(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018688
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】光ファイバ、及び光ファイバを製造する方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/02 20060101AFI20161020BHJP
C03B 37/028 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
G02B6/02 461
G02B6/02 466
C03B37/028
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-223271(P2015-223271)
(22)【出願日】2015年11月13日
(62)【分割の表示】特願2012-73372(P2012-73372)の分割
【原出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2016-75918(P2016-75918A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2015年12月10日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/革新的光ファイバ技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 正俊
(72)【発明者】
【氏名】谷口 浩一
(72)【発明者】
【氏名】大泉 晴郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 守
(72)【発明者】
【氏名】澤田 久
(72)【発明者】
【氏名】木下 貴陽
(72)【発明者】
【氏名】八若 正義
(72)【発明者】
【氏名】石田 智彦
(72)【発明者】
【氏名】楠 修一
【審査官】
野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−522680(JP,A)
【文献】
特開昭61−26005(JP,A)
【文献】
特開昭59−3026(JP,A)
【文献】
特開2007−121381(JP,A)
【文献】
田中正俊、八若正義、藤巻洋介、楠修一、谷口浩一,コネクタ接続を考慮した多角形クラッドのマルチコアファイバ,信学技報,日本,電子情報通信学会,2012年 5月,OFT2012-2,pp.5-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02−6/036
6/10
6/44
C03B 37/00−37/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコアと、前記複数のコアの周囲を囲繞するクラッドとを備えたマルチコアの光ファイバであって、
光ファイバの横断面において前記クラッドの外形はルーローの多角形である、光ファイバ。
【請求項2】
前記ルーローの多角形はルーローの七角形であり、前記コアの数が7である、請求項1に記載されている光ファイバ。
【請求項3】
光ファイバの横断面において、中心部に1つの前記コアが配置され、
前記中心部と、前記クラッドの外形の一つの角部とを結ぶ線上に別の前記コアが配置されている、請求項2に記載されている光ファイバ。
【請求項4】
前記ルーローの多角形はルーローの五角形であり、前記コアの数が7である、請求項1に記載されている光ファイバ。
【請求項5】
前記ルーローの多角形はルーローの九角形であり、前記コアの数が10である、請求項1に記載されている光ファイバ。
【請求項6】
光ファイバの横断面において、中心部に1つの前記コアが配置され、
前記中心部と、前記クラッドの外形の各角部とを結ぶ線上に別の前記コアが配置されている、請求項5に記載されている光ファイバ。
【請求項7】
複数のコアと、前記複数のコアの周囲を囲繞するクラッドとを備えたマルチコアの光ファイバを製造する方法であって、
複数のコア前駆部と、前記複数のコア前駆部の周囲を囲繞するクラッド前駆部とを備えたプリフォームを用意する工程と、
前記プリフォームを加熱して延伸して光ファイバを形成する線引工程と
を備え、
前記プリフォームは、横断面において前記クラッド前駆部の外形がルーローの七角形又は九角形であり、
前記光ファイバは、前記線引工程において、横断面の形状が前記プリフォームと相似形に形成される、光ファイバを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバおよびそれを製造する方法に関し、特にマルチコアを有する光ファイバおよびそれを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネットの普及およびインターネットを利用したサービスが近年急速に増大してきている。それに伴って、光ファイバによる通信量も急速に増大してきており、光伝送路の大容量化及び多重化が求められている。光伝送路の大容量化及び多重化を実現するために様々な方法が研究されているが、その一つに複数のコアが1本の光ファイバに備わっているマルチコア光ファイバを用いる方法がある。
【0003】
マルチコア光ファイバは空間分割多重伝送を行う光伝送路であって、相対的に屈折率が低いクラッド中に相対的に屈折率が高い複数のコア領域を設けることによって同時に複数の光伝送が可能な領域を持たせたものである(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−32524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ファイバを用いて通信等を行う場合には、通信路における光ファイバ同士の接続及び通信機器内における光ファイバ同士の接続を行う必要がある。コアが一つであるシングルコア光ファイバであれば、双方の光ファイバのコアを単純に位置合わせをして突き合わせて接続すればよいが、マルチコア光ファイバの場合はコアが複数であるので位置合わせが容易ではない。マルチコア光ファイバであっても、接続するマルチコア光ファイバ同士のそれぞれのコアを、光の伝送損失を最小にするように、接続部において位置を一致させて、2つのコアの端面同士をほぼ全面的に一致させて接続する必要がある。
【0006】
上記のようなマルチコア光ファイバ同士の接続の課題について、特許文献1では、複数のコアを含むコア群の配置を光ファイバ軸に対する2π回転に関してのみ対称とすることでマルチコア光ファイバ同士を接続する際の回転角度を一意的に定めることができる技術が開示されている。
【0007】
特許文献1に開示されている技術は例えば位置検出用のコアを配置することにより、2本の光ファイバの軸合わせを容易に行おうとするものであるが、それぞれの光ファイバ自体を固定してファイバ軸周りの回転が起こらないようにしてからではないと、2本のファイバ同士の軸合わせは上手くできない。つまり、光ファイバを固定せずフリーな状態にしておくとファイバ軸周りに回転してしまうために、ある状態で位置検出用のコアの位置が特定されたとしても別の光ファイバと接続するためにその光ファイバを移動させると、光ファイバが回転して位置検出用のコアの位置が変化してしまい、結果としてコア同士が一致せずに接続されてしまう、という問題があった。光ファイバ同士の接続を行う場合に、通常はV溝に光ファイバを載せて端面同士を突き合わせるのであるが、V溝に載せただけでは複数のコア同士の位置が特定できていない上、V溝内でファイバが回転してコアの位置が変わってしまうため、コア同士を位置ずれなく接合することは不可能に近い。特許文献1の光ファイバであっても、最初にV溝に光ファイバを固定して、その後光ファイバを中心軸周りに回転させて位置合わせをする必要があり、工程が2つあるため手間と時間がかかる。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、各コアの位置を容易に特定することができ、その位置を容易に固定することができるマルチコアの光ファイバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の光ファイバは、複数のコアと、前記複数のコアの周囲を囲繞するクラッドとを備えたマルチコアの光ファイバであって、光ファイバの横断面において前記クラッドの外形には、少なくとも1つの直線部が存している構成を備えている。
【0010】
クラッドの外形には、少なくとも2つの直線部が存していることが好ましい。
【0011】
ある好適な実施形態では、クラッドの外形が四角形である。そして、コアの数が9であることが好ましく、光ファイバの横断面において、中心部に1つの前記コアが配置され、前記中心部と、前記クラッドの外形の各角部とを結ぶ線上に別の前記コアが配置されていることが好ましい。
【0012】
別の好適な実施形態では、クラッドの外形が六角形である。そして、コアの数が7、13又は19であることが好ましく、光ファイバの横断面において、中心部に1つの前記コアが配置され、前記中心部と、前記クラッドの外形の各角部とを結ぶ線上に別の前記コアが配置されていることが好ましい。
【0013】
別の好適な実施形態では、クラッドの外形が九角形である。そして、コアの数が10であることが好ましく、光ファイバの横断面において、中心部に1つの前記コアが配置され、前記中心部と、前記クラッドの外形の各角部とを結ぶ線上に別の前記コアが配置されていることが好ましい。
【0014】
本発明の第2の光ファイバは、複数のコアと、前記複数のコアの周囲を囲繞するクラッドとを備えたマルチコアの光ファイバであって、光ファイバの横断面において前記クラッドの外形はルーローの多角形である構成を備えている。そして、前記ルーローの多角形がルーローの七角形である場合はコアの数が7であることが好ましく、光ファイバの横断面において、中心部に1つの前記コアが配置され、前記中心部と、前記クラッドの外形の各角部とを結ぶ線上に別の前記コアが配置されていることが好ましい。前記ルーローの多角形がルーローの九角形である場合はコアの数が7であることが好ましく、光ファイバの横断面において、中心部に1つの前記コアが配置され、前記中心部と、前記クラッドの外形の各角部とを結ぶ線上に別の前記コアが配置されていることが好ましい。前記ルーローの多角形がルーローの五角形である場合はコアの数が7であることが好ましい。
【0015】
本発明の第1の光ファイバの製造方法は、複数のコアと、前記複数のコアの周囲を囲繞するクラッドとを備えたマルチコアの光ファイバを製造する方法であって、複数のコア前駆部と、前記複数のコア前駆部の周囲を囲繞するクラッド前駆部とを備えたプリフォームを用意する工程と、前記プリフォームを加熱して延伸して光ファイバを形成する線引工程とを備え、前記プリフォームは、横断面において前記クラッド前駆部の外形に少なくとも1つの直線部が存しており、前記光ファイバは、前記線引工程において、横断面の形状が前記プリフォームと相似形に形成される構成を備えている。
【0016】
クラッド前駆部の外形には、少なくとも2つの直線部が存していることが好ましい。クラッド前駆部の外形は、四角形、六角形又は九角形であることがより好ましい。
【0017】
本発明の第2の光ファイバの製造方法は、複数のコアと、前記複数のコアの周囲を囲繞するクラッドとを備えたマルチコアの光ファイバを製造する方法であって、複数のコア前駆部と、前記複数のコア前駆部の周囲を囲繞するクラッド前駆部とを備えたプリフォームを用意する工程と、前記プリフォームを加熱して延伸して光ファイバを形成する線引工程とを備え、前記プリフォームは、横断面において前記クラッド前駆部の外形がルーローの七角形又は九角形であり、前記光ファイバは、前記線引工程において、横断面の形状が前記プリフォームと相似形に形成される構成を備えている。
【発明の効果】
【0018】
マルチコアの光ファイバであって、光ファイバの横断面においてクラッドの外形には、少なくとも1つの直線部が存しているので、光ファイバを置く台に直線部に対応した平らな部分を作成しておけば、コアの位置を容易に特定でき、そのコアの位置が変わってしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態1に係る光ファイバの端面を示す模式的な図である。
【
図2】実施形態1に係る別の光ファイバの端面を示す模式的な図である。
【
図3】実施形態1に係る他の光ファイバの端面を示す模式的な図である。
【
図4】実施形態1に係る光ファイバを台に載せたところを示す模式的な図である。
【
図5】実施形態1に係る他の光ファイバを台に載せたところを示す模式的な図である。
【
図6】実施形態1に係る他の光ファイバをフェルールに収納したところを示す模式的な図である。
【
図7】実施形態1に係る他の光ファイバを別の台に載せたところを示す模式的な図である。
【
図8】実施形態に係る光ファイバを作製する過程を模式的に示した図である。
【
図9】実施形態1の変形例に係る光ファイバの端面を示す模式的な図である。
【
図10】実施形態1の別の変形例に係る光ファイバの端面を示す模式的な図である。
【
図11】実施形態1の他の変形例に係る光ファイバの端面を示す模式的な図である。
【
図12】実施形態1のさらに別の変形例に係る光ファイバの端面を示す模式的な図である。
【
図13】実施形態2に係る光ファイバの端面を示す模式的な図である。
【
図14】実施形態2に係る別の光ファイバの端面を示す模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願においてルーローの多角形とは、正奇数角形を基にして、その正奇数角形の各頂点を中心とし、最も長い対角線を半径とする円を描いた場合の、それらの共通部分である図形であり、正奇数角形の辺となる線分が向かい合う頂点を中心とする円弧で置き換えられた図形のことである。
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
【0022】
(実施形態1)
実施形態1に係るマルチコアの光ファイバの端面(ファイバ軸に対して垂直な面)を
図1に示す。本実施形態の光ファイバ101は石英からなるクラッド21の中において、ファイバ中心軸部分にコア10が1本、中心軸の周囲に6本のコア10,10,…(周辺コア)が正六角形の配置で置かれている。即ち各コア10,10,…はクラッド21に囲繞されている。クラッド21は、光ファイバ101の横断面(ファイバ軸に対して垂直な断面)において、円の一部が切り取られて一つの弦と一つの弧とからなる、いわゆるD形と呼ばれる外形となっており、弧に対する中心角が約290度である。周辺のコア10,10,…はファイバ中心軸が6回回転軸である対称の位置に配置されている。周辺のコア10の一つが、ファイバ中心軸からクラッド21の弦に下ろした垂線の上に配置されている。
【0023】
7本のコア10,10,…はファイバ中心軸に沿って延びており、石英よりも高屈折率にするため石英にGe等がドープされてなっており、それぞれシングルモードファイバとして光信号を伝搬させる。
【0024】
本実施形態の光ファイバ101は上述のようなコア10,10,…の配置とクラッド21外形の特徴を備えているので、
図4に示すような台60の上にクラッド21の弦の部分が台60の搭載面60aに接するように光ファイバ101を置くと、搭載面60aに対して各コア10,10,…の位置、配置が特定される。即ち、搭載面60aに対して垂直な一つの線上に3つのコア10,10,10が並んでおり、そのうちの真ん中のコア10が中心軸上のコアであり、残りの4つのコア10,10,…は、搭載面60aに対して垂直な一つの線上に並ぶ両端のコア10,10とともに正六角形の各頂点に位置している。
【0025】
本実施形態の光ファイバ101を2本用意して端面同士を接続する場合には、7つのコア10,10,…の配置・位置をそれぞれ合わせて突き合わせる必要がある。なぜならば接合部分においてコア10の位置がずれていたら接続損失が生じるからである。本実施形態では2本の光ファイバ101をそれぞれ台60に載せるだけで搭載面60aに対して各コア10,10,…の位置、配置が特定され、しかも搭載面60aにクラッド21の平面部分が面同士で接しているため、光ファイバ101が中心軸周りに回転することがなく、各コア10,10,…の位置、配置はこのまま固定される。このため、台60に載せた光ファイバ101の端面同士を突き合わせるだけで、中心軸周りの回転方向のずれは生じなく、中心軸位置にあるコア10同士の位置を合わせれば7つのコア10,10,…全てが接続損失がほとんど無いように接続される。このように本実施形態の光ファイバ101は、クラッド21の弦の部分を台60の搭載面60aに載せると中心軸周りの回転方向のコアの位置変動がなくなり、光ファイバ101のコア10,10,…位置を容易に特定できる。特に、コア位置の中心軸周りの回転によるずれをなくすことが可能になる。
【0026】
本実施形態には、ファイバ外形において2つ以上の平面部分を備えているマルチコアの光ファイバも含まれる。このような場合は光ファイバの横断面において弦が2つ以上存する。例えば
図2に示すような、ファイバ横断面においてファイバ外形が正方形である光ファイバ102も本実施形態の光ファイバとなる。この光ファイバ102は9つのコア10,10,…を備えたマルチコアファイバであり、ファイバ横断面においてコア10,10,…は正方形に配置されている。即ち、ファイバ中心軸の位置に1つのコア10が置かれ、その周囲の4つの辺において各辺に3つずつ、辺の両端と中央にコア10が配置されている。コア10,10,…で形成された正方形の各辺は、クラッド22の外形の正方形の各辺と平行であり、ファイバ中心軸に位置するコア10とクラッド22の各角部分(各頂点)とを結ぶ線上には、正方形配置の角部に当たるコア10が存している。
【0027】
また、
図3に示すような、ファイバ横断面においてファイバ外形が正六角形である光ファイバ103も本実施形態の光ファイバである。この光ファイバ103は7つのコア10,10,…を備えたマルチコアファイバであり、ファイバ横断面においてコア10,10,…は正六角形に配置されている。即ち、ファイバ中心軸の位置に1つのコア10が置かれ、その周囲において正六角形の各頂点に当たる位置にそれぞれコア10,10,…が配置されている。コア10,10,…で形成された正六角形の各辺は、クラッド23の外形の正六角形の各辺と平行であり、ファイバ中心軸に位置するコア10とクラッド23の各角部分(各頂点)とを結ぶ線上には、正六角形の各頂点に位置するコア10が存している。
【0028】
ファイバ横断面が正六角形である光ファイバ103は、
図5に示すように2つの搭載面62a,62bが設けられた台62に載せられると、2つの搭載面62a,62bのなす角が120度であるので、クラッド外形の一組の隣り合う平面部分が2つの搭載面62a,62bにそれぞれぴったりと接触して、安定した状態で置かれ続けることになる。このように光ファイバのクラッド外形における2つの平面部分にそれぞれ接触する搭載面62a,62bを備えた台62があると、2つの搭載面で光ファイバ103が挟まれてほぼ固定された状態となるため、横断面がD形の光ファイバ101のように平面部分が1つだけの光ファイバに比べてファイバの中心軸周りの回転移動がより確実に阻止されて、2つの搭載面62a,62bに対する各コア10,10,…の位置、配置の特定がより確実になる。横断面が正方形の光ファイバ102も同様であり、この光ファイバ102では90度で交わる2つの搭載面を有する台を用いればよい。
【0029】
また、ファイバ接続の際にフェルールを用いる場合、ファイバを収納するフェルール内の空孔部の形状をファイバ外形(クラッド外形)と同じにすると、フェルールが台60,62の役割を果たす。
図6に横断面が正六角形の光ファイバ103を収納したフェルール70の端部を模式的に示す。フェルール70の内部が、横断面正六角形の空孔となっており、その空孔に光ファイバ103が収納される。光ファイバ103の外面はフェルールの空孔内壁に接触して、コア10,10,…位置が特定されると共にその位置が変化しないように光ファイバ103が固定される。フェルール70の外面側に内部空孔の正六角形の形状・位置と対応するマーク、例えば正六角形の一つの角に対応するマークを付しておけば、そのマークを利用して光ファイバ103の接合時にコアの位置合わせを容易に行うことができる。
【0030】
図7では、4本の光ファイバ103,103,…を一対の台64,65で挟み込んで固定している。光ファイバ103は
図3に示すものと同じである。これは、4芯のファイバテープの接続に応用した例である。4本の光ファイバ103,103,…を平行に並べて被覆をしてテープ状(リボン状)としたもの同士を接続する際に
図7に示す一対の台64,65を用いる。なお、接続する際には被覆を剥がして光ファイバ103を剥き出しにしている。上下から4本の光ファイバ103,103,…を挟み込むことで、4本の光ファイバ103,103,…をコア位置およびファイバ間位置を特定状態に保って確実に固定することができ、接続損失を最小にして容易に接続できる。
【0031】
本実施形態のマルチコアの光ファイバを製造するには様々な方法があるが、例えば、円柱形の石英からなるファイバ母材として、円柱の中心軸に沿って横断面円形の複数の孔を開けた多孔パイプを利用する方法がある。例えば横断面が正六角形の光ファイバ103を作成する場合は、正六角形の配置及びその中心位置に孔を開けた多孔パイプの各孔に屈折率の高いコア部を中心に備えた円柱形のコア母材を挿入した後、加熱、延伸を行ってプリフォーム前駆体を作成し、このプリフォーム前駆体の外面を研削して六角柱のプリフォームを作製する。このプリフォームを加熱、線引をして光ファイバを作製する。プリフォームの横断面は、光ファイバと同じ形状、コア配置となっている。
【0032】
プリフォームから光ファイバを作製する工程を
図8に模式的に示している。複数のコア前駆部(相対的に屈折率が高い部分)がクラッド前駆部(相対的に屈折率が低い部分)の中に囲繞されているプリフォーム200を用意する。クラッド前駆部の外形は正六角形であり、コア前駆部がその中に横断面において正六角形に配置されている。プリフォーム200を電気炉300の中で加熱して柔らかくさせる。この状態でプリフォーム200の端部を延伸すると外形が六角形を保ったままで延伸されていき、光ファイバ100となる。光ファイバ100は外径測定器400で外径を測定されながら線引されている。ファイバ径が一定になるように外径測定器400の出力によってプリフォーム200の送り速度及び光ファイバ100の引き取り速度を調整している。それからダイス500によって外面保護のための樹脂コーティングが施され、巻き取りボビン600に光ファイバ100は巻き取られる。
【0033】
電気炉300において温度を調整することにより、プリフォーム200の横断面形状(コア配置を含む)と光ファイバ100の横断面形状とが相似形になっている。このようにして本実施形態の光ファイバ100が作製される。
【0034】
なお、上述のプリフォーム200を作製するのに、横断面の外形が六角形の石英パイプの中に円柱形のコア母材と石英ロッドとを詰め込む、単孔パイプ使用のスタックアンドドロー方式を採用してもよい。
【0035】
次にコアの数、配置の変形例を示す。
図9はクラッド24外形が正六角形であり、その中に13本のコア10,10,…が配置されている光ファイバ104である。コア10,10,…は、
図3に示す光ファイバ103の7本のコア10,10,…に加えて、コア10,10,…がなす正六角形の各辺を一辺とする正三角形の頂点(中心軸ではなく、正六角形の外側の頂点)にそれぞれ配置されている。この場合も台62や台64,65、フェルール70等を用いれば上述の効果と同じ効果が奏せられる。また、光ファイバ103よりも光ファイバ104の方がコアの数が2倍弱であるので、より多くの情報を1本のファイバで送受信することができる。
【0036】
図10はクラッド25外形が正六角形であり、その中に19本のコア10,10,…が配置されている光ファイバ105である。コア10,10,…は、
図9に示す光ファイバ104の13本のコア10,10,…に加えて、コア10,10,…が二重の正六角形配置となるように外側の正六角形の各頂点部分にそれぞれ配置されている。この光ファイバ105も上記の効果を奏する。
【0037】
図11はクラッド26外形が正六角形であり、その中に37本のコア10,10,…が配置されている光ファイバ106である。コア10,10,…は、
図10に示す光ファイバ104の19本のコア10,10,…に加えて、コア10,10,…が三重の正六角形配置となるように最も外側の正六角形の各頂点部分及び各辺を三等分する点にそれぞれ配置されている。この光ファイバ106も上記の効果を奏する。
【0038】
次にクラッド外形、コアの数、配置の変形例を示す。
図12はクラッド27外形が正九角形であり、その中に10本のコア10,10,…が配置されている光ファイバ107である。コア10,10,…は、ファイバ中心軸に1本、ファイバ中心軸とクラッド27の外形の各角部分(各頂点)とを結ぶ線上にそれぞれ配置されている。この光ファイバ107も上記の効果を奏する。
【0039】
(実施形態2)
実施形態2の光ファイバは、ファイバ横断面におけるクラッド外形がルーローの多角形の形状を有しているマルチコアの光ファイバである。
図13に示す光ファイバ108は、クラッド28の横断面外形がルーローの七角形であり、
図14に示す光ファイバ109は、クラッド29の横断面外形がルーローの九角形である。
【0040】
図13の光ファイバ108は、コア10,10,…が7本あり、その配置は中心軸に1本、その周囲に正六角形の各頂点に6本というものである。コア10,10,…のうち、正六角形の頂点の1つだけがファイバ中心軸とクラッド28外形の七角形の角とを結ぶ線上にある。このため、そのコアが7本のうちの特定のコアであることが判り、そのコアとの位置関係において他の6本のコアも特定される。即ち、中心軸と角とを結ぶ線上にあるコアがマーカーとなって全てのコアを特定することが可能となっている。
【0041】
図14の光ファイバ108は、
図12に示す光ファイバ107のクラッド外形をルーローの九角形に変えたものであり、その他の点は、光ファイバ107と同じである。
【0042】
実施形態2の光ファイバ108,109は、クラッド外形がルーローの多角形であるので、ファイバ中心軸に対して垂直な方向からファイバ径を観察した場合、ファイバ中心軸周りに光ファイバが回転しても常に同じ径が観察される。実施形態1の光ファイバは、同様に観察した場合、例えばクラッド外形が正六角形であると最大径と最小径が2:1.73となる。
図8に示す装置で光ファイバを作製する際に、光ファイバ100は外径測定器400で外径を測定されながら線引されていて、ファイバ径が一定になるように外径測定器400の出力によってプリフォーム200の送り速度及び光ファイバ100の引き取り速度を調整しているため、実施形態1の光ファイバはもし中心軸周りに回転してしまうと、光ファイバの太さにムラが生じる。しかし、実施形態2の光ファイバであれば中心軸周りに回転してしまうことがあっても、ファイバ径の変化が生じないので、光ファイバの太さは一定に保たれる。実施形態2の光ファイバは、実施形態1の光ファイバの効果と同じ効果を奏する。
【0043】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。
【0044】
クラッドやコアの物質構成は、上記の実施形態の構成に限定されず、光ファイバとして機能する構成であればどのような構成であってもよい。また、横断面におけるクラッド外形はD形や正方形、正六角形、正九角形、ルーローの七角形・九角形に限定されず、その他の多角形やルーローの五角形、円を2以上の弦で切り欠いた形状であってもよい。コアの数も複数であればいくつでもよい。横断面におけるクラッド外形がルーローの五角形の場合、コアは7本が好ましく、中心軸時1本、中心軸の周りに正六角形の各頂点にそれぞれ1本ずつ配置されていることが好ましい。この場合中心軸とクラッドの角部の一つとを結ぶ線上に1つのコアが配置されていてもよい。
【0045】
図5に示す台62に対して、同様の形状の台をもう一つ用意して、光ファイバ103を上下から挟み込んで固定してもよい。
【0046】
フェルール内の空孔部形状は六角形に限定されず、D形や正方形や正九角形、あるいはルーローの多角形等であってもよい。
【0047】
光ファイバのクラッドの角部は、欠けてしまうことを防止するため、角を落として丸めておくことができる。
【0048】
コアの配置は、中心軸とクラッド外形の角部とを結ぶ線上に他のコアを配置しなくても構わない。しかしながら中心軸とクラッド外形の角部とを結ぶ線上に他のコアを置かない配置では、コアを伝搬する光の電界分布のクラッドへの染み出しを十分に低減させるためにクラッド径を上記の実施形態のコア配置に比べて大きくする必要があり、その場合はファイバ径が大きくなってしまう。ファイバ径が大きくなると、材料となる石英の量を増やす必要があり、また、ファイバを曲げたときの歪みが大きくなって断線しやすくなるため注意が必要である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように、本発明に係る光ファイバは、光通信用等として有用である。
【符号の説明】
【0051】
10 コア
21 クラッド
22 クラッド
23,24,25,26 クラッド
27 クラッド
28 クラッド
29 クラッド
101 光ファイバ
102 光ファイバ
103、104,105,106 光ファイバ
107 光ファイバ
108 光ファイバ
109 光ファイバ
200 プリフォーム