(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、例示的な顕微鏡法機器100の略図を示す。機器100は、対物レンズ102、ポリクロイックミラー104、励起フィルタ106、光源108、発光フィルタ110、チューブレンズ112、スプリッティングシステム114及び検出器の平面アレイ116を含む。光源108は、高強度で実質的に単色の光のビーム118を発光するレーザでありうる。励起フィルタ106及びポリクロイックミラー104は、励起光のビームを送信し、励起光のビームは、ステージ120の対物レンズ102及びアパーチャを通過し、ステージ120によって支持される顕微鏡スライド122上に配設された試料に至る。励起フィルタ106は、光の帯域外波長が光源108に入ることを防止する。試料の成分は、蛍光プローブで標識される。各タイプのプローブは、試料の特定の成分に特異的に結合するように設計され、各タイプの蛍光体は、特定のタイプのプローブに結合されるため、試料が励起光118で照明されると、異なる蛍光体は、電磁スペクトルの可視及び近可視部分内の異なる波長を有する光を発光する。結果として、試料の各成分は、関連する異なる波長を持つよう表示される。
図1の例では、試料成分は、それぞれが可視スペクトル内の異なる波長の光を発光する、N個の異なるタイプの蛍光体で標識される。波長はλ
iで示され、ここで、iは1〜Nの範囲にある整数インデックスである。
図1は、可視スペクトル内のある範囲の波長に対する強度のプロット124を含む。プロット124の各曲線は、特定の波長を中心とする非常に狭い範囲の波長にわたる強度分布を示す。例えば、曲線126は、第1のタイプの蛍光体から光の発光を生成する、波長λ
ex1を中心とする狭い範囲の励起波長を示し、曲線128は、第1の蛍光体によって発光される、波長λ
em1を中心とする狭い範囲の発光波長を示す。波長λ
exi(iは1〜Nの範囲にある整数インデックスである)で示すN個の励起波長は、N個の異なるタイプの蛍光体からの発光を励起する。N個の異なるタイプの蛍光体のそれぞれは、波長λ
em1で示す対応する発光波長を発光する。発光波長が電磁スペクトルの可視部分内にあるとき、成分は、異なるカラーを有する試料の画像内に現れる。N個の励起波長は、「励起チャネル」と呼ばれ、N個のタイプの蛍光体から発光される光のN個の波長は「発光チャネル」と呼ばれる。N個の励起チャネルλ
exiは励起光118を含む。
【0008】
N個の発光チャネルの一部分は、対物レンズ102によって収集されコリメートされて、単一発光ビーム130になる。ビーム130は、ポリクロイックミラー104から反射して、機器100に関連するデカルト座標系131のz軸に平行に延びる中心光学発光軸に沿って進む。ビーム130は、迷走励起光を阻止する発光フィルタ110を通過する。チューブレンズ112は、単一レンズを表す又はいくつかのレンズ及び他の光学要素を表し、ビーム130がスプリッティングシステム114に入る前に検出器116の像面上にビーム130を合焦させる。代替の実施形態では、各ビームは、スプリッティングシステムの下流に配置された自分自身の別個のレンズを有しうる。スプリッティングシステム114は、ビーム130の発光チャネルを分離するため、各チャネルは、発光フィルタ(複数可)110を通って検出器の平面アレイ116内の検出器までN個の別個の実質的に平行な経路のうちの1つの経路をたどる。例えば、指向性矢印132及び134は実質的に平行な出力ビームを表し、出力ビーム132は検出器136に向けられる発光チャネルλ
em1であり、出力ビーム134は検出器138に向けられる発光チャネルλ
em2である。アレイ116内の各検出器は、光検出器アレイ、CCDカメラ又はCMOSカメラでありうる。代替の実施形態では、各ビームは、別個の励起フィルタを通過しうる。スプリッティングシステム114及び検出器の平面アレイ116は、機器100の検出システムを形成する。アレイ116内の検出器は、任意の適した配置構成を有しうるが、検出器は、スプリッティングシステム114に面するほぼ同じ平面内に存在する。
【0009】
図2A〜2Dは、それぞれが検出器の異なる平面配置構成を表す検出システムの4つの例を示す。各図は、上述した対物レンズ102、ポリクロイックミラー104及びチューブレンズ112を含む。
図2Aの例では、検出システムは、スプリッティングシステム202及び2つの検出器のアレイ204を含む。2つの検出器は、y軸に平行に配向するライン206に沿って存在する。スプリッティングシステム202は、2つの発光チャネルλ
em1及びλ
em2からなる光の発光ビーム208を受取り、2つのチャネルを分離するため、チャネルλ
em1は、ビーム210で出力されて検出器1に至り、チャネルλ
em2は、ビーム212で出力されて検出器2に至る。ビーム210及び212は、yz平面内に存在しかつ互いに実質的に平行である。
図2Bの例では、検出システムは、スプリッティングシステム214及び3つの検出器のアレイ216を含む。3つの検出器は、yz軸平面内に存在する。スプリッティングシステム214は、3つの発光チャネルλ
em1、λ
em2及びλ
em3からなる光の発光ビーム220を受取り、チャネルを分離するため、チャネルλ
em1は、ビーム222で出力されて検出器1に至り、チャネルλ
em2は、ビーム224で出力されて検出器2に至り、チャネルλ
em3は、ビーム226で出力されて検出器3に至る。ビーム222、224及び226は、yz平面内に存在しかつ互いに実質的に平行である。ビーム222、224及び226が進む光学経路長がほぼ同じになるため、検出器2が検出器1及び3に比べてスプリッティングシステム214からより遠くに設置されることに留意されたい。他の実施形態では、検出器は、ビーム222及び226が進む光学経路長にほぼ一致するよう、ビーム224の光学経路長を増加させるために、ビーム224を内部で反射するミラーをスプリッティングシステム214内に含むことによって、xy平面に平行に配向されたラインに沿って存在しうる。検出器は、y方向に平行なラインに沿って配列されることに限定されず、検出器204及び216のリニアアレイは、xy平面内に存在する任意のラインに沿って配列されうる。他の実施形態では、出力ビーム及び検出器は、
図2C及び
図2Dで示す2次元幾何学配置構成を有しうる。
図2Cの例では、検出システムは、スプリッティングシステム228及び3つの検出器のアレイ230を含む。3つの検出器は、各検出器が、xy平面に平行に配向される三角形232の頂点に位置するように配列される。この例では、スプリッティングシステム228は、光の発光ビーム220を受取り、チャネルを分離するため、チャネルλ
em1は、ビーム234で出力されて検出器1に至り、チャネルλ
em2は、ビーム236で出力されて検出器2に至り、チャネルλ
em3は、ビーム238で出力されて検出器3に至る。ビーム234、236及び238は、互いに実質的に平行である。
図2Dの例では、検出システムは、スプリッティングシステム240及びxy平面に平行に配向される長方形244の頂点に各検出器が位置するように配列された4つの検出器のアレイ242を含む。この例では、スプリッティングシステム240は、4つのチャネルからなる光の発光ビーム246を受取り、チャネルを分離するため、チャネルλ
em1は、ビーム248で出力されて検出器1に至り、チャネルλ
em2は、ビーム250で出力されて検出器2に至り、チャネルλ
em3は、ビーム252で出力されて検出器3に至り、チャネルλ
em4は、ビーム254で出力されて検出器4に至る。ビーム248、250、252及び254は、互いに実質的に平行である。
【0010】
検出システムは、4つまでの検出器の平面アレイに限定されることを意図されない。他の実施形態では、検出システムは、平面幾何学的配置構成で5つ以上の検出器を有しうる。例えば、5つの検出器は、五角形の頂点に位置するように配列されることができ、6つの検出器は、六角形の頂点に位置するように配列されることができる。他の実施形態では、検出器は、不規則な平面配置構成を有することができ、平面の規則的な2次元幾何学的配置構成に限定されることを意図されない。
【0011】
上述した顕微鏡法機器の一方の側又は背面上の検出器の平面配置構成は、コンパクトであり、機器の占有面積を最小にする。顕微鏡法機器の一方の側又は背面上に検出器の全てを位置することによって、機器は、より狭いエリアにより迅速にかつ好都合に設置されることができ、ケーブル及び冷却液チューブが機器のいくいつかの異なる側から突出するのではなく、検出器を動作させるために使用されるケーブル及び冷却液チューブの全てが機器の一方の側から突出し、機器の美観を改善する。
【0012】
スプリッティングシステムは、顕微鏡法機器の発光軸に沿って位置する光学フィルタのセット及び光学フィルタのセットの周りに配置されたミラーの第2のセットによって実装されうる。各フィルタは、他の波長の透過を可能にしながら、特定のチャネルをミラーのうちの1つのミラーに反射するように構成される。各ミラーは、チャネルのうちの1つのチャネルを、対応する検出器に反射するように配向される。チャネルは、
図2に示す例を参照して上述したように、実質的に平行な出力ビームで反射されて検出器に至る。
図3Aは、
図2Dに示す検出システムのスプリッティングシステム240の例示的な実装態様を示す。スプリッティングシステム240は、z軸に平行に延びる発光軸302に沿って配列される4つの光学フィルタ1〜4のセットを含み、また、フィルタのセットの周りに径方向に分配された4つのミラー1〜4を含む。
【0013】
実際には、検出システムの検出器は、顕微鏡法機器及び検出器の背面内の検出器マウントに取付けられ、検出器の位置は、理想的な平面からの検出器の距離に関してわずかに変動する場合がある。
図3Bは、4つの検出器マウント306〜309を有する背面プレート304のほぼ実装態様の例を示す。マウントは、xy平面内で長方形平面配置構成を有する。結果として、検出器1〜4は、対応するマウント306〜309に挿入されると、実質的に平面である。4つの別個のマウントは、同様に、検出器のそれぞれの位置がxy平面及びz平面内で調整されることを可能にして、フィルタを通過するビーム、色収差及び光学経路長変動の他の発生源による屈折を補正する。
【0014】
顕微鏡法システムの検出器の数はスケールアップ又はスケールダウンされることができる。換言すれば、
図3Bに示す検出システムを含む顕微鏡法システムは、任意の1検出器、2検出器又は3検出器及び対応するフィルタを除去することによって、4検出器の検出システム242から3検出器、2検出器又は単一検出器の検出システムにスケールダウンされうる。同様に、検出システムは、検出器マウント内に検出器を設置し、対応するフィルタをスプリッティングシステムに付加することによって、単一検出器、2検出器又は3検出器の検出システムからスケールアップされうる。例えば、
図3Bでは、検出器4がマウント309に付加されると、対応するフィルタ4が、スプリッティングシステム240に付加され、検出システムは、3検出器システムから4検出器システムにスケールアップされる。代替的に、検出器4がマウント309から除去されると、対応するフィルタ4が、スプリッティングシステム240から除去され、検出システムは、4検出器システムから3検出器システムにスケールダウンされる。
【0015】
フィルタ1〜4は、ダイクロイックミラー又はポリクロイックミラーでありうる。各フィルタは、チャネルのうちの1つのチャネルを対応するミラーに反射する。
図4は、フィルタ1〜4にそれぞれ関連する反射率特性及び透過率特性を表す例示的な透過率及び反射率プロット401〜404を示す。各プロットでは、軸406などの水平軸は波長を表し、軸408などの垂直軸は、透過率及び反射率をパーセンテージとして表し、軸410などの垂直軸はチャネル強度を表し、破線の曲線412などの破線の曲線は反射率を表し、点線の曲線414などの点線の曲線は透過率を表す。各フィルタは、他の波長を透過させながら、発光チャネルのうちの1つのチャネルを反射する。特に、例示的なプロットは、フィルタ1が発光チャネルλ
em1を反射し、フィルタ2が発光チャネルλ
em2を反射し、フィルタ3が発光チャネルλ
em3を反射し、フィルタ4が発光チャネルλ
em4を反射することを明らかにする。
【0016】
図5は、動作時の
図3に示す例示的なスプリッティングシステム240を示し、フィルタは、
図4を参照して述べるように、光を反射及び透過させるように構成される。4つのチャネルλ
em1、λ
em2、λ
em3及びλ
em4からなる発光ビーム502は、スプリッティングシステム240に入る前に対物レンズ102によって収集され、ポリクロイックミラー104によって反射され、チューブレンズ112によってコリメートされる。発光ビーム502がスプリッティングシステム240を通過するとき、フィルタ1はミラー1に向かってチャネルλ
em1を反射し、フィルタ2はミラー2に向かってチャネルλ
em2を反射し、フィルタ3はミラー3に向かってチャネルλ
em3を反射し、フィルタ4はミラー4に向かってチャネルλ
em4を反射する。
図5の例に示すように、ミラー1〜4は、フィルタ1〜4のセットの周りに径方向に分配され、各チャネルが、他のチャネルに関連する出力ビームに実質的に平行である出力ビームで反射されるように配向される。特に、
図5では、ミラー1〜4は、各チャネルλ
em1、λ
em2、λ
em3及びλ
em4がそれぞれ、径方向に分配された実質的に平行な別個の出力ビームに沿って反射されて、それぞれ検出器1〜4に至るように配向される。
【0017】
スプリッティングシステムの光学要素は、チャネルに関連する像の配向を保存するように配列される。例えば、試料が励起光によって照明され、各タイプの蛍光標識された成分が、異なる発光チャネル内の光を発光するとき、各タイプの成分は、発光チャネル波長に対応するカラーの関連する像を有する。スプリッティングシステムは、発光チャネル波長に従って異なる像を分離し、各像は、検出器のうちの1つの検出器によって取込まれる。スプリッティングシステムの光学要素は、成分の別個の像を再配向しない。
図5はまた、発光チャネルλ
em1、λ
em2、λ
em3及びλ
em4内の光をそれぞれ発光するために蛍光標識される、試料の4つの異なるタイプの成分の像の配向を表すために使用される4つの文字「J」、「K」、「P」及び「F」を含む。スプリッティングシステム240は、関連する発光チャネル波長に従って像を分離するが、像が、2回反射され、最終的に対応する検出器まで透過されるため、各像の配向が保存される。例えば、スプリッティングシステム240に入る直前の文字「J」、「K」、「P」及び「F」に関連する像のxy平面配向は、検出器1〜4のxy平面内の文字「J」、「K」、「P」及び「F」の配向と同じである。換言すれば、像は、像の配向が不変の状態で検出器1〜4に到達する。
【0018】
他の実施形態では、スプリッティングシステムは、2つ以上のセットのフィルタを有しうる。フィルタの各セットは、発光チャネルの異なるセットを反射する。
図6は、フィルタの2つのセットを有するスプリッティングシステム602の例を示す。
図6の例では、フィルタの各セットは、そのセットを、y方向に前後に摺動させることによって切換えることを可能にするシャシ内に搭載される。
図6は、フィルタのセット1及び2に関連する発光チャネルの2つのセットの例示的なプロット604を含む。フィルタのセット1は、実線のピークで示すチャネルの第1のセットλ
em1、λ
em2、λ
em3及びλ
em4を反射するように構成され、フィルタのセット2は、破線のピークで示すチャネルの第2のセットλ’
em1、λ’
em2、λ’
em3及びλ’
em4を反射するように構成される。フィルタのセット1が、チャネルの2つのセットからなる発光ビームの経路内に設置されると、セット1は、
図5を参照して上述した方法でチャネルの第1のセットλ
em1、λ
em2、λ
em3及びλ
em4を分離する。フィルタのセット2が、発光ビームの経路内に設置されると、セット2は、上述した方法でチャネルの第1のセットλ’
em1、λ’
em2、λ’
em3及びλ’
em4を分離する。
【0019】
説明のための先の説明は、本開示の完全な理解を提供するために特定の用語を使用した。しかし、本明細書で述べるシステム及び方法を実施するために、特定の詳細は必要とされないことが当業者に明らかになるであろう。特定の例の先の詳細は、例証及び説明のために提示される。それらは、本開示を網羅すること又は述べる厳密な形態に本開示を制限することを意図されない。例えば、
図1を参照して、励起フィルタ106及び光源108の場所は、発光フィルタ110、チューブレンズ112、スプリッティングシステム114及び検出器の平面アレイ116の場所と切換えられることができ、ポリクロマティックミラー104は、励起ビーム118を対物レンズ102に反射し、発光ビーム130を透過させるポリクロイックミラーと置換されうる。明らかに、多くの変更及び変形が、先の教示を考慮して可能である。本開示の原理及び実用的な用途を最もよく説明し、それにより、当業者が、企図される特定の使用に合う種々の変更によって本開示及び種々の例を最もよく利用することを可能にするために、例が示され述べられる。本開示の範囲が、添付特許請求の範囲及びその均等物によって規定されることが意図される。