特許第6018637号(P6018637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6018637放射性医薬品合成装置のための較正及び正規化システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018637
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】放射性医薬品合成装置のための較正及び正規化システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C07B 59/00 20060101AFI20161020BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20161020BHJP
   A61K 51/00 20060101ALN20161020BHJP
【FI】
   C07B59/00
   G01T1/161 D
   !A61K49/02 B
   !A61K49/02 C
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-533396(P2014-533396)
(86)(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公表番号】特表2015-504412(P2015-504412A)
(43)【公表日】2015年2月12日
(86)【国際出願番号】US2012057930
(87)【国際公開番号】WO2013049577
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年9月18日
(31)【優先権主張番号】61/541,246
(32)【優先日】2011年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】305040710
【氏名又は名称】ジーイー・ヘルスケア・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】エンゲル,トルグリム
(72)【発明者】
【氏名】グリッグ,ジュリアン
【審査官】 黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/100490(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/149367(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/127469(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/065810(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07B 59/00
G01T 1/161
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動放射性合成装置で放射性合成を実施する方法であって、放射性合成装置がそれと動作可能に付属した複数の個々の活性検出器を有しており、当該方法が、
放射性合成装置の各活性検出器の近傍に、既知の活性と既知の時間減衰相関係数とを有するγ線源を含む較正標準を所定の時間間隔で用意する段階と、
各活性検出器からの活性データを、較正標準がその近傍にある時に記録する段階と、
個々の活性検出器に対する相関係数Cfを次式で決定する段階と、
f=(x/y)×z
(式中、xは較正標準の既知の活性であり、yは特定の個々の活性検出器で記録された活性データであり、zは較正標準に対する時間減衰相関係数で定義される減衰である。)
放射性合成装置を用いてトレーサーを合成する段階であって、トレーサー合成時に個々の活性検出器によって検出される活性の測定値に対して、その活性検出器について決定された相関係数Cfを適用することをさらに含む段階と
を含む、方法。
【請求項2】
γ線源が陽電子放射性同位元素である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
放射性医薬品の合成時に各活性検出器において1秒間隔で記録された1組のデータを含むデータ収集ファイルを構築する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
各活性検出器に対する相関係数Cfの計算が自動的に実施される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
較正標準を用意する段階が、合成装置にカセットを接続する段階をさらに含み、カセットは各活性検出器に較正標準を通導するためのバルブ及び導管を含み、カセットは放射性合成装置によって操作される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
較正標準が、合成装置の第1の活性検出器の近傍にあるQMAカートリッジに導かれる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
放射性合成装置の1個以上の活性検出器の相関係数を決定するための命令を含むコンピュータ可読プログラムコードを含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、コンピュータ可読プログラムコードの実行によって請求項1記載の適用段階をプロセッサに実施させる、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項8】
放射性合成装置の1個以上の活性検出器について決定された相関係数を適用するための命令を含むコンピュータ可読プログラムコードをさらに含み、コンピュータ可読プログラムコードの実行によって請求項1記載の決定段階をプロセッサに実施させる、請求項記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項9】
自動放射性合成装置を較正する方法であって、放射性合成装置はそれと動作可能に付属した複数の個々の活性検出器を有し、
放射性合成装置の各活性検出器の近傍に、既知の活性と既知の時間減衰相関係数とを有するγ線源を含む較正標準を所定の時間間隔で用意する段階と、
各活性検出器からの活性データを、較正標準がその近傍にある時に記録する段階と、
個々の活性検出器に対する相関係数Cfを、
f=(x/y)×z
(式中、xは較正標準の既知の活性であり、yは特定の個々の活性検出器で記録された活性データであり、zは較正標準に対する時間減衰相関係数で定義される減衰である)
として決定する段階とを含む方法。
【請求項10】
γ線源が陽電子放射性同位元素である、請求項記載の方法。
【請求項11】
トレーサーが合成される合成操作の間に記録された個々の活性検出器による活性の測定値に、相関係数を適用する段階をさらに含む、請求項記載の方法。
【請求項12】
放射性医薬品の合成時に各活性検出器において1秒間隔で記録された1組のデータを含むデータ収集ファイルを構築する段階をさらに含む、請求項記載の方法。
【請求項13】
較正標準を用意する段階が、合成装置にカセットを接続する段階をさらに含み、カセットは各活性検出器に較正標準を通導するバルブ及び導管を含み、カセットは放射性合成装置によって操作される、請求項記載の方法。
【請求項14】
較正標準が、合成装置の第1の活性検出器の近傍にあるQMAカートリッジに導かれる、請求項記載の方法。
【請求項15】
放射性合成装置の1個以上の活性検出器の相関係数を決定するための命令を含むコンピュータ可読プログラムコードを含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、コンピュータ可読プログラムコードの実行によって請求項記載の決定段階をプロセッサに実施させる、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽電子放射断層撮影(PET)及び単光子放射断層撮影(SPECT)に用いられる放射性医薬品等の放射性医薬品の合成における品質保証のための較正及び正規化システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PET及びSPECT画像システムは、疾患の発見のための使用が拡大しており、そのような疾患(例えば腫瘍学及び神経学における疾患の状態)の早期発見及び確定診断を得るために有用である。例えば現在、PET及びSPECT検査の大部分が、癌の発見及び初期のアルツハイマー病の発見に関連している。時宜を得た効果的な治療を可能にするために、これらの疾患には早期診断が必要である。
【0003】
PET及びSPECT画像システムは、それぞれ陽電子放射性同位元素及びγ線放射性同位元素の、患者の組織中での分布に基づいて画像を生成する。同位元素は典型的には、陽電子放射性同位元素、例えば炭素−11、窒素−13、酸素−15若しくはフッ素−18、又はγ線放射性同位元素、例えばテクネチウム−99mを有するプローブ分子を含む放射性医薬品を注射することによって患者に投与される。放射性医薬品は容易に代謝され、体内に局限化され、又は体内でレセプター部位に化学結合する。いったん放射性医薬品が所望の部位に局限化されれば(例えばレセプター部位に化学結合すれば)、PET又はSPECT画像が作成される。
【0004】
公知の放射性医薬品の例としては、18F−FLT([18F]フルオロチミジン)、18F−FDDNP(2−(1−{6−[(2−[18F]フルオロエチル)(メチル)アミノ]2−ナフチル}エチリデン)マロニトリル)、18F−FHBG(9−[4−[18F]フルオロ−3−(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニン若しくは[18F]−ペンシクロビル)、18F−FESP([18F]−フルオロエチルスピペロン)、18F−p−MPPF(4−(2−メトキシフェニル)−1−[2−(N−2−ピリジニル)−p−[18F]−フルオロベンズアミド]エチルピペラジン)及び18F−FDG([18F]−2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコース)が挙げられる。
【0005】
放射性医薬品中の放射性同位元素は、例えば陽電子を放射して放射性崩壊を示す同位元素である。そのような同位元素は、典型的には放射性同位元素又は放射性核種といわれる。放射性同位元素の例としては18F、124I、11C、13N及び15Oがあり、それぞれ110分、4.2日、20分、10分及び2分の半減期を有している。
【0006】
このように放射性同位元素の半減期は短いので、対応する放射性医薬品の合成及び精製は迅速かつ効率的でなければならない。放射性医薬品に関する品質管理(QC)試験も、短時間で行なわなければならない。好ましくは、これらのプロセス(即ち、合成、精製及びQC試験)は、放射性医薬品中の放射性同位元素の半減期の充分な範囲内で完了すべきである。現在のところ、QC試験(例えば化学的収率及び化学的純度)は、主としてこれらが手動で行なわれているという理由で比較的遅いことがある。したがって、放射性医薬品の合成及び精製が高品質の放射性医薬品を所望の量で製造すべく効率的に進行しているということを保証するため、放射性医薬品の合成及び精製のプロセスの間にデータを採取し、解析し、得られたデータを解釈するシステム、構成要素及び方法に対するニーズがある。この解析により、放射性医薬品の合成及び/又は精製の前に、その間に又はその後に、変更を行なって、放射性医薬品の合成の際のいかなる欠陥をも補正することができる。本発明の実施形態により、放射性医薬品の合成時の実際のデータの採取及び解析並びに欠陥の補正を可能にする、そのようなシステム、構成要素及び方法が提供される。場所の間の比較を行なって、放射性医薬品の合成を行なう場所の地理的差異にわたる比較を可能にすることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2004/100490号
【発明の概要】
【0008】
例示的な実施形態には、放射性医薬品合成プロセスを監視する方法が含まれる。放射性医薬品合成プロセスに関するデータが放射性医薬品合成装置から得られる。データが解析される。データの1以上の特徴が同定され、その1以上の特徴は放射性医薬品合成プロセスに関する品質管理要素に関連する。そのデータの1以上の特徴が抽出される。抽出されたデータが解析される。
【0009】
別の例示的な実施形態には、それと動作可能に付属した複数の個々の活性検出器を有する自動放射性合成装置で放射性合成を実施する方法が含まれる。本方法には、放射性合成装置の各活性検出器の近傍に、γ線源(好ましくは陽電子放射性同位元素)を含む較正標準を所定の時間間隔で用意することが含まれ、γ線源は既知の活性と既知の時間減衰相関係数とを有している。各活性検出器からの活性データは、較正標準がその近傍にある時に記録される。個々の活性検出器に対する相関係数Cf以下の通り決定される。
f=(x/y)×z
式中、xは較正標準の既知の活性であり、yは特定の個々の活性検出器で記録された活性データであり、zは較正標準に対する時間減衰相関係数で定義される減衰である。本方法により放射性合成装置を用いてトレーサーが合成され、この合成には、トレーサー合成時に個々の活性検出器によって検出される活性の測定値に対して、その活性検出器について決定された相関係数Cfを適用する段階が含まれる。
【0010】
本発明のさらに別の例示的な実施形態には、それと動作可能に付属した複数の個々の活性検出器を有する自動放射性合成装置を較正する方法が含まれる。本方法には、所定の時間間隔で、放射性合成装置の各活性検出器の近傍で、望ましくは陽電子放射性同位元素であるγ線源を有する較正標準を用意することが含まれ、γ線源は既知の活性と既知の時間減衰相関係数とを有している。各活性検出器からの活性データは、較正標準がその近傍にある時に記録される。個々の活性検出器に対する相関係数Cf以下の通り決定される。
f=(x/y)×z
式中、xは較正標準の既知の活性であり、yは特定の個々の活性検出器で記録された活性データであり、zは較正標準に対する時間減衰相関係数で定義される減衰である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の例示的な実施形態による、PET又はSPECT造影剤を製造及び使用しデータ収集ファイルデータを抽出するための方法を示す図である。
図2A】本発明の例示的な実施形態による、データ収集ファイルの例示的な第1部を示す図である。
図2B】本発明の例示的な実施形態による、データ収集ファイルの例示的な第2部を示す図である。
図3】例示的な実施形態による、データ収集ファイルデータのプロットを示す図である。
図4】例示的な実施形態による、合成装置の構成要素を重ねたデータ収集ファイルデータのプロットを示す図である。
図5】例示的な実施形態による、産出段階を示すデータ収集ファイルデータのプロットを示す図である。
図6】例示的な実施形態による、予測収率と報告された収率の組を示す図である。
図7A】例示的な実施形態による、データ収集ファイルデータのプロットの一部を示す図である。
図7B】例示的な実施形態による、データ収集ファイルデータのプロットの一部を示す図である。
図8】例示的な実施形態による、最終精製段階の間のデータ収集ファイルデータの一連の軌跡のプロットの一部である。
図9A】例示的な実施形態による、異なる合成場所からのデータ収集ファイルデータの軌跡を示す図である。
図9B】例示的な実施形態による、異なる合成場所からのデータ収集ファイルデータの軌跡を示す図である。
図9C】例示的な実施形態による、異なる合成場所からのデータ収集ファイルデータの軌跡を示す図である。
図10】例示的な実施形態による、図9A図9Cの軌跡に対応するデータ表を示す図である。
図11】本発明の例示的な実施形態による、合成装置の検出器を較正した後の自動合成装置の活性プロット又は軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のこれらの及びその他の実施形態並びに利点は、例として本発明の種々の例示的な実施形態の原理を説明する添付の図面と組合せた、以下の詳細な説明によって明らかとなる。
【0013】
本明細書に記載した本発明の実施形態が幅広い有用性及び用途を有することは、当業者には容易に理解される。したがって、本発明は例示的な実施形態に関連して詳細に本明細書に述べられているが、本開示は実施形態の説明及び例であって、例示的な実施形態の開示を可能にするためのものであることを理解されたい。本開示は、本発明の実施形態を限定し、又はその他の実施形態、応用、変形、改変及び均等による再構成をも排除すると解釈することを意図していない。
【0014】
本発明の例示的な実施形態による様々な構成及び特徴について以下に説明が提供される。これらの構成及び特徴は、放射性医薬品及び放射性同位元素を含むその他の化合物又は製剤の品質管理のためのシステム及び方法を提供することと関連している。ある特定の用語及び適用の種類又はハードウェアが記載されるが、その他の名称及び適用又はハードウェアの使用が可能であり、提供される用語は非限定的な例としてのみ提供される。さらに、特定の実施形態が記載されるが、これらの特定の実施形態は例示的かつ非限定的であることを意味しており、それぞれの実施形態の特徴及び機能は当業者の能力の範囲内の任意の組合せにおいて組合せられることをさらに認識されたい。
【0015】
図は例示的な実施形態に付随する種々の機能性及び特徴を示している。単一の説明的なブロック、サブシステム、デバイス又は構成要素が示されているが、これらの説明的なブロック、サブシステム、デバイス又は構成要素は、種々の応用又は様々な応用環境のために拡大することができる。さらに、これらのブロック、サブシステム、デバイス又は構成要素をさらに組合せて統合されたユニットとすることができる。さらに、ブロック、サブシステム、デバイス又は構成要素の特定の構造又は型が示されているが、この構造は例示的かつ非限定的であることを意味しており、記載した機能を実現するためにその他の構造によって置き換えることもできる。
【0016】
本発明の例示的な実施形態は放射性医薬品の自動合成システムに関連しており、そのようなシステムはまた本明細書において「合成装置」又は「放射性合成装置」を意味して用いられている。「自動」という用語は、合成装置がトレーサーを製造するための放射性合成操作においてある段階を実施させるためにプログラムされていることを意味する。合成システムによって、PET又はSPECTスキャナーに用いるための放射性医薬品を製造することができる。例えば、合成システムはGE Healthcare、Liege、BelgiumのFASTlab(登録商標)システムであってよい。本明細書に記載した実施例におけるFASTlabシステムの使用は例示的かつ非限定的であることを意味している。本明細書に記載した実施形態はGE Healthcare以外の会社によって製造された種々の合成システムにおいても用いることができることを認識されたい。本明細書において「放射性医薬品」、「放射性トレーサー」、「PETトレーサー」、又は「SPECTトレーサー」という用語の使用は例示的かつ非限定的であることを意味しており、1つの用語を述べることは記載した実施形態においてその他の用語によって置き換えることを排除するものではないことをさらに認識されたい。さらに、「活性検出器」という用語は、自動合成装置に組み込まれ、その近傍におけるγ線源、例えば陽電子放射性同位元素からの放射活性を検出する検出装置を意味する。そのような活性検出器は当技術分野で周知である。
【0017】
本発明により、用いる自動合成デバイスの活性検出器を正規化することによって、放射性医薬品の自動合成が改良される。この正規化は、放射性医薬品の合成に先立って、例えば未反応の放射性同位元素、望ましくは放射性トレーサーに用いたものと同じ同位元素を、それぞれの検出器に通し、次いで合成運転の間の同位元素の移送中の損失を説明することによって実施され得る。異なる地域にある製造/合成場所において、FASTlab合成装置等の自動合成デバイスについて性能のばらつきが観察されるので、本発明はそれぞれの合成デバイスがその製造運転について最適化されることを保証するための方法を提供する。即ち、本発明は、自動放射性合成装置で放射性合成を実施するための方法、及び自動放射性合成装置を較正する方法を提供し、それぞれの場合、放射性合成装置には1個以上の活性検出器が含まれている。
【0018】
それと作動的に関連付けられた1個以上の活性検出器を有する自動放射性合成装置で放射性合成を実施するための本発明の方法において、本方法には、所定の時間間隔で、放射性合成装置の各活性検出器の近傍で、陽電子放射性同位元素等のγ線源を有する較正標準を用意することが含まれ、同位元素は既知の活性と既知の時間減衰相関係数とを有している。各活性検出器からの活性データは、較正標準がその近傍にある時に記録される。個々の活性検出器の相関係数Cf以下の通り決定される。
f=(x/y)×z
式中、xは較正標準の既知の活性であり、yは特定の個々の活性検出器で記録された活性データであり、zは較正標準に対する時間減衰相関係数で定義される減衰である。
本方法により放射性合成装置を用いてトレーサーが合成され、この合成には、トレーサー合成時に個々の活性検出器によって検出される活性の測定値に対して、その活性検出器について決定された相関係数Cfを適用する段階が含まれる。
【0019】
それと動作可能に付属した複数の個々の活性検出器を有する自動放射性合成装置を較正するための本発明の方法において、本方法には、所定の時間間隔で、放射性合成装置の各活性検出器の近傍で、陽電子放射性同位元素を有する較正標準を用意することが含まれ、同位元素は既知の活性と既知の時間減衰相関係数とを有している。各活性検出器からの活性データは、較正標準がその近傍にある時に記録される。個々の活性検出器の相関係数Cf以下の通り決定される。
f=(x/y)×z
式中、xは較正標準の既知の活性であり、yは特定の個々の活性検出器で記録された活性データであり、zは較正標準に対する時間減衰相関係数で定義される減衰である。
【0020】
本発明において「近傍で」という語句は、較正標準が活性検出器の検出範囲内に持ち込まれたということを意味している。望ましくは、較正標準は各活性検出器のできるだけ近くに持ち込まれる。より望ましくは、較正標準は合成運転の間に活性種が持ち込まれる各活性検出器のできるだけ近くに持ち込まれる。例えば、本発明は、較正が通常の合成カセット又は自動合成装置の活性検出器を較正するためのみに提供される特別に設計されたカセットのいずれかを用いて実施できることを意図している。合成装置における活性検出器の位置は固定されているので、検出器に対する標準の相対位置を合成操作の間の合成カセットの位置を模倣した位置とし、それにより標準と検出器との相対位置が不正確であることによる幾何学的影響を抑えることが望ましい。説明のためであって限定的ではないが、活性検出器の照準を合わせる際、本発明において望ましくは、較正標準の位置は合成装置におけるトレーサー合成操作の間に合成カセットがγ線源を提供するのと同じ活性検出器の近傍に調整され、それにより、検出された活性値の実際の値からの偏りが最小にされる。
【0021】
本発明のいずれかの方法において、較正標準は、合成されている若しくは合成されるべき放射性医薬品に用いられているのと同じ放射性同位元素を望ましくは含み、その中には、説明のためであって限定的ではないが、18F、11C、99mTc、67Ga、99Mo及び123Iからなる群から選択される放射性同位元素が含まれる。放射性医薬品合成装置は、SPECT又はPETスキャンの実施に関連して用いられる特定の放射性医薬品を製造するように構成されている。望ましくは、本方法には、放射性医薬品の合成時に各活性検出器において、既知の時間間隔、例えば1秒間隔で記録された1組のデータを有するデータ収集ファイルを構築する段階が含まれる。本発明により、単一の自動合成装置において互いに関連する検出器の全ての較正が提供される。したがって本発明により、製品を分注する際に、及び合成プロセスの間の重要なポイントにおいて、より正確に収率を計算することが可能になる。
【0022】
本発明のいずれかの方法において、各活性検出器に対する相関係数Cfの計算を手動で実施し、活性検出器の測定値に適用することができるが、計算は望ましくは自動的に実施される。同様に、各活性検出器への相関係数の適用は、補正された活性の測定値及び/又は補正された収率予測を計算することによって手動で実施することができ、又は合成装置を制御するコンピュータに手動又は自動で相関係数を入力することによって実施することができる。さらに、相関係数の適用は合成装置に搭載されたコンピュータによって自動的に実施することができる。即ち、本発明は、本発明のいずれかの方法によって活性検出器の相関係数を計算する段階を実施するための、実行可能なプログラムを有する非一時的コンピュータ可読記憶媒体を提供し、それによりコンピュータ可読プログラムコードを実行して、本発明のいずれかの方法のために放射性合成装置の活性検出器の相関係数を決定する段階をプロセッサに実施させることをさらに意図している。或いは、本発明は、放射性合成装置の活性検出器の出力に相関係数を適用するための命令を含むコンピュータ可読プログラムコードを含むコンピュータ可読記憶媒体を提供し、それによりコンピュータ可読プログラムコードを実行して、本発明の合成方法の適用段階をプロセッサに実施させる。
【0023】
本発明においては、較正標準の提供は放射性合成装置にカセットを接続することによって実施されることが意図されている。そのようなカセットは、望ましくは合成装置に用いるカセットを模倣している。説明のためであって限定的ではないが、放射性合成装置がFASTlab合成装置である場合には、デザインはFASTlabのカセットのデザインを模倣しており、それらを通して各活性検出器に較正標準を導くためのバルブ及び導管を含んでいる。そのようなカセットは、望ましくは実際の合成カセットと同様の方法で放射性合成装置によって操作される。即ち、カセットにはFASTlab合成装置に連動するマニフォールド、導管、ストップコックバルブ、並びに合成装置によって操作される場合には較正標準を各活性検出器に導くシリンジポンプ及び可動性流体ポートが含まれる。したがって、較正標準は放射性医薬品において用いられる放射性同位元素と同じ方法でカセットの中に導かれる。較正標準は、その活性及び活性減衰プロファイルが決定されるサイクロトロンから送達される。例えば、較正標準はカセットの入口ポートに導かれ、合成装置の第1の活性検出器の近傍にあるQMAカートリッジに導かれる。較正標準はまた、所望の時間において活性検出器のそれぞれを通過した後で、又はその近傍で、カセットの出口ポートを通ってカセットの外に導かれる。したがって本発明のカセット及び方法は、通常の合成操作の間に合成デバイスがそうするのと同様に、較正標準を合成デバイスの活性検出器のそれぞれに導くことができる。
【0024】
本発明は用いられる実際の合成デバイスに拡張することができ、合成デバイスが1つの活性検出器を有するか又は複数の活性検出器を有するかに関わらず、合成デバイスの各活性検出器に隣接して又はその近傍に、較正標準を導くことができる。即ち、本発明は、説明のためであって限定的ではないが、4、5、6、又はそれ以上の活性検出器を有する放射性合成装置とともに用いるために拡張することができる。
【0025】
放射性医薬品の自動合成に際して、通常、合成運転のデータ収集ファイルが作成される。例えば、FASTlabシステムによる放射性医薬品の合成運転ごとに、その運転に関する固有のログファイルが作成される。このファイルは、種々のセンサ及び放射活性検出器等のプロセスの一部である活性検出器を用いて合成の種々の点で収集したデータからなっている。データ収集ファイル中のデータは、ある時間間隔で収集される。例えばFASTlabシステムにおいて、ログファイルは、合成全体を通して1秒間隔で収集されたデータ及び6個までの異なる放射活性検出器によって測定されたデータ、並びにFASTlabシーケンスファイル中のプログラム可能なプロセスパラメータの設定値及び測定値(例えば反応器温度、圧力及びシリンジ位置)からなっている。データ収集間隔は調節でき、1秒ごと以外の異なる間隔(例えば5秒ごと又は10秒ごと)に測定することができる。データはそれぞれ、異なる間隔で(例えば1つの検出器では毎秒で別の検出器では5秒ごとで)、異なるセンサ又は放射活性検出器から収集することができる。
【0026】
ログファイル等のデータ収集ファイル中のデータは、グラフで提示した場合、任意の所与のFASTlab合成運転について診断的「指紋」を表わす。成功した合成運転の指紋が、確立されたデータに基づいて確立され得る。次いでその後の合成運転は、合成システムの成績を比較するために、成功した合成運転の指紋と比較される。次いで合成プロセスにおける欠陥又は問題領域を同定し、適切な対策を取ることができる。例えば、「良好」又は「受容できる」指紋からの偏りを決定し、合成プロセスにおける可能性のある問題領域(例えば、プロセスのどの段階に問題があるか、又は成績が期待した基準に達しないか)を同定することができる。この手法を用いて、多数の場所にわたる合成装置のプロセスを比較することもできる。そのような比較の一部として、以下に述べるように相関係数又は正規化係数を計算し、それぞれの運転からのデータを共通のベースラインに移して、異なる位置における異なる合成装置の間の正確な比較を保証することを可能にする必要がある。
【0027】
したがって、データ収集ファイルはそれぞれの合成運転に関する価値ある情報を提供することができ、例えば、同一の運転の間の変動を監視するため、合成運転に対する改変の影響を検討するため、トラブル解決のため、及びPETトレーサーの製造のセットアップの間のツールとして、用いることができる。したがってデータ収集ファイルデータの解析及び相関から有用な情報を得ることができる。例えば、データ収集ファイルデータから、例えば収率及び純度等の品質管理情報を抽出して解析することができる。そのような解析を通して、この品質管理情報に基づいて放射性医薬品合成プロセスを調節することができる。この解析プロセスによって、合成プロセスそれ自体から結果を決定することができるので、製造後の品質管理試験を省略できる可能性によって、品質管理手順を単純化することができる。
【0028】
センサ及び放射活性検出器等の活性検出器からの情報に加えて、データ収集ファイルには合成装置のシーケンスファイル中のプログラム可能なプロセスパラメータの設定値及び実際の測定値が含まれ得る。例えば、FASTlabログファイルには以下のプログラム可能なプロセスパラメータ、即ち、反応器ヒータ温度、窒素圧、真空及びシリンジ位置からのデータの測定が含まれる。したがって、活性検出器からの情報をデータ収集ファイルのプロセスパラメータと組合せて用いることにより、プロセス中の所与の段階及び作用に関する有用な情報が追加される。
【0029】
その他の例示的実施形態によれば、データ収集ファイルから得られる活性検出器の測定値を用いて、合成装置の反応成績を監視することができる。しかし上述のように、異なる位置又は場所に位置する異なる合成装置の間の測定値のばらつきを説明するために、放射活性検出器の測定を補正し、関連付ける必要がある。そのような補正を実施するために、較正又は正規化プロセスを用いてプロセスデータを標準化し、等価のベースライン上での比較を可能にする。例示的実施形態によれば、合成装置の基礎的シーケンスが用いられ、ここでは既知量の放射活性を有する試料が異なる放射活性検出器の近傍で合成装置を通過する。次いでそれぞれの検出器についての相関係数が、既知の放射活性量と比較した結果に基づいて計算され、データ解析の間に合成装置のプロセス成績を監視するために用いられる。異なる位置における装置がいったん較正され又は正規化されれば、得られるデータを収集し、異なる位置におけるばらつきを説明するためにさらに正規化することができる。そうすることで、異なる位置から収集したデータを意味があるように比較することができる。トラブル解決及び顧客サービス等の種々のサポート機能を異なる位置に提供するために、この収集されたデータを集中的に解析し保存することができる。
【0030】
上記のプロセスの間、試料は合成装置の流体路の全体を通過し、活性はそれぞれの放射活性検出器で測定される。プロセスの間、それぞれ合成装置を有する2つの場所、例えば場所A及び場所Bを比較する場合、データ収集ファイルは、Aにおける全ての検出器の測定値は期待値通りであるが、Bにおける1つの検出器、例えば検出器5の測定値が期待値より10%低いことを示す可能性がある。検出器が適切に機能し適切に整列していることが分かっていれば、その検出器に関連する系統的なエラーがあって検出器の測定値を低くしていることが推定される。データは場所A及び場所Bから中央データ収集場所に収集される。中央収集場所はデータを用いて場所Bの検出器からのデータを10%上方に正規化し、それにより場所Aにおける同じ検出器のデータを場所Bからのデータと比較することができる。いったん較正されれば、場所A及び場所Bは合成を進める。
【0031】
それぞれの合成装置は典型的には放射性医薬品の製造の間にデータ収集ファイルを作成する。データ収集ファイルの内容は同時に、又は合成運転が完了した後のある時点で、同じ中央データ収集場所に送信される。それぞれの場所で同じ放射性医薬品が合成されていると仮定して、場所Aと場所Bで作成されるデータを比較することができる。もちろん、場所Bのデータは、その検出器5の測定値が低いことが知られているという事実の理由を明らかにするために正規化して高くしなければならない。データはそれぞれの場所についての製造傾向又は課題を示し得る。例えば、データ収集ファイルデータは、場所Aの合成装置において固相抽出(SPE)回収は良好であったが、報告された収率は低かったということを示し得る。次いでこれらのデータは場所Aにおける合成装置のトラブル解決のための基礎を形成し得る。データを解析することにより、場所Aにおける問題に関して結論が引き出される。例えば、放射標識段階又は合成装置の他のある段階に低収率があったという結論になり得る。
【0032】
データ収集ファイルデータには多数の用途がある。例示的かつ非限定的な用途としては以下が挙げられる。
・合成装置におけるSPEプロセス等の精製プロセスの調節等のプロセス開発、
・ロバスト性試験:放射活性検出器のそれぞれについてのデータのグラフ表示はプロセスの「指紋」のようなものであるから、ロバスト性のあるプロセスは運転間で殆ど偏りを示さない、
・トラブル解決:確立されたデータに基づく成功した製造からの放射活性検出器のばらつきの傾向から、放射性合成における問題が発見され、突き止められる、
・PETトレーサー製造場所のセットアップのサポート、
・製造量の保証は患者のニーズに合致する(例えば適切な数の患者用量が製造されることの保証)、
・異なる合成装置の成績を決定するための、種々の場所における放射活性検出器の傾向の同定、
・合成装置のハードウェアの問題の同定、
・合成装置のシーケンスファイルプログラミング課題の同定、
・合成後の品質管理の単純化、
・遠隔地における顧客サポートの提供、
・データ収集ファイル、例えばログファイルの正規化。
【0033】
図1に、本発明の例示的実施形態による、PET又はSPECT造影剤の合成及び使用、並びにデータ収集ファイルデータの抽出の方法のフローチャートを示す。図1に示す方法100は、コンピュータ実行システム等の種々のシステム、構成要素及びサブシステムの1つ又は組合せによって、実行し又は実施することができる。図1に示すそれぞれのブロックは、例示的な方法100において実行される1以上のプロセス、方法及び/又はサブルーチンを表わす。
【0034】
ブロック102において放射性同位元素が製造される。放射性同位元素(例えば18F又は11C)は、典型的にはPET放射性同位元素にはサイクロトロン(例えばGE PETtrace700サイクロトロン)を用いて、又はSPECT放射性同位元素(例えば99mTcの製造)にはジェネレータを用いて製造される。サイクロトロン又はジェネレータは製造場所に設置してもよく、スキャナーの近傍に設置してもよい。サイクロトロン又はジェネレータをPET又はSPECTスキャナーの現場に設置することにより、放射性同位元素の移送時間を最小化することができる。本明細書においては「PET」及び「SPECT」に言及しているが、そのような例は例示的であって一方の記載は他方への応用を排除するものではないことを認識されたい。
【0035】
ブロック104において、放射性医薬品が放射性同位元素を用いて合成される。合成装置は、放射性同位元素を放射性リガンドと結合させるために用いられる。その結果が放射性医薬品である。合成装置は手動で操作してもよく、半自動操作でもよく、完全自動でもよい。例えば、GE Healthcare FASTlabシステムは完全自動合成装置である。一般に合成装置は、オペレータを放射性同位元素の放射能から遮蔽するため、「ホットセル」中で操作される。放射性医薬品の合成中、プロセスの間にデータを収集することができる。データは、合成プロセス中の種々の点における放射性検出器又はセンサの測定に対応している。データは種々の時間間隔で収集され、電子的に保存される。データは出力され、又はデータ収集ファイルの形態で保存される。合成装置には、それと対になり、放射性医薬品の合成に必要な種々の試薬並びにシリンジポンプ及びバイアル等のその他の装置を含むカセットが用いられる。カセットは取り外し可能で廃棄可能である。カセットは1以上の放射性医薬品の合成を支援するように構成されている。
【0036】
ブロック106において、合成された放射性医薬品が分注される。放射性医薬品の用量は患者に投与するため及びQC用の採取バイアルに分注される。バルク合成された放射性医薬品の試料は直接QCシステム及び/又はQC試験のためのカセットに分注され得る。QC試験のシステム及び方法は2011年8月22日に出願されたPCT出願番号US11/2011/048564に示されており、その内容は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0037】
ブロック108において、放射性医薬品試料についての品質管理チェックが実施される。1種以上のQCチェックが実施される。これらのQCチェックは自動化され得る。QCシステムには、試験を実施するための複数の構成要素を有するカセットが含まれ得る。カセットは、QCチェックを行なうためにQCシステムに挿入されるように構成されている。QCシステムはスタンドアローンシステムでもよく、上述の合成装置と一体化されていてもよい。放射性医薬品の用量は合成装置から分注される。1以上の分注されたバイアルからの試料はQCチェックのために選択される。これらの試料はQCシステムに注入されてよい。或いは、QCシステムを合成装置に接続し又は結合して、適切な試料が合成装置からQCシステムに直接送出されるようにしてもよい。
【0038】
ブロック110において、QC試験を行なった試料と同じ製造バッチからの用量が患者に投与される。
【0039】
ブロック112において、用量を受けた患者についてPET又はSPECTスキャンが実施される。
【0040】
ブロック114において、データ収集ファイルが合成装置から作成される。放射性医薬品の合成時に収集されたデータを含むこのファイルが作成される。本明細書に記載するように、データ収集ファイルはフォーマット化され、データを含み得る。或いは、ファイルのための他のフォーマットを用いてもよい。例えば、ファイルは上述のGE Healthcare FASTlabシステムによって作成されるようなログファイルであってよい。本明細書において、「データ収集ファイル」又は「ログファイル」という用語の使用は例示的かつ非限定的であることを意味しており、放射性医薬品プロセスの間に収集されたデータを含むそのようなデータ収集ファイルについて用いられる他の用語もある。データ収集ファイルは合成プロセスの間、任意の点で作成され得ることを認識されたい。
【0041】
データ収集ファイルは、ハードコピーフォーマットで作成してもよく、及び/又は電子的に保存してもよい。例えば、データ収集ファイルを、合成装置と通信可能に結合されたプリンタ等の出力デバイスによって印刷してもよい。或いは、データ収集ファイルを電子的フォーマットに出力し又は保存してもよい。例えば、合成装置は、電子的ディスプレイを有してもよく、又はデータ収集ファイルを電子的フォーマットに表示するためのコンピュータシステムと結合されてもよい。データ収集ファイルを、合成装置の内部又はその外部の電子的ストレージを用いて電子的に保存してもよい。例えば、合成装置は、ランダムアクセスメモリ等の一時的な、及び/又はフラッシュメモリ若しくはハードディスクタイプのストレージ等のより永続的な固相ストレージを有してもよい。
【0042】
合成装置は使用者とシステムとの相互作用を可能にする入力デバイスを有し得ることも認識されたい。これらの入力デバイスはシステムと通信可能に結合されている。例えば、合成装置は、QWERTY型キーボード、英数字パッド及び/又はポインティング入力デバイスを有し得る。入力デバイスの組合せも可能である。合成装置はコンピュータネットワークと通信可能に結合され得る。例えば、合成装置はローカルエリアネットワーク又は同様のネットワークと通信可能に結合され得る。そのようなネットワーク接続を通して、合成装置は、1以上の外部コンピュータ、コンピュータシステム及び/又はサーバと通信可能に結合され得る。実施形態によっては、合成装置はインターネットと通信可能に結合され得る。合成装置はコンピュータネットワークと無線で接続してもよく、有線インターフェースで接続してもよい。合成装置はコンピュータネットワークを通じてデータを送信及び受信することができる。例えば、データ収集ファイルは、コンピュータネットワークを通じて別のコンピュータシステム又はサーバに送信することができる。他のコンピュータシステム又はサーバは、合成装置とは地理的に別の場所に遠く離れて存在し得る。
【0043】
さらに、合成装置はコンピュータで実行することができ、そのため合成装置は、1以上のコンピュータプロセッサ、電力源、コンピュータメモリ及びソフトウェアを含む。上述のように、合成装置は1以上の外部コンピュータシステムと通信可能に結合され得る。例えば、合成装置は有線若しくは無線又は両方の組合せによってコンピュータネットワークを通して外部コンピュータシステムと通信可能に結合させることができる。外部コンピュータシステムは、合成装置を操作する命令を送るとともに、データ収集ファイルからデータを収集し、解析することができる。このコンピュータのハードウェア及びソフトウェアの組合せにより、合成装置を自動的に操作し、ある種のデータ収集、データの解析、及びデータから誘導される因子の補正の実行を実施させることができる。
【0044】
ブロック116において、データ収集ファイルが解析される。例示的実施形態によれば、データ収集ファイルは本明細書に記載するようにして解析される。解析の一部として、ある種の因子及び情報がデータ収集ファイルから集められる。これらの因子及び情報を用いて、放射性医薬品プロセスは変更され、改変され及び/又は調節される。例えば、低収率が示されると、プロセスは効率的に操作されていないことがデータ解析によって決定され得る。非限定的な例として、これは反応容器中の問題を示している場合がある。修正又は改変が実行される。そのような修正又は改変は、オペレータによって手動で適用されてもよく、又はコンピュータシステムを通して発せられる命令に基づいて合成装置によって自動的に実行されてもよい。実施形態によっては、システムは完全に自動化されており、解析を実施しプロセスの補正又は改変を実行するために、外部の介入を必要としない。
【0045】
図2A及び図2Bに、例示的実施形態によるデータ収集ファイルを示す。例えば、図2A及び図2BはFASTlabシステムのログファイルを示す。図2Aはデータ収集ファイルの第1部200Aを示し、図2Bはデータ収集ファイルの第2部200Bを示す。第1部及び第2部はデータ収集ファイルの部分である。即ち、図2A及び図2Bは共に横に並べられて、例示的なデータ収集ファイルを形成してもよい。或いは、データ収集ファイルを、示されているように分割してもよく、例えば多数のセクションに分離してもよい。データ収集ファイルは示されたものと異なるセクションに分割してもよいことを理解されたい。このデータ収集ファイルは、例えば方法100に示されるように生成されたデータを含むデータ収集ファイルを表わし得る。
【0046】
図2A及び図2Bに示すように、データ収集ファイルは、下のデータカラムそれぞれについての標識を伴うヘッダ行202を有する。ヘッダ行202における例示的なカラム標記を図2A及び図2Bに示す。データ収集ファイルには追加の又はより少ないカラム標記が含まれてもよいことを認識されたい。さらに、カラムのそれぞれに示されたデータ及びデータのフォーマットは例示的かつ非限定的であることを意味している。これらのデータはFACBCの例示的な放射性医薬品合成プロセスの間に収集されたデータを示すことを意味しており、これは非限定的な例として用いられている。図2Aに示すように、データ点は1秒間隔で示されている。(ヘッダ行202で表記された)データカラムのそれぞれは、放射性医薬品プロセスにおける点又は状態を表わしている。異なる放射活性検出器から収集されたデータが示されている(「活性検出器No.N」と表記されており、「N」は検出器の番号である)。これらの放射活性検出器はその近傍における放射活性を測定する。本明細書に記載した活性検出器は例示的な位置に置かれていることを認識されたい。より多い又はより少ない活性検出器を用いることができ、活性検出器の位置は合成装置及びカセットに関連してカスタマイズすることができる。
【0047】
図3に、例示的実施形態によるデータ収集ファイルデータのプロットを示す。プロット300は、図2A及び図2Bの例示的なデータ収集ファイルに示されたデータ等のデータ収集ファイルデータのプロットを表わしている。プロット300には説明302が付されている。見て分かるように、プロット300は活性検出器No.1、2、4及び5の活性検出器データのプロットである。プロット300は経過時間306に対して測定活性304をプロットしている。データ収集ファイルプロットの詳細な説明は以下の図4にある。詳細はプロット300等の他のデータ収集ファイルプロットに同様に適用される。
【0048】
図4に、放射性医薬品合成プロセスの構成要素と重ねてプロット400を示す。説明402に示すように、プロット400は3つの異なる検出器における活性のプロットである。プロット400は上述のプロット300にプロットしたものと同一のデータを表わす。プロット300及び400は放射性医薬品合成プロセスの間の活性を示す。具体的には、非限定的な例として、プロット300及び400はフルシクラチドの合成で得られたデータ収集ファイルを示す。
【0049】
例示的な放射性医薬品合成プロセスは、図4に示すようにプロット400の上に重ねられる。この例示的なプロセスは18Fを用いたフルシクラチドの製造に関して記載しているが、プロセス及び構成要素の基礎は当技術分野で理解される適切な改変を伴うその他の放射性医薬品の製造に用いられることを認識されたい。プロセスは、例えばサイクロトロン中で95%18O−濃縮水ターゲットに16.5MeVの陽子ビームを照射することによる核反応18O(p,n)18Fで得られる[18F]の精製から始まる。放射活性種は18FがトラップされるQMAカートリッジ404において収集され、不純物が除去され、続いて18Fが流路406に溶出して反応容器408に入る。反応容器408の中で18Fは最初に乾燥段階で条件調整され、残留した水等の溶媒が除去され、それにより18Fの活性が上昇する。次に、408aにおいて、反応容器408の中で、4−トリメチルアンモニウムベンズアルデヒドが18Fで標識され、それにより4−トリメチルアンモニウム部分が18Fによって置き換えられる。得られる4−[18F]ベンズアルデヒド(FBA)は、412aで示すFBAの精製のためのMCXカートリッジ412に流路410で移送される。FBAは流路414で反応容器408に逆送され、408bでフルシクラチドの前駆体AH111695と複合し、408cに示すようにフルシクラチドを形成する。この反応を以下のスキームIに詳細に示す。
【0050】
【化1】
次に流路416を用いて、フルシクラチドは2つのSPEカートリッジのうちの第1(418)に移送され、それを通過する。第1のSPEカートリッジ418から得られたフルシクラチドは、続いてさらなる精製のために第2のSPEカートリッジ420に移動する(SPEカートリッジ418及び420は、tC2 SPEカートリッジとも称する)。フルシクラチドは422においてシリンジ424に移送され、それを通して426で製品収集バイアル(PCV)428に移送される。図4には2つのSPEカートリッジが示されているが、合成装置は1個又は2個以上のSPEカートリッジを有してもよく、SPEカートリッジは異なる形式及び構成であってもよい。
【0051】
例示的実施形態によれば、活性検出器No.1はQMAカートリッジの近傍に位置し、活性検出器No.2は反応器の近傍に位置し、活性検出器No.5はシリンジ又は製品収集バイアルに繋がるプロセス出口の近傍に位置する。
【0052】
QMAカートリッジを出て反応器に入る18Fの溶出は、プロットのセクション450における活性検出器No.1の軌跡の急激な低下及び活性検出器No.2の軌跡の急激な上昇によって示されている。約1000秒(プロットのセクション452における)後の活性検出器No.2の軌跡の「ジャンプ」は、溶媒を蒸発させた後で前駆体を反応器中に移送した際に反応器中の体積が上昇したことに起因する。この上昇は、反応器中の体積の増大に伴って活性種が検出器の近くに移動したことによる。標識プロセスの間、体積は一定であり、この平坦な部分(プロットのセクション454)の勾配はフッ化物[18F]の減衰を説明する。活性検出器の感度は充分に高く、前駆体を添加した際の反応器中の「飛び跳ね」さえも検出する。MCXカートリッジによるFBAの精製は、活性検出器No.2の軌跡の低下と、それに続く、プロットのセクション456における、FBAがMCXカートリッジの中にトラップされる間の低く平坦な部分によって説明される。換言すると、MCXカートリッジの近傍には検出器は配置されていない。活性種が反応器に逆送されると、軌跡は再び上昇する。示された経過時間はシーケンスの開始に関連し、合成全体の開始に関連しないことを理解されたい。シーケンスを開始した後、最終的な後発のフッ化物を待ちながら、所与の段階においてある期間だけ合成装置を運転せずに置くことができる。進行させる前に合成装置のダイアログボックスをチェックする必要がある場合もある。シーケンス時間の開始は、このボックスがチェックされた時である。
【0053】
第2の合成段階の後、プロットのセクション458に示すように、最終精製のために生成物を2つのSPEカートリッジから外に移送するときに、活性検出器No.2の軌跡は低下する。生成物がSPEカートリッジから溶出し、製品収集バイアルに移送されるとき、生成物は活性検出器No.5の傍を通る。
【0054】
図5に、例示的実施形態によってデータ収集ファイルデータからどのようにある種の情報、具体的には収率情報が集められるかを示すプロットを示す。プロット500は図4のプロットと同様のプロットを示す。総収率502は第1収率段階504と第2収率段階506の合計である。これらの収率値は、プロセス全体の成績を評価するとともに、プロセスの問題領域を同定するためにも用いることができる。例示的実施形態によれば、システムについて例示的収率を有する例示的又は「標準」プロセスを決定することができる。例示的プロセスの間に収集される得られたデータ、例えば活性検出器の測定値がプロットされる。収率は図5に示すように決定することができる。
【0055】
この得られたプロットは、システムの例示的「指紋」を形成することができる。次いでシステムを用いて行なったその後の運転を、この例示的プロセスと比較することができる。上述のようにデータ収集ファイルデータのプロットを通して、指紋からの偏りに気付くことができる。この比較におけるプロットの解析から、システム及びそのプロセスにおける問題を容易に同定し、引き続いて補正することができる。例示的実施形態によれば、図3に示す軌跡が最適なプロセスの指紋だとすれば、(例えばその後の合成運転からの、又は異なる場所における装置からの)その後の軌跡をそれと比較することができる。その後の軌跡の指紋が任意の領域(例えば検出器1、2、3、4又は5でカバーされる領域)において顕著に(例えば2%超、5%超、10%超又は15%超て)変動すれば、オペレータは(又は合成装置が自動的に)適切に進行していない合成段階を診断することができる。例示的実施形態によれば、第1収率段階504及び第2収率段階506における変動は、プロセス中のどこで問題が起こっているか、[18F]FBAを形成する標識段階か、[18F]フルシクラチドを形成する複合段階か、又は合成プロセスに関与するいずれかの精製段階かを同定するために用いることができる。
【0056】
図6に、例示的実施形態による1組の収率予測を示す。表600はデータ及び収率の予測を表わす。データは例示的かつ非限定的である。例示的実施形態によれば、データはカラム602に示すように同じ装置におけるいくつかの合成運転から集められる。或いは又はこれと同時に、これらのデータはいくつかの位置又は場所からも集められる。これらの場所は地理的に離れていることがあり、それぞれの場所ではその合成装置において放射性医薬品のプロセスを運転している。予測収率、この場合においては同じ装置におけるいくつかの運転からの予測収率が、カラム604にある。報告された収率はカラム606にある。予測収率はプロット500等のプロットから得られた収率に基づいて計算される。
【0057】
データ収集ファイルデータから集められた収率データは放射性医薬品の報告された収率と一致することが認識される。報告された収率は、上の図5に示すように、第1及び第2の収率を総収率と比較することによって決定される。これらの量の間の相違は百分率収率である。プロセスにはいくつかの段階及び作用があって、これは例示的な比較であり、総収率を決定するためには追加的な段階及び作用を考慮に入れる必要があることを認識されたい。合成装置のデータ収集ファイルから総収率データを集めることができるのは有利である。なぜならば、そのような決定によって、製造後、製造された放射性医薬品のいずれかを患者に投与する前に、試料について実施しなければならないQC評価を1回少なくでき、それにより時間と資源を節約することができるからである。
【0058】
収率データに加えて、データ収集ファイルから純度データを集めることもできる。図4及び図5に示されていない検出器の1つが活性検出器No.4である。この検出器は、図4に示すSPEカートリッジ418及び420としての2つのSPEカートリッジの近傍に位置している。この検出器からのデータは図4及び図5に示されていないが、それにもかかわらず合成運転の間に収集される。このデータをプロットすると、図7A及び図7Bに示す軌跡が得られる。これらの軌跡は例示的のみであることを認識されたい。
【0059】
図7A及び図7Bは、合成反応の一部についての活性検出器No.4からの活性の軌跡702及び704をそれぞれ示す。両方の図は異なる運転からの複数の軌跡のプロットを含む。例えば、図7Aは説明702によって示される特定の場所における複数の運転からの軌跡を示す。図7Bは、説明704に示すように、SPEカートリッジが3つの異なる温度に保たれている間に得られた3つの異なる軌跡を示す。活性検出器No.4によって読み取られた最高の若しくは最大の活性と、検出器によって読み取られた最小の活性とから測定される活性の変化を、任意の所与の合成運転において製造された放射性医薬品中に存在する不純物のレベルに相関させることができることが、これらの軌跡から認められる(軌跡のセクション706によって示される軌跡の右側部分を参照して)。例えば図7Aにおいて、セクション710等の任意の所与の軌跡の最大値とセクション712等の任意の所与の軌跡の最小値との間の活性の変化が小さければ、不純物レベルが高いことに相関付けられる。対照的に、セクション714等の任意の所与の軌跡の最大値とセクション716等の任意の所与の軌跡の最小値との間の活性の変化が大きければ、不純物レベルが低いことに相関付けられる。
【0060】
図7Bもこの挙動を示し、この場合は、FACBCとしても知られる放射性医薬品anti−1−アミノ−3−[18F]フルオロシクロブタン−1−カルボン酸の合成についてである。軌跡720は27℃における活性を示し、全不純物量106μg/mLを有する。軌跡722は30℃における活性を示し、全不純物量56μg/mLを有する。また軌跡724は28℃における活性を示し、全不純物量79μg/mLを有する。軌跡の挙動はこれらの不純物レベルを示す。図7Bから、軌跡720の点730からその最低値732までの距離は、軌跡722及び軌跡724の同様な点のいずれかよりもはるかに小さいことが分かる(例えば軌跡722の点734から最小値736までの距離は、軌跡720におけるそれよりも大きい)。同様の解析を軌跡724(最高点及び最低点がそれぞれ738及び740と表記されている)についても実施することができる。特定の時間における軌跡の特定の部分を、高い点及び低い点の測定のために指定することによって、異なる軌跡の測定値の間の一貫性を保証することができる。
【0061】
データ収集ファイルから、合成運転の間、あるプロセスがどのように効果的かに関するデータを集めることもできる。図8は、特定の場所における最終のSPE精製段階の間の活性検出器No.5における活性を示す運転の部分を示す一連の軌跡のプロット800を示す。プロット800は例示的かつ非限定的である。説明802が付されている。表804は運転番号とSPEの回収率と報告された収率の概要を示している。
【0062】
プロット800に示した軌跡の挙動を解析し、そこから結論を導き出すことができる。例えば、運転J181(説明802及び表804において806と表記されている)に対応する軌跡及びデータに焦点を当てて、ある挙動を見ることができる。例えば、SPEの回収率と報告された収率との間の大きな差分は、合成プロセス、特に標識段階(例えば問題の放射性医薬品が[18F]フルシクラチドである場合には[18F]FBAを得る段階)に問題があることを通常は示している。運転J181の場合、[18F]フルシクラチドの合成において、そのように大きな差分は[18F]FBAを得る標識段階に問題があることを示している。実際上、全ての段階及び作用は監視され、異常な兆候を検出することができることを認識されたい。例えば、典型的でないシリンジの動きを、データ収集ファイルを通じて検出することができる。活性検出器は、合成プロセスの間の特定の段階又は作用の帰結又は結果を捉えることができる。したがって、作用、例えば典型的でないシリンジの動きが生産の結果に影響したか否かを知ることができる。
【0063】
この運転に対応するデータは、図6の610においても見ることができる。データ610は、段階においてフッ素化率が45%と低いことを示している(表600の標識収率の欄に示されている)。これに基づいて、図8のこの運転に対応する軌跡808は、ある様式で挙動している。例えば、軌跡808は図800の後の部分における他の運転よりも高い活性を有する。この種の挙動に注目することにより、特定の合成プロセスへの、及びそれぞれの段階において起こっていることへの洞察力のある観察が可能になる。これらの観察はデータ及びそれから得られる軌跡の解析から行なうことができる。
【0064】
図9A図9Cはそれぞれ、3つの異なる製造場所からのデータ収集ファイルデータに基づく活性プロット又は軌跡を示す。非限定的な例として、図9Aはノルウェーの場所における製造運転を表わし、図9Bはスウェーデンの場所における製造運転を表わし、図9Cは英国の場所における製造運転を表わす。それぞれの運転は、ここでは非限定的な例としてFASTlabシステムである合成装置を用いた、フルシクラチドの合成運転である。それぞれの図で見られるように、活性検出器No.1、2、4及び5に対応するデータがそれぞれにプロットされている。それぞれの図9A図9Cの説明902、904及び906は、各活性検出器についての軌跡への参照を提供する。見て分かるように、それぞれのプロットは構造及び形状において上述の図3及び図4に示すものと同様である。それは、これらのプロットが図3及び図4に示したものと同じ装置及びプロセスを用いて得られたからである。
【0065】
図9A図9Cを比較すると、異なる製造場所及びその特定の製造装置の間で、相対的ピーク高さ、例えば活性検出器No.1(QMA)と活性検出器No.2(反応器)の測定値に差があることが分かる。理想的な場合には、活性検出器No.1とNo.2との測定値は殆ど同じであるべきである。それは、QMAからの回収活性は99%を超えるので、QMAを出て反応器に入る活性種の量は殆ど同じであると推定されるからである。同じ変動が活性検出器No.2とNo.5の間でも見られる。(上述のように)活性検出器No.2とNo.5との間の差は総収率の予測に用いられる。したがって、これら2つの検出器の不正確さは、収率予測の正確さに影響する。図6に示すデータ(これは図9Aに対応するデータを表わす)において、推定された収率と報告された収率との間の相関が観察される。しかし、他の合成装置、例えば図9B及び図9Cにおいて同じ推定を行なうと、活性検出器No.2とNo.5との間の変動の影響が見られる。図10にはこのデータが含まれている。図10図9A図9Cのプロットに対応するデータ表を示す。「NMS」と表記したデータ1002は図9Aに対応し、「UI」と表記したデータ1004は図9Bに対応し、「TGC」と表記したデータ1006は図9Cに対応する。収率データにおける相違は活性検出器による測定の相違に起因すると思われる。
【0066】
図10に見られるように、収率予測の正確さは場所及び特定の合成装置の間で変動する。合成装置による製造の解析データをトラブル解決又はその他の検討に用いるため、データ収集ファイル、例えばログファイル(上述の)からのデータが合成装置から抽出され、解析される。図9A図9Cのようなプロットが作成される。しかし、合成装置の間で変動があるため、同じ場所であっても、データ解析は直接比較できない。反応成績を監視するためには、活性動向が有用なツールである。
【0067】
活性検出器による測定を補正する方法について記載する。異なる活性検出器の近傍を既知量の活性種が通過する基礎的な合成装置シーケンス。これは、(合成運転が行なわれる場合に行なわれるように)カセットを合成装置に取り付けることによって行なわれる。カセットは、必要な測定を助けるために特に構成されたカセットでもよく、又は改変することもあるが市販のカセットを用いてもよい。化学反応は必要でない。必要な操作はトラッピング及び正確に知られた量のQMAカートリッジの溶出、並びにこれに続く、シリンジの動作とガス圧を用いた、溶出した18F−フッ化物溶液のカセット周囲における動きである。次いで、以下の例に示すように、それぞれの検出器に対する相関係数を計算することができる。
【0068】
活性種がサイクロトロンから到達すると、その活性はイオンチャンバーにおいて正確に測定される。説明のため、この例において合成装置に移送される正味の活性を100GBqとする。合成装置において、活性検出器No.1の測定値を80GBq、活性検出器No.2の測定値を110GBq、活性検出器No.5の測定値を90GBqとする。次いで測定値を崩壊に対して調節する。本例を単純化するため、崩壊の補正は含めない。次に測定値に基づいて、この特定の合成装置に対する相関係数は以下のようになる。
・活性検出器No.1に対する相関係数:100/80=1.25
・活性検出器No.2に対する相関係数:100/110=0.91
・活性検出器No.5に対する相関係数:100/90=1.11。
【0069】
特別に設けた任意の追加的検出器を含む他の検出器についてのデータも、もちろん同じ方法で得ることができ、相関係数を計算することができる。次いでデータ収集ファイルのデータ解析の間に、相関係数を用いることができる。この方法論においては合成装置のシステムのプログラミングを改変する必要はないが、プログラミングを改変して、相関係数が自動的に決定され、適用されるようにすることも意図される。検出器のチェックは容易なので、計算はPETトレーサー製造のセットアップの一部であってよいことを認識されたい。この操作を定期的に繰り返して、検出器を較正する必要があるか否かを判断することができる。この操作を異なる活性種について繰り返して、放射性検出器の直線性を制御することができる。さらに、この操作を複数の場所にわたって実施することができ、相関係数を用いることによって、これらの複数の場所にわたって活性測定器の測定値を比較することができる。追加的な相関係数を計算し、合成装置からのデータを他のベースライン又は標準と比較することができることをさらに認識されたい。
【0070】
図11に、合成装置の検出器を較正した後の製造場所における自動合成装置についての活性プロット又は軌跡を示す。例えば活性検出器No.1(QMA)と活性検出器No.2(反応器)の測定値の間の相対的ピーク高さから較正後の検出器の測定値が得られ、これは合成プロセスを通した活性種の移送と一致する。活性検出器No.1の測定値は活性検出器No.2の測定値より大きく、合成プロセスが実施される際の放射活性の崩壊及び活性種の損失の両方を示している。検出器のこの正確な相対的較正により、活性検出器の測定値に基づいたより正確な収率計算又はその他の推測が可能になる。
【0071】
以上の記載には細部及び具体例が含まれているが、これらは説明の目的のみに含まれているものであり、本発明を限定するものと解釈すべきではないことを理解されたい。
【0072】
以上に実施形態を詳しく示し記載したが、当業者によって本発明の範囲から逸脱することなく変更及び改変することが可能であることが認識される。さらに、当業者は、そのようなプロセス及びシステムは本明細書に記載した具体的な実施形態に限定される必要はないことを理解する。その他の実施形態、本実施形態の組合せ、並びに本発明の使用及び利点は、本明細書に開示した本発明の明細事項及び実行を考慮することによって、当業者には明白になる。明細事項及び実施例は例示的なものと考えられたい。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11