特許第6018699号(P6018699)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6018699点火器及び点火器組立体及びその検知システム並びに検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018699
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】点火器及び点火器組立体及びその検知システム並びに検知方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/264 20060101AFI20161020BHJP
   G06K 19/04 20060101ALI20161020BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   B60R21/264
   G06K19/04 010
   G06K19/077 220
   G06K19/077 248
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-506404(P2015-506404)
(86)(22)【出願日】2013年3月18日
(86)【国際出願番号】JP2013057710
(87)【国際公開番号】WO2014147721
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2015年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233491
【氏名又は名称】株式会社日立システムズ
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山内 繁
(72)【発明者】
【氏名】友井 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】由井 貴章
(72)【発明者】
【氏名】酒井 俊行
(72)【発明者】
【氏名】小田 愼吾
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−125650(JP,A)
【文献】 特開2008−013031(JP,A)
【文献】 特開平02−000595(JP,A)
【文献】 特開2006−282091(JP,A)
【文献】 特開2009−272768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R21/16−21/33
F42B 3/10
G06K19/04
G06K19/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と、該発熱体に接触した状態で配置された着火薬と、
絶縁層に貫通し、前記発熱体に電気的に接続された導電ピンとを有し、
前記導電ピンの他端は、前記発熱体に着火電流を供給する電流供給部品が接続されるよう、前記絶縁層から露出しており、
前記絶縁層内でかつ前記導電ピンの近傍に、ICタグが配置されており、
前記ICタグは、ICチップと、該ICチップの周囲に巻かれたコイルアンテナとを有し、
前記ICタグは、前記コイルアンテナの面が前記導電ピンと直角若しくはそれに近い角度に配置されている
ことを特徴とする点火器。
【請求項2】
点火器と点火器カラーとが一体化された点火器組立体であって、
前記点火器は、
発熱体と、該発熱体に接触した状態で配置された着火薬と、
絶縁層に貫通し、前記発熱体に電気的に接続された導電ピンとを有し、
前記導電ピンの他端は、前記発熱体に着火電流を供給する電流供給部品が接続されるよう、前記絶縁層から露出しており、
前記絶縁層内でかつ前記導電ピンの近傍に、前記ICタグが配置されており、
前記ICタグは、ICチップと、該ICチップの周囲に巻かれたコイルアンテナとを有し、
前記ICタグは、前記コイルアンテナの面が前記導電ピンと直角若しくはそれに近い角度に配置されている
ことを特徴とする点火器組立体。
【請求項3】
請求項2において、
前記導電ピンは複数個設けられており、
前記絶縁層内でかつ前記複数の導電ピンの何れか一つの近傍に、前記ICタグが配置されており、
前記絶縁層を取り囲むように配置され前記点火器組立体を保持する前記点火器カラーに、前記ICタグの位置に対応した位置決め部が設けられている
ことを特徴とする点火器組立体。
【請求項4】
請求項3において、
前記位置決め部は、前記点火器カラーのフランジ部に設けられ前記複数の導電ピンの中心を通る軸線に直角方向に伸びた凹凸構造である
ことを特徴とするICタグ内蔵の点火器組立体。
【請求項5】
請求項において、
前記位置決め部は、前記点火器カラーのフランジ部に設けられた、光学式検知機構による検知用のマークである
ことを特徴とするICタグ内蔵の点火器組立体。
【請求項6】
ICタグ通信用リーダ/ライタ装置を用いた、点火器組立体の検知システムであって、
前記点火器組立体は
金属製シールド容器と、
前記金属製シールド容器内に固定された点火器とを備え、
前記点火器は、
発熱体と、
絶縁層を介して前記発熱体に電気的に接続された複数の導電ピンとを有し、
前記複数の導電ピンの他端は、前記金属製シールド容器内の電流供給部品の接続用空間に延びており、
前記絶縁層内でかつ前記複数の導電ピンの何れか一つの近傍に、ICタグが配置されており、
前記ICタグは、ICチップと、該ICチップの周囲に巻かれたコイルアンテナとを有し、
前記ICタグは、前記コイルアンテナの面が前記一つの近傍の導電ピンと直角若しくはそれに近い角度に配置されており、
前記接続用空間を、前記ICタグ通信用リーダ/ライタ装置により前記ICタグを検出する窓として利用する
ことを特徴とする点火器組立体の検知システム。
【請求項7】
ICタグ通信用リーダ/ライタ装置を用いた、点火器組立体の検知システムであって、
前記点火器組立体は、
金属製シールド容器と、
前記金属製シールド容器内に固定された点火器とを備え、
前記点火器は、
発熱体と、
絶縁層を介して前記発熱体に電気的に接続された複数の導電ピンとを有し
前記複数の導電ピンの他端は、前記金属製シールド容器内の電流供給部品の接続用空間に延びており
前記絶縁層内でかつ前記複数の導電ピンの何れか一方の近傍に、ICタグが配置されており、
前記接続用空間は、前記ICタグ通信用リーダ/ライタ装置により前記ICタグを検出する窓として機能し
前記金属製シールド容器に、前記ICタグの位置に対応した、前記ICタグ通信用リーダ/ライタ装置用の、位置決め部が設けられており、
前記ICタグ通信用リーダ/ライタ装置は、ICタグ通信用の電磁波を放射するアンテナ回路及び検出部を備えており、
前記ICタグ通信用リーダ/ライタ装置の係合部を前記金属製シールド容器の前記位置決め部に嵌合させた状態において、前記検出部のコイル部が前記ICタグのコイルの面と平行になり、
前記検出部と前記ICタグが所定の距離内に固定されているときは、前記検出部と前記ICタグは磁束により電磁結合し、
前記検出部と前記ICタグが所定の距離外に固定されているときは、前記検出部と前記ICタグは磁束による検出可能な範囲の外となる
ことを特徴とする点火器組立体の検知システム。
【請求項8】
請求項7において、
前記ICタグ通信用リーダ/ライタ装置は、
本体の内部に設けられたアンテナ回路と、
前記本体の先端部に一体的に設けられた前記検出部とを備えており
前記検出部は、前記本体の先端から外に向かって伸びた信号伝送部に接続され、
前記検出部は、前記信号伝送部の軸に直角な方向において、検知コイルとして構成されており、
前記係合部を前記位置決め部と機械的に嵌合させることにより、該検出部が前記点火器の前記電流供給部品の接続用空間内の所定の位置に固定される
ことを特徴とする点火器組立体の検知システム。
【請求項9】
請求項において、
前記ICタグ通信用リーダ/ライタ装置は、
本体の内部に設けられた第一のアンテナ回路と、
前記本体とは別部材として一体に設けられた、第二のアンテナ、信号伝送部、及び検出部と
前記第二のアンテナに設けられた前記係合部とを備えており、
前記検出部は、前記信号伝送部の軸に直角な方向において、検知コイルとして構成されており、
前記係合部を前記位置決め部と機械的に嵌合させることにより、該検出部が前記点火器の前記接続用空間内の所定の位置に固定される
ことを特徴とする点火器組立体の検知システム。
【請求項10】
ICタグ通信用リーダ/ライタ装置を用いた、点火器組立体の検知方法であって、
前記点火器組立体は、
位置決め部を有する金属製シールド容器と、
前記金属製シールド容器内に固定された点火器とを備え、
前記点火器は、
発熱体と
絶縁層を介して前記発熱体に電気的に接続された複数の導電ピンとを有し、
前記複数の導電ピンの他端は、前記金属製シールド容器内の電流供給部品の接続用空間に延びており、
前記絶縁層内でかつ前記複数の導電ピンの何れか一方の近傍に、ICタグが配置されており、
前記ICタグ通信用リーダ/ライタ装置は、ICタグ通信用の電磁波を放射するアンテナ回路及び検出部を備えており、
前記ICタグ通信用リーダ/ライタ装置を前記金属製シールド容器にセットし、
前記接続用空間を窓として利用し、前記ICタグを検出する
ことを特徴とする点火器組立体の検知方法
【請求項11】
請求項10において、
位置決め部を有する金属製シールド容器と
前記ICタグ通信用リーダ/ライタ装置を前記金属製シールド容器の前記位置決め部にセットし、
前記検出部と前記ICタグとの磁束による電磁結合を検知したとき時、前記複数の導電ピンが前記点火器に対して正規の位置に接続されていると判定し、
前記検出部と前記ICタグとの磁束による電磁結合を検出できない時、前記複数の導電ピンが前記点火器に対して正規の位置に接続されていないと判定する
ことを特徴とする点火器組立体の検知方法
【請求項12】
請求項11において、
前記ICタグは、ICチップと、該ICチップの周囲に巻かれたコイルアンテナとを有し、
前記ICタグは、前記コイルアンテナの面が前記導電ピンと直角に配置されており、
前記ICタグは、高周波の1次電流から2次電流を誘導することで動作し、該ICタグの情報が2次電流から1次電流へと逆に辿るように誘導されることにより、前記ICタグ通信用リーダ/ライタ装置とのICタグ通信を行う
ことを特徴とする点火器組立体の検知方法。
【請求項13】
請求項12において、
前記ICタグ通信用リーダ/ライタ装置が前記金属製シールド容器に嵌合したとき、前記検出部のコイル部が前記ICタグのコイルの面と平行になり、かつ、前記検出部と前記ICタグが所定の距離内に固定されているときのみ、前記検出部と前記ICタグが磁束により電磁結合し前記ICタグとのICタグ通信を行う、
ことを特徴とする点火器組立体の検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火器及び点火器組立体及びその検知システム並びに検知方法に係り、特に、エアバッグ装置のような電気的な着火を利用する装置に用いられるICタグ内蔵の点火器及び点火器組立体及びその検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグシステムは、ドライバーやパイロットを保護するために衝突時にエアバッグを瞬間的に膨張させるためのガス発生器(インフレータ)として、電気式点火器若しくは点火器組立体(イニシエータ、以下、特に区別する必要のない時は単に点火器組立体)を備えている。この点火器組立体は、点火器を樹脂と一体成形した状態でさらに金属製カラーをかしめて取り付けたもの、若しくは点火器と金属製カラーを樹脂で一体成形したものであり、いずれも点火用の発熱体を内部に有し、これに接続された導電ピンが外部に延びた構造になっている。
【0003】
特許文献1には、絶縁体で被覆されたLSIなどの電子部品と並んで無線タグ(RFIDタグあるいは単にICタグと呼ぶ)が配置され全体を絶縁体で被覆した構造とし、梱包された状態でも電子部品の情報を正確に把握できるようにしたものが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、エアバッグを作動する電力及びエアバッグの作動信号を車体側からエアバッグ側に非接触で伝送可能なエアバッグ装置であって、エアバッグ側に、火薬を点火あるいは着火するための点火回路やスクイブと共に、当該エアバッグ側が有するエアバッグの固有情報を保有するRFICタグ(RFIDタグあるいは単にICタグと呼ぶ)を備え、車体側とステアリング側との間を非接触状態で結合した場合に、接続されるべきエアバッグを車体側から確認可能としたものが開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、微小ループを備え小型金属RFIDタグと通信するRFIDタグリーダ/ライタ装置が開示されている。
【0006】
特許文献4には、センターピン端部と円筒状のスリーブとブリッジワイヤが架橋され、さらにインナーカップ内に形成される空間に着火薬を充填した状態で非導電性のカップ型ケースで覆われたイニシエータが開示されている。
【0007】
特許文献5には、金属製のカップ内に、1本の導電ピンが固定されたヘッダが配置され、導電ピンとヘッダをブリッジワイヤで接続したイニシエータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-226574号公報
【特許文献2】特開2007-62492号公報
【特許文献3】特開2008−90813号公報
【特許文献4】米国特許3971320号公報
【特許文献5】米国特許5686691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
緊急時にエアバッグによりドライバーやパイロットを確実に保護するために、点火装置の正確な組み立て製造が求められる。
さらに、点火装置を含む電子部品は安全上の見地から金属製シールドで保護するのが望ましい。
【0010】
製品や部品を管理する上では、従来はバーコードを製品や部品に貼り付ける、あるいは製品や部品に直接番号を刻印するなどの方法が行われていた。この場合製品や部品が、バーコードを貼り付けるスペースや、目視確認できる刻印が可能な程度の大きさを有することが必要である。しかし点火器組立体は大きさ自体が小さく、従来のようなバーコードの貼り付けが困難であり、また直接製造情報を刻印しても小さいため目視での確認が困難であること、および点火器組立体は最終段階で樹脂モールドされてしまい、外部から目視や機械式読み取り器で刻印を読むことが出来ないため、点火器に対しては直接製造情報を記録して、個々に管理することを行っていなかった。しかしエアバッグ等の重要保安部品に万一異常があれば、原因を解析し、対象範囲を特定するため各部品の番号、製造記録を追跡するが、点火器は上記のように個々に管理がされていないため、不具合範囲を不必要に広く設定せざるを得なかったり、点火器に対して再発防止の対策が行いにくかったりという課題があった。
【0011】
特許文献1の電子部品は、エアバッグ用を想定したものではない。特許文献2のRFIDタグ(ICタグ)は、エアバッグ収納体の上に配置された電力蓄積用コンデンサの直ぐ上、換言すると、エアバッグ収納体の外に配置されており、金属製シールドで保護されてはいない。
【0012】
仮に、特許文献1の金属製シールドでは保護されていない構成をイニシエータに応用した場合は、電子部品が絶縁物で覆われているだけであるため、作動時の衝撃から電子部品の内部を保護できない。
【0013】
特許文献2乃至5にも、エアバッグ収納体内の点火器組立体にICタグを組み込むことの記載はない。
【0014】
本発明の1つの目的は、点火器や点火器組立体にICタグを設け、信頼性の向上と同時にICタグを組み込んでも従来と外形寸法の変わらない点火器組立体及びその検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の代表的なものを示すと次の通りである。点火器は、発熱体と、該発熱体に接触した状態で配置された着火薬(以降点火薬ともいうことがある)と、絶縁層を貫通して前記発熱体に電気的に接続された導電ピンとを有し、前記導電ピンの他端は、前記発熱体に着火電流を供給する部品(電流供給部品、あるいは、電流供給部材ともいう。)が接続されるよう、前記絶縁層から露出しており、前記絶縁層内でかつ前記導電ピンの近傍に、ICタグが配置されていることを特徴とする。
なお、着火電流を供給する部品(電流供給部品)は、ピンに直接接続するコネクタや、溶接やロウ付けで接続されるリードワイヤを指す。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、点火器や点火器組立体自体の大きさが小さく、これに対してラベルの貼り付けや刻印による認識が従来から非常に困難であったものを、ICタグを組み込むことで、従来困難であった点火器や点火器組立体の品質管理だけでなく、作動時に異常が確認された点火器組立体の原因解析や不具合範囲の特定が容易に行える。したがって本件発明はこの点からICタグを組み込む対象が、サイズが小さく、作動時に熱や衝撃を伴う点火器や点火器組立体であるということに大きな意味がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】本発明の第1の実施例になるICタグ内蔵の点火器組立体の縦断面図である。
図1B図1Aの平面図である。
図2A】本実施例の点火器組立体の組み立て方法を説明する縦断面図であり、組み立て前の状態を示している。
図2B】組み立て後の点火器組立体におけるICタグの位置関係を説明する、拡大断面図である。
図3図1AのICタグの拡大斜視図である。
図4】本発明の一実施例の点火器組立体を採用したガス発生器の断面図である。
図5】本実施例の点火器に接続される電流供給回路の概念図である。
図6】本発明の第2の実施例における、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置及び点火器の斜視図である。
図7】ICタグが埋設された点火器の第1導電ピンP1、第2導電ピンP2の差し込み状態を、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置により所定の位置で検出する構成を説明する図である。
図8A】点火器の第1導電ピンP1、第2導電ピンP2の差し込みが正常な状態を示す図である。
図8B】点火器の第1導電ピンP1、第2導電ピンP2の差し込みが逆の状態を示す図である。
図9A】点火器カラーのコネクタ差し込み空間内における、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置の検出部の位置関係を示す平面図である。
図9B】検出部と点火器内のICタグとの位置関係の一例を示す、縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の1つの実施形態によれば、点火器組立体のシールド容器の内部回路から絶縁層を介して外部へ電気信号線(導電ピン)が引き出されるものにおいて、点火器の導電ピンの近傍の絶縁層の内部にICタグを設置する。これにより、ID番号に基づく生産ロットや出荷情報が得られるので、点火器や点火器組立体の品質管理だけでなく、作動時に異常が確認された点火器組立体の原因解析が行える。
【0019】
本発明の他の実施形態によれば、点火器組立体のシールド容器の内部回路から絶縁層を介して外部へ複数の電気信号線(導電ピン)が引き出されるものにおいて、この導電ピンの近傍の絶縁層の内部にICタグを設置し、このICタグを検出する窓としてシールド容器内の着火電流を供給する電流供給部品の接続用空間を利用する。この場合、シールド容器内部の検出すべき導電ピンの直近にICタグを組み込み、リーダ/ライタの電磁波を絶縁層の外部側から検出すべき導電ピンの直近にピンポイントで送り、絶縁層の向こう側に対向して設置しているICタグを呼び出すことでICタグ通信を行う。ICタグリーダ/ライタの検出部先端のコイルアンテナには1次電流が流れ、絶縁層を介して反対側にはICタグのコイルアンテが対向しているものとする。この配置により、二つのアンテナのコイルが磁気的に結合し、相互誘導により2次電流がICタグのコイルアンテナに誘起される。すなわちICタグは、高周波の1次電流から2次電流を誘導することで動作し、ICタグ情報は2次電流から1次電流へと逆に辿るように誘導する。
【0020】
なお、シールド容器と信号線の絶縁層を、1次電流と2次電流の相互誘導による電磁結合の場として使うため、検出部先端のコイルアンテナと対抗するICタグのコイルアンテナとの距離が近いほど、言い換えるとICタグを覆う絶縁層の厚みが薄いほど結合能率が良くなる。
【0021】
これにより金属であるシールド容器内であってもICタグ通信が可能となり、点火器組立体のID番号など固有識別情報をICタグリーダ/ライタで取得できる。これにより、最終的に組み立てられた各種装置の信頼性も向上する。さらに万が一のリコール回収作業においては、ID番号に基づく生産ロットや出荷情報等の絞込みが迅速に実施できることになる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1A図5により、本発明の点火器及び点火器組立体、並びにそれを採用したエアバッグシステムの第一の実施形態を説明する。
【0023】
図1Aは、本発明の一実施例になる点火器200の縦断面、図1Bは、図1Aの平面図である。
点火器200は、チャージホルダ201、ヘッダ202、このヘッダ202に固定されたアイレット209、及びカバー203を有し、これらで囲まれた空間内に点火薬204(点火薬204a,204b)が封入されている。第1の電極(第1導電ピン206(P1)の一端)と第2の電極(第2導電ピン207(P2)の一端に接続されたアイレット209の他端)で構成される電極間がブリッジワイヤ205で電気的に接続されている。導電ピン(P1,P2)の第1、第2の電極側(根元部分)は樹脂製の絶縁層で封止されている。208はガラス部材等の丈夫な絶縁材である。チャージホルダ、アイレット及びカバーは、金属で構成さている。また樹脂で構成されたヘッダ202内でかつ、第1導電ピン206(P1)の近傍に、コイル面が第1導電ピン(センターピン、P1)、第2導電ピン(アイレットピン、P2)の中心を通る軸線OH−OH‘と直角方向になるようにして、平板状のICタグ100が埋設さている。ヘッダ202の外周部には、金属製シールド容器(点火器カラー)305が固定されている。この点火器カラーの内側は樹脂312で覆われた筒状のコネクタ差し込み空間(電流供給部品の接続用空間)306となっており、この電流供給部品の接続用空間306に、第1導電ピン206と第2導電ピン207とが突出している。点火器カラーの内側には、点火器を配置するための空間314も形成されている。さらに、点火器カラー305上端面309の一部に、位置決め用の溝310が設けられている。
【0024】
本発明では、金属製シールド容器(点火器カラー)と点火器の一体化されたものを、点火器組立体と定義する。
【0025】
なお、ICタグ100は、第1導電ピン206と第2導電ピン207のいずれか一方に対応づけるかあるいは、軸線OH−OH‘から離れた位置において、ヘッダ202に埋め込まれていれば良い。
【0026】
309は、コネクタの差し込み空間306の端部に設けられた環状のフランジ部でもあり、そのICタグ100に対応する側に、OH−OH‘と直角方向(半径方向)に伸びた位置決め部(凹凸構造)310が設けられている。この位置決め部310は、後で述べるICタグ通信用リーダ・ライタに対する位置決め部となるものである。なお、位置決め部310は、凹凸構造に限定されるものでは無く、例えば位置決め用ピンと穴等、点火器200の導電ピン(P1,P2)とICタグ通信用リーダ・ライタとの相対的な位置関係を固定できるもので有ればどのような構造であっても良い。
【0027】
ICタグ100は平板状であり、ICタグの配置は導電ピンの軸方向と直角に設置する。すなわち、点火器200の内部の発熱体から外部に向かって出る導電ピン(P1,P2)の根元にICタグ100を平らに設置する。このように、ICタグ100は点火器200の絶縁層(若しくはブリッジワイヤ)の面に対して平行、平置きの配置(平行配置)となっている。なお、ICタグ100は、必ずしも平置きである必要はなく、他の構成部材との関係で必要に応じて、ヘッダ202内に傾斜して配置されても良い。但し、その場合には、ICタグ通信用リーダ・ライタの検知部を、ICタグ100の面と平行に成るように設置できる構成とすれば良い。また、点火器200の内部に他の電子回路も組み込まれる場合には、導電ピンの数は複数、すなわち3つ以上となる。
【0028】
上記の通り、ICタグ100は、導電ピン(P1,P2)の近傍においてヘッダ202を構成する樹脂製の絶縁層(ヘッダ202)の中に封止される。すなわち、点火器200はその内部の発熱体や導電ピン(P1,P2)の根元部分と共に、金属製シールド容器(点火器カラー)305内に差し込まれ、樹脂製の絶縁層で封止される。そのため、封止後は、導電ピン(P1,P2)のみが外側に伸び、ICタグ100は、本来は見えない。もし、点火器200の導電ピン(P1,P2)が180度回転し左右逆になった状態で金属製シールド容器(点火器カラー)305内に配置され(逆差し)、樹脂で封止されたとしても、導電ピン(P1,P2)の極性が外観ではわからない。図1Bでは、説明の都合上、あえて見えるようにICタグ100を点線で表現している。
【0029】
図2A図2Bにより、本実施例の点火器組立体の組み立て方法の一例を説明する。図2Aは、点火器200と点火器カラー305とが一体に組み立てられる前の状態を示す縦断面図である。図2Bは、組み立て後のICタグの位置関係を示している。
【0030】
金属製シールド容器(点火器カラー)305の内側には、コネクタの差し込み空間306及び点火器200が配置される空間314がある。点火器200を、点火器200を配置する空間314に配置し、樹脂312を充填して両者を一体化することで、図1Aの状態に組み立てられる。ICタグ100は、導電ピンP1のすぐ近くに埋設されている。図2Aは説明のために、樹脂312が金属製シールド容器(点火器カラー)305に配置された状態となっており、樹脂312には導電ピン(P1、P2)が貫通する孔315,316が形成されているが、これは樹脂312を射出したときに導電ピン(P1,P2)によって形成される孔であり、樹脂312の配置や孔は、本実施例では予め形成されているものではない。
【0031】
なお、図2Aの樹脂312と点火器200のヘッダ202が、同時に樹脂成型されるというような他の方法で組み立てられたとしても、結果として図1Aが実現できればいずれの方法であってもよい。
【0032】
図3は、ICタグ100の拡大斜視図である。ICタグ100は、平板状の基板の表面側に設けられたICタグ本体部と、基板の裏面に形成されたICタグ絶縁基板103とを有している。ICタグ本体部は、ICチップ101と、このICチップ101の周囲に螺旋条に複数回巻かれた面状のコイルアンテナ102、及び、保護材等で構成されている。コイルアンテナはその内端がICチップ101に接続され、その外端は裏面の絶縁層を介してICチップ101に接続されている。
【0033】
なお、UHFやマイクロ波帯のICタグには、大別すると、(1)波長依存性が顕著な半波長共振ダイポール基調のアンテナを内蔵する1辺が10cm程度のICタグ、(2)波長依存性がないコイルやコンデンサを用いた共振回路を内蔵した1辺が10mm以下の超小型サイズのICタグとがある。共振回路を構成するコイルは、例えば、図3に示した平板状の基板上に形成される平面コイルや、図示していないが円筒状のコイル等がある。コイルには目には見えない浮遊容量があり部品素子としてのコンデンサを省略できることがあり、図3はこの省略の結線を示している。
【0034】
本実施例の点火器あるいは点火器組立体に用いるICタグ100にどのような種類のものを用いるかは、点火器あるいは点火器組立の構造等に応じて決めれば良い。小型化を優先する場合には、上記平板状の超小型サイズのICタグが適している。
【0035】
図4は、点火器組立体を採用したガス発生器300の断面図である。ガス発生器300は、耐圧性を有する金属製の外殻容器から構成されており、その中央部に円筒状の開口部を有しここに耐圧性の金属製円筒容器304が固定されている。この円筒容器の奥側の空間には点火器200が固定されている。なお、図4に示した、点火器200を含む点火器組立体は、図1Aに示した点火器組立体とは細部の構成が若干異なっているが、導電ピン(P1,P2)の近傍において樹脂の中にICタグ100を設置するという基本的な構成は同じである。
【0036】
ガス発生器300における金属製内筒容器304の外側には、ガス発生剤成型体302が充填されている。303はガス排出口である。
【0037】
本発明では、点火器200にICタグを組み込むか付加するために、超小型サイズのICタグを用いる。このような小型化の用途に適したものとして、例えば、外形寸法が、2.5mm×2.5mm 厚みが0.4mmのUHF帯の超小型タグ((株)日立化成(登録商標)IM5−PK2525型タグ)が有る。このタグは、一例として、ICタグ通信用リーダ・ライタの所定の検出電波出力で、数mm程度の飛距離が得られる。
【0038】
次に、図5により、本実施例の点火器200に接続される電流供給回路400の一例について説明する。この電流供給回路400は例えば自動車のECU内に設けられる。車両に搭載されたエアバッグシステムは、電流供給回路400を含むECUと、このECUと接続され各々ガス発生器300とエアバッグとがケース内に収容された複数のエアバッグモジュール、とを有している。電流供給回路400を含むECUと個々のガス発生器300とが、それぞれ導体によりこれらの各エアバッグモジュールに接続されている。
【0039】
電流供給回路400は、例えば1枚の基板上に形成される。この基板の一端には、電流供給回路400を点火器200の第1導電ピン206(P1)及び第2導電ピン207(P2)に電気的に接続するための接続部(接続端子)401,402を備えている。ここでは、説明上第1導電ピン206が正、第2導電ピン207が負(アース)に接続されているとする。電流供給回路400は、基板上に、少なくともスイッチ回路410,411、パルス発生器412、413、断線検知回路414、電圧変換器421及びコンデンサ420等の各素子が配置されたものであり、外部の直流電源であるバッテリー430と、ガス発生器300内に組み込まれた点火器200とを、イグニッションキー431を介して、接続する電流経路の途中に設けられている。電流経路は、1つの点火器200に対して2つずつ存在しており、各々、2本の導線(リードワイヤ)で形成されている。基板上のスイッチ回路410,411、パルス発生器412、413、及び、断線検知回路414はさらに、インターフェース415を介して、マイクロコンピュータユニット(MCU)422に接続されている。MCU422にはROM423が接続され、さらに、インターフェース424を介して、基板外の衝撃検知センサ440、エンジンのコントローラやブレーキセンサ等450に接続されている。
【0040】
エアバッグモジュールのケース内に収容されたガス発生器としては、図4に示すシングル型のものの他、デュアル型のものを用いることもできる。
【0041】
図5の電流供給回路400には、4個の点火器200が示されているが、これらは、例えば、各々、運転席のエアバッグ用インフレータ、助手席のエアバッグ用インフレータ等に設けられるものであり、各点火器に、ICタグ100が埋設されている。図5の例では、各点火器の第1導電ピン(P1)側に、ICタグ100が設置されている。このICタグ100は、外部から各点火器のID番号など固有識別情報や製造情報を取得したり、あるいは、点火器と電流供給回路接続部401,402とが適切に接続されるか否か(逆差し等)を検知するために設置されている。
【0042】
電気供給回路400のスイッチ回路410,411は、電流経路を開閉し、点火器200が作動の必要のないときは直流電流を遮断しておき、点火器200の作動時には電流の供給を開始する。スイッチ回路410,411は電流経路ごとに(1本の導線ごとに)1つ設けられている。断線検知回路は、微弱電流により点火器の異常(点火器の発熱部と点火薬との接触不良、又は発熱部の断線)を検知するためのものである。
【0043】
スイッチ回路410,411とパルス発生器412,413は導体により接続されており、パルス発生器からスイッチ回路の開閉を指示する制御用パルスを送ることにより、スイッチ回路が開閉される。このパルス発生器に対する制御用パルス伝達の指示は、衝撃検知センサ440からの指令を受け、MCU422から送られる。スイッチ回路410,411は、サイリスタ、MOS−FET又はバイポーラ・トランジスタ等により形成されている。スイッチ回路は、正極側のみに設けることもできる。
【0044】
電流供給回路内への通電はバッテリーのみからなされる。コンデンサ420は、バックアップ用電源として必要な電流を蓄電し、バッテリーからの電流の供給が遮断されたときに、バッテリーに替わり電流を供給する。
【0045】
車両が衝突したとき、衝撃検知センサからの指令がECUに送られ、パルス発生器に対して、スイッチ回路を閉じるための指令が伝達される。この指令に基づいてバッテリーからの電流が点火器作動の着火パルスとして、電流経路を経て点火器200に送られる。この着火パルスを受けて、点火器200内の火薬が点火してエアバッグが展開する。
【0046】
本実施例によれば、点火器や点火器組立体自体の大きさが小さく、これに対してラベルの貼り付けや刻印による認識が従来から非常に困難であったものを、ICタグを組み込むことで、従来困難であった点火器や点火器組立体の品質管理だけでなく、作動時に異常が確認された点火器組立体の原因解析が行える。したがって本実施例はこの点からICタグを組み込む対象が、サイズが小さく、作動時に熱や衝撃を伴う点火器や点火器組立体であるということに大きな意味がある。
【0047】
本実施例の点火器や点火器組立体は、運転席のエアバッグ用インフレータ、助手席のエアバッグ用インフレータ、サイドエアバッグ用インフレータ、カーテン用インフレータ、ニーボルスター用インフレータ、インフレータブルシートベルト用インフレータ、チューブラーシステム用インフレータ、プリテンショナー用インフレータ等の各種インフレータ(ガス発生器)等に適用できる。
【実施例2】
【0048】
なお、本発明のように、導電ピンの近傍にICタグを組み込み、これらを樹脂で一体化した点火器組立体においては、導電ピンに接続される電流供給部品は実施例1のコネクタだけに限らず、例えば特許文献4で示されるように、溶接やロウ付け等で導電ピンに接続されるリードワイヤであってもよい。
【0049】
また点火器組立体が導電ピンの逆差しを感知する必要がない構造であっても、不具合発生時における原因解析や不具合範囲の特定のため、内部にICタグを組み合わせた点火器組立体とすることに意味がある。例えば点火器組立体に用いる点火器が、特許文献5で開示している導電ピンが1本の場合であってもよい。
【0050】
本実施例によれば、ICタグを組み込む対象が、サイズが小さく、作動時に熱や衝撃を伴う点火器組立体であっても、外部から簡単に、樹脂に埋設され正規に組み立てられICタグの検知を行うことができる。
【実施例3】
【0051】
次に、本発明の第3の実施例として、実施例1で述べた点火器200と電流供給回路400の接続部401,402とが適切に接続されるかを検知する手段について、説明する。
【0052】
図6は、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500及び点火器200の斜視図である。ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500は、本体の表面に設けられた操作部501や表示部502、本体の内部に設けられた高周波アンテナ回路(図示略)、電源及び制御回路部(図示略)、及び、本体の先端部に一体的に設けられた検出部510を備えている。本体のアンテナと検出部510は、本体先端から下方に伸びた一対の信号伝送部T(ケーブル)511、512で接続されている。本体内部のアンテナ回路と外部に露出する検出部510は、一対のケーブル511、512の軸に直角な方向にコイル面を有する微小ループの検知コイル(Detecting Coil)となっている。微小ループコイルの検知コイル510(D)のコイル巻き数は、1回巻きの状態が図示されているが、高周波整合など回路能率の都合で、2回巻きあるいはそれ以上であってもよい。ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500は、さらに、係合部(凹部あるいは凸部)503を有し、これをガス発生器300(若しくは点火器組立体)の深さHの位置決め部(凹凸構造)310と機械的に嵌合させることにより、その検出部510の検知コイルが点火器200の絶縁性樹脂の筒状のコネクタ差し込み空間306内の所定の位置、すなわち、点火器200内のICタグ100を検出可能な位置及び所定の深さHに固定される。
【0053】
また、嵌合部503は、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500を点火器組立体に対して所定の位置に位置決めし、この嵌合部503の側直近に第1導電ピンP1、遠い側に第2導電ピンP2が配置される時を「正」、この逆差しを「誤」として区別する目印の役割がある。なお、嵌合部503の所定の深さHだけ検出部510が嵌合したとき、ICタグ100を検出できるように電磁波出力が調整されるものとする。
【0054】
図7は、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500の嵌合部503を点火器組立体の凹凸構造310と嵌合させ、検出部510を機械的にコネクタ差し込み空間306内の所定の回転位置と所定の深さにセットした状態の縦断面図である。すなわち、検出部510をコネクタ差し込み空間306内に差し込んで、ICタグ100の直近まで接近させた状態である。この状態において、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500の検出部の検知コイル510とICタグのコイルとが電磁結合し、相互誘導により検知コイルの1次電流に対応する2次電流がICタグのコイルアンテナに誘起される。これにより、第1導電ピンP1の根本に組み込まれた数mm程度の短い飛距離の超小型のICタグ100であっても、その有無を非接触で検出できる。
【0055】
図8A図8Bは、ICタグ100が埋設された点火器200の第1導電ピンP1、第2導電ピンP2の状態を、非接触で検出する構成を説明する。
【0056】
図8Aは、第1導電ピンP1に近接した側にICタグ100が埋設されており、点火器200の第1導電ピンP1、第2導電ピンP2の差し込みが正常な状態である。Φ1は電磁誘導の磁力線を示している。ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500の係合部503は、ガス発生器300の位置決め部(凹凸構造)310と1対1に対応する。ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500の内部高周波アンテナ回路から信号伝送部511,512までを一連の検出装置とする。嵌合部の深さが所定のHであって、ここにICタグ通信用リーダ/ライタ装置500が嵌合したときのみ、その検出部510のループアンテナが直下のICタグ100のコイルの面と平行になり、かつ、検出部510とICタグが所定の距離内に固定され、この状態で、検出部510とICタグは磁束Φ1により電磁結合する。すなわち、検出が可能状態になる。
【0057】
正規差しの場合、検出部510がICタグ100のループ面と電磁結合することで信号伝送部511,512を経てICタグ通信用リーダ/ライタ装置500の内部高周波アンテナ回路などにより外部通信が可能となる。ICタグのコイルと検出部510の微小ループとは、トランスの1次コイル、2次コイルに相当する相互誘導の関係が成り立つ。信号伝送部の高周波電流を1次電流とすると、この1次電流によって誘起した磁力線がICタグのコイルアンテナに2次電流を発生させる。この2次電流で動作したICタグ100は、そのIDなどの識別情報の他固有情報の信号を、信号伝送部を逆に辿って、内部の高周波アンテナ回路へ返す。ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500から見たときの感度は、信号伝送部とタグ100が接近しているほど高い感度になる。そのため、位置決め部503が点火器200の凹凸構造310と一致したとき、検出部510の直下直近においてICタグ100を検出し、その結果が、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500の表示部502に表示される。
【0058】
もし誤って第1導電ピンP1、第2導電ピンP2が点火器組立体内に差し込まれたとき、ICタグは所定の位置からずれる。図8Bは、第2導電ピンP2に近接した側にICタグ100‘が埋設されており、点火器200の第1導電ピンP1、第2導電ピンP2の差し込みが逆の場合である。このとき、ICタグ100’は、検出部510の磁束Φ1‘により検出可能な範囲の外に有り、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500はICタグ100’を検出できない。ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500の表示部502は何も表示されないので、図8Bの状態は、誤差し、若しくはICタグが存在しないと判定される。
【0059】
このように、ICタグを設置した点火器200が誤って180度回転し、結果として第1導電ピンP1、第2導電ピンP2とが点火器組立体内に逆向きに誤差しされ一体化されると、ICタグの位置が、嵌合部503に対し、反対側にずれる。図8Bの状態は、このずれ巾が検出部Dによって検出できない電磁的距離となる様に検出電磁波出力などが予め調整されている。
【0060】
発明者等は、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500により、本実施例の点火器組立体のICタグを検知できるかについて、実験を行った。その結果について、図9A図9Bを参照しながら説明する。図9Aは、点火器カラー305のコネクタ差し込み空間306内における、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500の検出部510の位置関係を示す平面図、図9Bは、検出部510と点火器200内のICタグとの位置関係の一例を示す、縦断面図である。
【0061】
実験は、コネクタ差し込み空間306内で、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500の検出電磁波出力を27dBm(920MHz)とし、検出部510の位置(回転角θ)をICタグの位置から90度ずつ移動させて行った。なお、ICタグの直上に検出部が位置しているとき(θ=0)の検出部と金属のアイレット209までの距離を6mm、途中のICタグ100との対向距離は4mm、検出部510のコイル直径は5mm、ICタグは2.5mm角のコイルを持つ(株)日立化成IM5−PK2525型タグである。回転角θ(OV−OV‘に対する角度)が0°、換言すると、図8Aの構成でICタグ100の直上に検出部510が位置する条件下では、検出部510によりICタグ100を確実に検知できた。しかし、回転角θが180°、すなわち、図8Bの構成では、ICタグ100を検知できなかった。また、回転角θが±90°、すなわち、OV−OV‘に直角な位置でもICタグ100を検知できなかった。この検出実験例によると、検出部510はICタグ100を所定の対向位置でピンポイントに、確実に検出できることを示している。
【0062】
本実施例では、点火器組立体の絶縁層内にICタグを配置することで、出来上がった点火器組立体において万が一異常が確認されたときにICタグによって情報が取得できその原因解析や不具合が発生した範囲を特定することが可能となる。
【0063】
また、本実施例によれば、金属製シールド容器を有する点火器組立体の内部にICタグを埋設し、金属製シールド容器内のコネクタ接続用空間をICタグの検知に利用できるようにしたことで、車体に装着した後であっても点火器組立体の特性に影響を及ぼさず外部からICタグ通信用リーダ/ライタ装置500などで効率よく、各点火器に対応したICタグの情報を検知できる。また、組み立て完了後の単体の点火器組立体の電気部品のブリッジワイヤ205や点火薬204などの特性に影響を及ぼさず外部から効率よく、点火回路の導電ピンの逆刺し検出を行うことができる。
【0064】
なお、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500は、一体的な構造でなくても良く、例えばICタグへの信号伝送部T511等、リーダ/ライタ装置の各部分を個別に分離して構成し、これらがケーブルや電磁的にワイヤレスで相互に接続されるようにしたものでも良い。この場合、図示していないが、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500は、ICタグ通信用リーダ/ライタアンテナを有する本体部と、この本体部とは別に設けられた信号伝送部や検出部を有するダイポールアンテナとを有し、両者間をICタグ通信用の電磁波と同じ電磁波で通信する。ダイポールアンテナには、点火器200の凹凸構造に対応する位置決め部が設けられている。
【0065】
本実施例を採用したガス発生器300の組立方法によれば、点火器固有のID番号など固有識別情報を取得するのみならず、点火器組立体の第1導電ピンP1、第2導電ピンP2の位置関係を判定してから、これをガス発生器300に取り付ける。このようにしてガス発生器の2本の導電ピンの差し込み状態の正誤を判別した後、ガス発生器を公知の自動車安全装置(シートベルト用リトラクタのプリテンショナー)に組み込み、更に前記ガス発生器をエアバッグ装置(例えば、シートベルトのプリテンショナー)に組み込んだ後、車両に搭載する。本実施例の判別方法を採用すれば、点火器組立体が有する2本の導電ピンを容易にかつ従来法に比べより低コストで判別することができる。このため、エアバッグ装置(エアバッグ用ガス発生器)やシートベルトプリテンショナー等の自動車安全装置の組立においても、2本の導電ピンを取り違えることなく、各導電ピンに対応する着火電源の電極に適合するように組み立てることができ、これらの装置に対する信頼性も向上される。なお本発明の判定方法は、導電ピンが3つ以上の点火器および点火器組立体にも使用することが出来る。
【実施例4】
【0066】
次に、本発明の第4の実施例について説明する。
本発明の点火器組立体の位置決め部は、機械的な構造で確保するものに限定されない。実施例2では、光学式検知機構を採用する。
【0067】
点火器組立体とICタグ通信用リーダ・ライタとの相対的な位置関係を固定する手段は、機械的な構造に限定されない。例えば図1Bのフランジ部309の表面に、ICタグ通信用リーダ・ライタに対する位置決め部として検知用のマークを設け、これを、ICタグ通信用リーダ・ライタに設けたカメラで検知し、画像処理して相対的な位置関係を確認する光学式検知構造に置き換えても良い。
【0068】
例えば、点火器組立体のフランジ部309の表面に、ICタグ通信用リーダ・ライタに対する位置決め部として検知用のマークを設ける。そして、リーダ/ライタ装置若しくは点火器組立体を、XY座標で移動可能なテーブル上やロボットアーム上に置き、位置決め部のマークを、ICタグ通信用リーダ・ライタに設けたカメラで検知し、画像処理して両者の相対的な位置関係を確認し、リーダ/ライタ装置と点火器組立体との正確な位置決めを行った後、実施例1と同様にして、逆差しの検知を行う。
【0069】
本実施例によれば、点火器組立体の所定の位置にICタグを埋設することで、点火器組立体の特性に影響を及ぼさず外部から非接触で、効率よく、導電ピンの逆刺し検出を行うことができる。
【符号の説明】
【0070】
100…ICタグ、101…ICチップ、102…コイルアンテナ、200…点火器、201…チャージホルダ、202…ヘッダ、203…樹脂製カバー、204…点火薬(着火薬)、205…ブリッジワイヤ、206…第1導電ピン(P1)、207…第2導電ピン(P2)、209…アイレット、300…ガス発生器、301…伝火薬、302…ガス発生剤成型体、303…ガス排出口、305…点火器カラー(金属製シールド容器)、306…コネクタの差し込み空間、309…金属製シールド容器保持用の環状のフランジ部、310…位置決め部、312…樹脂、315…穴、316…穴、500…ICタグ通信用リーダ/ライタ装置、503…係合部、510…検出部、H…所定の深さ。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B