(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1部材における前記第1板状部分に対する前記第1凹部および前記第2凹部の位置関係と、前記第2部材における前記第4板状部分に対する前記第3凹部および前記第4凹部の位置関係と、が同じである、
請求項3に記載の鉄筋固定具(2)。
【背景技術】
【0002】
従来より、建設現場においては、コンクリート構造体の補強を行うために、多数の鉄筋を組み合わせ、円筒状に形成された鉄筋籠と呼ばれる組立体が使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2009−203622号公報)には、鉄筋の組立体としての鉄筋籠が記載されている。この鉄筋籠100は、
図16に示すように、長手方向が軸方向となるように円周上に配列された複数の主筋8と、主筋8の外側において各主筋と直交して巻き付けられるように設けられた複数のフープ筋9とを含んで構成されている。
【0004】
ここで、主筋8とフープ筋9とは、例えば、金属線で締結固定を行う場合や点溶接で固定する場合もあるが、固定箇所の強度をより十分なものとするために、固定具を用いて固定することが提案されている。
【0005】
このような固定具としては、例えば、両端に螺子溝が形成された金属の円筒状物を湾曲させて構成される湾曲金属部材と、湾曲金属部材の両端に対して螺合するボルトと、湾曲金属部材の両端を螺合のために貫通させる2つの穴を有しており長手方向が主筋8の軸方向に垂直な方向となった板金と、を有しているものがある。この固定具は、湾曲金属部材の長手方向中心近傍を主筋8の外側1箇所に絡ませつつ、湾曲金属部材の中心近傍から両端までの間の2箇所をフープ筋9の内側に絡ませ、さらに板金を主筋8の外側の他の箇所に押し当てて主筋8とフープ筋9を互いに固定させることができるように湾曲金属部材の両端を板厚方向に通過させてボルトで螺合して用いられる。
【0006】
ところが、鉄筋籠のような鉄筋組立体は、全体の重量が極めて重いため、鉄筋組立体の捩れ等が生じにくいように、主筋8とフープ筋9との固定強度の向上がより求められている。
【0007】
そこで、例えば、主筋8とフープ筋9との固定を強固にするために、主筋8とフープ筋9とが交わる特定の箇所において補強用ねじれ防止金具が用いられることがある。この補強用ねじれ防止金具は、外側四角板金と、内側四角板金と、4つのボルトおよびナットで構成されている。外側四角板金は、主筋8を外側から覆いつつ主筋8の外周円に沿うように湾曲して形成された部分が上下に延びており4角に螺子穴が形成されている。この外側四角板金の輪郭は、主筋8の長手方向に平行な2辺と、フープ筋9の長手方向に平行な2辺により構成されている。内側四角板金は、フープ筋9を内側から覆いつつフープ筋9の外周円に沿うように湾曲して形成された部分が水平方向に延びており4角に螺子穴が形成されている。なお、この内側四角板金の輪郭についても、外側四角板金の輪郭と同様に、主筋8の長手方向に平行な2辺と、フープ筋9の長手方向に平行な2辺により構成されている。この補強用ねじれ防止金具は、主筋8とフープ筋9とが交わる箇所の外側から外側四角板金が押し当てられ、内側から内側四角板金が押し当てられ、各四角板金の4つの螺子穴にボルトを通しつつナットで締結固定されることで用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記のような固定具は、さらにセパレータ等の他の金属部材を溶接固定するための溶接面が乏しく、角度によっては他の金属部材を溶接固定することが困難になる場合がある。また、上記のような湾曲金属部材と板金による固定具では、固定具と鉄筋との固定強度が不十分となるおそれがある。
【0009】
また、補強用ねじれ防止金具についても、例えば、他の金属部材を外側四角板金および内側四角板金の主面に対して垂直な方向に延びるように溶接固定する場合には、溶接しろは外側四角板金と内側四角板金の厚み部分だけになってしまい、溶接面が乏しくなってしまう。また、上記のような補強用ねじれ防止金具では、板金の湾曲面が主筋8やフープ筋9の側面に押し当てることにより固定されており、接触面が鉄筋の長手方向に広がっているためボルトによる締結力が分散されがちになる。このため、固定強度を高めるために板金自体が変形しにくいように外側四角板金や内側四角板金の板厚を分厚く形成することに繋がり、補強用ねじれ防止金具自体の重量が増大してしまう。
【0010】
本発明の課題は、上述した点に鑑みてなされたものであり、他の金属部材の溶接しろを確保しやすく、軽量であっても固定強度を高めることが可能な鉄筋固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1観点に係る鉄筋固定具は、1本又は2本以上の鉄筋を挟み込んで鉄筋に対して固定される鉄筋固定具であって、第1部材と、第2部材と、締め付け具と、を備えている。第1部材は、第1板状部分と、第2板状部分と、第3板状部分と、を有している。第1板状部分は、略四角形状の板状部分である。第2板状部分は、第1板状部分の長手方向に垂直な方向における一端側の縁部から第1板状部分の板厚方向に向けて延びた板状部分である。第3板状部分は、第1板状部分の長手方向に垂直な方向における他端側の縁部から第1板状部分の板厚方向であって第2板状部分が伸び出している方向と同じ方向に向けて延びた板状部分である。第2部材は、第4板状部分と、第5板状部分と、第6板状部分と、を有している。第4板状部分は、略四角形状の板状部分である。第5板状部分は、第4板状部分の長手方向に垂直な方向における一端側の縁部から第4板状部分の板厚方向に向けて延びた板状部分である。第6板状部分は、第4板状部分の長手方向に垂直な方向における他端側の縁部から第4板状部分の板厚方向であって第5板状部分が伸び出している方向と同じ方向に向けて延びた板状部分である。締め付け具は、第1部材と第2部材とにより鉄筋を締め付ける。第2板状部分には、第1板状部分側とは反対側端部に設けられており、鉄筋の一部を位置させるために第1板状部分側に向けて凹んだ第1凹部が形成されている。第3板状部分には、第1板状部分側とは反対側端部に設けられており、鉄筋の一部を位置させるために第1板状部分側に向けて凹んだ第2凹部が形成されている。第1板状部分の長手方向における第1凹部の中心位置と、第1板状部分の長手方向における第2凹部の中心位置とは、第1板状部分の長手方向においてずれるように構成されている。第5板状部分には、第4板状部分側とは反対側端部に設けられており、鉄筋の一部を位置させるために第4板状部分側に向けて凹んだ第3凹部が形成されている。第6板状部分には、第4板状部分側とは反対側端部に設けられており、鉄筋の一部を位置させるために第4板状部分側に向けて凹んだ第4凹部が形成されている。第4板状部分の長手方向における第3凹部の中心位置と、第4板状部分の長手方向において第4凹部の中心位置とは、第4板状部分の長手方向においてずれるように構成されている。
【0012】
なお、鉄筋としては、特に限定されないが、例えば、略円筒形状の鉄筋であってよく、外周から外側に突起したリブ状突起が長手方向において一定間隔で設けられている鉄筋であってもよく、例えば、異形棒鋼等が含まれる。
【0013】
この鉄筋固定具は、第1部材と第2部材が締め付け具によって鉄筋を挟み込んで締め付ける際に、第1部材の第1凹部および第2凹部と第2部材の第3凹部および第4凹部を鉄筋に対して押し付けることができ、鉄筋に対して強固に固定することができる。
【0014】
ここで、第1板状部分の長手方向において第1凹部の中心位置と第2凹部の中心位置とがずれるように配置されているため、例えば、第1板状部分の長手方向において第1凹部の中心位置と第2凹部の中心位置とがそろっている場合と比べて、第1凹部の中心位置と第2凹部の中心位置との間の距離を長くすることができ、第1部材は、鉄筋においてより離れた位置を押さえ付けることが可能になる。特に、第1板状部分の長手方向に垂直な方向の幅が小さい場合であっても、第1凹部の中心位置と第2凹部の中心位置との間の距離を長くすることができる。
【0015】
また、第4板状部分の長手方向において第3凹部の中心位置と第4凹部の中心位置とがずれるように配置されているため、例えば、第4板状部分の長手方向において第3凹部の中心位置と第4凹部の中心位置とがそろっている場合と比べて、第3凹部の中心位置と第4凹部の中心位置との間の距離を長くすることができ、第2部材は、鉄筋においてより離れた位置を押さえ付けることが可能になる。特に、第4板状部分の長手方向に垂直な方向の幅が小さい場合であっても、第3凹部の中心位置と第4凹部の中心位置との間の距離を長くすることができる。
【0016】
これにより、第1部材と第2部材の鉄筋への押し付け状態を安定化させることが可能になり、固定をより強固にすることができる。
【0017】
また、第1板状部分や第4板状部分等は鉄筋とは接していないため、第1部材や第2部材が鉄筋の外周面と面接触することが避けられており、第1部材の第1凹部および第2凹部と第2部材の第3凹部および第4凹部において集中的に鉄筋に対する押し付け力を作用させることが可能になっている。このため、固定強度を増大させるために第1部材や第2部材の厚みを増大させることを避けて、軽量化させることが可能になる。
【0018】
そして、第1部材は、第1板状部分だけでなく、第1板状部分からその板厚方向に向けて板厚分以上に延びた第2板厚部分と第3板厚部分を有している。このように板状部分による平坦面が多く形成されているため、第1部材に対して他の金属部材を溶接する際の溶接しろを確保しやすい。
【0019】
また、第2部材は、第4板状部分だけでなく、第4板状部分からその板厚方向に向けて板厚分以上に延びた第5板状部分と第6板状部分を有している。このように板状部分による平坦面が多く形成されているため、第2部材に対して他の金属部材を溶接する際の溶接しろを確保しやすい。
【0020】
なお、溶接対象となる他の金属部材としては、鉄筋以外であれば特に限定されず、棒状物や板状体であってもよく、例えば、コンクリート流し込み用の型枠のパネルを位置決めさせるセパレータ等が挙げられる。
【0021】
以上により、他の金属部材の溶接しろを確保しやすく、軽量であっても固定強度を高めることが可能になる。
【0022】
第2観点に係る鉄筋固定具は、第1観点に係る鉄筋固定具であって、第1部材と第2部材は、締め付け具によって1本の鉄筋を締め付けるように用いられる。第1部材の第1凹部および第2凹部と第2部材の第3凹部および第4凹部とを鉄筋に押し当てている固定状態において、第1凹部は第3凹部と対向し、第2凹部は第4凹部と対向する位置に設けられている。
【0023】
この鉄筋固定具は、第1部材において互いに離れて配置された第1凹部および第2凹部と、第2部材において互いに離れて配置された第3凹部および第4凹部と、を1本の鉄筋に対して押し付けて鉄筋を挟むことができるため、鉄筋固定具の鉄筋への固定をより強固にすることが可能になる。
【0024】
第3観点に係る鉄筋固定具は、第1観点に係る鉄筋固定具であって、第1部材と第2部材は、締め付け具によって互いに非平行に配置された複数本の鉄筋を締め付けるように用いられる。第1部材の第1凹部および第2凹部を複数本の鉄筋のうちの一部に押し当てて、第2部材の第3凹部および第4凹部を複数本の鉄筋のうちの他の一部に押し当てている固定状態において、締め付け具による締め付けにより第1部材と第2部材とが互いに近づくように移動する締め付け方向から見た場合に、第1凹部の中心位置と第2凹部の中心位置とを結ぶ線と第3凹部の中心位置と第4凹部の中心位置とを結ぶ線との交点が、第1板状部分および第4板状部分と重なるように構成されている。
【0025】
この鉄筋固定具は、第1部材において互いに離れて配置された第1凹部および第2凹部が複数の鉄筋のうちの一部に押し付けられ、第2部材において互いに離れて配置された第3凹部および第4凹部が複数の鉄筋のうちの他の一部に押し付けられ、これにより鉄筋同士が押し付け合うため、鉄筋同士が安定的に固定される。
【0026】
ここで、鉄筋同士が押し付け合う位置は、締め付け方向から見た場合に第1凹部と第2凹部の間であって、第3凹部と第4凹部の間に位置している。このため、第1部材が当接している鉄筋については、第1部材の第1凹部と第2凹部と、その第1凹部と第2凹部の間において反対側から押し付ける鉄筋(第2部材が当接している鉄筋)と、によって安定的に支持される。また、第2部材が当接している鉄筋については、第2部材の第3凹部と第4凹部と、その第3凹部と第4凹部の間において反対側から押し付ける鉄筋(第1部材が当接している鉄筋)と、によって安定的に支持される。
【0027】
以上により、複数の鉄筋をまとめて固定しつつ、当該固定箇所に対して鉄筋固定具をより強固に固定することが可能になる。
【0028】
第4観点に係る鉄筋固定具は、第3観点に係る鉄筋固定具であって、第1部材における第1板状部分に対する第1凹部および第2凹部の位置関係と、第2部材における第4板状部分に対する第3凹部および第4凹部の位置関係と、が同じである。
【0029】
この鉄筋固定具は、第1部材と第2部材の形状を共通化させることで、製造コストを抑えることが可能になる。
【0030】
なお、ここでの鉄筋固定具において第1部材と第2部材の形状は、完全に一致している必要はなく、第1部材における第1板状部分に対する第1凹部および第2凹部の位置関係と、第2部材における第4板状部分に対する第3凹部および第4凹部の位置関係と、が同じであればよく、当該同じである点において製造工程を共通化させることが可能になる。
【発明の効果】
【0031】
本願発明に係る鉄筋固定具では、他の金属部材の溶接しろを確保しやすく、軽量であっても固定強度を高めることが可能になっている。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、鉄筋固定具の一実施形態を例に挙げて説明するが、本願発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
(1)第1実施形態
第1実施形態の鉄筋固定具1について、鉄筋8、9に固定した状態の外観斜視図を
図1に、第1部材10の外観斜視図を
図2に、第1部材10を第2板状部分12側から見た図を
図3(
図3では、第2凹部13aの位置を点線で示している)に、第1部材10を第3板状部分13側から見た図を
図4に、第1部材10を第1板状部分11側から見た図を
図5に、第1部材10を第1板状部分11の長手方向一端側から見た図を
図6に、
図4のAで示す部分の部分拡大図を
図7に、それぞれ示す。
【0035】
鉄筋固定具1が固定される鉄筋としては、特に限定されるものではなく、例えば、
図16に記載のような鉄筋籠100において円周状に配置されており互いに平行に延びた主筋8に対して固定されてもよいし、主筋8を異なる位置に置いて周囲から囲う円周状のフープ筋9に対して固定されてもよい。また、鉄筋籠100以外の鉄筋に対して固定されてもよい。なお、鉄筋としては、例えば、D19mm以上の鉄筋であることが好ましく、D51mm以下の鉄筋であることが好ましく、D41mm以下の鉄筋であることがより好ましい。
【0036】
第1実施形態の鉄筋固定具1は、1本の鉄筋(例えば、主筋8またはフープ筋9)を締め付けるように固定されて用いられる。
【0037】
鉄筋固定具1は、第1部材10と、第2部材20と、締め付け具30と、を備えている。
【0038】
第1部材10は、第1板状部分11と、第2板状部分12と、第3板状部分13と、を有している。第1部材10は、特に限定されないが、特定の形状に加工された1枚の板金を折り曲げて形成されているものであることが好ましく、当該板金の厚みは、1.5mm以上3mm以下であり、2mmであることが好ましい。
【0039】
例えば、第1部材10は、
図8に示すような板状形状に加工された共通板金7において、第2板状部分12および第3板状部分13に相当する部分を、紙面の奥側に折り込むことで得るようにしてもよい。
【0040】
第1板状部分11は、略四角形状の板状部分である。第1板状部分11には、コンクリート充填用開口11aと、締め付け用開口11bと、シングル表記11cが形成されている。コンクリート充填用開口11aは、鉄筋固定具1が鉄筋8、9に固定された状態で鉄筋8、9と鉄筋固定具1に対してコンクリートが流し込まれるように鉄筋固定具1が用いられる場合に、鉄筋固定具1の第1部材10と第2部材20との間にもコンクリートが十分に行き渡りやすくするために設けられている開口である。特に限定されないが、コンクリート充填用開口11aは、本実施形態では第1板状部分11の長手方向に並ぶように2箇所(第1板状部分11の板厚方向に貫通するように)設けられている。締め付け用開口11bは、後述する締め付け具30による締め付けを行うために設けられている開口であり、具体的にはボルト31を貫通させるための開口である。締め付け用開口11bは、本実施形態では、コンクリート充填用開口11aよりも第1板状部分11の長手方向外側において2箇所に設けられている。シングル表記11cは、第1部材10が1本の鉄筋に対して用いられるものであることを示すために(後述の第2実施形態の第1部材50と区別することができるように)、第1部材10の任意の箇所に行われる刻印であり、本実施形態では第1板状部分11の中央近傍に設けられている。なお、このシングル表記11cは、第1部材10の他の形状部分が作り上げられた後に最終的に付与されることが好ましい。この第1板状部分11の長手方向の長さ(
図3のa+b)は140mm程度であり、長手方向に垂直な方向の長さ(
図6のd)は36mm程度である。
【0041】
第2板状部分12は、第1板状部分11の長手方向に垂直な方向における一端側の縁部10xから第1板状部分11の板厚方向の一方側に向けて延びた板状部分である。第2板状部分12は、第1板状部分11に対して溶接されてもよいが、
図8に示すような特定の形状に加工された板状の共通板金7において縁部10xで折り曲げて形成されたものであることが望ましい。第2板状部分12には、第1板状部分11側とは反対側端部に設けられており、鉄筋8、9の一部を案内させて位置させるために第1板状部分11側に向けて凹んだ第1凹部12aが形成されている。第1凹部12aは、第2板状部分12の先端において略二等辺三角形の形状(底辺を第1板状部分11側とは反対側とする)を切り抜いて得られる二等辺部分に相当する箇所に形成されている。そして、第1凹部12aにおいては、当該二等辺部分において辺に垂直な方向に凹凸した凹凸形状が連なるように構成されている。第2板状部分12における第1板状部分11の板厚方向における長さ(
図6のe)は18mm程度である。第2板状部分12における第1凹部12aの中心位置12aaは、第1凹部12aのうちで最も第1板状部分11側に近い箇所であり、第1板状部分11の上面からの距離(
図3のc)が8mm程度である。そして、第1凹部12aの中心位置12aaは、第2板状部分12において中心からずれて配置されており(第1板状部分11の長手方向における中心からずれて配置されており)、第1板状部分11の長手方向において、一端側からの距離(
図3のa)が53.5mm程度、他端側からの距離(
図3のb)が86.5mm程度となっている。第1板状部分11の長手方向における、第2板状部分12中の第1凹部12aの割合は、3割以上6割以下が好ましく、4割以上5割以下がより好ましい。
【0042】
第3板状部分13は、第1板状部分11の長手方向に垂直な方向における他端側の縁部10yから第1板状部分11の板厚方向であって第2板状部分12が伸び出している方向と同じ方向に向けて延びた板状部分である。第3板状部分13についても、特定の形状に加工された板状の板金において縁部10yで折り曲げて形成されたものであることが望ましい。第3板状部分13には、第1板状部分11側とは反対側端部に設けられており、鉄筋8、9の一部を案内させて位置させるために第1板状部分11側に向けて凹んだ第2凹部13aが形成されている。第2凹部13aは、第3板状部分13の先端において略二等辺三角形の形状(底辺を第1板状部分11側とは反対側とする)を切り抜いて得られる二等辺部分に相当する箇所に形成されている。そして、第2凹部13aにおいては、当該二等辺部分における各辺に垂直な方向に凹凸した凹凸形状が連なるように構成されている。第3板状部分13における第1板状部分11の板厚方向における長さや、第3板状部分13における第2凹部13aの中心位置13aaの第1板状部分11の上面からの距離については、第2板状部分12と同様である。そして、第2凹部13aの中心位置13aaは、第3板状部分13において中心からずれて配置されており(第1板状部分11の長手方向における中心からずれて配置されており)、第1板状部分11の長手方向において、上記他端側からの距離が53.5mm程度、上記一端側からの距離が86.5mm程度となっている。第1板状部分11の長手方向における、第3板状部分13中の第2凹部13aの割合は、3割以上6割以下が好ましく、4割以上5割以下がより好ましい。第3板状部分13の第2凹部13aの当該凹凸形状は、
図7に示すように、凹凸の1つ1つを構成する各辺の長さ(
図7のf、g)が2mm程度であり、上記二等辺三角形の底辺に対する傾斜角度(
図7のh)が62.5°の辺と、傾斜角度(
図7のi)が27.5°の辺と、によって構成されている。なお、第2板状部分12の第1凹部12aの当該凹凸形状についても、第3板状部分13の第2凹部13aの凹凸形状と同様である。
【0043】
なお、第2板状部分12と第3板状部分13とは、点対称の関係にあることが好ましい。また、第2板状部分12の第1凹部12aと第3板状部分13の第2凹部13aとは、第1板状部分11の長手方向に垂直な方向から見た場合に、一部が重なって配置されていることが好ましい。
【0044】
以上のようにして、第1板状部分11の長手方向における第1凹部12aの中心位置12aaと、第1板状部分11の長手方向における第2凹部13aの中心位置13aaとは、第1板状部分11の長手方向においてずれるように構成されている。なお、第1板状部分11の板厚方向から見た場合に、第1凹部12aの中心位置12aaと第2凹部13aの中心位置13aaとを結ぶ線が、第1板状部分11の長手方向となす角のうち角度の小さい方が40°以上50°以下であることが好ましく、45°程度であることがより好ましい。
【0045】
第2部材20は、第4板状部分21と、第5板状部分22と、第6板状部分23と、を有している。第2部材20は、特に限定されないが、特定の形状に加工された1枚の板金を折り曲げて形成されているものであることが好ましく、当該板金の厚みは、1.5mm以上3mm以下であり、2mmであることが好ましく、第1部材10の厚みと同じであることが好ましい。
【0046】
例えば、第2部材20は、
図8に示すような板状形状に加工された共通板金7において、第5板状部分22および第6板状部分23に相当する部分を、紙面の手前側に折り込むことで得るようにしてもよい。
【0047】
なお、後述するように、第2実施形態の鉄筋固定具2の第2部材20と、第1実施形態の鉄筋固定具1の第2部材20とは、同じものであるため、
図1等において現れていない部分は、
図9等を参照のこと。
【0048】
第4板状部分21は、略四角形状の板状部分である。第4板状部分21には、コンクリート充填用開口21aと、締め付け用開口が形成されている。コンクリート充填用開口21aは、第1部材10のコンクリート充填用開口11aと同様である。締め付け用開口は、第1部材10の締め付け開口10bと同様であり、後述する締め付け具30による締め付けを行うために設けられている開口であり、具体的にはボルト31を貫通させるための開口であり、ナットの外径よりも小さな開口径を有している。なお、この第4板状部分21の長手方向の長さや長手方向に垂直な方向の長さは、第1部材10の第1板状部分11と同様である。
【0049】
第5板状部分22は、第4板状部分21の長手方向に垂直な方向における一端側の縁部20xから第4板状部分21の板厚方向の一方側に向けて延びた板状部分である。第5板状部分22は、第4板状部分21に対して溶接されてもよいが、
図8に示すような特定の形状に加工された板状の共通板金7において縁部20xで折り曲げて形成されたものであることが望ましい。第5板状部分22には、第4板状部分21側とは反対側端部に設けられており、鉄筋8、9の一部を案内させて位置させるために第4板状部分21側に向けて凹んだ第3凹部22aが形成されている。第3凹部22aは、第5板状部分22の先端において略二等辺三角形の形状(底辺を第4板状部分21側とは反対側とする)を切り抜いて得られる二等辺部分に相当する箇所に形成されている。そして、第3凹部22aにおいては、当該二等辺部分における各辺に垂直な方向に凹凸した凹凸形状が連なるように構成されている。当該凹凸形状は、第1部材10の第1凹部12aや第2凹部13aと対応した形状となっている。第5板状部分22における第4板状部分21の板厚方向における長さや、第5板状部分22における第3凹部22aの中心位置の第4板状部分21の上面からの距離は、第1部材10と同様である。そして、第3凹部22aの中心位置が、第5板状部分22において中心からずれて配置されている点(第4板状部分21の長手方向における中心からずれて配置されている点)は第1部材10の第1凹部12aと同様である。なお、第4板状部分21の長手方向における、第5板状部分22中の第3凹部22aの割合は、3割以上6割以下が好ましく、4割以上5割以下がより好ましい。
【0050】
第6板状部分23は、第4板状部分21の長手方向に垂直な方向における他端側の縁部20yから第4板状部分21の板厚方向であって第5板状部分22が伸び出している方向と同じ方向に向けて延びた板状部分である。第6板状部分23についても、特定の形状に加工された板状の板金において縁部20yで折り曲げて形成されたものであることが望ましい。第6板状部分23には、第4板状部分21側とは反対側端部に設けられており、鉄筋8、9の一部を案内させて位置させるために第4板状部分21側に向けて凹んだ第4凹部23aが形成されている(第4凹部23aについては
図9参照)。第4凹部23aは、第6板状部分23の先端において略二等辺三角形の形状(底辺を第4板状部分21側とは反対側とする)を切り抜いて得られる二等辺部分に相当する箇所に形成されている。そして、第4凹部23aにおいては、当該二等辺部分における各辺に垂直な方向に凹凸した凹凸形状が連なるように構成されている。当該凹凸形状は、第1部材10の第1凹部12aや第2凹部13aと対応した形状となっている。第6板状部分23における第4板状部分21の板厚方向における長さや、第6板状部分23における第4凹部23aの中心位置の第4板状部分21の上面からの距離は、第1部材10と同様である。そして、第4凹部23aの中心位置が、第6板状部分23において中心からずれて配置されている点(第4板状部分21の長手方向における中心からずれて配置されている点)は第1部材10の第2凹部13aと同様である。なお、第4板状部分21の長手方向における、第6板状部分23中の第4凹部23aの割合は、3割以上6割以下が好ましく、4割以上5割以下がより好ましい。
【0051】
なお、第5板状部分22と第6板状部分23とは、点対称の関係にあることが好ましい。また、第5板状部分22の第3凹部22aと第6板状部分23の第4凹部23aとは、第4板状部分21の長手方向に垂直な方向から見た場合に、一部が重なって配置されていることが好ましい。
【0052】
以上のようにして、第4板状部分21の長手方向における第3凹部22aの中心位置と、第4板状部分21の長手方向における第4凹部23aの中心位置とは、第4板状部分21の長手方向においてずれるように構成されている。なお、第4板状部分21の板厚方向から見た場合に、第3凹部22aの中心位置と第4凹部23aの中心位置とを結ぶ線が、第4板状部分21の長手方向となす角のうち角度の小さい方が40°以上50°以下であることが好ましく、45°程度であることがより好ましい。
【0053】
締め付け具30は、第1部材10と第2部材20とにより鉄筋8,9を挟んだ状態で締め付けるためのものであり、本実施形態においてはボルト31とナット32を備えている(ナット32については
図9参照)。ボルト31は、第1部材10の締め付け用開口11bと第2部材20の締め付け用開口とのいずれ側から差し込まれてもよく、他方側においてナット32により締め付けることで、第1部材10と第2部材20の距離を近づける。これにより、鉄筋8、9は、第1部材10と第2部材20によって締め付けられ、鉄筋固定具1は鉄筋8、9に固定される。なお、ボルト31またはナット32のいずれか一方は、第1部材10か第2部材20のいずれかに対して予め溶接等により固定されていてもよく、ナット32が予め第1部材10か第2部材20のいずれかに対して予め固定されていることが好ましい。この場合において、例えば、締め付ける鉄筋8、9の外径の大きさに応じた長さのボルト31が複数種類用意されている場合に、締め付ける鉄筋8、9の外径の大きさに応じた長さのボルト31を選びつつ、ナット32については予め固定されていることで紛失等を避けて操作性を向上させることができる。
【0054】
以上の構成において、第1部材10の第1凹部12aおよび第2凹部13aと第2部材20の第3凹部22aおよび第4凹部23aとを鉄筋8、9に押し当てている固定状態において、第1凹部12aは第3凹部22aと対向し、第2凹部13aは第4凹部23aと対向する位置に設けられている。具体的には、鉄筋固定具1では、第1板状部分11の板厚方向から見た場合に、第1部材10の第1凹部12aの中心位置12aaと第2部材20の第3凹部22aの中心位置とが対向し、第1部材10の第2凹部13aの中心位置13aaと第2部材20の第4凹部23aの中心位置とが対向するように構成されている。
【0055】
以上の第1実施形態の鉄筋固定具1によれば、第1部材10と第2部材20によって鉄筋8,9が挟み込まれた状態で締め付け具30によって締め付けることで、第1部材10の第1凹部12aおよび第2凹部13aと第2部材20の第3凹部22aおよび第4凹部23aを鉄筋8、9に対して押し付けることができ、鉄筋8,9に対して鉄筋固定具1に固定することができる。
【0056】
ここで、第1凹部12aの中心位置12aaと第2凹部13aの中心位置13aaとがずれるように配置されているため、これらがそろっている場合と比べて、第1凹部12aの中心位置12aaと第2凹部13aの中心位置13aaとの間の距離を長くすることができ、第1部材10は、鉄筋8、9におけるより離れた位置を押さえ付けることができている。例えば、仮に、第1板状部分11の長手方向における同じ位置に第1凹部12aの中心位置12aaと第2凹部13aの中心位置13aaが設けられている場合(ずれていない場合)には、中心位置間の距離が短くなり、鉄筋8,9に対して固定された鉄筋固定具のぐらつきが生じるおそれがある。これに対して、第1凹部12aの中心位置12aaと第2凹部13aの中心位置13aaとをずらすことで、これらの間の距離を長くすることができているため、特に、第1板状部分11の長手方向に垂直な方向の幅が小さく、第1部材10が細長い形状となっている場合であっても、鉄筋8,9に対して固定された鉄筋固定具1のぐらつきを抑制することが可能になっている。以上の点は、第2部材20においても同様である。
【0057】
また、鉄筋固定具1が鉄筋8、9に固定された状態では、第1板状部分11や第4板状部分41等は鉄筋8、9とは接していないため、第1部材10や第2部材20が鉄筋8、9の外周面と面接触することが避けられており、第1部材10の第1凹部12aおよび第2凹部13aと第2部材20の第3凹部22aおよび第4凹部23aにおいて集中的に鉄筋8,9に対する押し付け力を作用させることが可能になっている。しかも、第1板状部分11に対して第2板状部分12や第3板状部分13が折り込まれているため、比較的平面的な形状の部材により鉄筋8、9を挟み込む場合と比較して、第1板状部分11等のしなりが生じにくい(第4板状部分21に対して第5板状部分22や第6板状部分23が折り込まれている点も同様)。このため、固定強度を増大させようとして第1部材10や第2部材20の厚みを増大させることが不要になり、軽量化させることが可能になる。
【0058】
また、第1部材10では、第1板状部分11だけでなく、第1板状部分11からその板厚方向に向けて板厚分以上に延びた第2板状部分12と第3板状部分13を有している。同様に、第2部材20では、第4板状部分21だけでなく、第4板状部分21からその板厚方向に向けて板厚分以上に延びた第5板状部分22と第6板状部分23を有している。このように板状部分による平坦面が多く形成されているため、第1部材10や第2部材20に対して他の金属部材(たとえば、セパレータ99)を溶接する際の溶接しろを確保しやすい。なお、溶接対象となる他の金属部材としては、鉄筋以外であれば特に限定されず、棒状物や板状体であってもよく、例えば、コンクリート流し込み用の型枠のパネルを位置決めさせるセパレータ等が挙げられる。なお、
図1では、第2部材20の第5板状部分22の平面部分に対して他の金属部材としてのセパレータ99の一部を溶接固定した様子を例示しているが、他の金属部材は、第1部材10の第1板状部分11の平面部分、第2板状部分12の平面部分、第3板状部分13の平面部分、第2部材20の第4板状部分21の平面部分、第6板状部分23の平面部分に対して他の金属部材を溶接固定してもよい。また、第1部材10の第2板状部分12と第2部材20の第5板状部分22の両方において溶接箇所が生じるように固定してもよいし、第1部材10の第3板状部分13と第2部材20の第6板状部分23の両方において溶接箇所が生じるように固定してもよい。
【0059】
(2)第2実施形態
第2実施形態の鉄筋固定具2について、複数の鉄筋8、9に固定した状態の外観斜視図を
図9に、第1部材50の外観斜視図を
図10に、第1部材50を第2板状部分52側から見た図を
図11(
図11では、第2凹部53aの位置を点線で示している)に、第1部材50を第3板状部分53側から見た図を
図12に、第1部材50を第1板状部分51側から見た図を
図13に、第1部材50を第1板状部分51の長手方向一端側から見た図を
図14に、
図12のBで示す部分の部分拡大図を
図15に、それぞれ示す。
【0060】
第2実施形態の鉄筋固定具2の第1部材50は、上述のように、第1実施形態の鉄筋固定具1の第1部材10と同じ形状に加工された共通板金7を用いて製造されてもよい。このような共通板金7としては、例えば、
図8に示す形状に加工された板金が挙げられる。
【0061】
また、第2実施形態の鉄筋固定具2の第2部材20は、第1実施形態の鉄筋固定具1の第2部材20と同じものである。
【0062】
例えば、第1部材50および第2部材20は、
図8に示すような板状形状に加工された共通板金7において、第2板状部分52および第3板状部分53に相当する部分や第5板状部分22および第6板状部分23に相当する部分を、紙面の手前側に折り込むことで得るようにしてもよい。
【0063】
そして、第2実施形態の鉄筋固定具2の第1部材50は、第2部材20と実質的に同じ寸法および同じ形状であり主としてその姿勢や用い方だけが異なっていることが好ましいが、これに限られるものではない。なお、上記第1実施形態では、第1部材10等の好ましい厚みは2mmであるとしたが、第2実施形態における互いに非平行に配置された複数の鉄筋8,9を挟み込む鉄筋固定具2の第1部材50や第2部材20の厚みとしては2.3mm程度とすることが好ましい。
【0064】
鉄筋固定具2が固定される鉄筋としては、特に限定されるものではなく、例えば、第1実施形態において説明した鉄筋8、9と同様のものが挙げられる。鉄筋固定具2が固定される対象となる複数の鉄筋としては、外径が共通の複数の鉄筋であってもよいし、外径が異なるものが含まれた複数の鉄筋であってもよい。外径が異なる複数の鉄筋の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば、1本のD22mmの鉄筋と1本のD13mmの鉄筋の組み合わせや、1本のD38mmと2本のD19mmの鉄筋の組み合わせ等が挙げられる。
【0065】
以下、鉄筋固定具2について詳細に説明する。
【0066】
鉄筋固定具2は、第1部材50と、第2部材20と、締め付け具30と、を備えている。
【0067】
第1部材50は、第1板状部分51と、第2板状部分52と、第3板状部分53と、を有している。
【0068】
第1板状部分51は、略四角形状の板状部分である。第1板状部分51には、コンクリート充填用開口51aと、締め付け用開口51bが形成されている。コンクリート充填用開口51aと締め付け用開口51bは、それぞれ第1実施形態のコンクリート充填用開口11aと締め付け用開口51bと同様である。また、鉄筋固定具2の第1部材50には、第1実施形態の鉄筋固定具1の第1部材10とは異なり、シングル表記11cは設けられていない。この第1板状部分51の長手方向の長さ、長手方向に垂直な方向の長さについても、第1実施形態の第1部材10と同様である。
【0069】
第2板状部分52は、第1板状部分51の長手方向に垂直な方向における一端側の縁部50xから第1板状部分51の板厚方向の一方側に向けて延びた板状部分である。第2板状部分52には、第1板状部分51側とは反対側端部に設けられており、鉄筋8、9の一部を案内させて位置させるために第1板状部分51側に向けて凹んだ第1凹部52aが形成されている。第1凹部52aは、第2板状部分52の先端において略二等辺三角形の形状(底辺を第1板状部分51側とは反対側とする)を切り抜いて得られる二等辺部分に相当する箇所に形成されている。そして、第1凹部52aにおいては、当該二等辺部分において辺に垂直な方向に凹凸した凹凸形状が連なるように構成されている。第2板状部分52における第1凹部52aの中心位置52aaは、第1凹部52aのうちで最も第1板状部分51側に近い箇所である。なお、第2板状部分52における第1板状部分51の板厚方向における長さや、第1板状部分51の上面から第1凹部52aの中心位置52aaまでの距離等は、第1実施形態の第1部材10と同様である。そして、第1凹部52aの中心位置52aaは、第2板状部分52において中心からずれて配置されており(第1板状部分51の長手方向における中心からずれて配置されており)、第1板状部分51の長手方向において、一端側からの距離(
図11のj)が86.5mm程度、他端側からの距離(
図11のk)が53.5mm程度となっている。第1板状部分11の長手方向における、第2板状部分12中の第1凹部12aの割合は、3割以上6割以下が好ましく、4割以上5割以下がより好ましい。なお、第1凹部52aの凹凸の1つ1つを構成する各辺の長さや傾斜角度については、上記第1実施形態の第1凹部12aや第2凹部13aにおける長さや傾斜角度と同様である。
【0070】
第3板状部分53は、第1板状部分51の長手方向に垂直な方向における他端側の縁部50yから第1板状部分51の板厚方向であって第2板状部分52が伸び出している方向と同じ方向に向けて延びた板状部分である。第3板状部分53には、第1板状部分51側とは反対側端部に設けられており、鉄筋8、9の一部を案内させて位置させるために第1板状部分51側に向けて凹んだ第2凹部53aが形成されている。第2凹部53aは、第3板状部分53の先端において略二等辺三角形の形状(底辺を第1板状部分51側とは反対側とする)を切り抜いて得られる二等辺部分に相当する箇所に形成されている。そして、第2凹部53aにおいては、当該二等辺部分における辺に垂直な方向に凹凸した凹凸形状が連なるように構成されている。第3板状部分53における第2凹部53aの中心位置53aaは、第2凹部53aのうちで最も第1板状部分51側に近い箇所である。なお、第3板状部分53における第1板状部分51の板厚方向における長さや、第1板状部分51の上面から第2凹部53aの中心位置53aaまでの距離等は、第1実施形態の第1部材10と同様である。そして、第2凹部53aの中心位置53aaは、第3板状部分53において中心からずれて配置されており(第1板状部分51の長手方向における中心からずれて配置されており)、第1板状部分51の長手方向において、上記他端側からの距離が86.5mm程度、上記一端側からの距離が53.5mm程度となっている。第1板状部分51の長手方向における、第3板状部分53中の第2凹部53aの割合は、3割以上6割以下が好ましく、4割以上5割以下がより好ましい。なお、第2凹部53aの凹凸の1つ1つを構成する各辺の長さや傾斜角度については、上記第1実施形態の第1凹部12aや第2凹部13aにおける長さや傾斜角度と同様である。
【0071】
なお、第2板状部分52と第3板状部分53とは、点対称の関係にあることが好ましい。また、第2板状部分52の第1凹部52aと第3板状部分53の第2凹部53aとは、第1板状部分51の長手方向に垂直な方向から見た場合に、一部が重なって配置されていることが好ましい。
【0072】
以上のようにして、第1板状部分51の長手方向における第1凹部52aの中心位置52aaと、第1板状部分51の長手方向における第2凹部53aの中心位置53aaとは、第1板状部分51の長手方向においてずれるように構成されている。なお、第1板状部分51の板厚方向から見た場合に、第1凹部52aの中心位置52aaと第2凹部53aの中心位置53aaとを結ぶ線が、第1板状部分51の長手方向となす角のうち角度が小さい方について40°以上50°以下であることが好ましく、45°程度であることがより好ましい。
【0073】
なお、第2実施形態に係る鉄筋固定具2における第2部材20は、上記第1実施形態に係る鉄筋固定具1の第2部材20と実質的に同じであるため、説明を省略する。
【0074】
なお、第2実施形態に係る鉄筋固定具2における締め付け具30についても、上記第1実施形態に係る鉄筋固定具1の締め付け具30と実質的に同じであるため、説明を省略する。
【0075】
上記第1実施形態の鉄筋固定具1では、第1板状部分11の板厚方向から見た場合に、第1部材10の第1凹部12aの中心位置12aaと第2部材20の第3凹部22aの中心位置とが対向し、第1部材10の第2凹部13aの中心位置13aaと第2部材20の第4凹部23aの中心位置とが対向するように構成されている。これに対して、第2実施形態の鉄筋固定具2では、第1板状部分51の板厚方向から見た場合に、第1部材50の第1凹部52aの中心位置52aaと第2部材20の第3凹部22aの中心位置とは対向せずにずれており、第1部材50の第2凹部53aの中心位置53aaと第2部材20の第4凹部23aの中心位置とも対向せずにずれるように構成されている。そして、第2実施形態の鉄筋固定具2では、第1板状部分51の板厚方向から見た場合(締め付け具30による締め付けにより第1部材50と第2部材20とが互いに近づくように移動する締め付け方向から見た場合)に、第1部材50の第1凹部52aの中心位置52aaと第1部材50の第2凹部53aの中心位置53aaとを結ぶ線と、第2部材20の第3凹部22aの中心位置と第2部材20の第4凹部23aの中心位置とを結ぶ線と、の交点が、第1部材50の第1板状部分51と重なり、第2部材20の第4板状部分21とも重なるように構成されている。なお、第1板状部分51の板厚方向から見た場合の当該2つの線がなす角のうち角度の小さい方の角が40°以上50°以下であることが好ましく、45°であることがより好ましい。
【0076】
また、
図9では、第1部材50の第2板状部分52の平面部分に対して他の金属部材としてのセパレータ99の一部を溶接固定した様子を例示しているが、他の金属部材は、第1部材50の第1板状部分51の平面部分、第3板状部分53の平面部分、第2部材20の第4板状部分21の平面部分、第5板状部分22の平面部分、第6板状部分23の平面部分に対して他の金属部材を溶接固定してもよい。また、第1部材50の第2板状部分52と第2部材20の第5板状部分22の両方において溶接箇所が生じるように固定してもよいし、第1部材50の第3板状部分53と第2部材20の第6板状部分23の両方において溶接箇所が生じるように固定してもよい。
【0077】
この第2実施形態に係る鉄筋固定具2では、第1部材50において互いに離れて配置された第1凹部52aおよび第2凹部53aが複数の鉄筋8、9のうちの鉄筋9(フープ筋9)のみに押し付けられ、第2部材20において互いに離れて配置された第3凹部22aおよび第4凹部23aが複数の鉄筋8、9のうちの鉄筋8(主筋8)のみに押し付けられ、これにより鉄筋8と鉄筋9が互いに押し付け合うため、鉄筋8、9同士を安定的に固定させることができている。
【0078】
ここで、鉄筋8と鉄筋9が押し付け合う位置は、締め付け具30による締め付け方向から見た場合に第1凹部52aと第2凹部53aの間であって、第3凹部22aと第4凹部23aの間に位置している。このため、第1部材50が当接している鉄筋9については、第1部材50の第1凹部52aと第2凹部53aと、その第1凹部52aと第2凹部53aの間において反対側から押し付ける鉄筋8(第2部材20が当接している鉄筋8)と、によって安定的に支持される。また、第2部材20が当接している鉄筋8については、第2部材20の第3凹部22aと第4凹部23aと、その第3凹部22aと第4凹部23aの間において反対側から押し付ける鉄筋9(第1部材50が当接している鉄筋9)と、によって安定的に支持される。
【0079】
以上により、第2実施形態に係る鉄筋固定具2によれば、複数の鉄筋8、9をまとめて安定的に固定しつつ、当該固定箇所に対して鉄筋固定具2をより強固に固定することが可能になっている。なお、第1部材50と第2部材20が挟む複数の鉄筋の種類は特に限定されないため、例えば、第1部材50が鉄筋8に当接しており、第2部材20が鉄筋9に当接していてもよい。
【0080】
また、第2実施形態に係る鉄筋固定具2においても、第1実施形態に係る鉄筋固定具1と同様に、鉄筋に対する押し付け状態を安定化させた強固な固定が可能であり、部材の肉厚化を避けて軽量化させることも可能になっており、他の金属部材との溶接しろを確保しやすい点は同様である。
【0081】
(3)他の実施形態
(3−1)
上述したように、第1実施形態の鉄筋固定具1の第1部材10と第2部材20との両方を、
図8に示す共通板金7から製造するという製造方法も有用である。
【0082】
また、第1実施形態の鉄筋固定具1の第1部材10と第2実施形態の鉄筋固定具2の第1部材50との両方を、
図8に示す共通板金7から製造するという製造方法も有用である。
【0083】
さらには、第1実施形態の鉄筋固定具1の第1部材10および第2部材20と、第2実施形態の鉄筋固定具2の第1部材50および第2部材20の全てを、
図8に示す共通板金7から製造するという製造方法も有用である。
【0084】
これらの場合には、
図8に示す共通板金7を製造するまでの工程を共通化させることができ、製造コストを削減することが可能になる。
【0085】
(3−2)
上記各実施形態では、略三角形状が切り取られたような形状の第1〜第4凹部を例に挙げて説明した。
【0086】
しかし、第1〜第4凹部としては、鉄筋をより安定的に保持できれば具体的な形状に限定されるものではなく、例えば、円弧状に凹んだ凹部であってもよい。
【0087】
(3−3)
上記各実施形態では、ボルト31とナット32からなる締め付け具30を例に挙げて説明した。
【0088】
しかし、締め付け具としては、第1部材10、50と第2部材20とを間に鉄筋を介在させた状態で締め付けることが可能なものであれば特に限定されるものではない。
【0089】
(3−4)
上記第2実施形態では、鉄筋固定具2が、主として鉄筋8と鉄筋9の2本を挟む場合を例に挙げて説明した。
【0090】
しかし、鉄筋固定具2は、第1部材50と第2部材20とのいずれか一方に複数本の鉄筋が当接するようにして用いてもよいし、第1部材50においても複数本の鉄筋が当接し第2部材20において複数本の鉄筋が当接するようにして用いてもよい。
【解決手段】鉄筋8,9を挟み込む鉄筋固定具2であって、第1凹部52aと第2凹部53aを有する第1部材50と、第3凹部22aと第4凹部23aを有する第2部材20と、締め付け具30と、を備え、長手方向において、第1凹部52aと第2凹部53aとがずれ、第3凹部22aと第4凹部23aとがずれるように設けられている。