(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高周波電力が供給される下部電極と、該下部電極と対向して配置される上部電極との間の処理空間において電界を生じさせ、該電界に起因して生じるプラズマを用いて前記下部電極に載置された基板にプラズマ処理を施す基板処理装置において、
前記上部電極において前記処理空間とは反対側の上面に配置される複数の電磁石を備え、
各前記電磁石は前記基板の中心に対向する前記上部電極の中心に関して放射状に配置され、
各前記電磁石は棒状のヨークを有し、各前記ヨークは端部が前記上部電極と当接して前記上部電極の前記上面から林立するように配置され、
前記複数の電磁石は複数の電磁石群に分けられ、前記電磁石群毎に、各前記電磁石が発生する磁界の強度及び/又は前記電磁石の磁極が制御され、
一の前記電磁石群の各前記電磁石の前記のヨークの直径は、他の前記電磁石群の各前記電磁石の前記のヨークの直径と異なることを特徴とする基板処理装置。
前記複数の電磁石は第1の電磁石群、第2の電磁石群及び第3の電磁石群に分けられ、前記第1の電磁石群は前記基板の中央部に対向する前記電磁石からなり、前記第2の電磁石群は前記基板の周縁部に対向する前記電磁石からなり、前記第3の電磁石群は前記基板と対向せず、前記上部電極の中心に関して前記第2の電磁石群よりも外側に配置される前記電磁石からなり、
前記第1の電磁石群の各前記電磁石における前記処理空間側の磁極は同じであり、前記第2の電磁石群の各前記電磁石における前記処理空間側の磁極は同じであり、前記第3の電磁石群の各前記電磁石における前記処理空間側の磁極は同じであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
前記第1の電磁石群及び前記第2の電磁石群では各前記電磁石が互いに等間隔で配置され、前記第3の電磁石群では各前記電磁石が前記上部電極の中心を中心とする円環状に配置されることを特徴とする請求項4又は5記載の基板処理装置。
前記第3の電磁石群における前記電磁石の各々が発生する全磁束は、前記第1の電磁石群及び前記第2の電磁石群における前記電磁石の各々が発生する全磁束の8〜12倍であることを特徴とする請求項6記載の基板処理装置。
前記基板に施される前記プラズマ処理の内容に応じて各前記電磁石が発生させる磁界の磁場強度及び/又は前記電磁石の磁極を変更することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【背景技術】
【0002】
従来、電界が存在する処理空間において磁界を発生させてプラズマ密度の分布を制御する基板処理装置が知られている。この基板処理装置では、処理ガスが導入された処理空間において、電界及び磁界に起因して生じるローレンツ力によって電子がドリフト運動を行って処理ガスの分子や原子と衝突し、結果としてプラズマが発生する。
【0003】
例えば、従来のマグネトロンプラズマ処理装置は、チャンバーの外側においてリング状に配置される複数の異方性セグメント柱状磁石からなるダイポールリング磁石を備え、これら複数の異方性セグメント柱状磁石による磁化の方向を少しずつずらして全体として
図11に示すような一様な水平磁界Bを形成する(例えば、特許文献1参照。)。なお、
図11は、従来のマグネトロンプラズマ処理装置を上から見た図(平面図)であり、磁場方向の基端側をN、先端側をS、これらから90°の位置をEおよびWで示している。
【0004】
しかしながら、このようなダイポールリング磁石によって形成される水平磁界Bは、図においてNからSの一方向のみを向いている水平磁場であり、また、このマグネトロンプラズマ処理装置では電界が上から下に向かって形成されているため、電子はローレンツ力によってEからWに向かってドリフト運動を行って進み、その結果、E側ではプラズマ密度が低く、W側でプラズマ密度が高いという不均一なプラズマ密度の分布が生じる。
【0005】
これに対応して、ダイポールリング磁石を周方向に沿って回転させて電子のドリフト運動の向きを変化させるが、実際にはダイポール磁石の回転だけでは広範囲にプラズマ密度の分布を均一にすることはできない。
【0006】
また、
図12に示すような回転磁石を備えた従来のマグネトロンエッチング装置も知られている。
【0007】
このマグネトロンエッチング装置120は、処理室121と、該処理室121内において上下方向に対向配置される上部電極122及び下部電極123と、上部電極122の上方且つ外に回転可能に配設された略円板状の磁石124と、上部電極122及び下部電極123の間の空間に高周波電力を供給する高周波電源125とを備え、処理室121内にはウエハWが配置される(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
上部電極122の上方且つ外に設けられる磁石124は、処理室121内においてウエハWの表面に沿う磁界Bを形成する。磁石124はモータ等の駆動機構(図示しない)によってウエハWの表面と平行な水平面内において所望の回転速度で回転され、これによって処理室121内の空間に印加される電界Eと交叉する磁界Bが発生する。
【0009】
このマグネトロンエッチング装置120では、時間平均をとるとウエハWの上方においてプラズマ密度が均一化されるが、瞬間毎ではプラズマ密度が依然として偏る。また、ローレンツ力に起因する荷電粒子、例えば、電子のドリフト運動により、ウエハWの表面上のプラズマ密度及びエッチング速度(エッチングレート)は一方向に沿って減少し、電位(V
DC)は逆に増大する。つまり、プラズマ密度が不均一になると共に電位が不均一となって、ウエハWの両端に各々正・負に分極した帯電領域が発生する(チャージアップ現象)。
【0010】
そこで、特許文献1や特許文献2におけるプラズマ密度の不均一を解消するために、処理空間においてウエハWの中心に関して対称な磁界を発生させるプラズマ処理装置が本出願人によって提案されている。具体的には、
図13に示すように、プラズマ処理装置130では、ウエハWに対向する処理室131の上面においてウエハWの中心に関して多数の永久磁石132を複数の環状に配置し、各永久磁石132においてウエハWに向かう磁極を調整して処理空間においてウエハWの中心から放射状に分布する磁界Bを発生させる(例えば、特許文献3参照。)。これにより、電子はローレンツ力によってウエハWの上方において該ウエハWの中心に関して旋回するようにドリフト運動を行うため、一方向に沿ってプラズマ密度が単純に減少又は増加することがなく、プラズマはウエハWの中心に関して対称に分布する。その結果、プラズマ密度の不均一が解消される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0026】
まず、本発明の第1の実施の形態に係る基板処理装置について説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す図であり、
図1(A)に基板処理装置の断面図を示す。
図1(B)は
図1(A)中の白抜き矢印に沿って基板処理装置の上部電極を眺めた図である。本基板処理装置は、基板としての半導体デバイス用のウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)Wにプラズマ処理、例えば、ドライエッチング処理を施す。
【0028】
図1(A)において、基板処理装置10は、例えば、直径が300mmのウエハWを収容する円筒状のチャンバ11(処理室)を有し、該チャンバ11内にはウエハWを載置する円柱状のサセプタ12(下部電極)が下方に配置され、該サセプタ12に対向するチャンバ11の天井部は上部電極13を構成し、サセプタ12及び上部電極13は間に処理空間Sを構成する。
【0029】
基板処理装置10では、不図示の排気装置によって減圧された処理空間Sにおいてプラズマを生じさせて該プラズマによってサセプタ12に載置されたウエハWにプラズマ処理を施す。
【0030】
チャンバ11内のサセプタ12には第1の高周波電源14が第1の整合器15を介して接続されるとともに第2の高周波電源16が第2の整合器17を介して接続され、第1の高周波電源14は高い周波数、例えば、60MHzの高周波電力をサセプタ12に供給し、第2の高周波電源16は低い周波数、例えば、3.2MHzの高周波電力をサセプタ12に供給する。これにより、サセプタ12は下部電極として機能する。また、第1の整合器15及び第2の整合器17はインピーダンスを調整して高周波電力のサセプタ12への供給効率を最大にする。
【0031】
サセプタ12の上部周縁部には、該サセプタ12の中央部分が図中上方へ向けて突出するように、段差が形成される。該サセプタ12の中央部分の先端には静電電極板を内部に有するセラミックスからなる静電チャック(図示しない)が配置されている。静電チャックはクーロン力又はジョンソン・ラーベック力によってウエハWを吸着保持する。
【0032】
サセプタ12の上部周縁部における段差には、静電チャックに吸着保持されたウエハWを囲うように、フォーカスリング18がサセプタ12の段差へ載置される。フォーカスリング18は珪素(Si)又は炭化珪素(SiC)からなり、処理空間Sにおけるプラズマの分布域をウエハW上だけでなく該フォーカスリング18上まで拡大させることができる。サセプタ12と処理空間Sを挟んで対向するチャンバ11の天井部には処理ガス導入管19が接続され、該処理ガス導入管19は処理ガスを処理空間Sへ導入する。
【0033】
基板処理装置10では、処理ガスが処理ガス導入管19から処理空間Sへ導入され、第1及び第2の高周波電源14、16からサセプタ12へ供給される高周波電力によって処理空間Sにおいて図中白抜き矢印方向、すなわち、サセプタ12から上部電極13へ向かう電界Eが発生する。電界Eは導入された処理ガスの分子や原子を励起してプラズマを生じさせる。このとき、プラズマ中のラジカルは浮遊してウエハWへ移動し、プラズマ中の陽イオンは、第1及び第2の高周波電源14、16がサセプタ12に供給する高周波電力によってウエハWに向けて引きこまれ、該ウエハWにプラズマ処理が施される。
【0034】
また、基板処理装置10は、上部電極13において処理空間Sとは反対側の上面13aにおいて略放射状に配置される多数の電磁石20を備える。各電磁石20は、鉄心からなる棒状のヨーク20aと、該ヨーク20aの側面に巻回されて両端が引き出される導線からなるコイル20bとを有する。コントローラ(図示せず)によって電磁石20のコイル20bへ流す電流の値や電流の向きを制御して、該電磁石20が発生する全磁束や磁束の向きを任意に変化させることができる。
【0035】
基板処理装置10では、
図1(B)に示すように、多数の電磁石20は、ウエハWの中心に対向する電磁石20からなる中央部対向群21(第1の電磁石群)と、ウエハWの中心に対向する上部電極13の中心C(以下、「上部電極中心C」という。)に関して円環状に配置され、且つウエハWの周縁部に対向する複数の電磁石20からなる周縁部対向群22(第2の電磁石群)と、上部電極中心Cに関して円環状に配置され、且つ周縁部対向群22よりも外側に配置されてウエハWとは対向しない複数の電磁石20からなる外側対向群23(第3の電磁石群)とに分けられる。基板処理装置10では、周縁部対向群22の各電磁石20における処理空間S側の磁極が全て同じとなるように各電磁石20のコイル20bへ流す電流の向きが制御され、外側対向群23の各電磁石20における処理空間S側の磁極が全て同じとなるように各電磁石20のコイル20bへ流す電流の向きが制御される。
【0036】
本実施の形態では、図中では中央部対向群21が1つの電磁石20からなるが、ウエハWの中心に対向する上部電極中心Cに関して円環状に配置される複数の電磁石20からなってもよい。
【0037】
なお、
図1(A)中の白抜き矢印に沿って基板処理装置10の上部電極13を処理空間S側から眺めた場合、上部電極13は透過性を有さないため、本来であれば、上部電極13の上面13aに配置される各電磁石20を見ることはできないが、図中では各電磁石20の配置の説明を容易にするために、本実施の形態では、上部電極13が透過性を有するものとし、各電磁石20の配置が上部電極13を透して視認できるものとしており、後述する
図2(B)や
図8(B)においても同様である。
【0038】
図2は、
図1の基板処理装置において発生する電界及び磁界に起因する電子のドリフト運動を説明するための図であり、
図2(A)は
図1の基板処理装置の断面図であり、
図2(B)は
図2(A)中の白抜き矢印に沿って基板処理装置の上部電極を眺めた図である。
【0039】
基板処理装置10では、例えば、
図2(A)に示すように、中央部対向群21における電磁石20の処理空間S側の磁極をN極に設定し、周縁部対向群22及び外側対向群23における各電磁石20の処理空間S側の磁極をS極に設定すると、中央部対向群21から周縁部対向群22や外側対向群23に向けて放射状に磁界Bが発生する。このとき、上述したように、処理空間Sには電界Eが発生しているので、処理空間S中の電子は電界E及び磁界Bに起因するローレンツ力を受けてドリフトする。具体的には、
図2(B)において手前から奥に向けて電界Eが発生し、且つ上部電極中心Cに関して放射状に磁界Bが発生するので、電子はフレミング左手の法則に従い、上部電極中心Cを中心とする円周の接線方向に加速度を受けて上部電極中心Cを中心に円状の電子軌跡Dに沿って旋回する。このとき、旋回する電子は処理空間S中の処理ガスの分子や原子と衝突してプラズマを生成する。その結果、円状の電子軌跡Dに沿って円環状のプラズマが発生する。
【0040】
ところで、電界及び磁界による電子のドリフト運動の速度ν
gE は下記式(1)で示される。
ν
gE = E/B … (1)
上記式(1)によれば、電界Eの強さが一定であるとすると、磁界Bの強度(磁場強度)が大きいほど電子のドリフト運動の速度は低下する。電子のドリフト運動の速度は低下すると、電子が或る箇所に滞在する時間が長くなるため、当該箇所において電子密度が上昇する。その結果、電子と処理ガスの分子や原子との衝突機会が増加するため、当該箇所においてプラズマ密度が上昇する。すなわち、電磁石20によって或る箇所の磁場強度を大きくすると、当該箇所のプラズマ密度を高くすることができる。
【0041】
したがって、中央部対向群21、周縁部対向群22及び外側対向群23における各電磁石20の処理空間S側の磁極を調整することにより、処理空間Sにおいて発生する磁界Bの形態を変化させて所望の箇所に磁場強度の大きい部分を作り出し、当該所望の箇所のプラズマ密度を高くすることができる。
【0042】
図3及び
図4は、各電磁石の処理空間側の磁極と処理空間において発生する磁界の強度との関係を説明するための図である。
【0043】
図3(A)は、中央部対向群21における電磁石20の処理空間S側の磁極をN極に設定し、周縁部対向群22における各電磁石20の処理空間S側の磁極をS極に設定し、且つ外側対向群23における各電磁石20のコイル20bへ通電せずに磁束を発生させない場合を示す。
【0044】
この場合、磁界Bが中央部対向群21から周縁部対向群22へ向けて発生し、中央部対向群21及び周縁部対向群22の間において磁場強度が最大となるため、中央部対向群21及び周縁部対向群22の間においてプラズマ密度を高くすることができる。
【0045】
図3(B)は、中央部対向群21における電磁石20のコイル20bへ通電せずに磁束を発生させず、周縁部対向群22における各電磁石20の処理空間S側の磁極をS極に設定し、且つ外側対向群23における各電磁石20の処理空間S側の磁極をN極に設定する場合を示す。
【0046】
この場合、磁界Bが外側対向群23から周縁部対向群22へ向けて発生し、外側対向群23及び周縁部対向群22の間において磁場強度が最大となるため、外側対向群23及び周縁部対向群22の間においてプラズマ密度を高くすることができる。
【0047】
図3(C)は、中央部対向群21における電磁石20の処理空間S側の磁極をN極に設定し、周縁部対向群22における各電磁石20の処理空間S側の磁極をS極に設定し、且つ外側対向群23における各電磁石20の処理空間S側の磁極をN極に設定する場合を示す。
【0048】
この場合、磁界Bが中央部対向群21から周縁部対向群22へ向けて発生するとともに外側対向群23から周縁部対向群22へ向けて発生し、中央部対向群21及び周縁部対向群22の間、並びに外側対向群23及び周縁部対向群22の間において磁場強度が比較的大きくなるため、中央部対向群21及び周縁部対向群22の間、並びに外側対向群23及び周縁部対向群22の間においてプラズマ密度を高くすることができる。
【0049】
図4(A)は、中央部対向群21における電磁石20の処理空間S側の磁極をN極に設定し、周縁部対向群22における各電磁石20の処理空間S側の磁極をS極に設定し、且つ外側対向群23における各電磁石20の処理空間S側の磁極をS極に設定する場合を示す。
【0050】
この場合、磁界Bが中央部対向群21から周縁部対向群22や外側対向群23へ向けて発生し、中央部対向群21及び周縁部対向群22の間において磁界Bが重畳されるために磁場強度が最大となるとともに、外側対向群23及び周縁部対向群22の間において磁場強度が比較的大きくなるため、中央部対向群21及び周縁部対向群22の間、並びに外側対向群23及び周縁部対向群22の間においてプラズマ密度を高くすることができる。なお、プラズマ密度は磁場強度に応じて変化するため、外側対向群23及び周縁部対向群22の間におけるプラズマ密度よりも中央部対向群21及び周縁部対向群22の間におけるプラズマ密度の方が高い。
【0051】
図4(B)は、中央部対向群21における電磁石20の処理空間S側の磁極をN極に設定し、周縁部対向群22における各電磁石20の処理空間S側の磁極をN極に設定し、且つ外側対向群23における各電磁石20の処理空間S側の磁極をS極に設定する場合を示す。
【0052】
この場合、磁界Bが中央部対向群21や周縁部対向群22から外側対向群23へ向けて発生し、外側対向群23及び周縁部対向群22の間において磁界Bが重畳されるために磁場強度が最大となるとともに、中央部対向群21及び周縁部対向群22の間において磁場強度が比較的大きくなるため、中央部対向群21及び周縁部対向群22の間、並びに外側対向群23及び周縁部対向群22の間においてプラズマ密度を高くすることができる。なお、この場合では、中央部対向群21及び周縁部対向群22の間におけるプラズマ密度よりも外側対向群23及び周縁部対向群22の間におけるプラズマ密度の方が高い。
【0053】
図4(C)は、中央部対向群21における電磁石20の処理空間S側の磁極をN極に設定し、周縁部対向群22における各電磁石20のコイル20bへ通電せずに磁束を発生させず、且つ外側対向群23における各電磁石20の処理空間S側の磁極をS極に設定する場合を示す。
【0054】
この場合、磁界Bが中央部対向群21から外側対向群23へ向けて発生し、中央部対向群21及び外側対向群23の間、具体的には周縁部対向群22の対向部において磁場強度が最大となるため、周縁部対向群22の対向部においてプラズマ密度を高くすることができる。
【0055】
本実施の形態に係る基板処理装置10によれば、上部電極13において処理空間Sとは反対側の上面13aにおいて略放射状に配置される複数の電磁石20を備えるので、処理空間においてウエハWの中心から放射状に分布する磁界Bを発生させることができるとともに、各電磁石20へ流す電流の向きや大きさを変化させることにより、発生させる磁界Bの磁束密度や磁束の向きを容易に制御することができる。その結果、処理空間のプラズマ密度の分布が最適となるような磁界の分布を得ることができる。
【0056】
処理空間Sにおけるプラズマ密度の分布は、プラズマ処理の内容、例えば、処理ガスの種類や高周波電力のパワー、周波数に応じて変わるが、基板処理装置10を用いることにより、所望のプラズマ密度の分布を実現することができる。例えば、処理空間Sにおいて均一なプラズマ密度の分布を実現したい場合において、電界Eのみによって発生するプラズマ密度の分布が処理空間Sの中央部においてプラズマ密度が高くなる分布であれば、上述した
図3(B)や
図4(B)の場合のように、外側対向群23及び周縁部対向群22の間において磁場強度を最大にして外側対向群23及び周縁部対向群22の間においてプラズマ密度を高くすればよい。これにより、電界Eのみによって発生するプラズマ密度の分布(処理空間Sの中央部で密)、及び磁界Bによって発生するプラズマ密度の分布(処理空間Sの周縁部で密)が重畳されて均一なプラズマ密度の分布を実現することができる。
【0057】
また、電界Eのみによって発生するプラズマ密度の分布が処理空間Sの周縁部においてプラズマ密度が高くなる分布であれば、上述した
図3(A)や
図4(A)の場合のように、中央部対向群21及び周縁部対向群22の間において磁場強度を最大にして中央部対向群21及び周縁部対向群22の間においてプラズマ密度を高くすればよい。これにより、電界Eのみによって発生するプラズマ密度の分布(処理空間Sの周縁部で密)、及び磁界Bによって発生するプラズマ密度の分布(処理空間Sの中央部で密)が重畳されて均一なプラズマ密度の分布を実現することができる。
【0058】
すなわち、基板処理装置10では、ウエハWに施されるプラズマ処理の条件に応じて各電磁石20が発生させる磁界の磁場強度及び/又は電磁石20の磁極を変更することにより、ウエハWに施すプラズマ処理の条件を変更する際、磁界Bの発生条件を制御して変更前及び変更後のプラズマ処理条件のそれぞれに最適なプラズマ密度の分布を実現することができる。
【0059】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る基板処理装置について説明する。
【0060】
本実施の形態は、その構成、作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであるので、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0061】
図5は、本実施の形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0062】
図5において、基板処理装置24は、高周波電力を供給する3つの高周波電源を備える。具体的には、サセプタ12に第1の高周波電源25が第1の整合器26を介して接続され、第2の高周波電源27が第2の整合器28を介して接続され、且つ第3の高周波電源29が第3の整合器30を介して接続され、第1の高周波電源25は例えば、40MHzの高周波電力をサセプタ12に供給し、第2の高周波電源27は例えば、100MHzの高周波電力をサセプタ12に供給し、且つ第3の高周波電源29は例えば、3.2MHzの高周波電力をサセプタ12に供給する。
【0063】
基板処理装置24では、プラズマ処理の条件に応じて、第1の高周波電源25、第2の高周波電源27及び第3の高周波電源29からサセプタ12に高周波電力を供給する。なお、サセプタ12へは3つの高周波電源25、27、29から高周波電力が供給されなくてもよく、例えば、3つの高周波電源25、27、29のうちから選択された1つ又は2つの高周波電源から高周波電力が供給されてもよい。本実施の形態では3つの高周波電源25、27、29がサセプタ12に接続されているが、サセプタ12には4つ以上の高周波電源が接続されていてもよく、さらに、サセプタ12に高周波電源が接続されることがなく、上部電極へ高周波電源が接続されて該上部電極から高周波電力が処理空間Sに供給されてもよい。
【0064】
ところで、例えば、特開2007−266533号公報において開示されるように、サセプタ等の下部電極に高周波電力を供給して低圧下で高密度のプラズマを生成する際、近年の加工微細化要求に対応するために高周波電力の周波数が高くなると、当該高周波電力によって生じる高周波電流が上部電極や下部電極の中心部に集まり、処理空間に生成されるプラズマ密度も処理空間の中央部が処理空間の周縁部より高くなり、その結果、ウエハWに施されるプラズマ処理の面内均一性が低下するという問題がクローズアップされてきている。
【0065】
本実施の形態では、上述の高周波電源の周波数が高くなる場合に生ずるプラズマ密度の不均一な分布に対応するために、サセプタ12へ供給される高周波電力の周波数に応じて各電磁石20を制御して発生させる磁界の磁場強度及び/又は電磁石20の磁極を変化させる。
【0066】
例えば、第2の高周波電源27が100MHzの高周波電力をサセプタ12に供給する場合、処理空間Sでは中央部で密なプラズマ密度分布が生じるが、これに対応して、例えば、上述した
図3(B)や
図4(B)の場合のように、周縁部対向群22における各電磁石20の処理空間S側の磁極をS極に設定し、且つ外側対向群23における各電磁石20の処理空間S側の磁極をN極に設定するか、若しくは、中央部対向群21における電磁石20の処理空間S側の磁極をN極に設定し、周縁部対向群22における各電磁石20の処理空間S側の磁極をN極に設定し、且つ外側対向群23における各電磁石20の処理空間S側の磁極をS極に設定する。これにより、外側対向群23及び周縁部対向群22の間において磁場強度が最大となる磁界Bを発生させることができ、該磁界Bによって処理空間Sの周縁部で密なプラズマ密度分布を生じさせることができる。
【0067】
その結果、処理空間Sにおいて中央部で密なプラズマ密度分布と、周縁部で密なプラズマ密度分布とを重畳することができ、処理空間Sにおいて均一なプラズマ密度の分布を実現することができる。
【0068】
第1の高周波電源25が40MHzの高周波電力をサセプタ12に供給する場合、処理空間Sでは比較的均一なプラズマ密度分布が生じるため、該プラズマ密度分布を磁界Bによって乱さないように、中央部対向群21、周縁部対向群22及び外側対向群23における全ての電磁石20のコイル20bに通電しないことによって磁界Bを生じさせない。
【0069】
本実施の形態に係る基板処理装置24によれば、第2の高周波電源27が100MHzの高周波電力をサセプタ12に供給する場合、外側対向群23及び周縁部対向群22の間において磁場強度が最大となる磁界Bを発生させ、第1の高周波電源25が40MHzの高周波電力をサセプタ12に供給する場合、全ての電磁石20のコイル20bに通電しないことによって磁界Bを生じさせないので、サセプタ12へ供給される高周波電力の周波数にかかわらず、処理空間Sにおいて均一なプラズマ密度分布を実現することができ、もって、プラズマ処理におけるウエハWの面内均一性が低下するのを防止することができる。
【0070】
上述した基板処理装置24では、第3の高周波電源29は3.2MHzの高周波電力をサセプタ12に供給したが、第3の高周波電源29は13MHzの高周波電力をサセプタ12に供給してもよい。
【0071】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る基板処理装置について説明する。
【0072】
本実施の形態は、その構成、作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであるので、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0073】
図6及び
図7は、本実施の形態に係る基板処理装置がその一部を実行するTSV(Through Silicon Via)処理を説明するための工程図である。TSV処理とは、半導体デバイスを構成するために積層されるチップ間の電気的な接続を得るために、チップのシリコン層に貫通ビアを形成して、立体的な配線構造を得るための処理方法である。
【0074】
まず、ウエハWの表面にトランジスタ31を形成し、該トランジスタ31が形成されたウエハW上にさらに層間絶縁膜32を形成する(
図6(A))。
【0075】
次いで、層間絶縁膜32上に配線構造33を形成する。この配線構造33では、層間絶縁膜32上に配線層34及び絶縁膜35が交互に複数層に亘って積層されるとともに、絶縁膜35を貫通して上下の配線層34間を電気的に接続する配線を実現するためのビアホール36が形成される(
図6(B))。
【0076】
次いで、ウエハWを上下反転させて光反応性の接着剤Gを介してサポートウエハSWと貼り合わせることによって貼り合わせウエハLWを構成する。サポートウエハSWは、ウエハWの裏面Wbを研削して薄化したときに、該薄化されたウエハWを補強して反りを防ぐ支持体となる基板であり、例えば、厚さが数10μmのシリコン板又は石英ガラスからなる。さらに、貼り合わせウエハLWを、例えば、研削装置に備えられたサポートに支持させてウエハWの裏面Wbを、研削前の厚さT1が所定厚さT2、例えば、50〜200μmになるまで研削する(
図6(C))。
【0077】
次いで、ウエハWの裏面Wbにレジスト(図示しない)を塗布し、さらに露光・現像することによってビアホール形成用のレジストパターン(図示しない)を形成し、該貼り合わせウエハLWへ、後述する基板処理装置39によってドライエッチング処理を施して、例えば、直径が1〜10μmのビアホールVを形成する。さらに、貼り合わせウエハLWの裏面Wbに残存するレジストを後述する基板処理装置39が実行するアッシング処理によって除去する(
図7(A))。なお、ビアホールVの深さは、ウエハWの裏面Wbを研削して薄化した後のウエハWの基体自体の厚さに相当し、例えば、50〜200μmである。
【0078】
次いで、ビアホールVの内周面に、例えば、ポリイミドからなる絶縁膜37を形成し、内周面が絶縁膜37で被覆されたビアホールV内に、例えば、電解めっき法によって貫通電極38を形成する(
図7(B))。
【0079】
次いで、例えば、紫外光(UV光)を照射することによって接着剤Gの接着力を低下させた後、サポートウエハSWをウエハWから剥がすことにより、薄化され且つ貫通電極38が形成されたウエハWからなるチップPを得ることができる(
図7(C))。
【0080】
図8は、本実施の形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す図であり、
図8(A)は断面図であり、
図8(B)は
図8(A)中の白抜き矢印に沿って基板処理装置の上部電極を眺めた図である。本基板処理装置は、ウエハにプラズマ処理、例えば、上述した
図6及び
図7のTSV処理におけるドライエッチング処理やアッシング処理を施す。
【0081】
図8(A)において、基板処理装置39は、上部電極13の上面13aに配置される2種類の多数の電磁石40及び電磁石41を備える。各電磁石40は、円棒状のヨーク40aと、該ヨーク40aの側面に巻回されるコイル40bとを有し、各電磁石41も、電磁石40と同様に、円棒状のヨーク41aと、該ヨーク41aの側面に巻回されるコイル41bとを有する。
【0082】
電磁石40において、ヨーク40aは直径が6.5〜7.5mmの鉄心からなり、側面に銅線が180〜200回ほど巻回されてコイル40bが構成される。また、電磁石41において、ヨーク41aは直径が26〜28mmの鉄心からなり、側面に銅線が1300〜1500回ほど巻回されてコイル41bが構成される。
【0083】
電磁石40や電磁石41ではコイル40b又はコイル41bへ流す電流の値や電流の向きを制御することにより、電磁石40や電磁石41が発生する全磁束や磁束の向きを変化させることができる。
【0084】
一般に電磁石が発生させる全磁束は下記式(2)で示される。
全磁束 = 起磁力/磁気抵抗 … (2)
全磁束は鉄心であるヨークの一端から生じる全ての磁力線の量であり、単位はWb(ウェーバ)で示され、起磁力はいわゆる磁気回路において磁束を発生させる力であり、単位はAT(アンペアターン)で示される。起磁力は、具体的にヨークに巻回されたコイルの巻回数と、該コイルに流れる電流の積で示される。したがって、コイルの巻回数が多くなり、該コイルに流れる電流の値が大きいほど、起磁力は大きくなる。また、磁気抵抗は磁気回路において磁束の流れにくさを表す指標であり、下記式(3)で示される。
磁気抵抗 = 磁路長/(透磁率×磁路断面積) … (3)
磁路長はヨークの長さであり、透磁率はヨークの透磁率であり、磁路断面積はヨークの断面積である。したがって、ヨークが長くなり、ヨークの直径が小さくなるほど、磁気抵抗は大きくなる。
【0085】
電磁石40及び電磁石41に関し、ヨーク40a及びヨーク41aの長さは同じであり、ヨーク40a及びヨーク41aの透磁率は同じであり、コイル40b及びコイル41bに流れる電流の値はほぼ同じ(コイル40bにはピークで0.78Aの電流が流れ、コイル41bにはピークで0.70Aの電流が流れる)であるが、コイル41bの巻回数がコイル40bの巻回数よりも多いので、電磁石41の起磁力が電磁石40の起磁力よりも大きく、ヨーク41の直径がヨーク40の直径よりも大きいので、電磁石41の磁気抵抗が電磁石40の磁気抵抗よりも小さくなる。したがって、電磁石41が発生する全磁束は電磁石40が発生する全磁束よりも大きくなり、具体的に、電磁石41が発生する全磁束は電磁石40が発生する全磁束の8〜12倍となる。
【0086】
基板処理装置39では、
図8(B)に示すように、電磁石40及び電磁石41は、ウエハWの中心に対向する複数の電磁石40からなる中央部対向群42(第1の電磁石群)と、該中央部対向群42を囲むように配置される複数の電磁石40からなる周縁部対向群43(第2の電磁石群)と、上部電極中心Cに関して円環状に配置され、且つ周縁部対向群43よりも外側に配置されてウエハWとは対向しない複数の電磁石41からなる外側対向群44(第3の電磁石群)とに分けられる。中央部対向群42及び周縁部対向群43において、各電磁石40は上部電極13の半径方向及び周方向のそれぞれに関して互いに等間隔で配置され、且つ略放射状に配列される。また、外側対向群44では各電磁石41が上部電極13の周方向に沿って一重環状に配列される。なお、
図8(A)及び
図8(B)において、中央部対向群42の各電磁石40を破線で示す。
【0087】
中央部対向群42は上部電極中心Cからその中心までの距離が74.4mm(
図8(B)中にL
1で示す)以下の複数の電磁石40から構成され、周縁部対向群43は上部電極中心Cからその中心までの距離が74.4mmより大、且つ148.8mm(
図8(B)中にL
2で示す)以下の複数の電磁石40から構成され、外側対向群44は上部電極中心Cからその中心までの距離L
3が190mm(
図8(B)中にL
3で示す)の複数の電磁石41から構成され
る。
【0088】
中央部対向群42及び周縁部対向群43では各電磁石40における処理空間S側の磁極が全て同じとなるように各電磁石40のコイル40bへ流す電流の向きが設定され、外側対向群44では各電磁石41における処理空間S側の磁極が全て同じとなるように各電磁石41のコイル41bへ流す電流の向きが設定される。
【0089】
ところで、処理ガスとしてフッ素含有ガス及び酸素ガスの混合ガス、例えば、SF
6ガス及びO
2ガスの混合ガスを用い、該処理ガスからプラズマを発生させてTSV処理をウエハWに施す場合、処理空間Sの中央部のプラズマ密度が処理空間Sの周縁部のプラズマ密度より高くなり、結果として、
図9(A)のグラフに示すように、ウエハWの中央部のエッチレートがウエハWの周縁部のエッチレートよりも高くなることが知られている。
【0090】
本実施の形態に係る基板処理装置39では、これに対応して、中央部対向群42における電磁石40の処理空間S側の磁極をN極に設定し、周縁部対向群43における各電磁石40の処理空間S側の磁極及び外側対向群44における各電磁石40の処理空間S側の磁極をS極に設定する。
【0091】
この場合、
図8(A)及び
図8(B)に示すように、中央部対向群42から周縁部対向群43や外側対向群44に向けて放射状に磁界Bが発生する。発生する磁界Bとしては、上述したように、外側対向群44における各電磁石41が発生する全磁束が、中央部対向群42や周縁部対向群43における各電磁石40が発生する全磁束よりも大きいため、処理空間Sの中央部の磁場強度よりも処理空間Sの周縁部の磁場強度が大きい磁界Bとなり、ほぼ外側対向群44の近傍、すなわち、処理空間Sの周縁部で磁場強度が最大の磁界Bとなる(後述する
図10(B)参照。)。
【0092】
このとき、第1の高周波電源14がサセプタ12へ供給する高周波電力によって
図8(B)において手前から奥に向けて電界Eが発生しているので、電子はフレミング左手の法則に従い、上部電極中心Cを中心に円状の電子軌跡Dに沿って旋回するが、処理空間Sの周縁部で磁場強度が最大となるため、処理空間Sの周縁部で数多くの電子が旋回し、結果として、処理空間Sの周縁部で多くのプラズマが生成されてプラズマ密度が高くなる。これにより、エッチング処理に付随して発生するプラズマ密度の分布(処理空間Sの中央部で密)、及び基板処理装置39が発生させる磁界Bによって発生するプラズマ密度の分布(処理空間Sの周縁部で密)が重畳されて均一なプラズマ密度の分布を実現することができる。
【0093】
図9(B)は、
図8の基板処理装置39が磁界Bを発生させつつ、ウエハWへエッチング処理を施した際のエッチングレート分布のグラフを示す。
【0094】
図9(B)のグラフが示すように、エッチング処理の際に基板処理装置39が中央部対向群42における電磁石40の処理空間S側の磁極をN極に設定し、周縁部対向群43における各電磁石40の処理空間S側の磁極及び外側対向群44における各電磁石40の処理空間S側の磁極をS極に設定して磁界Bを発生させると、ウエハWの前面においてほぼ均一なエッチレートを実現することができる。
【0095】
図10は、基板処理装置39において中央部対向群42、周縁部対向群43及び外側対向群44における各電磁石40、電磁石41の処理空間S側の磁極を変更した場合の計算結果を説明するグラフであり、
図10(A)はエッチレートの分布を示し、
図10(B)は磁束密度の分布を示す。
【0096】
細破線は全ての電磁石40、電磁石41が磁束を発生しない場合を示す(比較例1)。細実線は、中央部対向群42の各電磁石40の処理空間S側の磁極をN極に設定し、周縁部対向群43の各電磁石40の処理空間S側の磁極をS極に設定し、且つ外側対向群44の各電磁石41が磁束を発生しない場合を示す(比較例2)。太破線は、中央部対向群42の各電磁石40の処理空間S側の磁極をN極に設定し、周縁部対向群43の各電磁石4
0は磁束を発生せず、且つ外側対向群44の各電磁石41の処理空間S側の磁極をS極に設定した場合を示す(実施例1)。太実線は、中央部対向群42の各電磁石40の処理空間S側の磁極をN極に設定し、周縁部対向群43の各電磁石40の処理空間S側の磁極をS極に設定し、且つ外側対向群44の各電磁石41の処理空間S側の磁極をS極に設定した場合を示す(実施例2)。
【0097】
図10(B)のグラフにおける実施例1及び実施例2より、中央部対向群42の各電磁石40の処理空間S側の磁極をN極に設定し、且つ外側対向群44の各電磁石41の処理空間S側の磁極をS極に設定すれば、処理空間Sの周縁部、具体的には、ウエハWのやや外側であるウエハWの中心から150〜160mmの範囲で磁場強度(各グラフでは磁束密度で代用して示す)が最大となる磁界Bを得られることが分かった。
【0098】
また、実施例1及び実施例2に示すように、ウエハWの面内においてほぼ均一なエッチレートを実現することができたのは、外側対向群44をウエハWと対向しない場所、具体的には、ウエハWの外側に設けたので、ウエハWのやや外側で磁場強度が最大となる磁界Bを得ることができ、もって、処理空間SにおけるウエハWの対向する部分の全域に亘ってプラズマ密度をほぼ均一にすることできたためと推察された。
【0099】
また、実施例2において磁場強度が、処理空間Sの中心(ウエハWの中心)から処理空間Sの周縁部(ウエハWの中心から150〜160mmの範囲)にかけて滑らかに立ち上がらず、特に周縁部対向群43に対向する部分(ウエハWの中心から70〜100mmの範囲)において段差を形成するのは、周縁部対向群43の各電磁石40の処理空間S側の磁極と、外側対向群44の各電磁石41の処理空間S側の磁極とが同じS極であり、周縁部対向群43の各電磁石40から発生する磁束と外側対向群44の各電磁石41から発生する磁束が打ち消しあったためであると推察された。
【0100】
本実施の形態に係る基板処理装置39によれば、上部電極13の上面13aに配置される2種類の多数の電磁石40及び電磁石41は、ウエハWの中心に対向する中央部対向群42と、該中央部対向群42を囲む周縁部対向群43と、周縁部対向群43よりも外側に配置されてウエハWとは対向しない外側対向群44とに分けられ、処理空間Sの中央部の磁場強度よりも処理空間Sの周縁部の磁場強度が大きい磁界Bを発生するので、TSV処理で発生する処理空間Sの中央部が処理空間Sの周縁部よりも高くなるプラズマ密度の分布を改善することができる。
【0101】
上述した基板処理装置39では、中央部対向群42の各電磁石40の処理空間S側の磁極をN極に設定し、且つ外側対向群44の各電磁石41の処理空間S側の磁極をS極に設定したが、中央部対向群42の各電磁石40の処理空間S側の磁極と外側対向群44の各電磁石41の処理空間S側の磁極とが反対であれば、処理空間Sの中央部の磁場強度よりも処理空間Sの周縁部の磁場強度が大きい磁界Bを発生することができるので、中央部対向群42の各電磁石40の処理空間S側の磁極をS極に設定し、且つ外側対向群44の各電磁石41の処理空間S側の磁極をN極に設定してもよい。
【0102】
上述した基板処理装置39では、
図9(A)のグラフに示す、ウエハWの中心から約75mm近傍に位置するエッチレートの変曲点に合わせるように、中央部対向群42が電極中心Cからその中心までの距離が74.4mmまでの電磁石40で構成され、周縁部対向群43が電極中心Cからその中心までの距離が74.4mmより大きい電磁石40で構成される。すなわち、中央部対向群42及び周縁部対向群43の境界は電極中心Cから74.4mmに設定されるが、中央部対向群42及び周縁部対向群43の境界は変更可能であり、処理空間Sのプラズマ密度の分布が最適となるような磁界Bの分布を得るために、当該境界は変更されてもよい。
【0103】
また、複数の電磁石40は中央部対向群42及び周縁部対向群43のみに分けられる必要はなく、エッチング処理に付随して発生するプラズマ密度の分布を磁界Bによって発生するプラズマ密度の分布で補完して均一なプラズマ密度の分布を実現すべく、複数の電磁石40を1つ又は3つ以上の電磁石群に分け、処理空間Sのプラズマ密度の分布が最適となるような磁界Bの分布を得てもよい。
【0104】
なお、中央部対向群42及び周縁部対向群43の境界の変更や、電磁石群の数の変更は、コントローラによって各電磁石40のコイル40bへ流す電流の値や電流の向きを制御して各電磁石40が発生する磁界Bの強度及び/又は各電磁石40の磁極を変更することによって行う。
【0105】
以上、本発明について、上記各実施の形態を用いて説明したが、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではない。