【文献】
BENNY BANG-ANDERSEN,DISCOVEY OF 1-[2-(2, 4-DIMETHYLPHENYLSULFANYL)PHENYL]PIPERAZINE(LU AA21004): 以下省略,JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,2011年 5月12日,V54 N9,P3206-3221
【文献】
BENNY BANG-ANDERSEN,DISCOVEY OF 1-[2-(2, 4-DIMETHYLPHENYLSULFANYL)PHENYL]PIPERAZINE(LU AA21004): 以下省略,JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY [ONLINE],2011年 4月12日,V54 N9,P S1-S45,URL,http://pubs.acs.org/doi/suppl/10.1021/jm101459g/suppl_file/jm101459g_s1_001.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Rが、−C(=O)O−W、−C(=O)−W、boc、BnおよびCbzから選択される保護基を表し、ここで、Wが、アルキルまたはアリールを表す、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
前記請求項において得られる前記生成物を、適切な酸と反応させて、前記保護基(Rが保護基である場合)を除去し、および/または所望の薬学的に許容できる塩を得る工程をさらに含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願の国際公開第03/029232号パンフレットおよび国際公開第2007/144005号パンフレットには、様々な製造経路を含む化合物1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンが開示されている。この文献の残りの部分には、1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンおよびその薬学的に許容できる塩が、化合物Iまたは化合物I XX(XX塩への言及が望ましい場合)として言及されている。
【0003】
化合物Iは、5−HT
3、5−HT
7および5−HT
1D受容体におけるアンタゴニスト、5−HT
1A受容体におけるアゴニストおよび5−HT
1B受容体における部分アゴニストおよびセロトニン輸送体の阻害剤である。さらに、化合物Iは、脳の特定の領域において、神経伝達物質であるセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミン、アセチルコリンおよびヒスタミンのレベルを高めることを示した。これらの活性の全ては、臨床的関連を有するものと考えられ、潜在的に、化合物の作用機序に関与する[J.Med.Chem.,54,3206−3221,2011;Eur.Neuropshycopharmacol.,18(suppl 4),S321,2008;Eur.Neuropshycopharmacol.,21(suppl 4),S407−408,2011;Int.J.Psychiatry Clin Pract.5,47,2012]。
【0004】
化合物Iは、臨床試験において、安全であり、かつうつ病の有効な治療剤であることが示されている。Alvaresらによって作成された、大うつ病性障害(MDD)の患者における化合物の有効性および耐容性を評価するための概念実証試験の結果を報告する論文は、Int.J.Neuropsychopharm.18 July,2011によって、オンラインで閲覧可能になった。各群約100人の患者によるこの6週間のランダム化プラセボ対照試験の結果は、化合物Iが、MDDの患者の抑うつ症状および不安症状の治療においてプラセボと著しく異なることを示す。臨床的に関連する変化が、臨床検査結果、バイタルサイン、体重、または心電図パラメータに見られなかったことも報告される。長期試験の結果も、化合物Iが、MDDに罹患した患者の再発を防ぐのに有効であることを示す[Eur.Neuropsychopharmacol.21(suppl 3),S396−397,2011]。
【0005】
国際公開第2007/144005号パンフレットには、化合物
【化1】
が、塩基およびパラジウム源とホスフィン配位子とからなるパラジウム触媒の存在下で混合される製造方法が開示されている。パラジウム触媒は、米国特許第5,573,460号明細書に開示されるように、C−N結合の形成を触媒する。上記の方法において、ピペラジンは、窒素の1つにおいて任意選択的に保護され得る。この方法により、高い収率および比較的高い純度で所望の化合物が得られる。それにもかかわらず、後に除去される必要がある不純物が形成される。化合物Iのように、第二級アミンを含有する不純物、すなわち、ピペラジン部分を除去するのは特に難しい。このような化合物は、例えば、pH依存の溶解特性を含む同様の溶解特性を有する傾向があるため、溶解度の差を利用する方法、例えば、結晶化を用いて化合物Iから分離するのが難しい。国際公開第2010/094285号パンフレットには、ピペラジン基中の両方の窒素がC−N結合を形成するときに形成されるこのような不純物、例えば1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−4−(2−ピペラジン−1−イル−フェニル)−ピペラジンを効果的に除去する精製方法が開示されている。この精製方法は、化合物I、HBrのイソプロパノール溶媒和物を精製する工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態において、式IIの化合物および式IIIの化合物は、第1の工程において反応されて、中間体
【化6】
が調製され得る。次に、この中間体は、化合物Iを得るための式IVの化合物によるさらなる反応の前に単離され得る。あるいは、このさらなる反応は、中間体を単離せずに行われ得る。ワンポット合成、すなわち、中間体の単離または精製を伴わずに、全ての反応剤が、反応の開始時に反応器に仕込まれる合成経路が、一般に、その固有の簡潔さのために好ましい経路である。一方、考えられる好ましくない副反応の数も、対応する副生成物の増加および収率の低下とともに、ワンポット合成において増加される。本発明の方法では、ピペラジンが、2つの同一の第二級アミンを含有し、これが両方とも、C−N結合の形成に潜在的に関与し得ることが留意される。それにもかかわらず、本発明の製造経路が、このような副反応を回避するのに非常に有効であることが分かった。特に、本発明の製造方法が、化合物I中の第二級アミンに関与するC−N結合形成によって形成される不純物の形成を効果的に回避するかまたは減少させることが分かった。このような不純物の例としては、1−(2,4−ジメチル−フェニル)−4−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンが挙げられる。
【0009】
国際公開第2010/094285号パンフレットには、ピペラジン部分中の第二級アミン(second amine)もC−N結合の形成に関与するときに生成される不純物を除去するのに使用され得る精製方法が開示されている。国際公開第2010/094285号パンフレットに開示される精製方法は、化合物Iの製造のための方法に適用され、ここで、2,4−ジメチル−チオフェノール、1,2−ジハロベンゼンおよび任意選択的に置換されるピペラジンが、パラジウム触媒の存在下で反応される。この方法は、国際公開第2005/144005号パンフレットに最初に開示された。国際公開第2010/094285号パンフレットに提供されるデータは、第二級アミンもこの反応におけるC−N結合の形成に関与するときに形成される不純物、例えば1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−4−(2−ピペラジン−1−イル−フェニル)−ピペラジンが、0.5%〜4.8%の量で生成されることを示すようである。これは、1%のこの不純物が生成される本出願の実施例4に示されるデータと一致している。後述されるように、パラジウム触媒は、C−S結合の形成も触媒する。本発明の製造方法において、2つ(またはそれ以上)のチオール化合物(式IIIの化合物)の反応によって生成される不純物が、有意な量で生成されないことがさらに留意される。
【0010】
実施例に示されるように、本発明は、第二級ピペラジン窒素においてC−N結合形成を介して不純物がほとんどまたは全く生成されない、化合物Iのための代替的な製造方法を提供する。同時に、総不純物レベルも、国際公開第2005/144005号パンフレットに開示されている方法と比較して低下され、全収率が、高いレベルで維持される。さらに、本発明の製造方法は、例えば、国際公開第2010/094285号パンフレットに開示されているような、第二級ピペラジン窒素においてC−N結合の形成を介して生成される不純物を除去するための精製工程が回避され得る点でより簡潔な全プロセスを提供する。実施例1〜4に示されるデータは、第二級アミンがC−N結合形成に関与するときに生成される不純物、例えば不純物AおよびBが、事実上形成されないことを示す。これは、実施例4に示されるように、国際公開第2005/144005号パンフレットの方法による約1%のこのような不純物のレベルおよび国際公開第2010/094285号パンフレットに報告されるさらに大きい数値より勝る。本発明の製造方法による不純物の全レベルが、著しく低く、すなわち約50%低いことも示され、これはまた、本発明の製造方法において得られる化合物Iの純度がはるかに高いことを意味する。
【0011】
式IIの化合物は、1−ハロゲン−2,4−ジメチル−フェニルであり、ここで、前記ハロゲンは、BrおよびIから選択される。一実施形態において、式IIの化合物は、1−ヨード−2,4−ジメチル−フェニルである。
【0012】
式IIIの化合物は、2−ハロゲン−チオフェノールであり、ここで、前記ハロゲンは、ClおよびBrから選択される。一実施形態において、式IIIの化合物は、2−ブロモチオフェノールである。
【0013】
式IIIの化合物は、チオールまたは対応するチオレートである。塩基性の反応条件のため、反応種はチオレートである。労働衛生の観点から、チオールに関連する臭いの問題を回避するために、Li
+、Na
+、K
+またはCa
++チオレートなどのチオレートを使用することが有益であり得る。それにもかかわらず、一実施形態において、R’が水素である。
【0014】
式IIおよびIIIの化合物は、典型的に、等モル量で加えられ、これらの化合物はまた、典型的に、制限的な量で加えられる。
【0015】
式IVの化合物は、ピペラジン化合物である。ピペラジンは、2つの窒素を有し、そのうちの1つが、C−N結合形成に関与することになる。一実施形態において、第2の窒素への結合の形成が、単保護されたピペラジン、すなわち、Rが保護基である実施形態を用いて回避される。多くの保護基が、当該技術分野において公知であり、有用な例としては、−C(=O)O−W、−C(=O)−W、boc、BnおよびCbz、特にbocが挙げられる。Wが、アルキルまたはアリールを表し;Bnが、ベンジルの略記であり;bocが、t−ブチルオキシカルボニルの略記であり;cbzが、ベンジルオキシカルボニルの略記である。保護されたピペラジンが反応に使用される場合、保護基は、後の工程において、典型的に、酸水溶液の添加によって除去される必要がある。本発明の方法は、第二級ピペラジンアミンにおけるC−N結合の形成を介して生成されるごく低いレベルの不純物を生じることが分かった。これにより、非保護ピペラジン(すなわち、Rが水素である)の使用が可能になる。非保護ピペラジンの使用により、脱保護工程が回避され得る点で本質的により簡潔なプロセスが可能になる。
【0016】
式IVの化合物は、例えば1〜10当量、典型的に1〜3当量などの1〜100当量で加えられる。あるいは、ピペラジンは、溶媒として、すなわち、ピペラジンが反応剤でありかつ溶媒である実施形態として使用され得る。
【0017】
本発明の方法に使用される溶媒は、反応温度範囲内、すなわち50〜130℃の沸点を有する非プロトン性有機溶媒またはこのような溶媒の混合物から選択され得る。典型的に、溶媒は、トルエン、キシレン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ピリジンまたはそれらの任意の混合物の中から選択される。溶媒としてトルエンが特に挙げられる。
【0018】
本発明の方法の中心となるのは、パラジウム触媒の使用であり、それを用いなければ化合物Iは形成されない。上述されるように、パラジウム触媒は、C−N結合の形成を触媒するが、C−S結合の形成も触媒する[Bull.Chem.Soc.Jpn.,53,1385−1389,1980]。パラジウム触媒は、パラジウム源およびホスフィン配位子からなる。有用なパラジウム源は、例えば、0およびIIなどの異なる酸化状態のパラジウムを含む。本発明の方法に使用され得るパラジウム源の例は、Pd
2(dba)
3、Pd(dba)
2およびPd(OAc)
2である。dbaは、ジベンジリデンアセトンの略記である。Pd(dba)
2およびPd(OAc)
2が特に挙げられる。パラジウム源は、典型的に、0.5および2モル%、典型的に、約1モル%などの、0.1および6モル%の量で適用される。本出願全体を通して、モル%および当量は、制限的な反応剤に対して計算される。
【0019】
単座および二座の両方の多くのホスフィン配位子が公知である。有用なホスフィン配位子としては、ラセミ2,2’−ビス−ジフェニルホスファニル−[1,1’]ビナフタレニル(rac−BINAP)、(S)−BINAP、(R)−BINAP、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(DPPF)、ビス−(2−ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル(DPEphos)、トリ−t−ブチルホスフィン(Fu塩)、ビフェニル−2−イル−ジ−t−ブチル−ホスフィン、ビフェニル−2−イル−ジシクロヘキシル−ホスフィン、(2’−ジシクロヘキシルホスファニル−ビフェニル−2−イル)−ジメチル−アミン、[2’−(ジ−t−ブチル−ホスファニル)−ビフェニル−2−イル]−ジメチル−アミン、およびジシクロヘキシル−(2’,4’,6’−トリ−プロピル−ビフェニル−2−イル)−ホスファンが挙げられる。さらに、例えば、1,3−ビス−(2,6−ジ−イソプロピル−フェニル)−3H−イミダゾール−1−イウム;クロリドなどのカルベン配位子が、ホスフィン配位子の代わりに使用され得る。一実施形態において、ホスフィン配位子は、rac−BINAP、DPPFまたはDPEphos、特に、rac−BINAPである。ホスフィン配位子は、通常、0.5〜4モル%、典型的に、約2モル%などの0.2〜12モル%の量で適用される。
【0020】
pHを高めるために、塩基が、反応混合物に加えられる。特に、NaOt−Bu、KOt−Bu、Na
2CO
3、K
2CO
3およびCs
2CO
3から選択される塩基が有用である。1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)などの有機塩基が、同様に適用され得る。NaO(t−Bu)およびKO(t−Bu)が特に挙げられる。典型的に、塩基は、2.5〜3.5当量などの2〜5当量などの約2〜10当量の量で加えられる。
【0021】
場合によっては、遊離塩基ではなく1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンの酸付加塩を得ることが望ましいことがある。酸付加塩は、得られる遊離塩基が、例えば、乳酸、塩酸または臭化水素酸などの関連する酸と反応されるさらなる処理工程において得られる。酸は、反応混合物に直接加えられてもよくまたはその代わりに、遊離塩基は、このような工程の前に最初に任意の好適な程度まで精製されてもよい。遊離塩基が、固体化合物として単離された場合、酸との反応の前に遊離塩基を溶液にするために溶媒を使用する必要があり得る。一実施形態において、臭化水素酸水溶液が、遊離塩基の初期の精製なしで反応混合物に直接加えられる。あるいは、HBrが、アルコール溶液に加えられる。
【0022】
保護されたピペラジンが使用されるプロセスでは、保護基は、例えば、上で説明されるように、酸水溶液の添加によって、除去される必要がある。一実施形態において、前記酸水溶液は、2つの変換、すなわち、保護されたピペラジンの脱保護および酸付加塩の形成を行うように選択され得る。特に、臭化水素酸水溶液を用いて、1回の処理工程において、保護されたピペラジンを脱保護し、臭化水素酸付加塩を得ることができる。
【0023】
一実施形態において、本発明の方法は、75°〜120°、または80°〜120°で実施される。
【0024】
不活性ガスでパージし、または不活性ガスのブランケット下で操作することが有利であり得ることが本明細書に記載される全ての反応および反応混合物にも当てはまる。窒素は安価であり、容易に入手可能な不活性ガスの例である。
【0025】
一実施形態において、化合物Iが、
【化7】
を、
【化8】
および
【化9】
と、溶媒、塩基およびパラジウム源とホスフィン配位子とからなるパラジウム触媒の存在下で、50℃〜130℃の温度で反応させる工程を含む方法において調製される。さらなる実施形態において、得られる化合物は、酸と反応されて、1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンの所望の薬学的に許容できる塩が得られる。
【0026】
一実施形態において、本発明は、化合物Iの製造のための方法であって、
a)0.1モル%〜3モル%のビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)および0.5モル%〜4モル%のラセミ2,2’−ビス−ジフェニルホスファニル−[1,1’]ビナフタレニルおよび2〜6当量の塩基を、トルエンに溶解または分散させて、混合物Aを得る工程と;
b)1当量の1−ヨード−2,4−ジメチルベンゼン、0.8〜1.2当量の2−ブロモチオフェノールおよび1〜10当量のピペラジンを混合物Aに加えて、混合物Bを得る工程と;
c)混合物Bを、80℃〜120℃または75°〜120°まで加熱して、
【化10】
を得る工程と;
d)適切な酸を、工程c)において得られる生成物に任意選択的に加えて、対応する塩を得る工程とを含む方法を提供する。HBr水溶液の添加が特に挙げられる。
【0027】
一実施形態において、本発明は、上記の工程a)〜d)を含むかまたはそれらからなる方法において得られる化合物I、特に、化合物I HBrに関する。
【0028】
一実施形態において、本発明は、化合物Iの製造のための方法であって、
a)0.1モル%〜3モル%のビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)および0.5モル%〜4モル%のラセミ2,2’−ビス−ジフェニルホスファニル−[1,1’]ビナフタレニル、1〜10当量のピペラジンおよび2〜6当量の塩基を、トルエンに溶解または分散させて、混合物Aを得る工程と;
b)1当量の1−ヨード−2,4−ジメチルベンゼンおよび0.8〜1.2当量の2−ブロモチオフェノールを混合物Aに加えて、混合物Bを得る工程と;
c)混合物Bを、80℃〜120℃または75°〜120°まで加熱して、
【化11】
を得る工程と;
d)適切な酸を、工程c)において得られる生成物に任意選択的に加えて、対応する塩を得る工程とを含む方法を提供する。HBr水溶液の添加が特に挙げられる。
【0029】
一実施形態において、本発明は、上記の工程a)〜d)を含むかまたはそれらからなる方法において得られる化合物I、特に、化合物I HBrに関する。
【0030】
本明細書に引用される刊行物、特許出願、および特許を含む全ての参照文献は、特定の文献の別個に提供される援用が本明細書の他の箇所でなされるかどうかにかかわらず、各参照文献が参照により援用されることが個々にかつ具体的に示され、その全体が本明細書に記載されているのと同程度に(法によって許容される最大限まで)全体が参照により本明細書に援用される。
【0031】
本発明を説明する文脈における「a」および「an」および「the」という用語および類似の指示対象の使用は、本明細書に特に示されない限りまたは文脈上明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を包含するものと解釈されるべきである。例えば、「化合物(the compound)」という語句は、特に示されない限り、本発明の様々な化合物または特定の記載される態様を示すものと理解されるべきである。
【0032】
1つまたは複数の要素に関する「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、または「含有する(containing)」などの用語を用いた本発明の任意の1つまたは複数の態様の本明細書における説明は、特に記載しない限りまたは文脈上明らかに矛盾しない限り、該当する特定の1つまたは複数の要素「からなる(consists of)」、「から本質的になる(consists essentially of)」、または「を実質的に含む(substantially comprises)」本発明の類似の1つまたは複数の態様に裏付けを与えることが意図される(例えば、特定の要素を含むものとして本明細書に記載される組成物は、特に記載しない限りまたは文脈上明らかに矛盾しない限り、該当する要素からなる組成物も説明するものと理解されるべきである)。
【実施例】
【0033】
実施例1
【化12】
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(0.610g、1.06mmol)、ラセミ2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(1.34g、2.15mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(31.0g、323mmol)およびトルエン(150mL、脱気された)を混合した。反応混合物を、窒素の雰囲気下で、室温(23℃)で2時間撹拌した。
【0034】
この混合物に、ピペラジン(23.0g、267mmol)、1−ヨード−2,4−ジメチルベンゼン(25.0g、108mmol)および2−ブロモチオフェノール(20.5g、108mmol)を加えた。次に、反応混合物を100℃で5時間加熱し、その後、それを室温に冷ました。反応混合物に、水(80mL)(本明細書においてIPC(工程内管理(In Process Control))サンプルを取った)および次にCelite 545(8.0g)を加えた。反応物を、ろ過の前に、20分間撹拌した。相を分離し、トルエン相を、水で2回(2×80mL)洗浄した。
【0035】
トルエン相を60℃で加熱した。温かいトルエン相に、臭化水素酸(8.9M、13.0mL、116mmol)を加え、種結晶(seeding crystal)(表題化合物の(HBr塩)、10mg)を加え、溶液を室温に冷ました。1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン、HBrを、ろ過によって単離し、ろ過ケーキを、トルエンで2回(2×30mL)洗浄した。
収率80.1%の1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン、HBr(33.5g、88.3mmol)。
純度97.9%(HPLC、254nmにおけるUV検出)
1H NMR(DMSO−d
6;500MHz):8.83(bs,2H)、7.34(d,1H)、7.26(s,1H)、7.15(m,3H)、6.98(dd,1H)、6.43(d,1H)、3.26(bm,4H)、3.21(bm,4H)、2.33(s,3H)、2.25(s,3H)。
【0036】
実施例2
【化13】
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(665mg、1.15mmol)、ラセミ2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(1.44g、2.30mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(22.2g、231mmol)、ピペラジン(16.6g、193mmol)、およびトルエン(110mL、脱気された)を混合した。反応混合物を、窒素の雰囲気下で、室温(23℃)で1時間撹拌した。
【0037】
この混合物に、1−ヨード−2,4−ジメチルベンゼン(15.1g、65.0mmol)および2−ブロモチオフェノール(11.8g、62.4mmol)を加えた。次に、反応混合物を、100℃で4時間加熱し、その後、それを室温に冷ました。反応混合物に、水(60mL)(本明細書においてIPCサンプルを取った)および次にCelite 545(9.5g)を加えた。反応物を、ろ過の前に、20分間撹拌した。相を分離し、トルエン相を、水で2回(2×60mL)洗浄した。
【0038】
トルエン相を60℃で加熱した。温かいトルエン相に、臭化水素酸(8.9M、9.3mL、82.8mmol)を加え、種結晶(表題化合物のHBr塩、10mg)を加え、溶液を室温に冷ました。1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン、HBrを、ろ過によって単離し、ろ過ケーキを、トルエンで3回(3×25mL)洗浄した。
収率77.1%の1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン、HBr(18.6g、49.0mmol)。
純度98.2%(HPLC、254nmにおけるUV検出)
1H NMR(DMSO−d
6):8.83(bs,2H)、7.34(d,1H)、7.26(s,1H)、7.14(m,3H)、6.97(dd,1H)、6.42(d,1H)、3.26(bm,4H)、3.21(bm,4H)、2.33(s,3H)、2.25(s,3H)。
【0039】
実施例3
【化14】
酢酸パラジウム(II)(580mg、2.58mmol)、ラセミ2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(3.20g、5.16mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(49.5g、516mmol)、ピペラジン(37.0g、430mmol)、およびトルエン(250mL、脱気された)を混合した。反応混合物を、窒素の雰囲気下で、室温(23℃)で2時間撹拌した。
【0040】
この混合物に、1−ヨード−2,4−ジメチルベンゼン(40.0g、172mmol)および2−ブロモチオフェノール(32.6g、172mmol)を加えた。次に、反応混合物を、100℃で1時間加熱し、その後、それを室温に冷ました。反応混合物に、水(80mL)(本明細書においてIPCサンプルを取った)および次にCelite 545(12g)を加えた。反応物を、ろ過の前に、20分間撹拌した。相を分離し、トルエン相を、水で2回(2×80mL)洗浄した。
【0041】
トルエン相を60℃で加熱した。温かいトルエン相に、臭化水素酸(8.9M、20.8mL、185mmol)を加え、種結晶(表題化合物のHBr塩、10mg)を加え、溶液を室温に冷ました。1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン、HBrを、ろ過によって単離し、ろ過ケーキを、トルエンで3回(3×40mL)洗浄した。
収率84.3%の1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン、HBr(0.60当量のtert−ブタノール(62.1g、147mmol)を含有する)。
純度98.6%(HPLC、254nmにおけるUV検出)。
1H NMR(DMSO−d
6):8.82(bs,2H)、7.34(d,1H)、7.26(s,1H)、7.15(mp,3H)、6.98(dd,1H)、6.43(d,1H)、3.27(bm,4H)、3.21(bm,4H)、2.34(s,3H)、2.25(s,3H)、1.12(s,5.4H)。
【0042】
実施例4
【化15】
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(307mg、0.530mmol)、ラセミ2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(0.66g、1.06mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(44.7g、466mmol)、ピペラジン(40.3g、469mmol)およびトルエン(200mL、脱気された)を混合した。反応混合物を、窒素の雰囲気下で、室温(23℃)で35分間撹拌した。
【0043】
この混合物に、1−ブロモ−2−ヨード−ベンゼン(39.2g、135mmol)および2,4−ジメチル−ベンゼンチオール(18.3g、133mmol)を加えた。次に、反応混合物を、6時間にわたって還流状態で加熱し、その後、それを室温に冷ました。反応混合物に、水(60mL)(本明細書においてIPCサンプルを取った)および次にCelite 545(9.0g)を加えた。反応物を、ろ過の前に、20分間撹拌した。相を分離し、トルエン相を、水で2回(2×60mL)洗浄した。
【0044】
トルエン相を60℃で加熱した。温かいトルエン相に、臭化水素酸(8.9M、16.8mL、150mmol)を加え、種結晶(表題化合物のHBr塩、10mg)を加え、溶液を室温に冷ました。1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン、HBrを、ろ過によって単離し、ろ過ケーキを、トルエンで3回(3×25mL)洗浄した。
収率81.5%の1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン、HBr(0.70当量のtert−ブタノール(51.2g、118mmol)を含有する)。
純度96.0%(HPLC、254nmにおけるUV検出)。
1H NMR(DMSO−d
6):8.78(bs,2H)、7.34(d,1H)、7.26(s,1H)、7.15(m,3H)、6.98(dd,1H)、6.43(d,1H)、3.27(bm,4H)、3.20(bm,4H)、2.34(s,3H)、2.26(s,3H)、1.12(s,6.3H)。
【0045】
以下の表は、IPCの不純物(hplcによる面積%)および実施例1〜4の最終生成物についての分析データを示す。
【0046】
HPLC方法
・カラムのタイプ:Acquity UPLC BEH C18 1.7μm;2.1×150mm
・カラムの温度:60℃
・254nmにおける検出
・流量:0.6ml/分
・溶媒:
A:0.05%のTFA(トリフルオロ酢酸)を含有する水
B:5%の水および0.035%のTFAを含有するアセトニトリル
【0047】
【表1】
【0048】
不純物Aは、1,2−ビス(1’−ピペラジニル)ベンゼンである。
不純物Bは、1−フェニル−ピペラジンである。
不純物Cは、1−(2−ブロモ−フェニル)ピペラジンである。
不純物Dは、1−(2,4−ジメチル−フェニル)−ピペラジンである。
不純物Eは、1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−4−(2−ピペラジン−1−イル−フェニル)−ピペラジンである。
不純物Fは、1−(2,4−ジメチル−フェニル)−4−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンである。
不純物Gは、2,4−ジメチル−1−フェニルスルファニルベンゼンである。
【0049】
【表2】
また、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
(1)
【化16】
またはその薬学的に許容できる塩(化合物I)の製造のための方法であって、式II
【化17】
(式中、Xが、BrまたはIを表す)の化合物を、式III
【化18】
(式中、Yが、ClまたはBrを表し、R’が、水素または金属イオンを表す)の化合物、および式IV
【化19】
(式中、Rが、水素または保護基を表す)の化合物と、溶媒、塩基およびパラジウム源とホスフィン配位子とからなるパラジウム触媒の存在下で、50℃〜130℃の温度で反応させる工程を含む方法。
(2)XがIを表す、上記(1)に記載の方法。
(3)YがBrを表し、R’がHを表す、上記(1)または(2)に記載の方法。
(4)RがHを表す、上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の方法。
(5)Rが、−C(=O)O−W、−C(=O)−W、boc、BnおよびCbzから選択される保護基を表し、ここで、Wが、アルキルまたはアリールを表す、上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の方法。
(6)前記溶媒が非プロトン性溶媒である、上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の方法。
(7)前記溶媒がトルエンである、上記(6)に記載の方法。
(8)前記パラジウム源が、Pd(dba)2、Pd(OAc)2およびPd2dba3から選択される、上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の方法。
(9)前記パラジウム源が、Pd(dba)2またはPd(OAc)2である、上記(8)に記載の方法。
(10)前記ホスフィン配位子が、
ラセミ2,2’−ビス−ジフェニルホスファニル−[1,1’]ビナフタレニル(rac−BINAP)、
1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(DPPF)、
ビス−(2−ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル(DPEphos)、
トリ−t−ブチルホスフィン(Fu塩)、
ビフェニル−2−イル−ジ−t−ブチル−ホスフィン、
ビフェニル−2−イル−ジシクロヘキシル−ホスフィン、
(2’−ジシクロヘキシルホスファニル−ビフェニル−2−イル)−ジメチル−アミン
[2’−(ジ−t−ブチル−ホスファニル)−ビフェニル−2−イル]−ジメチル−アミン、および
ジシクロヘキシル−(2’,4’,6’−トリ−プロピル−ビフェニル−2−イル)−ホスファン
から選択される、上記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の方法。
(11)前記ホスフィン配位子が、2,2’−ビス−ジフェニルホスファニル−[1,1’]ビナフタレニル(rac−BINAP)である、上記(10)に記載の方法。
(12)前記塩基が、NaO(t−Bu)、KO(t−Bu)、K2CO3、Na2CO3、Cs2CO3、DBUおよびDABCOから選択される、上記(1)〜(11)のいずれか一項に記載の方法。
(13)前記塩基がNaO(t−Bu)である、上記(12)に記載の方法。
(14)前記各項において得られる前記生成物を、適切な酸と反応させて、前記保護基(Rが保護基である場合)を除去し、および/または所望の薬学的に許容できる塩を得る工程をさらに含む、上記(1)〜(13)のいずれか一項に記載の方法。
(15)
【化20】
を、
【化21】
および
【化22】
と、溶媒、塩基およびパラジウム源とホスフィン配位子とからなるパラジウム触媒の存在下で、50℃〜130℃の温度で反応させる工程を含む、上記(1)に記載の方法。
(16)前記上記(において得られる前記化合物を、酸と反応させて、前記化合物の所望の薬学的に許容できる塩を得る工程をさらに含む、上記(15)に記載の方法。
(17)a)0.1モル%〜3モル%のビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)および0.5モル%〜4モル%のラセミ2,2’−ビス−ジフェニルホスファニル−[1,1’]ビナフタレニルおよび2〜6当量の塩基を、トルエンに溶解または分散させて、混合物Aを得る工程と;
b)1当量の1−ヨード−2,4−ジメチルベンゼン、0.8〜1.2当量の2−ブロモチオフェノールおよび1〜10当量のピペラジンを混合物Aに加えて、混合物Bを得る工程と;
c)混合物Bを80℃〜120℃まで加熱して、
【化23】
を得る工程と;
d)適切な酸を、工程c)において得られる前記生成物に任意選択的に加えて、対応する塩を得る工程と
を含む、上記(1)に記載の方法。
(18)a)0.1モル%〜3モル%のビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)および0.5モル%〜4モル%のラセミ2,2’−ビス−ジフェニルホスファニル−[1,1’]ビナフタレニル、1〜10当量のピペラジンおよび2〜6当量の塩基を、トルエンに溶解または分散させて、混合物Aを得る工程と;
b)1当量の1−ヨード−2,4−ジメチルベンゼンおよび0.8〜1.2当量の2−ブロモチオフェノールを混合物Aに加えて、混合物Bを得る工程と;
c)混合物Bを80℃〜120℃まで加熱して、
【化24】
を得る工程と;
d)適切な酸を、工程c)において得られる前記生成物に任意選択的に加えて、対応する塩を得る工程と
を含む、上記(1)に記載の方法。