特許第6018730号(P6018730)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6018730ダイシングシートおよび半導体チップの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018730
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】ダイシングシートおよび半導体チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20161020BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   H01L21/78 M
   H01L21/78 Q
   C09J7/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-55059(P2011-55059)
(22)【出願日】2011年3月14日
(65)【公開番号】特開2012-191098(P2012-191098A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2013年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100097180
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 均
(74)【代理人】
【識別番号】100110917
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 亨
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽輔
(72)【発明者】
【氏名】堀米 克彦
(72)【発明者】
【氏名】金井 道生
【審査官】 梶尾 誠哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−228420(JP,A)
【文献】 特開2009−130333(JP,A)
【文献】 再公表特許第2004/065510(JP,A1)
【文献】 特開2007−59829(JP,A)
【文献】 特開2010−177542(JP,A)
【文献】 特開2011−9425(JP,A)
【文献】 特開2007−5530(JP,A)
【文献】 特開2001−127029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とその片面に設けられた粘着剤とからなり、該基材のヤング率が80〜300MPaであり、10%延伸1分後の応力緩和率が60%以上であり、さらに厚みが55〜105μmである、ダイシングシート。
【請求項2】
該基材がポリ塩化ビニルである請求項1に記載のダイシングシート。
【請求項3】
該基材がポリウレタンアクリレートである請求項1に記載のダイシングシート。
【請求項4】
表面に回路が形成され、裏面外周部に環状凸部を有する半導体ウエハの裏面に、請求項1に記載のダイシングシートを貼付する工程、該半導体ウエハを回路ごとに個片化して半導体チップを作製する工程を含む半導体チップの製造方法。
【請求項5】
表面に回路が形成され、裏面外周部に環状凸部を有する半導体ウエハの裏面に、請求項1に記載のダイシングシートを貼付する工程、環状凸部の形成された箇所を切断、除去する工程、該半導体ウエハを回路ごとに個片化して半導体チップを作製する工程、ダイシングシートをエキスパンドしてチップ間隔を拡張する工程を含む半導体チップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハを回路毎に個片化し、半導体チップを作成する際に、半導体ウエハを固定するために使用されるダイシングシートに関する。また、本発明は該ダイシングシートを使用した半導体チップの製造方法に関する。特に本発明のダイシングシートは、表面に回路が形成され、裏面外周部に環状凸部を有する半導体ウエハを固定、切断し、チップを製造する際に好ましく用いられる。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハは表面に回路が形成された後、ウエハの裏面側に研削加工を施し、ウエハの厚さを調整する裏面研削工程およびウエハを所定のチップサイズに個片化するダイシング工程が行われる。また裏面研削工程に続いて、さらに裏面にエッチング処理などの発熱を伴う加工処理や、裏面への金属膜の蒸着のように高温で行われる処理が施されることがある。
【0003】
近年のICカードの普及にともない、その構成部材である半導体チップの薄型化が進められている。このため、従来350μm程度の厚みであったウエハを、50〜100μmあるいはそれ以下まで薄くすることが求められるようになった。
【0004】
脆質部材であるウエハは、薄くなるにつれて、加工や運搬の際、破損する危険性が高くなる。このため、ウエハを極薄まで研削したり、極薄のウエハを運搬する場合は、ウエハをガラス板やアクリル板のような硬質板上に両面粘着シートなどにより固定・保護して作業を進めている。
【0005】
しかしながら、両面粘着シートでウエハと硬質板とを貼り合わせる方法では、一連の工程を終えた後、両者を剥離する際、ウエハが割れてしまうことがあった。2枚の薄層品が貼り合わせてなる積層物を剥離する際には、薄層品の何れか一方、または両者を湾曲させて剥離する必要がある。しかし、硬質板を湾曲することは不可能ないし困難であるため、ウエハ側を湾曲せざるをえない。このため、脆弱なウエハが割れてしまうことがある。
【0006】
また、上記したような裏面研削後に、高温での加工をウエハ裏面に施す際には、両面粘着シート等でウエハを固定することは適切ではない。すなわち、両面粘着シートを介して硬質板上にウエハを保持した状態で高温に曝されると、両面粘着シートが軟化、分解し、ウエハの保持機能が失われる。また両面粘着シートが熱により収縮または膨張し、極薄ウエハが変形してしまうことがある。さらに両面粘着シートに由来する有機物の分解物によりウエハが汚染されることもある。
【0007】
このため、図3図5に示すように、裏面研削時に、ウエハ裏面の全面を平滑に研削せずに、裏面内周部16のみを研削し、裏面外周部に環状凸部17を残存させることが提案されている(特許文献1、2等)。ウエハ表面には、図3に示すように、外周端から数mmの範囲には回路13が形成されていない余剰部分15があり、回路13は余剰部分を除くウエハ内周部14に形成されている。上記の裏面研削方法では、表面の回路形成部分(ウエハ内周部14)に対応する裏面内周部16のみを所定の厚みまで研削し、回路が形成されていない余剰部分15に対応する裏面領域は研削せずに残存させる。この結果、図4に示すように、研削後の半導体ウエハの裏面外周部には環状の凸部17が形成される。環状凸部17は比較的剛性が高いため、上記の形態に研削されたウエハは、硬質板を使用せずとも安定して搬送、保管できる。よって、上記の形態に研削されたウエハによれば、硬質板を固定する両面粘着シート等を使用する必要が無いため、高温に曝して裏面加工を施す際にも、ウエハを安定して保持でき、かつ有機物の分解物によりウエハが汚染されることもない。
【0008】
ところで、半導体ウエハをダイシングする際には、ウエハの裏面全面をダイシングシートと呼ばれる粘着シートで固定し、ダイシングシートの外周部をリングフレームにより固定している。その後、ウエハ表面側から回路パターンを認識しつつ、回路間のストリートに沿ってダイシングを行う。ダイシング時には、ウエハをフルカットしてチップを作成し、ダイシングシートを切断しないようにダイシングの深さを設定する。この結果、生成したチップは、ダイシングシート上に保持され、その後、所定の手段によりチップのピックアップを行う。
【0009】
しかし、上記のようにウエハの裏面内周部のみを研削し、外周部に環状凸部を残存させた場合には、図9に示すように、ウエハのダイシング工程において、生成したチップ12がダイシングシート20上に保持されずに、チップ12が脱落または飛散してしまうことがある。つまり、ウエハの裏面内周部16のみを研削し、外周部に環状凸部17を残存させた場合には、内周部平面と環状凸部との段差が100〜700μm程度になる。このため、環状凸部の近傍では、内周部平面にダイシングシート20が密着しないことがある。この状態でウエハのダイシングを行うと、環状凸部17の近傍で切断されたチップ12がダイシングシート20上の保持されずに、チップ12が脱落または飛散してしまう。この結果、チップの歩留まりが低下し、また飛散したチップによりダイシング装置を破損することがある。
【0010】
環状凸部を有する半導体ウエハをダイシングするために、内周部平面と環状凸部との間に段差解消を目的として、スペーサを使用することが提案されている(特許文献3,4)。しかし、適切な厚みのスペーサを準備することは煩雑であり、作業負荷の増大を招く。
【0011】
また、特許文献5には、ウエハの回路面側をダイシングシートに保持し、ダイシングストリートに沿って環状凸部に溝を削成し、その後、ダイシングストリートに沿ってウエハをダイシングする方法が提案されている。この方法によれば、ダイシングストリート上では環状凸部による段差が解消されるため、ウエハのダイシングを円滑に行うことができる。しかし、この方法では、2種のダイシングブレードを準備し、各ダイシングブレードを精度よく制御する必要があるため、やはり作業負荷は増大する。
【0012】
また、特許文献6,7には、内周部平面と環状凸部との間に段差が形成されたウエハ裏面に対して、追従性良く密着して貼付でき、ダイシング時にウエハおよびチップを確実に保持できるダイシングシートとして、基材の厚みとヤング率が特定の関係を満足するダイシングシートが提案されている。このダイシングシートによれば、内周部平面と環状凸部との段差に追従して密着するため、ダイシング時にチップの脱落、飛散を低減することができる。
【特許文献1】特開2007−059829号公報
【特許文献2】特開2007−027309号公報
【特許文献3】特開2010−140956号公報
【特許文献4】特開2010−140957号公報
【特許文献5】特開2010−135601号公報
【特許文献6】特開2010−056329号公報
【特許文献7】特開2010−056330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献6,7に提案されているダイシングシートによれば、段差に追従するため、ダイシングシートの貼付直後には、環状凸部が形成されたウエハに対して良く密着し、貼付後、時間を置かなければ、ダイシングを円滑に行うことができる。しかし、ダイシングシートの貼付後、時間が経過するにしたがい、段差の近傍においてダイシングシートが剥離することがあった。
【0014】
近年、ウエハへの回路形成、ダイシングシートの貼付、ダイシングがそれぞれ別の工場で行われることが多くなっている。したがって、ダイシングシートの貼付から、実際のダイシング工程に移行するまで、数日から2週間程度の間、ウエハはダイシングシートに貼付された状態で、搬送、保管される。この間に、段差の近傍においてダイシングシートが剥離してしまうことがあった。ダイシングシートが剥離した状態でダイシングを行うと、前述したようにチップの脱落、飛散が起こる。
【0015】
したがって、本発明は、ウエハの裏面内周部のみが研削され、外周部に環状凸部を有し、内周部平面と環状凸部との間に段差が形成されたウエハ裏面に対して、追従性良く密着して貼付でき、貼付後時間が経過しても、ダイシング時にウエハおよびチップを確実に保持できるダイシングシートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)基材とその片面に設けられた粘着剤とからなり、該基材のヤング率が80〜300MPaであり、10%延伸1分後の応力緩和率が60%以上であり、さらに厚みが50〜120μmである、ダイシングシート。
【0017】
(2)該基材がポリ塩化ビニルである(1)に記載のダイシングシート。
【0018】
(3)該基材がポリウレタンアクリレートである(1)に記載のダイシングシート。
【0019】
(4)表面に回路が形成され、裏面外周部に環状凸部を有する半導体ウエハの裏面に、(1)に記載のダイシングシートを貼付する工程、該半導体ウエハを回路ごとに個片化して半導体チップを作製する工程を含む半導体チップの製造方法。
【0020】
(5)表面に回路が形成され、裏面外周部に環状凸部を有する半導体ウエハの裏面に、(1)に記載のダイシングシートを貼付する工程、環状凸部の形成された箇所を切断、除去する工程、該半導体ウエハを回路ごとに個片化して半導体チップを作製する工程、ダイシングシートをエキスパンドしてチップ間隔を拡張する工程を含む半導体チップの製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ウエハの裏面内周部のみが研削され、外周部に環状凸部を有し、内周部平面と環状凸部との間に段差が形成されたウエハ裏面に対して、追従性良く密着して貼付でき、貼付後時間が経過しても、ダイシング時にウエハおよびチップを確実に保持できるダイシングシートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のダイシングシートの断面図を示す。
図2】ダイシングされた部分の拡大断面図を示す。
図3】半導体ウエハの回路形成面の平面図を示す。
図4】裏面外周部に環状凸部が形成された半導体ウエハの斜視図を示す。
図5図4の断面図を示す。
図6】本発明に係るチップ製造方法の一工程の概略を示す。
図7】本発明に係るチップ製造方法の一工程の概略を示す。
図8】本発明に係るチップ製造方法の一工程の概略を示す。
図9】従来のダイシングシートを用いたチップ製造方法の一工程の概略を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明の好ましい態様について、図面を参照しながら、具体的に説明する。
【0024】
図1に示すように、本発明に係るダイシングシート10は、基材1と、その片面に形成された粘着剤層2とからなる。
【0025】
基材1のヤング率は、80〜300MPa、好ましくは85〜280MPa、さらに好ましくは90〜260MPaである。基材1のヤング率が上記範囲にあると、ダイシングシートを凹凸差の大きな被着体に密着して貼り込むことができ、特に段差が形成されたウエハ裏面に対して、追従性良く貼付することができる。
【0026】
また、基材1の10%延伸1分後の応力緩和率は、60%以上であり、好ましくは65%以上、さらに好ましくは80〜100%である。応力緩和率の測定は、基材1を所定の大きさに切り出して作成した試験片を、室温(23℃)にて速度200mm/分で引っ張り、10%伸張させて停止させることで行われる。このときの応力緩和率は、10%伸張時の応力Aと、伸張停止の1分後の応力Bとから(A−B)/A×100(%)により算出する。
【0027】
応力緩和率は、ダイシングシートの貼付時などに基材1に加えられた、応力、張力の吸収性を示す指標であり、応力緩和率が小さすぎると応力の吸収性能が低く、基材1に応力が残留していることを意味している。したがって、応力緩和率が低すぎると、基材の残留応力によって、ダイシングシートの貼付後、ダイシングシートが変形するおそれが高くなる。つまり、ダイシングシートを凹凸差の大きな被着体に密着して貼り込むことができた場合であっても、時間が経過するにつれて、ダイシングシートと被着体との密着性が低下することになる。
【0028】
なお、基材のヤング率および応力緩和率は、基材作成時の製膜法によっては、長さ方向(MD)と幅方向(TD)とで異なる場合がある。本発明では、ヤング率および応力緩和率が、長さ方向、幅方向ともに上記範囲にある基材を使用する。
【0029】
さらに基材1の厚みは、50〜120μmである、好ましくは55〜110μm、さらに好ましくは55〜105μmである。基材の厚みが薄すぎる場合には、ダイシングシートの強度が低下し、ダイシング時にダイシングシートが裂けることがある。また、ウエハに対する支持性が低くなり、次工程への運搬の際に、ウエハを破損する危険性が高くなる。一方、基材1の厚みが厚すぎると、ダイシングシートの厚みも厚くなり、凹凸差の大きな被着体に密着して貼り込むことが困難になる。
【0030】
また、粘着剤層2の厚みは、好ましくは1〜300μm、さらに好ましくは3〜100μm、特に好ましくは5〜30μmの範囲にある。粘着剤層2の厚みが薄すぎる場合には、充分な粘着力が得られない場合がある。一方、粘着剤層2の厚みが厚すぎる場合には、ウエハ11のダイシング時にウエハが振動し、チッピングが発生するおそれがある。
【0031】
また本発明のダイシングシート10において、基材1の厚みと、粘着剤層2の厚みとの総和は、好ましくは51〜420μm、さらに好ましくは58〜210μm、特に好ましくは60〜135μmの範囲にある。本発明のダイシングシート10に半導体ウエハ11を貼付し、ウエハ11をダイシングする際には、図2に示すようにダイシングシート10の表層部も切り込まれることがある。ダイシングブレード(回転丸刃)3は、先端部がやや丸みを帯びている。したがって、ウエハ上面からウエハのみを切断する深さまで切り込むと、図2に示すように生成するチップ12の下端部はダイシングブレード3の先端部によってのみ切り込まれることになる。この結果、チップ12の下端部には、ダイシングブレード3の先端部の丸みに対応した裾部が残される(図2のA部分参照)。裾部の厚みは薄く、強度が低いためチッピングの原因となる。
【0032】
このため、ダイシングブレード3を用いてのダイシングにおいては、チップ12の下端部を垂直に切り落とすために、ウエハ11をフルカットした後、さらにダイシングブレード3の先端部をダイシングシート10の表層部にまで切り込む(図2のB部分参照)。この際の切り込み深さは、ダイシングブレード3の厚みの半分程度である。
【0033】
したがって、ダイシングシート10の厚みが薄すぎる場合には、ダイシングブレード3による切り込みの結果、ダイシングシート10が切断され、チップ12の保持機能が著しく損なわれる。また、ダイシングシート10が切断されない場合であっても、ダイシングシート10表面には溝が切り込まれる。溝の深さがダイシングシート10の厚みに対して深すぎると、ダイシングシート10の強度が低下し、ダイシングシート10のエキスパンド性が損なわれる。ダイシング工程終了後にチップ間隔を拡張するためにダイシングシート10のエキスパンドを行うことがある。しかし、ダイシングシートへの切り込みによりシート10表面に深い溝が形成された場合には、溝を起点としてダイシングシート10が破断し、エキスパンド不能になる。
【0034】
このため、エキスパンド工程を含むチップの製造方法に本発明のダイシングシート10を適用する場合には、基材1の厚みと、粘着剤層2の厚みとの総和は、上記範囲にあることが望ましい。
【0035】
本発明のダイシングシート10における基材1は、その厚み、ヤング率、応力緩和率を考慮し、上記範囲となるように適宜に選択される。たとえば、用いる樹脂の重合度や架橋密度を調整したり、柔軟化成分の割合を調整したり、あるいは樹脂中における剛直構造(芳香環等)の割合を調整することによりヤング率を制御することができる。
【0036】
本発明のダイシングシート10に用いられる基材1は、上記物性を満足する限り特に限定はされないが例えばポリ塩化ビニルフィルム、ポリウレタンアクリレートフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム等が用いられる。上記の基材は1種単独でもよいし、さらにこれらを2種類以上組み合わせた積層フィルムであってもよい。
【0037】
これらの中でも、特にヤング率、応力緩和率を所定範囲に調整することが容易な、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリウレタンアクリレートフィルムが好ましく用いられる。
【0038】
ポリ塩化ビニルフィルムは、ポリ塩化ビニル樹脂をベースとして、柔軟化成分として可塑剤を配合して形成される。可塑剤以外には、着色剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤などや、焼却時の発生熱量を抑える目的で炭酸カルシウムを添加しても良い。フィルムの成型方法としては、カレンダー法、キャスティング法、T−ダイ法、インフレーション法などが挙げられる。特に、基材のMDとTDの物性の差が小さくなるキャスティング法により成型することが好ましい。
【0039】
ポリウレタンアクリレートフィルムは、たとえば、エネルギー線硬化性のウレタンアクリレート系オリゴマーを主剤とし、エネルギー線硬化性モノマーを反応性希釈剤とし、必要に応じて光重合開始剤を配合した樹脂組成物を、製膜、硬化して得られる。
【0040】
ここで、エネルギー線硬化性とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線などを照射することによって、架橋、硬化することを指す。
【0041】
エネルギー線硬化性のウレタンアクリレート系オリゴマーとしては、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール等のポリオールとポリイソシアネートの反応により得られるポリウレタンオリゴマーに、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを付加させることにより、得ることができる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましく、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものがより好ましい。
【0042】
上記ポリオールは、重量平均分子量が300〜3000であることが好ましく、800〜2000であることがより好ましい。また、ポリエーテルポリオールを用いることが特に好ましい。
【0043】
ウレタンアクリレート系オリゴマーは、重量平均分子量が300〜50000であることが好ましく、1000〜30000であることがより好ましい。
【0044】
エネルギー線硬化性モノマーとしては、たとえばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シフロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。特に、比較的嵩高い基を有するイソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等を用いることが好ましい。
【0045】
ウレタンアクリレート系オリゴマーとエネルギー線硬化性モノマーとの配合比は、ウレタンアクリレート系オリゴマー100重量部に対して、エネルギー線硬化性モノマーの配合量が、30〜300重量部であることが好ましく、50〜150重量部であることがより好ましい。
【0046】
光重合開始剤としては、従来用いられている公知のもの、例えばアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルアセタール類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシロキシムエステル類などのアリールケトン系光重合開始剤、スルフィド類、チオキサントン類などの含硫黄系光重合開始剤、アシルジアリールホスフィンオキシドなどのアシルホスフィンオキシド類、アントラキノン類、その他光重合開始剤の中から、任意のものを、1種又は2種以上適宜選択して使用することができる。なお、電子線を用いて硬化させる場合には、この光重合開始剤は用いなくてもよい。
【0047】
光重合開始剤の配合量は、全光硬化成分100重量部に対して、通常0.2〜10重量部、好ましくは0.5〜7重量部の範囲で選ばれる。
【0048】
また、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを含有させることができる。特に分子内に(メタ)アクリロイル基などを有する反応型の酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤を用いるのが有利である。この場合、エネルギー線の照射により形成されたポリマー鎖に、それぞれ酸化防止剤成分、紫外線吸収剤成分、光安定剤成分が結合する。したがって、経時による硬化層からの各成分の逸散が抑制されるので、長期間にわたって、それぞれの機能が発揮される。
【0049】
また、粘着剤層2を紫外線硬化型粘着剤で形成し、粘着剤を硬化するために照射するエネルギー線として紫外線を用いる場合には、紫外線に対して透明である基材が好ましい。なお、エネルギー線として電子線を用いる場合には透明である必要はないので、上記のフィルムの他、これらを着色した透明フィルム、不透明フィルム等を用いることができる。
【0050】
また、基材1の上面、すなわち粘着剤層2が設けられる側の基材表面には粘着剤との密着性を向上するために、コロナ処理を施したり、プライマー層を設けてもよい。また粘着剤層2とは反対面に各種の塗膜を塗工してもよい。本発明に係るダイシングシート10は、上記のような基材上に粘着剤層を設けることで製造される。
【0051】
粘着剤層2は、従来より公知の種々の粘着剤により形成され得る。このような粘着剤としては、何ら限定されるものではないが、たとえばゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル等の再剥離可能な粘着剤が用いられる。また、粘着力を所定の操作で制御可能な、エネルギー線硬化型や加熱発泡型、水膨潤型の粘着剤も用いることができる。エネルギー線硬化型粘着剤は、エネルギー線の照射により重合、硬化し、硬化前に比べて接着力が大幅に低下する性質を有する。エネルギー線硬化(紫外線硬化、電子線硬化)型粘着剤としては、特に紫外線硬化型粘着剤を用いることが好ましい。
【0052】
紫外線硬化型粘着剤は、特に限定はされないが、一般に、アクリル系の粘着剤と、紫外線重合性化合物と、光重合開始剤とからなる。また、紫外線硬化型粘着剤として、アクリル系ポリマーの主鎖または側鎖に、紫外線重合性基が結合されてなる紫外線硬化型重合体を用いてもよい。このようなエネルギー線硬化型重合体は、粘着剤としての機能と、紫外線重合性化合物としての機能を兼ね備える。
【0053】
粘着剤層2には、その使用前に粘着剤層を保護するために剥離シートが積層されていてもよい。剥離シートは、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなるフィルムまたはそれらの発泡フィルムや、グラシン紙、コート紙、ラミネート紙等の紙に、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤で剥離処理したものを使用することができる。
【0054】
基材表面に粘着剤層2を設ける方法は、剥離シート上に所定の膜厚になるように塗布し形成した粘着剤層を基材表面に転写しても構わないし、基材表面に直接塗布して粘着剤層を形成しても構わない。
【0055】
次に、本発明のダイシングシート10を使用した半導体チップの製造方法について説明する。
【0056】
本発明においては、まず、表面に回路13が形成され、裏面外周部に環状凸部17を有する半導体ウエハ11を準備する。図3に半導体ウエハの回路面側の平面図を示し、図4に裏面側からの斜視図、図5図4の断面図を示す。
【0057】
半導体ウエハ11はシリコンウエハであってもよく、またガリウム・砒素などの化合物半導体ウエハであってもよい。ウエハ表面への回路13の形成はエッチング法、リフトオフ法などの従来より汎用されている方法を含む様々な方法により行うことができる。半導体ウエハの回路形成工程において、所定の回路13が形成される。回路13は、ウエハ11の内周部14表面に格子状に形成され、外周端から数mmの範囲には回路が存在しない余剰部分15が残存する。ウエハ11の研削前の厚みは特に限定はされないが、通常は500〜1000μm程度である。
【0058】
裏面研削時には、表面の回路13を保護するために回路面に、表面保護シートと呼ばれる粘着シートを貼付する。裏面研削は、ウエハ11の回路面側(すなわち表面保護シート側)をチャックテーブル等により固定し、回路13が形成されていない裏面側をグラインダーにより研削する。裏面研削時には、まず裏面全面を所定の厚みまで研削した後に、表面の回路形成部分(内周部14)に対応する裏面内周部16のみを研削し、回路13が形成されていない余剰部分15に対応する裏面領域は研削せずに残存させる。この結果、研削後の半導体ウエハ11は、裏面内周部16のみがさらに薄く研削され、外周部分には環状の凸部17が残存する。このような裏面研削方法は、たとえば前記した特許文献1および2に記載された公知の手法により行うことができる。裏面研削工程の後、研削によって研削面に生成した破砕層を除去する処理が行われてもよい。研削後のウエハ11の厚みは特に限定されないが、通常、環状の凸部17が300〜725μm程度、内周部16が25〜200μm程度である。
【0059】
裏面研削工程に続いて、必要に応じ裏面にエッチング処理などの発熱を伴う加工処理や、裏面への金属膜の蒸着のように高温で行われる処理を施してもよい。なお、高温での処理を行う場合には、表面保護シートを剥離した後に、裏面への処理を行う。
【0060】
裏面内周部16のみが所定の厚みにまで研削され、外周部分には環状凸部17を有するウエハ11によれば、環状凸部17の剛性が高いため、硬質板を使用せずとも安定して搬送、保管できる。したがって、上記の形態に研削されたウエハ11によれば、硬質板に固定するための両面粘着シート等を使用する必要が無いため、高温に曝して裏面加工を施す際にも、ウエハ11を安定して保持でき、かつウエハ11が有機物の分解物により汚染されることもない。
【0061】
裏面研削工程後、図6に示すように、ウエハ11の研削面側に本発明のダイシングシート10を貼付し、ウエハ11のダイシングを行う。なお、表面に貼付されている表面保護シートは、ダイシングシート10の貼付前に剥離してもよく、ダイシングシート10の貼付後に剥離してもよい。また、ダイシング工程の終了後に個片化されたチップ表面から表面保護シートを剥離してもよい。
【0062】
ダイシングシート10のウエハ裏面への貼付は、マウンターと呼ばれる装置により行われるのが一般的だが特に限定はされない。本発明のダイシングシート10の基材1は、上記したように特定の物性を満たすため、被着体表面への形状追従性に優れる。したがって、ウエハの裏面内周部16のみが研削され、外周部に環状凸部17を有し、内周部平面と環状凸部との間に段差が形成されたウエハ裏面に対して、追従性良く密着して貼付でき、貼付後時間が経過しても、ダイシング時にウエハおよびチップ12を確実に保持できる。また、ダイシング時にはウエハ内周部の垂れ下がりを防止し、ウエハ表面を平坦に保持するために、ダイシングシート10の貼付後に、環状凸部17の内径よりもやや小さな外径の凸部を有するプレート4を、環状凸部17により囲繞された領域に嵌合してもよい。
【0063】
半導体ウエハ11のダイシング方法は特に限定はされない。一例としてウエハ11のダイシング時にはダイシングテープ10の周辺部をリングフレーム5により固定した後、ダイシングブレード3などの回転丸刃やレーザー光を用いるなどの公知の手法によりウエハ11のチップ化を行う方法などが挙げられる。また、回路が形成された内周部のダイシングに先立ち、環状凸部の形成された箇所を切断、除去することが好ましい(図7,8)。環状凸部の除去は、たとえば、ダイシングブレード3により環状凸部の内側壁に沿って切断してもよく、また十分な強度のレーザー光を環状凸部の内側壁に沿って照射して、環状凸部と内周部とを切り離してもよい。環状凸部を除去することで、回路が形成されている内周部のダイシングを円滑に行うことできる。
【0064】
なお、レーザー光を用いる場合には、基材としてポリ塩化ビニルフィルムを用いるとレーザー光により破断するおそれがあるため、ポリウレタンアクリレートフィルムを用いることが好ましい。
【0065】
本発明のダイシングシート10によれば、ダイシング時にウエハおよびチップを確実に保持できるため、チップの歩留まりが向上し、またチップの飛散によるダイシング装置の破損を防止できる。
【0066】
次いでダイシングシート10からチップ12をピックアップする。なお、ダイシングシート10の粘着剤層2を紫外線硬化型粘着剤で形成した場合には、ピックアップに先立ち、粘着剤層2に紫外線を照射して粘着力を低下した後にチップ12のピックアップを行う。
【0067】
ピックアップに先立ち、ダイシングシート10のエキスパンドを行うと、チップ間隔が拡張し、チップのピックアップをさらに容易に行えるようになる。しかしながら、ダイシングブレード3によりダイシングシート10表面に深い溝が切り込まれると、ダイシングシート10の強度が低下し、ダイシングシート10のエキスパンド性が損なわれる。このため、ダイシングシート10をエキスパンドする工程を含むチップの製造方法に本発明のダイシングシート10を適用する場合には、基材1には十分な厚みがあることが望ましい。なお、エキスパンドを行わずにチップのピックアップを行ってもよい。
【0068】
また、ダイシング終了後に、ダイシングシート10上に整列しているチップ群を、ピックアップ用の他の粘着シートに転写した後に、エキスパンドおよびチップのピックアップを行ってもよい。
【0069】
ピックアップされたチップ12はその後、常法によりダイボンド、樹脂封止がされ半導体装置が製造される。
【0070】
以上、本発明のダイシングシート10の使用例について、半導体ウエハのダイシングを例にとり説明したが、本発明のダイシングシート10は、ガラス基板、セラミック基板、FPC等の有機材料基板、又は精密部品等の金属材料など種々の物品のダイシング(個片化)に使用することができる。
【実施例】
【0071】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、基材のヤング率および応力緩和率は、以下のように測定した。
【0072】
(ヤング率)
基材のヤング率は、JIS K7161:1994に準拠し、万能引張試験機(オリエンテック社製、装置名「テンシロンRTA−T−2M」)を用いて、温度23℃、湿度50%の環境下において、引張速度200mm/分で測定した(サンプルサイズ:長さ100mm×幅15mm)。なお、基材のヤング率は、MD、TDの各方向に対して測定した。また基材の厚みは、定圧厚さ計(TECLOCK社製、装置名「PG−02」)を用いて測定した。
【0073】
(応力緩和率)
基材をMD、TDの各方向に対して長さ100mm×幅15mmに切り出した試験片を得る。この試験片を、引張試験機(オリエンテック社製、装置名「TENSILON RTA−100」)を用いて、温度23℃、湿度50%の環境下において、速度200mm/分で引っ張り、10%伸張させて停止させ、10%伸張時の応力Aと、伸張停止の1分後の応力Bとから(A−B)/A×100(%)により算出する。
【0074】
(実施例1)
(基材)
ダイシングシートの基材として、キャスト製膜した厚さ80μmのポリ塩化ビニルフィルム(ヤング率:(MD)120MPa(TD)120MPa、応力緩和率:(MD)65%(TD)65%)を準備した。
【0075】
(粘着剤)
2−エチルヘキシルアクリレート23.5重量部、酢酸ビニル70重量部、アクリル酸1重量部、メチルメタクリレート5重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.5重量部を用いて酢酸エチル溶媒中で溶液重合し、重量平均分子量約600,000のアクリル系共重合体を生成した。
【0076】
重量平均分子量約700のポリプロピレングリコールと、イソホロンジイソシアネートと、2−ヒドロキシプロピルアクリレートとからなる重量平均分子量約4000の2官能ウレタンアクリレートを準備した。
【0077】
上記アクリル系重合体100重量部(固形分)と、2官能ウレタンアクリレートウレタンアクリレート80重量部と、光重合開始剤(イルガキュア184、BASF社製)3重量部と、多価イソシアナート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL」)2重量部とを混合して、紫外線硬化型粘着剤を得た。
【0078】
(ダイシングシートの作成)
この紫外線硬化型粘着剤を、ロールナイフコーターを用いて、乾燥後の厚みが10μmとなるように、シリコーン剥離処理を行ったポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック社製、商品名「SP−PET3811(S)」)の剥離処理面に塗布し、100℃で1分間乾燥した後、上記の基材と積層し、PETフィルムを除去して、ダイシングシートを得た。
【0079】
得られたダイシングシートに下記の形状を有するシリコンウエハを、環状凸部側が粘着剤層面に対向するように、真空マウンター装置(リンテック社製、装置名「Adwill RAD−2512F/12」)を用いて、上側チャンバー内圧:1300Pa、下側チャンバー内圧:1000Paの条件で貼付し、シートの外周部をリングフレームで固定した。
(ウエハ形状)
外径:200mm
環状凸部の内径:198mm
内周部厚み:50μm
環状凸部厚み:400μm
【0080】
ウエハを貼付後、ダイシングシートの追従性およびダイシング適性を下記の方法で評価した。
(ダイシングシート追従性)
貼付24時間後の段差追従性を、デジタル顕微鏡で確認し、段差に追従できてれば「良好」、追従できていなければ「不良」とした。なお、段差に追従できない場合には、ウエハの段差部近傍において、ダイシングシートが密着せず、気泡が観察される。
【0081】
(ダイシング適性)
次いで、ダイヤモンドブレード(ディスコ社製、商品名「27HECC」)を用い、ブレード回転数30000rpm、切断速度20mm/分でシリコンウエハを、5mm×5mmのチップにダイシングした。ダイシングは、基材に対して20μm切り込むフルカットダイシングとした。ハンドリング中およびダイシング中のチップの飛散やウエハの割れの有無を検査し、チップが飛散した場合やウエハが割れた場合を「不良」とした。
【0082】
(実施例2)
ダイシング時に、シリコンウエハ外周部の環状凸部を切断除去した後、内周部をダイシングした以外は実施例1と同様にした。
【0083】
(実施例3)
ダイシングシートの基材として、カレンダー製膜した厚さ70μmのポリ塩化ビニルフィルム(ヤング率:(MD)250MPa(TD)200MPa、応力緩和率:(MD)70%(TD)75%)を使用した以外は実施例1と同様にした。
【0084】
(実施例4)
(基材)
ダイシングシートの基材として、厚さ100μmのポリウレタンアクリレートフィルム(ヤング率:(MD)210MPa(TD)210MPa、応力緩和率:(MD)85%(TD)85%)を準備した。ポリウレタンアクリレートフィルムは以下のように作成した。
【0085】
ポリテトラメチレングリコール(PTMG:重量平均分子量1000)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)および2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)を、PTMG:IPDI:2HEA=6:7:2のモル比で用意した。始めにIPDIとPTMGとを反応させ、得られた反応生成物に、2HEAを付加させることでウレタンアクリレート系オリゴマーを得た。
【0086】
次いで、ウレタンアクリレート系オリゴマー100重量部と、エネルギー線硬化性モノマー(イソボルニルアクリレート)60重量部と、エネルギー線硬化性モノマー(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート)60重量部と、光重合開始剤(BASF社製、商品名「ダロキュア1173」)1重量部とを混合し、フィルム形成用のコーティング液を得た。
【0087】
上記コーティング液をファウンテンダイ方式により、シリコーン剥離処理を行ったポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック社製、商品名「SP−PET3811(S)」)上に厚みが100μmとなるように塗工して樹脂組成物層を形成した。塗工直後に、樹脂組成物層の上に、同じシリコーン剥離処理を行ったPETフィルムをラミネートし、その後、高圧水銀ランプを用いて、照度220mW/cm、光量1500mJ/cmの条件でエネルギー線(紫外線)照射を行うことにより樹脂組成物層を架橋・硬化させて、厚さ100μmのポリウレタンアクリレートフィルムを得た。
両面に積層された剥離フィルムは、後述する粘着剤層を転写する前に剥離した。
【0088】
(粘着剤)
2−エチルヘキシルアクリレート80重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート20重量部を用いて酢酸エチル溶媒中で溶液重合し、アクリル系共重合体を生成した。このアクリル系共重合体の100重量部に対し、重合性基含有ポリアルキレンオキシ化合物(2−(2−メタクリロイルオキシエチロキシ)エチルイソシアネート)21.6重量部(アクリル系共重合体の官能基であるヒドロキシル基100当量に対して80当量)とを反応させ、ポリアルキレンオキシ基を介して重合性基が結合してなるアクリル系粘着性重合体を得た。
【0089】
アクリル系粘着性重合体100重量部に対し、架橋剤として多価イソシアナート化合物(、日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL」)0.5重量部と、光重合開始剤としてイルガキュア184(BASF社製)3重量部を混合し、紫外線硬化型粘着剤組成物を得た。
【0090】
(ダイシングシートの作成)
上記の基材および粘着剤を使用した以外は、実施例1と同様にしてダイシングシートを得て、同様の評価試験を行った。
【0091】
(実施例5)
基材であるポリウレタンアクリレートフィルムの厚さを60μmとした以外は実施例4と同様にした。
【0092】
(比較例1)
ダイシングシートの基材として、カレンダー製膜した厚さ150μmのポリ塩化ビニルフィルム(ヤング率:(MD)120MPa(TD)100MPa、応力緩和率:(MD)65%(TD)75%)を使用した以外は実施例1と同様にした。
【0093】
(比較例2)
ダイシングシートの基材として、カレンダー製膜した厚さ80μmのポリ塩化ビニルフィルム(ヤング率:(MD)600MPa(TD)540MPa、応力緩和率:(MD)52%(TD)57%)を使用した以外は実施例1と同様にした。
【0094】
(比較例3)
ダイシングシートの基材として、カレンダー製膜した厚さ80μmのポリ塩化ビニルフィルム(ヤング率:(MD)340MPa(TD)280MPa、応力緩和率:(MD)62%(TD)67%)を使用した以外は実施例1と同様にした。
【0095】
(比較例4)
ダイシングシートの基材として、厚さ110μmの低密度ポリエチレンフィルム(ヤング率:(MD)100MPa(TD)90MPa、応力緩和率:(MD)27%(TD)32%)を使用した以外は実施例4と同様にした。
【0096】
(比較例5)
ダイシングシートの基材として、厚さ60μmのエチレン・メタクリル酸共重合体フィルム(ヤング率:(MD)120MPa(TD)110MPa、応力緩和率:(MD)23%(TD)28%)を使用した以外は実施例4と同様にした。
【0097】
(比較例6)
ダイシングシートの基材として、厚さ100μmのエチレン・メタクリル酸共重合体フィルム(ヤング率:(MD)120MPa(TD)110MPa、応力緩和率:(MD)23%(TD)28%)を使用した以外は実施例4と同様にした。
【0098】
(比較例7)
ダイシングシートの基材として、厚さ120μmのポリウレタンアクリレートフィルム(ヤング率:(MD)450MPa(TD)450MPa、応力緩和率:(MD)72%(TD)72%)を使用した以外は実施例4と同様にした。ポリウレタンアクリレートフィルムは以下のように作成した。
【0099】
ポリプロピレングリコール(PPG:分子量400)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)および2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)を、PPG:IPDI:2HEA=3:4:2のモル比で用意した。始めにIPDIとPPGとを反応させ、得られた反応生成物に、2HEAを付加させることでウレタンアクリレート系オリゴマーを得た。
【0100】
次いで、ウレタンアクリレート系オリゴマー100重量部と、エネルギー線硬化性モノマー(イソボルニルアクリレート)100重量部と、光重合開始剤(BASF社製、商品名「ダロキュア1173」)1重量部とを混合し、フィルム形成用のコーティング液を得た。
【0101】
上記コーティング液をファウンテンダイ方式により、シリコーン剥離処理を行ったポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック社製、商品名「SP−PET3811(S)」)上に厚みが120μmとなるように塗工して樹脂組成物層を形成した。塗工直後に、樹脂組成物層の上に、同じシリコーン剥離処理を行ったPETフィルムをラミネートし、その後、高圧水銀ランプを用いて、照度220mW/cm、光量1500mJ/cmの条件でエネルギー線(紫外線)照射を行うことにより樹脂組成物層を架橋・硬化させて、厚さ100μmのポリウレタンアクリレートフィルムを得た。
両面に積層された剥離フィルムは、粘着剤層を転写する前に剥離した。
【0102】
(比較例8)
ダイシングシートの基材として、厚さ160μmのポリウレタンアクリレートフィルム(ヤング率:(MD)230MPa(TD)230MPa、応力緩和率:(MD)78%(TD)78%)を使用した以外は実施例4と同様にした。ポリウレタンアクリレートフィルムは以下のように作成した。
【0103】
アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールとを反応させ、重量平均分子量532のポリエステル系ジオールを得た。ポリエステル系ジオール、イソホロンジイソシアナート(IPDI)および2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)を、ポリエステル系ジオール:IPDI:2HEA=3:4:2のモル比で用意した。始めにIPDIとポリエステル系ジオールとを反応させ、得られた反応生成物に、2HEAを付加させることでウレタンアクリレート系オリゴマーを得た。
【0104】
次いで、ウレタンアクリレート系オリゴマー100重量部と、エネルギー線硬化性モノマー(イソボルニルアクリレート)100重量部と、光重合開始剤(BASF社製ダロキュア1173)1重量部とを混合し、フィルム形成用のコーティング液を得た。
【0105】
上記コーティング液をファウンテンダイ方式により、シリコーン剥離処理を行ったポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック社製、商品名「SP−PET3811(S)」)上に厚みが160μmとなるように塗工して樹脂組成物層を形成した。塗工直後に、樹脂組成物層の上に、同じシリコーン剥離処理を行ったPETフィルムをラミネートし、その後、高圧水銀ランプを用いて、照度220mW/cm、光量1500mJ/cmの条件でエネルギー線(紫外線)照射を行うことにより樹脂組成物層を架橋・硬化させて、厚さ100μmのポリウレタンアクリレートフィルムを得た。
両面に積層された剥離フィルムは、粘着剤層を転写する前に剥離した。
【0106】
実施例、比較例の評価結果を下表にまとめる。なお、表中、PVCはポリ塩化ビニル、PUAはポリウレタンアクリレート、LDPEは低密度ポリエチレン、EMAAはエチレン・メタクリル酸共重合体を示す。
【0107】
【表1】
【0108】
実施例1〜5のダイシングシートは良好な追従性を示し、ダイシング工程でも問題なく使用可能であった。比較例1〜3では、追従性が十分ではなく、チップ保持性が低くダイシング適性が不良であった。また、比較例4〜8は追従性が不十分であることで環状凸部を切断する際、ウエハが破損してしまった。
【符号の説明】
【0109】
1…基材
2…粘着剤層
3…ダイシングブレード
4…凸部を有するプレート
5…リングフレーム
10…ダイシングシート
11…半導体ウエハ
12…半導体チップ
13…回路
14…回路表面内周部
15…余剰部分
16…裏面内周部
17…環状凸部
20…従来のダイシングシート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9