【実施例】
【0009】
<1>使用する部品、機器
本発明の方法で使用する部品は、固定盤1と固定用アンカー2と仮止めボルト3と電磁誘導装置4である。
【0010】
<2>固定盤
固定盤1は、遮水シートAを溶着する溶着面11を備えた板体である。
固定盤1は、少なくともその表面はポリエチレンで構成し、これが溶着面11となる。
固定盤1の中央にはボルト穴12を開口してある。
この固定盤1の溶着面11がコンクリート構造物Bの表面と同一面で露出するように設置する。
固定盤1の中央部は溶着面11とは反対側へ茶碗状に突出させ、その底面にボルト穴12を開口する。
ボルト穴12の周囲には、後述する本設ボルト6の頭部が位置できるだけの平面部を形成しておく。
【0011】
<3>固定用アンカー
固定用アンカー2はコンクリート構造物B内に埋設する抵抗体であり、ナット筒21と、それと直交方向に一体化した抵抗板22とで構成する。
ナット筒21は内部にネジ穴を設置した筒体である。
抵抗板22はナット筒21よりも広い面積を備えた板体であり、ナット筒21の底面にこの抵抗板22を一体で形成する。
固定盤1と固定用アンカー2は、固定盤1のボルト穴12を貫通させた仮止めボルト3、あるいは本設ボルト6を、固定用アンカー2のナット筒21のナットにねじ込むことで、両者を一体化することができる。
【0012】
<4>構築方法
次に遮水シートAの固定方法について説明する。
【0013】
<5>型枠への取り付け(
図2)
コンクリート構造物Bを構築するために、コンクリートの形状を維持する型枠5を設置する。
この型枠5のコンクリート打設側の面に固定盤1と固定用アンカー2を取り付ける。
そのために型枠5に仮止めボルト3が貫通できる穴51を開口し、この貫通穴51に仮止めボルト3を貫通させる。
この仮止めボルト3の頭部の外径を、貫通穴51の内径よりも十分に大きくしておき、このボルト3によって型枠5の裏面に配置した固定盤1と固定用アンカー2を一体化して型枠5に取り付ける。
その際に、固定盤1の溶着面11を型枠5の裏面に一致させて固定する。
この固定盤1の上下左右の配置間隔を調整することによって、後述するように遮水シートAを固定した場合に、その剥離に対する抵抗を自由に設定することができ、高い信頼性のもとに遮水シートAを固定することができる。
【0014】
<6>コンクリートの打設(
図3)
型枠5の裏面にコンクリートを打設する。
その結果、固定用アンカー2はコンクリート内に埋設し、固定盤1の溶着面11が型枠5の裏面に密着した状態でコンクリートが固化する。
【0015】
<7>型枠の解体(
図4)
仮止めボルト3を外側に抜き出し、型枠5を解体する。
するとコンクリート構造物Bの表面と同一面に、固定盤1の溶着面11が露出した状態となる。
【0016】
<8>本設ボルトでの一体化(
図5)
仮止めボルト3を抜き出すと、コンクリート構造物B内で、固定盤1と固定用アンカー2の一体化が失われる。
そのために本設ボルト6を固定用アンカー2のナット筒21に改めてネジ込んで、両者を強固に一体化する。
本設ボルト6はステンレスで製造し、そのボルト6頭が、茶碗状に形成した突出部の底部に位置するまで固定用アンカー2のナット筒21にねじ込む。
その後、茶碗状の突出部の中には石膏などの充填剤13を充填して、凹凸のない平面を形成する。
【0017】
<9>被加熱金属の取り付け(
図6)
コンクリートの打設によって固定盤1の溶着面11にセメントミルクなどが回っていたらそれを除去して異物がないように処理をする。
その後、被加熱金属7として例えばアルミ製網などを、固定盤1の溶着面11に取り付ける。
アルミ製網として、例えば直径0.1mmの線材を1mm間隔で配置したような網を採用する。
このように、固定盤1の表面と遮水シートAの間にはアルミ製網などの被加熱金属7が介在することになる。
しかしこれは発熱のためのものであり、溶着自体は後述するように固定盤1と遮水シートAとが直接に溶解して一体となって行われるものであるから高い信頼性を期待できる。
【0018】
<10>遮水シートの敷設(
図6)
コンクリート構造物Bの表面に遮水シートAを敷設する。
この遮水シートAとしては、例えばポリエチレン系樹脂製の遮水シートAを採用することができる。
さらに長繊維不織布を遮水シートAに接着して使用することができる。
なお
図6では遮水シートAを鉛直に取り付けた例を示しているが、遮水シートAを水平面に、あるいは傾斜面に取り付ける場合も同様である。
【0019】
<11>加熱(
図6)
コンクリート構造物Bの表面は遮水シートAによって被覆されるので、外部からは固定盤1の位置は見えない状態であるが、その配置位置は事前に間隔を測定しておくことで知ることができる。
あるいは金属探知機で、アルミ製網や固定盤1をコンクリート構造物Bに固定するためのボルトを検知する方法で、後から位置を特定することもできる。
そこで、遮水シートAの裏側に位置する固定盤1の被加熱金属7を遮水シートAの外側から電磁誘導装置4によって誘電して発熱させる。
この電磁誘導装置4は市販のものを使用することができる。
すると被加熱金属7の熱によって、ポリエチレン製の板である固定盤1の溶着面11と、遮水シートAの固定盤1側の表面が溶け出し、遮水シートAを熱溶着することができる。
この作業は、通常は3秒程度で熱融着が完了する。
しかしその条件は遮水シートAの材質や厚さと外気温で微妙に変わるので、事前に遮水シートAごとの検量線、すなわち外気温対最適時間の関係を求めておいて融着作業を行う。
この管理は毎日、作業前に作業とまったく同じ条件で、別に用意した固定盤1に熱融着を行い、所定の強度で融着していることを試験、確認してから作業を開始すれば確実である。
【0020】
<12>遮水シートの固定の完了
こうして複数の固定盤1において、遮水シートAをコンクリート構造物B表面に固定する作業が完了する。
上記のように、本発明の方法では熱溶着固定方法を採用した。
そのために、接着材のような遮水シートAと異なる材質の材料が介在することがなく、長期にわたり信頼性を確保することができる。
さらに広い面体である遮水シートAを、多数の固定盤1の点で支持する方法であるが、固定盤1の上下左右方向の配置間隔を適宜設定することにより全体的には面で支持するように機能させることができる。