特許第6018727号(P6018727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6018727-タイヤ 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6018727
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 17/00 20060101AFI20161020BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20161020BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20161020BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20161020BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20161020BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   B60C17/00 B
   B60C1/00 B
   B60C15/06 B
   C08K3/00
   C08K5/00
   C08L15/00
【請求項の数】13
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2016-548335(P2016-548335)
(86)(22)【出願日】2016年3月7日
(86)【国際出願番号】JP2016057035
【審査請求日】2016年7月25日
(31)【優先権主張番号】特願2015-45301(P2015-45301)
(32)【優先日】2015年3月6日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-45303(P2015-45303)
(32)【優先日】2015年3月6日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100153866
【弁理士】
【氏名又は名称】滝沢 喜夫
(72)【発明者】
【氏名】坪田 毅
(72)【発明者】
【氏名】小山 祐司
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−155550(JP,A)
【文献】 特許第4928661(JP,B2)
【文献】 特開2012−6563(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0000584(US,A1)
【文献】 特開2009−214700(JP,A)
【文献】 特公昭50−34058(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00
B60C 15/06
B60C 17/00
C08K 3/00
C08K 5/00
C08L 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
180℃における6.5MPa応力伸び量Xと、25℃における6.5MPa応力伸び量Yが、加硫後で式(1)を満たし、変性共役ジエン系重合体を20質量%以上含有するゴム成分を含むゴム組成物をサイド補強ゴム層及びビードフィラーから選ばれる少なくとも一つの部材に配設してなるタイヤであって、前記ゴム組成物が、前記ゴム成分、補強性充填材、熱硬化性樹脂、チウラム系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤、及び硫黄含有加硫剤を配合してなり、前記ゴム成分100質量部に対して、前記補強性充填材を40〜100質量部、前記チウラム系加硫促進剤を1.1〜2.5質量部、前記チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤を2.0〜6.0質量部、前記硫黄含有加硫剤を硫黄分として2.0〜10.0質量部配合し、前記熱硬化性樹脂を質量比[前記熱硬化性樹脂の配合量/前記補強性充填材の配合量]が0.001〜0.043となるように配合してなり、前記チウラム系加硫促進剤の配合量が前記熱硬化性樹脂の配合量よりも多いことを特徴とするタイヤ。
1.00≦X/Y≦1.15 ・・・ (1)
【請求項2】
前記ゴム組成物の加硫後の初期歪5%、動歪1%及び周波数52Hzの測定条件で25℃における動的引張貯蔵弾性率E’が9.0MPa以上であり、かつ前記ゴム組成物の加硫後の前記測定条件で1℃間隔で測定した28℃〜150℃のtanδ値の総和Sが6.0以下である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記タイヤが100℃で24時間放置された後において、前記ゴム組成物が式(1)を満たす請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
加硫後の前記ゴム組成物の初期歪5%、動歪1%、周波数52Hz、測定温度180℃におけるtanδが0.13以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
加硫後の前記ゴム組成物の180℃における50%伸び引張応力が、6.2MPa以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記変性共役ジエン系重合体がアミン変性ポリブタジエンである請求項1〜のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記アミン変性ポリブタジエンが第1級アミン変性ポリブタジエンである請求項に記載のタイヤ。
【請求項8】
少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカス層を骨格とする空気入りタイヤにおいて、前記カーカスプライの補強コードが、1.5cN/dtex負荷時における中間伸度が4.2%以下であって、かつ、タフネスが45cN・%/dtex以上の有機繊維コードであり、前記サイド補強ゴム層及び前記ビードフィラーから選ばれる少なくとも一つの部材に請求項1〜のいずれか1項に記載されているゴム組成物を用いることを特徴とするタイヤ。
【請求項9】
前記補強コードが、(A)熱可塑性重合体、(B)熱反応型水性ウレタン樹脂および(C)エポキシド化合物からなる群のうち、少なくとも一種を含む接着剤を1浴処理液として用いるとともに、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス系接着剤を2浴処理液として用いて接着剤処理なされたものであり、かつ、
前記(A)熱可塑性重合体の主鎖が、付加反応性のある炭素間2重結合を実質的に有さず、直鎖状構造を主体としたエチレン性付加重合体およびウレタン系高分子重合体のうち少なくとも一方からなり、ペンダント基として架橋性を有する官能基を少なくとも1つ有する請求項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記補強コードの熱処理後の熱収縮率が、0.5〜3.0%である請求項又はに記載のタイヤ。
【請求項11】
タイヤから取り出した前記補強コードの1.5cN/dtex負荷時における中間伸度が、6.0%以下である請求項10のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記補強コードの撚り係数が、0.30〜0.50である請求項11のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記補強コードが、ポリエチレンテレフタレートからなる請求項12のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランフラット耐久性が向上したタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ、特にランフラットタイヤにおいて、サイドウォール部の剛性向上のために、ゴム組成物単独又はゴム組成物と繊維等の複合体によるサイド補強層が配設されている。
このランフラットタイヤにおいて、例えば、通常走行時の転がり抵抗性を損なうことなく、ランフラット耐久性を確保するために、ゴム成分と、その100質量部に対し、カーボンブラック55質量部以上、フェノール樹脂及びメチレン供与体を配合してなるゴム組成物であって、加硫後の100%伸張時弾性率(M100)が10MPa以上及び加硫後の損失正接tanδの28℃〜150℃におけるΣ値が6.0以下であるゴム組成物をサイド補強ゴム層及び/又はビードフィラーに用いてなるタイヤが開示されている。(特許文献1参照)
また、特許文献2には、低熱収縮のPETをカーカスの補強材として用いることで、サイド部のカーカス巻き上げ端に発生する表面凹凸を抑えることができ、これによってタイヤの軽量化・生産性の向上を可能にした空気入りラジアルタイヤが提案されている。
しかしながら、自動車、特に乗用車の高性能化に伴い、ランフラット耐久性の更なる改良が求められている。
さらに、ランフラット耐久性の向上と共に、乗り心地の確保、又はタイヤのサイドカット性の向上及び通常走行時の操縦安定性の向上をも要請されている。
【0003】
【特許文献1】特開2010−155550号公報
【特許文献2】特開2000−301910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下で、ランフラット耐久性を向上したタイヤを提供すること、ランフラット耐久性の向上と共に、乗り心地を確保すること、及びランフラット耐久性の向上と共に、タイヤのサイドカット性の向上及び通常走行時の操縦安定性の向上をも達成することを課題とするものである。
を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、180℃における6.5MPa応力伸び量Xと、25℃における6.5MPa応力伸び量Yとの比が特定の範囲であるゴム組成物、又はさらに加硫後の動的引張貯蔵弾性率E’が特定範囲であり、かつ加硫後の28℃〜150℃のtanδ値の総和Sが特定範囲であるゴム組成物、をサイド補強ゴム層及びビードフィラーから選ばれる少なくとも一つの部材に配設することにより、並びにそれに加えて、カーカスプライの補強コードの中間伸度およびタフネスが特定の関係を満足する場合に、その課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0006】
すなわち本発明は、以下の[1]乃至[4]を提供するものである。
[1] 180℃における6.5MPa応力伸び量Xと、25℃における6.5MPa応力伸び量Yが、加硫後で式(1)を満たし、変性共役ジエン系重合体を20質量%以上含有するゴム成分を含むゴム組成物をサイド補強ゴム層及びビードフィラーから選ばれる少なくとも一つの部材に配設してなるタイヤ。
1.00≦X/Y≦1.15 ・・・ (1)
[2] 前記ゴム組成物の加硫後の初期歪5%、動歪1%及び周波数52Hzの測定条件で25℃における動的引張貯蔵弾性率E’が9.0MPa以上であり、かつ前記ゴム組成物の加硫後の前記測定条件で1℃間隔で測定した28℃〜150℃のtanδ値の総和Sが6.0以下である上記[1]に記載のタイヤ。
[3] 少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカス層を骨格とする空気入りタイヤにおいて、前記カーカスプライの補強コードが、1.5cN/dtex負荷時における中間伸度が4.2%以下であって、かつ、タフネスが45cN・%/dtex以上の有機繊維コードであり、前記サイド補強ゴム層及び前記ビードフィラーから選ばれる少なくとも一つの部材に上記[1]又は[2]に記載されているゴム組成物を用いることを特徴とするタイヤ。
[4] 前記補強コードが、(A)熱可塑性重合体、(B)熱反応型水性ウレタン樹脂および(C)エポキシド化合物からなる群のうち、少なくとも一種を含む接着剤を1浴処理液として用いるとともに、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス系接着剤を2浴処理液として用いて接着剤処理なされたものであり、かつ、
前記(A)熱可塑性重合体の主鎖が、付加反応性のある炭素間2重結合を実質的に有さず、直鎖状構造を主体としたエチレン性付加重合体およびウレタン系高分子重合体のうち少なくとも一方からなり、ペンダント基として架橋性を有する官能基を少なくとも1つ有する上記[3]に記載のタイヤ。
【発明の効果】
【0007】
本発明の[1]によれば、ランフラット耐久性を向上したタイヤを提供することができ、本発明の[2]によれば、乗り心地性を確保しつつ、ランフラット耐久性を向上したタイヤを提供することができる。
本発明の[3]又は[4]によれば、ランフラット耐久性の向上と共に、タイヤのサイドカット性の向上及び通常走行時の操縦安定性の向上をも提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のタイヤの一実施態様の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[タイヤ]
本発明のタイヤは、180℃における6.5MPa応力伸び量Xと、25℃における6.5MPa応力伸び量Yが、加硫後で式(1)を満たし、変性共役ジエン系重合体を20質量%以上含有するゴム成分を含むゴム組成物をサイド補強ゴム層及びビードフィラーから選ばれる少なくとも一つの部材に配設してなることを特徴とする。
1.00≦X/Y≦1.15 ・・・ 式(1)
X/Yが1となる場合は、180℃における6.5MPa応力伸び量Xと、25℃における6.5MPa応力伸び量Yが同一であることを意味し、この場合ゴムの高温における軟化が起きていない、もしくはごくわずかである。よって、サイド周辺部材が高温になるランフラット走行時においても、高い耐久性を維持することが出来る。X/Yが1未満になること、すなわち高温において常温より伸び量が小さくなることは本発明のゴム組成物においては通常起こらない。また、X/Yが1.15を超える場合、高温時におけるゴムの軟化を抑止出来ず、ランフラット耐久性において好ましくない。
【0010】
本発明のタイヤは、加硫後で上記式(1)を満たし、変性共役ジエン系重合体を20質量%以上含有するゴム成分を含むと共に、加硫後の初期歪5%、動歪1%及び周波数52Hzの測定条件で25℃における動的引張貯蔵弾性率E’が9.0MPa以上であり、かつ加硫後の前記測定条件で1℃刻みで測定した28℃〜150℃のtanδ値の総和Sが6.0以下であるゴム組成物をサイド補強ゴム層及びビードフィラーから選ばれる少なくとも一つの部材に配設してなることが好ましい。
上記式(1)を満足することにより、タイヤのサイド補強ゴム層及びビードフィラーから選ばれる少なくとも一つの部材の軟化を好適に防止することができる。
また、加硫後の初期歪5%、動歪1%及び周波数52Hzの測定条件で25℃における動的引張貯蔵弾性率E’が9.0MPa未満であると、ランフラット走行状態となった際の初期状態において高い耐久性を保持することが困難となる場合がある上、走行中の発熱によりゴムが軟化した際に耐久性を維持することが困難となる場合がある。この観点から、上記測定条件で25℃における動的引張貯蔵弾性率E’が9〜20MPaであることが好ましい。
そして、加硫後の初期歪5%、動歪1%及び周波数52Hzの測定条件で1℃刻みで測定した28℃〜150℃のtanδ値の総和Sが6.0を超えると、通常走行およびランフラット走行をした際の発熱が大きくなる場合があり、加硫ゴム組成物が軟化しやすくなる場合があり、特にランフラット耐久性に不利となる場合がある。この理由から、総和Sが3.0〜6.0であることが好ましい。
【0011】
本発明のタイヤが100℃で24時間放置された後においても、前記ゴム組成物が上記式(1)を満たすことがランフラット時の当該部材の軟化を防止する観点からさらに好ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、加硫後の前記ゴム組成物の初期歪5%、動歪1%、周波数52Hz、測定温度180℃におけるtanδが0.13以下であることがランフラット時のタイヤのサイド補強ゴム層及び/又はビードフィラーの軟化を防止し、ランフラット耐久性を向上させる観点から好ましい。この測定温度180℃におけるtanδには、特に、下限はなく、小さければ小さい程良いが、通常、0.005以上である。この測定温度180℃におけるtanδの上限については0.12以下がより好ましく、0.08以下が更に好ましく、0.07以下であることが特に好ましい。よって、0.005以上0.07以下の範囲が最も好ましい。
さらに、本発明のタイヤにおいて、加硫後の前記ゴム組成物の180℃における50%伸び引張応力が、6.2MPa以上であれば、ランフラット走行時においても適当な硬さを維持することができ、ランフラット耐久性が向上するので好ましい。この180℃における50%伸び引張応力は高ければ高い程良いが、通常、15.0MPa以下である。
【0013】
本発明のタイヤが100℃で24時間放置された後において、前記ゴム組成物の加硫ゴム物性における180℃の50%伸び引張応力(M50)が、6.5〜7.7MPaであることが好ましい。6.5〜7.7MPaの範囲であれば、タイヤのランフラット耐久性を更に向上させることができ、6.8〜7.7MPaの範囲であればより好ましく、6.9〜7.7MPaの範囲であればさらに好ましく、6.9〜7.1MPaの範囲であれば、特に好ましい。
【0014】
本発明のタイヤのサイド補強ゴム層及びビードフィラーの配置を以下、図面に基づいて説明する。図1は、本発明のタイヤの一実施態様の断面を示す模式図であり、本発明のタイヤを構成する、ビードフィラー7、サイド補強ゴム層8等の各部材の配置を説明するものである。
図1において、本発明のタイヤの好適な実施態様は、一対のビードコア1、1’(1’は図示せず)間にわたってトロイド状に連なり、両端部が該ビードコア1をタイヤ内側から外側へ巻き上げられる少なくとも1枚のラジアルカーカスプライからなるカーカス層2と、該カーカス層2のサイド領域のタイヤ軸方向外側に配置されて外側部を形成するサイドゴム層3と、該カーカス層2のクラウン領域のタイヤ径方向外側に配置されて接地部を形成するトレッドゴム層4と、該トレッドゴム層4と該カーカス層2のクラウン領域の間に配置されて補強ベルトを形成するベルト層5と、該カーカス層2のタイヤ内方全面に配置されて気密膜を形成するインナーライナー6と、一方の該ビードコア1から他方の該ビードコア1’へ延びる該カーカス層2本体部分と該ビードコア1に巻き上げられる巻上部分との間に配置されるビードフィラー7と、該カーカス層のサイド領域の該ビードフィラー7側部からショルダー区域10にかけて、該カーカス層2と該インナーライナー6との間に、タイヤ回転軸に沿った断面形状が略三日月形である、少なくとも1枚のサイド補強ゴム層8とを具えるタイヤである。このタイヤのサイド補強ゴム層8及びビードフィラー7から選ばれる少なくとも一つの部材に本発明に係るゴム組成物を用いることにより、本発明のタイヤは、通常走行時の転がり抵抗性を損なうことなく、ランフラット耐久性を向上させたものとなる。
【0015】
本発明のタイヤのカーカス層2は少なくとも1枚のカーカスプライからなっているが、カーカスプライは2枚以上であってもよい。また、カーカスプライの補強コードは、タイヤ周方向に対し実質的に90°をなす角度で配置することができ、補強コードの打ち込み数は、35〜65本/50mmとすることができる。また、カーカス4のクラウン領域のタイヤ径方向外側に、2層の第1ベルト層5aと第2ベルト層5bとからなるベルト層5が配設されているが、ベルト層5の枚数もこれに限られるものではない。なお、第1ベルト層5aと第2ベルト層5bは、撚り合わされることなくタイヤ幅方向に並列に引き揃えられた複数本のスチールコードがゴム中に埋設されてなるものを用いることができ、例えば、第1ベルト層5aと第2ベルト層5bは、層間で互いに交差するように配置されて、交差ベルトを形成してもよい。
さらに、本発明のタイヤは、ベルト層5のタイヤ径方向外側には、ベルト補強層(図示しない)が配置されていてもよい。ベルト補強層の補強コードは、タイヤ周方向における引張剛性の確保が目的であるので、高弾性の有機繊維からなるコードを用いることが好ましい。有機繊維コードとしては、芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート、レーヨン、ザイロン(登録商標)(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維)、脂肪族ポリアミド(ナイロン)等の有機繊維コード等を用いることができる。
さらにまた、本発明のタイヤにおいては、サイド補強層の外、図示はしないが、インサート、フリッパー等の補強部材を配置してもよい。ここで、インサートとは、ビード部3からサイド部2にかけて、タイヤ周方向に配置される、複数本の高弾性の有機繊維コードを並べてゴムコーティングした補強材である(図示せず)。フリッパーとは、カーカスプライの、ビードコア1又は1’間に延在する本体部と、ビードコア1又は1’の周りに折り返された折り返し部との間に配設され、ビードコア1又は1’およびそのタイヤ径方向外側に配置されるビードフィラー7の少なくとも一部を内包する、複数本の高弾性の有機繊維コードを並べてゴムコーティングした補強材である。インサートおよびフリッパーの角度は、好ましくは周方向に対して30〜60°である。
【0016】
[ゴム組成物]
本発明のタイヤのサイド補強ゴム層及びビードフィラーから選ばれる少なくとも一つの部材に配設される本発明に係るゴム組成物は、(A)変性共役ジエン系重合体を20質量%以上含有するゴム成分を含むゴム組成物である。
そして、上記(A)変性共役ジエン系重合体を20質量%以上含有するゴム成分、(B)補強性充填材、(C)熱硬化性樹脂、(D)チウラム系加硫促進剤、(E)チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤、及び(F)硫黄含有加硫剤を配合してなるゴム組成物であって、ゴム成分100質量部に対して、補強性充填材を40〜100質量部、より好ましくは60〜100質量部、チウラム系加硫促進剤を1.1〜2.5質量部、チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤を2.0〜6.0質量部、硫黄含有加硫剤を硫黄分として2.0〜10.0質量部配合し、熱硬化性樹脂を質量比[熱硬化性樹脂の配合量/補強性充填材の配合量]が0.001〜0.043となるように配合してなるゴム組成物であることが好ましく、熱硬化性樹脂を質量比[熱硬化性樹脂の配合量/補強性充填材の配合量]が0.001〜0.035となるように配合してなるゴム組成物であることがさらに好ましい。
特に、ゴム成分100質量部に対して、補強性充填材を40〜100質量部配合する場合は、熱硬化性樹脂を質量比[熱硬化性樹脂の配合量/補強性充填材の配合量]が0.001〜0.035となるように配合することがさらに好ましく、ゴム成分100質量部に対して、補強性充填材を60〜100質量部配合する場合は、熱硬化性樹脂を質量比[熱硬化性樹脂の配合量/補強性充填材の配合量]が0.001〜0.043となるように配合することがさらに好ましい。
この配合組成により、加硫後のゴム組成物の高温時における弾性率の低下を抑制され、高い弾性率を有することができるので、前記の式(1)が好適に達成されることとなる。これによって、サイド補強ゴム層及び/又はビードフィラーの高温時の高い剛性を確保することができることとなる。
【0017】
(ゴム成分)
本発明に係るゴム組成物におけるゴム成分は、(A)変性共役ジエン系重合体を20質量%以上含有するものである。
本発明に係るゴム組成物に係る(A)変性共役ジエン系重合体は、1種単独又は2種以上併用して用いられる。(A)変性共役ジエン系重合体がゴム成分中、20質量%以上であれば、低発熱性が向上し、ランフラット耐久性を向上できる。この観点から、(A)変性共役ジエン系重合体はゴム成分中35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましい。
(A)変性共役ジエン系重合体としては、アミン変性したアミン変性共役ジエン系重合体を含むものを好ましく用いることができ、得られるゴム組成物は低発熱化し、ランフラット走行耐久性が更に向上したタイヤ与えることができる。
【0018】
このアミン変性共役ジエン系重合体としては、分子内に、変性用アミン系官能基として、脱離可能基で保護された第1級アミノ基又は脱離可能基で保護された第2級アミノ基を導入したものが好ましく、さらにケイ素原子を含む官能基を導入したものが好ましく挙げられる。
脱離可能基で保護された第1級アミノ基(保護化第1級アミノ基ともいう。)の例としては、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ基を挙げることができ、脱離可能基で保護された第2級アミノ基の例としてはN,N−(トリメチルシリル)アルキルアミノ基を挙げることができる。このN,N−(トリメチルシリル)アルキルアミノ基含有基としては、非環状残基、及び環状残基のいずれであってもよい。
上記のアミン変性共役ジエン系重合体のうち、保護化第1級アミノ基で変性された第1級アミン変性共役ジエン系重合体が好適である。
【0019】
前記ケイ素原子を含む官能基としては、ケイ素原子にヒドロカルビルオキシ基及び/又はヒドロキシ基が結合してなるヒドロカルビルオキシシリル基及び/又はシラノール基を挙げることができる。
このような変性用官能基は、共役ジエン系重合体の重合開始末端、側鎖及び重合活性末端のいずれかに存在すればよいが、本発明においては、好ましくは重合末端、より好ましくは同一重合活性末端に、脱離可能基で保護されたアミノ基と、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロキシ基が結合したケイ素原子を1以上(例えば、1又は2)とを有するものである。
【0020】
<共役ジエン系重合体>
変性に用いる共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物単独重合体又は2種以上の共役ジエン化合物の共重合体であってもよく、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体であってもよい。
前記共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、1,3−ブタジエンが特に好ましい。
また、共役ジエン化合物との共重合に用いられる芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロへキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、スチレンが特に好ましい。
前記共役ジエン系重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、イソプレン−ブタジエン共重合体、エチレン−ブタジエン共重合体、プロピレン−ブタジエン共重合体及びスチレン−ブタジエン共重合体から選ばれる少なくとも1種の共役ジエン系重合体が好ましく、ポリブタジエンが特に好ましい。
【0021】
共役ジエン系重合体の活性末端に、保護化第1級アミンを反応させて変性させるには、該共役ジエン系重合体は、少なくとも10%のポリマー鎖がリビング性又は擬似リビング性を有するものが好ましい。このようなリビング性を有する重合反応としては、有機アルカリ金属化合物を開始剤とし、有機溶媒中で共役ジエン化合物単独、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させる反応か、あるいは有機溶媒中でランタン系列希土類元素化合物を含む触媒による共役ジエン化合物単独、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを配位アニオン重合させる反応が挙げられる。前者は、後者に比較して共役ジエン部分のビニル結合含有量の高いものを得ることができるので好ましい。ビニル結合量を高くすることによって耐熱性を向上させることができる。
【0022】
上述のアニオン重合の開始剤として用いられる有機アルカリ金属化合物としては、有機リチウム化合物が好ましい。有機リチウム化合物としては、特に制限はないが、ヒドロカルビルリチウム及びリチウムアミド化合物が好ましく用いられ、前者のヒドロカルビルリチウムを用いる場合には、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、かつ他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。また、後者のリチウムアミド化合物を用いる場合には、重合開始末端に窒素含有基を有し、他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。
【0023】
前記ヒドロカルビルリチウムとしては、炭素数2〜20のヒドロカルビル基を有するものが好ましく、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチルフェニルリチウム、4−フェニルブチルリチウム、シクロへキシルリチウム、シクロベンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物等が挙げられるが、これらの中で、特にn−ブチルリチウムが好適である。
【0024】
一方、リチウムアミド化合物としては、例えばリチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジへプチルアミド、リチウムジへキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ−2−エチルへキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム−N−メチルピベラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等が挙げられる。これらの中で、カーボンブラックに対する相互作用効果及び重合開始能の点から、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド等の環状リチウムアミドが好ましく、特にリチウムヘキサメチレンイミド及びリチウムピロリジドが好適である。
これらのリチウムアミド化合物は、一般に、第2級アミンとリチウム化合物とから、予め調製したものを重合に使用することができるが、重合系中(in−Situ)で調製することもできる。また、この重合開始剤の使用量は、好ましくは単量体100g当たり、0.2〜20ミリモルの範囲で選定される。
【0025】
前記有機リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によって共役ジエン系重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物等の炭化水素系溶剤中において、共役ジエン化合物又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を、前記リチウム化合物を重合開始剤として、所望により、用いられるランダマイザーの存在下にアニオン重合させることにより、目的の活性末端を有する共役ジエン系重合体が得られる。
また、有機リチウム化合物を重合開始剤として用いた場合には、前述のランタン系列希土類元素化合物を含む触媒を用いた場合に比べ、活性末端を有する共役ジエン系重合体のみならず、活性末端を有する共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体も効率よく得ることができる。
【0026】
前記炭化水素系溶剤としては、炭素数3〜8のものが好ましく、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−へキセン、2−へキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
また、溶媒中の単量体濃度は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。尚、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を用いて共重合を行う場合、仕込み単量体混合物中の芳香族ビニル化合物の含量は55質量%以下の範囲が好ましい。
【0027】
また、所望により用いられるランダマイザーとは共役ジエン系重合体のミクロ構造の制御、例えばブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン部分の1,2結合、イソプレン重合体における3,4結合の増加等、あるいは共役ジエン化合物一芳香族ビニル化合物共重合体における単量体単位の組成分布の制御、例えばブタジエンースチレン共重合体におけるブタジエン単位、スチレン単位のランダム化等の作用を有する化合物のことである。このランダマイザーとしては、特に制限はなく、従来ランダマイザーとして一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。具体的には、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、オキソラニルプロパンオリゴマー類[特に2,2−ビス(2−テトラヒドロフリル)−プロパンを含む物等]、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピぺリジノエタン等のエーテル類及び第3級アミン類等を挙げることができる。また、カリウムtert−アミレート、カリウムtert−ブトキシド等のカリウム塩類、ナトリウムtert−アミレート等のナトリウム塩類も用いることができる。
【0028】
これらのランダマイザーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、リチウム化合物1モル当たり、好ましくは0.01〜1000モル当量の範囲で選択される。
この重合反応における温度は、好ましくは0〜150℃、より好ましくは20〜130℃の範囲で選定される。重合反応は、発生圧力下で行うことができるが、通常は単量体を実質的に液相に保つに十分な圧力で操作することが望ましい。すなわち、圧力は重合される個々の物質や、用いる重合媒体及び重合温度にもよるが、所望ならばより高い圧力を用いることができ、このような圧力は重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適当な方法で得られる。
【0029】
<変性剤>
本発明においては、上記のようにして得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体の活性末端に、変性剤として、保護化第1級アミン化合物を反応させることにより、第1級アミン変性共役ジエン系重合体を製造することができ、保護化第2級アミン化合物を反応させることにより、第2級アミン変性共役ジエン系重合体を製造することができる。上記保護化第1級アミン化合物としては、保護化第1級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物が好適であり、保護化第2級アミン化合物としては、保護化第2級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物が好適である。
【0030】
当該変性剤として用いられる保護化第1級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物としては、例えばN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン及びN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン等を挙げることができ、好ましくは、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン又は1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタンである。
【0031】
また、変性剤としては、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピロリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピロリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピペリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピペリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(イミダゾール−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(イミダゾール−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(4,5−ジヒドロイミダゾール−5−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(4,5−ジヒドロイミダゾール−5−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシランなどの保護化第2級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンなどのイミノ基を有するアルコキシシラン化合物;3−ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリエトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリメトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3−ジブチルアミノプロピル(トリエトキシ)シランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン化合物なども挙げられる。
これらの変性剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。またこの変性剤は部分縮合物であってもよい。
ここで、部分縮合物とは、変性剤のSiORの一部(全部ではない)が縮合によりSiOSi結合したものをいう。
【0032】
前記変性剤による変性反応において、該変性剤の使用量は、好ましくは0.5〜200mmol/kg・共役ジエン系重合体である。同使用量は、さらに好ましくは1〜100mmol/kg・共役ジエン系重合体であり、特に好ましくは2〜50mmol/kg・共役ジエン系重合体である。ここで、共役ジエン系重合体とは、製造時又は製造後、添加される老化防止剤等の添加剤を含まないポリマーのみの質量を意味する。変性剤の使用量を前記範囲にすることによって、補強性充填材、特にカーボンブラックの分散性に優れ、加硫後の耐破壊特性、低発熱性が改良される。
なお、前記変性剤の添加方法は、特に制限されず、一括して添加する方法、分割して添加する方法、あるいは、連続的に添加する方法等が挙げられるが、一括して添加する方法が好ましい。
また、変性剤は、重合開始末端や重合終了末端以外に重合体主鎖や側鎖のいずれに結合させることもできるが、重合体末端からエネルギー消失を抑制して低発熱性を改良しうる点から、重合開始末端あるいは重合終了末端に導入されていることが好ましい。
【0033】
<縮合促進剤>
本発明では、前記した変性剤として用いる保護化第1級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物が関与する縮合反応を促進するために、縮合促進剤を用いることが好ましい。
このような縮合促進剤としては、第三アミノ基を含有する化合物、又は周期律表(長周期型)の3族、4族、5族、12族、13族、14族及び15族のうちのいずれかの属する元素を一種以上含有する有機化合物を用いることができる。さらに縮合促進剤として、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、アルミニウム(Al)、及びスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとも一種以上の金属を含有する、アルコキシド、カルボン酸塩、又はアセチルアセトナート錯塩であることが好ましい。
ここで用いる縮合促進剤は、前記変性反応前に添加することもできるが、変性反応の途中及び又は終了後に変性反応系に添加することが好ましい。変性反応前に添加した場合、活性末端との直接反応が起こり、活性末端に保護された第一アミノ基を有するヒドロカルビロキシ基が導入されない場合がある。
縮合促進剤の添加時期としては、通常、変性反応開始5分〜5時間後、好ましくは変性反応開始15分〜1時間後である。
【0034】
縮合促進剤としては、具体的には、テトラメトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、テトラ−n−プロポキシチタニウム、テトライソプロポキシチタニウム、テトラ−n−ブトキシチタニウム、テトラ−n−ブトキシチタニウムオリゴマー、テトラ−sec−ブトキシチタニウム、テトラ−tert−ブトキシチタニウム、テトラ(2−エチルヘキシル)チタニウム、ビス(オクタンジオレート)ビス(2−エチルヘキシル)チタニウム、テトラ(オクタンジオレート)チタニウム、チタニウムラクテート、チタニウムジプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジブトキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムトリブトキシステアレート、チタニウムトリプロポキシステアレート、チタニウムエチルヘキシルジオレート、チタニウムトリプロポキシアセチルアセトネート、チタニウムジプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムトリプロポキシエチルアセトアセテート、チタニウムプロポキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムトリブトキシアセチルアセトネート、チタニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、チタニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)チタニウムオキサイド、ビス(ラウレート)チタニウムオキサイド、ビス(ナフテネート)チタニウムオキサイド、ビス(ステアレート)チタニウムオキサイド、ビス(オレエート)チタニウムオキサイド、ビス(リノレート)チタニウムオキサイド、テトラキス(2−エチルヘキサノエート)チタニウム、テトラキス(ラウレート)チタニウム、テトラキス(ナフテネート)チタニウム、テトラキス(ステアレート)チタニウム、テトラキス(オレエート)チタニウム、テトラキス(リノレート)チタニウム等のチタニウムを含む化合物を挙げることができる。
【0035】
また、縮合促進剤としては、例えば、トリス(2−エチルヘキサノエート)ビスマス、トリス(ラウレート)ビスマス、トリス(ナフテネート)ビスマス、トリス(ステアレート)ビスマス、トリス(オレエート)ビスマス、トリス(リノレート)ビスマス、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム、テトラ(2−エチルヘキシル)ジルコニウム、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ラウレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ナフテネート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ステアレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(オレエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(リノレート)ジルコニウムオキサイド、テトラキス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウム、テトラキス(ラウレート)ジルコニウム、テトラキス(ナフテネート)ジルコニウム、テトラキス(ステアレート)ジルコニウム、テトラキス(オレエート)ジルコニウム、テトラキス(リノレート)ジルコニウム等を挙げることができる。
【0036】
また、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム、トリ−tert−ブトキシアルミニウム、トリ(2−1エチルヘキシル)アルミニウム、アルミニウムジブトキシステアレート、アルミニウムジブトキシアセチルアセトネート、アルミニウムブトキシビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムジブトキシエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、トリス(2−エチルヘキサノエート)アルミニウム、トリス(ラウレート)アルミニウム、トリス(ナフテネート)アルミニウム、トリス(ステアレート)アルミニウム、トリス(オレエート)アルミニウム、トリス(リノレート)アルミニウム等を挙げることができる。
【0037】
上述の縮合促進剤の内、チタン化合物が好ましく、チタン金属のアルコキシド、チタン金属のカルボン酸塩、又はチタン金属のアセチルアセトナート錯塩が特に好ましい。
この縮合促進剤の使用量としては、前記化合物のモル数が、反応系内に存在するヒドロカルビロキシ基総量に対するモル比として、0.1〜10となることが好ましく、0.5〜5が特に好ましい。縮合促進剤の使用量を前記範囲にすることによって縮合反応が効率よく進行する。
なお、縮合反応時間は、通常、5分〜10時間、好ましくは15分〜5時間程度である。縮合反応時間を前記範囲にすることによって縮合反応を円滑に完結することができる。
なお、縮合反応時の反応系の圧力は、通常、0.01〜20MPa、好ましくは0.05〜10MPaである。
【0038】
<(A)変性共役ジエン系重合体>
このようにして得られた(A)変性共役ジエン系重合体はムーニー粘度(ML1+4,100℃)が、好ましくは10〜150、より好ましくは15〜100である。ムーニー粘度が10未満の場合は耐破壊特性を始めとするゴム物性が十分に得られず、150を超える場合は作業性が悪く配合剤とともに混練りすることが困難である。
また、前記(A)変性共役ジエン系重合体を配合した本発明に係る未加硫ゴム組成物のムーニ−粘度(ML1+4,130℃)は、好ましくは10〜150、より好ましくは30〜100である。
本発明に係るゴム組成物に用いられる(A)変性共役ジエン系重合体は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)、即ち分子量分布(Mw/Mn)が1〜3であることが好ましく、1.1〜2.7であることがより好ましい。
(A)変性共役ジエン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)を前記範囲内にすることで該変性共役ジエン系重量体をゴム組成物に配合しても、ゴム組成物の作業性を低下させることがなく、混練りが容易で、ゴム組成物の物性を十分に向上させることができる。
【0039】
また、本発明に係るゴム組成物に用いられる(A)変性共役ジエン系重合体は、数平均分子量(Mn)が100,000〜500,000であることが好ましく、150,000〜300,000であることがさらに好ましい。(A)変性共役ジエン系重合体の数平均分子量を前記範囲内にすることによって加硫物の弾性率の低下、ヒステリシスロスの上昇を抑えて優れた耐破壊特性を得るとともに、該(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物の優れた混練作業性が得られる。
本発明に係るゴム組成物に用いられる(A)変性共役ジエン系重合体は、低発熱性向上の観点から、アミン変性ポリブタジエンであることが好ましく、第1級アミン変性アミン変性ポリブタジエン又は第2級アミン変性アミン変性ポリブタジエンであることが更に好ましく、第1級アミン変性ポリブタジエンであることが特に好ましい。
本発明に係る(A)変性共役ジエン系重合体は、ブタジエン部分のビニル結合量として10〜60質量%が好ましく、12〜60質量%が更に好ましく、Mwとして100,000〜500,000が好ましく、Mw/Mnとして2以下が好ましく、第1級アミノ基含有量として2.0〜10.0mmol/kgが好ましい。
【0040】
<他のゴム成分>
本発明に係るゴム成分において、所望により、上記(A)変性共役ジエン系重合体と併用される他のゴム成分は、天然ゴム及び(A)変性共役ジエン系重合体以外のジエン系合成ゴムから選ばれる1種以上のジエン系ゴムが挙げられ、ゴム成分中の(A)変性共役ジエン系重合体20〜100質量%の残余として、80〜0質量%含有することが好ましい。さらに、ゴム成分中の(A)変性共役ジエン系重合体35〜100質量%の残余として、他のゴム成分を65〜0質量%含有することがより好ましく、ゴム成分中の(A)変性共役ジエン系重合体40〜100質量%の残余として、他のゴム成分を60〜0質量%含有することが更に好ましい。
上記のジエン系合成ゴムとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、スチレン−イソプレン共重合体(SIR)、エチレン−ブタジエン共重合体(EBR)、プロピレン−ブタジエン共重合体(PBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)及びこれらの混合物が挙げられる。また、他のジエン系合成ゴムの一部又は全てが多官能型変性剤、例えば四塩化スズのような変性剤を用いることにより分岐構造を有しているジエン系変性ゴムであることがより好ましい。
【0041】
((B)補強性充填材)
本発明に係るゴム組成物においては、(B)成分として補強性充填材を、ゴム成分100質量部に対して、40〜100質量部であることが好ましく、60〜100質量部であることがさらに好ましい。(B)補強性充填材量が40質量部以上であれば、得られるゴム組成物の加硫ゴム物性において、充分な補強効果が発揮されることになり好ましく、50質量部以上であることがより好ましく、60質量部以上であることがさらに好ましい。また、(B)補強性充填材量が100質量部以下であれば、得られるゴム組成物の加硫ゴム物性において、例えば損失正接tanδ(25℃時)が高過ぎることはなく、通常走行時での低燃費性(低発熱性)が良化し、転がり抵抗が小さくなる。
本発明において、(B)補強性充填材として、カーボンブラック及びシリカから選ばれる少なくとも1種が好ましく、(B)補強性充填材中、カーボンブラックを50質量%以上、かつシリカを50質量%以下含むことが更に好ましく、(B)補強性充填材がカーボンブラック単独であることが特に好ましい。
本発明に係るゴム組成物において用いられるカーボンブラックとしては、得られるゴム組成物の加硫ゴム物性が、上記の加硫ゴム物性を満たすためには、FEF級グレード、FF級グレード、HAF級グレード、N339、IISAF級グレード、ISAF級グレード及びSAF級グレードの中から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましく、特にFEF級グレードが好適である。
シリカとしては、特に限定されないが、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカが好ましく、湿式シリカが特に好ましい。シリカは1種を単独に又は2種以上を混合して使用することができる。
【0042】
((C)熱硬化性樹脂)
本発明に用いる(C)熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂(ユリア樹脂)、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。これらの内、フェノール樹脂、メラミン樹脂及び尿素樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂が好ましく、フェノール樹脂が、安定な熱硬化特性を有するので特に好ましい。
【0043】
(C)熱硬化性樹脂として好適なフェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、ノボラック型キシレノール樹脂、ノボラック型レゾルシノール樹脂及びこれらの樹脂をオイル変性した樹脂が挙げられ、これらの樹脂を少なくとも一種を用いるのがよい。
上記フェノール樹脂のオイル変性に用いるオイルとしては、ロジン油、トール油、カシュー油、リノール油、オレイン酸、リノレイン酸が挙げられこれらのオイルを少なくとも一種用いるのがよい。
(C)熱硬化性樹脂として用いられるメラミン樹脂はメチロールメラミンを加工品原料とするものであり、尿素樹脂はユリア(尿素)とホルムアルデヒドを1対2〜3モルの割合に混ぜて得た反応生成物である。
本発明に係る(C)熱硬化性樹脂は、質量比[熱硬化性樹脂の配合量/補強性充填材の配合量]が0.001〜0.043となるように配合することが好ましく、0.001〜0.035となるように配合することがさらに好ましい。質量比[熱硬化性樹脂の配合量/補強性充填材の配合量]が0.001以上であれば、常温(25℃)前後の弾性率と比較して高温時(例えば、180℃)の弾性率が相対的に高くなり、ランフラット耐久性が向上するので好ましく、0.043以下であれば、常温(25℃)前後の柔軟性が確保され易くなるので好ましい。さらにランフラット耐久性の観点から、0.018〜0.035の範囲であることが、より好ましく、0.018〜0.030の範囲であることが、特に好ましい。
また、本発明に係る(C)熱硬化性樹脂は、ゴム成分100質量部に対して、0.9〜4.0質量部であることが好ましく、0.9〜3.5質量部であることがより好ましく、0.9〜3.0質量部であることがさらに好ましく、0.9〜2.5質量部であることが特に好ましい。(C)熱硬化性樹脂の配合量が0.9質量部以上であれば、加硫後のゴム組成物をより高弾性率化することができ、未加硫ゴム組成物の作業性を向上することができる。一方、(C)熱硬化性樹脂の配合量が4.0質量部以下、より好ましくは3.5質量部以下、さらに好ましくは3.0質量部以下であれば、加硫後のゴム組成物の柔軟性が損なわれることを抑えることができる。
【0044】
これらの (C)熱硬化性樹脂は、通常硬化剤を配合して硬化反応により硬化させる。例えば、フェノール樹脂の硬化剤として、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒドアンモニア、α−ポリオキシメチレン、多価メチロールメラミン誘導体、オキサゾリジン誘導体及び多価メチロール化アセチレン尿素から選ばれる少なくとも一種のメチレン供与体が挙げられる。なかでも、硬化速度が速く、より高弾性化したゴム組成物が得られるという点から、ヘキサメチレンテトラミン及びヘキサメトキシメチルメラミンから選ばれる少なくとも一種のメチレン供与体が更に好ましい。フェノール樹脂100質量部に対して、メチレン供与体を3〜80質量部配合することが好ましく、3〜60質量部配合することがより好ましく、3〜50質量部配合することが更に好ましく、3〜40質量部配合することが特に好ましい。
メラミン樹脂は、硬化剤がなくても、加熱加圧で十分に硬化するが、クエン酸やフタル酸、有機カルボン酸エステルなどの硬化剤を用いてもよい。
尿素樹脂(ユリア樹脂)の硬化剤としては、シュウ酸ジメチルエステル、フタル酸無水物、有機ハロゲン化物、アミン塩酸塩、さらにサリチル酸尿素アダクトなどの潜在性タイプが好まれる。
不飽和ポリエステル樹脂の硬化剤としては有機過酸化物が用いられ、ポリウレタン樹脂の硬化剤としてはイソシアネートが用いられ、熱硬化性ポリイミドの硬化剤としてはエポキシ化合物用いられる。
【0045】
((D)チウラム系加硫促進剤)
本発明に係るゴム組成物は、加硫促進剤として、(D)チウラム系加硫促進剤を用いることにより、加硫後のゴム組成物の高温での弾性率をより高くすると共に、加硫後のゴム組成物の低発熱性(低燃費性)をより向上することができる。ゴム組成物の高温(例えば、180℃)での弾性率を高くすることにより、タイヤのサイド補強ゴムに適用した場合、タイヤのサイドウォールの撓みを抑制することができる。また、タイヤのサイド補強ゴムに適用した場合、低発熱性が向上することにより、ランフラット時のタイヤの発熱が抑えられると共に、通常走行のタイヤの転がり抵抗が低減する。
本発明に係るゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対し、(D)チウラム系加硫促進剤は1.1〜2.5質量部配合されることが好ましい。この配合範囲であれば、加硫後のゴム組成物の高温での弾性率をより高くすることができ、加硫後のゴム組成物の低発熱性(低燃費性)をより向上することができる。
【0046】
本発明に係る(D)チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラプロピルチウラムジスルフィド、テトライソプロピルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラペンチルチウラムジスルフィド、テトラヘキシルチウラムジスルフィド、テトラヘプチルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド、テトラノニルチウラムジスルフィド、テトラデシルチウラムジスルフィド、テトラドデシルチウラムジスルフィド、テトラステアリルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムモノスルフィド、テトラプロピルチウラムモノスルフィド、テトライソプロピルチウラムモノスルフィド、テトラブチルチウラムモノスルフィド、テトラペンチルチウラムモノスルフィド、テトラヘキシルチウラムモノスルフィド、テトラヘプチルチウラムモノスルフィド、テトラオクチルチウラムモノスルフィド、テトラノニルチウラムモノスルフィド、テトラデシルチウラムモノスルフィド、テトラドデシルチウラムモノスルフィド、テトラステアリルチウラムモノスルフィド、テトラベンジルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。これらの内、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド及びテトラベンジルチウラムジスルフィドは、加硫速度を調整し易いので好ましい。
【0047】
<(E)チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤>
本発明に係るゴム組成物において、(D)チウラム系加硫促進剤を配合する効果をより高めるために、(E)チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤を配合することが好ましい。
(E)チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤は、ゴム成分100質量部に対し、2.0〜6.0質量部配合されることが好ましい。この配合範囲であれば、(D)チウラム系加硫促進剤との併用効果を高めることができる。
本発明に係る加硫促進剤として、(D)チウラム系加硫促進剤及び(E)チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤の配合量を、上記のように、多くすることにより、加硫後のゴム組成物の高温での弾性率を更に高くすると共に、加硫後のゴム組成物の低発熱性(低燃費性)を更に向上することができる。
【0048】
本発明に係る(E)チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤としては、スルフェンアミド系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤及びキサントゲン酸塩系加硫促進剤から選ばれる1種以上の加硫促進剤が挙げられ、これらの内、スルフェンアミド系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤及びグアニジン系加硫促進剤から選ばれる1種以上の加硫促進剤が好ましい。
【0049】
本発明に係るスルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−メチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−エチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−プロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オクチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−2−エチルヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−デシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ドデシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ステアリル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジメチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジエチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジプロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジオクチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジ−2−エチルヘキシルベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−デシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジドデシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジステアリル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。これらの内、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド及びN,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドは、加硫速度を調整し易いので好ましい。
【0050】
本発明に係るチアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、ビス(4−メチルベンゾチアゾリル−2)−ジスルフィド、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、4−メチル−2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−(4−メチル−2−ベンゾチアゾリル)ジスルフィド、5−クロロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、2−メルカプト−6−ニトロベンゾチアゾール、2−メルカプト-ナフト[1,2−d]チアゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾール、6−アミノ−2−メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。これらの内、2−メルカプトベンゾチアゾール、ビス(4−メチルベンゾチアゾリル−2)−ジスルフィド、及びジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィドから選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0051】
本発明に係るチオウレア系加硫促進剤としては、例えば、チオ尿素、N,N’−ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素、N,N’−ジメチルチオ尿素、N,N’−ジブチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、N,N’−ジイソプロピルチオ尿素、N,N’−ジシクロヘキシルチオ尿素、1,3−ジ(o−トリル)チオ尿素、1,3−ジ(p−トリル)チオ尿素、1,1−ジフェニル−2−チオ尿素、2,5−ジチオビ尿素、グアニルチオ尿素、1−(1−ナフチル)−2−チオ尿素、1−フェニル−2−チオ尿素、p−トリルチオ尿素、o−トリルチオ尿素等が挙げられる。これらの内、チオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’−ジフェニルチオ尿素及びN,N’−ジメチルチオ尿素から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0052】
本発明に係るグアニジン系加硫促進剤としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1−o−トリルビグアニド及びジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく、1,3−ジフェニルグアニジンが特に好ましい。
【0053】
本発明に係るジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤としては、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジイソプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジペンチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジヘキシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジヘプチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸亜鉛、ジデシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジドデシルジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジプロピルジチオカルバミン酸銅、ジイソプロピルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、ジペンチルジチオカルバミン酸銅、ジヘキシルジチオカルバミン酸銅、ジヘプチルジチオカルバミン酸銅、ジオクチルジチオカルバミン酸銅、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸銅、ジデシルジチオカルバミン酸銅、ジドデシルジチオカルバミン酸銅、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸銅、ジベンジルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジプロピルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジイソプロピルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジペンチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジヘキシルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジヘプチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジオクチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸ナトリウム、ジデシルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジドデシルジチオカルバミン酸ナトリウム、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸ナトリウム、ジベンジルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジエチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジプロピルジチオカルバミン酸第二鉄、ジイソプロピルジチオカルバミン酸第二鉄、ジブチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジペンチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジヘキシルジチオカルバミン酸第二鉄、ジヘプチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジオクチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸第二鉄、ジデシルジチオカルバミン酸第二鉄、ジドデシルジチオカルバミン酸第二鉄、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸第二鉄、ジベンジルジチオカルバミン酸第二鉄等が挙げられる。これらの内、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛及びジメチルジチオカルバミン酸銅から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0054】
本発明に係るキサントゲン酸塩系加硫促進剤としては、例えば、メチルキサントゲン酸亜鉛、エチルキサントゲン酸亜鉛、プロピルキサントゲン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛、ペンチルキサントゲン酸亜鉛、ヘキシルキサントゲン酸亜鉛、ヘプチルキサントゲン酸亜鉛、オクチルキサントゲン酸亜鉛、2−エチルヘキシルキサントゲン酸亜鉛、デシルキサントゲン酸亜鉛、ドデシルキサントゲン酸亜鉛、メチルキサントゲン酸カリウム、エチルキサントゲン酸カリウム、プロピルキサントゲン酸カリウム、イソプロピルキサントゲン酸カリウム、ブチルキサントゲン酸カリウム、ペンチルキサントゲン酸カリウム、ヘキシルキサントゲン酸カリウム、ヘプチルキサントゲン酸カリウム、オクチルキサントゲン酸カリウム、2−エチルヘキシルキサントゲン酸カリウム、デシルキサントゲン酸カリウム、ドデシルキサントゲン酸カリウム、メチルキサントゲン酸ナトリウム、エチルキサントゲン酸ナトリウム、プロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、ブチルキサントゲン酸ナトリウム、ペンチルキサントゲン酸ナトリウム、ヘキシルキサントゲン酸ナトリウム、ヘプチルキサントゲン酸ナトリウム、オクチルキサントゲン酸ナトリウム、2−エチルヘキシルキサントゲン酸ナトリウム、デシルキサントゲン酸ナトリウム、ドデシルキサントゲン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの内、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛が好ましい。
【0055】
(加硫剤)
本発明に係る加硫剤は、硫黄及び硫黄供与体から選ばれる1種以上の硫黄含有加硫剤が好ましく挙げられ、その配合量は、ゴム成分100質量部に対し、硫黄分として1.0〜10.0質量部が好ましく、硫黄分として2.0〜10.0質量部が更に好ましく、硫黄分として2.0〜8.0質量部が特に好ましい。硫黄分として1.0質量部以上であれば、加硫後のゴム組成物の破壊強度、耐摩耗性、低発熱性が向上し、硫黄分として10.0質量部以下であれば、ゴム弾性を確保できる。
【0056】
(その他の配合剤)
さらに、本発明に係るゴム組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、プロセス油などを含有させることができる。
本発明に係るゴム組成物で使用できる老化防止剤としては、例えば2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、AW(6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン)、ジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物、6C[N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン]、3C(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)等を挙げることができる。その使用量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜5.0質量部が好ましく、さらに好ましくは0.3〜3.0質量部である。
【0057】
以上の記載の通り、ランフラット耐久性および乗心地を高度に両立させるためには、各配合材料における配合量を適切な範囲内にすることが重要である。しかし、個々の材料における配合量を最適化するだけでは十分ではなく、各材料の配合量のバランスを特定の範囲とすることが高度なランフラット耐久性と乗り心地の両立のためには重要である。
すなわち、前記ゴム組成物が、変性共役ジエン系重合体を20質量%以上含有するゴム成分、補強性充填材、熱硬化性樹脂、チウラム系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤、及び硫黄含有加硫剤を配合してなるゴム組成物であって、ゴム成分100質量部に対して、補強性充填材を60〜100質量部、チウラム系加硫促進剤を1.1〜2.5質量部、チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤を2.0〜6.0質量部、硫黄含有加硫剤を硫黄分として2.0〜10.0質量部配合し、熱硬化性樹脂を質量比[熱硬化性樹脂の配合量/補強性充填材の配合量]が0.001〜0.043となるように配合されていることで、顕著な効果が生じるものである。
【0058】
(ゴム組成物の調製)
本発明に係るゴム組成物は、前記配合処方により、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後、加硫を行い、図1におけるタイヤのサイド補強ゴム層8及びビードフィラー7から選ばれる少なくとも一つの部材として用いられる。
【0059】
(本発明のタイヤのカーカス層)
本発明のタイヤにおいて、少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカス層を骨格とするタイヤであることが好ましい。
前記カーカスプライの補強コードが、1.5cN/dtex負荷時における中間伸度が4.2%以下であって、かつ、タフネスが45cN・%/dtex以上の有機繊維コードであることが好ましい。中間伸度が4.2%以下という、寸法変化の小さい補強コードを用いることにより、タイヤ走行時の連続歪による補強コードの伸びを抑えることができ、タイヤ耐久性および操縦安定性を改善することができる。通常、補強コードは、ゴムとの接着性を改善するためにディップ処理が行われているが、中間伸度の高い補強コードでは、タイヤ走行時の連続歪により補強コード表面の接着剤層に亀裂が入ったりして劣化してしまう場合がある。しかしながら、本発明のタイヤのカーカスプライの補強コードとして、中間伸度の小さい補強コードを用いれば、タイヤ走行時の連続歪による接着剤層の劣化を防止することができる。カーカスプライの補強コードの中間伸度は、好ましくは4.0%以下、より好ましくは3.8%以下である。なお、ここでいう補強コードは、タイヤ製造前における補強コードを意味する。
また、製品タイヤから取出した、カーカスプライの補強コードの1.5cN/dtex負荷時の中間伸度は、6.0%以下が好ましい。特に、ビードコア1、1’部からの折り返し部の補強コードの中間伸度を上記範囲とすることで、耐サイドカット性とタイヤ剛性を良好に両立することができる。
ここで、中間伸度とはJIS L 1017:2002に準拠し、ディップ処理後の補強コードから、コード1本を採取し、1.5cN/dtexの張力下、145℃で3分間加熱し、冷却後に25±2℃の温度条件で、引張荷重1.5cN/dtexで引張試験を実施した時の伸度(%)のこという。また、タフネスとは、ディップ処理後の補強コードに対して、25±2℃の温度条件で引張試験を行い、歪−応力曲線(S−S曲線)を求め、原点からコードが破断するまでのS−S曲線の下側の面積をいうものとする。本発明のタイヤのカーカスプライの補強コードを上記のようにすることにより、耐サイドカット性および操縦安定性を、高い次元でバランスさせることができ、ランフラットタイヤに適用した場合、優れたランフラット耐久性を得ることができる。
本発明のタイヤは、ランフラットタイヤとして好適に用いられるものであり、空気入りタイヤである。
【0060】
また、本発明のタイヤのカーカスプライの補強コードのタフネスを、45cN・%/dtex以上とすることにより、操縦安定性とサイド部2の耐カット性を同時に向上させることができる。補強コードのタフネスは、より好ましくは、50cN・%/dtex以上であり、さらに好ましくは55cN・%/dtex以上である。なお、補強コードのタフネスは、ディップ液の種類、ディップ温度およびディップ時間を適宜設定することで調整することができる。
【0061】
本発明のタイヤにおいては、前記補強コードは、(A)熱可塑性重合体、(B)熱反応型水性ウレタン樹脂および(C)エポキシド化合物からなる群のうち、少なくとも一種を含む接着剤を1浴処理液として用いるとともに、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス系接着剤を2浴処理液として用いて接着剤処理なされたものであり、かつ、前記(A)熱可塑性重合体の主鎖が、付加反応性のある炭素間2重結合を実質的に有さず、直鎖状構造を主体としたエチレン性付加重合体およびウレタン系高分子重合体のうち少なくとも一方からなり、ペンダント基として架橋性を有する官能基を少なくとも1つ有することが好ましい。
特に、(B)、(C)を配合することによって、補強コードとゴムとの接着性を高めることができる。なお、スティフネスが高くなると、連続歪下での接着耐久性が低下してしまうが、上述のとおり、本発明のタイヤのカーカスプライの補強コードとして、中間伸度の小さい補強コードを用いると、補強コード全体の変形量が抑えられ、接着剤層の劣化を防止し、接着耐久性の低下を防止することができる。なお、上記(A)〜(C)組成を有する接着剤組成物としては、特許第4928661号公報で提案されている接着剤組成物を用いることができる。
【0062】
(A)熱可塑性重合体のエチレン性付加重合体を構成する単量体として、炭素−炭素二重結合を1つ有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のα−オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン、モノクロルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、スチレン、スルホン酸ナトリウム等のα,β−不飽和芳香族単量体類;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、ブテントリカルボン酸などのエチレン性カルボン酸類およびその塩;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル等の不飽和カルボン酸のエステル類;イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステルなどのエチレン性ジカルボン酸のモノエステル類;イタコン酸ジエチルエステル、フマル酸ジブチルエステルなどのエチレン性ジカルボン酸のジエステル類;アクリルアミド、マレイン酸アミド、N−メチロールアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、マレイン酸アミド等のα,β−エチレン性不飽和酸のアミド類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリルニトリル等の不飽和ニトリル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルケトン;ビニルアミド;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等の含ハロゲンα,β−不飽和単量体類;酢酸ビニル、吉草酸ビニル、カプリル酸ビニル、ビニルピリジン等のビニル化合物;2−イソプロペニル−2−オキサゾリンなどの付加重合性オキサゾリン類;ビニルピロリドン等の複素環式ビニル化合物;ビニルエトキシシラン、α−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の不飽和結合含有シラン化合物などが挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの単量体のラジカル付加重合により熱可塑性重合体(A)を得ることが好ましい。
【0063】
また、主鎖骨格を構成する単量体として、炭素−炭素二重結合を2つ以上含有する単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、クロロプレンなどのハロゲン置換ブタジエンなどの共役ジエン系単量体などが挙げられる。非共役ジエン系単量体としては、ビニルノーボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等の非本役ジエン系単量体等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、主鎖骨格を構成する単量体として、炭素−炭素二重結合を2つ以上含有する単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、クロロプレンなどのハロゲン置換ブタジエンなどの共役ジエン系単量体などが挙げられる。非共役ジエン系単量体としては、ビニルノーボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等の非本役ジエン系単量体等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
熱反応型水性ウレタン樹脂(B)としては、一分子中に、複数個以上の熱解離性のブロックされたイソシアネート基を有する樹脂が好ましく用いられる。例えば、下記の一般式で表される熱反応型水性ポリウレタン化合物等が最適である。
【化1】

(式中、Aは官能基数3〜5の有機ポリイソシアネート化合物のイソシアネート残基を示し、Yは熱処理によりイソシアネート基を遊離するブロック剤化合物の活性水素残基を示し、Zは分子中、少なくとも1個の活性水素原子および少なくとも1個のアニオン形成性基を有する化合物の活性水素残基を示し、Xは2〜4個の水酸基を有し平均分子量が5000以下のポリオール化合物の活性水素残基であり、nは2〜4の整数であり、p+mは2〜4の整数(m≧0.25)である。)
【0065】
エポキシド化合物(C)としては、1分子中に2個以上、好ましくは4個以上のエポキシ基を含む化合物であれば本発明の目的を達成できるが、好適には、エポキシ基を含む化合物、または、多価アルコール類とエピクロルヒドリンとの反応生成物である。エポキシ化合物の具体例としては、例えば、ジエチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ポリエチレン・ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール・ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール・ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオール・ジグリシジルエーテル、グリセロール・ポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパン・ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロール・ポリグリシジルエーテル、ペンタエリチオール・ポリグリシジルエーテル、ジグリセロール・ポリグリシジルエーテル、ソルビトール・ポリグリシジルエーテル、などの多価アルコール類とエピクロルヒドリンの反応生成物;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられる。エポキシド化合物としては、好適には、ソルビトールポリグリシジルエーテルまたはポリグリセロールポリグリシジルエーテルを用いる。
【0066】
本発明においては、上記(A),(B)および(C)成分の混合液を1浴処理液として用いることが好ましい。これら各成分の比率は、接着剤組成物中の乾燥重量比率で、(A)成分が2〜75%、(B)成分が15〜87%、(C)成分が11〜70%であることが好ましい。
【0067】
また、本発明のタイヤにおいては、前記補強コードの熱処理後の熱収縮率は、0.5〜3.0%であることが好ましい。カーカスプライの補強コードの熱収縮率を上記範囲とすることで、タイヤ成型時から加硫時における補強コードの熱収縮による位置の乱れを防止することができる。そのため、タイヤの剛性を確保しやすくなり、その結果、タイヤ耐久性や操縦安定性を安定して得ることができる。好ましくは、1.0〜2.5%である。
ここで、熱収縮率とは、ディップ処理後の補強コードに対して、0.015g/dtexの荷重をかけて、オーブン中で177℃、2分の乾熱処理を行ない、熱処理前後のコード長を計測して、下記の式
乾熱処理時熱収縮率(%)={(Lb−La)/Lb}×100
により求められる値である。ここで、Laは熱処理後のコード長、Lbは熱処理前のコード長である。
【0068】
本発明のタイヤのカーカスプライの補強コードの撚り係数は0.30〜0.50であることが好ましく、0.35〜0.50であることがさらに好ましい。撚り係数を上記範囲とすることで、補強コードへの圧縮入力が緩やかになり、カーカスプライの疲労耐久性の低下を防止することができる。また、補強コードの引張弾性率の低下も防止することができ、タイヤ剛性を十分に確保することができる。さらに、補強コードの撚り係数が0.50より大きくなると、撚糸工程でのコードの生産性が悪化してしまうおそれもあるので好ましくない。なお、撚り係数Tは次式、
T=N×√{(0.125×D/2)/ρ}×10−3
(ただし、Nは上撚り数(回/10cm)、Dはトータル表示デシテックス(繊度)、ρはコード材料の比重である。)で表される。
【0069】
本発明のタイヤのカーカスプライの補強コードとして、1.5cN/dtex負荷時における中間伸度が4.2%以下であって、かつ、タフネスが45cN・%/dtex以上の有機繊維コードであれば、いずれでも用いることができるが、ポリエステルからなるコード、特に、安価なポリエチレンテレフタレート(PET)からなるコードが好ましい。また、タイヤのその他の構造については、既知の構造を採用することができる。
本発明のタイヤのカーカスプライの補強コードは、前記サイド部にサイド補強ゴム層が配置されてなるランフラットタイヤに好適に適用することができる。
【0070】
また、本発明のタイヤは、一対のビード部にはそれぞれビードコア1、1’が埋設され、カーカス層2はこのビードコア1、1’の周りにタイヤ内側から外側に折り返して係止されているが、カーカス層2の係止方法についても、これに限られるものでもない。例えば、カーカス層2を構成するカーカスプライのうち、少なくとも1枚のカーカスプライは、ビードコア1、1’の周りにタイヤ幅方向内側から外側に向かって折り返されて、その折返し端がベルト層5とカーカス層2のクラウン部との間に位置する、いわゆるエンベロープ構造としてもよい。さらにまた、トレッドゴム層4の表面には適宜トレッドパターンが形成されていてもよく、最内層にはインナーライナー6が形成されていてもよい。本発明のタイヤにおいて、タイヤ内に充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を変えた空気、もしくは窒素等の不活性ガスを用いることができる。本発明のタイヤは、乗用車用空気入りタイヤ、特に、乗用車用ランフラットタイヤに好適である。
【0071】
(タイヤの作製)
本発明のタイヤは、本発明に係るゴム組成物をサイド補強ゴム層8及びビードフィラー7から選ばれる少なくとも一つの部材に用いて通常のランフラットタイヤの製造方法によって製造される。すなわち、前記のように各種薬品を含有させた本発明に係るゴム組成物が未加硫の段階で各部材に加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
【実施例】
【0072】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、諸特性は下記の方法に従って測定した。
《変性共役ジエン系重合体の物性》
<ミクロ構造の分析法>
赤外法(モレロ法)により、ブタジエン部分のビニル結合含有量(質量%)を測定した。
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定>
GPC[東ソー製、HLC−8020]により検出器として屈折計を用いて測定し、単分散ポリスチレンを標準としたポリスチレン換算で示した。なお、カラムはGMHXL[東ソー製]で、溶離液はテトラヒドロフランである。
【0073】
<第1級アミノ基含有量(mmol/kg)の測定>
先ず、重合体をトルエンに溶解した後、大量のメタノール中で沈殿させることにより重合体に結合していないアミノ基含有化合物をゴムから分離した後、乾燥した。本処理を施した重合体を試料として、JISK7237に記載された「全アミン価試験方法」により全アミノ基含有量を定量した。続けて、前記処理を施した重合体を試料として「アセチルアセトンブロックド法」により第2級アミノ基及び第3級アミノ基の含有量を定量した。試料を溶解させる溶媒には、o−ニトロトルエンを使用、アセチルアセトンを添加し、過塩素酢酸溶液で電位差滴定を行った。全アミノ基含有量から第2級アミノ基及び第3級アミノ基の含有量を引いて第1級アミノ基含有量(mmol)を求め、分析に使用したポリマー質量で割ることにより重合体に結合した第1級アミノ基含有量(mmol/kg)を求めた。
【0074】
《加硫ゴム組成物の物性》
各供試タイヤ(タイヤサイズ215/45ZR17の乗用車ラジアルタイヤ)のサイド補強ゴム層(最厚部の中心部周方向)及びビードフィラー(ビードコアから10mm離れた中心部周方向)から、それぞれ、厚さ2mmのスラブシートを作製して、以下の各測定を行った。なお、各測定値は、サイド補強ゴム層の値とビードフィラーの値とを相加平均して算出した。
<50%伸び引張応力>
JIS K 6251:2010(ダンベル状8号形の試験片を使用)に基づき、180℃及び25℃において50%伸び引張応力を測定した。
<X/Y=[180℃の6.5MPa応力伸び量X(%)]/[25℃の6.5MPa応力伸び量Y(%)]>
JIS K 6251:2010(ダンベル状8号形の試験片を使用)に基づき、180℃及び25℃において6.5MPa応力伸び量X及びYを測定し、(X/Y)を算出した。
<動的引張貯蔵弾性率E’及び損失正接tanδ>
上記の厚さ2mmのスラブシートから得た試料片について、上島製作所社製粘弾性アナライザVR−7110 を用い、初期歪5%、動歪1%、周波数52Hzの測定条件にて、測定温度25℃における動的引張貯蔵弾性率E’及び測定温度180℃における損失正接tanδを測定した。また、初期歪5%、動歪1%、周波数52Hzの測定条件で1℃間隔で測定した28℃〜150℃のtanδ値の総和Sを測定した。
<タイヤが100℃で24時間放置された後の(X/Y)>
各供試タイヤ(タイヤサイズ215/45ZR17の乗用車ラジアルタイヤ)を常圧でリム組みし、内圧230kPaを封入してから100℃の空気循環型大型オーブン中に24時間放置後、各タイヤのサイド補強ゴム層(最厚部の中心部周方向)及びビードフィラー(ビードコアから10mm離れた中心部周方向)から、それぞれ、厚さ2mmのスラブシートを作製して、上記と同様にX及びYを測定し、(X/Y)を算出した。
【0075】
《空気入りタイヤ性能の評価》
<ランフラット耐久性>
各供試タイヤ(タイヤサイズ215/45ZR17の乗用車ラジアルタイヤ)を常圧でリム組みし、内圧230kPaを封入してから38℃の室内中に24時間放置後、バルブのコアを抜き、内圧を大気圧として、荷重4.17kN(425kg)、速度89km/h、室内温度38℃の条件でドラム走行テストを行なった。各供試タイヤの故障発生までの走行距離を測定し、比較例1の走行距離を100として、以下の式により、指数表示した。指数が大きい程、ランフラット耐久性が良好である。
ランフラット耐久性(指数)=(供試タイヤの走行距離/比較例1のタイヤの走行距離)×100
また、実施例13〜23及び参考例1〜11において、225/45R17 91Y(LI91=615Kg)の各タイヤの空気圧を0kPa(空気圧ゼロ)とし、荷重4.5kNにて、ドラム試験機に装着し80km/hで走行させた。故障するまでの走行距離で、実施例20のタイヤをC(指数100)として、実施例20と比較して走行距離が非常に長く飛躍的に優れていた場合をA(指数115以上)、実施例20と比較して走行距離がより長く良好であった場合をB(指数105以上かつ115未満)、実施例20と比較して走行距離が同等の場合をC(指数95より大きくかつ105未満)、実施例20と比較して走行距離が下回った場合をD(指数95以下)とした。得られた結果を第3表に示す。ここで、第3表におけるCについては、ランフラット耐久性において優れた性能を示すものであり、A、B評価のものはさらに優れた結果であったことを示すものである。
また、後述する参考例1〜11において、上記の試験手順で故障するまでの走行距離が参考例1のタイヤをc(指数100)として、参考例1と比較して走行距離が非常に長く飛躍的に優れていた場合をa(指数115以上)、参考例1と比較して走行距離がより長く良好であった場合をb(指数105以上かつ115未満)、参考例1と比較して走行距離が同等の場合をc(指数95より大きくかつ105未満)、参考例1と比較して走行距離が短かかった場合をd(指数95以下)とした。得られた結果を第4表に示す。
但し、実施例20のタイヤの評価C(指数100)は、参考例1のタイヤの評価c(指数100)と比較して走行距離が大幅に長く優れている。また、実施例におけるタイヤの評価B(指数105以上かつ115未満)は、参考例2〜8のタイヤの評価b(指数105以上かつ115未満)と比較して大幅に優れている。
<耐サイドカット性>
225/45R17 91Y(LI91=615Kg)、空気圧220kPa、荷重3.00kNから試験を開始した。床面に丸ピン形状の治具を固定し、タイヤを転動させサイド部で踏ませる試験方法である。試験後にエア漏れしない場合には、タイヤに負荷する荷重を増やし、再度試験をする。後述する実施例13〜23において、この試験手順でエア漏れしたときの荷重が実施例20のタイヤをC(指数100)として、実施例20と比較してエア漏れしたときの荷重が非常に高く飛躍的に優れていた場合をA(指数115以上)、実施例20と比較してエア漏れしたときの荷重がより高く良好であった場合をB(指数105以上かつ115未満)、実施例20と比較してエア漏れしたときの荷重が同等の場合をC(指数95より大きくかつ105未満)、実施例20と比較してエア漏れしたときの荷重が下回った場合をD(指数60より大きくかつ95以下)、さらに下回った場合をE(指数60以下)とした。得られた結果を第3表に示す。なお、タイヤとしての使用を考慮すると評価結果はA〜Dであることが好ましい。
また、後述する参考例1〜11において、上記の試験手順でエア漏れしたときの荷重が参考例1のタイヤをc(指数100)として、参考例1と比較してエア漏れしたときの荷重が非常に高く飛躍的に優れていた場合をa(指数115以上)、参考例1と比較してエア漏れしたときの荷重がより高く良好であった場合をb(指数105以上かつ115未満)、参考例1と比較してエア漏れしたときの荷重が同等の場合をc(指数95より大きくかつ105未満)、参考例1と比較してエア漏れしたときの荷重が下回った場合をd(指数95以下)とした。得られた結果を第4表に示す。
但し、実施例20のタイヤの評価C(指数100)は、参考例1のタイヤの評価c(指数100)と比較して大幅に優れている。また、実施例におけるタイヤの評価B(指数105以上かつ115未満)は、参考例2〜8のタイヤの評価b(指数105以上かつ115未満)と比較して大幅に優れている。
<操縦安定性>
225/45R17 91Y(LI91=615Kg)の各タイヤの空気圧を230kPaとし、荷重6.00kNにて、各タイヤを動的試験機に装着し、コーナリングパワー(CP)を計測した。後述する実施例13〜23において、この試験手順でコーナリングパワー(CP)が実施例20のタイヤをC(指数100)として、実施例20と比較してコーナリングパワー(CP)が非常に高く飛躍的に優れていた場合をA(指数115以上)、実施例20と比較してコーナリングパワー(CP)がより高く良好であった場合をB(指数105以上かつ115未満)、実施例20と比較してコーナリングパワー(CP)が同等の場合をC(指数95より大きくかつ105未満)、実施例20と比較してコーナリングパワー(CP)が下回った場合をD(指数60より大きくかつ95以下)、さらに下回った場合をE(指数60以下)とした。得られた結果を第3表に示す。なお、タイヤとしての使用を考慮すると評価結果はA〜Dであることが好ましい。
また、後述する参考例1〜11において、上記の試験手順でコーナリングパワー(CP)が参考例1のタイヤをc(指数100)として、参考例1と比較してコーナリングパワー(CP)が非常に高く飛躍的に優れていた場合をa(指数115以上)、参考例1と比較してコーナリングパワー(CP)がより高く良好であった場合をb(指数105以上かつ115未満)、参考例1と比較してコーナリングパワー(CP)が同等の場合をc(指数95より大きくかつ105未満)、参考例1と比較してコーナリングパワー(CP)が下回った場合をd(指数95以下)とした。得られた結果を第4表に示す。
但し、実施例20のタイヤの評価C(指数100)は、参考例1のタイヤの評価c(指数100)と比較して大幅に優れている。また、実施例におけるタイヤの評価B(指数105以上かつ115未満)は、参考例2〜8のタイヤの評価b(指数105以上かつ115未満)と比較して大幅に優れている。
【0076】
製造例1 変性共役ジエン系重合体Pの製造
(1)未変性ポリブタジエンの製造
窒素置換された5Lオートクレーブに、窒素下、シクロヘキサン1.4kg、1,3−ブタジエン250g、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン(0.0285mmol)シクロヘキサン溶液として注入し、これに2.85mmolのn−ブチルリチウム(BuLi)を加えた後、攪拌装置を備えた50℃温水浴中で4.5時間重合を行なった。1,3−ブタジエンの反応転化率は、ほぼ100%であった。この重合体溶液の一部を、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.3gを含むメタノール溶液に抜き取り重合を停止させた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥して、変性前のポリブタジエンを得た。得られた変性前のポリブタジエンについてミクロ構造(ビニル結合量)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。その結果、ビニル結合量は14質量%、Mwは150、000、Mw/Mnは1.1であった。
(2)第1級アミン変性ポリブタジエンの製造
上記(1)で得られた重合体溶液を、重合触媒を失活させることなく、温度50℃に保ち、第1級アミノ基が保護されたN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン1129mg(3.364mmol)を加えて、変性反応を15分間行った。最後に反応後の重合体溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒及び保護された第1級アミノ基の脱保護を行い、110℃に調温された熟ロールによりゴムを乾燥し、第1級アミン変性ポリブタジエンを得た。得られた変性ポリブタジエンについてミクロ構造(ビニル結合量)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)及び第1級アミノ基含有量を測定した。その結果、ビニル結合量は14質量%、Mwは150,000、Mw/Mnは1.2、第1級アミノ基含有量は4.0mmol/kgであった。
【0077】
実施例1〜8及び比較例1〜2
第1表に示す10種の配合組成を有する10種のゴム組成物を調製し、これらの10種のゴム組成物を、図1に示すサイド補強ゴム層8及びビードフィラー7に配設し、それぞれタイヤサイズ215/45ZR17の乗用車用ラジアルランフラットタイヤを定法に従って製造し、それら10種のタイヤについて、それぞれ加硫ゴム組成物の物性として、180℃における50%伸び引張応力、X/Y=[180℃の6.5MPa応力伸び量X(%)]/[25℃の6.5MPa応力伸び量Y(%)]、及び損失正接tanδを測定し、タイヤ性能としてランフラット耐久性を測定した。それらの結果を第1表に示す。
次に、10種のタイヤを100℃の空気循環型大型オーブン中に24時間放置し、放置後のX/Y及び180℃における50%伸び引張応力を評価した。それらの結果を第1表に示す。なお、それらのタイヤのサイド補強ゴム層の最大厚みを6.0mmとした。
【0078】
【表1】
【0079】
[注]
*1. 天然ゴム: RSS#1
*2. 変性共役ジエン系重合体: 製造例1で得られた変性共役ジエン系重合体P
*3. カーボンブラックFEF: N550、旭カーボン株式会社製、商品名「旭#60」
*4. カシュー変性フェノール樹脂: 住友ベークライト株式会社製、商品名「スミライトレジンPR−BSN−21」
*5. ヘキサメチレンテトラミン: 和光純薬工業株式会社製
*6. 加硫促進剤TOT: テトラキス(2−エチルへキシル)チウラムジスルフィド、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーTOT−N」
*7. 加硫促進剤NS: N−(tert−ブチル)−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、三新化学工業株式会社製、商品名「サンセラーNS−G」
*8. 老化防止剤6C: N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラック6C」
【0080】
第1表から明らかなように、実施例1〜8のゴム組成物は、180℃における6.5MPa応力伸び量Xと、25℃における6.5MPa応力伸び量Yが、加硫後で式(1)を満たし、実施例1〜8のタイヤのランフラット耐久性が比較例1〜2のタイヤと比較して優れていることがわかる。
【0081】
実施例9〜12及び比較例3
第2表に示す実施例9〜12及び比較例3の配合組成を有する5種のゴム組成物、第2表に示す実施例1及び4のゴム組成物並びに第2表に示す比較例1のゴム組成物を調製し、これらの8種のゴム組成物を、図1に示すサイド補強ゴム層8及びビードフィラー7に配設し、それぞれタイヤサイズ215/45ZR17の乗用車用ラジアルランフラットタイヤを定法に従って製造し、それら8種のタイヤについて、それぞれ加硫ゴム組成物の物性として、X/Y=[180℃の6.5MPa応力伸び量X(%)]/[25℃の6.5MPa応力伸び量Y(%)]、初期歪5%、動歪1%及び周波数52Hzの測定条件で測定温度25℃における動的引張貯蔵弾性率E’、同じ測定条件で測定温度180℃における損失正接tanδ、同じ測定条件で1℃刻みで測定した28℃〜150℃のtanδ値の総和S並びに180℃の50%伸び引張応力を測定し、タイヤ性能としてランフラット耐久性を測定した。それらの結果を第1表に示す。
次に、8種のタイヤを100℃の空気循環型大型オーブン中に24時間放置し、放置後のX/Yを評価した。それらの結果を第2表に示す。なお、それらのタイヤのサイド補強ゴム層の最大厚みを6.0mmとした。
【0082】
【表2】
【0083】
[注]
*1〜*8は第1表と同じである。
【0084】
第2表から明らかなように、実施例1、4及び9〜12のゴム組成物は、180℃における6.5MPa応力伸び量Xと、25℃における6.5MPa応力伸び量Yが、加硫後で式(1)を満たし、加硫後の初期歪5%、動歪1%及び周波数52Hzの測定条件で25℃における動的引張貯蔵弾性率E’が9.0MPa以上であり、かつ加硫後の前記測定条件で1℃間隔で測定した28℃〜150℃のtanδ値の総和Sが6.0以下であるので、実施例1、4及び9〜12のタイヤのランフラット耐久性が比較例1及び3のタイヤと比較して優れていた。
また、乗り心地性の評価として各供試ランフラットタイヤ(タイヤサイズ215/45R17の乗用車ラジアルタイヤ)を空気圧:230kPaでリム組みし、荷重:4.22kNでタイヤの縦バネを常温(25℃)で測定し、比較例1のランフラットタイヤの縦バネ値と実施例1、4及び9〜12における縦バネ値を比較したところ、実施例1、4及び9〜12の全てにおいて、比較例1と同等かそれ以上の乗心地性を有していた。
よって、本発明の実施例1、4及び9〜12のタイヤは、ランフラット耐久性に加えて、他の一つの効果として、乗り心地性の確保をも満足することが明らかになった。
【0085】
実施例13〜23及び参考例1〜11
実施例1〜12及び比較例1〜3と同様に、タイヤサイズ225/45R17 91Y(LI91=615Kg)の乗用車用ラジアルランフラットタイヤを定法に従って製造し、それら22種のタイヤについて、ランフラット耐久性、耐サイドカット性及び操縦安定性を評価した。接着剤は、いずれも下記接着剤Aを用いた。カーカスプライの補強コードの物性、評価結果を第3表及び第4表に示す。
【0086】
<接着剤A>
1浴目のディップ液がA−1であり、エポクロスK1010E(日本触媒(株)製、オキサゾリン含有ポリマー):16.5質量%(固形分重量)、エラストロンBN27[第一工業製薬(株)製水系ウレタン樹脂]:6質量%(固形分重量)、デナコールEX614B[ナガセ化成工業(株)製多官能タイプ(4官能以上)脂肪族エポキシ樹脂]:7.5質量%(固形分重量)および水70質量%よりなる。また、2浴目のディップ液がA−2であり、水524.01質量部、レゾルシン15.12質量部、ホルマリン(37%)16.72質量部および苛性ソーダ(10%)4.00質量部、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(JSR0655、JSR(株)製、固形分濃度41%)233.15質量部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(JSR2108、JSR(株)製、固形分濃度40%)207.00質量部よりなる。
【0087】
なお、実施例21〜31及び参考例1〜11におけるカーカスプライコードは有機繊維のマルチフィラメントであり、マルチヤーン収束体2本を下撚り、上撚りで撚り合わせた。この有機繊維の撚りコードを1浴処理液に浸漬し、160℃でのトライゾーンで0.6g/dtexのテンション下で60秒間、240℃のホットゾーンで0.6g/dtexのテンション下で60秒間処理した後、再度ディップ張力200gで、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)系接着剤よりなる2浴処理液に浸漬し、再度、180℃のドライゾーンで0.6g/dtexのテンション下で60秒間、ホットゾーンで60秒間、計240秒間の熱処理を施し接着剤を塗布したコードを作成した。なお、ディップ処理工程最後のホットゾーンの温度を240〜250℃の間で微調整し、テンションを0.2〜0.5g/dtexの間で微調整し、中間伸度を調整した。
第3表及び第4表において、PETとはポリエチレンテレフタレート繊維をいう。なお、アラミドとして、パラ系のアラミド繊維[東レ・デュポン株式会社製ケブラー(登録商標)]を用いた。
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
第3表より、本発明のタイヤ、特に、ランフラットタイヤは、ランフラット耐久性について優れた結果を示すと共に、耐サイドカット性および操縦安定性をも大幅に向上しており、高い次元でバランスしていることがわかる。
特に、第3表から明らかなように、本発明に係るゴム組成物をサイド補強ゴム層及びビードフィラーに用い、かつカーカスプライの補強コードとして、1.5cN/dtex負荷時における中間伸度が4.2%以下であって、かつ、タフネスが45cN・%/dtex以上の有機繊維コードを用いた空気入りタイヤ(実施例13〜19)は、本発明に係るゴム組成物をサイド補強ゴム層及びビードフィラーに用いているが、カーカスプライの補強コードとして、1.5cN/dtex負荷時における中間伸度が4.2%以下及びタフネスが45cN・%/dtex以上のいずれかを満足しない有機繊維コードを用いた空気入りタイヤ(実施例20〜23)と比較して、ランフラット耐久性、耐サイドカット性及び操縦安定性の全てにわたって優れていることがわかる。
すなわち、実施例13〜19の空気入りタイヤは、実施例20〜23の空気入りタイヤと比較して、本発明に係るゴム組成物をサイド補強ゴム層及びビードフィラーに用い、かつカーカスプライの補強コードとして、1.5cN/dtex負荷時における中間伸度が4.2%以下であって、かつ、タフネスが45cN・%/dtex以上の有機繊維コードを用いたことによる顕著な相乗効果が得られる。
一方、第4表から明らかなように、比較例1のゴム組成物をサイド補強ゴム層及びビードフィラーに用い、かつカーカスプライの補強コードとして、1.5cN/dtex負荷時における中間伸度が4.2%以下であって、かつ、タフネスが45cN・%/dtex以上の有機繊維コードを用いた空気入りタイヤ(参考例2〜8)は、比較例1のゴム組成物をサイド補強ゴム層及びビードフィラーに用い、カーカスプライの補強コードとして、1.5cN/dtex負荷時における中間伸度が4.2%以下及びタフネスが45cN・%/dtex以上のいずれかを満足しない有機繊維コードを用いた空気入りタイヤ(参考例1及び9〜11)と比較して、ランフラット耐久性、耐サイドカット性及び操縦安定性のいずれかが向上していることが認められる。
しかし、参考例2〜8の空気入りタイヤは、参考例1及び9〜11の空気入りタイヤと比較して、実施例13〜19の空気入りタイヤにおいて得られる顕著な相乗効果は認められない。すなわち、実施例13〜19の空気入りタイヤは、本発明に係るゴム組成物と本発明に係るカーカスプライの補強コードとの組み合わせによりはじめて顕著な相乗効果を奏するのである。
実施例13〜19の空気入りタイヤは参考例2〜8の空気入りタイヤと比較して、ランフラット耐久性、耐サイドカット性及び操縦安定性の全てにわたって、大幅に優れる結果となっている。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のタイヤは、加硫ゴム物性において、高温時における弾性率の低下が抑制されたゴム組成物をサイド補強ゴム層及びビードフィラーから選ばれる少なくとも一つの部材に用いることにより、ランフラット耐久性を向上させることができ、かつカーカスプライの補強コードとして、特定の中間伸度及びタフネスを有する有機繊維コードを用いて、ランフラット耐久性に優れると共に耐サイドカット性および操縦安定性をも向上するので、ランフラットタイヤとして好適に使用される。
【符号の説明】
【0092】
1、1’ ビードコア
2 カーカス層
3 サイドゴム層
4 トレッドゴム層
5 ベルト層
6 インナーライナー
7 ビードフィラー
8 サイド補強ゴム層
10 ショルダー区域
【要約】
本発明は、180℃における6.5MPa応力伸び量Xと、25℃における6.5MPa応力伸び量Yが、加硫後で式(1)を満たし、変性共役ジエン系重合体を20質量%以上含有するゴム成分を含むゴム組成物をサイド補強ゴム層及びビードフィラーから選ばれる少なくとも一つの部材に配設してなるタイヤであり、ランフラット耐久性を向上したタイヤを提供するものである。
1.00≦X/Y≦1.15 ・・・ (1)
図1