【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者名 群馬県医師会 刊行物名 群馬県医師会報 No.795 該当ページ 第21〜26頁 発行日 平成26年10月25日 発行者名 群馬県医師会 刊行物名 群馬県医師会報 No.797 該当ページ 第8ページ〜12ページ 発行日 平成26年12月25日
【文献】
塚本 雄介他,1.救急患者の薬物療法,臨床外科 増刊号 薬物療法マニュアル 11,日本,株式会社医学書院,1999年11月 8日,第54巻 第11号,44-50頁
【文献】
飯野靖彦,酸塩基平衡,日腎会誌,日本,一般社団法人 日本腎臓学会,2001年,第43巻 第8号,621-630頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
救急医療等の現場において、患者の病態を判断する基本的な検査項目として動脈血ガス分析による酸塩基平衡異常の有無が挙げられる。この酸塩基平衡異常の検査は、患者の血液が酸性に傾いているかアルカリ性に傾いているかを把握するものであり、患者の病態を絞り込む上での重要な検査項目の一つである。そして、この酸塩基平衡異常の判定は概ね以下のようにして行う。
【0003】
先ず、患者の動脈血を採取して周知の血液ガス分析装置により分析を行う。そして、分析結果のpHから患者の血液が酸性に傾いているアシデーミアの状態かアルカリ性に傾いているアルカレーミアの状態かを判別する。
【0004】
次に、血液ガス分析結果の重炭酸イオン濃度の値(HCO
3−)から、患者が代謝性アシドーシスの状態にあるか代謝性アルカローシスの状態にあるかを判断する。また、血液ガス分析結果の重炭酸イオン濃度の値(HCO
3−)と、静脈血の生化学検査結果のナトリウムイオン濃度の値(Na
+)及びクロールイオン濃度の値(Cl
−)とから下記式に基づいてアニオンギャップ値(AG)を算出して、AG増大型代謝性アシドーシスの有無を判断する。
AG=Na
+−(Cl
−+HCO
3−)
【0005】
また、血液ガス分析結果の二酸化炭素分圧の値(PaCO
2)から患者が呼吸性アシドーシスの状態にあるか呼吸性アルカローシスの状態にあるかを判断する。そして、これらの判断結果により、例えば呼吸器疾患、腎臓疾患、心疾患、敗血症、糖尿病、アルコールや薬物の多量摂取等、原因や病名を絞り込み、さらに検査を行う等して患者の診断と治療を行う。
【0006】
尚、診断支援プログラムとしては下記[特許文献1]に記載の発明が開示されている。ただし、この[特許文献1]に記載の発明は、シェーマの作成を支援するプログラムであって、酸塩基平衡異常の判断を支援するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように酸塩基平衡異常の検査は重要な検査項目であるが、異常の判定を行うためのpH、HCO
3−、AG、PaCO
2の正常範囲(判定基準)はそれぞれ異なる数値であり、例えばHCO
3−の正常範囲は HCO
3−=24±2[mEq/L]であり、HCO
3−が22[mEq/L]未満であれば代謝性アシドーシスと判断し、HCO
3−が26[mEq/L]を超えていれば代謝性アルカローシスと判断する。また、AGの正常範囲は AG=12±2[mEq/L]であり、AGが14[mEq/L]を超えていればAG増大型代謝性アシドーシスと判断する。また、PaCO
2の正常範囲はPaCO
2=40±5[mmHg]であり、PaCO
2が35[mmHg]未満であれば呼吸性アルカローシスと判断し、PaCO
2が45[mmHg]を超えていれば呼吸性アシドーシスと判断する。また、代謝性酸塩基平衡異常の判定はHCO
3−の判定結果とAGの判定結果との組み合わせとなるため、異常無しも含めて7つの判定結果が存在する。よって、熟練した医療従事者であっても救急救命時にとっさに上記の判断を全て的確に行うことは難しい場合がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、患者の血液の測定結果を入力することで、患者の酸塩基平衡異常の判定結果を表示する診断支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
(1)
コンピュータに対し、
患者の血液の測定結果から得られるナトリウムイオン濃度の値(Na
+)とクロールイオン濃度の値(Cl
−)と重炭酸イオン濃度の値(HCO
3−)とを入力
要求する入力ステップと、
前記入力ステップで入力されたナトリウムイオン濃度の値(Na
+)とクロールイオン濃度の値(Cl
−)と重炭酸イオン濃度の値(HCO
3−)とから下記式に基づいてアニオンギャップ値(AG)を算出するAG算出ステップと、
AG=Na
+−(Cl
−+HCO
3−)
前記AG算出ステップで算出されたアニオンギャップ値(AG)と、予め設定されている標準アニオンギャップ値(AG
base)とから下記式に基づいてΔAG値を算出するΔAG算出ステップと、
ΔAG=AG−AG
base
前記入力ステップで入力された重炭酸イオン濃度の値(HCO
3−)と、前記ΔAG算出ステップで算出されたΔAG値と、予め設定されている標準バイカーボネイト値(B
base)とから下記式に基づいてバイカーボネイトギャップ値(BG)を算出するBG算出ステップと、
BG=HCO
3−+ΔAG−B
base
算出されたΔAG及びBGの値が、
2<ΔAG で且つ −4≦BG≦4 の場合にAG増大型代謝性アシドーシスと判定し、
2<ΔAG で且つ 4<BG の場合にAG増大型代謝性アシドーシス+代謝性アルカローシスと判定し、
2<ΔAG で且つ BG<−4 の場合にAG増大型+非AG増大(BG減少)型代謝性アシドーシスと判定し、
ΔAG≦2 で且つ 4<BG の場合に代謝性アルカローシスと判定し、
ΔAG≦2 で且つ BG<−4 の場合に非AG増大(BG減少)型代謝性アシドーシスと判定し、
−2≦ΔAG≦2 で且つ −4≦BG≦4 の場合に代謝性酸塩基平衡異常無しと判定する代謝性酸塩基平衡判定ステップと、
前記代謝性酸塩基平衡判定ステップの判定結果を表示
させる表示ステップと、
を実行させることを特徴とする診断支援プログラムを提供することにより、上記課題を解決する。
(2)入力ステップが患者の血液の測定結果から得られるpHの値をさらに入力要求するとともに、
代謝性酸塩基平衡判定ステップが、
ΔAG<−2 で且つ −4≦BG≦4 で、さらに前記入力ステップで入力されたpHの値及び重炭酸イオン濃度の値(HCO
3−)が 7.4<pH で且つ 24<HCO
3− の場合に代謝性アルカローシスと判定し、いずれにも該当しない場合に判定不能とすることを特徴とする上記(1)記載の診断支援プログラムを提供することにより、上記課題を解決する。
(3)入力ステップが患者の血液の測定結果から得られる二酸化炭素分圧の値(PaCO
2)をさらに入力要求するとともに、
前記コンピュータに対し、
前記入力ステップで入力された二酸化炭素分圧の値(PaCO
2)と、重炭酸イオン濃度の値(HCO
3−)と、予め設定されている代償予測定数(A)とから下記式に基づいてシーオーツー分圧ギャップ値(CG)を算出するCG算出ステップと、
CG=PaCO
2−(HCO
3−+A)
算出されたCGの値が、
−3≦CG≦3 の場合に呼吸性代償は適切と判定し、
3<CG の場合に呼吸性アシドーシスと判定し、
CG<−3 の場合に呼吸性アルカローシスと判定するCG判定ステップと、をさらに
実行させ、
表示ステップが前記CG判定ステップの判定結果を前記代謝性酸塩基平衡判定ステップの判定結果とともに表示
させることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の診断支援プログラムを提供することにより、上記課題を解決する。
(4)入力ステップが患者の血液の測定結果から得られるpHの値を入力要求するとともに、
前記コンピュータに対し、
前記入力ステップで入力されたpH値がpH<7.2 もしくは 7.6<pHの場合に迅速対応の警告表示を
行わせるpH判定ステップをさらに
実行させることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の診断支援プログラムを提供することにより、上記課題を解決する。
(5)ユーザの要求により、
横軸をΔAGとし縦軸をBGとした座標に、前記ΔAG算出ステップ及びBG算出ステップで算出した患者のΔAG、BGの値をプロット
表示させるプロットステップを
前記コンピュータに対しさらに
実行させることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の診断支援プログラムを提供することにより、上記課題を解決する。
(6)ユーザの要求により、
代謝性酸塩基平衡判定ステップの判定結果と対応する病名の候補及びその対処法の情報を含む疾病一覧を表示
させる疾病一覧表示ステップを
前記コンピュータに対しさらに
実行させることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の診断支援プログラムを提供することにより、上記課題を解決する。
(7)ユーザの要求により、
代謝性酸塩基平衡判定ステップの判定結果及びCG判定ステップの判定結果と対応する病名の候補及びその対処法の情報を含む疾病一覧を表示
させる疾病一覧表示ステップを
前記コンピュータに対しさらに
実行させることを特徴とする上記(3)乃至(5)のいずれかに記載の診断支援プログラムを提供することにより、上記課題を解決する。
(8)ユーザの要求により、
前記入力ステップでの入力項目の値と、前記AG算出ステップとΔAG算出ステップとBG算出ステップとで算出されたアニオンギャップ値(AG)、ΔAG値、バイカーボネイトギャップ値(BG)を含む算出値と、をメモリ上に保存させ、他のソフトウェアへのコピーを可能とするコピーステップを
前記コンピュータに対しさらに
実行させることを特徴とする上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の診断支援プログラムを提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る診断支援プログラムは、患者の血液に関する測定結果を入力するだけで、自動的に患者の代謝性酸塩基平衡異常の有無及び状態と呼吸性酸塩基平衡異常の合併の有無とを判定し表示
させる。このため、医療従事者等のユーザはこれらの判定結果を見て、直ちに患者に必要な治療や更なる検査を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る診断支援プログラムの実施の形態及び動作について
図1、
図2のフローチャートを用いて説明する。尚、本発明に係る診断支援プログラムは、パーソナルコンピュータ、医療施設等の大型コンピュータ、クラウドコンピュータ、及びこれらと接続する端末、並びに、携帯電話、スマートフォン、タブロイド端末等の携帯端末に光ディスクや半導体メモリなどの記録媒体を介して、またはインターネット、イントラネットを介したダウンロードによりインストールして
実行させ使用する。また、本発明に係る診断支援プログラムは、血液ガス分析装置等の医療機器に組み込んで
実行させ使用しても良い。
【0014】
先ず、診断支援プログラムを起動する(ステップS100)。これにより、診断支援プログラムのインストールされた機器のモニタ上に、例えば
図3(a)に示すようなメイン画面30が表示される。この
図3(a)に示すメイン画面30には、患者の血液の測定結果(pH、PaCO
2、PaO
2、HCO
3−、Na
+、Cl
−等)を入力する入力ウィンドウ20が表示されている。尚、上記の入力項目のうち、pH、HCO
3−、Na
+、Cl
− が代謝性酸塩基平衡異常を判定するための入力項目であり、また、PaCO
2、(及びHCO
3−)が呼吸性酸塩基平衡異常の合併の有無を判定するための入力項目である。また、pHは本発明に係る診断支援プログラムにおいては、迅速対応の警告表示を行うか否かの判定にも用いる。また、PaO
2(動脈血酸素分圧)は、A−aDO
2(肺胞気動脈血酸素分圧較差)を簡易的に求めるための入力項目である。さらに、入力ウィンドウ20にはAlbuminの入力項目があり、これには初期設定で標準値である4.4が入力されている。尚、患者の血液の検査結果に低アルブミン血症の数値が見られた場合、ここにその実測値を入力し酸塩基平衡異常の判定を補正する。
【0015】
そして、このメイン画面30に対し医療従事者等のユーザは、患者の血液の測定結果から得られたpH、二酸化炭素分圧の値(PaCO
2)、動脈血酸素分圧の値(PaO
2)、重炭酸イオン濃度の値(HCO
3−)、ナトリウムイオン濃度の値(Na
+)、クロールイオン濃度の値(Cl
−)を入力する。このとき、入力された値が常識的な値の範囲を逸脱している場合、誤入力の警告表示を行うようにしても良い。尚、pH、二酸化炭素分圧の値(PaCO
2)、動脈血酸素分圧の値(PaO
2)、重炭酸イオン濃度の値(HCO
3−)は、患者の動脈血の血液ガス分析の結果を用いることが好ましく、ナトリウムイオン濃度の値(Na
+)、クロールイオン濃度の値(Cl
−)は同時採血した静脈血の生化学検査の結果を用いることが好ましい。以上が診断支援プログラムの入力ステップS102に相当する。
【0016】
尚、上記の入力項目のうちpH値が入力されると、診断支援プログラムは入力されたpHの値を確認し、pH値がpH<7.2 もしくは 7.6<pHの場合に(ステップS200:Yes)、例えば
図3(b)に示すような迅速対応の警告表示22を表示
させる(ステップS202)。以上が診断支援プログラムのpH判定ステップに相当する。
【0017】
そして、上記の入力項目が全て入力されると、診断支援プログラムは入力されたナトリウムイオン濃度の値(Na
+)とクロールイオン濃度の値(Cl
−)と重炭酸イオン濃度の値(HCO
3−)とから下記式に基づいてアニオンギャップ値(AG)を算出する(AG算出ステップS104)。
AG=Na
+−(Cl
−+HCO
3−)
そして、例えば
図4に示すように、AG表示部32に算出したアニオンギャップ値(AG)を表示
させる。
【0018】
次に診断支援プログラムは、下記式に示すようにAG算出ステップS104で算出されたアニオンギャップ値(AG)から予め設定されている標準アニオンギャップ値(AG
base)を減算してΔAGを算出する(ΔAG算出ステップS106)。
ΔAG=AG−AG
base
そして、例えば
図4に示すように、ΔAG表示部34に算出したΔAG値を表示
させる。尚、標準アニオンギャップ値(AG
base)は酸塩基平衡異常の無い正常なアニオンギャップ値であり、通常12[mEq/L]が用いられる。そして、上記のように、実測値に基づいて算出した患者のアニオンギャップ値(AG)から標準アニオンギャップ値(AG
base)を減算することで、ΔAGは正常値(標準アニオンギャップ値(AG
base))を基準とした正負の相対値となる。これにより、ユーザはΔAG値の正負とその値とから患者の代謝性酸塩基平衡異常の状態と程度とを直感的に認識することができる。
【0019】
次に、診断支援プログラムは、入力ステップS102で入力された重炭酸イオン濃度の値(HCO
3−)と、ΔAG算出ステップS106で算出されたΔAG値と、予め設定されている標準バイカーボネイト値(B
base)とから下記式に基づいてバイカーボネイトギャップ値(BG)を算出する(BG算出ステップS108)。
BG=HCO
3−+ΔAG−B
base
そして、例えば
図4に示すように、BG表示部36に算出したBG値を表示
させる。尚、標準バイカーボネイト値(B
base)は酸塩基平衡異常の無い正常なバイカーボネイト値であり、通常24[mEq/L]が用いられる。そして、上記のように標準バイカーボネイト値(B
base)を減算することで、本診断支援プログラムにおけるバイカーボネイトギャップ値(BG)は正常値(標準バイカーボネイト値(B
base))を基準とした正負の相対値となる。これにより、ユーザはBG値の正負とその値とから患者の代謝性酸塩基平衡異常の状態と程度とを直感的に認識することができる。
【0020】
次に、診断支援プログラムは、入力ステップS102で入力された二酸化炭素分圧の値(PaCO
2)と、重炭酸イオン濃度の値(HCO
3−)と、予め設定されている代償予測定数(A)とから下記式に基づいてシーオーツー分圧ギャップ値(CG)を算出する(CG算出ステップS400)。
CG=PaCO
2−(HCO
3−+A)
そして、例えば
図4に示すように、CG表示部38に算出したCG値を表示
させる。尚、代謝性酸塩基平衡異常が一次性病態である場合には二酸化炭素分圧(PaCO
2)に代償性反応が発生し、HCO
3−の増減に合わせてPaCO
2が増減する。よって、CG値は上式のように二酸化炭素分圧の値(PaCO
2)から代償予測二酸化炭素分圧(HCO
3−+A)を減算してその値を求める。このときの代償予測定数(A)は、酸塩基平衡異常の無い正常な状態が CG=1 となるように設定するものであり通常15が用いられる。そして、上記のように代償予測二酸化炭素分圧を減算することで、本診断支援プログラムにおけるシーオーツー分圧ギャップ値(CG)は代償予測値を基準とした正負の相対値となる。これにより、ユーザはCG値の正負とその値とから患者の呼吸性酸塩基平衡異常の合併の有無と程度とを直感的に認識することができる。尚、代償予測定数(A)を15とした場合、上記の計算式に有効なHCO
3−の範囲は 10≦HCO
3−≦40 である。よって、HCO
3−に10未満もしくは40を超える値が入力された場合には、CG値の信頼性に対する警告表示を行
わせるようにしても良い。また、CG値を算出しないようにしても良い。
【0021】
また、診断支援プログラムは、入力された動脈血酸素分圧(PaO
2)と二酸化炭素分圧の値(PaCO
2)とから、A−aDO
2(肺胞気動脈血酸素分圧較差)を簡易的に求め、例えば
図4のA−aDO
2表示部12に表示
させる。そして、ユーザはこのA−aDO
2の値を確認することで、患者における呼吸器疾患の有無を判定することができる。
【0022】
次に、診断支援プログラムは
図2に示す判定処理に進み、ΔAG算出ステップS106で算出されたΔAGが 2<ΔAG であるか否かを判別する(ステップS300)。そして、2<ΔAG の場合(ステップS300:Yes)、BG算出ステップS108で算出されたBG値が −4≦BG≦4 であるか否かを判別する(ステップS302)。そして、BG値が −4≦BG≦4 の場合(ステップS302:Yes)、診断支援プログラムは代謝性酸塩基平衡判定を「AG増大型代謝性アシドーシス」と判定する(ステップS304)。そして、後述のCG判定ステップに移行する。また、BG値が −4≦BG≦4 で無い場合(ステップS302:No)、診断支援プログラムはBG値が 4<BG であるか否かを判別する(ステップS306)。そして、4<BG の場合(ステップS306:Yes)、診断支援プログラムは代謝性酸塩基平衡判定を「AG増大型代謝性アシドーシス+代謝性アルカローシス」と判定する(ステップS308)。そして、後述のCG判定ステップに移行する。また、BG値が 4<BG で無い場合(即ち、BG<−4の場合)(ステップS306:No)、診断支援プログラムは代謝性酸塩基平衡判定を「AG増大型+非AG増大(BG減少)型代謝性アシドーシス」と判定する(ステップS310)。そして、後述のCG判定ステップに移行する。尚、非AG増大(BG減少)型代謝性アシドーシスは単に非AG増大型代謝性アシドーシスとも称する。
【0023】
また、ステップS300において、ΔAGが 2<ΔAG で無い場合(ステップS300:No)、診断支援プログラムはΔAGが −2≦ΔAG≦2 であるか否かを判別する(ステップS312)。そして、−2≦ΔAG≦2 の場合(ステップS312:Yes)、BG値が −4≦BG≦4 であるか否かを判別する(ステップS314)。そして、BG値が −4≦BG≦4 の場合(ステップS314:Yes)、診断支援プログラムは代謝性酸塩基平衡判定を「代謝性酸塩基平衡異常無し」と判定する(ステップS316)。そして、後述のCG判定ステップに移行する。また、BG値が −4≦BG≦4 で無い場合(ステップS314:No)、ステップS318へ移行する。
【0024】
ステップS312においてΔAGが −2≦ΔAG≦2 で無い場合(ステップS312:No)、もしくは、ΔAGが −2≦ΔAG≦2 で、かつ BG値が −4≦BG≦4 で無い場合(ステップS314:No)、診断支援プログラムはBG値が 4<BG であるか否かを判別する(ステップS318)。そして、4<BG の場合(ステップS318:Yes)、診断支援プログラムは代謝性酸塩基平衡判定を「代謝性アルカローシス」と判定する(ステップS320)。そして、後述のCG判定ステップに移行する。また、BG値が 4<BG で無い場合(ステップS318:No)、診断支援プログラムはBG値が BG<−4 であるか否かを判別する(ステップS322)。そして、BG値が BG<−4 の場合(ステップS322:Yes)、診断支援プログラムは代謝性酸塩基平衡判定を「非AG増大(BG減少)型代謝性アシドーシス」と判定する(ステップS324)。そして、後述のCG判定ステップに移行する。また、BG値が BG<−4 で無い場合(即ち、ΔAG<−2 で、かつ −4≦BG≦4 の場合)(ステップS322:No)、診断支援プログラムは入力ステップS102で入力されたpHの値及び重炭酸イオン濃度の値(HCO
3−)が 7.4<pH で且つ 24<HCO
3− であるか否かを判別する(ステップS325)。そして、pHの値及び重炭酸イオン濃度の値(HCO
3−)が 7.4<pH で且つ 24<HCO
3− の場合(ステップS325:Yes)、診断支援プログラムは代謝性酸塩基平衡判定を「代謝性アルカローシス」と判定する(ステップS326)。そして、後述のCG判定ステップに移行する。また、上記のいずれにも該当しない場合(即ち、ΔAG<−2 で、かつ −4≦BG≦4 であり、さらにpHの値が 7.4≧pH もしくは 24≧HCO
3− の場合)(ステップS325:No)、診断支援プログラムは代謝性酸塩基平衡判定を「判定不能」とする(ステップS327)。そして、後述のCG判定ステップに移行する。以上が、本発明に係る診断支援プログラムの代謝性酸塩基平衡判定ステップに相当する。
【0025】
次に、診断支援プログラムはCG算出ステップS400で算出されたCG値が −3≦CG≦3 であるか否かを判別する(ステップS401)。そして、CG値が −3≦CG≦3 の場合(ステップS401:Yes)、診断支援プログラムは呼吸性酸塩基平衡判定(CG判定)を「呼吸性代償は適切」と判定する(ステップS402)。そして、判定処理を終了して
図1の表示ステップS110に移行する。また、CG値が −3≦CG≦3 で無い場合(ステップS401:No)、診断支援プログラムはCG値が 3<CG であるか否かを判別する(ステップS404)。そして、CG値が 3<CG の場合(ステップS404:Yes)、診断支援プログラムは呼吸性酸塩基平衡判定(CG判定)を「呼吸性アシドーシス」と判定する(ステップS406)。そして、判定処理を終了して
図1の表示ステップS110に移行する。また、CG値が 3<CG で無い場合(即ち、CG<−3 の場合)(ステップS404:No)、診断支援プログラムは呼吸性酸塩基平衡判定(CG判定)を「呼吸性アルカローシス」と判定する(ステップS408)。そして、判定処理を終了して
図1の表示ステップS110に移行する。以上が、本発明に係る診断支援プログラムのCG判定ステップに相当する。
【0026】
以上のようにして、代謝性酸塩基平衡判定ステップ及びCG判定ステップが終了すると、診断支援プログラムは例えば
図4に示すように、代謝性酸塩基平衡判定欄40に代謝性酸塩基平衡判定ステップで得られた判定結果を表示
させる。また、呼吸性酸塩基平衡判定欄42にCG判定ステップで得られた呼吸性酸塩基平衡の判定結果を表示
させる(表示ステップS110)。そして、医療従事者等のユーザはこの判定表示を見ることで、患者の代謝性酸塩基平衡異常の有無とその状態、及び呼吸性酸塩基平衡異常の合併の有無を直ちに把握することができる。
【0027】
また、本発明に係る診断支援プログラムは、ユーザの要求により以下の処理を行うようにしても良い。例えば、ユーザがメイン画面30のプロット図表示ボタン52を選択すると、診断支援プログラムはこのプロット要求を認識し(ステップS208:Yes)、例えば
図5に示すような横軸をΔAGとし縦軸をBGとしてグラフ化したプロット表示60を表示
させる。尚、このプロット表示60には、2<ΔAG で且つ −4≦BG≦4 の範囲のAG増大型代謝性アシドーシス領域(1)、2<ΔAG で且つ 4<BG の範囲のAG増大型代謝性アシドーシス+代謝性アルカローシス領域(2)、2<ΔAG で且つ BG<−4 の範囲のAG増大型+非AG増大(BG減少)型代謝性アシドーシス領域(3)、ΔAG≦2 で且つ 4<BG の範囲の代謝性アルカローシス領域(4)、ΔAG≦2 で且つ BG<−4 の範囲の非AG増大(BG減少)型代謝性アシドーシス領域(5)、ΔAG<−2 で且つ −4≦BG≦4 のステップS325に基づく判定領域(6)、−2≦ΔAG≦2 で且つ −4≦BG≦4 の範囲の代謝性酸塩基平衡異常無し領域(7)に色分け等で区分されている。そして、診断支援プログラムは、このプロット表示60(座標)中にΔAG算出ステップS106及びBG算出ステップS108で算出された患者のΔAG、BGの値をマーク62等によってプロット
させる(プロットステップS210)。このプロット表示60によってユーザは患者の代謝性酸塩基平衡異常の状態、即ち患者の代謝性酸塩基平衡異常がどの領域に属するかを直感的に把握することができる。また、患者の代謝性酸塩基平衡異常の程度を正常領域(領域(7))や各領域の境界線からの距離で直感的に把握することができる。尚、このプロット表示60は「閉じる」要求を行うことで終了する(ステップS212:Yes)。
【0028】
また、ユーザがメイン画面30もしくはプロット表示60の疾病一覧表示ボタン54を選択すると、診断支援プログラムはこの疾病一覧表示要求を認識し(ステップS220:Yes)、各代謝性酸塩基平衡異常ならびに呼吸性酸塩基平衡異常の疾病の候補と診断の手法、対処法等の情報を含む疾病一覧を表示
させる(疾病一覧表示ステップS222)。尚、この疾病一覧表示は、全ての代謝性酸塩基平衡異常ならびに呼吸性酸塩基平衡異常の情報を表示
させるようにしても良いし、代謝性酸塩基平衡判定ステップ及びCG判定ステップの判定結果と対応する情報のみを表示
させるようにしても良い。そして、ユーザはこの疾病一覧表示を参考にして患者の更なる診断と検査、対処及び治療等を迅速且つ的確に行うことができる。尚、この疾病一覧表示は「閉じる」要求を行うことで終了する(ステップS224:Yes)。
【0029】
また、ユーザがメイン画面30のコピーボタン56を選択すると、診断支援プログラムはこのコピー要求を認識し(ステップS226:Yes)、入力ウィンドウ20に入力した各入力項目の数値、及び診断支援プログラムが算出したAG値、ΔAG値、BG値、CG値、A−aDO
2値等の算出値を診断支援プログラムが起動しているOSの一時メモリ(クリップボード)上に保存
させる(コピーステップS228)。これにより、ユーザはクリップボードに保存したこれらの情報を電子カルテ等の他のソフトウェアの所定の場所に貼り付け、コピーすることができる。
【0030】
尚、ユーザが入力ウィンドウ20に入力した数値を書き換えると(ステップS230:Yes)、ステップS200に移行して、各数値の再計算と再判定が行われる。また、ユーザがメイン画面30の入力リセットボタン58を選択すると、入力ウィンドウ20の入力内容は全て消去されるとともに、ステップS102に移行して検査結果の入力待機状態となる。また、ユーザがメイン画面30の終了ボタン59もしくはメイン画面30を閉じる選択を行うと(ステップS112:Yes)、診断支援プログラムは終了する(ステップS114)。
【0031】
以上のように、本発明に係る診断支援プログラムは、患者の血液に関する測定結果を入力するだけで、自動的に患者の代謝性酸塩基平衡異常の有無とその状態及び呼吸性酸塩基平衡異常の合併の有無を判定し表示
させる。このため、ユーザはこれらの判定結果を見て、直ちに患者に必要な治療や更なる検査を行うことができる。また、本発明に係る診断支援プログラムは、ユーザの要求により患者のΔAG・BGの位置をグラフ上にプロット表示
させる。これにより、ユーザは患者の代謝性酸塩基平衡異常の属する領域及びその程度を、プロットされた位置と正常領域や各領域の境界線からの距離によって直感的に把握することができる。さらに、本発明に係る診断支援プログラムは、ユーザの要求により各代謝性酸塩基平衡異常ならびに呼吸性酸塩基平衡異常の疾病の候補と診断の手法、対処法等の情報を含む疾病一覧を表示
させる。これにより、ユーザはこの疾病一覧表示を参考にして患者の更なる診断と検査、対処及び治療等を迅速且つ的確に行うことができる。さらにまた、本発明に係る診断支援プログラムは、ユーザの要求により各入力項目の値と各算出値とをクリップボードに保存し、他のソフトウェアへのコピーを可能とする。これにより、ユーザはこれらの数値を手入力すること無く、簡単に電子カルテ等に複写することができる。
【0032】
尚、本例で示した診断支援プログラムの構成は一例であり、判定ステップの順序を含む各ステップの順序、入力項目、画面構成等は上記の例に限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【解決手段】この診断支援プログラムは、患者の血液に関する測定結果を入力するだけで、自動的に患者の代謝性酸塩基平衡異常の有無及び状態と呼吸性酸塩基平衡異常の合併の有無とを判定し表示する。このため、ユーザはこの結果を見て、直ちに患者に必要な治療や更なる検査を行うことができる。また、ユーザの要求により患者のΔAGとBGの値を座標上にプロットしてその位置を表示する。これにより、ユーザは患者の代謝性酸塩基平衡異常の帰属領域及びその程度を直感的に把握することができる。さらに、ユーザの要求により各酸塩基平衡異常の疾病一覧を表示する。これにより、ユーザは患者の更なる診断と検査、治療等を迅速且つ的確に行うことができる。