特許第6018616号(P6018616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立産機システムの特許一覧

<>
  • 特許6018616-シート巻取装置及びシート巻取方法 図000002
  • 特許6018616-シート巻取装置及びシート巻取方法 図000003
  • 特許6018616-シート巻取装置及びシート巻取方法 図000004
  • 特許6018616-シート巻取装置及びシート巻取方法 図000005
  • 特許6018616-シート巻取装置及びシート巻取方法 図000006
  • 特許6018616-シート巻取装置及びシート巻取方法 図000007
  • 特許6018616-シート巻取装置及びシート巻取方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018616
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】シート巻取装置及びシート巻取方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/198 20060101AFI20161020BHJP
   B65H 23/185 20060101ALI20161020BHJP
   B65H 23/192 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   B65H23/198
   B65H23/185
   B65H23/192
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-245768(P2014-245768)
(22)【出願日】2014年12月4日
(65)【公開番号】特開2016-108075(P2016-108075A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2015年10月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 祐介
(72)【発明者】
【氏名】弓場 賢治
(72)【発明者】
【氏名】合田 慶継
(72)【発明者】
【氏名】伏見 秀彦
【審査官】 山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−184749(JP,A)
【文献】 特開2012−188221(JP,A)
【文献】 特開2014−051370(JP,A)
【文献】 特開2013−202945(JP,A)
【文献】 特開昭49−051003(JP,A)
【文献】 特開平09−272647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 23/18 − 23/198
B65H 26/00 − 26/08
B65H 19/00 − 19/30
B65H 21/00 − 21/02
B65H 16/00 − 16/10
B65H 18/00 − 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを巻取る巻取軸を押圧し前記シートを前記巻取軸に巻き付ける巻取ローラと、
前記シートを押圧して張架区間を形成する張架区間形成ローラと、
前記張架区間形成ローラと前記巻取ローラ間の前記シートの送り速度差を制御することにより前記張架区間内の前記シートに張力を形成する速度差制御手段と、を備え、
前記速度差制御手段は、前記シートの送り速度差を、前記張架区間の上流にある原反ロールの測定された半径に基づいて、予め記憶された前記原反ロールの半径と前記シートの送り速度差の関係を示すテーブルから抽出したシートの送り速度差に変更することを特徴とするシート巻取装置。
【請求項2】
シートを巻取る巻取軸を押圧し前記シートを前記巻取軸に巻き付ける巻取ローラと、
前記シートを押圧して張架区間を形成する張架区間形成ローラと、
前記張架区間形成ローラと前記巻取ローラ間の前記シートの送り速度差を制御することにより前記張架区間内の前記シートに張力を形成する速度差制御手段と、を備え、
前記速度差制御手段は、前記張架区間の上流にある原反ロールの製造後の経過時間に応じて前記シートの送り速度差を変更することを特徴とするシート巻取装置。
【請求項3】
前記速度差制御手段は、前記シートの送り速度差を、原反ロールの製造後の経過時間に基づいて、予め記憶された前記原反ロールの製造後の経過時間と前記シートの送り速度差の関係を示すテーブルから抽出したシートの送り速度差に変更することを特徴とする請求項に記載のシート巻取装置。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載のシート巻取装置において、
前記原反ロールのシート送出量と前記張架区間形成ローラのシート送入量が同じになるように前記原反ロールと前記張架区間形成ローラを同期運転制御する同期運転制御手段を備えることを特徴とするシート巻取装置。
【請求項5】
シートを巻取る巻取軸を押圧し前記シートを前記巻取軸に巻き付ける巻取ローラと、前記シートを押圧して張架区間を形成する張架区間形成ローラと、を用いてシートを巻取る巻取方法であって、
前記張架区間の上流にある原反ロールの半径を測定し、測定された原反ロールの半径に基づき、予め記憶された前記原反ロールの半径と前記張架区間形成ローラと前記巻取ローラ間のシートの送り速度差の関係を示すテーブルから、設定すべきシートの送り速度差を抽出し、抽出した前記シートの送り速度差を設定して制御することにより、前記張架区間内の前記シートに張力を形成するシート巻取方法。
【請求項6】
シートを巻取る巻取軸を押圧し前記シートを前記巻取軸に巻き付ける巻取ローラと、前記シートを押圧して張架区間を形成する張架区間形成ローラと、を用いてシートを巻取る巻取方法であって、
前記張架区間の上流にある原反ロールの製造後の経過時間に応じて前記張架区間形成ローラと前記巻取ローラ間の前記シートの送り速度差を設定して制御することにより、前記張架区間内の前記シートに張力を形成するシート巻取方法。
【請求項7】
原反ロールの製造後の経過時間に基づいて、予め記憶された前記原反ロールの製造後の経過時間と前記シートの送り速度差の関係を示すテーブルから設定すべきシートの送り速度差を抽出することを特徴とする請求項に記載のシート巻取方法。
【請求項8】
請求項からのいずれか1項に記載のシート巻取方法において、前記原反ロールのシート送出量と前記張架区間形成ローラのシート送入量が同じになるように前記原反ロールと前記張架区間形成ローラを同期運転制御することを特徴とするシート巻取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にウェブ(WEB)と呼ばれる低剛性のプラスチック製などのシートを巻き取るためのシート巻取装置に関し、特に、数10μm以下の極薄シートを、例えば10m/sec以上の高速に巻き取るのに適したシート巻取装置及びシート巻取方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
極薄のシート状の部材を、しわ等の欠陥がなく、高速に巻き取るための薄膜シート駆動制御方式および装置並びにそれを用いたシート巻取装置は、例えば、以下の特許文献1、2により、既に知られている。
【0003】
引用文献1なるシート巻取装置では、その後のシート上へのコーティング処理やパターン形成処理等における欠陥の原因となることなどを考慮して、薄膜シートにしわが発生し難いハンドリング方法を提案するものであり、基本的には、シート送入手段(送入ローラ)とシート送出手段(送出ローラ)との間に区画される、シートが張架される高精度微小張力制御区間を設ける。シート送入手段(送入ローラ)側、及び、シート送出手段(送出ローラ)側に、それぞれ、押圧ローラを押し付けて回転駆動し、これら押圧ローラの回転量(シートの送出搬送量)を制御する。このことにより、当該張架区間において、シート送入量(搬送速度)とシート送出量(搬送速度)に差を設けた状態でシートの搬送を行うことで、シートの張力を、従来よりも高精度に制御し、巻取張力を一定に維持しようとするものである。
【0004】
特許文献2では、巻取ロールに影響を与える環境温度の変化と、所定の指定時間とに基づいて、当該巻取ロールにおける前記指定時間経過後の温度分布を演算し、演算された温度分布に基づいて巻取ロールの内部応力を演算し、内部応力に基づいて、巻取張力を制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−184749号公報
【特許文献2】特開2012−188221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に、数10μm以下の厚さの薄いプラスチックシートなどの非常に剛性の低いシート部材を、高速で巻き取る巻取装置では、しわ無く安定したハンドリングや巻取りが必要である。剛性の低いシートほど、高速で巻き取るほど、低張力で大きく伸びることから、しわを防止するためには、より低張力で安定に制御することが求められる。
【0007】
発明者等は、種々の実験をした結果、引用文献1のようなシート巻取装置において、両端の2つのローラ間で形成される張架区間内の張力が、速度差に換算して、巻取張力を制御してもよい状態では、巻取範囲で2%以下の範囲で変化し、巻取ローラに掛かる巻取張力を変化させることを見出した。刻々から見れば、更に小さくなるが、その変化は%ではなく絶対値に対して微量である。なお、張力は、速度差によってシートが伸びる量で規定される。
【0008】
この微量の変化で、特に高速で巻き取ると不良品が発生することが解った。例えば、巻取張力が強い方に変化すると、シート幅方向の座屈による微小な凹凸で干渉縞と思われる「リング」と呼ばれる目視可能な円周状の筋ができてしまう。
【0009】
特許文献2には、巻取ロールの内部応力に基づいて巻取張力を制御することの開示があるが、特許文献1に開示されたシート巻取装置又はシート巻取方法における上記課題に対する認識も示唆もない。
【0010】
本発明の目的は、張架区間内の張力の変化に対応して巻取張力を一定に維持し、シートをしわ無く巻き取ることができるシート巻取装置及シート巻取方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、シートを巻取る巻取軸を押圧し前記シートを前記巻取軸に巻き付ける巻取ローラと、前記シートを押圧して張架区間を形成する張架区間形成ローラと、前記張架区間形成ローラと前記巻取ローラ間の前記シートの送り速度差を制御することにより前記張架区間内の前記シートに張力を形成する速度差制御手段と、を備え、前記速度差制御手段は、前記シートの送り速度差を、前記張架区間の上流にある原反ロールの測定された半径に基づいて、予め記憶された前記原反ロールの半径と前記シートの送り速度差の関係を示すテーブルから抽出したシートの送り速度差に変更することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、シートを巻取る巻取軸を押圧し前記シートを前記巻取軸に巻き付ける巻取ローラと、前記シートを押圧して張架区間を形成する張架区間形成ローラと、前記張架区間形成ローラと前記巻取ローラ間の前記シートの送り速度差を制御することにより前記張架区間内の前記シートに張力を形成する速度差制御手段と、を備え、前記速度差制御手段は、前記張架区間の上流にある原反ロールの製造後の経過時間に応じて前記シートの送り速度差を変更することを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明は、シートを巻取る巻取軸を押圧し前記シートを前記巻取軸に巻き付ける巻取ローラと、前記シートを押圧して張架区間を形成する張架区間形成ローラと、を用いてシートを巻取る巻取方法であって、前記張架区間の上流にある原反ロールの半径を測定し、測定された原反ロールの半径に基づき、予め記憶された前記原反ロールの半径と前記張架区間形成ローラと前記巻取ローラ間のシートの送り速度差の関係を示すテーブルから、設定すべきシートの送り速度差を抽出し、抽出した前記シートの送り速度差を設定して制御することにより、前記張架区間内の前記シートに張力を形成する。
【0014】
さらに、本発明は、シートを巻取る巻取軸を押圧し前記シートを前記巻取軸に巻き付ける巻取ローラと、前記シートを押圧して張架区間を形成する張架区間形成ローラと、を用いてシートを巻取る巻取方法であって、前記張架区間の上流にある原反ロールの製造後の経過時間に応じて前記張架区間形成ローラと前記巻取ローラ間の前記シートの送り速度差を設定して制御することにより、前記張架区間内の前記シートに張力を形成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、張架区間内の張力の変化に対応して巻取張力を一定に維持し、シートをしわ無く巻き取ることができるシート巻取装置及シート巻取方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明実施例の構成説明図である。
図2】本発明の第1の実施例を示す図で、巻取張力維持処理部と、巻取張力に関連する構成要素を模式的に示した図である。
図3】コア径最外周の巻取応力で無次元化した原反ロールの円周方向応力分布、半径方向応力分布σを示す図である。
図4】原反ロール張力を実際に静的に測定する方法の一例を示す図である。
図5】原反ロール張力に基づいて得られた原反半径及び製造後の経過時間に対する速度差設定テーブルの例を示す図である。
図6】本発明の第2の実施例を示す図で、巻取張力維持処理部と、巻取張力に関連する構成要素を模式的に示した図である。
図7】本発明の第3の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態となるシート巻取装置について、添付の図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、以下の本実施形態例では、本発明となるシート巻取装置として、低剛性のプラスチックのフィルム状シートなど、一般的にウェブ(WEB)と呼ばれるシートを巻き取った原反を所定の幅に切断し、当該原反のシートを所定の長さだけ取り出して巻き直すための、所謂、リワインダに適用した構成を、その一例として説明する。
【0018】
(実施例1)
まず、添付の図1により、本発明となるシート巻取装置の第1の実施形態の全体構成を示す。
【0019】
図1において、符号10により、その外周表面にウェブ(WEB)と呼ばれるシートを巻き取った後、所定の幅に切断された、所謂、原反ローラ10が示されており、その上方には、上記原反ローラ10の外周表面に対して押圧して接触する、例えば、金属などの剛体からなる原反駆動ローラ11が配置されている。即ち、当該原反駆動ローラ11は、その両端部を、外形略「コ」の字状の支持部材12により回動可能に取り付けられると共に、隣接して設けられた一対の原反加圧シリンダ13の働きにより、当該支持部材12と共に図の上下方向に移動可能であり、もって、原反ローラ10の外周表面に対して所定の圧力で押圧される。
【0020】
また、上記支持部材12に隣接する位置には、原反駆動モータ14が設けられており、当該モータ14の出力(回転力)は、例えば、二段に設けられたチェーンベルト(図では、一方のチェーンベルトだけが示されている)を介して、上記原反駆動ローラ11に伝達されている。即ち、当該モータ14により、上記原反駆動ローラ11が回転駆動される(図の矢印を参照)。また、図中の符号16は、やはり、上記原反ローラ10の外周表面上に押圧して接触し、当該原反ローラ10の外周から取り出される原反の搬送と共に回転するように設けられた剥離ローラであり、当該原反ローラ10の外周から、原反であるシートを所定の角度で取り出す機能を有している。なお、この剥離ローラ16も、同様に、外形略「コ」の字状の支持部材17により所定に位置に配置されている。
【0021】
続いて、上記の構成により原反ローラ10の外周から取り出されたシート20は、所謂、中間ローラ30を介して、所謂、ターレット(TURRET)式のシート巻取部40に供給される。なお、このターレット式のシート巻取部40は、基本的には、図に破線で示すように、互いに対向する一対の円盤状の部材41、41の間に、複数(本例では8本)のバックアップローラ42、42…が独立して自在に回転可能に取り付けられた、所謂、インデックスと呼ばれる装置43と、その周囲に隣接して設けられた複数(本例では4本)の巻取軸44、44…と、張架区間形成ローラであるニップローラ45と、巻取ローラ(第1のローラ)46と、そして、スターホイール50と呼ばれる、所定の長さで巻終えたロール状のシート(以下、小巻シートとも言う)20’を、順次、上記シート巻取部40から取り出して排出コンベア60上に移動するための部材とで構成されている。
【0022】
上述したインデックス装置43は、その一例として、図示しない駆動モータ等により、その全体が、図に矢印で示す方向に、一定の角度で、その回転位置を、段階的に(本例では、90度)、移動することが可能となっている(インデックス機能)。
【0023】
上述したインデックス装置43の周囲には、更に、以下のローラが配置されている。
まず、インデックス装置43の上部には、図に破線で示すように、巻取先端巻付けローラ49が配置され、その側部(上記シート20が供給される側と反対側)には、巻取ローラ46が設けられている。そして、巻取先端巻付けローラ49と巻取ローラ46との中間の位置には、ニップローラ45が配置されている。また、巻取先端巻付けローラ49とニップローラ45との間には、供給されるシート20を、その供給方向に垂直な方向に、所定の長さで切断するための、所謂、切断刃80が上下に移動可能に設けられている。なお、ここでは図示しないが、当該切断刃80と対向する位置(例えば、インデックス装置43の内側)には、空気を供給されるシート20に吹き付けるためのブローノズルが配置されている。
【0024】
上記のニップローラ45には、例えば、チェーンベルト等を介して、回転駆動用のニップ駆動モータ72が接続されて所望の回転速度で回転駆動され、更には、その上方に設けられたニップ加圧シリンダ75の働きにより、供給されるシート20を間に挟んで、所定の押圧で押し付けられる(図の矢印を参照)ように構成されている。
【0025】
また、巻取ローラ46にも、同様に、巻取駆動モータ62が取り付けられており、これにより、所望の回転速度で回転駆動される。なお、ここでは図示しないが、上記インデックス装置43を構成する巻取軸44の内、当該巻取ローラ46に対向する位置の巻取軸44を、その内側から外側に向かって押し付けるための、巻取加圧シリンダ65等からなる加圧手段が設けられている。
【0026】
更に、上述した巻取先端巻付けローラ49にも、ここでは図示しないが、当該ローラ49を巻取軸44に所定の押圧で押し付けて回転駆動するための加圧シリンダや駆動モータが取り付けられている。
【0027】
また、図1に示すように、上記原反駆動ローラ11を回転駆動するための原反駆動モータ14と上記ニップローラ45を回転駆動するためのニップ駆動モータ72とは、前者のシート送出量と後者のシート送入量が同じになるように同期運転制御している。また、ニップ駆動モータ72と巻取ローラ46を回転駆動するための巻取駆動モータ62とは、互いに速度差Cをもって回転するように制御、即ち、速度差制御が行われる。これらの制御は、ここでは図示しないが、例えば、CPUやメモリ等を備え、高速なデータ転送が可能な制御装置の働きにより行われる。
【0028】
以下、本願発明の特徴である、張架区間内の張力を変化させる要因に対応して巻取張力を一定に維持する巻取張力維持処理部100について説明する。巻取張力維持処理部100は上記制御装置の一部を形成する。
【0029】
課題で示したように、巻取ローラと搬入ローラで形成される張架区間内の張力が、速度差Cに換算して巻取範囲で2%以下の範囲で変化し、巻取ローラに掛かる巻取張力を変化させる。刻々から見れば更に小さくなり、その変化を%ではなく絶対値に対して比べれば微量となる。この微量の変化で、特に高速で巻き取ると不良品が発生することが解った。
【0030】
そこで、張架区間内の張力を変化させる要因を探し、その要因に対する張力の変化を把握できれば、張架区間内に所望の張力を安定に付加して、巻取張力を一定に保つことができ、製品の信頼性をあげることができる。
【0031】
実施形態1のような巻取装置では、張架区間内の張力を変化させる要因としては、次の3つがある。また、これら要因による変化は、シートの材料によっても変わる。
(1)原反ロールに内在する円周方向応力分布
(2)原反ロールの製造後の経過時間
(3)原反ロールの偏芯
【0032】
以下、各要因による変化に対応する巻取張力維持処理部を説明する。まず、その第1の原因である原反ロールに内在する円周方向応力分布について説明する。図2は、巻取張力維持処理部100と、図1において巻取張力に関連する構成要素を模式的に示した図である。
【0033】
図2では、巻取ローラ46とニップローラ45で張架区間を形成する。図3に、コア径r0、最外周の巻取応力σωで無次元化した原反ロールの円周方向応力分布σθ、半径方向応力分布σ(参考文献:入門ウェブハンドリングP168、図4−10:2010年10月28日初版発行)を示す。図2において、rは原反ロールの任意位置の半径(原反半径)を、rmaxは原反ロールの最大半径を示す。
【0034】
図3は、シートを受取った場合に巻取された原反ロール10aの内部に封じ込められた応力を示しており、実施例1、2で示す原反ロールから小巻にとるリワインドでは、図3に示す応力分布を有する原反ロール10aが供給される。前述した参考文献1によれば、ウェブ素材として、アルミニウム、ポリプロピン、ポリエステル、低密度ポリエチレン、ファインコート、ライトコート及び新聞紙は、図3に示す応力分布と同様な傾向を示す。
【0035】
図3(a)によれば、張力変化の要因となる円周方向応力Aは、コア位置から半径方向に向けて急激に低下し、最小値をとって再び増加する。なお、参考として、図3(b)に示す半径方向応力分布は常に圧縮で、コア位置で最大になり、半径が増すにつれて急激に低下し、最外周でゼロとなり、最大巻取径が大きいほど応力の値も大きく、コアの圧迫も大きくなる。
【0036】
図2において、任意の半径rの点に内在する円周方向応力は、原反ロール10aが送出され外周に至り、搬送路状に引き出された時、この円周方向応力Aが原反ロールから接線方向に解放され、解放されたシートが縮み、シートを搬送方向Xとは反対方向に引っ張る原反ロール張力Bが作用する。原反ロール張力Bの大きさは、円周方向応力Aにシート20の円周方向と直交する断面の断面積を掛けた値となる。また、張力はシートの弾性率に引き延ばした長さをかけても表す事ができる。この理論を用いれば、シート巻取の際、引き延ばす長さを制御することで巻取張力Dを制御する事が可能となる。
【0037】
まず、原反ロール張力Bを相殺することを考える。相殺する付加速度差Cαは、原反ロール張力Bをシートの弾性率で除した値となる。具体的には原反ロール張力Bを相殺する為には、張架区間における速度差Cを巻取側(送出側)速度>送入側速度で張力を+と定義すれば、−Crの数値の速度差を与える。
【0038】
次に、原反ロール張力Bが相殺された場合、張架区間に係る張力は、一定張力である巻取張力Dとなる。その巻取張力に対する一定巻取速度差Cdは、巻取張力Dをシートの弾性率で除した値となる。従って、巻取時に加える速度差Cは、原反ロール張力Bが相殺される速度差−Cαに、一定の巻取張力Dを与える一定巻取速度差Cdを加えた値、即ち、式(1)となる。
C=−Cα+Cd (1)
速度差Cは、シートを引き延ばす長さになるので、これにシートの弾性率を掛ければ、巻取時の巻取張力Dを知ることができる。
【0039】
以上説明した方法は、巻取張力Dを速度差の制御技術を使って、一定に維持する方法の例であり、巻取張力Dを一定に維持できれば、他の方法でもよい。
【0040】
従って、第1の要因に対しては、原反半径に対して張力の変化を特定し、その変化に応じて張架区間内に速度差Cを制御する。この結果、巻取張力Dを所定の値に維持することができる。
【0041】
なお、原反駆動ローラ11とニップローラ45との間に、第2の張架区間を設け、第2の張架区間に付加速度差Cαを掛け、原反ロール張力Bを補正し、張架区間では一定の巻取張力Dを掛けてもよい。
【0042】
次に、第2の要因について説明する。第2の要因において、円周方向応力Aは、半径方向応力によってその開放が阻まれ、経過時間Tと共に徐々に開放されて、減少して行く。第1の要因の変化は、原反ロールに対して長くても数十分で処理でき、経過時間Tの変化よる影響を無視できる。しかし、第2の要因の変化は、製造後商品として小巻に処理開始する時までの経過時間Tは、長いもので数日にわたり、その影響を無視できない。
【0043】
従って、第2の要因に対しては、製造後の経過時間Tに基づいて、第1の要因と同様に張力の変化を特定し、第1の要因と同様に、張架区間内に印加する速度差Cを制御する。この結果、第2の要因においても、巻取張力を所定の値に維持することができる。第2の要因による変化では原反半径rが変わらない場合は、製造後の経過時間Tのデータを採取し、経過時間Tの影響分シフトすればよい。
【0044】
次に、第3の要因について説明する。原反ロールの偏芯は周期的であり、かつ、その偏芯の度合いは原反半径に応じて変化する。従って、原反ロール張力Bも、周期的に発生し、原反半径に応じて変化する。また、第3の要因は、第1の要因及び第2の要因と重複して起こる。
【0045】
従って、第3の要因に対しては、周期性に対する原反ロール張力Bを評価し、第1、第2の要因に結果を重畳して評価し、速度差Cを制御する。しかし、第3の要因については、機械的に行うなど種々の対応方法が考えられるので、他の方法で行ってもよい。
【0046】
以上説明したように、巻取張力Dを速度差Cで所定の値に維持するには、原反ロール張力Bを評価することが重要である。原反ロール張力Bをオンラインで測定してもよいが、測定装置が外乱となる可能性などの様々な要因が付加されるので、オフラインで静的に測定するのがよい。例えば、図3(a)に示すモデル等を用いてシミュレーション、或いは、実際に静的に測定して、予めデータとして取得する方がよりよいと考える。
【0047】
測定によるデータは、シート巻取装置の固有の特性、モデリングの近似度など誤差を吸収して得られるので、その点でシミュレーションより優れている。一方、シミュレーションによるデータは、ある程度最初から商品の生産に入れるので、その点で静的測定はより優れている。
【0048】
図4は、原反ロール張力Bを実際に静的に測定する方法の一例を示す図である。張力測定器は、原反ローラ10の下流、例えば原反ローラ10と張架区間内を形成するニップローラ45の間に設ける。図4では、張力測定器は、ダンサローラ91と、ダンサローラ91に設けたロードセル92とで構成している。或いは、同位置に荷重計測ベアリングを設けて測定してもよい。
【0049】
静的測定は、一定の原反半径分のシートを送出しては原反ロール10を停止させて、即ち巻取り動作を停止させて、ロードセル92又は荷重計測ベアリングで原反ロール張力Bを測定する。この静的測定を複数の原反半径r(図5ではαからε及びコア長の6か所)に対して行う。静的測定の不利を補うために、測定原反半径の間は、経験又はシミュレーションで得られた原反ロール張力データを用いて製品を生産してもよい。
【0050】
製造後の経過時間Tに対しては、上述した静的測定を製造後の経過時間Tの異なる複数の原反ロール10aに対して行う。経過時間Tは、その日に製造されたものが小巻へのリワインダをその日に行う、次の日に、或いは週明けに行うなどを考慮して、4時間、8時間、16時間後、20時間後、28時間、32時間等を選ぶ。
【0051】
図5は、上記の方法で測定された原反ロール張力Bに基づいて得られた原反半径及び製造後の経過時間Tに対す速度差設定テーブルの例を示す図である。図5では、原反半径の方向は、最外径からコア径まで5か所測定した。測定の数は、シートの厚さ及び処理速度で決める。また、測定点の間は、線形近似又は全測定データから得られる曲線近似から得られる複数のデータを用いてもよい。例えば、あるシートでは、速度差Cの調整範囲では、高々2%程度であり、刻々から見れば更に小さくなり、その変化は%ではなく絶対値対して比べれば微量となる。そこで、フィードバックによる不安定さを避けるために速度差制御は、所定の変化、例えば0.数%の範囲では、一定の速度差Cで行ってもよい。
【0052】
また、実際に商品生産では、速度差設定値が安定するまで得られた結果を基に学習させてもよい。例えば、ある原反半径rで得られた小巻シート20’に「リング」ができれば、巻取張力Dが大きいとしてその原反半径rにおける速度差Cを小さくする。一方、ある原反半径rで得られた小巻シート20’に「耳ズレやしわ」ができれば、巻取張力Dが小さいとしてその原反半径rにおける速度差Cを大きくする。この学習を行うことをより、速度差データの信頼性が高くなり、製品の信頼度も高くなる。
【0053】
以上施策を行うことにより、本発明は、巻取張力Dをより安定して実際に適したものにすることができ、不良品をより少ない生産性の高いシート巻取装置又はシート巻取方法を提供できる。
【0054】
次に、図2に戻り、上記した巻取張力Dを所定の値に維持する巻取張力安定処理部100の構成を説明する。
巻取張力安定処理部100は、図1に示すターレット方式のシート巻取装置では、前述したように巻取ローラ46とニップローラ45との間では速度差制御を行う速度差制御部102、ニップローラ45と原反駆動ローラ11との間に同期運転制御を行う同期運転制御部103に加え、巻取張力Dを所定の値に維持するために、各時刻における速度差Cを決定する速度差設定部101とを有する。
【0055】
各速度制御は、速度差制御部102と同期運転制御部103からの速度指令値を、巻取モータ駆動装置62c、ニップモータ駆動装置72c及び原反モータ駆動装置14cに入力して巻取駆動モータ62、ニップ駆動モータ72及び原反駆動モータ14を駆動して行われる。この時のフィードバック信号は、原反ロール10aが径に変化しても、径が時間的に変化しない巻取ローラ46、ニップローラ45及び原反駆動ローラ11の外周の移動量を検出する巻取エンコーダ68、ニップエンコーダ及び原反エンコーダ18で検出される。また、各ローラは、それぞれ巻取加圧シリンダ65、ニップ加圧シリンダ75及び原反加圧シリンダ13で、それぞれ対抗するする巻取軸44、バックアップローラ42及び原反ロール10aに押圧65a、75a、13aされているので、各速度制御は高精度にかつ安定し行われる。
【0056】
メモリ104には、シートの材料、処理速度等に対応して設けられた図5で示した速度設定テーブル104aと、巻取速度データ104bが既に用意され、原反ロール10aの製造後の経過時間データ104cが入力されている。速度差設定部101は、作業開始とともに、リニアスケール19で検出され、原反半径検出処理部105で得られた原反半径rと原反ロール10aの製造後の経過時間データ104cとにより、逐次速度設定テーブル104aから速度差設定値を抽出し、速度差制御部102に入力する。速度差制御部102は、速度差設定値と巻取速度データ10bとから各駆動系の速度指定値を計算し、各モータ駆動装置に出力する。そして、速度差制御及び同期運転制御が行われる。
【0057】
数10μm以下の厚さの薄い低剛性のプラスチック製のフィルム状のシート20を、21m/secの巻取速度でしわを発生させることなく巻取ることができた。
【0058】
以上、実施例1では、実施形態1のシート巻取装置において、原反ロールによって張架区間内の張力を変化しても、巻取張力を一定に維持し、シートをしわ無く巻き取ることができるシート巻取装置及シート巻取方法を提供できる。
【0059】
(実施例2)
実施例2は、図6で示す所謂ドラム式のシート巻取装置に対して、本発明を適用した例で、巻取張力維持処理部110と、巻取張力に関連する構成要素を模式的に示した図である。図6において、機能が同じ構成については、図2と同じ符号を付している。
【0060】
ドラム式のシート巻取装置が図1のターレット式のシート巻取装置と異なる点は、次の点である。第1に、図1のターレット式の駆動軸を有するニップローラ45とバックアップローラ42の代わりに、それぞれ駆動軸のない張架区間形成ローラとなるニップローラ45と駆動軸を有する径の大きいシート巻付ドラム70とが設けられる。張架区間がニップローラ45(巻付ドラム70)と原反駆動ローラ11との間に形成されている。従って、速度差制御は、速度差制御部102からの速度指令値を、原反モータ駆動装置14c及びドラムモータ駆動装置76cに入力して原反駆動モータ及びドラム駆動モータ76を駆動して行われる。第2に、シート巻取は、シート巻付ドラム70と巻取軸44の間で行われる点である。第3は、張架区間がニップローラ45(巻付ドラム70)と原反駆動ローラ10との間に形成されているので、実施例1でいう同期運転制御が不要となる点である。即ち、速度差制御部102までの処理は、実施例1と同じである。
【0061】
実施例2は、実施例1と上記のような違いがあるもの、張架区間内の張力を変化させる構成要素が原反ロール10aであり、その要因が前述の3つである点は同じである。また、巻取張力Dに対する影響が、実施例1では張架区間内にニップローラ45を介してもたらされたのに対し、実施例2では直接張架区間内に直接もたらされる点で異なるが、影響の仕方、解決手段は、全く実施例1と同じである。
【0062】
従って、実施例2のドラム式のシート巻取装置においても、実施例1のターレット式のシート巻取と同様に、原反ロールによって張架区間内の張力を変化しても、巻取張力を一定に維持し、シートをしわ無く巻き取ることができるシート巻取装置及シート巻取方法を提供できる。
【0063】
(実施例3)
図7に示す実施例3は、実施例1で示すターレット式のシート巻取装置において、原反ローラ10及び原反駆動ローラ11の代わりに、ニップローラ45とバックアップローラと同一構造の第2のニップローラ90とそのバックアップローラとが設けられ、上流工程で処理されたシート20が搬送されてくる例である。図7において、機能が同じ構成については、図2と同じ符号を付している。
【0064】
実施例3においては、張架区間内の張力を変化する要因は、第2のニップローラ装置90より上流側にある処理工程あるいは搬送路に存在する。例えば、上流工程から搬送されてくるシート20が形成されてからの製造後の経過時間Tによる張力の変動、搬送路にダンサローラ94があるときの張力の変動、あるいは、上流工程で意図的に作り込まれた張力の変化が挙げられる。第1の変動に対しては、経過時間Tに対する速度差設定テーブルを作り、第2の変動に対しては、例えばロードセンサ92でその変動を検知し、その変動がある一定以上になった場合に、速度差Cを補正する。また、第3の変化に対しては、意図的に作り込まれた張力に基づいて速度差Cを補正する。
【0065】
実施例3によれば、上流工程側に張架区間内の張力を変化する要因があっても、その要因の特性を求め、特性に基づき速度差Cを補正することで、巻取張力を一定に維持し、シートをしわ無く巻き取ることができるシート巻取装置及シート巻取方法を提供できる。
【0066】
以上説明した実施例によれば、張架区間内の張力を変化させる要因に基づいて巻取張力を一定に維持し、シートをしわ無く巻き取ることができるシート巻取装置及シート巻取方法を提供できる。
【0067】
以上のように本発明の実施の態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0068】
10:原反ローラ 10a:原反ロール
11:原反駆動ローラ 12:支持部材
13:加圧シリンダ 14:原反駆動モータ
14c:原反モータ駆動装置 16:剥離ローラ
17:支持部材 18:原反エンコーダ
19:リニアスケール 20:シート
20‘:小巻シート 30:中間ローラ
40:ターレット(TURRET)式シート巻取部 42:バックアップローラ
43:インデックス装置 44:巻取軸
45:ニップローラ 46:巻取ローラ
49:巻取先端巻付けローラ 50:スターホイール
60:搬出コンベア 62:巻取駆動モータ
62c:巻取モータ駆動装置 65:巻取加圧シリンダ
68:巻取エンコーダ 70:シート巻付ドラム
72:ニップ駆動モータ 72c:ニップモータ駆動装置
75:ニップ加圧シリンダ 76:ドラム駆動モータ
76c:ドラムモータ駆動装置 78:ニップエンコーダ
80:切断刃 90:第2のニップローラ装置
91:ダンサローラ 92:ロードセル
94:ダンサローラ 100、110:巻取張力維持処理部
101:速度設定部 102:速度差制御部
103:同期運転制御部 104:メモリ
104a:速度設定テーブル 104b:巻取速度データ
104c:製造後の経過時間データ A:円周方向応力
B:原反ロール張力及びその張力値 C:速度差及びその値
Ca:一定巻取速度差及びその値 Cr:付加速度差及びその張力値
D:巻取張力及びその張力値 r:原反ロールの任意半径位置(原反半径)
T:製造後の経過時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7