体層の少なくともチャネル形成領域における上面または下面のうち少なくとも一が、酸化物半導体層の界面準位形成防止のためのバリア膜として機能する酸化物層に接する構成を有していることが好ましい。このような構成とすることにより、酸化物半導体層中及び界面においてキャリアの生成要因となる酸素欠損の生成および不純物の混入を抑制することが可能となるため、酸化物半導体層を高純度真性化することができる。高純度真性化とは、酸化物半導体層を真性または実質的に真性にすることをいう。よって、当該酸化物半導体層を含むトランジスタの電気特性の変動を抑制し、信頼性の高い半導体装置を提供することが可能となる。
【0117】
なお、本明細書等において実質的に真性という場合、酸化物半導体層のキャリア密度は、1×10
17/cm
3未満、1×10
15/cm
3未満、または1×10
13/cm
3未満である。酸化物半導体層を高純度真性化することで、トランジスタに安定した電気特性を付与することができる。
【0118】
より具体的には、例えば以下の構成とすることができる。
【0119】
[構成例1]
図5(A)、(B)に、以下で例示するトランジスタ150の断面概略図を示す。なお、上面概略図については
図1(A)を援用できる。
図5に示すトランジスタ150は、主に第1の酸化物層151及び第2の酸化物層152を有している点で、実施の形態1で例示したトランジスタ100と相違している。
【0120】
第1の酸化物層151は、絶縁層106と半導体層102の間に設けられている。
【0121】
第2の酸化物層152は、半導体層102と絶縁層104の間に設けられている。より具体的には、第2の酸化物層152は、その上面が一対の電極103の下面、及び絶縁層104の下面に接して設けられている。
【0122】
絶縁層106の突出部110の上面は、上方から見て第1の酸化物層151、半導体層102、及び第2の酸化物層152のうち、少なくともいずれかの層よりも内側に位置するように設けられている。言い換えると、上方から見たときに第1の酸化物層151、半導体層102、及び第2の酸化物層152のうちいずれかの層の輪郭よりも、絶縁層106の突出部110の上面の輪郭が内側に位置するように設けられている。
【0123】
好ましくは、突出部110の上面は、上方から見て半導体層102よりも内側に位置するように設けられる。言い換えると、上方から見たときに半導体層102の輪郭よりも、突出部110の上面の輪郭が内側に位置するように設けられることが好ましい。
【0124】
このような構成とすることで、ゲート電極105によって半導体層102の上面及び側面だけでなく、斜め下方からも電界を掛けることができる。その結果、トランジスタ150の電界効果移動度を向上させることができる。
【0125】
第1の酸化物層151及び第2の酸化物層152は、それぞれ半導体層102と同一の金属元素を一種以上含む酸化物を含む。
【0126】
なお、半導体層102と第1の酸化物層151の境界、または半導体層102と第2の酸化物層152の境界は不明瞭である場合がある。
【0127】
例えば、第1の酸化物層151及び第2の酸化物層152は、In若しくはGaを含み、代表的には、In−Ga系酸化物、In−Zn系酸化物、酸化ガリウム、またはIn−M−Zn系酸化物(MはAl、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHf)であり、且つ半導体層102よりも伝導帯の下端のエネルギーが真空準位に近い材料を用いる。代表的には、第1の酸化物層151または第2の酸化物層152の伝導帯の下端のエネルギーと、半導体層102の伝導帯の下端のエネルギーとの差が、0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上、または0.15eV以上、且つ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、または0.4eV以下とすることが好ましい。
【0128】
半導体層102を挟むように設けられる第1の酸化物層151及び第2の酸化物層152に、半導体層102に比べてスタビライザとして機能するGaの含有量の多い酸化物を用いることにより、半導体層102からの酸素の放出を抑制することができる。
【0129】
半導体層102として、例えばIn:Ga:Zn=1:1:1または3:1:2の原子数比のIn−Ga−Zn系酸化物を用いた場合、第1の酸化物層151または第2の酸化物層152として、例えばIn:Ga:Zn=1:3:2、1:3:4、1:3:6、1:6:4、1:6:8、1:6:10、または1:9:6などの原子数比のIn−Ga−Zn系酸化物を用いることができる。なお、半導体層102、第1の酸化物層151および第2の酸化物層152の原子数比はそれぞれ、誤差として上記の原子数比のプラスマイナス20%の変動を含む。また、第1の酸化物層151と第2の酸化物層152は、組成の同じ材料を用いてもよいし、異なる組成の材料を用いてもよい。
【0130】
また、半導体層102としてIn−M−Zn系酸化物を用いた場合、半導体層102となる半導体膜を成膜するために用いるターゲットは、該ターゲットが含有する金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x
1:y
1:z
1としたときに、x
1/y
1の値が1/3以上6以下、好ましくは1以上6以下であり、z
1/y
1が1/3以上6以下、好ましくは1以上6以下の原子数比の酸化物を用いることが好ましい。なお、z
1/y
1を6以下とすることで、後述するCAAC−OS膜が形成されやすくなる。ターゲットの金属元素の原子数比の代表例としては、In:M:Zn=1:1:1、3:1:2などがある。
【0131】
また、第1の酸化物層151、第2の酸化物層152としてIn−M−Zn系酸化物を用いた場合、第1の酸化物層151、第2の酸化物層152となる酸化物膜を成膜するために用いるターゲットは、該ターゲットが含有する金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x
2:y
2:z
2としたときに、x
2/y
2<x
1/y
1であり、z
2/y
2の値が1/3以上6以下、好ましくは1以上6以下の原子数比の酸化物を用いることが好ましい。なお、z
2/y
2を6以下とすることで、後述するCAAC−OS膜が形成されやすくなる。ターゲットの金属元素の原子数比の代表例としては、In:M:Zn=1:3:4、1:3:6、1:3:8などがある。
【0132】
また、第1の酸化物層151および第2の酸化物層152に、半導体層102に比べて伝導帯の下端のエネルギーが真空準位に近い材料を用いることにより、半導体層102に主としてチャネルが形成され、半導体層102が主な電流経路となる。このように、チャネルが形成される半導体層102を、同じ金属元素を含む第1の酸化物層151及び第2の酸化物層152で挟持することにより、これらの界面準位の生成が抑制され、トランジスタの電気特性における信頼性が向上する。
【0133】
なお、これに限られず、必要とする各層の半導体特性及びトランジスタの電気特性(電界効果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために半導体層102、第1の酸化物層151、第2の酸化物層152のキャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0134】
ここで、半導体層102の厚さは、少なくとも第1の酸化物層151よりも厚く形成することが好ましい。半導体層102が厚いほど、トランジスタのオン電流を高めることができる。また、第1の酸化物層151は、半導体層102の界面準位の生成を抑制する効果が失われない程度の厚さであればよい。例えば、半導体層102の厚さは、第1の酸化物層151の厚さに対して1倍よりも大きく、好ましくは2倍以上とすればよい。なお、トランジスタのオン電流を高める必要のない場合にはその限りではなく、第1の酸化物層151の厚さを半導体層102の厚さ以上としてもよい。
【0135】
また、第2の酸化物層152も第1の酸化物層151と同様に、半導体層102の界面準位の生成を抑制する効果が失われない程度の厚さであればよい。例えば、第1の酸化物層151と同等またはそれ以下の厚さとすればよい。第2の酸化物層152が厚いと、ゲート電極105による電界が半導体層102に届きにくくなる恐れがあるため、第2の酸化物層152は薄く形成することが好ましい。例えば、半導体層102の厚さよりも薄くすればよい。なおこれに限られず、第2の酸化物層152の厚さは絶縁層104の耐圧等を考慮して、トランジスタ150を駆動させる電圧に応じて適宜設定すればよい。
【0136】
ここで、例えば半導体層102が、構成元素の異なる絶縁層(例えば酸化シリコン膜を含む絶縁層など)と接する場合、これらの界面に界面準位が形成され、該界面準位はチャネルを形成することがある。このような場合、しきい値電圧の異なる第2のトランジスタが出現し、トランジスタの見かけ上のしきい値電圧が変動することがある。しかしながら、トランジスタ150においては、半導体層102を構成する金属元素を一種以上含んで第1の酸化物層151を有しているため、第1の酸化物層151を設けることにより、トランジスタのしきい値電圧などの電気特性のばらつきや変動を低減することができる。
【0137】
また、絶縁層104と半導体層102との界面にチャネルが形成される場合、該界面で界面散乱が起こり、トランジスタの電界効果移動度が低下する。しかしながら、トランジスタ150においては、半導体層102を構成する金属元素を一種以上含んで第2の酸化物層152を有しているため、半導体層102と第2の酸化物層152との界面ではキャリアの散乱が起こりにくく、トランジスタの電界効果移動度を高くすることができる。
【0138】
また、半導体層102、第1の酸化物層151及び第2の酸化物層152は各々の組成が近似することにより、酸素が相互に拡散しやすく、これらの境界に混合層とも呼ぶべき層が形成されうる。この混合層の存在により、伝導帯下端のエネルギーが2層の間で障壁がなく連続的に接合される状態(連続接合ともいう)が形成される。例えば、各層の界面にトラップ中心や再結合中心のような欠陥準位を形成するような不純物が混在していると、エネルギーバンドの連続性が失われ、界面でキャリアがトラップあるいは再結合により消滅してしまう場合がある。そのためこのような連続接合を形成することにより、各層の界面の欠陥準位が生成されることが抑制され、トランジスタの電気特性や信頼性を向上させることができる。
【0139】
また、トランジスタ150は、半導体層102と絶縁層106の間に第1の酸化物層151を有しているため、第1の酸化物層151の厚さ分だけ、半導体層102が高い位置に設けられている。すなわち、第1の酸化物層151を設けない場合に比べて、ゲート電極105が半導体層102に対してさらに下方に位置する構成となっている。したがって、半導体層102の下端部、さらには下面側にまで、ゲート電極105の電界を掛けることが容易となる。そのため、トランジスタの電界効果移動度やオン電流をより高めることが可能となる。
【0140】
なお、第1の酸化物層151が厚い場合や、第1の酸化物層151、半導体層102及び第2の酸化物層152の積層体の側面のテーパー角が大きい場合では、上面から見たときに半導体層102が突出部110よりも内側に位置する場合もある。このような場合であっても、少なくともゲート電極105の下面が第1の酸化物層151の下面よりも下側に位置するように設けられ、且つ、上面から見たときに少なくとも突出部110の上面が第1の酸化物層151よりも内側に位置する構成であればよい。このような構成とすることで、ゲート電極105からの電界が半導体層102の下端部、さらには下面側にまで掛るため、トランジスタの電界効果移動度やオン電流を高めることができる。
【0141】
[作製方法例1]
トランジスタ150は、実施の形態1で例示したトランジスタ100の作製方法例の一部を異ならせることにより作製できる。
【0142】
具体的には、半導体膜112の成膜工程に換えて、第1の酸化物層151となる第1の酸化物膜、半導体膜112、及び第2の酸化物層152となる第2の酸化物膜を順に成膜する。その後、第1の酸化物膜、半導体膜112、及び第2の酸化物膜をハードマスク121により島状に加工することにより、第1の酸化物層151、半導体層102、及び第2の酸化物層152を形成することができる。
【0143】
第1の酸化物膜、及び第2の酸化物膜は、上記半導体膜112の成膜方法と同様の方法を用いて成膜することができる。
【0144】
特に、第1の酸化物膜、半導体膜、及び第2の酸化物膜の成膜は、大気に暴露することなく連続して行うことが好ましい。これらを連続して成膜することにより、これらの界面準位の生成を抑制することができる。
【0145】
上記以外の工程については、上記作製方法例を援用できる。このような方法により、
図5に示すトランジスタ150を作製することができる。
【0146】
以上が構成例1についての説明である。
【0147】
[構成例2]
図6(A)、(B)に、以下で例示するトランジスタ160の断面概略図を示す。なお、上面概略図については、
図1(A)を援用できる。
図6に示すトランジスタ160は、主に絶縁層104及び第2の酸化物層152の形状が異なる点で、上記トランジスタ150と相違している。
【0148】
トランジスタ160において、第2の酸化物層152は、その下面が一対の電極103のそれぞれの上面に接して設けられている。さらに、一対の電極103が設けられていない領域において、半導体層102の上面及び側面、並びに第1の酸化物層151の側面に接して設けられている。
【0149】
突出部110の上面は、少なくとも第2の酸化物層152の輪郭よりも内側に位置するように設けられていることが好ましい。より好ましくは、突出部110の上面が第1の酸化物層151の輪郭よりも内側、または半導体層102の輪郭よりも内側に位置するように設けられていることが好ましい。
【0150】
このような構成とすることで、ゲート電極105によって半導体層102の上面及び側面だけでなく、斜め下方からも電界を掛けることができる。その結果、トランジスタ160の電界効果移動度を向上させることができる。
【0151】
図6に示す構成では、第2の酸化物層152及び絶縁層104の上面形状が、ゲート電極105の上面形状と概略一致するように、同一のフォトマスクを用いて加工されている。
【0152】
また、
図6(B)に示すように、トランジスタ160のチャネル形成領域では、半導体層102の上面だけでなく、側面も第2の酸化物層152と接して設けられている。すなわち、半導体層102のチャネル形成領域が第1の酸化物層151と第2の酸化物層152とで囲われた構成となっている。したがって、半導体層102の側面も絶縁層104と接しないため、これらの境界に生じうる界面準位の影響を排除でき、トランジスタの電気特性の変動をより効果的に抑制することができる。
【0153】
また、トランジスタ160は、半導体層102と絶縁層106の間に第1の酸化物層151を有しているため、第1の酸化物層151の厚さ分だけ、半導体層102が高い位置に設けられている。すなわち、第1の酸化物層151を設けない場合に比べて、ゲート電極105が半導体層102に対してさらに下方に位置する構成となっている。したがって、半導体層102の下端部、さらには下面側にまで、ゲート電極105の電界を掛けることが容易となる。そのため、トランジスタの電界効果移動度やオン電流をより高めることが可能となる。
【0154】
なお、第1の酸化物層151が厚い場合、第2の酸化物層152が厚い場合、または第1の酸化物層151及び半導体層102の積層体の側面のテーパー角が大きい場合などでは、上面から見たときに半導体層102が突出部110よりも内側に位置する場合もある。このような場合であっても、少なくともゲート電極105の下面が第1の酸化物層151の下面よりも下側に位置するように設けられ、且つ、上面から見たときに少なくとも突出部110の上面が、当該突出部110の上面よりも高い位置における第2の酸化物層152の幅よりも、内側に位置する構成であればよい。このような構成とすることで、ゲート電極105からの電界が半導体層102の下端部、さらには下面側にまで掛かるため、トランジスタの電界効果移動度やオン電流を高めることができる。
【0155】
[作製方法例2]
トランジスタ160は、実施の形態1で例示したトランジスタ100の作製方法例や、上記作製方法例1の一部を異ならせることにより作製できる。
【0156】
具体的には、半導体層102の形成工程にかかる半導体膜112の成膜工程に換えて、第1の酸化物膜及び半導体膜112を順に成膜する。その後、第1の酸化物膜及び半導体膜112をハードマスク121により島状に加工することにより、第1の酸化物層151及び半導体層102を形成する。その後、上記と同様の方法により一対の電極103を形成する。
【0157】
続いて、絶縁層104およびゲート電極105の形成工程において、絶縁層104の成膜より前に第2の酸化物膜を成膜する。そして、導電膜、絶縁層104及び第2の酸化物膜を同一のフォトマスクを用いて加工することにより、ゲート電極105、絶縁層104および第2の酸化物層152を形成する。
【0158】
以降の工程については、上記作製方法例を援用できる。このような方法により、
図6に示すトランジスタ160を作製することができる。
【0159】
以上が構成例2についての説明である。
【0160】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態または実施例と適宜組み合わせて実施することができる。
【0161】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置の半導体層及び酸化物層に好適に用いることのできる酸化物半導体について説明する。
【0162】
酸化物半導体は、エネルギーギャップが3.0eV以上と大きく、酸化物半導体を適切な条件で加工し、そのキャリア密度を十分に低減して得られた酸化物半導体膜が適用されたトランジスタにおいては、オフ状態でのソースとドレイン間のリーク電流(オフ電流)を、従来のシリコンを用いたトランジスタと比較して極めて低いものとすることができる。
【0163】
酸化物半導体膜をトランジスタに適用する場合、酸化物半導体膜の膜厚は2nm以上40nm以下とすることが好ましい。
【0164】
適用可能な酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザとして、それらに加えてガリウム(Ga)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド(例えば、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd))から選ばれた一種、または複数種が含まれていることが好ましい。
【0165】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、In−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、In−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−Zr−Zn系酸化物、In−Ti−Zn系酸化物、In−Sc−Zn系酸化物、In−Y−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、In−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0166】
ここで、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0167】
また、酸化物半導体として、InMO
3(ZnO)
m(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素、若しくは上記のスタビライザとしての元素を示す。また、酸化物半導体として、In
2SnO
5(ZnO)
n(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0168】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1、In:Ga:Zn=1:3:2、In:Ga:Zn=1:3:4、In:Ga:Zn=1:3:6、In:Ga:Zn=3:1:2あるいはIn:Ga:Zn=2:1:3の原子数比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0169】
酸化物半導体膜に水素が多量に含まれると、酸化物半導体と結合することによって、水素の一部がドナーとなり、キャリアである電子を生じてしまう。これにより、トランジスタのしきい値電圧がマイナス方向にシフトしてしまう。そのため、酸化物半導体膜の形成後において、脱水化処理(脱水素化処理)を行い酸化物半導体膜から、水素、又は水分を除去して不純物が極力含まれないように高純度化することが好ましい。
【0170】
なお、酸化物半導体膜への脱水化処理(脱水素化処理)によって、酸化物半導体膜から酸素も同時に減少してしまうことがある。よって、酸化物半導体膜への脱水化処理(脱水素化処理)によって増加した酸素欠損を補填するため酸素を酸化物半導体膜に加える処理を行うことが好ましい。本明細書等において、酸化物半導体膜に酸素を供給する場合を、加酸素化処理と記す場合がある、または酸化物半導体膜に含まれる酸素を化学量論的組成よりも多くする場合を過酸素化処理と記す場合がある。
【0171】
このように、酸化物半導体膜は、脱水化処理(脱水素化処理)により、水素または水分が除去され、加酸素化処理により酸素欠損を補填することによって、i型(真性)化またはi型に限りなく近く実質的にi型(真性)である酸化物半導体膜とすることができる。なお、実質的に真性とは、酸化物半導体膜中にドナーに由来するキャリアが極めて少なく(ゼロに近く)、キャリア密度が1×10
17/cm
3以下、1×10
16/cm
3以下、1×10
15/cm
3以下、1×10
14/cm
3以下、1×10
13/cm
3以下であることをいう。
【0172】
またこのように、i型又は実質的にi型である酸化物半導体膜を備えるトランジスタは、極めて優れたオフ電流特性を実現できる。例えば、酸化物半導体膜を用いたトランジスタがオフ状態のときのドレイン電流を、室温(25℃程度)にて1×10
−18A以下、好ましくは1×10
−21A以下、さらに好ましくは1×10
−24A以下、または85℃にて1×10
−15A以下、好ましくは1×10
−18A以下、さらに好ましくは1×10
−21A以下とすることができる。なお、トランジスタがオフ状態とは、nチャネル型のトランジスタの場合、ゲート電圧がしきい値電圧よりも十分小さい状態をいう。具体的には、ゲート電圧がしきい値電圧よりも1V以上、2V以上または3V以上小さければ、トランジスタはオフ状態となる。
【0173】
以下では、酸化物半導体膜の構造について説明する。
【0174】
なお本明細書において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0175】
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶として表す。
【0176】
酸化物半導体膜は、非単結晶酸化物半導体膜と単結晶酸化物半導体膜とに大別される。非単結晶酸化物半導体膜とは、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜、多結晶酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、非晶質酸化物半導体膜などをいう。
【0177】
まずは、CAAC−OS膜について説明する。
【0178】
CAAC−OS膜は、c軸配向した複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つである。
【0179】
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によってCAAC−OS膜の明視野像および回折パターンの複合解析像(高分解能TEM像ともいう。)を観察することで複数の結晶部を確認することができる。一方、高分解能TEM像によっても明確な結晶部同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC−OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0180】
試料面と概略平行な方向からCAAC−OS膜の断面の高分解能TEM像を観察すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、CAAC−OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した形状であり、CAAC−OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
【0181】
一方、試料面と概略垂直な方向から、CAAC−OS膜の平面の高分解能TEM像を観察すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
【0182】
CAAC−OS膜に対し、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO
4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO
4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0183】
なお、InGaZnO
4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS膜中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC−OS膜は、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0184】
CAAC−OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリコンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不純物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
【0185】
また、CAAC−OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化物半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによってキャリア発生源となることがある。
【0186】
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性または実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0187】
また、CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。
【0188】
次に、微結晶酸化物半導体膜について説明する。
【0189】
微結晶酸化物半導体膜は、高分解能TEM像において結晶部を確認することのできる領域と明確な結晶部を確認することのできない領域と、を有する。微結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、1nm以上100nm以下、または1nm以上10nm以下の大きさであることが多い。特に、1nm以上10nm以下、または1nm以上3nm以下の微結晶であるナノ結晶(nc:nanocrystal)を有する酸化物半導体膜を、nc−OS(nanocrystalline Oxide Semiconductor)膜と呼ぶ。また、nc−OS膜は、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。
【0190】
nc−OS膜は、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。従って、nc−OS膜は、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体膜と区別が付かない場合がある。例えば、nc−OS膜に対し、結晶部よりも大きい径のX線を用いるXRD装置を用いて構造解析を行うと、out−of−plane法による解析では、結晶面を示すピークが検出されない。また、nc−OS膜に対し、結晶部よりも大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子線回折(制限視野電子線回折ともいう。)を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc−OS膜に対し、結晶部の大きさと近いか結晶部より小さいプローブ径の電子線を用いるナノビーム電子線回折を行うと、スポットが観測される。また、nc−OS膜に対しナノビーム電子線回折を行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。また、nc−OS膜に対しナノビーム電子線回折を行うと、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合がある。
【0191】
nc−OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも規則性の高い酸化物半導体膜である。そのため、nc−OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、nc−OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc−OS膜は、CAAC−OS膜と比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0192】
なお、酸化物半導体膜は、例えば、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、CAAC−OS膜のうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
【0193】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態または実施例と適宜組み合わせて実施することができる。
【0194】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様である酸化物半導体を備えるトランジスタを使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置(記憶装置)の一例を、図面を用いて説明する。
【0196】
図7に示す半導体装置は、第1の半導体材料を用いたトランジスタ3200と第2の半導体材料を用いたトランジスタ3300、および容量素子3400を有している。なお、トランジスタ3300としては、先の実施の形態で説明したトランジスタを用いることができる。
【0197】
ここで、第1の半導体材料と第2の半導体材料は異なる禁制帯幅を持つ材料とすることが望ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料(シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等など)とし、第2の半導体材料を先の実施の形態で説明した酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以外の材料として単結晶シリコンなどを用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ電流が低い。
【0198】
トランジスタ3300は、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成されるトランジスタである。トランジスタ3300は、オフ電流が小さいため、これを用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、或いは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ない半導体記憶装置とすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
【0199】
図7において、第1の配線3001はトランジスタ3200のソース電極と電気的に接続され、第2の配線3002はトランジスタ3200のドレイン電極と電気的に接続されている。また、第3の配線3003はトランジスタ3300のソース電極またはドレイン電極の一方と電気的に接続され、第4の配線3004はトランジスタ3300のゲート電極と電気的に接続されている。そして、トランジスタ3200のゲート電極、およびトランジスタ3300のソース電極またはドレイン電極の他方は、容量素子3400の電極の一方と電気的に接続され、第5の配線3005は容量素子3400の電極の他方と電気的に接続されている。
【0200】
図7に示す半導体装置では、トランジスタ3200のゲート電極の電位が保持可能という特徴を活かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0201】
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線3004の電位を、トランジスタ3300がオン状態となる電位にして、トランジスタ3300をオン状態とする。これにより、第3の配線3003の電位が、トランジスタ3200のゲート電極、および容量素子3400に与えられる。すなわち、トランジスタ3200のゲート電極には、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電荷、Highレベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線3004の電位を、トランジスタ3300がオフ状態となる電位にして、トランジスタ3300をオフ状態とすることにより、トランジスタ3200のゲート電極に与えられた電荷が保持される(保持)。
【0202】
トランジスタ3300のオフ電流は極めて小さいため、トランジスタ3200のゲート電極の電荷は長時間にわたって保持される。
【0203】
次に情報の読み出しについて説明する。第1の配線3001に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線3005に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ3200のゲート電極に保持された電荷量に応じて、第2の配線3002は異なる電位をとる。一般に、トランジスタ3200をnチャネル型とすると、トランジスタ3200のゲート電極にHighレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Hは、トランジスタ3200のゲート電極にLowレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値電圧とは、トランジスタ3200を「オン状態」とするために必要な第5の配線3005の電位をいうものとする。したがって、第5の配線3005の電位をVth_HとVth_Lの間の電位V0とすることにより、トランジスタ3200のゲート電極に与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線3005の電位がV0(>Vth_H)となれば、トランジスタ3200は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線3005の電位がV0(<Vth_L)となっても、トランジスタ3200は「オフ状態」のままである。このため、第2の配線3002の電位を判別することで、保持されている情報を読み出すことができる。
【0204】
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合、所望のメモリセルの情報のみを読み出せることが必要になる。このように情報を読み出さない場合には、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ3200が「オフ状態」となるような電位、つまり、Vth_Hより小さい電位を第5の配線3005に与えればよい。または、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ3200が「オン状態」となるような電位、つまり、Vth_Lより大きい電位を第5の配線3005に与えればよい。
【0205】
本実施の形態に示す半導体装置では、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたオフ電流の極めて小さいトランジスタを適用することで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが望ましい)であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0206】
また、本実施の形態に示す半導体装置では、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲートへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行う必要がないため、ゲート絶縁層の劣化といった問題が全く生じない。すなわち、開示する発明に係る半導体装置では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。
【0207】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態または実施例と適宜組み合わせて実施することができる。
【0208】
(実施の形態5)
本実施の形態では、先の実施の形態で説明したトランジスタ、または先の実施の形態で説明した記憶装置を含むCPUについて説明する。
【0209】
図8は、上記実施の形態で説明したトランジスタを少なくとも一部に用いたCPUの一例の構成を示すブロック図である。
【0210】
図8に示すCPUは、基板1190上に、ALU1191(ALU:Arithmetic logic unit、演算回路)、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、タイミングコントローラ1195、レジスタ1196、レジスタコントローラ1197、バスインターフェース1198(Bus I/F)、書き換え可能なROM1199、およびROMインターフェース1189(ROM I/F)を有している。基板1190は、半導体基板、SOI基板、ガラス基板などを用いる。ROM1199およびROMインターフェース1189は、別チップに設けてもよい。もちろん、
図8に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。例えば、
図8に示すCPUまたは演算回路を含む構成を一つのコアとし、当該コアを複数含み、それぞれのコアが並列で動作するような構成としてもよい。また、CPUが内部演算回路やデータバスで扱えるビット数は、例えば8ビット、16ビット、32ビット、64ビットなどとすることができる。
【0211】
バスインターフェース1198を介してCPUに入力された命令は、インストラクションデコーダ1193に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195に入力される。
【0212】
ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行なう。具体的にALUコントローラ1192は、ALU1191の動作を制御するための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ1194は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ1197は、レジスタ1196のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ1196の読み出しや書き込みを行なう。
【0213】
また、タイミングコントローラ1195は、ALU1191、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、およびレジスタコントローラ1197の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミングコントローラ1195は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、内部クロック信号CLK2を上記各種回路に供給する。
【0214】
図8に示すCPUでは、レジスタ1196に、メモリセルが設けられている。レジスタ1196のメモリセルとして、先の実施の形態に示したトランジスタを用いることができる。
【0215】
図8に示すCPUにおいて、レジスタコントローラ1197は、ALU1191からの指示に従い、レジスタ1196における保持動作の選択を行う。すなわち、レジスタ1196が有するメモリセルにおいて、フリップフロップによるデータの保持を行うか、容量素子によるデータの保持を行うかを、選択する。フリップフロップによるデータの保持が選択されている場合、レジスタ1196内のメモリセルへの、電源電圧の供給が行われる。容量素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換えが行われ、レジスタ1196内のメモリセルへの電源電圧の供給を停止することができる。
【0216】
図9は、レジスタ1196として用いることのできる記憶素子の回路図の一例である。記憶素子700は、電源遮断で記憶データが揮発する回路701と、電源遮断で記憶データが揮発しない回路702と、スイッチ703と、スイッチ704と、論理素子706と、容量素子707と、選択機能を有する回路720と、を有する。回路702は、容量素子708と、トランジスタ709と、トランジスタ710と、を有する。なお、記憶素子700は、必要に応じて、ダイオード、抵抗素子、インダクタなどのその他の素子をさらに有していてもよい。
【0217】
ここで、回路702には、先の実施の形態で説明した記憶装置を用いることができる。記憶素子700への電源電圧の供給が停止した際、回路702のトランジスタ709のゲートには接地電位(0V)、またはトランジスタ709がオフする電位が入力され続ける構成とする。例えば、トランジスタ709のゲートが抵抗等の負荷を介して接地される構成とする。
【0218】
スイッチ703は、一導電型(例えば、nチャネル型)のトランジスタ713を用いて構成され、スイッチ704は、一導電型とは逆の導電型(例えば、pチャネル型)のトランジスタ714を用いて構成した例を示す。ここで、スイッチ703の第1の端子はトランジスタ713のソースとドレインの一方に対応し、スイッチ703の第2の端子はトランジスタ713のソースとドレインの他方に対応し、スイッチ703はトランジスタ713のゲートに入力される制御信号RDによって、第1の端子と第2の端子の間の導通または非導通(つまり、トランジスタ713のオン状態またはオフ状態)が選択される。スイッチ704の第1の端子はトランジスタ714のソースとドレインの一方に対応し、スイッチ704の第2の端子はトランジスタ714のソースとドレインの他方に対応し、スイッチ704はトランジスタ714のゲートに入力される制御信号RDによって、第1の端子と第2の端子の間の導通または非導通(つまり、トランジスタ714のオン状態またはオフ状態)が選択される。
【0219】
トランジスタ709のソースとドレインの一方は、容量素子708の一対の電極のうちの一方、およびトランジスタ710のゲートと電気的に接続される。ここで、接続部分をノードM2とする。トランジスタ710のソースとドレインの一方は、低電位電源を供給することのできる配線(例えばGND線)に電気的に接続され、他方は、スイッチ703の第1の端子(トランジスタ713のソースとドレインの一方)と電気的に接続される。スイッチ703の第2の端子(トランジスタ713のソースとドレインの他方)はスイッチ704の第1の端子(トランジスタ714のソースとドレインの一方)と電気的に接続される。スイッチ704の第2の端子(トランジスタ714のソースとドレインの他方)は電源電位VDDを供給することのできる配線と電気的に接続される。スイッチ703の第2の端子(トランジスタ713のソースとドレインの他方)と、スイッチ704の第1の端子(トランジスタ714のソースとドレインの一方)と、論理素子706の入力端子と、容量素子707の一対の電極のうちの一方と、は電気的に接続される。ここで、接続部分をノードM1とする。容量素子707の一対の電極のうちの他方は、一定の電位が入力される構成とすることができる。例えば、低電源電位(GND等)または高電源電位(VDD等)が入力される構成とすることができる。容量素子707の一対の電極のうちの他方は、低電位電源を供給することのできる配線(例えばGND線)と電気的に接続される。容量素子708の一対の電極のうちの他方は、一定の電位が入力される構成とすることができる。例えば、低電源電位(GND等)または高電源電位(VDD等)が入力される構成とすることができる。容量素子708の一対の電極のうちの他方は、低電位電源を供給することのできる配線(例えばGND線)と電気的に接続される。
【0220】
なお、容量素子707および容量素子708は、トランジスタや配線の寄生容量等を積極的に利用することによって省略することも可能である。
【0221】
トランジスタ709の第1ゲート(第1のゲート電極)には、制御信号WEが入力される。スイッチ703およびスイッチ704は、制御信号WEとは異なる制御信号RDによって第1の端子と第2の端子の間の導通状態または非導通状態を選択され、一方のスイッチの第1の端子と第2の端子の間が導通状態のとき他方のスイッチの第1の端子と第2の端子の間は非導通状態となる。
【0222】
トランジスタ709のソースとドレインの他方には、回路701に保持されたデータに対応する信号が入力される。
図9では、回路701から出力された信号が、トランジスタ709のソースとドレインの他方に入力される例を示した。スイッチ703の第2の端子(トランジスタ713のソースとドレインの他方)から出力される信号は、論理素子706によってその論理値が反転された反転信号となり、回路720を介して回路701に入力される。
【0223】
なお、
図9では、スイッチ703の第2の端子(トランジスタ713のソースとドレインの他方)から出力される信号は、論理素子706および回路720を介して回路701に入力する例を示したがこれに限定されない。スイッチ703の第2の端子(トランジスタ713のソースとドレインの他方)から出力される信号が、論理値を反転させられることなく、回路701に入力されてもよい。例えば、回路701内に、入力端子から入力された信号の論理値が反転した信号が保持されるノードが存在する場合に、スイッチ703の第2の端子(トランジスタ713のソースとドレインの他方)から出力される信号を当該ノードに入力することができる。
【0224】
図9におけるトランジスタ709は、上記実施の形態で説明したトランジスタを用いることができる。また、第2ゲート(第2のゲート電極)を有する構成とすることが好ましい。第1ゲートには制御信号WEを入力し、第2ゲートには制御信号WE2を入力することができる。制御信号WE2は、一定の電位の信号とすればよい。当該一定の電位には、例えば、接地電位GNDやトランジスタ709のソース電位よりも小さい電位などが選ばれる。制御信号WE2は、トランジスタ709のしきい値電圧を制御するための電位信号であり、トランジスタ709のカットオフ電流(Icut)をより低減することができる。なお、トランジスタ709としては、第2ゲートを有さないトランジスタを用いることもできる。
【0225】
また、
図9において、記憶素子700に用いられるトランジスタのうち、トランジスタ709以外のトランジスタは、酸化物半導体以外の半導体でなる層または基板1190にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。例えば、シリコン層またはシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。また、記憶素子700に用いられるトランジスタ全てを、チャネルが酸化物半導体層で形成されるトランジスタとすることもできる。または、記憶素子700は、トランジスタ709以外にも、チャネルが酸化物半導体層で形成されるトランジスタを含んでいてもよく、残りのトランジスタは酸化物半導体以外の半導体でなる層または基板1190にチャネルが形成されるトランジスタとすることもできる。
【0226】
図9における回路701には、例えばフリップフロップ回路を用いることができる。また、論理素子706としては、例えばインバータやクロックドインバータ等を用いることができる。
【0227】
本発明の一態様における半導体装置では、記憶素子700に電源電圧が供給されない間は、回路701に記憶されていたデータを、回路702に設けられた容量素子708によって保持することができる。
【0228】
また、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタはオフ電流が極めて小さい。例えば、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタのオフ電流は、結晶性を有するシリコンにチャネルが形成されるトランジスタのオフ電流に比べて著しく低い。そのため、当該トランジスタをトランジスタ709として用いることによって、記憶素子700に電源電圧が供給されない間も容量素子708に保持された信号は長期間にわたり保たれる。こうして、記憶素子700は電源電圧の供給が停止した間も記憶内容(データ)を保持することが可能である。
【0229】
また、スイッチ703およびスイッチ704を設けることによって、プリチャージ動作を行うことを特徴とする記憶素子であるため、電源電圧供給再開後に、回路701が元のデータを保持しなおすまでの時間を短くすることができる。
【0230】
また、回路702において、容量素子708によって保持された信号はトランジスタ710のゲートに入力される。そのため、記憶素子700への電源電圧の供給が再開された後、容量素子708によって保持された信号を、トランジスタ710の状態(オン状態、またはオフ状態)に変換して、回路702から読み出すことができる。それ故、容量素子708に保持された信号に対応する電位が多少変動していても、元の信号を正確に読み出すことが可能である。
【0231】
このような記憶素子700を、プロセッサが有するレジスタやキャッシュメモリなどの記憶装置に用いることで、電源電圧の供給停止による記憶装置内のデータの消失を防ぐことができる。また、電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。よって、プロセッサ全体、もしくはプロセッサを構成する一つ、または複数の論理回路において、短い時間でも電源停止を行うことができるため、消費電力を抑えることができる。
【0232】
本実施の形態では、記憶素子700をCPUに用いる例として説明したが、記憶素子700は、DSP(Digital Signal Processor)、カスタムLSI、PLD(Programmable Logic Device)等のLSI、RF−ID(Radio Frequency Identification)にも応用可能である。
【0233】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態または実施例と適宜組み合わせて実施することができる。
【0234】
(実施の形態6)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明したトランジスタ、記憶装置、またはCPU等(DSP、カスタムLSI、PLD、RF−IDを含む)などの半導体装置を用いることのできる電子機器の例について説明する。
【0235】
上記実施の形態で例示したトランジスタ、記憶装置、またはCPU等は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、テレビ、モニタ等の表示装置、照明装置、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、画像再生装置、ポータブルオーディオプレーヤ、ラジオ、テープレコーダ、ステレオ、電話、コードレス電話、携帯電話、自動車電話、トランシーバ、無線機、ゲーム機、電卓、携帯情報端末、電子手帳、電子書籍、電子翻訳機、音声入力機器、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、電気シェーバ、ICチップ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、電気掃除機、エアコンディショナーなどの空調設備、食器洗い機、食器乾燥機、衣類乾燥機、布団乾燥機、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、放射線測定器、透析装置、X線診断装置等の医療機器、などが挙げられる。また、煙感知器、熱感知器、ガス警報装置、防犯警報装置などの警報装置も挙げられる。さらに、誘導灯、信号機、ベルトコンベア、エレベータ、エスカレータ、産業用ロボット、電力貯蔵システム等の産業機器も挙げられる。また、燃料を用いたエンジンや、非水系二次電池からの電力を用いて電動機により推進する移動体なども、電子機器の範疇に含まれるものとする。上記移動体として、例えば、電気自動車(EV)、内燃機関と電動機を併せ持ったハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、これらのタイヤ車輪を無限軌道に変えた装軌車両、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、ゴルフ用カート、小型または大型船舶、潜水艦、ヘリコプター、航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機や惑星探査機、宇宙船が挙げられる。これらの電子機器の一部の具体例を
図10に示す。
【0236】
図10(A)に示すテレビジョン装置8000は、筐体8001に表示部8002が組み込まれており、表示部8002により映像を表示し、スピーカ部8003から音声を出力することが可能である。先の実施の形態で例示したトランジスタを筐体8001に組み込まれた表示部8002を動作するための駆動回路または画素に用いることが可能である。
【0237】
表示部8002は、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)等の半導体表示装置を用いることができる。
【0238】
テレビジョン装置8000は、受信機やモデムなどを備えていてもよい。テレビジョン装置8000は、受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線又は無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)又は双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0239】
また、テレビジョン装置8000は、情報通信を行うためのCPU8004や、メモリを備えていてもよい。CPU8004やメモリに、先の実施の形態に示したトランジスタ、記憶装置、またはCPUを用いることによって省電力化を図ることができる。
【0240】
図10(A)に示す警報装置8100は、住宅用火災警報器であり、煙または熱の検出部8102と、マイクロコンピュータ8101を有している。マイクロコンピュータ8101は、先の実施の形態に示したトランジスタ、記憶装置、またはCPUを含む電子機器の一例である。
【0241】
また、
図10(A)に示す室内機8200および室外機8204を有するエアコンディショナーは、先の実施の形態に示したトランジスタ、記憶装置、またはCPU等を含む電子機器の一例である。具体的に、室内機8200は、筐体8201、送風口8202、CPU8203等を有する。
図10(A)においては、CPU8203が、室内機8200に設けられている場合を例示しているが、CPU8203は室外機8204に設けられていてもよい。または、室内機8200と室外機8204の両方に、CPU8203が設けられていてもよい。先の実施の形態に示したトランジスタをエアコンディショナーのCPUに用いることによって省電力化を図ることができる。
【0242】
また、
図10(A)に示す電気冷凍冷蔵庫8300は、先の実施の形態に示したトランジスタ、記憶装置、またはCPU等を含む電子機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫8300は、筐体8301、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303、CPU8304等を有する。
図10(A)では、CPU8304が、筐体8301の内部に設けられている。先の実施の形態に示したトランジスタを電気冷凍冷蔵庫8300のCPU8304に用いることによって省電力化が図れる。
【0243】
図10(B)、(C)には、電子機器の一例である電気自動車の例を示す。電気自動車9700には、二次電池9701が搭載されている。二次電池9701の電力は、回路9702により出力が調整されて、駆動装置9703に供給される。回路9702は、図示しないROM、RAM、CPU等を有する処理装置9704によって制御される。先の実施の形態に示したトランジスタを電気自動車9700のCPUに用いることによって省電力化が図れる。
【0244】
駆動装置9703は、直流電動機もしくは交流電動機単体、または電動機と内燃機関と、を組み合わせて構成される。処理装置9704は、電気自動車9700の運転者の操作情報(加速、減速、停止など)や走行時の情報(上り坂や下り坂等の情報、駆動輪にかかる負荷情報など)の入力情報に基づき、回路9702に制御信号を出力する。回路9702は、処理装置9704の制御信号により、二次電池9701から供給される電気エネルギーを調整して駆動装置9703の出力を制御する。交流電動機を搭載している場合は、図示していないが、直流を交流に変換するインバータも内蔵される。
【0245】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態または実施例と適宜組み合わせて実施することができる。
【実施例】
【0246】
本実施例では、トランジスタを作製し、その断面観察を行った。ここでは、実施の形態2の構成例2で例示したトランジスタ(
図6)を作製した。
【0247】
[試料の作製]
試料の基板として、シリコンウェハを用いた。まず、基板に対して熱酸化を行い、基板表面上に熱酸化膜を形成した。続いて、熱酸化膜上に厚さ約300nmの酸化窒化シリコン膜をプラズマCVD法により成膜したのち、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて表面を平坦化した。
【0248】
続いて、厚さ約20nmの酸化物半導体膜(OS1)と、これとは組成の異なる厚さ約40nmの酸化物半導体膜(OS2)をスパッタリング法により順に成膜した。
【0249】
続いて、厚さ約10nmのタングステン膜をスパッタリング法により成膜した。その後、タングステン膜上に厚さ約20nmの非感光性の有機樹脂膜と、厚さ約100nmのネガ型のレジスト膜を形成し、レジスト膜に対して電子ビームを走査して露光し、現像処理を行うことでレジスト膜のパターンを形成した。続いて、レジスト膜をマスクとして有機樹脂膜とタングステン膜をドライエッチング法によりエッチングし、酸化物半導体膜(OS2)上にタングステン膜からなる島状のハードマスクを形成した。
【0250】
エッチングは、まず初めに、エッチングガスとしてCF
4(流量100sccm)を用い、ICP電力2000W、バイアス電力50W、圧力0.67Pa、基板温度−10℃の条件で行った。続いて、エッチングガスとしてCF
4(流量60sccm)とO
2(流量40sccm)の混合ガスを用い、ICP電力1000W、バイアス電力25W、圧力2.0Pa、基板温度−10℃の条件で行った。
【0251】
続いて、酸素雰囲気中におけるプラズマ処理(アッシングともいう)により、レジスト膜及び有機樹脂膜を除去した。
【0252】
続いて、酸化物半導体膜(OS1)及び酸化物半導体膜(OS2)のエッチングを行い、島状の酸化物半導体膜(OS1)(第1の酸化物層)及び島状の酸化物半導体膜(OS2)(半導体層)を形成した。エッチングは、エッチングガスとしてCH
4(流量16sccm)及びAr(流量32sccm)の混合ガスを用い、ICP電力600W、バイアス電力100W、圧力1.0Pa、基板温度70℃の条件で行った。
【0253】
その後、ハードマスクのエッチング及び絶縁層の突出部の形成を行った。エッチングは、エッチングガスとしてCF
4(流量60sccm)とO
2(流量40sccm)の混合ガスを用い、ICP電力1000W、バイアス電力25W、圧力2.0Pa、基板温度−10℃の条件で行った。
【0254】
続いて、厚さ約10nmのタングステン膜をスパッタリング法により成膜し、その上方に厚さ約20nmの非感光性の有機樹脂膜を形成した。その後上記と同様の方法により当該タングステン膜上にレジスト膜のパターンを形成した。
【0255】
続いて、レジスト膜をマスクとしてタングステン膜と有機樹脂膜をエッチングした。エッチングは、まず初めに、エッチングガスとしてCF
4(流量100sccm)を用い、ICP電力2000W、バイアス電力50W、圧力0.67Pa、基板温度−10℃の条件で行った。続いて、エッチングガスとしてCF
4(流量60sccm)とO
2(流量40sccm)の混合ガスを用い、ICP電力1000W、バイアス電力25W、圧力2.0Pa、基板温度−10℃の条件で行った。
【0256】
その後、アッシングによりレジスト膜及び有機樹脂膜を除去することにより、一対の電極を得た。
【0257】
続いて、厚さ約5nmの酸化物半導体膜(OS3)をスパッタリング法により成膜した。続いて厚さ約10nmの酸化窒化シリコン膜をプラズマCVD法により成膜した。続いて、厚さ約10nmの窒化チタン膜と、厚さ約10nmのタングステン膜をスパッタリング法により連続して成膜した。その後、上記と同様の方法により、当該タングステン膜上にレジスト膜のパターンを形成した。
【0258】
続いて、レジスト膜をマスクとして、タングステン膜と窒化チタン膜をエッチングした。エッチングはまず初めに、エッチングガスとしてCl
2(流量45sccm)とCF
4(流量55sccm)とO
2(流量55sccm)の混合ガスを用い、ICP電力3000W、バイアス電力110W、圧力0.67Pa、基板温度40℃の条件で行った。続いて、エッチングガスとしてCl
2(流量50sccm)とBCl
3(流量150sccm)の混合ガスを用い、ICP電力1000W、バイアス電力50W、圧力0.67Pa、基板温度40℃の条件で行った。
【0259】
続いて、酸化窒化シリコン膜のエッチングを行った。エッチングはエッチングガスとしてCHF
3(流量56sccm)とHe(流量144sccm)の混合ガスを用い、ICP電力25W、バイアス電力425W、圧力7.5Paの条件で行った。
【0260】
その後、酸化物半導体膜(OS3)のエッチングを行った。エッチングはまず初めに、エッチングガスとしてCH
4(流量16sccm)とAr(流量32sccm)の混合ガスを用い、ICP電力600W、バイアス電力100W、圧力3.0Pa、基板温度70℃の条件で行った。続いて、エッチングガスとしてCH
4(流量16sccm)とAr(流量32sccm)の混合ガスを用い、ICP電力600W、バイアス電力100W、圧力1.0Pa、基板温度70℃の条件で行った。
【0261】
その後、アッシングによりレジスト膜及び有機樹脂膜を除去した。この段階で、ゲート電極、ゲート絶縁層、及び酸化物半導体膜(OS3)(第2の酸化物層)を得た。
【0262】
続いて、絶縁層として厚さ約40nmの酸化アルミニウム膜と、厚さ約150nmの酸化窒化シリコン膜を成膜した。
【0263】
以上の工程により、基板上に本発明の一態様のトランジスタが形成された試料を作製した。
【0264】
[断面観察]
作製した試料について、走査透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)による断面観察を行った。
【0265】
図11に、作製したトランジスタのチャネル幅方向の断面観察像を示す。
図11は、位相コントラスト像(透過電子(TE:Transmitted Electron)像ともいう。)である。
【0266】
図11より、酸化物半導体膜(OS1)及び酸化物半導体膜(OS2)の積層体は、その下方に位置する酸化窒化シリコン膜に形成された突出部の上面に接して設けられている。また当該突出部の側面、並びに酸化物半導体膜(OS1)と酸化物半導体膜(OS2)の積層体の上面及び側面を、酸化物半導体膜(OS3)が確実に被覆するように設けられている。さらに、酸化物半導体膜(OS3)の表面に沿って、酸化窒化シリコン膜、窒化チタン膜、及びタングステン膜が順に積層されていることが確認できた。
【0267】
また、
図11より絶縁層の突出部の上面が、酸化物半導体膜(OS1)、酸化物半導体膜(OS2)及び酸化物半導体膜(OS3)の積層体よりも内側に位置していることが確認できた。ここで、
図11に示すように、突出部よりも高い位置において、酸化物半導体膜(OS3)の幅の最大値は約53nmであり、突出部の上面の幅は約43nmであった。
【0268】
以上より、半導体層の上面、側面及び下端部を囲うように、且つ半導体層の下面よりも下側に位置するように、ゲート電極が設けられた、本発明の一態様のトランジスタを極めて微細に作製することができた。